説明

コロナ放電イオン化エレメントを備えたイオン移動度分光器

イオン化エレメントとしてコロナ放電放射源(200;300)を具備することを特徴とするイオン移動度分光器を開示していて、前記コロナ放電放射源(300)が:入口(309)と少なくとも一つの第一連通開口部(311)とを備えた第一チャンバ(308)であって、前記入口(309)は分析するガス用のものであり、前記少なくとも一つの第一連通開口部(311)は、前記第一チャンバにより画成された内表面とIMS分光器の反応区画との間を連通するためのものである、第一チャンバ(308)と;前記第一チャンバの中に含まれている第二チャンバ(303)であって、高純度ガス又は高純度ガス混合体用の入口(306)を備え、前記第一チャンバと前記第二チャンバとの間の少なくとも一つの第二連通開口部(310,310′)を備えた第二チャンバ(303)と;前記第二チャンバに配置されていて、少なくとも一つがが針状である一対の電極(304,302′)と;を含んでいて、前記一対の電極及び前記第二連通開口部は、IMS装置におけるコロナ放電区画とイオン検出器区画との間に光路がない幾何学的形状になるように配置されている。本発明の装置は、23Niイオン源を備えた分光器により再現性のある結果が得られるようになっていて、一方で放射性材料を輸送し使用することに関連する問題を回避できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコロナ放電イオン化エレメントを備えたイオン移動度分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光測定法は、従来技術において頭字語IMSとして公知なものである(同一の頭字語は操作を行なう装置としても使用されていて、“イオン移動度分光器”を表わすものである)。IMS分析を受けるサンプルは、通常分析するガス又は蒸気を含んでいる搬送ガス(carrier gas)であって:
ガス又は蒸気のピコグラム(pg、すなわち10-12g)のオーダーの量又は1兆分の1(サンプルガスの1012の分子に対する分析対象物質の分子に等価である)のオーダーの濃度は適切な条件下で操作することにより搬送ガスにおいて検出することができる。IMS測定法は、検出速度が迅速であるために、一般に例えば空港における爆発物又はドラッグのような種の定量分析に使用されている。とりわけこれらの目的に対して有用な特徴は、装置における検出感度が高いこと、結果を迅速に得ることができること、サイズが小さいこと、及びコストが安いことによるものである。IMS装置及び測定法は特許文献1−4に開示されている。
【0003】
図1はIMS装置を構成する主なエレメントの断面図である。装置はほぼ円筒状のチャンバCにより形成されていて、チャンバは反応区画RZと分離区画DZに分割されている。チャンバCは、一方の端部に分析するガス用の入口ISを、そして対向している端部に荷重粒子の検出器D(IMSスペクトルを形成するデータ収集用の電子装置に接続されている)を有している。チャンバCは二つのポートであるDIとOCとを備えていて、DIは“ドリフトガス(drift gas)”として公知なガスの入口用のものであって、OCはドリフトガスとサンプルとにより形成された混合体用のチャンバ出口であり:ドリフトガスは、イオンが移動しそれらの分離を可能にするガスの手段を構成している。図において、最も一般的な運転モードに対応する形状配置が図示されていて、ドリフトガスの移動方向はイオンと対向するものであるが、ドリフトガス流れがイオンの移動方向と同一の場合ポートDIとOCとは逆転されてもよい。サンプルはエレメントMとして概略的に図示されたイオン化エレメントを介してチャンバCに流入する。
【0004】
エレメントLMにより形成されたイオン種は、ガス流れ及び適切な電場により反応区画RZに移動され、そこで分析でガス中に存在する分子に対応するイオン種が形成される。存在する他の種の濃度に比較して搬送ガスの分子の濃度が数オーダー高いので、イオン化は前記分子のためにいわゆる“反応イオン”の形で行なわれ、その電荷が、電子親和力又はプロトン親和子により又はイオン化ポテンシャルにより、存在する他の種に分配される。非特許文献1にイオン移動度分光測定法の基礎として電荷移動原理(charge transfer principle)が説明されている。
【0005】
反応区画RZはグリッドGにより分離区画DZから分割されていて、グリッドGは通電されると、反応区画RZに存在するイオンがDZ区画に流入するのを防止していて;その逆にグリッドが瞬時通電停止(数百μsの間)されると、RZ区画に存在するイオンの一部が分離区画DZに通過してゆくことができる(“ドリフト区画(drift zone)”として公知である)。事前にDZ区画において形成されたイオンは適切な電場により検出器へ向けて加速され、そして同時にドリフトガスの存在により減速されており;共存しているこれらの相反する作用は、イオンの電荷、質量及びディメンジョン(dimension)により種々のイオンの分離を引き起こされ、検出器への到達時間(ドリフト時間と説明されている)の違いがもたらされその結果荷電ピークが形成されるようになっていて;適切な較正試験によりこれらのピーク全体に含まれているスペクトルを時間の函数として解明することにより、試験中のサンプルにおけるいくつかの種の存在を推察することが可能となる。
入口ISがある一方の端部から検出器Dへ向けてのイオンの移動は、電極E1,E2,…,Enにより発生された電場の存在にもとづくものである。
【0006】
サンプルのイオン化は通常放射性ニッルアイソトープ63Niから放射されるβ線により行なわれる。このエレメントの存在には安全上の問題がある。というのは放射線源は完全に“遮蔽”することができずそして危険なものである電離放射線を常時放射している。この特性のために、63Niベースの線源を備えたIMSを保管し輸送することは国際法により管理されていて、それらの輸送及び使用を困難かつ煩わしいものにしている。
【0007】
この問題を解決するために放射線源をコロナ放電イオン線源に代えることが提案された。このイオン線源は、間にガス媒体が挟さまれている二つの電極から構成されていて、一方の電極はほぼ針形状であり:二つの電極の間に電位差が作用されると、その間に強電場が発生され、電子を二つの電極の一方から引きつけ、そして他方に向けて加速するようになっており;高エネルギのこれらの電子が飛跡に沿って出会うガス分子をイオン化する。
【0008】
IMSタイプも含めた分析器に使用するコロナ放電ベースのイオン線源は例えば特許文献4−7に開示されている。特許文献4−7に開示された装置において、放電はサンプルにおいて直接発生されていて、そのサンプルは搬送ガスと、測定すべき微量のガス又は蒸気との混合体により構成されており;これらの装置は従来のIMSに適切なものであることが判明していて、前述したように、分析の主目的は爆発物又はドラッグのような種の存在を定量的に測定することである。
【0009】
しかしながら、最近定量分析法、とくにマイクロエレクトロニクス産業に使用される高純度ガスの分析に利用することに関心が高まっている。これらの例が特許文献8−15に報告されていて、これらはすべて出願人のものであり、63Nイオン線源を備えた従来形装置を使用するものを開示している。これらに記載されているように、定量的IMS分析は、サンプル中に同時に存在する数種の不純物の濃度を測定しなければならない場合、非常に複雑なものとなっていて、そして高度な知識と関与するすべてのパラメータの制御を必要としている。
【0010】
このタイプの分析において制御することが重要なパラメータは、電子放電により形成される一次イオンの量であり、それは二つの電極間に直接発生される線源のイオン電流に等価なものである。イオン電流は、線源の幾何学的形状は別として、電極間に存在するガスの成分に依存している。前述したように、従来の装置においては、放電はサンプルガス中で直接的に発生され、そして実際の分析においてサンプルガスの成分がガス不純物の種類や量の変化により時間と共に変動するので、従来技術を用いて一次イオンに対応するイオン電流従って合計電荷量を一定にすることは不可能であって;従って定量分析のベースとなるこの電荷が不純物の間にどのように分配されているかを計算することは不可能である。結果は以下のとうりである。従来技術のコロナ放電イオン線源を備えたIMS装置は、とくに複数成分タイプの定量分析に適切なものではない。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5420424号明細書
【特許文献2】米国特許第5457316号明細書
【特許文献3】米国特許第5955886号明細書
【特許文献4】米国特許第6229143号明細書
【特許文献5】米国特許第5684300号明細書
【特許文献6】米国特許第6100698号明細書
【特許文献7】米国特許第6225623号明細書
【特許文献8】米国特許第6740873号明細書
【特許文献9】国際特許公開第02/052255号パンフレット
【特許文献10】国際特許公開第02/054058号パンフレット
【特許文献11】国際特許公開第02/090959号パンフレット
【特許文献12】国際特許公開第02/090960号パンフレット
【特許文献13】国際特許公開第02/099405号パンフレット
【特許文献14】国際特許公開第2004/010131号パンフレット
【特許文献15】国際特許公開第2004/027410号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5485016号明細書
【特許文献17】米国特許第5218203号明細書
【非特許文献1】G.A.Eiceman及びZ.Karps著「イオン移動度分光測定法」、CRC Press社、1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は従来技術における問題を克服し、そしてガスサンプルに同時に存在しているすべての不純物の定量的IMS分析に使用するのに適切なコロナ放電イオン線源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的及び他の目的は、本発明におけるイオン化エレメントとしてコロナ放電放射源を具備することを特徴とするイオン移動度分光器において達成されていて、前記コロナ放電放射源が:
入口と少なくとも一つの第一連通開口部とを備えた第一チャンバであって、前記入口は分析するガス用のものであり、前記少なくとも一つの第一連通開口部は、前記第一チャンバにより画成された内表面とIMS分光器の反応区画との間を連通するためのものである、第一チャンバと;
前記第一チャンバの中に含まれている第二チャンバであって、高純度ガス又は高純度ガス混合体用の入口を備え、前記第一チャンバと前記第二チャンバとの間の少なくとも一つの第二連通開口部を備えた第二チャンバと;
前記第二チャンバに配置されていて、少なくとも一つが針状である一対の電極と;
を含んでいて、
前記一対の電極及び前記第二連通開口部は、IMS装置におけるコロナ放電区画とイオン検出器区画との間に光路がない幾何学的形状になるように配置されている。
【0014】
定量的IMS(単一成分又は複数成分)分析においてコロナ放電放射源の使用にもとづく前述の欠点は、放電がサンプル内部というよりは、サンプルの搬送ガスと同様な又は異なる高純度ガス内部で発生される場合克服されることが本発明において判明した。この方法で運転することにより、放射源において発生されたイオン電流の強度(従って一次イオンの量)は、一対の電極の幾何学的形状に依存し、かつガスの圧力、温度の値及び電極間に作用される電位差に依存していて、電極の幾何学的形状は固定され従って一定であるので、他の三つのパラメータを一定に保つことにより、一次イオン電流の不変性を確実なものにすることが可能になり、その不変性は前述したように、IMS装置を用いて定量分析を実行することを可能にするために基本的に必要なことである。以下の説明において、放電が発生される高純度ガスは補助ガスとして規定されていて;補助ガスは分析を妨げることのない高純度ガスの混合体により構成されていてもよい。
添付図面を用いて本発明を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は前述したものである。本発明の目的は図1におけるイオン化エレメントIMの放射性63Niを置き換えることである。
【0016】
図2は、本発明によるコロナ放電放射源の最も一般的な実施形態を図示している。放射源200は、第一チャンバ201と、第二チャンバ204と、第二チャンバの中に配置された針状の第一電極207及び第二電極208(どのような形状でもよい)と、補助ガスを第二チャンバに導入する入口209と、サンプルを第一チャンバに導入する入口210とにより形成されていて;第一チャンバ201が第一穴203を備えた第一壁面202により画成されており、その第一穴203を備えた第一壁面202により画成されており、その第一穴203は放射源において発生されたイオンがIMS装置の測定チャンバに通過してゆくことを可能にしていて;第二チャンバ204が少なくとも一つの第二穴206を備えた第二壁面205により画成されており、その少なくとも一つの第二穴206は第二チャンバにおいて発生されたイオンが第一チャンバへ向かって通過してゆくためのものである。この装置を使って、補助ガスとサンプルとの間の流量及び/又は圧力の適切な比率で、又は穴203と206との間の寸法の適切な比率で運転することにより、チャンバ204の中でのサンプルの拡散を回避することが可能になるので、高純度の補助ガスだけが存在するようになり、従って一次イオンによる一定電流の発生を確実なものにしている。そのようにして(ラジカル及び準安定種と共に)形成された一次イオンは、補助ガスの移動により穴206を通過して第一チャンバ201の区画211に搬ばれ、そこでサンプルとの全体混合が起こり;この混合により一次イオンは自身の電荷をサンプル中に存在するガス分子に移動する。サンプルと補助ガスとイオン種との混合体がIMS装置の反応区画RZ中へ向かって穴203を通過してゆき、そこで測定すべき不純物に対応するイオン種の形成を伴なった電荷の移動反応が継続される。
【0017】
補助ガス内でのコロナ放電によるイオンの形成は特許文献16において公知のものであるけれども;本特許文献は大気圧におけるイオン化を用いた質量分光器に関するものであって、本発明と比較すると構造的、機能的な著しい違いがある。引用特許による機器において、イオン化は大気圧に保たれた区画で行なわれ、一方イオン分離区画は高真空に保たれている。この状態を維持するために、イオン化区画から分離区画への中性種の通過を可能な限り制限する必要があって、このことは、両区画の間に設置された出来るだけ小さなオリフィスにより、及び分離区画へ向かってのイオンの抽出を最大化する静電レンズ(electrostatic lense)を使用することにより達成されている。この幾何学的形状において、針状電極と、イオンが放電チャンバからサンプルの混合区画へ通過してゆく穴と、機器の混合区画から分離区画へのイオンの通路用穴とは、機器の軸に整列している必要がある。この構造配置がIMS分光器に適用される場合著しい欠点を露呈する。というのは、コロナ放電陽子も発生されるからであって:軸方向幾何学形状のコロナ放電放射源を用いると、陽子はIMS装置の分離区画に流れ込み、その区画で反応区画において発生された同等のものから抽出されたものでないイオンを発生し;さらに陽子は検出器に当たり光電効果により“スプリアス”電流(“spurious”current)を発生し、機器がこれをイオン電流と読み取り、測定の信号/ノイズ比を低減することになり;これらの二つの作用により測定の不確さが増大するからである。
【0018】
特許文献17は、IMSを含めて種々の分析器に使用することのできるイオン化エレメントを開示している。この場合、補助ガスの入口及びサンプルの入口が二つの同心の管になっていて、サンプルの入口が内管であって、二つのガスは可能な限り最小混合を受けるようになっており;補助ガスにおいて発生されたイオンだけが、電荷移動のために、適切な電場によりサンプル流れから引き出され;サンプルと補助ガスとの混合を回避するために、二つのガスが層流状態で装置に導入され、そしてガスの入口ラインに沿ってこの作用を達成するために、乱流を除去するための適切な拡散手段が備えられている。これとは対照的に、本発明においては、補助ガスとサンプルとの混合が、所望する結果を得るために必要な特徴である。引用特許において、コロナ放電放射源又は放射性線源の一方を使用することが可能と説明されているけれども、というのはコロナ放電放射源はイオンに加えてラディカル及び準安定種を発生しているので、放射性線源を使用することが望ましいとされている。これらの付随したイオン化分子は引用特許の目的としては望ましいものではないからであって、イオン化機構は補助ガスにおいて発生されたイオンとサンプルとの物理的な接触のみであるけれども、ラディカル又は準安定イオンはサンプルのイオン化に対して予期しないことをもたらし、その結果分析の実行を不可能なものにしているからである。これに対して、本発明においては、コロナ放電放射源の使用が意図されていて、さらにこの場合ラディカル又は準安定種の存在は問題となるものではなく装置の感度の向上に利用されている。
【0019】
図3は、本発明によるコロナ放電放射源の好適な実施形態の断面図を図示している。
【0020】
この場合、放射源300は、図1に図示するようなIMS装置のチャンバCの端部に形成されている壁面301に直接取り付けられている。ほぼ円筒状の部品302とほぼ平面状の部品302′として形成されている内壁面が、放射源の第二チャンバ303を形成していて;針状の電極304が第二チャンバ303内部に備えられていて;電極304は装置の壁面301を貫通しており、そして外部電子機器に接続されていて;電極304は絶縁部材305により装置の壁面に対して絶縁されていて、その絶縁部材305はプラスチック、セラミック又はガラス材料で作られてもよい。好適な実施形態において、対向電極は壁面からなり、その壁面が第二チャンバを形成し、そして少なくとも壁面の部分302′は外部に接続されている導電材料で作られている。導管306に接続する穴が壁面301に形成されていて、その穴は補助ガスが第二チャンバ303に流入するためのものである。さらなる壁面307は部分302と共に第一チャンバ308を画成している。導管309に接続する穴が壁面301に形成されていて、その導管309はサンプルガスが第一チャンバ301に流入するためのものである。部分302が部分302′と隣接する区域に一連の穴310,310′を備えていて、それらの穴は補助ガスとイオンと放電により形成されたラディカル及び準安定イオンのようなイオン化エレメントとが第一チャンバへ向って通過してゆくことを可能にしている(この区域における補助ガスの流れ方向は曲がった矢印で図示されている)。チャンバ308の穴310,310′を囲んでいる区域が混合区域を形成していて、混合区域において、チャンバ30内において放電により形成された一次一オン、ラディカル準安定原子がサンプルと反応し、電荷をそこに存在しているガス分子に移動する。チャンバ308は、イオン化されたサンプルをIMS装置のRZ区画に移動するための、円環状の穴311を有している。離間した穴310,310′は壁面302及び302′に接続しているネット又はフィルタにより置き代えてもよい。
【0021】
前述したように本発明において、第二チャンバにおいて不純物のないことを確実にするために、第一チャンバ(201;308)に存在するサンプルガスが第二チャンバ(204;303)に流入することを防止する必要があって;この状態は補助ガスの流量(FA)及びサンプルガスの流量(FC)、それぞれの圧力、並びに二つのチャンバ(206;310,310′)間の穴とIMS装置の反応区画RZへ向かう穴(203;311)との間の全体寸法の比率を制御することにより達成することができる。当業者においては、パラメータを適切に選択することにより、二つのチャンバ間の穴に関して、第二チャンバ(204;303)から第一チャンバ(201;303)にガスが流れるようにすることが可能である。
【0022】
さらに本発明による装置を用いて、針状電極(207;304)と、対向電極(208;302′)と、反応チャンバの第一電極(E1)との電位を適切に選択することにより、放射源からイオン及び励起中性種(ラディカル及び準安定種)の両方を、又は後者だけを取り出すことが可能であって、従ってオペレータに対して分析用の管理パラメータを利用可能なものにしている。
【0023】
本発明によるコロナ放電イオン化エレメントは電極間の電位差又は電流差のどちらかを一定に保つことにより使用することができる。第一ケース(電位差一定)は最も一般的な運転モードである。しかしながら、電極は、例えば第二チャンバにおける酸化種の存在により表面が時間と共に変化し;これらの種は補助ガスに存在する不純物(高純度のガスでさえ必ず微量の不純物を含んでいる)であるか、又は補助ガスが酸化ガス又は酸化ガスを含んだガス混合体のようなものである。電極のこれらの化学的な表面の変化は、一定電位差で運転される場合電流の変化(通常減少する)をもたらす。一定電流での運転はこれらの時間的変化をもたらすものではない。
【0024】
本発明を、これに限定するものではないが以下の例を用いて説明する。これらの例は当業者に本発明をどのように実施するかを教示し、かつ本発明を実行するための最適なモードを示めすことである。試験に使用されたIMS装置は図1に概略的に図示した幾何学的形状のものであって、反応区画(電極E1からグリッド電極Egまで)の長さは6cmであって、分離区画(電極Egから検出器Dまで)の長さは8cmである。装置のチャンバに作用される電場は常時130V/cmに等しい。両試験において、グリッドGの開放時間は200μsである。最初の試験から、これらの条件下で試験において発生した種のドリフト時間はほぼ15−30msの間であることが判明した。異なる種のそれぞれのピークインテンシテーはボルト(V)で与えられていて;検出器Dにより直接測定された電流を電圧に変換することは電子機器により行なわれている。
【0025】
実施例1
補助ガスとしてアルゴンガスを使用してヘリウムサンプル(例図BergamoのSIAD社により供給された混合シリンダから始めた)の分析が行なわれた。なおヘリウムサンプルの不純物濃度は:水分1±0.1ppb、酸素1±0.1ppb、水素1±0.1ppb、一酸化炭素1±0.1ppb、二酸化炭素1±0.1ppb及びメタン1±0.1ppbである。
【0026】
これらの濃度は、SIAD社により供給されたすべての不純物が約5ppm含まれている認定されたシリンダから始めて、較正されたオリフィスを介して高純度のヘリウムを用いて希釈することにより得られたものである。
【0027】
IMS分光器は図3に図示するタイプのコロナ放電イオン化エレメントIMを備えている。このエレメントにおいて、電極304先端と電極302′との間の距離は2.5mmであって;部品302と302′とはグリッドにより連結されていて、チャンバ303とチャンバ308との間の穴の全体面積は40mm2であり、一方穴311の面積は90mm2である。補助ガスは穴306を介してチャンバ303の中に供給され、補助ガスの圧力は1050hPaであり流量は500cc/minであって;サンプルガスは穴309を介してチャンバ308の中に供給されており、サンプルガスの圧力は1025hPaであり、流量は500cc/minであって;この場合ドリフトガスアルゴンはイオンの移動に対して対向流で使用されていて、ポートDIを介してIMSチャンバの中へ2000cc/minの流量で導入されている。電極304と302′との間で、電位差は1800Vに維持されていて、電極304がより高電位となっている。この条件において、Ar+イオン、準安定Ar*種及び微量の陽子(二つのチャンバ間にあらわれる光の飛跡は小さいので影響は限定されたものとなっている)が第一チャンバ308の中に導入され;これらの種はサンプルのキャリアガスであるHeをイオン化することはできず、従って、補助ガスのアルゴン分子のために第一電荷の移動が起き、続いてこれらから不純物がサンプル中に生じる。試験結果として得られたスペクトルが図4における曲線1(実線)で図示されている。装置に実際に存在する種は可変的に中性種に結合されたこれらのイオンからなるものであるけれども、グラフにおいて、ピークのどれもがイオンに関連するものとなっている。
【0028】
実施例2
実施例1における試験が補助ガスのイオン化をのぞいてはすべて条件を変更することなく繰返し行なわれた。補助ガスのイオン化は、電極304及び302′を備えることなくチャンバ303の中に設置された、10mCiの放射能の63Ni放射性線源を使用して得られたものである。得られたスペクトルは図4における曲線2(細線)で図示されている。
【0029】
図4における二つの曲線に見られるように、本発明におけるコロナ放電イオン発生源を使用することは、従来の63Ni線源を使用することにより、同一ガスの別のサンプルを用いて得られるスペクトルを再現することが可能であって(二つのスペクトルの差は、一連の二つの試験におけるサンプルの成分のわずかな違いによるものである)、従って、放射性線源を用いて可能であった複数成分の分析を、これを使用することに伴なう問題もなく行なうことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、IMS装置の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明によるコロナ放電イオン化源の一般的な実施形態である。
【図3】図3は、本発明によるコロナ放電イオン化源の好適な実施形態である。
【図4】図4は、本発明および従来技術それぞれのイオン化エレメントを用いて運転した結果得られた二つのIMSスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化エレメントとしてコロナ放電放射源(200;300)を具備することを特徴とするイオン移動度分光器において、前記コロナ放電放射源(200;300)が:
入口(210;309)と少なくとも一つの第一連通開口部(203;311)とを備えた第一チャンバ(201;308)であって、前記入口(210;309)は分析するガス用のものであり、前記少なくとも一つの第一連通開口部(203;311)は、前記第一チャンバにより画成された内表面とIMS分光器の反応区画との間を連通するためのものである、第一チャンバ(201;308)と;
前記第一チャンバの中に含まれている第二チャンバ(204;303)であって、高純度ガス又は高純度ガス混合体用の入口(209;306)を備え、かつ前記第一チャンバと前記第二チャンバとの間の少なくとも一つの第二連通開口部(206;310,310′)を備えた第二チャンバ(204;303)と;
前記第二チャンバに配置されていて、少なくとも一方の電極(207;304)が針状である一対の電極(207,208;304,302′)と;
を含んでいて、
前記一対の電極及び前記第二連通開口部は、IMS装置におけるコロナ放電区画とイオン検出器区画との間に光路がない幾何学的形状になるように配置されている、
イオン移動度分光器。
【請求項2】
前記一対の電極間において一定電位差を維持するようになっている電子回路をさらに具備している、請求項1に記載のイオン移動度分光器。
【請求項3】
前記一対の電極間において一定電流を維持するようになっている電子回路をさらに具備している、請求項1に記載のイオン移動度分光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−508511(P2008−508511A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523245(P2007−523245)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000409
【国際公開番号】WO2006/011171
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(500275854)サエス ゲッタース ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】