説明

コヒーレント光信号受信機のデータ・パターン依存歪の補正

コヒーレント光信号受信機によって受信された信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正することができるシステム及び方法。大雑把に言って、この歪補正システム及び方法は、受信信号フィールドを既知のデータ・パターンに対応する保存されている歪んだ信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する補正値を選択するものである。この歪補正システム及び方法は、選択した補正値を用いて受信信号を補正するものであり、従ってデータ・パターン依存信号歪の影響を軽減するものである。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は米国特許出願第12/718,146(出願日:2010年3月5日)号の継続出願であり、ここに引用することにより本明細書に完全に組み込まれたものとする米国仮出願第61/158,823(出願日:2009年3月10日)の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は光情報伝送に関し、具体的にはコヒーレント光信号受信機のデータ・パターン依存歪の補正に関するものである。
【背景技術】
【0003】
信号を用いて離れた場所にデータを送ることができる。例えば、光通信システムにおいては、データを1つ以上の光波長に変調することにより、光ファイバーのような光導波路を通して伝送可能な光変調信号を生成することができる。光通信システムに利用できる変調方式に、光波長の位相又は相転移が1ビット又はそれ以上のビットを符号化したシンボルを表すように光波長の位相を変調することによりデータが伝送される位相偏移変調がある。例えば、2相位相偏移変調(BPSK)方式においては、2つの位相を用いて1シンボル当たり1ビットを表すことができる。直交位相偏移変調(QPSK)方式においては、4つの位相を用いて1シンボル当たり2ビットの符号化が可能である。その他の位相偏移変調方式には差動位相偏移変調(DPSK)方式及びゼロ復帰DPSK(RZ−DPSK)方式のような、位相偏移変調方式や差動位相偏移変調方式の変形がある。別の変調フォーマットに、情報が伝送信号の位相及び振幅の両方に変調される直交振幅変調がある。
【0004】
データを受信するためには信号を検出して復調する必要がある。例えば、位相変調光通信システムにおいては、他の検出方式の受信機と比較して感度の点で有利なコヒーレント光受信機によるコヒーレント検波により光変調信号を検出することができる。このようなシステムにおいては、デジタル信号処理(DSP)によって受信信号を処理することによって復調データを得ることができる。受信信号のデジタル信号処理により、処理速度と柔軟性が向上し、受信信号の搬送波位相の推定及び推定搬送波位相に基づくデータの検出を含む、様々な機能を果たすことができる。
しかし、(例えば、送信端末、伝送途上、あるいは受信端末における)信号歪によって信号の検出及び復調後におけるデータの完全性が損なわれる恐れがある。位相変調方式を用いたい光通信システムにおいては、自己位相変調(SPM)のような非線形効果によって変調信号に位相歪が生じ、これによりコヒーレント検出性能が大幅に低下し、他の検出方式に対しコヒーレント検出方式が有する受信機感度の優位性が低下する。BPSK信号の品質劣化については、ここに引用することにより、本明細書に完全に組み込まれたものとする非特許文献1に詳細に記載されている。また、位相変調方式を用いた光信号にはシンボル間干渉も生じる。
【0005】
被変調光信号におけるシンボル間干渉や位相歪のような被変調信号の歪は、データ・パターンやビット・パターンに依存することが多い。図9及び10は光通信システムにおいて発生する可能性がある、単チャンネル非線形伝播模擬試験に基づく、ビット・パターン依存位相歪を示している。図9は信号点が実軸の上側及び下側に延び位相歪の影響を示す、歪んだBPSK信号の信号空間ダイヤグラムである。図10は様々なビット・パターンに対応する位相歪を示し、位相歪がどのようにビット・パターンに依存しているかを表わしている。
【0006】
コヒーレント光受信機における非線形歪のようなデータ・パターン依存歪による性能ペナルティを軽減する方法が提案されている。1つの方法は、例えば、ここに引用することにより完全に本明細書に組み込まれたものとする非特許文献2及び非特許文献3に記載されているように、受信信号強度を関数として推定した位相歪に基づいて、非線形位相歪を補正するものである。しかし、この方法は実用的な色分散マップを用いた光通信システムによく見られる伝播中における光信号強度の大幅な変化に対応できない。
【0007】
もう1つの方法は、例えば、ここに引用することにより完全に本明細書に組み込まれたものとする非特許文献4及び非特許文献5に記載されているように、非線形歪をデジタル誤差逆伝播法によって補正するものである。この誤差逆伝播法は複雑な計算が伴い、10〜100Gb/sの光伝送には実用的でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yi Cai他、「On Performance of Coherent Phase-Shift-Keying Modulation in 40 Gb/s Long-Haul Optical Fiber Transmission Systems」、光ファイバー通信及びNFOEC、2006、ペーパー JThB11(2006年3月)
【非特許文献2】K. Ho 及び J. Kahn「Electronic compensation technique to mitigate nonlinear phase noise」、 光波技術ジャーナル、22、779−783(2004)
【非特許文献3】K. Kikuchi 「Electronic Post-compensation for nonlinear Phase Fluctuations in a 1000-km 20-Gb/s Optical Quadrature Phase-shift Keying Transmission System Using the Digital Coherent Receiver」、 オプティックス・エクスプレス、Vol.16、No.2、2007
【非特許文献4】X. Li、 X. Chen、G. Goldfarb、E. Mateo、I. Kim、F. Yaman、及びG. Li、「lectronic post-compensation of WDM transmission impairments using coherent detection and digital signal processing」、オプティックス・エクスプレス、Vol. 16、No.2、pp.880−888、2008年1月21日
【非特許文献5】E. Ip、 A. P. T. Lau、D. J. Barros、及び J. M. Kahn「Compensation of chromatic dispersion and nonlinearity using simplified digital backpropagation」、 コヒーレント光技術と応用に関するOSA会議議事録、マサチューセッツ州、ボストン、2008年7月13−16日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の問題に対処した歪補正システム及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施の形態によれば、信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正するシステムが提供される。このシステムは、長さを有し、既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び歪んだ信号波形に対応する歪補正値を保存するよう構成された歪補正テーブルを有している。また、このシステムは、歪補正テーブルに保存されている歪んだ信号波形の長さに対応する一部の受信信号を取得し、受信信号フィールドを歪補正テーブル内の歪んだ信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、選択した歪補正値を用いて受信信号を補正するよう構成された歪補正器も有している。
【0011】
別の実施の形態によれば、デジタル信号処理装置(DSP)をベースにした受信機が提供される。この受信機は光変調信号の受信、検出、及びデジタル変換により受信信号サンプルを生成するよう構成されたコヒーレント受信機と、既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び歪んだ信号波形に対応する歪補正値を含む歪補正テーブルを保存し、歪補正テーブルに保存されている歪んだ信号波形の長さに対応する長さを有する一部の受信信号を取得し、受信信号フィールドを歪補正テーブル内の歪んだ信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪補正テーブル内の歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、選択した歪補正値を用いて受信信号を補正するよう構成されたDSPとを有している。
【0012】
更に別の実施の形態によれば、信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正する歪補正方法が提供される。この方法は、既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び歪んだ信号波形に対応する歪補正値を含む歪補正テーブルを用意するステップと、光変調信号を受信し、その信号をデジタル電気信号に変換するステップと、デジタル信号処理装置内においてデジタル信号を処理することにより、歪補正テーブルに保存されている歪んだ信号波形の長さに対応する長さを有する一部の受信信号を取得し、受信信号フィールドを歪補正テーブル内の歪んだ信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、選択した歪補正値を用いて受信信号を補正するステップとを有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
前記及びその他の特徴及び効果は、以下の図面を参照し、以下に述べる詳細な説明を読むことによって更に理解することができる。
【図1】本開示に適合するシステムの例示的な実施の形態のブロック図。
【図2】本開示に適合する受信機の例示的な実施の形態のブロック図。
【図3】データ・パターン依存信号歪を補正する歪補正システムを備えた受信機を含む本開示の実施の形態の適合する通信システムのブロック図。
【図4】本開示の実施の形態に適合するデータ・パターン依存信号歪の補正方法を示すフローチャート。
【図5】本開示の実施の形態に適合する歪補正システムの訓練方法を示すフローチャート。
【図6】模擬光システムにおいて、歪補正のためのMAP検出を行わない各種位相変調方式のQ値をプロットした図。
【図7】模擬光システムにおいて、歪補正のためのMAP検出を行う各種位相変調方式のQ値をプロットした図。
【図8】模擬光システムにおいて、歪補正のためのMAP検出を行う変調フォーマットと行わない変調フォーマットのチャンネル電力を関数としたQ値をプロットした図。
【図9】歪んだBPSK信号を示す信号空間ダイヤグラム。
【図10】異なるビット・パターンにおける、ビット・パターン依存位相歪を示す図。
【図11】マルチプレクサ及びデマルチプレクサにおいてオーバー・フィルタリングを行う本開示に適合するWDM伝送システムの例示的な実施の形態のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に適合する歪補正システム及び方法を用いて、コヒーレント光信号受信機が受信した信号のデータ・パターン依存信号歪を補正することができる。大雑把に言うと、この歪補正システム及び方法は、受信信号フィールド(例えば、位相と振幅)を既知のデータ・パターンに対応する保存されている歪んだ信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する補正値を選択するものである。この歪補正システム及び方法は、選択した補正値を用いて受信信号を補正するものであり、従ってデータ・パターン依存信号歪の影響を軽減するものである。
【0015】
本明細書において、「歪補正」とは、受信信号を修正し受信信号に含まれている歪の少なくとも一部を低減することを意味する。歪補正には、受信信号が歪発生以前の送信信号と実質的に同じになるように歪を除去することが含まれるが、それに限定されるものではなく、本明細書における実施の形態はそれを必要としない。
【0016】
例示的な実施の形態によれば、本明細書に記載の歪補正システム及び方法を光通信システムに用いて、位相変調された光信号のビット・パターン依存位相歪の影響を軽減することができる。この位相変調された光信号は、BPSK、QPSK、DPSK、DQPSKのような位相偏移変調方式、他の高次のnPSK方式、あるいはそれらの変形(例えば、RZ−DPSK)方式によって変調されたものであってよい。光通信システムにおいて、ビット・パターン依存信号歪は、自己位相変調(SPM)やその他の非線形効果のようなファイバーの非線形効果、シンボル間干渉、あるいはその他の線形歪によって生じる。本明細書に記載の歪補正システム及び方法は、送信信号にデータ・パターン依存信号歪が生じる別の通信システムにも使用することができる。
【0017】
図1は歪補正システム及び方法を使用することができる本開示に適合するWDM伝送システム100の例示的実施の形態の簡略ブロック図である。この伝送システムは、光情報経路102を介して、送信端末104から1つ以上の遠隔地の受信端末106に複数の光チャンネルを伝送する。この例示的なシステム100は、5,000km以上離間した送信機から受信機にチャンネルを送信するよう構成された長距離海底システムであってよい。例示的な実施の形態では、光システムを例に長距離WDM光システムに有効な説明をしているが、本明細書に記載の広い概念は、別の種類の信号を送受信する別の通信システムにおいても実施可能である。
【0018】
説明を容易にするため、システム100は2地点間システムを大幅に簡略したものであることは当業者にとって容易に理解できる。例えば、送信端末104及び受信端末106は、各々が送信及び受信機能を果たすトランシーバーとして構成されていても勿論よい。しかし、説明を容易にするため、本明細書ではそれぞれの端末は送信又は受信機能のみを果たすものとして図示及び説明している。本開示に適合するシステム及び方法は様々なネットワークコンポーネント及びネットワーク構成に組み込むことができるものである。図示の例示的な実施の形態は説明のためのものであって、限定を意味するものではない。
【0019】
図示の例示的な実施の形態において、複数の送信機TX1、TX2、‐‐‐‐‐、TXNの各々が、それぞれ対応する入力ポート108−1、108−2、‐‐‐‐‐、108Nのデータ信号を受信し、受信したデータ信号を対応する波長λ、λ、‐‐‐‐‐λによって送信する。例えば、DBPSK、DQPSK、RZ−DPSK、RZ−DQPSKのようなPSK変調フォーマットにより、対応する波長にデータを変調するよう送信機TX1、TX2、‐‐‐‐‐、TXNのうちの1つ以上を構成することができる。勿論、送信機は説明のため大幅に簡略化したものである。各々の送信機は所望の振幅を有し所望の変調方式による対応波長によりデータ信号を送信するよう構成された電気部品及び光部品を有することができることは当業者周知である。
【0020】
送信波長、即ち送信チャンネルは、複数の経路110−1、110−2、‐‐‐‐‐、110−Nの各々によって伝送される。N個のデータ・チャンネルは、マルチプレクサ又は結合器112によって光情報路102において統合信号に結合される。光情報路102は光ファイバー導波路、光増幅器、光フィルタ、分散補正モジュール、及びその他の能動部品及び受動部品を備えることができる。
【0021】
統合信号は1つ以上の遠隔受信端末106によって受信される。波長λ、λ、‐‐‐‐‐λの送信チャンネルは、デマルチプレクサ114によって対応する受信機RX1、RX2、‐‐‐‐‐、RXNに接続された対応経路116−1、116−2、‐‐‐‐‐、116−Nに分離される。送信信号を復調し出力データ信号を対応する出力経路118−1、118−2、118−3、‐‐‐‐‐、118−Nに出力するよう受信機RX1、RX2、‐‐‐‐‐、RXNのうちの1つ以上を構成することができる。
【0022】
図2は本開示に適合する例示的な受信機200の簡略ブロック図である。図示の例示的な実施の形態200は、経路116−Nの入力信号を受信するコヒーレント受信機構成202及びコヒーレント受信機の出力を処理して経路118−Nに出力データ信号を出力するデジタル信号処理(DSP)回路204を有している。PSK変調フォーマットに従ってデータが光入力信号の搬送波波長λN に変調されている。コヒーレント受信機202は受信光入力信号を1つ以上のデジタル信号に変換し、DSP回路204の入力として供給する。DSP回路204は搬送波波長λNに変調されたデータを表すデータをデジタル信号から復調して経路118−Nに出力データ・ストリームとして出力する。
【0023】
コヒーレント受信機202は様々に構成することができる。図示の例示的な実施の形態の受信機は、偏光ビームスプリッター(PBS)206、第1及び第2の90度光ハイブリッド208、210、局部発振器(LO)212、平衡検出器214、216、218、220、及びアナログ・デジタル(A/D)変換器222、224、226、228を有している。コヒーレント光信号受信機におけるこれらのコンポーネントの動作について以下簡単に説明する。通常、偏向が異なる入力光信号はPBS206によってそれぞれ別の経路に分離される。各々の偏向光は対応する90度光ハイブリッド208、210に供給される。各々の90度光ハイブリッドは対応する入力信号に複素空間における4つの直交状態のLO信号を混合する。次いで、各々の光ハイブリッドは4つの混合信号を2対の平衡検出器214、216、218、220に供給する。平衡検出器の出力はA/D変換器222、224、226、228によってデジタル信号に変換される。
【0024】
A/D変換器の出力は入力としてDSP回路204に供給される。通常、DSPは1つ以上の特定用途向け集積回路(ASICS)及び/又は特定の命令シーケンスを、例えば直接及び/又はソフトウェア命令の制御下において実行される特殊用途プロセッサーによる信号処理が伴う。図示の例示的な実施の形態において、DSP回路204は前処理機能230、歪補正機能231、局部発振器(LO)周波数オフセット追跡機能232、搬送波位相推定機能234、ビット判定機能236、及び光PRBSビット誤り率試験機能238を有している。これ等の機能はハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアの任意の組合せを用いた様々な構成によって実行することができる。それぞれの機能が分離しているよう図示されているが、1つの集積回路又はプロセッサー、あるいは集積回路及び/又はプロセッサーの組合せにより、任意の1つ以上の機能を実行させることができる。また、DSP機能を実行する集積回路及び/又はプロセッサーに図示の機能の全部又は一部を分担させることもできる。
DSPの前処理機能230はDSPをベースにしたタイプの異なるコヒーレント検出受信機によって実行される様々な光信号検出機能を有することができる。前処理機能230は、例えば、波形リカバリー及び位置合わせ機能、決定論的歪補正機能、クロック・リカバリー機能、同期データ再サンプリング機能、偏光追跡及び偏光モード分散(PMD)補正機能を有することができる。歪補正機能231は、本明細書に記載の実施の形態に適合する受信信号における受信データ・パターン依存歪を補正するよう構成することができる。任意としてのLO周波数オフセット追跡機能232は、受信信号とLO信号との間の周波数オフセットを追跡し補正するよう構成することができる。
【0025】
通常、PSK変調された信号のデータは光搬送波信号の位相に符号化されているため、DSPをベースとする受信機におけるPSK変調された信号の復調には搬送波位相の推定及び追跡が伴う。その目的のために搬送波位相推定機能234を構成することができると共に、デュアル・ステージ搬送波位相推定機能とすることができる。搬送波位相推定機能による搬送波位相の推定値は、被変調信号における搬送波位相によって表わされるデータ値又はビット値を判定するビット判定機能236に供給される。一部の実施の形態において、ビット判定機能236は位相歪のようなデータ・パターン依存信号歪の影響を軽減することができる。次に、搬送波周波数λN に変調されたデータを表わすデータは、経路118−Nに供給される。任意としてのビット誤り率(BER)試験機能238を、DSP回路204の性能を試験するためのトレーニング・シーケンス信号に対しビット誤り率試験を行うよう構成することができる。
【0026】
図3は受信信号に対し歪補正を行うことにより、信号中のデータ・パターン依存歪の影響を軽減することができる歪補正システム300を組み込んだ通信システムの簡略図である。歪補正システム300はコヒーレント受信機202に接続されているDSP回路204に実装することができる。簡略化し説明を容易にするため、図示のシステムは1つの波長のみを受信する1台のコヒーレント受信機のみを有している。しかし、このシステムはデマルチプレクサ及び多数の波長を受信する複数の受信機から成るWDMシステムとして構成できることは当然である。別の実施の形態において、歪補正システム300を別の種類の受信機を備えた別の通信システムに用いることができる。
【0027】
例示的な実施の形態において、コヒーレント受信機202が、送信機、即ち送信端末104から送信された光信号の受信、検出、及びデジタル変換を行う。例えば、位相変調光信号を伝送するシステムにおいて、コヒーレント受信機202は光信号を受信し、受信光信号の電界を検出し、光信号に含まれているシンボルの位相、即ち光信号に変調されているデータを表わすデジタル受信信号を生成する。前処理機能230はデジタル受信信号の前処理を行う。
【0028】
次に、例えば、搬送波位相推定機能234が搬送波位相推定値を求める前に、歪補正システム300がデジタル受信信号を処理することにより、データ・パターン依存信号歪を補正する。例示的な実施の形態において、歪補正システム300はサンプルを処理し、受信信号フィールドを保存歪信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪信号波形に対応する補正値を選択し適用する。次に、ビット判定機能236が搬送波位相の推定値によって表わされるデータ値(例えば、ビット値)を判定し、データ値又はビット値を含む出力を生成する。このように、歪補正システム300が歪の少ないデジタル信号を搬送波位相推定機能234に与えることにより、搬送波位相の推定値の精度が向上する。
実施の形態において、搬送波位相推定機能234は、例えば、ここに引用することにより本明細書に組み込まれたものとする米国仮出願第61/159,018号明細書及び米国特許出願第______(整理番号TCM256/ST−00022)号明細書に開示されている、デュアル・ステージの搬送波位相推定を行うことができる。歪補正システム300は、コヒーレントPSK又は差動符号化PSK(例えば、DCPSK、DCBPSK、DCQPSK)システムのような搬送波位相推定を行うシステムに用いることができる。また、歪補正システム300は、搬送波位相推定を行わないシステム、例えば、コヒーレント差動位相偏移変調(例えば、DPSK、DBPSK、DQPSK、等)を用いるシステムにおける受信信号歪の補正に使用することもできる。
歪補正システム300は、既知のデータ・パターンに対応する歪信号波形及び対応する歪補正値を保存するための歪補正テーブル310を備えている。また、歪補正システム300は、受信信号フィールドを保存歪信号波形と比較し、受信信号フィールドに最も近い歪信号波形に対応する補正値を選択する歪補正器320も備えている。歪補正器320は(例えば、シフト・レジスタを用いて)歪補正テーブル310に保存歪信号波形の長さに対応する長さを有するシフト・ウィンドウ内の一部の受信デジタル信号を取得することができる。歪補正テーブル310は、例えば、DSP回路内のメモリ又はDSP回路に接続されたメモリに保存することができる。歪補正器320はハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、あるいはその組合せとしてDSP回路に実装することができる。
【0029】
例示的な実施の形態において、保存されている信号波形は所定数(N)のシンボルから成るパターンを含むNシンボルのセグメントとすることができる(例えば、5ビットのパターンは00000、00001、00010、―――――を含むことができる)。従って、歪補正テーブル310はNシンボルの長さを有するNシンボルの信号波形(及び対応する歪補正値)を保存するNシンボルのテーブルとすることができ、歪補正器320はNシンボルのシフト・ウィンドウを用いてNシンボルの受信信号フィールドを取得する。また、歪補正テーブル310は、Nシンボルの波形に対応するデータ・パターン又はビット・パターンによって索引付けすることができる。
【0030】
Nシンボルの受信信号フィールドが歪補正器320に供給されると、歪補正器320はNシンボルの受信信号フィールドをテーブル310の項目と比較し、最大事後確率(MAP)検出アルゴリズムのような類似度計算により、Nシンボルの受信信号フィールドに最も近い保存されている歪んだ信号波形を検索する。例えば、歪補正器320は、Nシンボルの受信信号フィールドと歪補正テーブル310に保存されているNシンボルの歪んだ信号波形とのユークリッド距離を算出し比較することができる。受信信号フィールドに対するユークリッド距離が最小のNシンボルの保存されている信号波形が最も近いものであると判定される。Nシンボルのウィンドウ内における受信信号フィールド(rs、rs、――――――、rs)とNシンボルの保存されている波形(ss、ss、―――――、ss)とのユークリッド距離は以下のようにして算出することができる。
【数1】

【0031】
別の同様のアルゴリズムを用いて最も近い歪んだ信号波形を判定することもできる。例えば、別の実施の形態によれば、最大相関基準を用いて、最も近い歪んだ信号波形を判定することができる。追跡アルゴリズムを用いて、歪補正テーブルにおける最小ユークリッド距離又は最大相関の検索速度を向上させることができる。更に別の実施の形態によれば、最尤系列推定(MLSE)アルゴリズムを用いて、最も近い歪んだ信号波形を判定することができる。
【0032】
歪補正器320によって、最も近いNシンボルの保存されている歪んだ信号波形が判定されると、その保存されている信号波形に対応する歪補正値が歪補正テーブル310から選択され、受信信号フィールドの歪補正に用いられる。次に、補正された信号が搬送波位相推定機能234に(又は搬送波位相推定を行わないシステムにおいては、直接判定機能236に)供給される。
実施の形態によれば、歪補正器320は受信信号と変調フォーマット又は変調方式に対応する対象位相位置との間の未知の位相オフセット(即ち、搬送波位相における位相オフセット)も補正する。本実施の形態において、受信信号フィールドの位相が所定の刻み幅(又は適応刻み幅)だけ回転される。受信信号フィールドの位相が回転される度に、前記のように、歪補正器320が歪補正テーブル310を検索して最も近い歪んだ信号波形を取得することができる。歪補正器320は、受信信号フィールドの現在の回転位相における最大相似値(例えば、ユークリッド距離)を受信信号フィールドの前回の回転位相におけるものと比較することにより、位相の回転を合計2π行った後に、全体的に見て歪補正テーブルの最も相似な項目を判定することができる。次に、位相回転ステップ全体を考慮して、受信信号フィールドに最も近い歪信号波形に対応する歪補正値が選択され適用される。
【0033】
歪補正システム300は、既知のデータ・パターンを表わす歪んだ信号を用いて、歪補正テーブル310を生成するシステムの訓練を行うトレーナー340を更に有することができる。トレーナー340はハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はその組合せとしてDSP回路に実装することができる。訓練機能を実行する場合、擬似ランダム・ビット・シーケンス(PRBS)のような、予め設定されたトレーニング・シーケンス信号が送信機104から送信される。コヒーレント受信機202がデータ・パターン依存歪(例えば、光信号の位相歪やシンボル間干渉)により歪んだトレーニング・シーケンス信号の受信、検出、及びデジタル変換を行う。
トレーナー340は(例えば、Nシンボルのウィンドウ内の)受信したトレーニング・シーケンス信号を取得し、ウィンドウ内のデータ・パターンに基づいて、受信信号波形のNシンボル・セグメントをデータ・パターン依存セットに分類する。例えば、Nビットのデータ・パターンの場合、トレーナー340は、各ビット周囲のNビット・ウィンドウ内のNビット・パターンに基づいて受信信号波形を分類する。実施の形態において、5ビットのデータ・パターンが00000ビット・パターンの信号波形が1つのセットに分類され、00001ビット・パターンの信号波形が1つのセットに分類され、00010のビット・パターンの信号波形が1つのセットに分類されるというように信号波形が分類される。次に、トレーナー340は、各セット内の波形を平均することにより雑音の影響を軽減し、各平均波形をビット・パターン毎に索引付けした歪補正テーブル310としてメモリに保存する。また、保存波形の各々に対し、トレーナー340は、歪んだ信号フィールド(即ち、位相及び振幅)と無歪の対応する送信信号フィールドとの差異に基づいて、補正値を算出することができる。従って、歪補正値は歪んだ受信信号に適用することにより、対応する無歪の送信信号により近い補正信号を生成することができる値である。算出した歪補正値は、対応するNシンボルの歪信号波形と共にテーブル310に保存することができる。
トレーナー340は、システム運用の初期段階において、前記訓練を行って歪補正テーブル310を生成することができる。また、システムの運用中において、トレーナー340は予めセットされた非ユーザ・データによる歪補正テーブルの更新及び/又は判定機能236の出力及び/又は順方向誤り訂正(FEC)データと受信信号フィールドに適応した更新を行うこともできる。歪補正テーブルを更新することにより、伝送システムにおける、偏光モード分散のような変化に適応するためのペナルティを軽減することができる。
【0034】
一部の実施の形態において、歪補正システム300が軟判定順方向誤り訂正(FEC)により性能を向上させている。FECは送信データ・ストリームに適切な誤り訂正コードを挿入して既知の情報がないデータ誤りの検出及び訂正を容易にしている。誤り訂正符号は(例えば、送信機104の)データ・ストリームのFEC符号器で生成される。FECの符号化/復号化は、線形及び巡回ハミング符号、巡回ボーズ・チョドーリ・オッケンジェム(BCH)符号、畳み込み(ビタビ)符号、巡回ゴーレイ符号及び巡回ファイア符号、及びターボ畳み込み符号(TCC)、ターボ積符号(TPC)、低密度パリティ検査(LDPC)符号のような特定の新しい符号を含みこれに限定されない様々なFEC方式により行うことができる。
軟判定FECにおいて、信頼度又は信頼性(例えば、ビットが1である可能性が非常に高い、1である可能性がある、0である可能性がある、あるいは0である可能性が非常に高い)を表わす、多数のビットから成る「軟」情報が生成される。この追加「軟」情報により、FECの復号化を効率的に行うことができる。軟判定FEC例の詳細が、ここに引用することにより本明細書に完全に組み込まれたものとする米国特許第7,398,454号明細書、米国特許出願公開第2006/0,136,798号明細書、及び米国特許出願第12/108,155号明細書に開示されている。
【0035】
軟判定FECの復号を行うため、検出システム300は、判定機能236と組み合わせて軟判定FEC復号器350を備えることができる。判定機能236は軟判定データ・ストリームを生成することができ、軟判定FEC復号器350が軟判定データ・ストリームを受信し、誤り訂正符号を再生し、それを用いて受信データ・ストリームの誤りを訂正する。実施の形態において、判定機能236が軟判定データ・ストリームを生成する各判定ビットの信頼度を算出することができる。算出したユークリッド距離、最大相関基準、あるいは受信信号サンプルがどの程度既知のビット・パターンに対応しているかを示すその他の基準に基づいて信頼度を算出することができる。
また、トレーナー340がFEC復号器350からのフィードバックに応じて、歪補正テーブル310における算出された歪補正値を調整することができ、これによりシステムの性能が更に向上する。例えば、FEC復号器350が受信したトレーニング・シーケンスのNシンボル・パターンのビット値の1つを訂正した場合、当該訂正ビットがトレーナー340にフィードバックされるビット・パターンの軟情報に反映される。次に、トレーナー340が訂正された軟情報を用いて、例えば、歪補正テーブル310を更新することにより、当該Nシンボル・パターンの歪補正値を修正する。
【0036】
図4及び5は本開示に適応する方法を示す図である。図4は信号のデータ・パターン依存信号歪を補正する歪補正方法を示している。この歪補正方法は、図1〜3のシステム又はデータ・パターン依存信号歪を有する信号の受信及び検出を行う別のシステムによって実施することができる。この歪補正方法によれば、ステップ410において、対応する歪補正値(例えば、訓練を通して生成されたNシンボルの歪補正テーブル)と共に既知のデータ・パターンに対応する歪んだ信号波形が用意される。更に、この歪補正方法は、ステップ412において、(例えば、コヒーレント受信機により)光変調信号を受信し、受信光信号をデジタル電気信号に変換し、ステップ414において、保存されている信号波形と同じ長さ(例えば、Nシンボルのスライド・ウィンドウ)の一部の受信信号を取得する。更に、ステップ416において、一部の受信信号(例えば、Nシンボルのスライド・ウィンドウ内)の信号フィールドを歪んだ信号波形と比較し、ステップ418において、(例えば、MAP検出技術を用いて)受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択する。次に、ステップ420において、選択した歪補正値を用いて受信信号を修正する。
【0037】
図5は信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正するシステムを訓練する訓練方法を示す図である。この訓練方法は、図1〜3のシステム又はデータ・パターン依存信号歪を有する信号の受信及び検出を行う別のシステムによって実施することができる。この訓練方法は、ステップ510において、(例えば、コヒーレント受信機により)信号歪を有するトレーニング・シーケンス(例えば、PRBS)を表わす信号を受信し、ステップ512において、受信信号をデジタル変換してトレーニング・データ・シーケンスに対応する歪んだ信号波形を生成する。また、この訓練方法は、ステップ514において、歪んだ受信信号波形(例えば、Nシンボルのセグメント)をデータ・パターン依存セットに分類し、ステップ515において、歪んだ信号波形に対応する歪補正値を判定する。更に、この訓練方法は、ステップ516において、データ・パターンにより索引付けした歪補正テーブル310として、歪補正値と共に受信信号波形を保存する。
【0038】
図6〜8は、送信信号中のデータ・パターン依存歪を軽減するシステム及び方法の模擬システムにおける効果を示す図である。図6及び7は模擬システムにおけるループ数を関数とするQ値を示している。図示のように、歪補正のためのMAP検出を行わない模擬システム(図6)と比較して、歪補正のためのMAP検出を行う模擬システム(図7)のQ値の方が高い。図8は歪補正のためのMAP検出を行う位相偏移変調方式及びMAP検出を行わない位相偏移変調方式のチャンネル電力を関数としたQ値を示す図である。
図11において、歪補正システムを用いて、100Gb/sの高スペクトル効率のWDM伝送システム1100における送信信号中のデータ・パターン依存歪を軽減することもできる。本実施の形態において、25ギガボーの2偏波QPSKチャンネルを25GHzのWDMスペーシングで送信することによって、400%のスペクトル効率を達成することができる。本実施の形態のWDM伝送システム1100によれば、チャンネルを結合して光伝送路102に統合WDM光信号を送出する際、信号送信端末1104がWDMチャンネル(即ち、波長λ、λ―――――、λ)のオーバー・フィルタリング(例えば、従来のWDMマルチプレクサより20%増のフィルタリング)を行うことができる。送信端末1104において、WDMチャンネルが、マルチプレクサ1112内において、光インタリーブ・フィルタ1122によりフィルタ処理され、方向性結合器1124によって結合される。同様に、WDMチャンネルは、受信端末1106において、方向性結合器1126と光インタリーブ・フィルタ1128との組合せを含むデマルチプレクサ1114によって多重分離される。
マルチプレクサ1112及びデマルチプレクサ1114における狭帯域フィルタ形状により光データ・チャンネルのスペクトル幅が狭くなり強いシンボル間干渉(ISI)が誘発される。チャンネル内ISIはデータ・パターンに大きく依存しているため、前記歪補正システム及び方法の実施の形態を用いることにより、ISIに起因するペナルティを効果的に低減することができる。
従って、前記歪補正システム及び方法の実施の形態により、データ・パターン依存信号歪を軽減し、光通信システムのような通信システムの性能を向上させることができる。
本発明の原理について説明してきたが、本説明は当業者にとって単なる例示に過ぎず本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。本明細書に図示及び説明した例示的な実施の形態の他に、本発明の範囲において別の実施の形態も可能である。当業者による改良及び置換は本発明の範囲に含まれると解釈されるものであって、本発明の範囲は以下のクレームによってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0039】
100 WDM伝送システム
102 光情報路
104 送信端末
106 受信端末
108 入力ポート
110 経路
112/1112 マルチプレクサ/結合器
1141114 デマルチプレクサ
116 経路
118 出力経路
1122/1128 光インタリーブ・フィルタ
1124/1126 方向性結合器
TX 送信機
RX 受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正するシステムであって、
長さを有し、既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び該信号波形に対応する歪補正値を保存するよう構成された歪補正テーブルと、
前記歪補正テーブルに保存されている前記歪んだ信号波形の前記長さに対応する一部の受信信号を取得し、受信信号フィールドを前記歪補正テーブル内の前記歪んだ信号波形と比較し、前記受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、該選択した歪補正値を用いて前記受信信号を補正するよう構成された歪補正器と、
を有して成ることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記歪補正テーブルとして保存される前記歪んだ信号波形及び該信号波形に対応する歪補正値を生成するよう構成されたトレーナーを更に有して成ることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記トレーナーが、トレーニング・データ・シーケンスに対応する信号を受信し、前記トレーニング・データ・シーケンスのデータ・パターンに基づき、受信信号波形をデータ・パターン依存セットに分類し、前記受信信号波形に対応する歪補正値を算出し、前記受信信号波形を前記歪補正値と共に前記データ・パターンの索引付き歪補正テーブルとして保存するよう構成されて成ることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記歪補正テーブルが、所定の数(N)のシンボルを含む、Nシンボルの歪んだ信号波形を保存するよう構成されて成ることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記歪補正器が、最大事後確率(MAP)検出を用いて前記受信信号フィールドを前記保存されている歪んだ信号波形と比較し、前記受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形を判定するよう構成されて成ることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記歪補正器が、前記受信信号フィールドを前記保存されている歪んだ信号波形と比較し、前記受信信号フィールドと前記歪補正テーブル内の前記歪んだ信号波形とのユークリッド距離を算出し、前記保存されている歪んだ信号波形のうち前記ユークリッド距離が最小の信号波形に対応する歪補正値を選択することにより、前記受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形を判定するよう構成されて成ることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記受信信号が、位相偏移変調によってデータが変調された光変調信号を変換した電気信号であり、該電気信号が前記光変調信号におけるシンボルの位相を表わしていることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記補正された受信信号に応じて、搬送波位相推定値を算出するよう構成された搬送波位相推定機能、及び前記搬送波推定値に応じて前記電気信号からデータ値を判定し、前記光信号に変調された前記データを表わす出力を生成するよう構成された判定機能を更に有して成ることを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記判定機能から軟判定データ・ストリームを受信し、該データ・ストリームによって表わされる符号化データを復号して復号化データを生成する軟判定順方向誤り訂正(FEC)復号器を更に有して成ることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項10】
デジタル信号処理装置(DSP)をベースにした受信機であって、
光変調信号の受信、検出、及びデジタル変換により受信信号サンプルを含む電気信号を生成するよう構成されたコヒーレント受信機と、
既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び該信号波形に対応する歪補正値を含む歪補正テーブルを保存し、該テーブルに保存されている前記歪んだ信号波形の長さに対応する長さを有する一部の受信信号取得し、受信信号フィールドを前記歪補正テーブル内の前記歪んだ信号波形と比較し、前記受信信号フィールドに最も近い前記歪補正テーブル内の歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、該選択した歪補正値を用いて前記受信信号を補正するよう構成されたDSPと、
を有して成ることを特徴とする受信機。
【請求項11】
前記光変調信号が位相偏移変調によって変調されたものであり、前記電気信号が前記光変調信号におけるシンボルの位相を表わすものであることを特徴とする請求項10記載のDSPをベースにした受信機。
【請求項12】
前記歪補正テーブルが、所定の数(N)のシンボルを含む、Nシンボルの歪んだ信号波形を保存するよう構成されて成ることを特徴とする請求項10記載のDSPをベースにした受信機。
【請求項13】
前記DSPが、トレーニング・データ・シーケンスに対応する信号を受信し、前記トレーニング・データ・シーケンスのデータ・パターンに基づき、受信信号波形をデータ・パターン依存セットに分類し、前記受信信号波形に対応する歪補正値を算出し、前記受信信号波形を前記歪補正値と共に前記データ・パターンの索引付き歪補正テーブルとして保存するよう構成されて成ることを特徴とする請求項10記載のDSPをベースにした受信機。
【請求項14】
前記DSPが、前記補正された受信信号に応じて搬送波位相推定値を算出する搬送波位相推定機能、及び前記搬送波推定値に応じて前記電気信号からデータ値を判定し、前記光信号に変調された前記データを表わす出力を生成する判定機能を実行するよう構成されて成ることを特徴とする請求項11記載のDSPをベースにした受信機。
【請求項15】
前記判定機能から軟判定データ・ストリームを受信し、該データ・ストリームによって表わされる符号化データを復号して復号化データを生成する軟判定順方向誤り訂正(FEC)復号器を更に有して成ることを特徴とする請求項14記載のDSPをベースにした受信機。
【請求項16】
信号中のデータ・パターン依存信号歪を補正する歪補正方法であって、
既知のデータ・パターンに対応する複数の歪んだ信号波形及び該信号波形に対応する歪補正値を含む歪補正テーブルを用意するステップと、
光変調信号を受信し、該信号をデジタル電気信号に変換するステップと、
デジタル信号処理装置内において、前記デジタル信号を処理することにより、前記歪補正テーブルに保存されている前記歪んだ信号波形の長さに対応する長さを有する一部の受信信号を取得し、受信信号フィールドを前記歪補正テーブル内の前記歪んだ信号波形と比較し、前記受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択し、該選択した歪補正値を用いて、前記受信信号を修正して歪を補正するステップと、
を有して成ることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記歪補正テーブルが、所定の数(N)のシンボルを含む、Nシンボルの歪んだ信号波形を保存するよう構成されて成ることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記受信信号フィールドを前記保存されている歪んだ信号波形と比較するステップが、前記受信信号フィールドと前記歪補正テーブル内の前記歪んだ信号波形とのユークリッド距離の算出を含み、前記歪補正値を選択するステップが、前記保存されている歪んだ信号波形のうち前記ユークリッド距離が最小の信号波形に対応する歪補正値の選択を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記デジタル信号を更に処理し、前記受信信号フィールドの位相を回転させ、前記受信信号フィールドの多数の回転させた位相を前記歪んだ信号波形と比較し、前記回転させた位相の各々を考慮して前記受信信号フィールドに最も近い歪んだ信号波形に対応する歪補正値を選択することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記光変調信号が、シンボル・レート約25ギガボーの2偏波QPSKチャンネルを約25GHzのWDMスペーシングで変調された波長分割多重(WDM)信号から多重分離されたものであって、データを約100Gb/sで伝送するものであることを特徴とする請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−520613(P2012−520613A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554104(P2011−554104)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/026511
【国際公開番号】WO2010/104783
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502101180)タイコ エレクトロニクス サブシー コミュニケーションズ エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】