説明

コンクリートブロック

【課題】曲線状あるいは折れ線状に配列しても接合部分に隙間が生じることなく、しかも廃棄物を封じ込めることができるコンクリートブロックを提供すること。
【解決手段】廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートA1の周りをモルタル又はコンクリートA2で被覆したコンクリートブロックAにおいて、正面及び両側面は、同じ曲率の円弧状曲面を有する2本の円柱体1,1を左右対称に配置して形成され、一方の側面1bに、他方の側面1c及び正面1aの曲率と同じ曲率の円弧状であり、かつコンクリートブロックを左右に並べて接合する際に、接合するコンクリートブロックの側面又は正面を嵌め合わせる切欠き部2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートの周りをモルタル又はコンクリートで被覆したコンクリートブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物などの廃棄物は、加工処理することにより再利用されるものと、廃棄物処分場に廃棄処分されるものとに分けることができる。例えば、古瓦、建築廃材、焼却灰、注射等の医療具等の廃棄物の処分については、その大部分を廃棄物処分場に運搬して廃棄処分しているのが現状である。
【0003】
廃棄物の処分方法には、廃棄物を焼却処理により発生した焼却灰を固化し廃棄物処分場に運搬して廃棄処分したり、廃棄物を溶融処理して溶融物を水砕してコンクリートの骨材や錘に利用したりする方法が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、成形した産業廃棄物を、コンクリートを流し込んで固化してコンクリートブロックとすることが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、廃棄物とセメントを混練して塊状に成形し、成形済廃棄物を型枠内に浮き上がり状態に挿入し、型枠と成形済廃棄物との間にコンクリートを充填して固化させて、有害物質の漏洩のないブロックとすることが開示されている。
【0006】
またさらに本願発明者は、特許文献3において、廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートブロック又はこれ包み込む防水性シートの周りをモルタル又はコンクリートで被覆してコンクリートとすることを開示している。
【特許文献1】特開2001−38322号公報
【特許文献2】特開平5−285466号公報
【特許文献3】特開2006−256305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術によって得られるコンクリートブロックは、単純な角型(角柱)あるいは丸型(円柱)が主流であり、これらのコンクリートブロックを使用して壁面等を構築する際、コンクリートブロックを直線状に配列する場合は問題ないが、曲線状あるいは折れ線状に配列する場合は、各コンクリートブロック間の接合部分に隙間が生じ、強度上あるいは美観上の問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、曲線状あるいは折れ線状に配列しても接合部分に隙間が生じることなく、しかも廃棄物を封じ込めることができるコンクリートブロックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートの周りをモルタル又はコンクリートで被覆したコンクリートブロックにおいて、正面及び両側面は、同じ曲率の円弧状曲面を有する2本の円柱体を左右対称に配置して形成され、一方の側面に、他方の側面及び正面の曲率と同じ曲率の円弧状であり、かつコンクリートブロックを左右に並べて接合する際に、接合するコンクリートブロックの側面又は正面を嵌め合わせる切欠き部を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、有害物質を含有する廃棄物を使用することが適しており、古瓦、建築廃材、焼却灰、汚泥、アスベスト含有物などを使用することができる。これらの廃棄物は必要に応じて粉砕してセメントと混練し、汚泥などは水分含有量を考慮してコンクリートの添加水分を調整して混練する。
【0011】
また、本発明のコンクリートブロックにおいては、上面に係合凸部を設けるとともに、下面に、コンクリートブロックを上下に積み重ねた際に下段側のコンクリートブロックの係合凸部が係合する係合凹部を設けることもできる
【0012】
さらに、係合凸部及び係合凹部を上下方向に整合させて2個ずつ設け、それぞれの係合凸部に吊り棒を係合させる係合穴を設けることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンクリートブロックは、コンクリートブロックを左右に並べて接合する際に、接合するコンクリートブロックの側面又は正面を嵌め合わせる円弧状の切欠き部を側面に有するので、曲線状あるいは折れ線状に配列しても接合部分に隙間が生じることなく、強度的及び美観的に優れた壁面等を構築できる。
【0014】
また、コンクリートブロック内の廃棄物は、その周りをモルタル又はコンクリートで被覆され、コンクリートブロック内に封じ込められているので、廃棄物に起因する有害物質の漏洩を抑えることができ、コンクリートブロックを安全に有効利用することができる。また、廃棄物処分処理場への廃棄物の投棄量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明のコンクリートブロックを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は横断面図である。
【0017】
本発明のコンクリートブロックAは、その内部に廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートA1が封じ込められており、その廃棄物含有コンクリートA1の周りをモルタル又はコンクリートA2で被覆することにより形成されている。
【0018】
コンクリートブロックAの正面1a及び両側面1b,1cは、同じ曲率の円弧状曲面を有する2本の円柱体1,1を左右対称に配置して形成されている。また、一方の側面1bには、他方の側面1c及び正面1aの曲率と同じ曲率の円弧状の切欠き部2が上下方向の全長にわたって設けられている。この切欠き部2には、後で説明するように、コンクリートブロックAを左右に並べて接合する際に、接合する他のコンクリートブロックの側面又は正面が嵌め合わせられる。
【0019】
コンクリートブロックAの上面には、各円柱体1,1の上面中央位置に係合凸部3,3が設けられており、コンクリートブロックAの下面には、係合凸部3,3と上下方向に整合する位置に係合凹部4,4が設けられている。この係合凹部4,4には、後で説明するように、コンクリートブロックを上下に積み重ねる際に、下段側のコンクリートブロックの係合凸部3,3が係合する。
【0020】
係合凸部3,3の上面には、上下方向に係合穴5,5が設けられている。この係合穴5,5には、後で説明するように、コンクリートブロックAを吊り上げる際に使用する吊り棒を係合させる。なお、コンクリートブロックAの背面は、平面状に形成されている。
【0021】
次に本発明のコンクリートブロックの製造方法を説明する。
【0022】
図2は本発明のコンクリートブロックの製造に使用する型枠を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI−I断面図である。型枠6の内面形状は、図1に示したコンクリートブロックAの外形形状に対応する形状とされている。また、図1で説明した係合穴5を形成するために、パイプ6aがこま6bによって所定の位置に取り付けられている。
【0023】
図3は、本発明のコンクリートブロックの製造工程を示す。まず、図3(a)に示すように、図2で説明した型枠6に所定量のモルタル又はコンクリートA2を投入する。このモルタル又はコンクリートA2が流動性を保持している間に、図3(b)に示すように中型7をモルタル又はコンクリートA2内に押し込んでいく。そうするとモルタル又はコンクリートA2は、型枠6と中型7との間の隙間を上昇し、固化する。この隙間は、図1に示したモルタル又はコンクリートA2層の厚みとなるように設定する。
【0024】
モルタル又はコンクリートA2が固化したら中型7を引き抜く。実施例では、中型7に空気吹込孔7aを設け、この空気吹込孔7aに空気を吹き込むことで、中型7を引き抜きやすくしている。
【0025】
その後、図3(c)に示すように、中型7を引き抜いた後の空洞に、廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートA1を投入する。そして、図3(d)に示すように、廃棄物含有コンクリートA1の上にモルタル又はコンクリートA2を投入し、固化させ、その後、型枠6を外す。これによって、図1に示したような、廃棄物含有コンクリートA1の周りをモルタル又はコンクリートA2で被覆したコンクリートブロックAが得られる。
【0026】
次に、本発明のコンクリートブロックの使用方法を説明する。
【0027】
図4は、本発明のコンクリートブロックの横方向(左右方向)の配列例を示す。同図に示すように、コンクリートブロックAの一方の側面に設けた切欠き部2に隣接するコンクリートブロックAの側面又は正面を嵌め合わせて接合することにより、各コンクリートブロックAの横方向の接合角度を任意に設定することができ、曲線状あるいは折れ線状に配列しても接合部分に隙間が生じることはない。
【0028】
図5は、本発明のコンクリートブロックの縦方向(上下方向)の配列例を示す。同図に示すように、下段側のコンクリートブロックAの係合凸部3に上段側のコンクリートブロックAの係合凹部4を係合させることにより、コンクリートブロックAを千鳥積みにより縦方向に安定して積み上げることができる。
【0029】
このように、本発明のコンクリートブロックを縦方向あるいは横方向に配列すれば、円柱状のブロックが整然と並んでいるように見え、見ばえも良好である。
【0030】
また、本発明のコンクリートブロックを縦方向あるいは横方向に配列する際には、図6に示すように吊り具8を使用してコンクリートブロックAを吊り上げ、移動させることができる。すなわち、コンクリートブロックAの上面に設けられている2つの係合穴5,5のそれぞれに、吊り具8の一対の吊り板8a,8aに固定された吊り棒8b,8bを挿入し、吊り具8によってコンクリートブロックAを吊り上げると、吊り棒8b,8bが係合穴5,5の内周面に突き当たって係合し、コンクリートブロックAをそのまま吊り上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のコンクリートブロックは、河川敷や山間部での土留め用のブロックや各種ブロック塀用のブロックとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のコンクリートブロックを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は横断面図である。
【図2】本発明のコンクリートブロックの製造に使用する型枠を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI−I断面図である。
【図3】本発明のコンクリートブロックの製造工程を示す。
【図4】本発明のコンクリートブロックの横方向(左右方向)の配列例を示す。
【図5】本発明のコンクリートブロックの縦方向(上下方向)の配列例を示す。
【図6】本発明のコンクリートブロックの吊り上げ要領を示す。
【符号の説明】
【0033】
A コンクリートブロック
A1 廃棄物含有コンクリート
A2 モルタル又はコンクリート
1 円柱体
1a 正面
1b,1c 側面
2 切欠き部
3 係合凸部
4 係合凹部
5 係合穴
6 型枠
6a パイプ
6b こま
7 中型
7a 空気吹込孔
8 吊り具
8a 吊り板
8b 吊り棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物とセメントと水を混練して得た廃棄物含有コンクリートの周りをモルタル又はコンクリートで被覆したコンクリートブロックにおいて、
正面及び両側面は、同じ曲率の円弧状曲面を有する2本の円柱体を左右対称に配置して形成され、
一方の側面に、他方の側面及び正面の曲率と同じ曲率の円弧状であり、かつコンクリートブロックを左右に並べて接合する際に、接合するコンクリートブロックの側面又は正面を嵌め合わせる切欠き部を設けたことを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
上面に係合凸部を設けるとともに、下面に、コンクリートブロックを上下に積み重ねた際に下段側のコンクリートブロックの係合凸部が係合する係合凹部を設けた請求項1に記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
係合凸部及び係合凹部を上下方向に整合させて2個ずつ設け、それぞれの係合凸部に吊り棒を係合させる係合穴を設けた請求項2に記載のコンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−45797(P2009−45797A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213089(P2007−213089)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(592106236)
【出願人】(597175846)
【出願人】(505057325)
【Fターム(参考)】