説明

コネクタ

【課題】ロック機構を備えたコネクタを小型化する。
【解決手段】雌ハウジング40に設けられたロック爪51と雄ハウジング20に設けられたロック部29とを係止することで雌ハウジング40と雄ハウジング20とを嵌合状態にロックするコネクタ10であって、雌ハウジング40には雌型外導体44が収容された端子収容部41が設けられている一方、雄ハウジング20には端子収容部41を内部に嵌合可能なフード部21が設けられており、端子収容部41には、スリット49を設けることでロックアーム50が形成されており、ロック爪51はロックアーム50に設けられている一方、ロック部29はロック爪51と係止するようにフード部41に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フード部を有する雄ハウジングとフード部内に嵌合可能な端子収容部を有する雌ハウジングとを嵌合状態にロックするロック機構を備えたコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、雌ハウジングにおける端子収容部の上方に設けられたロックアームと、雄ハウジングにおけるフード部の上方に設けられたロック受部とを互いに係止させるロック機構によって両ハウジングを嵌合状態にロックする。
【0003】
ロック受部は、上方に撓み変形可能に形成されており、ロック受部の先端には、下方に突出するロック爪が設けられている。一方、ロックアームは、片持ち状をなして下方に撓み変形可能に形成されており、ロックアームの先端がロック爪と係止可能とされている。
【0004】
また、ロックアームと端子収容部の外壁との間には、ロックアームが下方に撓み変形する際の撓み空間が設けられており、ロックアームに設けられたロック解除部を下方に押圧操作してロックアームを下方に弾性変形させて、ロック爪とロックアームとの係止状態を解除することで、両ハウジングのロック状態を解除するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−68400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、両ハウジングが嵌合状態にロックされた上記のコネクタは、雄ハウジングのフード部の上方に、ロックアームの撓み空間と、ロックアームと、ロック受部と、ロック受部の撓み空間と、ロック受部の上部を保護する保護壁とが下から順に積み重ねられた形態となっており、コネクタは上方に大型化した状態となってしまう。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ロック機構を備えたコネクタを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、互いに嵌合可能な第一ハウジングと第二ハウジングとを有して、第一ハウジングに設けられた係止部と第二ハウジングに設けられた被係止部とを係止することで両ハウジングを嵌合状態にロックするコネクタであって、第一ハウジングに設けられ端子金具を収容可能なキャビティを有する端子収容部と、第二ハウジングに設けられ前記端子収容部を内部に嵌合可能なフード部とを備えて構成されており、前記端子収容部には、同端子収容部の外壁に前記キャビティまで貫通するスリットを設けることで嵌合方向と交差する方向に撓み変形可能なロックアームが形成されており、前記係止部は、前記ロックアームから外方に突出して設けられている一方、前記被係止部は、前記係止部と係止するように前記フード部に設けられており、前記係止部と前記被係止部とは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合過程において当接して押し合うことで、前記ロックアームが前記キャビティ内に撓み変形して前記係止部が前記被係止部に乗り上げ、前記両ハウジングが正規嵌合に至ると前記係止部が前記被係止部を乗り越えて前記ロックアームが弾性復帰することで互いに係止するところに特徴を有する。
【0009】
このような構成のコネクタによると、端子収容部の外壁をロックアームとして形成し、このロックアームをキャビティ内に撓み変形させることで、フード部に設けられた被係止部とロックアームに設けられた係止部とを係止させて両ハウジングを嵌合状態にロックすることができるので、端子収容部の外周にロックアームやロックアームの撓み空間を別途設ける場合に比べて、コネクタを小型化することができる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記ロックアームには、押圧操作することで前記ロックアームを前記キャビティ内に撓み変形させて、前記係止部と前記被係止部とのロック状態を解除するロック解除部が設けられており、前記ロックアームは、前記ロック解除部が過度に押圧された際に、前記キャビティ内の前記端子金具に当接する構成としてもよい。
このような構成によると、ロック解除部が過度に押圧された際に、ロックアームが端子金具に当接することで、ロックアームの過度撓みを防止することができるので、過度撓み防止用の部材を設けるためにロックアームの撓み空間を大きくする必要がなく、コネクタを小型化するに際して有効である。
前記フード部の開口縁部には、前記嵌合方向と交差する方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記被係止部は、前記フード部において前記貫通孔から前方に位置して前記貫通孔の内面を含んだ前記開口縁部である構成としてもよい。
このような構成によると、係止部がフード部の開口縁部と当接して、ロックアームを撓み変形させ、係止部を貫通孔に収容することで、係止部を貫通孔の内面と係止させて両ハウジングを嵌合状態にロックすることができるので、被係止部をフード部の内面から突出した形状に形成し、ロックアームから突出した係止部とフード部の内面から突出した被係止部とを係止させる場合に比べて、コネクタを更に小型化することができる。
【0011】
前記端子金具は、筒状の接続筒部と、この接続筒部の後方に位置して前記接続筒部よりも幅狭に形成された幅狭部を備えて構成されており、前記ロックアームの下方には、前記キャビティ内における前記端子金具の前記幅狭部が配されている構成としてもよい。
このような構成によると、キャビティの内面とキャビティ内における幅狭部との間に設けられた空間をロックアームが撓む空間として利用することができるので、コネクタを小型化するに際して有効である。
前記ロックアームの前記キャビティ側の面には、前記端子金具を係止する端子係止部が突設されており、前記キャビティ内に前記端子金具を挿入する際に前記端子係止部が前記端子金具に押圧されて前記ロックアームが外方に撓み変形する構成としてもよい。
このような構成によると、ロックアームに端子係止部を突設することで、端子金具を係止する可撓性ランスとしてロックアームを機能させることができるので、キャビティの内面と端子金具との間に撓み変形可能なランスなどを別途形成する場合に比べて、第一ハウジングを小型化するに当たり更に有効である。また、端子金具が半挿入状態の場合には、ロックアームが外方に膨出した形態となるので、フード部内に端子収容部を嵌合できず、端子金具が半挿入状態であることを検知することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロック機構を備えたコネクタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る雄ハウジングの斜視図
【図2】同正面図
【図3】実施形態1に係る雌ハウジングの斜視図
【図4】同正面図
【図5】実施形態1に係る雄ハウジングと雌ハウジングとを嵌合させる前の状態を示す平面図
【図6】図5のVI−VI線断面図
【図7】実施形態1に係る雄ハウジングと雌ハウジングとが嵌合した状態を示す平面図
【図8】図6の雄ハウジングと雌ハウジングとの嵌合途中の状態に相当する断面図
【図9】図7のIX−IX線断面図
【図10】実施形態2に係る雌ハウジングの斜視図
【図11】実施形態2に係る雄ハウジングと雌ハウジングとを嵌合させる前の状態を示す平面図
【図12】実施形態2に係る雄ハウジングと雌ハウジングとの嵌合途中の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図1乃至図9を参照して説明する。
実施形態1のコネクタ10は、図5及び図6に示すように、フード部21を有する合成樹脂製の雄ハウジング(本発明の「第二ハウジング」の一例)20と、雄ハウジング20のフード部21内に嵌合される端子収容部41を有する合成樹脂製の雌ハウジング(本発明の「第一ハウジング」の一例)40とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは図6における上下方向を基準とし、前後方向とは図5における左右方向を基準とし、前後方向については両ハウジング20,40の嵌合方向を基準として嵌合面側を前方とする。
【0015】
雄ハウジング20は、図1及び図5に示すように、前後方向に縦長の箱型状をなし、左右方向両側面に取り付けられた金属製の固定部22を半田付けすることによって図示しない回路基板に取り付け固定されるようになっている。
【0016】
雄ハウジング20の前後方向略中央部よりも前方部分は、図6に示すように、前方に向かって開口したフード部21とされており、雄ハウジング20の前後方向略中央部よりも後方部分は雄型外導体24を保持する端子保持部23とされている。
【0017】
雄型外導体24は、前後方向に延びる円筒状の雄型接続筒部24Aと、この雄型接続筒部24Aの後端部から下方に延びる一対の外導体リード部24Bを備えて構成されている。
【0018】
一対の外導体リード部24Bの後端部は、回路基板に沿うように屈曲して形成されており、雄ハウジング20が回路基板に固定される際に回路基板の図示しないグランドパターンに半田付けされるようになっている。
【0019】
雄型接続筒部24Aは、雄ハウジング20の端子保持部23を前後方向に貫通した状態で端子保持部23に保持されており、雄型接続筒部24Aの前方部は、フード部21の内部空間に突出した状態となっている。
【0020】
雄型接続筒部24Aの内部には、図2に示すように、絶縁性を有する円筒状の誘電部材25を介して雄型内導体26が保持されている。
【0021】
雄型内導体26は、前後方向に延びる内導体本体部26Aと内導体本体部26Aの後端から下方に延びる内導体リード部26Bとを備えて構成されており、内導体本体部26Aの先端部は、雄型接続筒部24Aの内部において誘電部材25から前方に突出した状態となっている。内導体リード部26Bの後端部は、回路基板に沿うように屈曲して形成されており、雄ハウジング20が回路基板に固定される際に、回路基板の図示しない信号パターンに半田付けされるようになっている。
【0022】
雌ハウジング40は、図3及び図6に示すように、前後方向に縦長の略角筒状をなし、雌ハウジング40のほぼ全長に亘って端子収容部41が形成されている。また、雌ハウジング40の前方部における右斜め下端部には、位置決めリブ41Bが設けられており、この位置決めリブ41Bを雄ハウジング20のフード部21内に設けられた位置決め凹部27内に嵌め合せることで、雄ハウジング20に対して雌ハウジング40を位置決めして嵌合させることができるようになっている。
【0023】
端子収容部41の内部には前後方向に貫通するキャビティ43が設けられている。キャビティ43内には、シールド電線Wの端末に接続された雌型外導体(本発明の「端子金具」の一例)44が保持されており、雌型外導体44の内部には、絶縁性を有する誘電部材42を介して図示しない雌型内導体が保持されている。
【0024】
シールド電線Wは、図6に示すように、芯線W1と、この芯線W1の外周を覆う絶縁性を有する誘電体W2と、この誘電体W2の外周を覆う編組線W3と、この編組線W3の外周を覆う外被覆W4とから構成されている。
【0025】
シールド電線Wの編組線W3は、図6に示すように、シールド電線Wの外被覆W4を皮剥ぎすることで露出され、露出された編組線W3には雌型外導体44が導通可能に接続されている。また、シールド電線Wの芯線W1は、誘電体W2を皮剥ぎすることで露出され、露出された芯線W1には図示しない雌型内導体が導通可能に接続されている。
【0026】
雌型外導体44は、図6に示すように、雄型外導体24の雄型接続筒部24Aに接続される雌型接続筒部(本発明の「接続筒部」の一例)45と、シールド電線Wの編組線W3にかしめ圧着されるワイヤバレル46と、雌型接続筒部45とワイヤバレル46とを繋ぐ繋ぎ部47と、シールド電線Wの外被覆W4にかしめ圧着されるインシュレーションバレル48とを備えて構成されている。なお、ここで示される繋ぎ部47とワイヤバレル46とインシュレーションバレル48とが本発明の「幅狭部」の一例である。
【0027】
雌型接続筒部45は、円筒状をなし、図6に示すように、キャビティ43に対して適合して収容される外径寸法に設定されている。また、雌型接続筒部45は、端子収容部41の前端開口から挿入された雄型外導体24の雄型接続筒部24Aを内部に収容することで雄型接続筒部24Aと導通可能に接続される。
【0028】
ワイヤバレル46は編組線W3にかしめ圧着されることで編組線W3と導通可能に接続されており、インシュレーションバレル48は外被覆W4にかしめ圧着されることで、シールド電線Wに固定されている。また、ワイヤバレル46及びインシュレーションバレル48が編組線W3及び外被覆W4にかしめ圧着された状態において、雌型接続筒部45よりも後方に位置する繋ぎ部47とワイヤバレル46とインシュレーションバレル48とは、雌型接続筒部45よりも幅狭にくびれた形状をなしている。このため、雌型接続筒部45がキャビティ43に適合して収容されるのに対して、繋ぎ部47とワイヤバレル46とインシュレーションバレル48とは、キャビティ43の内面との間に隙間Cを有した状態に収容されるようになっている。
【0029】
さて、雄ハウジング20におけるフード部21の上部に位置する天井壁21Aには、図1及び図5に示すように、フード部21の前端開口縁からやや後方の位置に天井壁21Aを上下方向に貫通する貫通孔28が左右方向に二つ並んで形成されている。この両貫通孔28は、平面視略方形状に形成されており、貫通孔28の内面が前後左右に配された形態とされている。また、フード部21における貫通孔28よりも前方部分は後述する雌ハウジング40に設けられたロック爪51と当接するロック部(本発明の「被係止部」の一例)29とされており、ロック部29の後面(貫通孔28の前方に位置する内面)は、ロック爪51と係止される被係止面29Aとされている。
【0030】
一方、端子収容部41の上部に位置する天井壁41Aには、図3及び図5に示すように、前後方向に延びる複数(実施形態1では三条)のスリット49がキャビティ43まで貫通するように設けられることで、上下方向に撓み変形可能なロックアーム50が形成されている。
【0031】
複数のスリット49は、端子収容部41における左右方向の両端部と左右方向略中央部に設けられている。左右方向略中央部に位置する中央スリット49Aは、端子収容部41の前端よりも僅かに後方の位置から端子収容部41の前後方向略中央部の位置までの領域に亘って設けられており、左右方向両側に位置するサイドスリット49Bは、端子収容部41の前後方向における略中央部よりもやや前方の位置から、端子収容部41の後端よりも僅かに前方の位置までの領域に亘って設けられている。すなわち、端子収容部41の前後方向略中央部では、図3および図5に示すように、一対のサイドスリット49Bの間に中央スリット49Aが配された構造となっている。これにより、ロックアーム50は、前端部が二つに分岐した形態で、かつ、前後方向両端部を端子収容部41の天井壁41Aに支持された両持ち状に形成され、端子収容部41の前後方向略中央部よりもやや前方の位置から端子収容部41の後端よりも僅かに前方の位置までの領域において上下方向に撓み変形可能に形成されている。また、ロックアーム50は、両持ち状に形成されているため、前後方向略中央部が最も下方に突出して撓み変形されるようになっている。
【0032】
ロックアーム50の前後方向略中央部の下方には、図6に示すように、雌型外導体44の繋ぎ部47が位置しており、ロックアーム50と繋ぎ部47との間の空間は、図6に示すように、ロックアーム50が下方に撓み変形するための撓み空間Sとされている。これにより、キャビティ43内にロックアーム50が下方に撓み変形する撓み空間を別途形成することなく、ロックアーム50が下方に撓み変形できるようになっている。
【0033】
また、ロックアーム50における前後方向略中央部には、図3及び図6に示すように、上方に突出する一対のロック爪(本発明の「係止部」の一例)51と、下方に突出する端子係止部53とが設けられている。したがって、ロック爪51と端子係止部53とは、ロックアーム50を中心に上下方向に対称的な位置関係とされている。一対のロック爪51は、左右方向に並んで形成されており、雄ハウジング20のフード部21に設けられた二つの貫通孔28にそれぞれ収容可能に形成されている。端子係止部53は、ロックアーム50におけるロック爪51とは反対側の位置に設けられており、図6及び図9に示すように、キャビティ43内に収容された雌型外導体44の雌型接続筒部45の後端面45Bと係止可能となっている。すなわち、ロックアーム50に端子係止部53を突設することで、雌型外導体44を係止する可撓性ランスとして機能させることができるようになっている。
また、キャビティ43内に雌型外導体44が半挿入状態の場合には、雌型外導体44によってロックアーム50が外方に押圧され、ロックアーム50が外方に膨出した形態となるので、フード部21内に端子収容部41を嵌合することができず、雌型外導体44が半挿入状態であることを検知することができるようになっている。
【0034】
また、両ロック爪51は、前方から後方に向かってロックアーム50から離れる方向に傾斜する傾斜面51Aと、この傾斜面51Aの後端からロックアーム50に向かって上下方向に形成された係止面51Bとを備えて構成されている。両ロック爪51は、両ハウジング20,40を嵌合させる過程において、フード部21のロック部29にロック爪51の傾斜面51Aが当接して互いに押し合い、図8に示すように、ロックアーム50が下方に撓み変形してロックアーム50がキャビティ43の撓み空間Sに収容されることで、フード部21のロック部29に乗り上げてフード部21内に入り込む。そして、両ハウジング20,40が正規の嵌合位置に至ると、図7及び図9に示すように、ロック爪51が貫通孔28に収容されてロックアーム50が弾性復帰することで、ロック爪51の係止面51Bとロック部29の被係止面29Aとが係止可能となり、両ハウジング20,40が嵌合状態にロックされるようになっている。
【0035】
また、ロックアーム50の後端部には、ロックアーム50から上方に突出するロック解除部52が形成されている。このロック解除部52は、下方に向かって押圧操作することで、ロックアーム50を下方に(キャビティ43の撓み空間Sに)撓み変形させ、ロック爪51の係止面51Bとロック部29の被係止面29Aとの係止状態を解除する。これにより、嵌合状態にロックされた両ハウジング20,40を容易に離脱させることができるようになっている。
【0036】
また、ロックアーム50の下面50Aは、ロックアーム50が下方に撓み変形し、ロック爪51の上端の位置が天井壁41Aの上面とほぼ同じ位置まで下がった際に、図8に示すように、雌型接続筒部45の後端部45Aに当接するように設定されている。これにより、両ハウジング20,40の嵌合状態をロック解除する際に、ロック解除部52が過度に押圧され、ロックアーム50が過度撓みしようとする際に、ロックアーム50の下面50Aが雌型外導体44に当接することで、ロックアーム50が過度撓みしないようになっている。すなわち、ロックアーム50の撓み空間Sに過度撓み防止用の部材を別途設ける必要がなく、キャビティ43内に収容された雌型外導体44がロックアーム50の過度撓みを防止することができるようになっている。
【0037】
本実施形態のコネクタ10は上記のような構造であって、続いて雄ハウジング20と雌ハウジング40とを嵌合させる手順を説明すると共に、その作用効果を説明する。
まず、雄型内導体26及び雄型外導体24が装着された雄ハウジング20と雌型内導体及び雌型外導体44が装着された雌ハウジング40と準備し、図5及び図6に示すように、雄ハウジング20と雌ハウジング40とを向かい合わせにする。そして、雄ハウジング20の位置決め凹部27に雌ハウジング40の位置決めリブ41Bを嵌め合せるように位置決めして、雄ハウジング20のフード部21内に雌ハウジング40の端子収容部41を嵌合させる。この嵌合過程において、雌ハウジング40のロック爪51は、フード部21のロック部29と当接し、ロック爪51の傾斜面51Aとフード部21のロック部29とが押し合うことで、ロックアーム50が下方に撓み変形し、図8に示すように、ロック爪51がロック部29に乗り上げてフード部21内に入り込む。そして、両ハウジング20,40が正規の嵌合位置に至ると、図7及び図9に示すように、ロック爪51が貫通孔28に収容されてロックアーム50が弾性復帰し、ロック爪51の係止面51Bとロック部29の被係止面29Aとが係止可能となる。これにより、両ハウジング20,40が嵌合状態にロックされる。
【0038】
このように、本実施形態によると、端子収容部41の天井壁41Aをロックアーム50として機能させ、このロックアーム50をロックアーム50の下面50Aと雌型外導体44との間に生じた撓み空間Sに撓み変形させることで、ロック部29の被係止面29Aとロック爪51の係止面51Bとを係止可能な状態にして、両ハウジング20,40を嵌合状態にロックすることができる。したがって、従来型のコネクタのように、端子収容部41の外周にロックアームやロックアームの撓み空間を別途設ける必要がなく、雌ハウジング40を小型化することができる。ひいては、コネクタ10を小型化することができる。
【0039】
また、雄ハウジング20においては、フード部21に貫通孔28を設けて、この貫通孔28の内面(ロック部29の被係止面29A)にロック爪51の係止面51Bを係止させることができるので、フード部21の天井壁21Aに爪状のロック突起を設けてロック突起とロック爪51とを係止させる場合に比べて、ロック突起の高さ寸法の分だけ雄ハウジング20を小型化することができる。
更に、ロックアーム50に端子係止部53を突設することで、雌型外導体44を係止する可撓性ランスとして機能させているので、キャビティ43内に撓み変形可能なランスなどを別途形成する場合に比べて、雌ハウジング40を小型化することができる。
【0040】
次に、雄ハウジング20と雌ハウジング40との嵌合状態をロック解除する手順について説明する。
嵌合状態にロックされた両ハウジング20,40を離脱させる際には、ロックアーム50のロック解除部52を下方へ押圧して、ロックアーム50を下方に撓み変形させ、ロック爪51の係止面51Bとロック部29の被係止面29Aとの係止状態を解除する。そして、この状態のまま、両ハウジング20,40を引き離すことで嵌合状態にロックされた両ハウジング20,40を離脱させる。ここで、ロック解除の操作の際に、ロック解除部52が過度に押圧されるとロックアーム50が過度撓みすることで、ロックアーム50が破損してしまう虞があるが、本実施形態によると、ロックアーム50の下面50Aが雌型外導体44の雌型接続筒部45に当接し、ロックアーム50が過度撓みすることを防止することができる。このように、本実施形態によると、キャビティ43内に配された雌型外導体44によってロックアーム50の過度撓みを防止することができるので、過度撓み防止用の部材を別途設けるためにキャビティ43を大きく形成する必要がなく、雌ハウジング40を更に小型化することができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図10乃至図12を参照して説明する。
実施形態2は、実施形態1における雌ハウジング40のロックアーム50の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0042】
実施形態2の雌ハウジング60における端子収容部41の天井壁41Aには、図10及び図11に示すように、U字状のスリット61がキャビティ43まで貫通するように設けられている。すなわち、実施形態2のロックアーム62は、天井壁41Aに後端部のみが支持された片持ち状に形成され、図12に示すように、ロックアーム62の前端部がキャビティ43の撓み空間Sに収容されるようになっている。また、スリット61は、端子収容部41の前後方向略中央部から端子収容部41の後端部よりやや前方の位置までの領域に亘って形成されており、ロックアーム62の長さ寸法は、実施形態1のロックアーム50における前後方向の長さ寸法と比べて約半分に設定されている。これにより、ロックアーム62は、片持ち状にしたことで下方に撓み易くなると共に、前後方向の長さ寸法を短くすることで剛性を向上させた形態となっている。
【0043】
また、ロックアーム62のロック解除部63は、ロック爪51の後方に設けられた平坦なロックアームの上面とされている。したがって、ロック爪51とロック部29の被係止面29Aとの係止状態を解除する際には、ロックアーム62におけるロック爪51の後方に位置するロック解除部63を下方に押圧することで、ロック爪51とロック部29の被係止面29Aとの係止状態を解除するようになっている。
また、ロックアーム62が下方に過度に押圧されると、ロックアーム62の下方に突出して設けられた端子係止部53が雌型外導体44のワイヤバレル46と当接するように設定されており、雌型外導体44のワイヤバレル46がロックアーム62の過度撓みを防止することができるようになっている。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、雌ハウジング40の天井壁41Aに三本のスリット49を設けることでロックアーム50を形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、天井壁41Aにスリット49を二本や四本設けることでロックアームを形成してもよい。
(2)上記実施形態2では、ロックアーム62のロック解除部63をロックアーム62の平坦な上面として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロックアーム62の上面に上方に突出するロック解除部を設けた構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、ロックアーム50,62の撓み空間Sをキャビティ43の内面と雌型外導体44の繋ぎ部47との間に生じる隙間によって構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、撓み空間Sをキャビティ43の内面とワイヤバレル46及びインシュレーションバレル48との間に生じる隙間によって構成してもよい。
(4)上記実施形態では、ロックアーム50を中心にロック爪51と端子係止部53とが上下方向に対称的な位置に設けられた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロック爪を端子係止部53よりも後方にずらした位置に設けてもよく、端子係止部をロック爪51よりも後方にずらした位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:コネクタ
20:雄ハウジング(第一ハウジング)
21:フード部
28:貫通孔
29:ロック部(被係止部)
40:雌ハウジング(第二ハウジング)
41:端子収容部
43:キャビティ
44:雌型外導体(端子金具)
45:雌型接続筒部(接続筒部)
46:ワイヤバレル(幅狭部)
47:繋ぎ部(幅狭部)
48:インシュレーションバレル(幅狭部)
49,61:スリット
50,62ロックアーム
51:ロック爪(係止部)
52,63ロック解除部
53:端子係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第一ハウジングと第二ハウジングとを有して、第一ハウジングに設けられた係止部と第二ハウジングに設けられた被係止部とを係止することで両ハウジングを嵌合状態にロックするコネクタであって、
第一ハウジングに設けられ端子金具を収容可能なキャビティを有する端子収容部と、第二ハウジングに設けられ前記端子収容部を内部に嵌合可能なフード部とを備えて構成されており、
前記端子収容部には、同端子収容部の外壁に前記キャビティまで貫通するスリットを設けることで嵌合方向と交差する方向に撓み変形可能なロックアームが形成されており、
前記係止部は、前記ロックアームから外方に突出して設けられている一方、前記被係止部は、前記係止部と係止するように前記フード部に設けられており、
前記係止部と前記被係止部とは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合過程において当接して押し合うことで、前記ロックアームが前記キャビティ内に撓み変形して前記係止部が前記被係止部に乗り上げ、前記両ハウジングが正規嵌合に至ると前記係止部が前記被係止部を乗り越えて前記ロックアームが弾性復帰することで互いに係止することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロックアームには、押圧操作することで前記ロックアームを前記キャビティ内に撓み変形させて、前記係止部と前記被係止部とのロック状態を解除するロック解除部が設けられており、
前記ロックアームは、前記ロック解除部が過度に押圧された際に、前記キャビティ内の前記端子金具に当接することを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フード部の開口縁部には、前記嵌合方向と交差する方向に貫通する貫通孔が設けられており、
前記被係止部は、前記フード部において前記貫通孔から前方に位置して前記貫通孔の内面を含んだ前記開口縁部であることを特徴とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子金具は、筒状の接続筒部と、この接続筒部の後方に位置して前記接続筒部よりも幅狭に形成された幅狭部を備えて構成されており、
前記ロックアームの下方には、前記キャビティ内における前記端子金具の前記幅狭部が配されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロックアームの前記キャビティ側の面には、前記端子金具を係止する端子係止部が突設されており、
前記キャビティ内に前記端子金具を挿入する際に前記端子係止部が前記端子金具に押圧されて前記ロックアームが外方に撓み変形することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−238550(P2012−238550A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108333(P2011−108333)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】