説明

コネクタ

【課題】インナーハウジングの外形寸法を抑えて、小型化を図ることのできるコネクタを提供すること。
【解決手段】インナーハウジング10を構成するハウジング分割体20,30相互を係合合体させる手段として、一方のハウジング分割体に装備されて、他方のハウジング分割体において隣接する端子収容部13間に挿入される係合片22と、他方のハウジング分割体における端子収容部13間に装備されて、挿入された係合片22に係合して、ハウジング分割体20,30相互を連結状態にする係止部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のハウジング分割体相互の係合合体によって複数の端子収容部がコネクタ嵌合方向に沿って貫通した構造に組み立てられるインナーハウジングと、このインナーハウジングの外周を覆うように前記インナーハウジングに嵌合装着されるアウターハウジングとを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、下記特許文献1に開示されたコネクタを示したものである。
図5に示したコネクタ101は、シールド電線103を接続するコネクタで、インナーハウジング110と、アウターハウジング140と、を備えている。
【0003】
シールド電線103は、2本の信号線104と、接地接続用のドレーン線105を有した構成である。
【0004】
インナーハウジング110は、2つのハウジング分割体121,131相互の係合合体によって、複数の端子収容部113がコネクタ嵌合方向(図5の矢印X方向)に沿って貫通した構造に組み立てられる。
【0005】
図示例のインナーハウジング110の場合、ハウジング分割体121は、シールド電線103の挿入側となる基端側の上部を開放部122としたハウジング本体である。開放部122には、複数の端子収容部113の基端側113aが、複数条の溝状に露出している。各端子収容部113の基端側113aには、予め、信号線104やドレーン線105を圧接接続する圧接端子が装着されていて、信号線104やドレーン線105を対応する圧接端子に割り込ませることで、各圧接端子にシールド電線103が接続された状態になる。
【0006】
図示例の場合、ハウジング分割体121に係合合体される他方のハウジング分割体131は、開放部122を開閉可能に覆うカバー部材である。ハウジング分割体121がハウジング分割体121の開放部122を覆うことで、各圧接端子に接続された信号線104やドレーン線105が、各端子収容部113内に押圧固定される。
【0007】
図示例の場合、ハウジング分割体121とハウジング分割体131とを係合合体させる手段として、ハウジング分割体131に装備された係合片133と、ハウジング分割体121に装備された係止部127とを備える。
【0008】
係合片133は、ハウジング分割体131の両側縁に垂設された弾性壁部133aと、この弾性壁部133aの先端に突設された係合突起部133bとを有している。弾性壁部133aは、ハウジング本体であるハウジング分割体121の両側壁124,125の内面に重なるように、延設されている。
【0009】
係止部127は、係合突起部133bが係合するように、ハウジング分割体121の両側壁124,125に形成された切欠である。
【0010】
アウターハウジング140は、略角筒状で、金属板により形成されている。このアウターハウジング140は、インナーハウジング110の外周を覆うように、インナーハウジングに嵌合装着される。このアウターハウジング140は、その側壁部から内方に突出した弾性接触片141が、一体形成されている。この弾性接触片141は、ハウジング分割体121の側面に形成された切欠窓部129からハウジング分割体121内のドレーン端子に接触することで、ドレーン端子と同電位になり、ハウジング分割体121の外周を電磁遮蔽する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−339891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記の特許文献1に記載のコネクタ101は、ハウジング分割体121とハウジング分割体131とを係合合体させる手段である係合片133と係止部127とが、それぞれのハウジング分割体の両外側部に設けられている。そのため、インナーハウジング110の幅寸法は、複数の端子収容部113の配置に必要な幅寸法の両側に、それぞれ、係合片133と係止部127との係合に必要な幅寸法を、加算した値となる。従って、これらの係合片133や係止部127の装備のために、インナーハウジング110の外形寸法(幅寸法)が増大し、その結果、コネクタ自体が大型化してしまうという問題が生じた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、インナーハウジングの外形寸法を抑えて、小型化を図ることのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)複数のハウジング分割体相互の係合合体によって複数の端子収容部がコネクタ嵌合方向に沿って貫通した構造に組み立てられるインナーハウジングと、このインナーハウジングの外周を覆うように前記インナーハウジングに嵌合装着されるアウターハウジングとを備え、
前記ハウジング分割体相互を係合合体させる手段として、
係合合体させる前記ハウジング分割体相互の一方に装備されて、他方のハウジング分割体において隣接する端子収容部間に挿入される係合片と、
他方のハウジング分割体における端子収容部間に装備されて、挿入された前記係合片に係合して、ハウジング分割体相互を連結状態にする係止部と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【0015】
(2)前記係合片及び係止部が、係合合体するハウジング分割体相互の嵌合方向に位置をずらした複数箇所に設けられていることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0016】
上記(1)の構成によれば、ハウジング分割体相互を係合合体させる手段である係合片と係止部とは、各ハウジング分割体において隣接する端子収容部間のスペースで係合を果たす。
【0017】
従って、インナーハウジングの幅寸法は、複数の端子収容部の配置に必要な幅寸法の両外側に、それぞれ、係合片と係止部との係合に必要な幅寸法を加算する必要がなくなる。そのため、インナーハウジングの外形寸法を抑えて、小型化を図ることができる。
【0018】
上記(2)の構成によれば、係合片と係止部との係合箇所が複数になっているため、ハウジング分割体相互の結合強度を向上させることができる。しかも、複数の係合箇所相互が、ハウジング分割体相互の嵌合方向に位置をずらしているため、ハウジング分割体相互の嵌合時に必要な挿入力を軽減することができ、インナーハウジングの組立性を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるコネクタによれば、ハウジング分割体相互を係合合体させる手段である係合片と係止部とは、各ハウジング分割体において隣接する端子収容部間のスペースで係合を果たす。
【0020】
従って、インナーハウジングの幅寸法は、複数の端子収容部の配置に必要な幅寸法の両外側に、それぞれ、係合片と係止部との係合に必要な幅寸法を加算する必要がなくなる。そのため、インナーハウジングの外形寸法を抑えて、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るコネクタの一実施形態の組立状態の斜視図である。
【図2】図1のコネクタにおけるインナーハウジングの分解斜視図である。
【図3】図2の第1ハウジング分割体に装備された係合片の配置を示す斜視図である。
【図4】図2の第2ハウジング分割体に装備された係止部の配置を示す斜視図である。
【図5】従来のコネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1〜図4は本発明に係るコネクタの一実施形態を示したもので、図1は一実施形態のコネクタの組立状態の斜視図、図2は図1のコネクタにおけるインナーハウジングの分解斜視図、図3は図2の第1ハウジング分割体に装備された係合片の配置を示す斜視図、図4は図2の第2ハウジング分割体に装備された係止部の配置を示す斜視図である。
【0024】
この一実施形態のコネクタ1は、IEEE1394規格に準拠した4ピンのシールドコネクタで、図1に示すように、シールド電線3の信号線やドレーン線に接続された接続端子(不図示)を収容保持するインナーハウジング10と、該インナーハウジング10の外周囲を覆うアウターハウジング40と、を備えている。
【0025】
インナーハウジング10は、図2に示すように、第1ハウジング分割体20と第2ハウジング分割体30との2つのハウジング分割体20,30相互の係合合体によって、4つの端子収容部13がコネクタ嵌合方向(図2の矢印X1に沿う方向)に沿って貫通した構造に構成されている。
【0026】
インナーハウジング10の4つの端子収容部13は、図1に示すように、上下2段、幅方向に2列に並ぶ。
【0027】
インナーハウジング10を構成する第1ハウジング分割体20と、第2ハウジング分割体30は、いずれも樹脂製である。
【0028】
これらの2つのハウジング分割体20,30は、インナーハウジング10を、前端部と、後端部の2つに分割したものである。
【0029】
インナーハウジング10の前端部を構成する第1ハウジング分割体20は、前端面に、相手コネクタの接続端子が挿入される端子導入用開口13aが、上下2段、幅方向に2列に形成されている。端子導入用開口13aは、端子収容部13の前端部を構成する。
【0030】
インナーハウジング10の後端部を構成する第2ハウジング分割体30は、シールド電線3の信号線やドレーン線に接続された接続端子(不図示)を収容保持する4つの端子収容孔13bが、上下2段、幅方向に2列に形成されている。端子収容孔13bは、端子収容部13の後端部を構成する。
【0031】
本実施形態の場合、2つのハウジング分割体20,30は、図2に矢印X1で示すコネクタ嵌合方向に沿って突き合わせることで、係合合体させる。
【0032】
本実施形態の場合、2つのハウジング分割体20,30を係合合体させる手段として、一方のハウジング分割体である第1ハウジング分割体20に装備された2つの係合片22と、他方のハウジング分割体である第2ハウジング分割体30に装備された2つの係止部32と、を備える。
【0033】
2つの係合片22は、図3に示すように第1ハウジング分割体20に一体形成されたリブ23の両面に1つずつ、設けられている。リブ23は、第1ハウジング分割体20の幅方向に隣接する一対の端子導入用開口13a間から、コネクタ嵌合方向に沿って延出し、第2ハウジング分割体30において幅方向に隣接する端子収容孔13b間に挿入される隔壁状である。
【0034】
各係合片22は、リブ23から第1ハウジング分割体20の幅方向(図3の矢印Y1方向)に突出した係合突起で、コネクタ嵌合方向の先端面には、傾斜した案内面22aが設けられている。
【0035】
2つの係合片22は、リブ23と一体に、第2ハウジング分割体30において幅方向に隣接する端子収容孔13b間に挿入される。本実施形態の場合、2つの係合片22は、図3に示すように、ハウジング分割体相互の嵌合方向に位置をずらした2箇所に設けられている。図3に示した寸法L1は、2つの係合片22におけるハウジング分割体相互の嵌合方向におけるずれ量である。
【0036】
係止部32は、他方のハウジング分割体である第2ハウジング分割体30において幅方向(図4の矢印Y2方向)に隣接する端子収容孔13b間に装備されている。更に、詳しく説明すると、第2ハウジング分割体30において幅方向に隣接する端子収容孔13b間には、図4に示すように、リブ23及び係合片22が挿入可能な隙間33が、コネクタ嵌合方向に沿って形成されている。
【0037】
隙間33は、第2ハウジング分割体30の幅方向に対向する一対の隔壁34によって区画形成されている。そして一対の隔壁34には、リブ23が隙間33に対して挿入完了したときにリブ23上の各係合片22が係合するように、係止部32が設けられている。本実施形態の場合、係止部32は、図4に示すように、係合片22が係合する切欠穴で、係合片22が係合することによって、ハウジング分割体相互を連結状態にする。
【0038】
一対の隔壁34に形成された2つの係止部32は、第1ハウジング分割体20における係合片22の配置に対応して、ハウジング分割体相互の嵌合方向に位置をずらした配置になっている。
【0039】
アウターハウジング40は、略角筒状で、インナーハウジング10の外周を覆うように、インナーハウジングに嵌合装着される。このアウターハウジング40は、インナーハウジング10の外周を電磁遮蔽するシールド構造を備えている。
【0040】
以上に説明した一実施形態のコネクタ1では、ハウジング分割体20,30相互を係合合体させる手段である係合片22と係止部32とは、各ハウジング分割体において隣接する端子収容部13間のスペースである隙間33内で係合を果たす。
従って、インナーハウジング10の幅寸法は、複数の端子収容部の配置に必要な幅寸法の両外側に、それぞれ、係合片22と係止部32との係合に必要な幅寸法を加算する必要がなくなる。そのため、インナーハウジング10の外形寸法を抑えて、小型化を図ることができる。
【0041】
また、以上に説明した一実施形態のコネクタ1では、係合片22と係止部32との係合箇所が複数になっているため、各係合箇所における結合強度が加算された大きな結合強度を得ることができ、ハウジング分割体20,30相互の結合強度を向上させることができる。しかも、複数の係合箇所相互が、ハウジング分割体20,30相互の嵌合方向に位置をずらしているため、ハウジング分割体20,30相互の嵌合時に必要な挿入力を軽減することができ、インナーハウジング10の組立性を向上させることもできる。
【0042】
なお、本発明のコネクタは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。また、本発明のコネクタを構成する各部品の材質、形状、寸法等は、本発明の目的を達成できるものであれば、任意であり、前述した各実施形態に限定されない。
【0043】
例えば、係合片22及び係止部32の装備数は、上記実施形態に限らない。また、上記実施形態の場合とは逆に、第2ハウジング分割体に係合片22を装備し、第1ハウジング分割体に係止部32を設けた構造とすることも可能である。
【0044】
また、本発明のインナーハウジングを複数のハウジング分割体に分割する際の分割する位置や、分割数は、上記実施形態に限らない。例えば、インナーハウジングを、3つ以上の複数のハウジング分割体の係合合体により形成することもできる。また、インナーハウジングの分割は、上記実施形態のように、前後に複数のハウジング分割体に分割する形態に限るものではなく、上下に複数のハウジング分割体に分割した形態とすることもできる。
【0045】
更に、上記実施形態において例示した係合片22や係止部32の形状や配置箇所等は、本発明の目的を達成できるものであれば、任意であり、前述した各実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1 コネクタ
3 シールド電線
10 インナーハウジング
13 端子収容部
13a 端子導入用開口(端子収容部)
13b 端子収容孔(端子収容部)
20 第1ハウジング分割体(ハウジング分割体)
22 係合片
23 リブ
30 第2ハウジング分割体(ハウジング分割体)
32 係止部
33 隙間
40 アウターハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハウジング分割体相互の係合合体によって複数の端子収容部がコネクタ嵌合方向に沿って貫通した構造に組み立てられるインナーハウジングと、このインナーハウジングの外周を覆うように前記インナーハウジングに嵌合装着されるアウターハウジングとを備え、
前記ハウジング分割体相互を係合合体させる手段として、
係合合体させる前記ハウジング分割体相互の一方に装備されて、他方のハウジング分割体において隣接する端子収容部間に挿入される係合片と、
他方のハウジング分割体における端子収容部間に装備されて、挿入された前記係合片に係合して、ハウジング分割体相互を連結状態にする係止部と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記係合片及び係止部が、係合合体するハウジング分割体相互の嵌合方向に位置をずらした複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−54049(P2012−54049A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194470(P2010−194470)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】