説明

コンクリート壁体表面用穴埋め部材およびその使用方法

【課題】止水性を確保しつつシーリング材の使用量を節減して工事費の低減を図る。
【解決手段】処理栓をコーン穴の底部側に嵌合するインナーコーン1と壁体の表面側に係止されるアウターコーン2とで構成し、インナーコーン1はセパレータのねじ部分にかぶせて係止される深さに隔壁122を有する筒状部12を備える。隔壁122の裏側の空洞分だけシーリング材が節約できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁体を構築する際に表面に発生する穴を埋めて壁体の美観と寿命を向上させる穴埋め部材およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートで壁体を構築する際、表面にセパレータのコーンによる穴が発生する。
【0003】
図5は構築中のコンクリート壁体を示す断面図で、符号Wはコンクリートの壁体、符号3はセパレータと呼ばれる鋼棒、符号4は追って説明するセパレータの両端に取り付けられる連結金具で符号41はその板状部、符号42はコーンである。コーン42はセパレータ3の両端のねじ部にねじ込まれる。符号5は板状部41に挿入されるクリップ、符号6は型枠である。
【0004】
図6は連結金具の板状部41の斜視図ならびにコーン42の断面図、図7は両者を組み合わせた連結金具4の斜視図である。
【0005】
セパレータ3によって型枠6を所定間隔に保持した状態でコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、クリップ5を抜いて型枠6を解体し、連結金具4も取り外す。
【0006】
図8は連結金具4を取り外した状態の壁体Wの断面図である。連結金具4を取り外した壁体Wの表面にはコーン穴Hが残り、しかも穴の中にはセパレータ3先端のねじ部31が突出している。
【0007】
このままでは美観上好ましくないし、かつねじ部31によって幼児がけがをしたり、ねじ部31に発生するさびによって壁体Wの表面が汚れたりするおそれがあるため、従来、コーン穴H内に手作業でモルタルを充填することが行われていた。しかしこの作業は手間がかかる上に、丁寧に行わないとかえって外観が見苦しいものとなり、また充填が不完全で隙間が残るとモルタルが脱落して内部に水が入りねじ部31にさびが発生し、さび汁が洩れ出して壁面を汚染するなどの問題点があった。
【0008】
特許文献1には、このような問題点に対処できるようにしたコーン穴処理栓(穴埋め部材)が記載されている。これの斜視図を図9に、断面図を図10に示す。
【0009】
このコンクリート壁体表面用穴埋め部材1Aは樹脂製の一体成形品で、コーン穴Hのコーン状の開口部に嵌合する本体符号11と、この本体11により一端側の開口が閉塞され、他端部の開口にセパレータ3のねじ部31が挿入される筒状の収納部符号12とからなり、この収納部12の内面に軸方向に複数列の突条符号121が形成されている。符号111は本体11の外周面、符号112は外周面111に設けられたフィン、符号113はフランジである。
【0010】
この穴埋め部材1Aをゴムハンマ等で叩いてコーン穴Hに押し込むと、突条121がセパレータ3のねじ部31のねじ山に食い込むのでしっかりと固定され、脱落しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3127161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ねじ部31のさび防止などの止水性を高めるため、特許文献1にも記載があるが穴埋め部材の筒状部(収納部)12内部にシーリング材を充填してから打ち込むようにするとよい。ねじ山が筒状部12内部に挿入されるにつれて充填されているシーリング材が周囲にあふれ、コーン穴Hと穴埋め部材1Aとの隙間がふさがれて水密性が向上する。
【0013】
ところで、樹脂成形品には設計上できるだけ均一な肉厚が要求されるため、筒状部12の穴をねじ山にかぶせるのに必要なだけの深さでとどめることができず、図10に示すように本体11の底部に達する深い穴となってしまう。したがってシーリング材の充填量も必要以上に多くなり、サイズの大きいセパレータの場合施工費の増加につながってしまうという問題点がある。
【0014】
本発明は、この点に着目し、筒状部の穴をねじ山にかぶせるのに必要なだけの深さでとどめることにより、より経済的な施工を実現するコンクリート壁体表面用穴埋め部材、ならびにその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の本発明は、コンクリート壁体表面のセパレータのねじ部分が突出したコーン穴をふさぐ樹脂製のコンクリート壁体表面用穴埋め部材であって、前記コーン穴の底部側に嵌合するインナーコーンと、このインナーコーンに嵌合して前記コーン穴の表面側に係止されて前記コーン穴をふさぐアウターコーンとよりなり、前記インナーコーンは中央にセパレータのねじ部にかぶせて係止される深さに隔壁を有する筒状部を備えるとともに、このインナーコーンの筒状部の外面および前記アウターコーンの中央に設けられた筒状部の内面に互いに嵌合する係止構造を有することを特徴とするコンクリート壁体表面用穴埋め部材である。
【0016】
請求項2に記載の本発明は、前記インナーコーン中央の筒状部内にシーリング材を充填してから請求項1に記載のコンクリート壁体表面用穴埋め部材を前記コーン穴に打ち込むことを特徴とするコンクリート壁体表面用穴埋め部材の使用方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コーン穴の処理作業において、止水構造を確保しつつ、シーリング材の使用量を節減して工事費が低減できるという、すぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例の穴埋め部材の組み合わせ状態の断面図である。
【図2】本発明実施例の穴埋め部材の分解状態の斜視図である。
【図3】実施例の穴埋め部材の使用方法を説明する説明図である。
【図4】実施例の穴埋め部材を打ち込んだ状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる構築中の壁体を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる連結金具の斜視図ならびに断面図である。
【図7】本発明に係わる連結金具の斜視図である。
【図8】連結金具を取り外した状態の壁体の断面図である。
【図9】従来の技術における穴埋め部材の斜視図である。
【図10】同じく従来の技術における穴埋め部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施例を図面により説明する。
【0020】
図1は本発明実施例のコンクリート壁体表面用穴埋め部材を組み合わせ状態で示す断面図、図2は同じく分解状態で示す斜視図で、これまでと同じものについては同一符号を使用している。本体は2つの部分に分かれており、符号1はコーン穴Hの奥の方に挿入されるインナーコーン、符号2は壁面側に位置するアウターコーンである。符号121は筒状部12内面の突条、符号122はセパレータ3のねじ部31にかぶせて係止される深さとなる位置に配置され筒状部12の内部に設けられた隔壁、符号123は筒状部12外面に設けられたリング状突起である。また符号211はアウターコーン2の本体21に設けられたフィン、符号212はフランジで、図9に示した穴埋め部材1Aにおけるフィン112、フランジ113に相当する。符号221は、突起123と合わせてインナーコーン1とアウターコーン2との係止構造を構成する溝である。
【0021】
図3はこの穴埋め部材の使用方法を説明する説明図である。筒状部12の係止構造を嵌合させてインナーコーン1とアウターコーン2を組み合わせた後、インナーコーン1の筒状部12内にシーリング材Sを充填してから矢印のようにコーン穴Hのセパレータ3のねじ部31に向けてゴムハンマ等で軽く打ち込む。シーリング材Sとしては止水性を長期に維持するため、非硬化性、非収縮性のもの、たとえば1成分形変性シリコン系シーリング材、いわゆる建築用セメダインなどがよい。
【0022】
図4は打ち込んだ状態を示す断面図である。穴埋め部材をコーン穴Hのセパレータ3のねじ部31に向けて打ち込むにつれて中のシーリング材Sが押し出され、傘状に開いたインナーコーンの本体110に沿って周囲に広がり、完璧な止水構造が実現する。隔壁122はセパレータ3のねじ部31にかぶせるのに必要十分な位置に設けられる。したがってこれまでの穴埋め部材と比較して筒状部12の底部(図3においては外壁側)ではなく、長さ方向の中間位置にある。そしてその外側には空洞Cを設けるようにしているため、樹脂製の穴埋め部材全体の肉厚がほぼ均一となって製造に支障がない上、空洞Cの容積分だけシーリング材Sが節約できる。壁面に対してセパレータ3の数は多いから、セパレータ3のサイズが1/2インチ以上の大きいものになると節約されるシーリング材Sもかなりの量となり、本発明の効果は大きい。
【符号の説明】
【0023】
1…インナーコーン、 1A…穴埋め部材、 2…アウターコーン、 3…セパレータ、 4…連結金具、 5…クリップ、 6…型枠、 11…従来コーンの本体部、 12,22…筒状部、 31…ねじ部、 41…板状部、 42…コーン、 110…インナーコーンの本体部、 111…外周面、 112,211…フィン、 113,212…フランジ、 122…隔壁、 123…リング状突起(係止構造)、 210…アウターコーンの本体部、 221…嵌合溝(係止構造)、 C…空洞、 H…コーン穴、 S…シーリング材、 W…壁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁体表面のセパレータのねじ部分が突出したコーン穴をふさぐ樹脂製のコンクリート壁体表面用穴埋め部材であって、前記コーン穴の底部側に嵌合するインナーコーンと、このインナーコーンに嵌合して前記コーン穴の表面側に係止されて前記コーン穴をふさぐアウターコーンとよりなり、前記インナーコーンは中央にセパレータのねじ部にかぶせて係止される深さに隔壁を有する筒状部を備えるとともに、このインナーコーンの筒状部の外面および前記アウターコーンの中央に設けられた筒状部の内面に互いに嵌合する係止構造を有することを特徴とするコンクリート壁体表面用穴埋め部材。
【請求項2】
前記インナーコーン中央の筒状部内にシーリング材を充填してから請求項1に記載のコンクリート壁体表面用穴埋め部材を前記コーン穴に打ち込むことを特徴とするコンクリート壁体表面用穴埋め部材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−43012(P2011−43012A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193021(P2009−193021)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(599034642)
【Fターム(参考)】