説明

コンクリート杭構築装置及びそれを使用する場所打ちコンクリート杭の構築方法

【課題】柱状地盤改良における残土の発生や、改良地盤の品質の管理であり、鋼管杭におけるコストの高騰を解決する。
【解決手段】圧入ヘッド2に拡径部5を嵌合したコンクリート杭構築装置Aを地盤Bに押し込んで、孔10を形成する。孔10に生コンクリート11を投入し、所定の深さまで圧入ヘッド2が到達した後、ロッド1を引き上げる。圧入ヘッド2外周に嵌合した拡径部5を圧入ヘッド2よりも遅れて引き上げ、生コンクリート11を圧入ヘッド2外周から拡径部5の嵌合孔6を通過させる。生コンクリート11にはバイブレーター9の振動を与える。生コンクリート11により、信頼性の高い杭Cとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤にコンクリート杭を形成するための構築装置と、その構築装置を使用して場所打ち杭を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤上に住宅や小規模建築物を構築する場合、地盤を改良したり、鋼管杭を埋設して、その上に住宅や建築物を構築することが広く採用されている。
それらのうち、地盤を柱状に改良する手段として、地盤を掘削してセメント固化材料を混入して土砂を硬化させる、例えば特開2006−233617号公報に記載されたソイルセメント柱が知られている。
ソイルセメント柱は、柱状地盤改良とも呼ばれ、その欠点は残土が多く出るために、その残土搬出コストが多くかかることである。
また、配慮して作業を行っても、地盤に混入する固化材の粉塵が飛散するため、街中では苦情を多く受けることがある。
更に、柱状地盤改良は、地盤地質によっては全く硬化しない場合もあり、その改良した地盤の管理・確認が難しい。
【0003】
また、特開2008−255695号公報に記載されたような地盤に鋼管を埋設する鋼管杭によって建築物を支持する方法もある。
この鋼管杭は、鋼管を支持層まで到達しなければ役に立たないため、事前に地盤調査しているにも拘わらず設計長よりも深く入ってしまうなど、設計通りにならぬことがあり、材料として高価な鋼管を使用することで総額的に非常にコストが高くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233617号公報
【特許文献2】特開2008−255695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、これまでの柱状地盤改良における残土の発生や、改良地盤の品質の管理であり、鋼管杭におけるコストの高騰である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるコンクリート杭構築装置は、地盤に押し込んで孔を形成するコンクリート杭構築装置であって、
ロッドの先端に圧入ヘッドを設け、
その圧入ヘッドの外周に、当該圧入ヘッドの外径よりも外径が大きいとともに、中心に圧入ヘッドの一部が嵌合可能な嵌合孔を有する拡径部を着脱自在に取付け、
前記圧入ヘッドと拡径部は、所定以上の間隔を開けて連結する連結部材によって連結されているものである。
【0007】
本発明にかかる場所打ちコンクリート杭の構築方法は、圧入ヘッドに拡径部を嵌合した前記のコンクリート杭構築装置を地盤に押し込んで、無回転、或いは地盤によっては回転しながら孔を形成し、
前記した孔に生コンクリートを投入し、
所定の深さまで圧入ヘッドが到達した後、ロッドを引き上げ、
圧入ヘッド外周に嵌合した拡径部を圧入ヘッドよりも遅れて引き上げ、
生コンクリートを圧入ヘッド外周から拡径部の嵌合孔を通過させ、打設する。
従って比重の重い生コンクリートが孔壁の崩壊を防ぐため、孔の直径は拡径部の径を維持して、拡径部の径と同じコンクリート杭が形成される。
本発明にかかる他の場所打ちコンクリート杭の構築方法は、地盤に形成した孔内にバイブレーターを配置し、
生コンクリートに振動を与えるものである。
更に本発明にかかる場所打ちコンクリート杭の構築方法は、比重の重い生コンクリートを投入しながら孔を形成し、
生コンクリートの重量によって孔壁の崩壊を防ぐものである。
【発明の効果】
【0008】
<a>地盤に形成した孔に生コンクリートを投入して杭を形成するため、地盤の性質に左右されず、良質なコンクリート杭を構築出来、その管理確認も容易である。
<b>鋼管を使用せず、生コンクリートの投入によって杭を構築するため、そのコストも安価となる。
<c>コンクリート杭構築装置によって土砂を周方向へ押しのけて地盤に孔を形成し、生コンクリートを投入するだけであるため、残土の発生も少なく、その処理のコストもかからない。
<d>圧入ヘッドと、その外周に嵌合した拡径部によって地盤に孔を形成し、所定の深さまで到達した後、ロッドを引き上げて圧入ヘッドを上昇させ、連結部材によって連結した拡径部を後続させ、生コンクリートを圧入ヘッド外周から拡径部の嵌合孔を通過させるため、生コンクリートを孔外へ排出しない。
<e>コンクリート杭構築装置は、全体を回収するため、繰り返し使用でき、コストを低く抑えることができる。
<f>バイブレーターによって生コンクリートに振動を与え、より良質のコンクリート杭を構築できる。
<g>生コンクリートは、比較的比重が重く、改良する地盤よりも重い。従って、地盤に形成した孔に生コンクリートを投入することで、孔壁の崩壊を防ぎ、ケーシング等を使用することなく崩壊防止策を実施することになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンクリート杭構築装置の先端部分の斜視図。
【図2】コンクリート杭構築装置の先端部分の底面図。
【図3】コンクリート杭構築装置を地盤に圧入して孔を形成する状態。
【図4】コンクリート杭構築装置が孔底に到達した状態。
【図5】コンクリート杭構築装置を引き上げている状態。
【図6】コンクリート杭構築装置を引き上げながらバイブレーターを作動している状態。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、圧入ヘッドの外周に、当該圧入ヘッドの外径よりも外径が大きいとともに、中心に圧入ヘッドの一部が嵌合可能な嵌合孔を有する拡径部を着脱自在に取付けたコンクリート杭構築装置によって地盤に孔を形成し、その孔に生コンクリートを投入し、圧入ヘッドを引き上げるとき、拡径部を後続させて生コンクリートを孔外へ排出しないようにした。
【実施例1】
【0011】
<1>コンクリート杭構築装置
図1及び図2に示すコンクリート杭構築装置Aは、ロッド1と、その先端に形成された圧入ヘッド2、及び圧入ヘッド2外周に嵌合する拡径部5、及び圧入ヘッド2と拡径部5とを連結する連結部材8から成る。
【0012】
<2>圧入ヘッド
中空状のロッド1の先端には、先端(下端)が円錐形となった圧入ヘッド2を備えている。
圧入ヘッド2のロッド1側には、段部3が設けられ、その段部3に沿って複数個のキー4が形成されている。
【0013】
<3>拡径部
前記圧入ヘッド2の外径よりも外径が大きいとともに、中心に圧入ヘッド2の一部が嵌合可能な嵌合孔6を有する拡径部5を着脱自在に取付ける。
拡径部5の形状は、先端側、つまりは下方側の径が上方より小さな裁頭円錐形を成しており、嵌合孔6の直径D1は、前記した圧入ヘッド2の段部3の内側の径D2と同じ直径を有している。
拡径部5の先端側、つまりは下端側の内周面は、嵌合孔6と同じ径D1で起立し、その上端には外周方向に段を成す段部13が形成してある。
圧入ヘッド2に拡径部5を嵌め込んだとき、この拡径部5の段部13は、上記した圧入ヘッド2の段部3と当接する。
嵌合孔6の周縁には、前記圧入ヘッド2のキー4と同じ数で、キー4が嵌合可能なキー溝7が複数個形成されている。
【0014】
<4>連結部材
前記した圧入ヘッド2と拡径部5とは、連結部材8によって連結してある。
連結部材8としてはワイヤロープの他、鎖、棒状ロッドなど様々な部材が採用できる。
圧入ヘッド2から拡径部5が離脱したとき、連結部材8はその双方が所定間隔を空けて離隔するほどの長さを備えている。
【0015】
<5>バイブレーター
拡径部5の内側には、地上から操作可能なバイブレーター9を配置しておく。
12は、ロッド1を回転するための動力源となるモーターとカウンターウェイトを収納した動力装置である。
【0016】
<6>施工手順
以上のようなコンクリート杭構築装置Aを使用して場所打ちコンクリート杭を構築する方法について説明する。
【0017】
<7>コンクリート杭構築装置Aによる孔の形成
圧入ヘッド2と拡径部5とを嵌め合わせた状態で、比較的軟弱な地盤Bに圧入ヘッド2を圧入し、孔10を形成する。
圧入ヘッド2の段部3に、拡径部5の段部13が当接して、圧入ヘッド2が拡径部5を押して、圧入ヘッド2と拡径部5との双方で、地盤Bの土砂を外周方向へ押しのけながら、地盤Bに孔10を形成していく。
地盤Bの性状によっては、ロッド1を回転させながら圧入することも可能で、圧入ヘッド2のキー4が拡径部5のキー溝7に嵌っているため、ロッド1を回転すると、圧入ヘッド2と一緒に拡径部5も回転して地盤Bに孔10を形成する。
【0018】
<8>生コンクリートの投入
形成した孔10の中に、地上で混練した生コンクリート11を、バイブレーター9を作動させて、生コンクリートの中の空気を抜くとともに流動性を高めながら投入する。
実際には、コンクリート杭構築装置Aによって孔10を形成しながら、生コンクリート11の投入を開始する。
生コンクリート11は、地盤Bの土砂よりも比重が重いため、孔壁の崩壊を生コンクリート11の重みによって防止することとなる。
本発明では生コンクリート11を使用して場所打ちコンクリート杭Cを構築するため、その品質の管理・確認が容易である。(図3・図4)
【0019】
<9>圧入ヘッド引き上げ
圧入ヘッド2先端が所定深さまで到達したところで、ロッド1を引き上げて、圧入ヘッド2を上昇させる。
圧入ヘッド2を上昇すると、圧入ヘッド2と嵌合していた拡径部5が離脱する。
圧入ヘッド2が少し上昇すると、連結部材8に導かれて、拡径部5が圧入ヘッド2から所定間隔遅れて上昇する。
圧入ヘッド2を引き上げながら、バイブレーター9を作動して拡径部5と共に連動して、生コンクリート11に振動を与える。
【0020】
<10>生コンクリートの流れ
圧入ヘッド2が上昇すると、生コンクリート11は圧入ヘッド2の外周を通過する。
その後、拡径部5が上昇してくると、生コンクリート11は、拡径部5の嵌合孔6を通過する。
つまりは、生コンクリート11は圧入ヘッド2と拡径部5とによって押し上げられることなく、孔10に残置することになる。
コンクリート杭構築装置Aを孔10から引き抜けば、構築装置Aの体積分約1割程度杭頭が下がるが、その分生コンクリート11を継足して微調整する。
【符号の説明】
【0021】
A コンクリート杭構築装置
B 地盤
C コンクリート杭
1 ロッド
2 圧入ヘッド
3 段部
4 キー
5 拡径部
6 嵌合孔
7 キー溝
8 連結部材
9 バイブレーター
10 孔
11 生コンクリート
12 動力装置
13 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に押し込んで孔を形成するコンクリート杭構築装置であって、
ロッドの先端に圧入ヘッドを設け、
その圧入ヘッドの外周に、当該圧入ヘッドの外径よりも外径が大きいとともに、中心に圧入ヘッドの一部が嵌合可能な嵌合孔を有する拡径部を着脱自在に取付け、
前記圧入ヘッドと拡径部は、所定以上の間隔を開けて連結する連結部材によって連結されている、
コンクリート杭構築装置。
【請求項2】
圧入ヘッドに拡径部を嵌合した請求項1に係るコンクリート杭構築装置を地盤に押し込んで孔を形成し、
前記した孔に生コンクリートを投入し、
所定の深さまで圧入ヘッドが到達した後、ロッドを引き上げ、
圧入ヘッド外周に嵌合した拡径部を圧入ヘッドよりも遅れて引き上げ、
生コンクリートを圧入ヘッド外周から拡径部の嵌合孔を通過させることを特徴とする、
場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項3】
地盤に形成した孔内にバイブレーターを配置し、
生コンクリートに振動を与えることを特徴とする、
請求項2記載の場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項4】
比重の重い生コンクリートを投入しながら孔を形成し、
生コンクリートの重量によって孔壁の崩壊を防ぐことを特徴とする
請求項2又は3記載の場所打ちコンクリート杭の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−209601(P2010−209601A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57641(P2009−57641)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000199234)千代田ソイルテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】