説明

コネクタ

【課題】電子部品を熱によって損傷させることなく、電子部品と端子金具との接続信頼性を確保する。
【解決手段】平板状の金属製の母材をプレス加工することで形成されたアース側端子32が接続されたコンデンサ20を合成樹脂製のコネクタハウジング50に収容してなるコネクタ10であって、アース側端子32に母材の板厚寸法よりも薄肉に設けられ、コンデンサ20に設けられたアース側電極21Bに半田付けにより接続される接続頭部38と、アース側端子32に接続頭部38よりも狭小で撓み変形可能に設けられ、接続頭部38から延びる首部39と、コネクタハウジング50にコンデンサ20のアース側電極21Bとアース側端子32の接続頭部38とを一体に覆うように設けられたモールド部53とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が内蔵されたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品であるコンデンサが内蔵されたコネクタとして特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタは、車両の後部ガラスに装備されたデフォッガをラジオなどのアンテナと共用する場合にノイズ防止用のコンデンサをデフォッガの電源線の経路途中に介在させるために用いられる。このコネクタは、コンデンサの両端部に設けられた一対の電極に接続された一対の端子金具と、コンデンサ及び両端子金具を収容した合成樹脂製のコネクタハウジングとを備えて構成されている。このコネクタは、例えば、一方の端子金具が車両のデフォッガに接続され、他方の端子金具が車両の車体パネルにボルト固定されることで、デフォッガをコンデンサを介して車体パネルにアース接続している。このようにすることで、デフォッガのスイッチのON/OFF時に発生するノイズを抑制している。
【0003】
また、コンデンサの電極と端子金具に設けられた接続部とは、例えば、接続部に半田コテのコテ先を当てて接続部を加熱し、接続部に半田を押し当てて半田を溶融させて半田付けすることで接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−173414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では環境に対する配慮から、半田の鉛フリー化が進んでいる。鉛フリー半田は鉛入り半田よりも融点が高いため、半田が溶融し難い。そのため、接続部が十分に加熱されていないと、完全に溶融していない状態の半田によって電極と接続部とが接続されてしまい、半田の内部に小さな隙間(ボイド)が生じてしまう。そして、ヒートショック試験などによって半田部分に急激な温度変化によるストレスが与えられると、ボイドに起因したクラックが半田部分に生じ、電極と接続部との接続信頼性が低下してしまう。
【0006】
この対策としては、接続部の加熱時間を長くして接続部を十分に加熱することにより、半田を完全に溶融させてボイドの発生を抑制する方法が考えられるが、接続部の加熱時間を長くすると、接続部に接しているコンデンサなどの電子部品も長く加熱されることになるため、電子部品が熱によって損傷する虞がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電子部品を熱によって損傷させることなく、電子部品と端子金具との接続信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、平板状の金属製の母材をプレス加工することで端子金具が形成され、この端子金具に接続された電子部品を合成樹脂製のコネクタハウジングに収容してなるコネクタであって、前記端子金具に前記母材の板厚寸法よりも薄肉に設けられ、前記電子部品に設けられた電極に半田付けにより接続される接続頭部と、前記端子金具に前記接続頭部よりも狭小で撓み変形可能に設けられ、前記接続頭部から延びる首部と、前記コネクタハウジングに前記電子部品の電極と前記端子金具の前記接続頭部とを一体に覆うように設けられたモールド部とを備えているところに特徴を有する。
【0009】
端子金具の接続頭部と電子部品の電極とを接続するには、例えば、接続頭部の半田付けされる部分とは反対側の部分に半田コテのコテ先を当てて接続頭部を加熱し、接続頭部に半田を押し当てて半田を溶融させることで、接続頭部と電極とを半田付けによって接続する。また、フーリエの法則によると、厚さ寸法L[m]、断面積A[m]の区間(L×A[m])を移動する熱量ΔQ[J]は、熱伝導率k[W/mK]、温度差ΔT[K]、時間t[s]としたとき、ΔQ=(k×A×ΔT×t)/Lとして表わすことができる。すなわち、厚さ寸法Lを小さくすることで、物体内部を移動する熱量ΔQを大きくすることができ、断面積Aを小さくすることで、物体内部を移動する熱量ΔQを小さくすることができる。
したがって、上記のような構成によると、接続頭部の板厚が母材の板厚よりも薄肉に形成されており、接続頭部内を伝わる熱量は薄肉にしていないものに比べて大きくなるので、接続頭部の半田付けされる部分の温度を短時間で上昇させることができる。
また、首部を接続頭部よりも狭小にしたことで首部の断面積は接続頭部の断面積よりも小さく形成されており、首部を伝わる単位時間あたりの熱量は首部が幅広なものに比べて小さくなるので、接続頭部の熱が首部を通して放熱することを低減することができる。以上のように、本発明によると、接続頭部の加熱時間を長くすることなく、接続頭部を十分に加熱することができると共に、接続頭部の熱が逃げることを低減することができるので、半田を十分に溶融させて半田の内部にボイドを生じさせることなく、電極と接続頭部とを半田付けによって接続することができる。これにより、電子部品を熱によって損傷させることなく、電子部品と端子金具との接続信頼性を確保することができる。
【0010】
また、ヒートショック試験などにより、コネクタ10に対して加熱と冷却とが行われると、金属と樹脂との線膨張係数の違いにより、モールド部は、端子金具や半田に比べて、大きく熱膨張したり、大きく熱収縮したりする。このため、モールド部に覆われた接続頭部及び電極にはコネクタハウジングの変形に伴う応力が集中し、半田に亀裂や割れなどが発生する虞がある。その点、上記のような構成によると、首部をモールド部の変形に伴って撓み変形させることができるので、半田に応力が集中することを抑制し、半田に亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0011】
本発明の実施の態様として、以下の構成が望ましい。
前記接続頭部は、叩き加工することで前記電子部品の前記電極に接続される面が叩き加工する前に比べて大きく形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、接続頭部が突起状や凹凸状のものに比べて、電極に接続する面積を大きくすることができるので、電極と接続頭部とをより確実に接続させ、電極と接続頭部との接続信頼性をより確かなものとすることができる。
【0012】
前記接続頭部は、円形平板状をなしている構成としてもよい。
このような構成によると、接続頭部が円形状に形成されているので、ヒートショック試験などによって接続頭部がモールド部から受ける力(接続頭部を撓み変形させようとする力)を特定の場所に集中させることなく接続頭部全体に分散させることができるので、接続頭部が角部を有する矩形状に形成される場合に比べて、接続頭部に被着した半田に亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0013】
前記電子部品はコンデンサであって、前記端子金具は、一端が接地部分に接続され他端が前記コンデンサに接続された鉄製のアース側端子を備えて構成されており、前記接続頭部は前記アース側端子に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、銅に比べて熱伝導率の小さい鉄製のアース側端子においても接続頭部を長い時間加熱することなく接続頭部を十分に加熱することができるので、半田内部にボイドを生じさせることなくコンデンサの電極と接続頭部とを半田付けによって接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子部品を熱によって損傷させることなく、電子部品と端子金具との接続信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】アース側端子の平面図
【図2】同正面図
【図3】図1のIII−III線断面図
【図4】図2のIV−IV線で切断した状態を示す要部拡大断面図
【図5】コンデンサにアース側端子と電線側端子とが接続された状態を示す平面図
【図6】同側面図
【図7】コンデンサに接続されたアース側端子及び電線側端子がコネクタハウジングに装着された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図7によって説明する。
本実施形態は、電子部品としてコンデンサ20を用いたコンデンサが内蔵されたコネクタ10を例示している。
【0017】
このコネクタ10は、車両に装着された図示しないデフォッガをコンデンサを介してアース接続し、デフォッガのスイッチのON/OFF時に発生するノイズを抑制するものである。
【0018】
コネクタ10は、図7に示すように、前後方向に延びるコンデンサ20と、このコンデンサ20の前端部に設けられた電線側電極21Aに接続される電線側端子31と、コンデンサ20の後端部に設けられたアース側電極21Bに接続されるアース側端子32(本発明の「端子金具」の一例)と、コンデンサ20を収容可能な合成樹脂製のコネクタハウジング50と、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20を一体に覆うモールド部53とを備えて構成されている。なお、コンデンサ20と電線側端子31及びアース側端子32との接続部分を分かりやすくするために、図5については半田Hを省略している。
【0019】
コンデンサ20は、図5および図6に示すように、前後方向に延びる略円柱状をなし、コンデンサ用蒸着フィルムを巻回したフィルムコンデンサである。コンデンサ20の前後方向両端部に位置する電線側電極21A及びアース側電極21Bは、メタリコン金属を溶射することで表面が平坦に形成されている。
【0020】
電線側端子31は、図6及び図7に示すように、銅又は銅合金製の平板をL字状に折り曲げた形態をなしている。電線側端子31の前端部には、図5に示すように、左右方向に並んだ一対のタブ部31Aが形成されている。両タブ部31Aは、デフォッガに接続された図示しない相手方コネクタとコネクタ10とが嵌合する際に、相手方コネクタに設けられた図示しない雌型端子金具に挿入されることで、雌型端子金具と導通可能に接続される。
電線側端子31の後端部は、図6及び図7に示すように、コンデンサ20の電線側電極21Aに半田付けすることで導通可能に接続されている。なお、本実施形態において、半田Hは、環境に対する配慮から、鉛が使用されていない鉛フリーの半田Hを使用している。
【0021】
アース側端子32は、冷間圧延鋼板(SPC鋼板)製の平板状の母材をプレス加工して、折り曲げ加工することで形成されており、図1ないし図3に示すように、前後方向に延びる平板状の端子本体部33と、端子本体部33から上方に向かって立ち上るコンデンサ取付部34とを備えて構成されている。
【0022】
端子本体部33の前後方向略中央部よりも後方部は、車両の図示しない車体パネルに固定される固定部35とされており、固定部35には上下方向に貫通するボルト挿通孔36が設けられている。このボルト挿通孔36には、図示しない固定ボルトが挿通され、車体パネルに固定ボルトを締め込むことで、固定部35が車体パネルに導通可能に接続される。これにより、アース側端子32が車体パネルに対してアース接続される。
【0023】
また、固定部35の後端部には、下方に向かって折り曲げられた係止片37が設けられている。この係止片37は、固定部35を車体パネルにボルト固定する際に、車体パネルに設けられた図示しない係止孔に挿入されて係止孔の内面と係止することで、アース側端子32が固定ボルトにつられて回転することを防止する役割を果たす。
【0024】
コンデンサ取付部34は、端子本体部33の前後方向略中央部よりもやや前方の位置から前方に向かって延出された延出片を上方に向かって折り曲げることで、図3及び図7に示すように、端子本体部33の板面に対してほぼ垂直となるように形成されている。また、コンデンサ取付部34は、コンデンサ20のアース側電極21Bに半田付けによって導通可能に接続される接続頭部38と、接続頭部38の下方に位置する首部39とを備えて構成されている。
【0025】
接続頭部38は、図2及び図3に示すように、長円形平板状をなし、後面に半田コテのコテ先を当てて、接続頭部38を加熱し、接続頭部38の前面とコンデンサ20のアース側電極21Bとを接続する部分に半田Hを押し当て、半田Hを溶融させて半田付けすることでアース側電極21Bと導通可能に接続される。
【0026】
首部39は、上下方向に延びた略角柱状をなし、端子本体部33と接続頭部38とを連結するように端子本体部33及び接続頭部38と一体に形成されている。
【0027】
コネクタハウジング50は、図7に示すように、前後方向に開口する箱型状をなし、コネクタハウジング50の前後方向略中央部には隔壁51が設けられている。
【0028】
コネクタハウジング50の隔壁51よりも前方は、相手方コネクタが嵌合可能とされ、コネクタハウジング50の隔壁よりも後方は、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20が収容可能なコンデンサ収容空間52とされている。
【0029】
このコンデンサ収容空間52には、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20がコネクタハウジング50の後端開口から挿入され、コンデンサ20が正規の位置まで挿入された際には、図7に示すように、電線側端子31のタブ部31Aが隔壁51を前後方向に貫通した状態で、隔壁51に保持された状態となっている。
【0030】
また、コンデンサ収容空間52には、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20が正規の位置まで挿入された後に、コンデンサ収容空間52が上方に向かって開口するようにコネクタハウジング50を配置し、溶融したエポキシ樹脂がコネクタハウジング50の後端面と面一になる位置まで充填される。このようにして、電線側電極21Aと電線側端子31とが半田付けによって接続された部分と、アース側電極21Bとアース側端子32とが半田付けによって接続された部分とは、エポキシ樹脂が硬化したモールド部53によって一体に覆われている。
【0031】
さて、アース側端子32のコンデンサ取付部34における接続頭部38は、後面が叩き加工されることで、図2に示すように、首部39に比べて左右方向に大きく広がった形態をなしている。すなわち、コンデンサ20のアース側電極21Bに接続される面(前面)は、首部39の前面に比べて左右方向に大きく形成されている。接続頭部38の前面は、図5及び図7に示すように、平坦に形成されており、コンデンサ20のアース側電極21Bに面接触可能とされている。また、接続頭部38は、下端から上端に向かうにつれて次第に薄肉となるように形成されており、接続頭部38の後面は前方に傾斜した形態をなしている。また、接続頭部38の後面における外周縁部は叩き形成されることで、ほぼ全周に亘って丸みを帯びた形態に形成されている。
【0032】
一方、コンデンサ取付部34における首部39は、図2に示すように、接続頭部38よりもくびれた形状をなし、接続頭部38に比べて狭小に形成されている。また、首部39は、前後左右に撓み変形可能に設けられている。また、首部39の上下方向略中央部は、左右方向両側に位置する後方側の角部が叩き加工されることで、図4に示すように、断面蒲鉾状に形成されており、首部39の上下方向略中央部は首部39の上端部及び下端部に比べて更に狭小化されている。すなわち、図1に示すように、首部39の断面積は、接続頭部38の下端部の断面積に比べて約半分以下の面積に設定されている。また、首部39の前面は、接続頭部38の前面(コンデンサ20のアース側電極21Bに接続される面)と面一状態に形成されている。
【0033】
本実施形態は以上のような構成であって、続いて、コンデンサ20にアース側端子32を接続する方法を説明すると共に、作用効果について説明する。また、完成後のコネクタ10における作用効果についても併せて説明する。
【0034】
コンデンサ20のアース側電極21Bにアース側端子32の接続頭部38を接続するには、接続頭部38の前面にコンデンサ20のアース側電極21Bを接触させた状態で、接続頭部38の後面に半田コテのコテ先を当てて接続頭部38を加熱する。次に、接続頭部38の前面とアース側電極21Bとを接続する部分に半田Hを押し当てて、半田Hを溶融して半田付けすることで、接続頭部38とアース側電極21Bとを導通可能に接続する。このとき、接続頭部38の前面(コンデンサ20のアース側電極21Bに接続される面)の温度が十分に温まっていないと、鉛フリーの半田Hは鉛入りの半田に比べて融点が高いため、半田Hが完全に溶融せず、半田の内部にボイドが発生してしまう。また、アース側端子32は、銅または銅合金製である電線側端子31に比べて熱伝導率の小さい鉄製の鋼板から形成されているので、電線側端子31に比べて、接続頭部38の前面を加熱する時間が長くなる傾向にある。
このような場合、半田コテによる接続頭部38の加熱時間を長くし、半田Hを完全に溶融させることでボイドの発生を抑制する方法が考えられるが、接続頭部38の加熱時間を長くすると、コンデンサ20のアース側電極21Bも長く加熱されることになり、コンデンサ20が熱によって損傷する虞がある。
【0035】
その点、本実施形態によると、接続頭部38の板厚は叩き加工されることで、叩き加工する前に比べて薄肉に形成されている。そして、フーリエの法則によると、厚さ寸法L[m]、断面積A[m]の区間(L×A[m])を移動する熱量ΔQ[J]は、熱伝導率k[W/mK]、温度差ΔT[K]、時間t[s]としたとき、ΔQ=(k×A×ΔT×t)/Lとして表わすことができ、厚さ寸法Lを小さくすることで、物体内部を移動する熱量ΔQを大きくすることができる。したがって、接続頭部38を伝わる熱量は接続頭部38が叩き加工する前のものに比べて大きくなるので、接続頭部38の前面(コンデンサ20のアース側電極21Bに接続される面)の温度を短時間で上昇させることができる。
また、首部39を接続頭部38よりも狭小にしたことで首部39の断面積は接続頭部38の下端部における断面積の約半分の大きさに形成されている。そして、上記に示したフーリエの法則によると、断面積Aを小さくすることで、物体内部を移動する熱量ΔQを小さくすることができる。したがって、首部39を伝わる熱量は首部39の断面積が接続頭部38の下端部と同じ大きさのものに比べて約半分になるので、接続頭部38の熱が首部39を通して端子本体部33へ放熱されることを低減することができる。このように、接続頭部38の加熱時間を長くすることなく、接続頭部38を十分に加熱することができると共に、接続頭部38の熱が首部39を通して端子本体部33へ逃げることを低減させることができるので、半田Hを十分に溶融させて半田H内にボイドを生じさせることなく、アース側電極21Bと接続頭部38を半田付けすることができる。すなわち、コンデンサ20を熱によって損傷させることなく、コンデンサ20とアース側端子32との接続信頼性を確保することができる。
また、首部39の上下方向略中央部は、上端部及び下端部に比べて更に狭小化されているので、接続頭部38の熱が首部39を通して端子本体部33へ放熱されることを更に低減することができる。
【0036】
コンデンサ20と電線側端子31及びアース側端子32とが接続されたところで、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20をコネクタハウジング50のコンデンサ収容空間52に正規の位置まで挿入する。そして、コンデンサ収容空間52が上方に向かって開口するようにコネクタハウジング50を配置し、溶融したエポキシ樹脂をコネクタハウジング50の後端面と面一になる位置まで充填し、両電極21A,21Bと電線側端子31及びアース側端子32とが半田付けによって接続された部分をモールド部53で一体に覆うことで、コネクタ10が完成する。
この過程において、溶融したエポキシ樹脂は、硬化する際に熱収縮し、接続頭部38及びアース側電極21B部分には熱収縮に伴う応力が集中するため、半田Hには亀裂や割れなどが発生する虞がある。しかしながら、本実施形態によると、首部39をエポキシ樹脂の熱収縮による変形に伴って撓み変形させることができるので、半田Hに応力が集中することを抑制し、半田Hに亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0037】
また、コネクタ10をヒートショック試験などの加熱と冷却とが行われる試験に供すると、金属と樹脂との線膨張係数の違いにより、ポッティング剤が硬化収縮するときと同様、接続頭部38及びアース側電極21B部分にはモールド部53の変形に伴う応力が集中する。この場合においても、首部39がモールド部53の変形に伴って撓み変形することで、半田Hに応力が集中することを抑制し、半田Hに亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0038】
以上のように、本実施形態によると、接続頭部38の後面に半田コテのコテ先を当てて接続頭部38を加熱し、接続頭部38とアース側電極21Bとを半田付けによって接続する際に、接続頭部38の加熱時間を長くすることなく、接続頭部38を十分に加熱することができると共に、接続頭部38の熱が首部39を通して端子本体部33側に逃げることを低減させることができる。これにより、半田Hを十分に溶融させて半田H内にボイドを生じさせることなく、アース側電極21Bと接続頭部38を半田付けすることができ、コンデンサ20を熱によって損傷させることなく、コンデンサ20とアース側端子32との接続信頼性を確保することができる。また、モールド部53が熱膨張及び熱収縮することにより、接続頭部38とアース側電極21Bとを接続する半田Hに応力が集中することになるが、首部39がモールド部53の変形に伴って撓み変形することで、半田Hに亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0039】
また、接続頭部38は、後面が叩き加工されることで、コンデンサ20のアース側電極21Bに接続される面(前面)が、首部39の前面に比べて左右方向に大きく形成され、接続頭部38の前面は平坦に形成されているので、アース側電極21Bと接続頭部38とをより確実に接続させ、電極と接続頭部との接続信頼性をより確かなものとすることができる。
【0040】
また、接続頭部38は、円形平板状をなしているので、ヒートショック試験などによって接続頭部38がモールド部53から受ける力(接続頭部38を撓み変形させようとする力)を特定の場所に集中させることなく接続頭部全体に分散させることができるので、接続頭部が角部を有する矩形状に形成される場合に比べて、接続頭部に被着した半田Hに亀裂や割れなどが発生することを抑制することができる。
【0041】
更に、鋼板によって形成されたアース側端子32は、銅に比べて熱伝導率の小さいことから接続頭部38を長く加熱する傾向にあるが、本実施形態によれば、母材から切り出されたままのものに比べて、接続頭部38の加熱時間を長くすることなく、接続頭部38を十分に加熱することができると共に、接続頭部38の熱が首部39を通して端子本体部33側に逃げることを低減させることができるので、半田Hを十分に溶融させてアース側電極21Bと接続頭部38とを半田付けする際に有効である。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電子部品としてコンデンサ20を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、抵抗器などについても適用できる。
(2)上記実施形態では、コンデンサ取付部34をアース側端子32に設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、電線側端子31にコンデンサ取付部34を設けてもよい。
【0043】
(3)上記実施形態では、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20をコンデンサ収容空間52に挿入した後、エポキシ樹脂を充填することでモールド部53を形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、電線側端子31及びアース側端子32が接続されたコンデンサ20をインサート成形することによりモールド部53とコネクタハウジング50とが一体に成形された構成としてもよい。
(4)上記実施形態では、アース側端子32をSPC鋼板をプレス加工して構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、アース側端子32を銅板又は銅合金板をプレス加工して構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 :コネクタ
20 :コンデンサ(電子部品)
21A:電線側電極
21B:アース側電極
32 :アース側端子(端子金具)
38 :接続頭部
39 :首部
50 :コネクタハウジング
53 :モールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の金属製の母材をプレス加工することで端子金具が形成され、この端子金具に接続された電子部品を合成樹脂製のコネクタハウジングに収容してなるコネクタであって、
前記端子金具に前記母材の板厚寸法よりも薄肉に設けられ、前記電子部品に設けられた電極に半田付けにより接続される接続頭部と、
前記端子金具に前記接続頭部よりも狭小で撓み変形可能に設けられ、前記接続頭部から延びる首部と、
前記コネクタハウジングに前記電子部品の電極と前記端子金具の前記接続頭部とを一体に覆うように設けられたモールド部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記接続頭部は、叩き加工することで前記電子部品の前記電極に接続される面が叩き加工する前に比べて大きく形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接続頭部は、円形平板状をなしていることを特徴とする請求項1または至請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記電子部品はコンデンサであって、
前記端子金具は、一端が接地部分に接続され他端が前記コンデンサに接続された鉄製のアース側端子を備えて構成されており、
前記接続頭部は前記アース側端子に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238710(P2012−238710A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106453(P2011−106453)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】