コンクリート壁体およびその製造方法
【課題】グラウト材との付着力を高めることができるようにして縁切れによる止水効果の減少を防止できるコンクリート壁体を提供する。
【解決手段】ＰＣ壁体11は、コンクリートにより長尺状に形成した壁体本体12と、この壁体本体12の側面に長手方向に形成したグラウト注入溝13と、このグラウト注入溝13の表面に形成した凹凸粗面14とを具備している。凹凸粗面14は、遠心成形時の型枠内面に設置した凝結遅延剤によりコンクリートの凝結を遅らせて、成形後に形成する。
【解決手段】ＰＣ壁体11は、コンクリートにより長尺状に形成した壁体本体12と、この壁体本体12の側面に長手方向に形成したグラウト注入溝13と、このグラウト注入溝13の表面に形成した凹凸粗面14とを具備している。凹凸粗面14は、遠心成形時の型枠内面に設置した凝結遅延剤によりコンクリートの凝結を遅らせて、成形後に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、グラウト注入溝を有するコンクリート壁体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
遠心力プレストレストコンクリート壁体（以下、この壁体をＰＣ壁体という）は側面に半円断面形状のグラウト注入溝を持ち、隣り合うＰＣ壁体により円形断面のグラウト注入孔が形成され、このグラウト注入孔にモルタルグラウトを注入することで止水効果を期待している（例えば、特許文献１参照。）。
【特許文献１】特開平１１−３６３３４号公報（第３頁、図１）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
ＰＣ壁体は、遠心成形されるため製品表面が非常に平滑な面であり、ＰＣ壁体のグラウト注入溝と、この溝内に注入されたモルタルグラウトとの付着力が弱く、縁切れによる隙間形成によって十分な止水効果を得られない場合がある。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、グラウト材との付着力を高めることができるようにして縁切れによる止水効果の減少を防止できるコンクリート壁体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１に記載された発明は、コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体と、壁体本体の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝と、グラウト注入溝の表面に形成された凹凸粗面とを具備したコンクリート壁体である。
【０００６】
請求項２に記載された発明は、グラウト注入溝を有するコンクリート壁体を成形する型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施し、この型枠でコンクリート壁体を遠心成形し、この型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面のモルタル分を洗い落して粗骨材を露出させることで凹凸粗面を形成するコンクリート壁体の製造方法である。
【発明の効果】
【０００７】
請求項１に記載された発明によれば、壁体本体のグラウト注入溝の表面に凹凸粗面を形成することで、この凹凸粗面とグラウト注入溝に注入されたグラウト材との付着力を高めることができるので、縁切れによる止水効果の減少を防止して止水効果を高めることができ、コンクリート壁体の背面水位が高く作用水圧が高い場合にも対応できる。
【０００８】
請求項２に記載された発明によれば、予め、型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施しておき、遠心成形後の型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面が凝結していない状態で、モルタル分を洗い落すだけの簡単な作業により、凹凸粗面を容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
以下、本発明を、図１乃至図３に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【００１０】
図１は、コンクリート壁体としての遠心力プレストレストコンクリート壁体（以下、この壁体をＰＣ壁体11という）を示し、このＰＣ壁体11は、コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体12と、この壁体本体12の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝13と、このグラウト注入溝13の表面に形成された凹凸粗面14とを具備したものである。
【００１１】
このように、ＰＣ壁体11の側面に形成されたグラウト注入溝13の表面に意図的に凹凸粗面14を形成することで、隣接するＰＣ壁体11の対向するグラウト注入溝13内に注入されたグラウト材としてのモルタルグラウト15の付着力を高めるようにする。
【００１２】
なお、図１は、ＰＣ壁体11を連設して形成した護岸などの連続壁を示し、この連続壁の一側は岸辺であり、他側は河、池などである。
【００１３】
このＰＣ壁体11によれば、壁体本体12のグラウト注入溝13の表面に凹凸粗面14を形成することで、この凹凸粗面14とグラウト注入溝13に注入されたモルタルグラウト15との付着力を高めることができるので、縁切れによる止水効果の減少を防止して止水効果を高めることができ、これにより、ＰＣ壁体11の背面水位が高く作用水圧が高い場合などにも対応できる。
【００１４】
次に、図２および図３に基いて、上記ＰＣ壁体11の製造方法を説明する。
【００１５】
図２は、図１に示されたグラウト注入溝13を有するＰＣ壁体11を成形する遠心成形用の製造型枠を示し、図２（ａ）に示されるように、各型枠21，22には、ＰＣ壁体11のグラウト注入溝13を成形するための円弧状断面のグラウト注入溝成形部23が、それぞれ設けられている。
【００１６】
これらのグラウト注入溝成形部23の内面に、シート状に形成されたコンクリートの凝結を遅延させる凝結遅延剤24を予め貼付しておくか、または液状の凝結遅延剤24を刷毛などで塗布しておく。
【００１７】
そして、図２（ｂ）に示されるように、それらの型枠21，22を閉じて遠心成形機（図示せず）に設置し、図２（ｃ）に示されるように、それらの型枠21，22内でＰＣ壁体11を遠心成形する。
【００１８】
さらに、図３（ａ）に示されるように、型枠21，22から脱型したＰＣ壁体11のグラウト注入溝13におけるコンクリート表面のモルタル分は、凝結遅延剤24の働きで凝結されていない未凝結状態にあるので、図３（ｂ）に示されるように、その未凝結状態のモルタル分を洗い落してコンクリートの粗骨材を露出させることで、凹凸粗面14を形成する。
【００１９】
このＰＣ壁体11の製造方法によれば、予め、型枠21，22のグラウト注入溝成形部23に凝結遅延剤24を施しておき、遠心成形後の型枠21，22から脱型したＰＣ壁体11のグラウト注入溝13におけるコンクリート表面が凝結していない状態で、モルタル分を洗い落すだけの簡単な作業により、凹凸粗面14を容易に形成できる。
【００２０】
なお、ＰＣ壁体11の側面に形成されたグラウト注入溝13の表面を意図的に粗面化する手法としては、脱型後の製品を物理的に加工する方法もある。
【００２１】
例えば、グラインダによりＰＣ壁体11のグラウト注入溝13内を削ったり、または、チッパによりＰＣ壁体11のグラウト注入溝13の表面をはつる方法がある。さらには、ショットブラストにより、ＰＣ壁体11のグラウト注入溝13の表面に細かい鋼球を高速で吹付ける方法もある。
【００２２】
本発明は、護岸などの連続壁に用いられる止水性の高いコンクリート壁体およびその製造方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明に係るコンクリート壁体の一実施の形態を示す連続壁の断面図である。
【図２】本発明に係るコンクリート壁体の製造方法の一実施の形態を示す断面図であり、（ａ）は組合せ前の型枠の断面図であり、（ｂ）は組合せ後の型枠の断面図であり、（ｃ）は遠心成形直後のコンクリート壁体の断面図である。
【図３】同上製造方法の脱型後のコンクリート壁体の断面図であり、（ａ）は凝結遅延剤の付着状態を示す断面図であり、（ｂ）は未凝結状態のモルタル分の洗い落し後の粗面状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【００２４】
11 コンクリート壁体（ＰＣ壁体）
12 壁体本体
13 グラウト注入溝
14 凹凸粗面
21，22 型枠
23 グラウト注入溝成形部
24 凝結遅延剤
【技術分野】
【０００１】
本発明は、グラウト注入溝を有するコンクリート壁体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
遠心力プレストレストコンクリート壁体（以下、この壁体をＰＣ壁体という）は側面に半円断面形状のグラウト注入溝を持ち、隣り合うＰＣ壁体により円形断面のグラウト注入孔が形成され、このグラウト注入孔にモルタルグラウトを注入することで止水効果を期待している（例えば、特許文献１参照。）。
【特許文献１】特開平１１−３６３３４号公報（第３頁、図１）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
ＰＣ壁体は、遠心成形されるため製品表面が非常に平滑な面であり、ＰＣ壁体のグラウト注入溝と、この溝内に注入されたモルタルグラウトとの付着力が弱く、縁切れによる隙間形成によって十分な止水効果を得られない場合がある。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、グラウト材との付着力を高めることができるようにして縁切れによる止水効果の減少を防止できるコンクリート壁体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１に記載された発明は、コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体と、壁体本体の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝と、グラウト注入溝の表面に形成された凹凸粗面とを具備したコンクリート壁体である。
【０００６】
請求項２に記載された発明は、グラウト注入溝を有するコンクリート壁体を成形する型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施し、この型枠でコンクリート壁体を遠心成形し、この型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面のモルタル分を洗い落して粗骨材を露出させることで凹凸粗面を形成するコンクリート壁体の製造方法である。
【発明の効果】
【０００７】
請求項１に記載された発明によれば、壁体本体のグラウト注入溝の表面に凹凸粗面を形成することで、この凹凸粗面とグラウト注入溝に注入されたグラウト材との付着力を高めることができるので、縁切れによる止水効果の減少を防止して止水効果を高めることができ、コンクリート壁体の背面水位が高く作用水圧が高い場合にも対応できる。
【０００８】
請求項２に記載された発明によれば、予め、型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施しておき、遠心成形後の型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面が凝結していない状態で、モルタル分を洗い落すだけの簡単な作業により、凹凸粗面を容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
以下、本発明を、図１乃至図３に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【００１０】
図１は、コンクリート壁体としての遠心力プレストレストコンクリート壁体（以下、この壁体をＰＣ壁体11という）を示し、このＰＣ壁体11は、コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体12と、この壁体本体12の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝13と、このグラウト注入溝13の表面に形成された凹凸粗面14とを具備したものである。
【００１１】
このように、ＰＣ壁体11の側面に形成されたグラウト注入溝13の表面に意図的に凹凸粗面14を形成することで、隣接するＰＣ壁体11の対向するグラウト注入溝13内に注入されたグラウト材としてのモルタルグラウト15の付着力を高めるようにする。
【００１２】
なお、図１は、ＰＣ壁体11を連設して形成した護岸などの連続壁を示し、この連続壁の一側は岸辺であり、他側は河、池などである。
【００１３】
このＰＣ壁体11によれば、壁体本体12のグラウト注入溝13の表面に凹凸粗面14を形成することで、この凹凸粗面14とグラウト注入溝13に注入されたモルタルグラウト15との付着力を高めることができるので、縁切れによる止水効果の減少を防止して止水効果を高めることができ、これにより、ＰＣ壁体11の背面水位が高く作用水圧が高い場合などにも対応できる。
【００１４】
次に、図２および図３に基いて、上記ＰＣ壁体11の製造方法を説明する。
【００１５】
図２は、図１に示されたグラウト注入溝13を有するＰＣ壁体11を成形する遠心成形用の製造型枠を示し、図２（ａ）に示されるように、各型枠21，22には、ＰＣ壁体11のグラウト注入溝13を成形するための円弧状断面のグラウト注入溝成形部23が、それぞれ設けられている。
【００１６】
これらのグラウト注入溝成形部23の内面に、シート状に形成されたコンクリートの凝結を遅延させる凝結遅延剤24を予め貼付しておくか、または液状の凝結遅延剤24を刷毛などで塗布しておく。
【００１７】
そして、図２（ｂ）に示されるように、それらの型枠21，22を閉じて遠心成形機（図示せず）に設置し、図２（ｃ）に示されるように、それらの型枠21，22内でＰＣ壁体11を遠心成形する。
【００１８】
さらに、図３（ａ）に示されるように、型枠21，22から脱型したＰＣ壁体11のグラウト注入溝13におけるコンクリート表面のモルタル分は、凝結遅延剤24の働きで凝結されていない未凝結状態にあるので、図３（ｂ）に示されるように、その未凝結状態のモルタル分を洗い落してコンクリートの粗骨材を露出させることで、凹凸粗面14を形成する。
【００１９】
このＰＣ壁体11の製造方法によれば、予め、型枠21，22のグラウト注入溝成形部23に凝結遅延剤24を施しておき、遠心成形後の型枠21，22から脱型したＰＣ壁体11のグラウト注入溝13におけるコンクリート表面が凝結していない状態で、モルタル分を洗い落すだけの簡単な作業により、凹凸粗面14を容易に形成できる。
【００２０】
なお、ＰＣ壁体11の側面に形成されたグラウト注入溝13の表面を意図的に粗面化する手法としては、脱型後の製品を物理的に加工する方法もある。
【００２１】
例えば、グラインダによりＰＣ壁体11のグラウト注入溝13内を削ったり、または、チッパによりＰＣ壁体11のグラウト注入溝13の表面をはつる方法がある。さらには、ショットブラストにより、ＰＣ壁体11のグラウト注入溝13の表面に細かい鋼球を高速で吹付ける方法もある。
【００２２】
本発明は、護岸などの連続壁に用いられる止水性の高いコンクリート壁体およびその製造方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明に係るコンクリート壁体の一実施の形態を示す連続壁の断面図である。
【図２】本発明に係るコンクリート壁体の製造方法の一実施の形態を示す断面図であり、（ａ）は組合せ前の型枠の断面図であり、（ｂ）は組合せ後の型枠の断面図であり、（ｃ）は遠心成形直後のコンクリート壁体の断面図である。
【図３】同上製造方法の脱型後のコンクリート壁体の断面図であり、（ａ）は凝結遅延剤の付着状態を示す断面図であり、（ｂ）は未凝結状態のモルタル分の洗い落し後の粗面状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【００２４】
11 コンクリート壁体（ＰＣ壁体）
12 壁体本体
13 グラウト注入溝
14 凹凸粗面
21，22 型枠
23 グラウト注入溝成形部
24 凝結遅延剤
【特許請求の範囲】
【請求項１】
コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体と、
壁体本体の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝と、
グラウト注入溝の表面に形成された凹凸粗面と
を具備したことを特徴とするコンクリート壁体。
【請求項２】
グラウト注入溝を有するコンクリート壁体を成形する型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施し、
この型枠でコンクリート壁体を遠心成形し、
この型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面のモルタル分を洗い落して粗骨材を露出させることで凹凸粗面を形成する
ことを特徴とするコンクリート壁体の製造方法。
【請求項１】
コンクリートにより長尺状に形成された壁体本体と、
壁体本体の側面に長手方向に形成されたグラウト注入溝と、
グラウト注入溝の表面に形成された凹凸粗面と
を具備したことを特徴とするコンクリート壁体。
【請求項２】
グラウト注入溝を有するコンクリート壁体を成形する型枠のグラウト注入溝成形部に凝結遅延剤を施し、
この型枠でコンクリート壁体を遠心成形し、
この型枠から脱型したコンクリート壁体のグラウト注入溝におけるコンクリート表面のモルタル分を洗い落して粗骨材を露出させることで凹凸粗面を形成する
ことを特徴とするコンクリート壁体の製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２００８−１７４９２７（Ｐ２００８−１７４９２７Ａ）
【公開日】平成２０年７月３１日（２００８．７．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−７７０８（Ｐ２００７−７７０８）
【出願日】平成１９年１月１７日（２００７．１．１７）
【出願人】（０００２２８６６０）日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年７月３１日（２００８．７．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１月１７日（２００７．１．１７）
【出願人】（０００２２８６６０）日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Ｆターム（参考）】
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