説明

コネクタ

【課題】コンタクトの剛性を維持しつつ、コンタクト同士の弾性的な接触圧力を向上させて、電気的接続強度を向上させるとともにワイピング効果を高めることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】レセプタクル側接触部81は、先端の先端部81aと、先端部81aから斜め下方に延びて形成される第1接触部81bと、第1接触部と一体に繋がって下方に延びるとともに左右方向に折り曲げられて形成される第2接触部81cとからなり、第2接触部81cの前後方向の幅は第1接触部81bの前後方向の幅よりも狭く形成され、プラグ側接触部41が最初に第1接触部81bに当接しレセプタクルコンタクトが左右方向に弾性変形されることにより、プラグ側接触部41が第1接触部81bを乗り越えて第2接触部81cに当接するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部に接触部を有する導電材料製のコンタクトを備え、導電材料製の接続相手部材を上記コンタクトの接触部に接触させて、コンタクトの接触部が接続相手部材に弾性的に圧接して電気接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコネクタの一例として、例えば、雌型のレセプタクルコネクタ、及び雄型のプラグコネクタが存在するが、レセプタクルコネクタとプラグコネクタとからなるコネクタにおいては、プラグコネクタのプラグハウジングに形成された嵌合空間にレセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングに設けられたレセプタクルコンタクトを挿入嵌合させることにより、レセプタクルコンタクトとプラグコンタクトとの電気接続を行うように構成したものが周知となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端に接点部が隆起した弾性可変形部、当接部および固定部を有するコンタクトを備え、固定部がハウジングに一体に挿入されることでコンタクトが片持ち梁状に保持されているコネクタが開示されている。このように構成されたコネクタにおいては、互いにコネクタが嵌合されるとき、互いにコンタクトの接点部が互いのコンタクトの弾性可変形部の接触面に摺接し、その嵌合が完了したとき、互いの接点部が当接部に弾性的に圧接して、両コネクタが接触することにより電気接続することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭52−12141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなコネクタにおいて、例えば断面積が大きなコンタクトを使用することにより、コンタクトの電流容量を増大させることができるとともにコンタクトの剛性を向上させることができるが、コンタクトの断面積を大きくするとコンタクトが有する弾性変形のためのバネ性が低下する問題が生じる。コンタクトのバネ性が低下すると、コンタクト同士の弾性的な接触力が低下して電気的接続強度も低下することとなり、その結果として、コネクタの接触不良が発生する虞が生じ、接触信頼性が得られないという問題、及び振動や経時的変化に伴い良好な接続状態を維持できない問題が生じる虞もある。また、コネクタの嵌合接続時にコンタクトの表面に異物が付着していると異物を挟み込んで接触不良を起こす可能性があるため、このような問題を回避すべくいわゆるワイピング効果(セルフクリーニング効果)の向上が求められているという課題があった。
【0006】
本発明はこのような問題及び課題に鑑みてなされたものであり、コンタクトの剛性を維持しつつ、コンタクト同士の弾性的な接触圧力を向上させて、電気的接続強度を向上させるとともにワイピング効果を高めることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るコネクタは、先端部に接触部(例えば、実施形態におけるレセプタクル側接触部81)を有した導電材料製のコンタクト(例えば、実施形態におけるレセプタクルコンタクト80)を基端部側において片持ち支持して構成されるコネクタ(例えば、実施形態におけるレセプタクルコネクタ60)であって、導電材料製の接続相手部材(例えば、実施形態におけるプラグ側接触部41)が挿入されるとともに接触部に当接され、コンタクトが挿入方向に対して略垂直な方向に弾性変形されて接触部が接続相手部材に押圧接触するように構成されたコネクタにおいて、接触部は、先端から挿入方向且つ弾性変形される方向の反対方向に斜めに延びて形成される第1接触部と、第1接触部の基端部側に繋がって延びるとともに基端部側に向かって挿入方向及び弾性変形される方向に折り曲げられて形成される第2接触部とからなり、第2接触部の挿入方向及び弾性変形される方向に対して垂直な方向の幅は、第1接触部の垂直な方向の幅よりも狭く形成され、接続相手部材が挿入されるとき、接続相手部材は、最初に第1接触部に当接し、コンタクトが弾性変形されることにより第1接触部を乗り越えて第2接触部に当接するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明に係るコネクタにおいては、接続相手部材が最初に接触する第1接触部の幅よりも接続相手部材が最終的に接触する第2接触部の幅が狭く形成され、最終的に押圧接触させるコンタクトの接触面積が小さくなるため、コンタクト間の接触圧力を高めることができ接続信頼性を高めることができる。また、上記接触面積を小さくすることにより、ワイピング効果を高めるとともに異物が挟まった場合でもそれを容易に掻き出すことができるという効果が得られる。さらに、第2接触部の幅のみを狭くすることにより、接続相手部材の線接触摺動範囲を小さくしコンタクトの耐摩耗性を維持するとともに、上記接続信頼性を高める等の効果をコンタクトの剛性を維持しながら達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るコネクタ(レセプタクルコネクタ)にプラグコネクタを嵌合接続させた状態を示す斜視図である。(a)は下方から見た斜視図、(b)は(a)の図のコネクタの前方一部を切断して示す断面を含む斜視図である。
【図2】上記コネクタの正面図である。(a)はレセプタクルコネクタのみを示す図、(b)はレセプタクルコネクタにプラグコネクタを嵌合接続させた状態を示す図である。
【図3】上記プラグコネクタを下方から見た斜視図である。
【図4】図2(b)におけるレセプタクルコネクタにプラグコネクタを嵌合接続させた状態を示す図のIV−IV断面図である。
【図5】上記レセプタクルコネクタを上方から見た斜視図である。
【図6】図4の断面図におけるレセプタクルコンタクト及びプラグコンタクトの接触部近傍を拡大して示す図である。
【図7】レセプタクルコンタクト及びプラグコンタクトの接触部近傍を上方から見た図である。(a)は本発明に係るコネクタの接触部を示す図であり、(b)は従来のコネクタの接触部を示す図である。
【図8】レセプタクルコンタクトのレセプタクル側接触部を拡大して示す斜視図である。
【図9】プラグ側接触部をレセプタクル側接触部に接触させる状態を示す図である。(a)はプラグ側接触部の先端が第1接触部に接触した状態を示す図、(b)はプラグ側接触部の先端が第1接触部と第2接触部との境界位置に接触した状態を示す図、(c)はプラグ側接触部が第2接触部に接触した状態を示す図である。
【図10】プラグ側接触部がレセプタクル側接触部に接触される際のレセプタクル側接触部の弾性変形による変位量と接触力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係るコネクタの一例として示すレセプタクルコネクタ60の実施形態について説明する。レセプタクルコネクタ60及びその相手方コネクタであるプラグコネクタ10は、共に基板装着型のコネクタであり、図1及び図2に示すように互いに嵌合接続されるように構成される。プラグコネクタ10は、プラグ側基板(不図示)に装着されるとともに、後述するプラグコンタクト40のリード部42がプラグ側基板の配線パターン(不図示)に実装され、レセプタクルコネクタ60は、レセプタクル側基板(不図示)に装着されるとともに、後述するレセプタクルコンタクト80のリード部84がレセプタクル側基板の配線パターン(不図示)に実装される。そして、プラグコネクタ10及びレセプタクルコネクタ60が嵌合接続されることにより、プラグコネクタ10及びレセプタクルコネクタ60を介して、プラグ側基板とレセプタクル側基板との信号の送受信が可能となる。
【0011】
以下の説明では便宜上、各図において矢印「上下、前後、左右」で示すように、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ60に嵌合接続させる嵌合方向を上下方向とし、図1及び図2に示すように、プラグコネクタ10及びレセプタクルコネクタ60の長手方向を前後方向、そして、上下方向及び前後方向に対して垂直な各リード部42,84が露出する方向を左右方向と定義して説明する。ただし、これらの方向は、あくまで説明の都合上での定義であり、各部材の取付方向、使用方向等を規定するものではない。
【0012】
まず、本実施形態のレセプタクルコネクタ60に嵌合接続されるプラグコネクタ10について、図3及び図4を参照しながら説明する。プラグコネクタ10は、上面側においてプラグ側基板に固定される固定側ハウジング20と、下方に開口した受容凹部(嵌合空間)33を有した可動側ハウジング30と、これら固定側ハウジング20及び可動側ハウジング30の双方に跨って保持され左右一対に前後方向に多数所定のピッチで並んで設けられたプラグコンタクト40とを有して構成されている。固定側ハウジング20及び可動側ハウジング30は図3に示すように前後方向に延びた矩形形状を有しており、ともに樹脂等の絶縁性材料から構成される。
【0013】
固定側ハウジング20は、前後方向に延びて左右一対に設けられる左右壁21,21を備えた枠形状の部材として構成され、これらの左右壁21,21の間に下方に開口する内部空間(不図示)が形成される。この内部空間に、後に詳述するプラグコンタクト40を保持するための多数のプラグコンタクト取付溝が左右一対に前後方向に多数並んで設けられている。また、固定側ハウジング20には、左右両端近傍から上方に突出して設けられる位置決め突起22が設けられ(図2及び図4参照)、これらの位置決め突起22を、図示省略する配線パターンを備えたプラグ側基板(不図示)に設けられた孔部に嵌合させることにより、正確に位置決めをしつつプラグコネクタ10をプラグ側基板に固定させることができる。
【0014】
可動側ハウジング30は、図3及び図4に示すように矩形状に構成され、基部31と、中央側突出部32と、受容凹部33と、プラグコンタクト取付溝34と、コンタクト保護壁35と、中央上端壁36とを備えて構成される。基部31は矩形平板状に設けられ、図4に示すように、この基部31の左右方向中央側から上方に突出して中央側突出部32が設けられている。中央側突出部32も全体として矩形状に形成され、固定側ハウジング20の上記内部空間内に下方から入り込むことができる形状に構成されており、この中央側突出部32の左右方向中央側に、下方に開口した受容凹部33が形成されている。プラグコンタクト取付溝34は、受容凹部33の内壁面に左右一対に前後方向に多数並んで設けられ、後述するプラグコンタクト40がプラグコンタクト取付溝34に圧入される。また、コンタクト保護壁35は、図4に示すように、基部31の左右両端側から上方に延びて設けられ、このコンタクト保護壁35と中央側突出部32との間に上方に開口するコンタクト保護空間37が形成されている。なお、中央上端壁36は、受容凹部33の上端に設けられる。
【0015】
プラグコンタクト40は固定側ハウジング20及び可動側ハウジング30の左右両側に、前後方向に一定のピッチで多数並んで設けられる(図3参照)。各プラグコンタクト40は例えば板金(弾性体からなる導電性材料)を打ち抜き加工した後、図4に示すように所定の形状に折り曲げ成形されて構成されている。各プラグコンタクト40は一端側が固定側ハウジング20に保持され他端側が可動側ハウジング30に保持され、この結果、固定側ハウジング20と可動側ハウジング30とがプラグコンタクト40を介して繋がってプラグコネクタ10が構成される。
【0016】
各プラグコンタクト40は、図4に示すように、プラグ側接触部41と、リード部42と、屈曲部43と、第1圧入係止部44と、第2圧入係止部45とを備えて構成される。プラグ側接触部41は、内側に位置し後述するレセプタクルコンタクト80に接触させるために設けられる。プラグ側接触部41の下端には先端に向かって徐々に凹むように形成されるテーパ面41a(図6及び図9参照)が設けられる。リード部42は、上面左右両端側に延びて形成され、屈曲部43は、プラグ側接触部41及びリード部42を繋いでU字状に形成される。
【0017】
図4に示すように、各プラグコンタクト40における屈曲部43の左右両側に第1圧入係止部44及び第2圧入係止部45が形成されており、第1圧入係止部44が固定側ハウジング20のプラグコンタクト取付溝(不図示)に圧入されて保持され、第2圧入係止部45が可動側ハウジング30のプラグコンタクト取付溝34に圧入されて保持される。第1圧入係止部44から左右両端側に延びたリード部42はプラグ側基板上の配線パターン(不図示)に半田付け等により接合(サーフェスマウント)される。
【0018】
プラグコンタクト40のプラグ側接触部41は、第2圧入係止部45から下方に延びて設けられ、可動側ハウジング30に形成された上記受容凹部33のプラグコンタクト取付溝34内に位置すると共にこの部分で内側に露出して設けられる(図3及び図4参照)。各プラグコンタクト40における第1圧入係止部44と第2圧入係止部45との間に位置する屈曲部43は、可動側ハウジング30における中央側突出部32と固定側ハウジング20の左右壁21との間を下方に凸となるように延びており、左右に弾性変形自在となっている。また、各プラグコンタクト40の屈曲部43の下端は上述したコンタクト保護空間37内に位置しており、上述したコンタクト保護壁35により、外部の異物等からプラグコンタクト40の屈曲部43が保護されるように構成される。
【0019】
以上のように構成されたプラグコネクタ10と嵌合接続されるレセプタクルコネクタ60について以下で説明する。レセプタクルコネクタ60は、図4及び図5に示すように、プラグコネクタ10の可動側ハウジング30の受容凹部33と嵌合し得る形状の突起部71を有した絶縁性材料からなるレセプタクルハウジング70と、このレセプタクルハウジング70に保持され弾性体かつ導電性材料からなる多数のレセプタクルコンタクト80とを備えて構成される。レセプタクルコンタクト80は、プラグコネクタ10の各プラグコンタクト40と対応するよう、突起部71の左右両側に露出するように、前後方向に所定のピッチで並んで設けられている。
【0020】
レセプタクルハウジング70は、上記突起部71と、位置決め突起72と、中央コンタクト保持部73と、左右壁74,74と、コンタクト露出孔75とを備えて構成される。位置決め突起72は、前後両端近傍から下方に突出して設けられ(図1及び図2参照)、これらの位置決め突起72を、配線パターンを備えたレセプタクル側基板(不図示)に設けられた孔部(不図示)に嵌合させることにより、正確に位置決めをしつつレセプタクルコネクタ60をレセプタクル側基板に固定させ、レセプタクルコンタクト80と上記レセプタクル側基板の配線パターンとを電気的に接続させることが可能となる。
【0021】
図4及び図5に示すように、中央コンタクト保持部73は、レセプタクルハウジング70の左右方向中央部に上下に延びて設けられ、左右壁74,74は、前後方向に延びて左右一対に設けられる。コンタクト露出孔75は、突起部71の左右側面に、前後方向に所定のピッチで並んで多数設けられる。また、コンタクト露出孔75の左右中央側にレセプタクルコンタクト保持空間76が形成され、レセプタクルコンタクト80は、レセプタクルコンタクト保持空間76内において、中央コンタクト保持部73に固定保持されつつ、その上端(後述するレセプタクル側接触部81)がコンタクト露出孔75から左右両端側に露出するように設けられる。
【0022】
各レセプタクルコンタクト80は、図4に示すように、レセプタクル側接触部81と、屈曲部82と、係止保持部83と、リード部84とを備えて構成される。レセプタクル側接触部81は、上方且つ左右両端側に突出して設けられ、プラグコンタクト40に接触させるために設けられる。屈曲部82は、レセプタクル側接触部81の下方から左右中央側及び上方に折り曲げられ、そして当該上方に折り曲げられた部分の上端がさらに左右中央側及び下方に折り曲げられるようにS字状に形成される。係止保持部83は、屈曲部82の左右中央側の部分から下方に延びて設けられレセプタクルハウジング70の中央コンタクト保持部73に係止保持される。リード部84は、係止保持部83の下方に設けられ係止保持部83の下方から直角に折れ曲がって左右両端側に延びて、延びた部分が外方に露出されるように設けられている。
【0023】
レセプタクルコンタクト80は、係止保持部83がレセプタクルハウジング70の中央コンタクト保持部73に係止保持され、係止保持部83の上端から左右両端側にレセプタクル側接触部81及び屈曲部82が形成されるため、レセプタクル側接触部81及び屈曲部82は、片持ち状態で左右方向に弾性変形自在となっている。なお、リード部84は、レセプタクル側基板上の配線パターン(不図示)に半田接合(サーフェスマウント)される。
【0024】
以上のように構成されるレセプタクルコネクタ60にプラグコネクタ10を上方から挿入させると、レセプタクルハウジング70の突起部71は、可動側ハウジング30の受容凹部33内に嵌入し、受容凹部33の上端に設けられる中央上端壁36に接触する。このときレセプタクルコンタクト80のレセプタクル側接触部81にプラグコンタクト40のプラグ側接触部41が接触しつつ、レセプタクル側接触部81の下方から屈曲部82及び係止保持部83の上方の中央コンタクト保持部73から離れた部分が左右方向に弾性変形され、プラグコンタクト40とレセプタクルコンタクト80とが適切な接触力をもって接触し(後に詳述)、両コネクタ10,60での信号伝送が可能となる。
【0025】
以上のようにプラグコネクタ10に嵌合接続されるレセプタクルコネクタ60におけるレセプタクルコンタクト80のレセプタクル側接触部81は、例えば図6に示すように、最上端に形成される先端部81a、先端部81aから左右両端側及び下側に延びる第1接触部81b、及び第1接触部81bの下方に形成され左右両端側から左右中央側に湾曲して形成される第2接触部81cを少なくとも有する。第2接触部81cは、U字状に形成され左右両端側に頂部を有する。プラグコンタクト40のプラグ側接触部41は、嵌合接続時に、まず第1接触部81bに接触し、第1接触部81b上を摺接し第1接触部81bを左右中央側に撓ませながら、第1接触部81bから下方に移動して第2接触部81cに到達し、最終的にプラグ側接触部41の内側面と第2接触部81cとが接触する。
【0026】
ところで、従来のコンタクトの接触部の問題点について以下で簡潔に説明する。従来のコンタクトの接触部の形状は、例えばレセプタクルコンタクトの接触部を上方から見た図である図7(b)に示すように、第2接触部181cの前後方向の幅が、第2接触部181cに隣接する第1接触部181bの前後方向の幅と同じであった。このように第2接触部181cの幅が周囲と同じである場合は、ワイピング性が弱く第2接触部181cとプラグ側接触部41の端子表面との間に導通を阻害する皮膜等の異物が挟まった場合にそれを掻きだすことが困難であるという課題があった。
【0027】
そこで、本実施形態におけるレセプタクルコンタクト80は、図7(a)及び図8に示すように、先端部81a、第1接触部81b、第2接触部81c、及び斜面81dを備えて構成され、第2接触部81cの前後方向の幅を、先端部81a及び第1接触部81bの前後方向の幅より狭く(例えば、第1接触部81bの1/10程度に)して、レセプタクル側接触部81とプラグ側接触部41との接触面積を小さくし線接触に近い状態にさせることにより、ワイピング性を向上させて導通阻害物等の異物が挟まったときでもそれを容易に掻きだすことができるようになっている。そして、異物の上にプラグ側接触部41が乗り上げる可能性を低減させることもできる。また、第2接触部81cの前後両端側に徐々に凹むように形成される斜面81dを設け、図7(a)に示すように嵌合接続時におけるレセプタクル側接触部81とプラグ側接触部41との間に形成される空間を広くすることにより、掻き出された導通阻害物を逃がすためのスペースを確保することもできる。
【0028】
上記のように、第2接触部81cの前後方向の幅を、先端部81a及び第1接触部181bの前後方向の幅より狭くして接触面積を小さくすることにより、レセプタクルコンタクト80とプラグコンタクト40との弾性的な接触圧力(単位面積当たりの接触力)が大きくなるが、以下で、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ60に嵌合接続させる際に、具体的にレセプタクルコンタクト80とプラグコンタクト40との間にどの程度の接触力が付与されるかについて、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0029】
まず、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ60の上方に位置させた状態で、可動側ハウジング30の受容凹部33の前後左右の端部と、レセプタクルハウジング70の突起部71の前後左右の端部とを位置合わせし、この状態で、プラグコネクタ10を下方に移動させて可動側ハウジング30の受容凹部33にレセプタクルハウジング70の突起部71を嵌合させる。すると、まず図9(a)に示すように、プラグ側接触部41の先端が、レセプタクルコンタクト80のレセプタクル側接触部81の第1接触部81bに接触する。
【0030】
プラグ側接触部41の先端が第1接触部81bに接触した状態でプラグコネクタ10を下方に移動させると、プラグ側接触部41のテーパ面41aがレセプタクル側接触部81の第1接触部81b上を摺接するとともに、レセプタクルコンタクト80のレセプタクル側接触部81全体が左右中央側(図9の紙面では左側)に撓む。また、プラグ側接触部41が第1接触部81bを下方に移動する間に、図10に示すようにプラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間の接触力は、レセプタクル側接触部81の変位量(撓み量)に比例して増加する。そして、図9(b)及び図10に示すように、プラグ側接触部41の先端が第1接触部81bの下端及び第2接触部81cの上端に達したときには、レセプタクル側接触部81は左右方向にα(mm)だけ変位し、プラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間にP1(N)の接触力が発生する。
【0031】
プラグ側接触部41が第2接触部81cの上端に接触した状態でプラグコネクタ10を更に下方に移動させると、プラグ側接触部41のテーパ面41aが第2接触部81c上を摺接するとともに、レセプタクル側接触部81全体が更に左右中央側(図9の紙面では左側)に撓み、プラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間の接触力がレセプタクル側接触部81の左右方向の変位量に比例して増加する。
【0032】
そして、プラグ側接触部41のテーパ面41aの上端がレセプタクル側接触部81の第2接触部81cの頂部に位置した後は、図9(c)に示すように、プラグ側接触部41の内側面がレセプタクル側接触部81の第2接触部81cに摺接して、プラグ側接触部41が下方に移動し所定位置に到達した状態で、レセプタクルハウジング70の突起部71の上端が可動側ハウジング30の受容凹部33の上端の中央上端壁36に接触し(図4参照)、プラグコネクタ10がレセプタクルコネクタ60に嵌合接続される。また、プラグ側接触部41のテーパ面41aの上端が第2接触部81cの左右両端側の頂部に位置した時に、図9(c)に示すようにレセプタクル側接触部81の左右方向の変位量が適正変位量β(mm)に達するとともに、プラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間の接触力も適正値であるP2(N)になる。そしてプラグ側接触部41のテーパ面41aの上端が第2接触部81cの頂部に位置した状態から更に下方にプラグコネクタ10を移動させても、上記変位量及び接触力は上記適正変位量β(mm)及び適正値P2(N)を維持したまま変動しない。
【0033】
上記のように、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ60に嵌合接続させた状態において、プラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間の接触力は適正値P2(N)となるが、本実施形態のレセプタクル側接触部81における第2接触部81cの前後方向の幅が例えば上記のように第1接触部81bの1/10となっている場合、プラグコンタクト40及びレセプタクルコンタクト80間の接触圧力は、前後方向の幅が第1接触部81bと同じ接触面を接触させた場合の10倍になる。すなわち、本実施形態におけるレセプタクル側接触部81の形状においては、コンタクトのバネ定数を高くしなくても上記のように接触面積を小さくすることにより接触圧力を向上させることを可能にしているが、これはコンタクトの肉壁が薄くバネ定数が上げられない場合にも有効である。
【0034】
また、両コネクタ10,60の嵌合接続の際に、プラグ側接触部41の先端が最初は幅が狭い第2接触部81cに接触せずに、幅が広い第1接触部81bに接触し摺動するように構成されている。このように、幅が広い第1接触部81bを第2接触部81cの上方に設け、最終接触位置付近のみ幅を狭くした第2接触部81cを設けることにより、線接触摺動範囲を小さくでき摩耗を防止し耐摩耗性及び耐久性を維持することができる。また、第2接触部81cの幅のみを狭くすることにより、レセプタクルコンタクト80の剛性を維持しつつ、上述した接触圧力を向上させる等の効果が得られる。
【0035】
以上、本実施形態では、レセプタクルコネクタ60及びプラグコネクタ10が、レセプタクルコンタクト80及びプラグコンタクト40を多数一定のピッチで並んで備える例について示したが、コンタクトの個数、ピッチ、並び方が異なるレセプタクルコネクタ及びプラグコネクタであっても、本発明に係る接触部の形状を適用させることは可能である。また、上記実施形態では、レセプタクル側接触部81が、図8に示すように、前後方向の幅が狭い第2接触部81c及びその前後両端側に斜面81dが設けられる例について説明したが、必ずしもこの形状に限定されることなく、例えば、第2接触部81c及び斜面81dの代わりに、前後中央部のみが周囲から突出して設けられる凸状の接触部にしても同様の効果が得られる。
【0036】
また、本実施形態では、レセプタクルコネクタ60にプラグコネクタ10を嵌合させる例について説明したが、相手方コネクタとしては上記のようなプラグコネクタでなくてもよく、さらには、必ずしもコネクタである必要もない。すなわち、レセプタクルコネクタ60のレセプタクル側接触部81に接触させる接続相手部材が、コネクタのコンタクトでなく例えば基板上の端子等であっても、本発明のコンタクト形状を適用させることは可能である。
【0037】
そして、上述した実施形態においては、本発明に係るコンタクトの形状について、レセプタクル側接触部81を例示して説明したが、プラグ側接触部に本発明に係るコンタクトの形状を適用させるようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、基板装着型のレセプタクルコネクタ60及びプラグコネクタ10について説明したが、ケーブル接続型等、他の種類のコネクタに対しても、本発明に係るコンタクトの形状を応用させることは可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 プラグコネクタ
40 プラグコンタクト
41 プラグ側接触部(接続相手部材)
60 レセプタクルコネクタ(コネクタ)
80 レセプタクルコンタクト(コンタクト)
81 レセプタクル側接触部(接触部)
81b 第1接触部
81c 第2接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に接触部を有した導電材料製のコンタクトを基端部側において片持ち支持して構成されるコネクタであって、
導電材料製の接続相手部材が挿入されるとともに前記接触部に当接され、前記コンタクトが前記挿入方向に対して略垂直な方向に弾性変形されて前記接触部が前記接続相手部材に押圧接触するように構成されたコネクタにおいて、
前記接触部は、先端から前記挿入方向且つ前記弾性変形される方向の反対方向に斜めに延びて形成される第1接触部と、前記第1接触部の前記基端部側に繋がって延びるとともに前記基端部側に向かって前記挿入方向及び前記弾性変形される方向に折り曲げられて形成される第2接触部とからなり、
前記第2接触部の前記挿入方向及び前記弾性変形される方向に対して垂直な方向の幅は、前記第1接触部の前記垂直な方向の幅よりも狭く形成され、
前記接続相手部材が挿入されるとき、前記接続相手部材は、最初に前記第1接触部に当接し、前記コンタクトが弾性変形されることにより前記第1接触部を乗り越えて前記第2接触部に当接するように構成されることを特徴とするコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate