説明

コンクリート型枠パネル用基板

【課題】パネル用基板の再三の使用に際し、使用しない取付孔は封止部材で栓をしたままにすると共に必要な取付孔のみ外して使用することにより、生コンクリートの打設時に使用しない取付孔に生コンクリートが侵入しないようにして、作業性の向上を図ることができるパネル用基板を提供する。
【解決手段】方形薄板1の裏面4に突条桟部2a〜2e,3を格子状に突設して成形され、表面における外周縁部の所定位置に取付孔8を複数貫設し、各取付孔8は、釘20の頭部20aと同じ深さを有しかつ該頭部20aが嵌合する座ぐり孔部9と、該座ぐり孔部9より小径であってかつパネル用基板Aの裏面4側に進むに従い漸次内径が小さくなる漏斗状孔部10と、漏斗状孔部10の最小内径と同じであって釘10の胴部20bの外径と同じ内径を有する円筒状孔部11と、からなり、各取付孔8には、円板天部13と円錐体部14とからなる封止部材12を嵌脱自在に嵌合できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生コンクリートを打設してコンクリート壁、特に天井の壁を成形するために枠組みされるコンクリート型枠パネル用基板(以下、単に「パネル用基板」という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、FRP製のコンクリート型枠パネル用基板を開発し、特許文献1に示すように出願している。このパネル用基板は、方形薄板の裏面に突条桟部を格子状に突設して成形される。そして、通常、コンクリート型枠パネルとして販売するには、方形薄板の裏面にその長手方向に沿ってアルミ製の桟木用固定枠を添着している。しかるに、天井を成形するためのコンクリート型枠としては、前記桟木用固定枠を添着しないパネル用基板がそのまま使用されている。
【0003】
作業上は、多くのパネル用基板を作業現場にそのまま運び込み、各パネル用基板の表面における外周縁部の所定位置に釘を打ち込むための取付孔をドリルで貫設し、これらパネル用基板を天井に配設すると共に前記各取付孔に釘を打ち込んでその下側の桟木に留める。このようにしてパネル用基板を枠組みした後に、その下面を沢山の支持杆により支持する。そして、この状態で、パネル用基板の上面に生コンクリートを打設する。生コンクリートが固化した後に、前記各支持杆を外すと共に前記パネル用基板を脱枠する。これらパネル用基板は、FRP製であって丈夫であることから何回も繰り返し使用される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−37472号公報(第3−4頁、図1、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記パネル用基板は、一度使用するとその表面の外周縁部に貫設された複数の取付孔は開いたままとなる。そこで、繰り返し使用する中で、固定する位置的な関係からいずれかの取付孔が再度使用できない場合は、その取付孔はそのままとし他の所定位置に新たな取付孔を貫設する。この場合、使用しない取付孔はそのまま残るから、生コンクリートを打設すると、その取付孔の中に生コンクリートが侵入してしまい、それが脱枠後に成形されたコンクリートの表面に突出する。このため、その突出部分を綺麗に削り取るといった作業をしなくてはならない。しかも、使用しない取付孔の中には生コンクリートが一部残ってしまい、再度、その取付孔を使用したい場合は、その取付孔内のコンクリートが邪魔になり、釘が打ち難かった。また、取付孔内のコンクリートを取り除くとなると、余分な手間が掛かる。これらは作業性の向上を妨げることとなり、その改善策が強く望まれている。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、パネル用基板の再三の使用に際し、使用しない取付孔は封止部材で栓をしたままにすると共に必要な取付孔のみ封止部材を外して使用することにより、生コンクリートの打設時に使用しない取付孔に生コンクリートが侵入することをなくし、余分な手間を省いて作業性の向上を図ることができるようにしたパネル用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明に係るパネル用基板は、方形薄板の裏面に突条桟部を格子状に突設して成形されるコンクリート型枠パネル用基板であって、前記コンクリート型枠パネル用基板の表面における外周縁部の所定位置に枠組みするため釘を打ち込む取付孔を複数貫設し、前記各取付孔は、前記コンクリート型枠パネル用基板の表面に設けられ前記釘の平らな頭部と同じ深さを有しかつ該釘の頭部が嵌合する座ぐり孔部と、前記座ぐり孔部より内径が小さくかつ前記コンクリート型枠パネル用基板の裏面側に進むに従い漸次内径が小さくなるように内周面をテーパー面に形成した漏斗状孔部と、前記漏斗状孔部の最小内径と同じであって前記釘の胴部の外径と同じ内径を有する円筒状孔部と、からなり、前記各取付孔には、前記座ぐり孔部の深さと同じ厚みを有しかつ該座ぐり孔部に嵌合する円板天部と該円板天部の一側面に一体に設けられ前記漏斗状孔部に嵌合する円錐体部とからなる封止部材を嵌脱自在に嵌合できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパネル用基板は、その表面における外周縁部の所定位置に、すべての固定位置に対応できるようにあらかじめ取付孔が貫設され、それら取付孔にすべて封止部材が嵌脱自在に嵌合される。そして、必要な取付孔のみ封止部材を外して使用するようにしたので、成形後のコンクリートの表面が綺麗に仕上がり、従来のように食み出た突部を削り取る必要性がない。また、いずれの取付孔にも生コンクリートが侵入しないので、釘が打ち込み易い。よって、これらにより作業性が向上するという効果が有る。
【0009】
また、取付孔は漏斗状孔部を有し、一方、封止部材はこれに嵌合する円錐体部を有するので、取付孔に対する封止部材の嵌合・離脱が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るパネル用基板の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明に係るパネル用基板の表側から見た斜視図、図2は同裏側から見た斜視図、図3は図2のX−X線拡大断面図である。このパネル用基板Aは、例えば、ガラス繊維で補強された不飽和ポリエステル樹脂、所謂、FRPにより圧縮成型される。
【0011】
前記パネル用基板Aは、例えば、縦が1800mm、横が600mm、厚みが12mmであって、重量が8.8kgである。そして、その方形薄板1の裏面に縦の突条桟部2a〜2eが短手方向の両側縁部とその間の3箇所にそれぞれ平行に突設され、横の突条桟部3,3…が長手方向の両側端部とその間に各縦の突条桟部2a〜2eと直交するようにかつ平行に複数突設されている。縦・横の突条桟部2a〜2e,3,3…は、いずれも方形薄板1と一体に成型される。
【0012】
図3に示すように、方形薄板1の裏面4と各突条桟部2a〜2eの側面全長との間に、該裏面4から該側面に向かうに従い漸次肉厚が増す肉盛条部6が一体に成形されている。この肉盛条部6は、各突条桟部2a〜2e,3と同様に成形型(図示せず。)により同時に圧縮成型される。
【0013】
このように、方形薄板1の裏面4と各縦の突条桟部2a〜2e及び横の突条桟部3の側面5全体との間に肉盛条部6を成形することにより、方形薄板1と縦・横の突条桟部2a〜2e,3との間にはっきりした境目となるラインがなくなり、成形後のコンクリート表面にその格子状のラインが出ず綺麗に仕上る。
【0014】
型枠パネルAの表面であってその外周縁部の所定位置、すなわち突状桟部2a〜2e,3部位に、後記する釘20を打ち込むための取付孔8が複数貫設される。これら取付孔8は、パネル用基板Aが配置される天井の中央部位や隅角部位によってそれぞれ位置が異なる。このため、パネル用基板Aがどの位置に配置されても、必要な位置に取付孔8が開設されているようにあらかじめ取付孔8を必要な所定位置に貫設しておく。
【0015】
各取付孔8は、図4に示すようにパネル用基板Aの表面に設けられ釘20の平らな頭部20aと同じ深さを有しかつ該釘20の頭部20aが嵌合する座ぐり孔部9と、該座ぐり孔部9より内径が小さくかつパネル用基板Aの裏面側に進むに従い漸次内径が小さくなるように内周面をテーパ面に形成した漏斗状孔部10と、該漏斗状孔部10の最小内径と同じであって釘20の胴部20bの外径と同じ内径を有する円筒状孔部11と、からなる。座ぐり孔部9と漏斗状孔部10と円筒状孔部11とは、当然連通ししかも同一軸線上に位置する。また、円筒状孔部11の長さは、パネル用基板Aの厚みのほぼ4分の1である。
【0016】
前記各取付孔8には、封止部材12が嵌合される。該封止部材12は、合成樹脂製であって、図5(イ)(ロ)に示すように座ぐり孔部9の深さと同じ厚みを有しかつ該座ぐり孔部9に合致して嵌合する円板天部13と該円板天部13の一側面に一体に設けられ、漏斗状孔部10に合致して嵌合する円錐体部14とからなる。そして、取付孔8に円錐体部14側から封止部材12を差し込むと、漏斗状孔部10に円錐体部14が嵌り、座ぐり孔部9に円板天部13が嵌る。これにより、取付孔8が封止部材12により封止される。
【0017】
また、この状態では、円板天部13の上面がパネル用基板Aの表面と面一となる。円錐体部14の外周面には、図5(ロ)に示すようにその中心軸線に沿って突条15が複数本設けられ、封止部材12を取付孔8に差し込んだとき、それら突条15が漏斗状孔部10の内周面に当接して弾性が付与され、封止部材12が容易に抜け難くなっている。そこで、封止部材12を抜くには、円筒状孔部11側から釘20を差し込み押し出すようにすれば、封止部材12取付孔8から容易に取り出すことができる。
【0018】
本発明に係るパネル用基板Aは上記構成からなり、各パネル用基板Aにあっては表面の外周縁部の所定位置に取付孔8が複数貫設される。そこで、沢山のパネル用基板Aを現場に搬送してパネル用基板Aで天井を枠組みするときは、各取付孔8にあらかじめその表側から封止部材12を嵌合させておく。
【0019】
そして、図6(イ)に示すようにパネル用基板Aを所定部位に配置し、必要な取付孔8から封止部材12を外してその表側から該取付孔8に釘20を打ち込む。この場合、各パネル用基板Aの下面に木製の桟木16が配置され、各パネル用基板Aの外周側縁を下から支持するようにしている。この場合も、釘20の頭20aの上面はパネル用基板Aの上面と面一になる。一方、釘を打ち込まない取付孔8は、図6(ロ)に示すように封止部材12を嵌合したままにしておく。
【0020】
また、各パネル用基板Aの下面を多くの伸縮自在なパイプ状の支持具17により支持する。そして、この状態でパネル用基板Aの上面に生コンクリートを打設する。生コンクリートが固化した後は、各支持具17を取り外して各パネル用基板Aを脱枠する。この際、桟木16を外して各取付孔8から釘20を抜く。各取付孔8にあっては、釘20の頭20aまたは封止部材12の円板天部13がその取付孔8を塞いでいるので、いずれもそれら取付孔8から生コンクリートが食み出ることはなく、成形後のコンクリートの外表面が綺麗に仕上がるばかりか、従来のように取付孔8から食み出たコンクリートを取り除く作業を省略できる。
【0021】
取付孔8に打ち込まれた釘20は、円筒状孔部11の内周面のみで支持されているので、釘20との接触面積が少なく、逆方向から釘20を打ち返すことにより釘20が簡単に取り外せる。このようにして、コンクリートの天井が成形されれば、次の現場へ向かう。この際、封止部材12のない取付孔8に再度封止部材12を嵌め込んでおく。封止部材12は、円錐体部14を有し取付孔8は該円錐体部14が嵌る漏斗状孔部10を有するので、封止部材12の嵌脱動作が簡単に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るパネル用基板の表側から見た斜視図。
【図2】同裏側から見た斜視図。
【図3】図2のX−X線拡大断面図。
【図4】パネル用基板の要部の拡大断面図。
【図5】(イ)は封止部材の正面図、(ロ)は(イ)のY−Y線断面図。
【図6】(イ)は取付孔に釘を打ち込んだ状態の断面図、(ロ)は取付孔に封止部材を嵌合した状態の断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 方形薄板
2a〜2e 縦の突条桟部
3 横の突条桟部
4 裏面
8 取付孔
9 座ぐり孔部
10 漏斗状孔部
11 円筒状孔部
12 封止部材
13 円板天部
14 円錐体部
20 釘
20a 頭部
20b 胴部
A パネル用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形薄板の裏面に突条桟部を格子状に突設して成形されるコンクリート型枠パネル用基板であって、前記コンクリート型枠パネル用基板の表面における外周縁部の所定位置に枠組みするため釘を打ち込む取付孔を複数貫設し、
前記各取付孔は、前記コンクリート型枠パネル用基板の表面に設けられ前記釘の平らな頭部と同じ深さを有しかつ該釘の頭部が嵌合する座ぐり孔部と、前記座ぐり孔部より内径が小さくかつ前記コンクリート型枠パネル用基板の裏面側に進むに従い漸次内径が小さくなるように内周面をテーパー面に形成した漏斗状孔部と、前記漏斗状孔部の最小内径と同じであって前記釘の胴部の外径と同じ内径を有する円筒状孔部と、からなり、
前記各取付孔には、前記座ぐり孔部の深さと同じ厚みを有しかつ該座ぐり孔部に嵌合する円板天部と該円板天部の一側面に一体に設けられ前記漏斗状孔部に嵌合する円錐体部とからなる封止部材を嵌脱自在に嵌合できるようにしたことを特徴とするコンクリート型枠パネル用基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−24360(P2009−24360A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186926(P2007−186926)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(592034364)
【Fターム(参考)】