説明

コンジュゲート化された向精神薬の新規な塩およびその調製方法

向精神薬残基と、向精神薬がそれ自体で投与されたときに向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択されるアミノ含有有機酸残基との新規な化学的コンジュゲートであって、この化学的コンジュゲートにおいて、アミノ基はその酸付加塩の形態であり、高い安定性によって特徴付けられる化学的コンジュゲートが開示される。この化学的コンジュゲートおよびその酸付加塩を調製するための方法、化学的コンジュゲートを含有する医薬組成物、および種々の医学的状態を治療するための化学的コンジュゲートの使用方法がさらに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向精神薬と有機酸との新規な化学的コンジュゲート、その調製およびその使用に関連する。より具体的には、本発明は、高いエクスビボ安定性によって特に特徴づけられるかかる化学的コンジュゲートの新規な酸付加塩、このコンジュゲートおよびその酸付加塩を調製する新規な方法、ならびに、精神作用性および/または増殖性の障害および疾患の治療におけるその使用、また、化学感作におけるその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
向精神薬は、ニューロンのシグナル伝達を調節することによって主に中枢神経系(CNS)において作用する薬理学的薬剤である。従って、様々な向精神薬が、血液脳関門(BBB)を横断し、活性をCNSにおいて発揮し、それにより、CNS関連障害を治療することができる薬理学的薬剤として知られており、また、本明細書中参照され、これらには、例えば、抗精神病薬(定型の抗精神病薬および非定型の神経遮断性薬の両方)、抗うつ剤、抗痙攣剤、抗不安剤、および、脳由来酵素の阻害剤などが含まれる。
【0003】
典型的な神経遮断性薬物(これは、神経遮断性薬剤または神経遮断剤としても知られている)は、中枢神経系の精神病的な疾患および障害(例えば、統合失調症など)の治療において広く使用されている古典的な抗精神病薬である。神経遮断剤の抗精神病効力は、中枢神経のドーパミン受容体を中和/阻止するその能力に起因すると考えられる。神経遮断性薬物は定型抗精神病薬として知られており、これには、例えば、フェノチアジン系(脂肪族系(例えば、クロルプロマジン)、ピペリジン系(例えば、チオリダジン)およびピペラジン系(例えば、フルフェナジン)が含まれる);ブチロフェノン系(例えば、ハロペリドール);チオキサンテン系(例えば、フルペンチキソール);オキソインドール系(例えば、モリンドン);ジベンゾキサゼピン系(例えば、ロキサピン)およびジフェニルピペリジン系(例えば、ピモジド)が含まれる。
【0004】
残念ながら、神経遮断性薬の投与には、一般に有害な副作用が伴い、それは特に、固縮、震え、運動緩慢(遅い動き)および発話緩慢(遅い思考)、ならびに、遅発性ジスキネシア、急性ジストニー反応および静座不能として現れる錐体外路症状を含む。
【0005】
異なる種類の抗精神病薬には、非定型抗精神病剤が含まれる。非定型抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体に加えて中枢神経のセロトニン2受容体(5−HT2)に結合することを含む受容体結合プロフィルを有する。非定型抗精神病薬には、例えば、クロザピン、オランザピンおよびリスペリドンが含まれ、非定型抗精神病薬は一般には、大きい抗セロトニン活性と、ドーパミンD2受容体に対する比較的低い親和性とによって特徴づけられる。いくつかの非定型抗精神病薬(例えば、クロザピンなど)は、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体およびヒスタミン作動性受容体をさらに中和することが知られている。
【0006】
神経遮断剤とは異なり、非定型抗精神病剤は最小限の錐体外路症状を引き起こし、従って、遅発性ジスキネシア、静座不能または急性ジストニー反応をまれにしか引き起こさない。しかしながら、その投与は他の副作用(例えば、体重の増大、糖尿病、高い脂質レベル、気分障害、性的機能不全、鎮静、起立性低血圧、唾液分泌亢進、低下した発作閾値、および無顆粒球症など)を伴う。
【0007】
定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬の両方(これらはまた、本明細書中では抗精神病剤として集合的に示される)に関連づけられる重篤な副作用がそれらの使用に対する大きな制限となっており、広範囲の努力が、これらの副作用を有しない抗精神病薬を開発するために行われている。
【0008】
他の向精神薬にはまた、典型的には、様々な有害な副作用(例えば、発作、頭痛、疲労、活動過多、めまい、起立性低血圧症、口渇、性機能障害、体重増大、QTc間隔の延長、光過敏性、不穏下肢症候群および鎮静など)が付随し、これらにより、しばしば、その使用が非常に制限される。そのような副作用の包括的な一覧を、例えば、“The Merck Manual of Medical Information”(Merck&Co.Inc.)において見出すことができる。
【0009】
向精神薬(主として、神経遮断剤)による治療の結果としての錐体外路症状の発症に関する近年の研究では、脳におけるγ−アミノ酪酸(GABA)系の低下した活性がさらに伴う、ドーパミン作動性受容体のD1およびD2における不均衡を伴う機構が示唆されている。
【0010】
GABAは脳における重要な阻害性の神経伝達物質であり、これは、精神安定化活性、不安緩解活性および筋肉弛緩活性に影響を及ぼすことが知られており、また、中枢神経系(CNS)のいくつかの障害および疾患に関連づけられることがさらに知られている。錐体外路症状に関する近年の研究では、GABAアゴニストが、神経遮断剤により誘導される副作用を軽減するためにさらに使用することができ、従って、さらなる治療的可能性を有し得ることが示唆される。
【0011】
以前の研究では、GABAアゴニストが、脳の他の神経伝達物質を、特に、ドーパミン系を妨げ得ることが既に示唆されている。従って、GABAアゴニストはドーパミン受容体の感受性の神経遮断剤誘導による増大を中和することができ、従って、神経遮断剤により誘導されるジスキネシアを改善することができることが見出されていた[Lloyd,K.G.ら、Pharmacol.Biochem.Behav.1983,18,957−66]。さらに、いくつかの知られている直接的なGABAアゴニスト(例えば、ムスシモールおよびSL76002)は、低用量のアゴニストが常同的なカタレプシー行動を阻害する一方で、高用量のアゴニストがハロペリドール誘導のカタレプシーを強めるように、ハロペリドール誘導のカタレプシーに対する二相性作用を引き起こすことが見出されていた。他の研究では、GABAアゴニストが抗痙攣活性を有することが報告されている[Capasso,Aら、Eur.Neuropsychopharmacol.1997,7,57−63]。
【0012】
GABAアゴニストの使用は、GABAアゴニストが親水性の官能基(例えば、遊離カルボン酸基および遊離アミノ基)を含み、従って、BBBを容易に越えないので制限される。しかしながら、脂肪アミノ酸またはペプチドとのそのような化合物の化学的コンジュゲート化はBBBのその通過を実質的に容易にし得ることが見出されていた[Toth,I.,J.Drug Target.1994,2,217−39]。
【0013】
国際特許出願公開WO03/026563、同WO05/092392および米国特許出願第10/808541号(これらは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)は、様々な向精神薬と、様々な有機酸との新規な化学的コンジュゲートを開示する。これらの化学的コンジュゲートは、向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神薬の治療効果を高めるように、および/または、相乗的な抗増殖活性を特に脳において発揮するように設計された。これらの特許出願において教示されるように、非常に強力なコンジュゲートのいくつかは、向精神薬に共有結合により連結されたGABA残基を含むコンジュゲートである。そのようなコンジュゲートは、向精神薬剤として非常に活性があることが見出され、そのようなコンジュゲートにより、単独で投与されたときに向精神薬に付随した副作用が実質的に最小限に抑えられた。
【0014】
国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号において教示されるGABAコンジュゲートは、GABA残基に由来する遊離のアミン基を含み、そのために、化学的に不安定であることによって特徴づけられる一方で、これらの化合物は、上記特許出願の教示によれば、そのHCl塩の形態で調製および実施された。
【0015】
しかしながら、当該分野で広く認識されるように、アミン含有化合物のHCl塩は、急速な水分吸収および分解を受けやすいことによってエクスビボで不安定である場合がある。これらの特徴は、いくつかの制限を、かかる塩形態の調製および貯蔵に対して、また、より重要なことに、高い純度レベルが要求される医薬品としてのその使用に対して引き起こしている。
【0016】
従って、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号は、向精神薬および有機酸(具体的には、GABA)の非常に有益なコンジュゲートを教示する一方で、そのようなコンジュゲートの治療的使用は、遊離のアミン基を含むコンジュゲートの不良な安定性によって制限され得る。
【0017】
従って、改善された治療的活性および軽減された副作用によって特徴づけられ、また、インビボ安定性だけでなく、長く続くエクスビボ安定性によってさらに特徴づけられる、向精神薬のコンジュゲートおよびそのようなコンジュゲートを調製する方法が必要であることが依然として広く認識されており、また、そのようなコンジュゲートおよびその調製方法を有することは非常に好都合である。
【発明の開示】
【0018】
本発明の1つの態様によれば、第1の化学的成分を第2の化学的成分に共有結合により連結されて含む化学的コンジュゲートが提供され、この第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、第2の化学的成分は、向精神薬がそれ自体で投与されたときに向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される、アミノ基を含有する有機酸残基であり、アミノ基はその酸付加塩の形態であるが、酸付加塩はHCl付加塩ではない。
【0019】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートは、−50℃〜50℃の範囲の温度で貯蔵した際、少なくとも7日間にわたって、より好ましくは、少なくとも14日間にわたって化学的に安定である。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、貯蔵の際の化学的コンジュゲートの純度における変化はコンジュゲートの初期純度の4パーセント未満であり、より好ましくは、コンジュゲートの初期純度の1パーセント未満である。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、化学的コンジュゲートは、−50℃〜50℃の範囲の温度で貯蔵したときの化学的コンジュゲートの水分含有量における変化がコンジュゲートの総重量の0.4重量パーセント未満であるように、より好ましくは、コンジュゲートの総重量の0.2重量パーセント未満であるように非吸湿性であるとして特徴づけられる。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、貯蔵は少なくとも14日間であり、より好ましくは、少なくとも24日間である。
【0023】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、酸付加塩は、酢酸付加塩、アスコルビン酸付加塩、ベンゼンスルホン酸付加塩、ショウノウスルホン酸付加塩、クエン酸付加塩、マレイン酸付加塩、メタンスルホン酸付加塩、ナフタレンスルホン酸付加塩、シュウ酸付加塩、リン酸付加塩、コハク酸付加塩、硫酸付加塩、酒石酸付加塩およびトルエンスルホン酸付加塩からなる群から選択される。好ましくは、酸付加塩は、マレイン酸付加塩、メタンスルホン酸付加塩、ベンゼンスルホン酸付加塩、ナフタレンスルホン酸付加塩、トルエンスルホン酸付加塩およびシュウ酸付加塩からなる群から選択される。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である。
【0025】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、カルボキシルエステル結合、アルキルオキシカルボキシルエステル結合、アミド結合およびチオエステル結合からなる群から選択されるエステル結合を介して第1の化学的成分に共有結合により連結される。
【0026】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神薬残基は、抗精神病薬残基、抗不安薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環系向精神薬残基、二環系向精神薬残基、単環系向精神薬残基、フェノチアジン残基、ベンゾジアゼピン残基およびブチロフェノン残基からなる群から選択される。
【0027】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神薬残基は抗精神病薬残基である。
【0028】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗精神病薬残基は、定型の抗精神病薬残基および非定型の抗精神病薬残基からなる群から選択される。
【0029】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神薬残基は、クロルプロマジン残基、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、ケチアピン残基、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基、テマゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、プリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基、ペンフルリドール残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基、タクリン残基、ラサギリン残基、アマンタジン残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基からなる群から選択される。好ましくは、向精神薬残基はペルフェナジン残基である。
【0030】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、GABAアゴニスト残基は、(±)ベクロフェン残基、γ−アミノ酪酸(GABA)残基、γ−ヒドロキシ酪酸残基、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、イソニペコチン酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、y−ビニル−γ−アミノ酪酸(y−ビニルGABA、ビガバトリン)残基および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基からなる群から選択される。好ましくは、GABAアゴニスト残基はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である。
【0031】
記載された本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の化学的成分はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分として、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートを含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0033】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、医薬組成物は包装材に包装され、また、CNSの障害または疾患、増殖性の障害または疾患の治療における使用のために、かつ/あるいは、化学療法剤との組合せでの、および/または、化学感作が有益である医学的状態での化学感作における使用のために包装材の表面または中において印刷で特定される。
【0034】
好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、精神病性の障害または疾患、不安障害、解離性障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神性の疾患または障害からなる群から選択される。好ましくは、CNS疾患は、統合失調症、妄想症、小児精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安神経症、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される。
【0035】
好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移および末梢腫瘍からなる群から選択される。好ましくは、増殖性障害はガンであり、より好ましくは、ガンは多剤耐性ガンである。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化学的コンジュゲートの治療効果的な量を対象に投与することを含む、本明細書中に示されるように、対象におけるCNSの障害または疾患を治療する方法が提供される。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化学的コンジュゲートの治療効果的な量を対象に投与することを含む、対象における増殖性の障害または疾患を治療または防止する方法が提供される。
【0038】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも1つの化学療法剤の化学療法効果的な量と、本発明の化学的コンジュゲートの化学感作効果的な量とをその必要性のある対象に投与することを含む化学感作の方法が提供される。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象はガンを有し、好ましくは、多剤耐性のガンを有する。
【0040】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的コンジュゲートは腹腔内投与される。
【0041】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的コンジュゲートは経口投与される。
【0042】
従って、医薬品の製造における、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの使用が提供され、それにより、医薬品は、CNSの疾患または障害を治療するために、かつ/あるいは、増殖性の疾患または障害を治療するために、かつ/あるいは、(化学療法剤との組合せで)化学感作のために可能である。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、精神病性の障害または疾患、不安障害、解離性障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神性の疾患または障害からなる群から選択される。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CNS疾患は、統合失調症、妄想症、小児精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安神経症、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される。
【0045】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移および末梢腫瘍からなる群から選択される。
【0046】
本発明のさらなる態様によれば、第1の化学的成分が第2の化学的成分に共有結合により連結されることを含む、化学的コンジュゲートを調製する方法が提供され、この場合、第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、第2の化学的成分は、向精神薬がそれ自体で投与されたときに向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される、アミノ基を含有する有機酸残基であり、アミノ基はその酸付加塩の形態である。この方法は、本発明のこの態様によれば、
第1の化学的成分が第2の化学的成分に共有結合により連結されることを含む、N保護された化学的コンジュゲートを提供すること(ただし、アミノ基はN保護基によって保護される);N保護基を除き、それにより、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態を提供すること;および、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態を第1の酸と接触させること
含む。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護基を除くことおよび接触させることは連続して行われる。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護基を除くことは、化学的コンジュゲートを第2の酸と接触させることによって行われる。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の酸は、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸からなる群から選択される。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1の酸は、酢酸、アスコルビン酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、リン酸、コハク酸および酒石酸からなる群から選択される。記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護基を除くこと、および、化学的コンジュゲートを酸と接触させることは、コンジュゲートの遊離塩基形態を単離することなく同時に行われる。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1の酸は塩酸である。記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1の酸は、ベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸およびトルエンスルホン酸からなる群から選択される。
【0052】
下記に示される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この方法はさらに、化学的コンジュゲートを酸と接触させることに続いて、貧溶媒を加え、それにより、化学的コンジュゲートの付加塩を沈殿させることを含む。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、貧溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0054】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、除くこと、および、N保護された化学的コンジュゲートと、第1の酸とを接触させることが、第1の酸およびN保護された化学的コンジュゲートが溶解可能であり、かつ、化学的コンジュゲートが沈殿するように選択される溶媒の存在下で行われる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的コンジュゲートの酸付加塩は、97パーセント以上の純度を有する。
【0056】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、N保護された化学的コンジュゲートを提供することは、向精神薬を、本明細書中下記において詳しく記載されるように、N保護された有機酸と反応することを含む。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、第1の化学的成分が第2の化学的成分に共有結合により連結されることを含む、化学的コンジュゲートを調製する方法が提供され、この場合、第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、第2の化学的成分は、向精神薬がそれ自体で投与されたときに向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される、アミノ基を含有する有機酸残基である。この方法は、本発明のこの態様によれば、
有機酸をN保護基と反応させ、それにより、N保護された有機酸を得ること;N保護された有機酸を向精神薬と反応すること;および、N保護基を除き、それにより、コンジュゲートをその遊離塩基形態で得ることを含む。
【0058】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この方法はさらに、向精神薬をN保護された有機酸と反応する前に、N保護された有機酸をアシルハリドと反応させて、それにより、N保護された有機酸の混合無水物誘導体を得ることを含む。好ましくは、アシルハリドは、ピバロイルクロリド、アセチルクロリド、イソブチリルクロリドおよび3,3−ジメチルブチリルクロリドからなる群から選択される。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、N保護された有機酸をアシルハリドと反応させることは、有機塩基の存在下で行われる。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、N保護された有機酸の混合無水物誘導体を向精神薬と反応することは、約10時間〜約20時間の範囲時間において中行われる。
【0061】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、N保護された有機酸の混合無水物誘導体を向精神薬と反応することは、50℃未満の温度で行われ、好ましくは、室温またはわずかに高い温度で行われる。
【0062】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸およびN保護基のモル比は約1.3:1〜約1:1の範囲である。
【0063】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸をアシルハリドと反応させることは、溶媒の存在下で行われる。好ましくは、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0064】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神薬をN保護された有機酸と反応することは、溶媒、有機塩基および脱水剤の存在下で行われる。好ましくは、溶媒はジクロロメタンである;好ましくは、有機塩基は、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、N−メチルモルホリンおよびピペリジンからなる群から選択される;好ましくは、脱水剤は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)からなる群から選択される。
【0065】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、反応は、約2時間〜約6時間の範囲時間において行われる。
【0066】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、反応は50℃未満の温度で行われ、好ましくは、室温またはわずかに高い温度で行われる。
【0067】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機塩基およびN保護された有機酸のモル比は約0.1:1〜約0.5:1の範囲である。
【0068】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、この方法はさらに、反応の前に、向精神薬、有機塩基およびN保護された有機酸を、約0℃〜約5℃の範囲の温度で混合して、それにより、スラリーを得ること;脱水剤をスラリーに加えること;および、スラリーを室温に加温することを含む。
【0069】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、N保護された有機酸を向精神薬と反応することは、約8時間〜約12時間の範囲時間において行われる。
【0070】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、N保護基は、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、t−ブトキシカルボニル(t−BOC)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、フタルイミド(Pht)およびベンゼンスルホニル(Ts)からなる群から選択される。
【0071】
本発明は、改善された安定性によって特徴づけられ、従って、様々な医学的状態の治療において有益に利用することができる、向精神薬の化学的コンジュゲートの新規な酸付加塩形態を提供することによって、また、さらには、そのような化学的コンジュゲートの塩、ならびに、このようなコンジュゲートの対応する遊離塩基形態を調製する新規な方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0072】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0073】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0074】
表現「活性成分(有効成分)」は、その適用後に少なくとも1つの所望の医薬的効果または治療効果を有するいかなる天然または合成の化学物質も含む医薬品を意味する。
【0075】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0076】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0077】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
本発明は、向精神薬と、有機酸との化学的コンジュゲートの新規な塩形態、それを含有する医薬組成物、ならびに、精神作用性の障害および疾患、増殖性の障害および疾患の治療におけるその使用、また、化学感作剤としてのその使用に関する。本発明はさらに、向精神薬と、有機酸との化学的コンジュゲートの酸付加塩を調製する新規かつ改善された方法、および、その対応する遊離塩基形態を調製する新規かつ改善された方法に関する。
【0079】
本発明による化学的コンジュゲートの原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される構成要素の配置および構造の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0081】
国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号において詳しく議論されるように、向精神薬(これは抗増殖活性および/または化学感作活性をも有する場合がある)と、有機酸(これは好ましくはGABAアゴニストである)または抗増殖性薬剤とを共有結合により結合する化学的コンジュゲートが、最小限に抑えられた有害な副作用を伴って、向精神性および/または抗増殖性での大きい治療的活性、ならびに、化学感作活性を発揮することが見出された。国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に開示される非常に強力なコンジュゲートのいくつかが、向精神薬と、GABAとを結合するコンジュゲートである。
【0082】
しかしながら、本明細書中上記において詳しく議論されるように、GABAは、遊離のアミノ基を含む有機酸である一方で、向精神薬のGABA含有コンジュゲートの遊離塩基の(アミン)形態は、そのHCl塩と同様に、相対的に不安定であることによって特徴づけられ、それは、そのようなコンジュゲートの調製および貯蔵、ならびに、その治療的使用および治療効果を制限する。下記の実施例の節において明らかにされるように、ペルフェナジンと、GABAとの例示的な化学的コンジュゲートの遊離塩基形態および塩酸付加塩は、吸湿性で、このことから不安定であり、そのため、急速に水を吸収し、ペルフェナジン、GABAおよび他の物質に分解することが見出された。従って、それらは特別な調製条件および貯蔵条件を要求する。
【0083】
そのような化学的コンジュゲートの大きい吸湿性は、化合物の調製、貯蔵および得られた純度に悪影響を及ぼす一方で、コンジュゲートが構成される化学的成分、すなわち、向精神薬および有機酸(例えば、GABA)への分解によって明らかにされるコンジュゲートの不安定性は、コンジュゲートのBBB透過性、具体的には、GABAのBBB透過性、ならびに、コンジュゲートの治療的効果、具体的には、向精神薬によって誘導される副作用を軽減することに関してのコンジュゲートの治療的効果に悪影響を及ぼす。そのような不安定性はさらに、コンジュゲートの他の薬動力学的パラメーターおよび治療パラメーターに悪影響を及ぼす場合がある。
【0084】
国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に開示される化学的コンジュゲートの不安定性、具体的には、GABA含有コンジュゲートおよび他のアミノ含有有機酸の場合でのように遊離アミン基を含むそのようなコンジュゲートの不安定性は、そのために、それ以外のそれらの非常に有益な治療的効果を制限することがある。
【0085】
改善されたエクスビボ成績およびインビボ成績によって特徴づけられる、向精神薬の化学的コンジュゲートの探索において、また、向精神薬に結合されたアミノ含有有機酸(例えば、GABAなど)を含むそのような化学的コンジュゲートの大きい治療効果を検討しているとき、本発明者らは、向精神薬が、アミン基を含む有機酸(例えば、GABAなど)にコンジュゲートされ、それにより、アミン基がその酸付加塩の形態である、向精神薬の新規な化学的コンジュゲートを設計し、首尾よく調製している。本発明を着想しているとき、化学的コンジュゲートのそのような酸付加塩は、コンジュゲートの有益な治療的効果に加えて、大きい安定性および非吸湿性によって特徴づけられること、また、従って、現在知られているコンジュゲートに関連する制限が回避されることを仮定した。
【0086】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明を実施に移しているとき、向精神薬のGABA含有コンジュゲートの様々な酸付加塩が首尾よく調製されており、また、それらは、その治療的利点を維持しながら、大きい安定性および非吸湿性の両方を有することが見出された。
【0087】
従って、本発明の1つの態様によれば、新規な化学的コンジュゲートが提供される。これらの化学的コンジュゲートのそれぞれが、向精神薬残基である第1の化学的成分を、アミノ含有有機酸残基である第2の化学的成分に共有結合により連結されて含む。第2の化学的成分は、向精神薬がそれ自体で投与されたときに向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される。本発明による化学的コンジュゲートのそれぞれにおいて、有機酸残基におけるアミノ基はその酸付加塩の形態である。そのようなアミン基の塩酸付加塩は本発明のこの態様の範囲から除外される。
【0088】
本明細書中で使用される用語「化学的成分」は、化学的化合物に由来する残基で、その機能性を保持する残基を示す。
【0089】
用語「残基」は、本明細書中では、この分野で広く受け入れられているように、別の分子に共有結合的に連結される分子の主要な部分を示す。
【0090】
従って、表現「向精神薬残基」は、別の化学的成分(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)に共有結合的に連結される向精神薬(この用語は本明細書中下記で定義される通りである)の主要な部分を示す。
【0091】
本明細書中上記で記載されるように、表現「向精神薬」は、中枢神経系において活性を発揮し、かつ、それにより、中枢神経系の様々な疾患または障害の治療において使用することができる任意の作用剤または薬物を包含する。向精神薬のさらなる説明および例は以下に示される。
【0092】
表現「有機酸残基」は、遊離カルボン酸基を含む、有機酸に由来する本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0093】
用語「遊離カルボン酸基」は、−C(=O)OH基を、そのまま、そのプロトン化状態、または、そのイオン化状態もしくは塩状態のいずれかで表現する。
【0094】
表現「アミノ含有有機酸残基」は、遊離カルボキシル基を含む有機酸に由来する本明細書中で定義されるような残基を表し、従って、有機酸残基はさらに遊離アミン基を含む。この表現はまた、本明細書中では、交換可能に、「アミノ基を含有する有機酸残基」と呼ばれる。
【0095】
用語「アミン」および用語「アミノ」は、本明細書中では交換可能に使用され、−NR基を表し、この場合、R、RおよびRのそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ脂環式およびヘテロアリールである(これらの用語は本明細書中下記において定義される通りである)。
【0096】
当該分野で広く知られているように、表現「酸付加塩」は、特定の化学量論的な割合で、また、好適な条件のもとで相互作用したとき、塩基成分の1つまたは複数のカチオンと、酸基成分の1つまたは複数のアニオンとを含む塩を形成する2つのイオン化可能な成分(塩基および酸)の複合体を表す。本明細書中で使用される表現「酸付加塩」は、塩がアミンのカチオン形態および酸のアニオン形態を含むように、塩基成分が、本明細書中下記において定義されるようなアミンである本明細書中上記で記載されるような複合体を示す。
【0097】
塩複合体における塩基および酸の間での化学量論的な割合によって、本明細書中下記において詳しく記載されるように、酸付加塩はモノ付加塩またはポリ付加塩のいずれかが可能である。
【0098】
本明細書中で使用される表現「モノ付加塩」は、酸付加塩がコンジュゲートの1モル当量あたり酸の1モル当量を含むように、酸アニオンと、アミンカチオンとの間での化学量論的な比率が1:1である塩複合体を示す。
【0099】
本明細書中で使用される表現「ポリ付加塩」は、酸付加塩がコンジュゲートの1モル当量あたり酸の2モル当量以上を含むように、酸アニオンと、アミンカチオンとの間での化学量論的な比率が1:1よりも大きく、例えば、2:1、3:1および4:1などである塩複合体を示す。
【0100】
塩複合体の塩基および酸の間での化学量論的な割合は、本発明の好ましい実施形態によれば、好ましくは、6:1〜1:6の塩基:酸当量の範囲であり、より好ましくは、4:1〜1:4の塩基:酸当量の範囲であり、より好ましくは、3:1〜1:3の塩基:酸当量の範囲であり、より好ましくは、1:1〜1:3の塩基:酸当量の範囲である。
【0101】
従って、本発明による化学的コンジュゲートの酸付加塩は、薬の1つまたは複数のアミノ基と、酸の1当量以上との間で形成される複合体である。
【0102】
酸付加塩は様々な有機酸および無機酸を含むことができ、そのような酸は、例えば、酢酸付加塩を与える酢酸、アスコルビン酸付加塩を与えるアスコルビン酸、ベシル酸付加塩を与えるベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸塩付加塩を与えるショウノウスルホン酸、クエン酸付加塩を与えるクエン酸、マレイン酸付加塩を与えるマレイン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)付加塩を与えるメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸塩付加塩を与えるナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩を与えるシュウ酸、リン酸付加塩を与えるリン酸、p−トルエンスルホン酸付加塩を与えるトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩を与えるコハク酸、硫酸付加塩を与える硫酸、酒石酸付加塩を与える酒石酸、および、トリフルオロ酢酸付加塩を与えるトリフルオロ酢酸であるが、これらに限定されない。これらの酸付加塩のそれぞれがモノ酸付加塩またはポリ酸付加塩のいずれかが可能である(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0103】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明による例示的な化学的コンジュゲートには、ペルフェナジン−GABAコンジュゲートにおけるアミン基のモノマレイン酸付加塩またはポリマレイン酸付加塩、モノメタンスルホン酸付加塩またはポリメタンスルホン酸付加塩、モノナフチルスルホン酸塩付加塩またはポリナフチルスルホン酸塩付加塩、モノトルエンスルホン酸付加塩またはポリトルエンスルホン酸付加塩、モノベンゼンスルホン酸付加塩またはポリベンゼンスルホン酸付加塩、および、モノシュウ酸付加塩またはポリシュウ酸付加塩が含まれ、これらの例示的な化学的コンジュゲートが小規模方法および大規模方法の両方で首尾よく調製された。これらの化学的コンジュゲートは、特に、ペルフェナジン−GABAコンジュゲートの対応する遊離塩基形態およびHCl付加塩形態と比較した場合、様々な条件のもとで非常に化学的に安定で、かつ、非吸湿性であることが見出された。
【0104】
本明細書中で使用される表現「化学的に安定」は、時間とともにその物質の実質的部分の化学的変化を引き起こし得る、従って、時間とともにその純度に実質的な影響を及ぼし得る化学的および物理的な反応(例えば、分解、崩壊、コンジュゲート化、重合、酸化または任意の他の変化など)に対する低い感受性によって特徴づけられる化学物質の属性を表す。「実質的な部分」によって、物質の5パーセント超が意味され、また、さらに物質の2パーセント超が意味される。別の言い方をすれば、この表現は、時間とともに依然として化学的に変化していない化学物質の属性を表す。「時間とともに」によって、物質が、本明細書中下記において詳しく記載されるように、様々な条件で保たれたとき、依然として化学的に変化していない相対的な期間(例えば、数時間〜数週間)が意味される。
【0105】
本発明の化学的コンジュゲートの化学的安定性は、化合物が構成される化学的成分(すなわち、向精神薬および有機酸)への分解を受けるコンジュゲートの傾向によって特に反映される。本明細書中上記で議論されたように、そのような分解は、コンジュゲートの薬理学的純度、ならびに、その治療効果に悪影響を及ぼす。
【0106】
従って、下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明による上記の例示的なコンジュゲートは、様々な条件で保たれたとき、非常に安定であることが見出された。そのような様々な条件は、コンジュゲートが保たれた容器における雰囲気、容器の封止、コンジュゲートが保たれた温度、および/または、試験期間によって左右された。
【0107】
コンジュゲートの化学的安定性はHPLC分析によって求められ、その物質の相対的なピーク面積と、その分解生成物の少なくとも1つの相対的なピーク面積とによって測定された。従って、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、上記の例示的なコンジュゲートの化学的安定性が、コンジュゲートが、窒素雰囲気の存在下または非存在下、−20℃〜40℃の温度範囲で密封容器または開放容器において保たれた、典型的には1日から24日に及んだ期間の間、測定された。下記の実施例の節において詳しく記載されるように、コンジュゲートは、試験期間中に形成されたすべての不純物(これには、例えば、ペルフェナジンが含まれる)の合計量が、HPLC分析によって決定されたとき、コンジュゲートの初期純度の4パーセントを超えず、ほとんどの場合には2パーセントを超えなかったように、少なくとも、密封容器において低温で保たれたときには、2週間を超える長期間にわたって化学的に安定したままであった。
【0108】
従って、本発明の実施形態によれば、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートは、約−50℃〜約50℃の温度で保たれたときには、少なくとも7日から、好ましくは少なくとも10日から、より好ましくは少なくとも14日から、より好ましくは少なくとも24日から、数ヶ月までの期間にわたって化学的に安定である。
【0109】
本明細書中で使用される用語「約」は±10%を示す。
【0110】
本明細書中上記で議論されたように、そのような化学的安定性は、コンジュゲートが、開放容器、密閉容器、および、窒素雰囲気を有する密閉容器のいずれでも、そのような温度で保たれたときに認められた。
【0111】
下記の実施例の節においてさらに例示されるように、本発明による化学的コンジュゲートは非吸湿性であることが見出された。
【0112】
本明細書中で使用される用語「非吸湿性」は、その水分含有量における実質的な変化を時間とともに示さない化学物質の属性を示す(上記参照)。「実質的な変化」によって、物質の水分含有量における5パーセントを超える変化が意味され、また、物質の水分含有量における1パーセントを超える変化さえ意味される。
【0113】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明によるコンジュゲートは、本明細書中上記で詳しく記載されたように、様々な条件のもとで様々な期間にわたって貯蔵されたとき、その吸湿性について試験された。コンジュゲートの水分含有量における変化が、少なくとも、密閉容器において低温で保たれたときには、また、より高い温度および/または開放容器で保たれた一部の場合には、HPLC分析によって決定されたように、1パーセント未満であり、また、0.2パーセント未満でさえあったことが見出された。
【0114】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの非吸湿性の特性は、化学的コンジュゲートの取り扱いおよび貯蔵の容易さに関して非常に有益である。だが、この特性により、化学的コンジュゲートの改善された安定性がさらにもたらされることがある。これは、向精神薬および有機酸の化学的コンジュゲートの分解および崩壊に影響を及ぼす要因の1つが、これらの2つの成分を結合する結合の加水分解、および/または、エステル結合の場合には脱エステル化を生じさせる、その大きい水分吸収であることが仮定されるからである。しかしながら、様々な他の要因(例えば、化学的相互作用のための自由エネルギー障壁がより大きいことなど)が本発明の化学的コンジュゲートの改善された安定性に帰することには留意しなければならない。
【0115】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートのそれぞれにおいて、有機酸残基は、本発明によれば、また、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号において教示されるように、単独で投与された場合には向精神薬により誘導され得る副作用を軽減するように、および/または、付加された治療的価値を化学的コンジュゲートに与えることによって向精神薬の治療効果を高めるために、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される。
【0116】
本発明の1つの実施形態によれば、有機酸残基は、例えば、一般式−R−C(=O)−(式中、Rは、例えば、1個〜20個の炭素原子を有する炭化水素残基が可能であり、この場合、これらの炭素原子の少なくとも1つが、本明細書中で定義されるようなアミン基によって置換または中断される)を有する残基が可能である。
【0117】
本明細書中で使用される用語「炭化水素」は、共有結合的に連結される炭素原子および水素原子の、直鎖構造または枝分かれ構造の、環状または非環状の、飽和または不飽和の鎖をその基本骨格として含む有機化合物を示す。
【0118】
従って、本発明による炭化水素残基はアルキルまたはシクロアルキルであり得る。
【0119】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。
【0120】
数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、アルキルは3個〜5個の炭素原子を有する。
【0121】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を含む。シクロアルキル基の非限定な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンを含む。
【0122】
本発明によれば、炭化水素残基は直鎖構造または枝分かれ構造であり得る。炭化水素残基はさらに飽和または不飽和であり得る。不飽和であるとき、炭化水素残基はその炭素鎖に1つまたはそれより多い二重結合および/または1つまたはそれより多い三重結合を含むことができる。不飽和の炭化水素残基はアリールをさらに含むことができる。
【0123】
本明細書中で使用されるように、「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルを含む。
【0124】
炭化水素残基はさらに、上記のアミン基に加えて、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノ(これらの用語は本明細書中に定義される)のような限定されない1つ以上の置換基で置換されることができる。
【0125】
「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0126】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0127】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0128】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0129】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0130】
「オキソ」基は−C(=O)−R′基を示し、ここでR′は例えば、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり得る。
【0131】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0132】
「トリハロメチル」基は、本明細書中で定義されるように、−CX−基を示し、ここでXはハロ基である。
【0133】
「アミド」基は−C(=O)−NR基を示し、ここでRおよびRは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールであり得る。
【0134】
炭化水素残基は、本発明によれば、その鎖の内部に点在させた1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むことができる。ヘテロ原子は、例えば、酸素、窒素および/またはイオウが可能である。このような炭化水素残基が芳香族であるとき、炭化水素残基は本明細書中上記に定義されるヘテロアリールであり得る。
【0135】
炭化水素残基はさらに、一般式−Z−C(=O)O−CHR−R−(式中、Zは、例えば、単結合、あるいは、本明細書中上記で記載されたような置換または非置換の炭化水素残基であり得る;Rは、例えば、水素、または、1個〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり得る;Rは、例えば、水素、または、本明細書中上記で定義されるような炭化水素残基であり得る)を有する残基が可能である。
【0136】
上記の有機酸残基のいくつかは抗増殖活性によって特徴づけられる。従って、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、アミン基がその酸付加塩の形態である抗増殖性薬剤残基である。
【0137】
本明細書中で使用される用語「抗増殖性薬剤残基」は、抗増殖活性によって特徴づけられる化合物の本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0138】
加えて、上記の有機酸残基のいくつかは鎮痛剤として知られている。従って、本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、アミン基がその酸付加塩の形態である鎮痛剤である。
【0139】
鎮痛剤を本発明の化学的コンジュゲートに組み込むことにより、米国特許出願第10/808541号において詳しく記載されるような二重の薬理学的活性(すなわち、向精神活性および痛み緩和)が、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの大きい安定性に加えて提供されることがある。
【0140】
あるいは、本発明の現時点で最も好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲート中の第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である。
【0141】
本明細書中で使用される表現「GABAアゴニスト残基」は、GABAアゴニストの(本明細書中上記で定義されるような)残基を示し、一方、用語「GABAアゴニスト」は、脳において直接的にまたは間接的にのいずれかでGABA系を活性化できる化合物(GABA受容体またはGABA系に影響する他の任意の受容体に直接結合する化合物、従って、GABAに薬理学的に関連づけられる化合物を含む)を記載する。用語「GABAアゴニスト」は、限定されないが、GABA自体を包含することが理解され、これに対して、用語「GABAアゴニスト残基」は、限定されないが、GABAの残基を包含することが理解される。
【0142】
従って、GABAアゴニスト残基には、本発明によれば、GABA(γ−アミノ酪酸)残基自体に加えて、向精神薬に対して共有結合的に結合することができ、そしてさらに遊離アミン基を含む他のGABAアゴニストの残基が含まれる。
【0143】
そのようなGABAアゴニスト残基の例には、限定されないが、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(γ−ビニルGABA、ビガバトリン)残基、および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基が含まれる。
【0144】
本明細書中上記で記載されたように、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートのそれぞれにおいて、有機酸残基は向精神薬残基に共有結合により結合される。向精神薬残基は、本発明によれば、例えば、抗精神病薬、抗不安薬、MAO阻害剤、抗うつ剤、抗痙攣薬、抗パーキンソン症候群薬およびアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に由来する残基が可能である。向精神薬は、三環系型、二環系型または単環系型が可能である。
【0145】
本発明の好ましい実施形態によれば、向精神薬残基は、好ましくは、定型の精神病薬および非定型の精神病薬を含む抗精神病薬に由来する。
【0146】
特に好ましい向精神薬は、本発明によれば、有機酸またはその反応性誘導体と反応することができる、アミン基、チオール基またはヒドロキシル基(これらの用語は本明細書中下記において定義される通りである)を有する向精神薬である。そのような基は、遊離の官能基として、または、別の官能基(例えば、アミド基およびカルボキシル基など)の一部として、そのいずれでも存在させることができる(これらの用語は本明細書中下記において定義される通りである)。他の官能基を有する他の向精神薬もまた、その官能基を、ヒドロキシル基、チオール基またはアミン基に変換したときには使用することができる。
【0147】
そのような向精神薬の残基の代表的な例には、限定されないが、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、クエチアピン残基、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基、テマザゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、ピリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基、ペンフルリドール残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基、タクリン残基、ラサギリン残基、アマンタジン残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基などが含まれる。
【0148】
本発明の好ましい実施形態によれば、向精神薬残基はさらに抗増殖活性を発揮する。そのような二重活性の向精神薬には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体などが含まれる。
【0149】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、向精神薬残基はさらに化学感作活性を発揮する。そのような二重活性の向精神薬には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体、チオキサンテン系およびその誘導体、クロザピン、クロミプラミンおよびパロキセチンが含まれる。
【0150】
本明細書中で使用される用語「化学感作」は、化学感作作用剤の非存在下で化学療法剤により発揮される細胞毒性のレベルと比較されるとき、化学感作作用剤の存在下でのガン細胞(特に、多剤耐性ガン細胞)に対する化学療法剤の測定された細胞毒性の増大または強化を意味する。
【0151】
用語「化学感作作用剤」および用語「化学感作剤」(これらは本明細書中では交換可能に使用される)は、ガン細胞を化学療法に対してより感受性にする化合物を記載する。
【0152】
本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、好ましくはエステル結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。エステル結合は、カルボン酸エステル結合、オキシアルキルカルボン酸エステル結合、アミド結合またはチオエステル結合が可能である。
【0153】
本明細書中で使用される表現「カルボン酸エステル結合」は「−O−C(=O)−」結合を含む。
【0154】
本明細書中で使用される表現「オキシアルキルカルボン酸エステル結合」は「O−R−−O−C(=O)−」結合(式中、Rは本明細書中上記で定義されるようなアルキルである)を含む。好ましくは、Rはメチルである。
【0155】
表現「アミド結合」は「−NH−C(=O)−」結合を含む。
【0156】
表現「チオエステル結合」は「−S−C(=O)−」結合を含む。
【0157】
そのようなエステル結合は、脳由来酵素(例えば、エステラーゼおよびアミダーゼなど)により加水分解可能であることが知られており、従って、本発明の化学的コンジュゲートは、脳において代謝され、かつ、それにより、向精神薬および有機酸を同時に放出し、従って、向精神薬および有機酸についての好都合な同時薬物動態学を提供するプロドラッグとして作用することができる。
【0158】
この特徴は、(i)向精神薬および有機酸の同時作用、これは、薬物により誘導される低下した副作用、および、両方の成分の二重の活性を相乗的にもたらす;(ii)ドーパミン作動性受容体に対するプロドラッグのより高い親和性、これは、相乗的により高い向精神活性、および、脳の増殖性障害に対する相乗的により高い抗増殖活性をもたらす;および(iii)両方の化学的成分の改善された脳透過性をもたらすので、非常に好都合である。
【0159】
本発明の別の態様によれば、本明細書中に示される化学的コンジュゲートを調製する方法、すなわち、2つの化学的成分が互いに共有結合により連結されることを含む、化学的コンジュゲートの酸付加塩を調製する方法が提供され、この場合、一方の化学的成分が向精神薬残基であり、もう一方の化学的成分が、アミノ基を含有する有機酸残基である。
【0160】
この方法は、本発明のこの態様によれば、一般には、化学的コンジュゲートのN保護された形態を提供すること(この場合、第2の成分のアミノ基はN保護基によって保護される);N保護基を除き、それにより、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態を提供すること;および、化学的コンジュゲートのこの遊離塩基形態を酸(これは本明細書中では第1の酸として示される)と接触させ、それにより、化学的コンジュゲートの酸付加塩を提供することによって行われる。
【0161】
本発明のこの関連において第1の酸として使用するために好適である酸の非限定的な例には、限定されないが、塩酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、トルエンスルホン酸およびトリフルオロ酢酸が含まれる。
【0162】
本明細書中で使用される表現「N保護基」は、化学物質のアミン基の窒素原子に共有結合により結合し、その結果、保護基がそれに結合している限り、このアミン基を不活性にするか、他の化学種と反応することから阻止するようにする化学的成分を表す。保護基は、その保護基が、化合物内の他の基に影響を及ぼさないいくつかの広く知られている化学的および/または物理的な条件において容易に除去され得るように選択される。典型的には、それぞれの保護基を、その保護基に対して特異的である条件のもとで除くことができる。従って、好適な保護基が、多くの場合、これらの条件に基づいて選択され、従って、これらの条件により、保護基を、化合物の他の化学的特徴および構造的特徴に影響を及ぼすことなく安全に除くことができることが決定される。そのような化学的および/または物理的な条件は、例えば、温度、pHおよび圧力などであり得る。
【0163】
N保護基の除去は、本発明の好ましい実施形態によれば、酸性条件のもとで行われる。酸性条件には、例えば、酸(有機酸または無機酸)を含む酸性条件が含まれる。
【0164】
本発明のこの関連での使用のために好適であるN保護基の非限定的な例には、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、t−ブトキシカルボニル(t−BOC)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、フタルイミド類(Pht)およびベンゼンスルホニル(Ts)が含まれる。
【0165】
本明細書中で議論されるように、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態の酸付加塩の形成は、N保護基が有機酸残基のアミノ基から除かれると生じる。好ましくは、保護基の除去は、N保護されたコンジュゲートを酸と反応することによって行われる。保護基が除かれると、生じた遊離塩基を最初に単離することができ、および/または、最終的かつ所望される付加塩を得るように、第1の酸と直接に反応することができる。
【0166】
従って、好ましい実施形態によれば、化学的コンジュゲートをその遊離塩基形態において最初に単離し、その後、第1の酸と反応させて、酸付加塩を連続して形成するように、N保護基を除くことが、化学的コンジュゲートの得られた遊離塩基形態を付加塩のための第1の酸と接触させる前に行われる。
【0167】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、保護基の除去を、N保護された化学的コンジュゲートを第2の酸(例えば、限定はされないが、トリフルオロ酢酸またはメタンスルホン酸など)と接触させることによって行うことができる。脱保護が第2の酸によって達成されると、第2の酸は失活化および除去され、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態が単離される。その後、第1の酸が、酸付加塩を形成するように導入される。
【0168】
化学的コンジュゲートの付加塩を、連続した脱保護および塩形成で、本発明のこの実施形態に従って調製するために好適である例示的な酸には、限定されないが、酢酸、アスコルビン酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、リン酸、コハク酸および酒石酸が含まれる。
【0169】
本明細書中で議論されるように、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの遊離塩基形態は、下記の実施例の節においてペルフェナジン−GABAコンジュゲートについて明らかにされるように、非常に不安定である場合がある。従って、代替として、保護基の除去が、脱保護手順のために使用された酸がまた、化学的コンジュゲートの遊離塩基形態を単離することなく最終的な所望される付加塩を形成する第1の酸として働くように、付加塩の形成と同時に行われる。
【0170】
従って、さらに別の好ましい実施形態によれば、N保護基を除くこと、および、得られた遊離塩基を付加塩の酸と接触させることが、同時に、より好ましくは、同じ反応条件のもと、同じ反応ポットにおいて、すなわち、その場で行われる。
【0171】
化学的コンジュゲートの付加塩を、同時での脱保護および塩形成で、本発明のこの実施形態に従って調製するために好適である例示的な酸には、限定されないが、塩酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸およびトルエンスルホン酸が含まれる。
【0172】
N保護基を除くこと、および/または、コンジュゲートの遊離塩基形態を第1の酸と接触させることは、好ましくは、コンンジュゲートの構造的特徴および化学的特徴に影響を及ぼさないような条件のもとで行われる。特別な注意が、向精神薬残基および有機酸残基をつなぐ結合に関して取られる。従って、好ましくは、酸付加塩を調製する方法は、コンジュゲートの分解生成物の形成をもたらさないような条件のもとで行われる。このような条件には、本明細書中下記において詳しく記載されるように、例えば、乾燥窒素雰囲気および低い温度(50℃未満)などが含まれる。分解生成物の出現は、好ましくは、工程期間中、(例えば、HPLCによって)モニターされる。
【0173】
溶媒効果の研究が、酸付加塩(所望の生成物)の沈殿化を達成する最も好適な溶媒を見出すために行われた。これらの研究により、試験された溶媒の中で、好適な溶媒には、ジクロロメタン、アセトニトリルおよびTHFが含まれ、それにより、現時点で最も好適な溶媒が、本発明の実施形態によれば、アセトニトリルであることが明らかにされた。
【0174】
同時での脱保護および付加塩形成の方法はさらに、酸付加塩の沈殿化を促進させるために、また、従って、さらに、反応を完了の方向に進めるために役立つ貧溶媒の添加を含むことができる。本発明の実施形態のこの関連での使用のために好適である例示的な貧溶媒には、限定されないが、ヘキサン(およびその異性体)、ヘプタン(およびその異性体)、オクタン(およびその異性体)、ベンゼン、トルエン、キシレン(およびその異性体)、および、それらの任意の混合物が含まれる。好ましくは、貧溶媒はヘプタンおよび/またはトルエンである。
【0175】
同時での脱保護および付加塩形成の方法は場合に応じて、N保護された化学的コンジュゲートおよび第1の酸がともに溶解可能であり、それにより、反応期間中に、形成された酸付加塩生成物が溶液から沈殿し、それにより、反応を完了の方向に進ませるような溶媒において行うことができる。例示的な好適な溶媒には、限定されないが、アセトン、酢酸アルキル(例えば、酢酸イソプロピル)、および、それらの組合せが含まれる。
【0176】
下記の実施例の節において明らかにされるように、上記方法を使用して、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートが、HPLC分析によって決定されるとき、97%以上の純度、好ましくは、98.5%を超える純度、および、70%以上の収率、好ましくは、77%を超える収率で得られる。
【0177】
本明細書中に示される化学的コンジュゲートの新規な酸付加塩を調製する過程において、新規かつ改善された様々な合成経路が、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に最初に記載されたように、向精神薬と、有機酸とのコンジュゲートを調製するために開発されている。これらの新しく開発された方法はさらに、向精神薬と、本明細書中上記で記載された様々な付加塩を調製するために使用されたアミノ含有有機酸とのコンジュゲートのアミノ保護形態(これらのコンジュゲートの塩酸(HCl)付加塩を含む)を調製するために役立った。
【0178】
従って、本発明のさらなる態様によれば、向精神薬残基と、向精神薬の治療的効果を上回る治療的活性を発揮するように、かつ、その効力を高めるように、かつ、その副作用を軽減するように選択される有機酸残基とを含む化学的コンジュゲートを調製する方法が提供される。この方法は、本発明のこの態様によれば、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載されるコンジュゲートのいずれかを調製するために利用することができ、また、有機酸残基がアミノ基を含むそのようなコンジュゲートを調製するために特に有用である。この方法は、一般には、有機酸をその反応性中間体/誘導体に変換すること、および、この反応性中間体/誘導体を溶媒および有機塩基の存在下で向精神薬と反応することによって行われる。
【0179】
本発明のこの態様による方法によって得られる化学的コンジュゲートは、有機酸がアミノ含有有機酸である場合、その遊離塩基形態である。本明細書中に開示される方法は、特に、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載される方法と比較して、この反応を穏和な条件のもとで行うように設計された。
【0180】
結合反応時において、結合が、有機酸のカルボン酸基と、例えば、ヒドロキシル、チオールまたはアミンである向精神薬の官能基との間で形成され、その結果、ヒドロキシルの場合にはエステル結合、チオールの場合にはチオエステル結合、および、アミンの場合にはアミド結合を、有機酸残基と、向精神薬残基との間で形成する。
【0181】
化学的コンジュゲートを本発明のこの態様に従って調製するための方法は、下記のように2つの方法に基づいている:
【0182】
1つの方法は、有機酸(好ましくは、N保護されたアミノ含有有機酸)を、有機塩基の存在下、定量的な量のアシルハリドと反応して、その結果、その非常に反応性の混合無水物誘導体を形成すること、および、その後、この混合無水物誘導体を向精神薬と反応して、その結果、化学的コンジュゲートを、好ましくは、そのN保護形態で得ることに基づいている。
【0183】
本発明の好ましい実施形態によれば、アシルハリドは、ピバロイルクロリド、アセチルクロリド、イソブチリルクロリドおよび3,3−ジメチルブチリルクロリドからなる群から選択され、より好ましくは、アシルハリドはピバロイルクロリドである。
【0184】
有機塩基の存在は、無水物形成反応およびコンジュゲート形成反応を促進させること、ならびに、それらの反応の完了をもたらすことを目的とする。従って、有機塩基と、有機酸とのモル比は、好ましくは、約2:1〜約1:1の範囲であり、より好ましくは、約1.5:1〜〜約1:1の範囲であり、より好ましくは、約1.3:1〜約1:1の範囲であり、好ましくは約1:1である。従って、有機塩基は、好ましくは、出発する有機酸および向精神薬に関して定量的な量で加えられる。
【0185】
コンジュゲート化反応は、溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)など)において、好ましくは室温で、または、そうでない場合にはわずかに高い温度で、好ましくは50℃未満で、約10時間〜約20時間の範囲にある期間にわたって行うことができる。
【0186】
本発明のこの関連での使用のために好適である例示的な有機塩基には、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、N−メチルモルホリンおよびピペリジンが含まれる。好ましくは、有機塩基はトリエチルアミンである。
【0187】
別の方法では、有機酸および向精神薬を反応することが、脱水剤(結合剤)、溶媒および有機塩基の存在下で行われる。
【0188】
有機酸を向精神薬と反応することが、好ましくは、室温で行われ、または、そうでない場合には、わずかに高い温度で、好ましくは50℃未満で行われる。
【0189】
生成物の収率および純度が、溶媒効果を評価するために、DMFが溶媒として使用された、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載される方法によって得られる収率および純度と比較された。ジクロロメタンが、ペルフェナジンのためのより好適な溶媒であり、また、細かい易流動性の固体としてジクロロメタンにおいて容易に沈殿した形成された副産物の5,6−ジヒドロウラシル(DHU)のためのより良好な貧溶媒であることが見出された。従って、好ましい実施形態において、溶媒はジクロロメタンである。
【0190】
本明細書中で使用される表現「脱水剤」は、1分子以上の水分子が遊離する結合反応を促進させる試薬を表す。脱水剤は、典型的には、遊離した水分子の反応混合物中での濃度を低下させ、それにより、反応を生成物形成の方向に進ませることによって作用する。本発明のこの関連での使用のために好適である例示的な脱水剤には、限定されないが、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)が含まれる。
【0191】
有機塩基が、この方法では、出発するN保護アミノ酸および向精神薬に関して触媒量で使用される。従って、好ましくは、有機塩基と、有機酸とのモル比は、約0.05:1〜約0.5:1の範囲であり、より好ましくは、約0.1:1〜約0.5:1の範囲であり、より好ましくは、約0.3:1である。
【0192】
本発明のこの関連での使用のために好適である例示的な有機塩基には、限定されないが、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、N−メチルモルホリンおよびピペリジンが含まれる。好ましくは、有機塩基は4−ジメチルアミノピリジンである。
【0193】
脱水剤により進められる結合反応は、好ましくは、2時間〜6時間の範囲の期間の間、行われる。
【0194】
代替として、向精神薬、有機塩基および有機酸の混合物が、結合反応の前にスラリーの形態で調製される。好ましくは、このスラリー状混合物は、約0℃〜5℃の範囲にある温度で調製される。その後、脱水剤がスラリーに少量ずつ加えられ、得られた混合物を室温に加温することができる。そのような結合反応は、混合物を室温で撹拌しながら、一晩で完了させることができる。
【0195】
上記で示された方法を使用して、化学的コンジュゲートが、特に、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載される方法によって得られるコンジュゲートと比較して、より大きい収率および純度で得られる。選択された方法によって、収率は、混合無水物法については90%の高さになる場合があり、また、脱水剤法については98%の高さになる場合がある。好ましくは、本発明の方法によって生成物の純度は、HPLCによって決定されたとき、98%以上であり、より好ましくは、純度は99%以上であり、さらには99.5%以上である。
【0196】
化学的コンジュゲートをその遊離塩基形態で調製するためのこれらの新しい効率的な合成法は、下記の実施例の節において詳しく示され、明らかにされ、また、実施例3、実施例4および実施例5によって例示されており、本明細書中に示される化学的コンジュゲートの新規な付加塩の調製において続いて使用された出発物質のN保護された化学的コンジュゲートを調製するために使用された。
【0197】
本明細書中上記に示された方法はどれも、その塩酸付加塩を調製するために利用することができる。塩酸付加塩を、N保護された化学的コンジュゲート(これは好ましくは本明細書中に記載されるように調製される)を塩酸と反応することによって得ることができ、従って、その反応を、本明細書中上記に示される、付加塩を調製するための方法のいずれか1つによって、または、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載される方法によって行うことができる。
【0198】
さらに、本発明によれば、有効成分として本発明の化学的コンジュゲートを含み、さらに医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0199】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、医薬的に好適なキャリアおよび賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0200】
以降、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された調合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、有機溶媒と水の混合物およびエマルジョンがある。
【0201】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0202】
本発明の1つの実施形態において、医薬組成物が注射による投与のために溶液として配合される。この実施形態によれば、医薬用キャリアは、例えば、乳酸の水溶液(例えば、乳酸の1%溶液)が可能である。
【0203】
本発明の別の実施形態において、医薬組成物が、本明細書中上記で記載されるように溶液として、または、固体の投薬形態物として、そのいずれでも経口投与のために配合される。経口投与のために配合されるとき、医薬組成物は、本明細書中下記において詳しく記載されるように、例えば、カプセル、ピルおよび錠剤の形態にすることができる。
【0204】
この関連において、本発明の化学的コンジュゲートのいくつかは、好ましい実施形態によれば、水性媒体において容易に可溶性であり、従って、容易に配合されることを指摘しなければならない。そのような好都合な配合は、長鎖脂肪酸を典型的には含み、従って、水性媒体に不溶性であり、油状の配合物として投与される、向精神薬の既知のエステルコンジュゲートを上回る、本発明の化学的コンジュゲートのさらなる利点を提供する。
【0205】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0206】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々な方法によって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来の方法によって製造することができる。
【0207】
本発明に従って使用するための医薬組成物は活性な化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0208】
注射の場合、本発明の化学的コンジュゲートは、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0209】
経口投与の場合、化学的コンジュゲートは、活性な化合物を、この分野で十分に知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明のコンジュゲートは、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される医薬的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0210】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0211】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性な化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0212】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0213】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明に従って使用される化学的コンジュゲートは、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0214】
本明細書で記述される化学的コンジュゲートは非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0215】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性な化合物の懸濁物を、適切なオイル状のまたは水ベースの注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするためにコンジュゲートの溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0216】
あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0217】
本発明の化学的コンジュゲートはまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0218】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適なキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0219】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている対象の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的な化学的コンジュゲートの量を意味する。
【0220】
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
【0221】
本発明の方法に使用される化学的コンジュゲートに対して、治療的に有効な量又は用量は最初に細胞培養および/または動物における活性アッセイから推定されることができる。例えば、活性アッセイによって測定されるようなIC50を含む循環濃度範囲(例えば増殖活性の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができ、かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0222】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてIC50およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0223】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0224】
投薬量および投薬間隔を、向精神作用および/または抗増殖作用を維持するために十分である活性な成分の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータおよび/またはインビボデータから推定することができ、例えば、特定の細胞の増殖の50%〜90%の阻害を達成するために必要な濃度を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して求めることができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0225】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0226】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0227】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0228】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化学的コンジュゲートを含む組成物はまた、適応される状態を治療するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。好適な状態には、例えば、CNSの疾患または障害(例えば、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安障害、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかん、脳の増殖性障害およびMDRガンなど)、および、化学感作(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)を含まれ得る。
【0229】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書中に記載される医薬組成物は包装物に包装され、下記の使用の1つまたは複数のために包装物上または包装物内において活字で特定される:CNSの障害または疾患の治療における使用のために、脳または末梢の増殖性障害または増殖性疾患の治療における使用のために、ガン(MDRガンなど)の治療における使用のために、また、化学療法剤との組合せでの、および/または、化学感作が有益である医学的状態での化学感作における使用のために。
【0230】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)におけるCNSの障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療効果的な量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0231】
本明細書中で使用される用語「方法」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0232】
従って、用語「治療する」は、疾患の進行を妨げること、実質的に阻害すること、遅くすること、または逆戻りさせること、あるいは、疾患の臨床的症状を実質的に緩和すること、あるいは、疾患の臨床的症状の出現を実質的に防止することを包含する。
【0233】
本明細書中で使用される表現「CNSの障害または疾患」は、中枢神経系における障害によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能であるCNSの障害および疾患の例には、限定されないが、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害が含まれる。
【0234】
CNSのそのような障害または疾患の代表的な例には、限定されないが、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんが含まれる。
【0235】
本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の化学的コンジュゲートを、向精神性の障害または疾患により冒されている脳内の領域または部位にもたらすための方法を示す。
【0236】
本発明の化学的コンジュゲートは腹腔内投与することができる。より好ましくは、本発明の化学的コンジュゲートは経口投与される。
【0237】
用語「対象」は、ヒトを含む、血液脳関門を有する動物(典型的には、哺乳動物)を示す。
【0238】
用語「治療効果的な量」は、治療されているCNSの障害または疾患の症状の1つまたは複数をある程度緩和する投与されている化学的コンジュゲートのそのような量を示す。
【0239】
本発明のこの方法による治療効果的な量は、好ましくは、0.01mg/kg体重〜50mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.01mg/kg体重〜25mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.05mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲であり、最も好ましくは、0.05mg/kg体重〜5mg/kg体重の範囲である。
【0240】
このように、本発明は、向精神活性を発揮する化学的コンジュゲートに関する。本発明の化学的コンジュゲートは、強化された治療活性を発揮し、かつ、最小限に抑えられた、それにより誘導される有害な副作用によってさらに特徴づけられるので非常に好都合である。
【0241】
本明細書中で使用される用語「副作用」は、ある種の薬を対象に投与することの結果として発生することがある有害な症状を示す。そのような症状には、例えば、本明細書中上記で詳しく記載されるように、錐体外路性症状が含まれる場合があり、また、そのような症状は、典型的には、抗精神病薬の投与に関連する。向精神薬に典型的に関連する他の副作用には、例えば、起立性低血圧症、口渇、性機能障害、体重増大、QTc間隔の延長、光過敏性、不穏下肢症候群および鎮静が含まれる。
【0242】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)における増殖性の障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療効果的な量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0243】
本明細書中で使用される用語「増殖性の障害または疾患」は、細胞増殖によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明によって防止または治療され得る細胞増殖状態には、例えば、悪性の腫瘍(例えば、ガンなど)および良性の腫瘍が含まれる。
【0244】
本明細書中で使用される用語「ガン」は、Stedman’s medical Dictionary(第25版)(Hensyl編、1990)によって定義されるように様々なタイプの悪性の新生物(そのほとんどが周りの組織に侵入することができ、また、異なる部位に転移し得る)を示す。本発明の化学的コンジュゲートによって治療され得るガンの例には、脳および皮膚のガンが含まれるが、これらに限定されない。これらのガンはさらに分類することができる。例えば、脳のガンには、多形性神経膠芽細胞腫、未分化星状膠細胞腫、星状膠細胞腫、上衣細胞腫、乏突起膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、肉腫、血管芽細胞腫および松果体実質が含まれる。同様に、皮膚のガンには、メラノーマおよびカポジ肉腫が含まれる。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能な他のガン性疾患には、乳頭腫、ブラストグリオーマ、卵巣ガン、前立腺ガン、扁平上皮ガン、星状膠細胞腫、頭部ガン、頸部ガン、膀胱ガン、乳ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、膵臓ガン、胃ガン、肝細胞ガン、白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫が含まれる。
【0245】
他の非ガン性増殖性障害もまた、本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能である。そのような非ガン性増殖性障害には、例えば、狭窄症、再狭窄、ステント内狭窄、血管移植片再狭窄、関節炎、リウマチ様関節炎、糖尿病網膜症、血管形成、肺線維症、肝硬変、アテローム性動脈硬化、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血栓性細小血管障害症候群および移植拒絶が含まれる。
【0246】
本発明の化学的コンジュゲートは、様々な化学療法薬物との組合せで使用されたとき、化学感作活性をさらに発揮する。
【0247】
従って、さらに、本発明によれば、化学感作の方法が提供される(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)。この方法は、治療効果的な量の1つまたは複数の化学療法剤と、化学感作効果的な量の本発明の化学的コンジュゲートとを対象に投与することによって行われる。
【0248】
本明細書中で使用される表現「化学感作有効量(化学感作効果的な量)」は、治療量の化学療法剤の存在下での測定可能な化学感作のために十分な量を記載する。
【0249】
この方法は、対象がMDRガン(例えば、白血病、リンパ腫、ガン腫または肉腫など、これらに限定されない)を有する場合に特に有用である。本発明によれば、化学療法剤は、例えば、下記のいずれかであり得る:アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード系、エチレンイミン系およびメチルメラミン系、アルキルスルホナート系、ニトロソウレア系、ならびにトリアゼン系など;代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログなど;天然物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質、酵素、タキサン系、および生物学的応答修飾剤など;その他の薬剤、例えば、白金配位錯体、アントラセンジオン系、アントラサイクリン系、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体または副腎皮質抑制剤など;あるいは、ホルモンまたはアンタゴニスト、例えば、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン系、エストロゲン系、抗エストロゲン剤、アンドロゲン系、抗アンドロゲン剤、または、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログなど。好ましくは、化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード系、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質または白金配位錯体である。より好ましい化学療法剤はシスプラチンまたはビンクリスチンである。
【0250】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0251】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0252】
材料および実験方法
すべての試薬および溶媒を商業的供給元(例えば、Aldrich、Sigma、FlukaおよびMerckなど)から購入した。
【0253】
AN−197およびAN−168を、別途示されない限り、国際特許出願公開WO03/026563に記載される手順に従って調製した。
【0254】
HPLC分析を、下記の装置条件のもと、Luna C18(2)(50mmx4.6mmx3um)カラム、5μlの注入体積および2487二重波長検出器を使用してWater2695 Separations Moduleで行った:移動相A:0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル;流速:0.5ml/分;移動相勾配:0.0分 90%A、10%B、14.0分 20%A、80%B、15.0分 90%A、10%B、および、20.0分 90%A、10%B;操作時間:20分;検出:UV(254nm);カラム温度:40℃
【0255】
NMRスペクトルを、Bruker−Advance 500HMz装置を使用して記録した。
【0256】
水吸収および水分含有量の測定を、カールフィッシャー(KF)滴定装置を使用して行った。カールフィッシャー滴定は、水に対して特異的である比色滴定を、サンプルの水分含有量を求めるために使用する、分析化学での古典的方法である。滴定反応が、塩基および滴定溶媒としての50:50のメタノール:ジクロロメタンの存在下で行われる。

【0257】
カールフィッシャー化学反応が、ヨウ素と水との間で起こり、このとき、反応物は、ヨウ素と、水との間で1:1の比率である。
【0258】
被試験化合物の正確に重量測定されたサンプル(およそ100mg)を、10μg〜250μgの水の測定に必要なサンプル量を決定するために滴定装置に入れ、水分含有量をそれに従って計算した。
【0259】
化学合成、分析および結果
(参考実施例1)
国際特許出願公開WO03/026563に従ったペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸(AN−197)の合成

AN−197を、国際特許出願公開WO03/026563および米国特許出願第10/808541号に記載されるように調製した。簡単に記載すると、10mlのDMF(1体積)におけるN−Boc保護γ−アミノ酪酸(Sigma、カタログ番号15294)(1当量)およびカルボニルジイミダゾール(CDI、Fluka、カタログ番号21860)(1.1当量)の混合物を窒素雰囲気下で1時間撹拌した。ペルフェナジン(Sigma、カタログ番号P6402)(1当量)を加え、その後、混合物を窒素雰囲気下において90℃で24時間撹拌した。得られたスラリーを蒸発し、酢酸エチルおよび水の間で分配した。水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を一緒にして、NaHCOにより2回、ブラインにより2回洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、蒸発した。N保護された生成物を黄色がかったオイルとして得た。
【0260】
粗生成物を、20:1の酢酸エチル:エタノールの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。精製された生成物を黄色がかったオイルとして得た(63%の収率)。
【0261】
最終生成物の純度を調べ、HPLCによって決定されたとき、98.83%であることが見出された。


【0262】
(参考実施例2)
国際特許出願公開WO03/026563に従ったペルフェナジン4−アミノ酪酸塩酸塩(AN−168)の合成
AN−168を、国際特許出願公開WO03/026563に記載されるように、N保護基をペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸(AN−197)から除くことによって調製した。簡単に記載すると、4N HClの酢酸エチルにおける溶液を、N保護された生成物(ペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸、AN−197)を酢酸エチルに溶解した溶液に滴下して加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。その後、溶媒を真空下で蒸発し、残渣を高真空下でさらに乾燥した。生成物を定量的収率で塩酸塩として得て、メタノールおよびエーテルの1:1混合物から再結晶し、ろ過し、乾燥した。

【0263】
最終生成物は吸湿であることが見出され、水分含有量が、カールフィッシャー(KF)滴定分析法によって測定されたとき、1.05%(重量/重量)であった。
【0264】
上記の手順を、室温での2時間の撹拌の後で、熱を加え、混合物を40℃でさらに2時間撹拌したことを除いて、類似した規模で繰り返した。HCl塩が、窒素流のもとでのろ過の後で黄褐色の粘着性固体として得られた。最終生成物は、KF分析によって測定されたとき、12.5%(重量/重量)の水分含有量を有することが見出された。
【0265】
(実施例3)
ペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸(AN−197)の合成−経路A
THF溶液(5体積)におけるN−Boc−GABA(1.44当量)およびトリエチルアミン(TEA、1.44当量)をピバロイルクロリド(1.11当量)と反応して、反応性の混合無水物である無水4−(ter−ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸ピバル酸を形成させた。その後、この無水物をペルフェナジン(1.0当量)と50℃未満の温度で16時間反応させた。生成物を、90%を超える収率で単離した。生成物のHPLC分析では、生成物の主ピークには、面積比でおよそ23%の不純物(HPLCクロマトグラムにおける「肩」として反映される)が混入することが示された。さらなる分析により、この不純物は2−(4−(3−(2−クロロ−10H−フェノチアジン−10−イル)プロピル)ピペラジン−1−イル)エチルピバレート(ペルフェナジンのピバル酸エステル)であることが示された。
【0266】
(実施例4)
ペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸(AN−197)の合成−経路B
N−Boc−GABA(1当量)を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1当量)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.3当量)の存在下、無水ジクロロメタン(DCM)中で4時間、ペルフェナジン(1当量)と反応させた。混合物をろ過し、溶媒を真空下で除いた。残渣オイルをアセトニトリルに溶解し、0℃〜5℃に1時間冷却し、ろ過した。アセトニトリルを真空下で除き、残渣オイルを酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル溶液を、クエン酸溶液、重炭酸ナトリウムおよびブラインにより順次洗浄し、真空下で濃縮して、AN−197をオレンジ色のオイルとして得た(97%の収率)。これは、HPLCによって決定されたとき、98.8%の純度を有する。
【0267】
(実施例5)
ペルフェナジンN−Boc−4−アミノ酪酸(AN−197)の合成−経路C
ペルフェナジン(10グラム、24.8mmol、1.0当量)およびジクロロメタン(60ml、6体積)を、Nが流される清浄な乾燥した500mlの丸底フラスコにおいて混合した。4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.91グラム、7.4mmol、0.3当量)およびN−Boc−GABA(6.04グラム、29.8mmol、1.2当量)を加え、得られたクリーム色のスラリーを0℃〜5℃に冷却して、発熱反応を弱めた。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、6.44グラム、31.2mmol、1.2当量)を1グラムずつ加え、スラリーを室温に加温し、一晩撹拌し、その間、出発物質の消費をHPLCによってモニターした。反応が完了すると、スラリーを0℃〜5℃に2時間冷却し、形成された副産物の5,6−ジヒドロウラシル(DHU)をろ過して除き、ろ液を冷ジクロロメタン(0℃〜5℃)により洗浄した(10mlで2回)。洗浄されたろ液を真空下において40℃で濃縮してオイルにし、その後、酢酸エチル(70ml、7体積)に再溶解し、0℃〜5℃に2時間冷却した。微細な沈殿する固体をろ過し、冷酢酸エチル(0℃〜5℃)により洗浄した(10mlで2回)。酢酸エチル溶液を、5%クエン酸溶液(10mlで2回)、1M重炭酸ナトリウム溶液(10mlで2回)およびブライン(50mlで2回)により洗浄した。溶液を真空下において40℃で濃縮して、化合物AN−197を粘性のオレンジ色のオイルとして得た(98%の収率)。これは、HPLCによって決定されたとき、99.47%の純度を有する。
【0268】
上記の手順を、異なる量の出発物質(ペルフェナジン)を使用してさらに3回繰り返した。上記の手順は、生成物(AN−197)の類似したレベルの純度および収率をもたらすことによって、非常に再現的であることが見出された。具体的には、50グラムのペルフェナジンを用いて開始した2回の反復実験により、98.9%および99.07%の純度を有するAN−197が98%および99%の収率でそれぞれ得られた。別個の実験において、100グラムのペルフェナジンを用いた開始した場合、99.53%の純度および81%の収率を有するAN−197が得られた。
【0269】
(実施例6)
AN−197の安定性研究
AN−197の安定性を、HPLC分析を24日間中毎日行い、ペルフェナジンおよびGABA(AN−197の分解生成物)の出現を明らかにすることによって求めた。上記において実施例4に記載される手順(経路B)に従って調製されたAN−197のサンプルを、HPLC分析で使用される移動相溶液(2:1のアセトニトリル:水、pH=8)に溶解し、20℃で保った。比較のために、純粋なAN−197のサンプルを同じ条件で保ち、同じように分析した。
【0270】
結果から、移動相溶液に溶解されたとき、AN−197は、同じ期間にわたって、純粋なオイルの分解と比較して、ペルフェナジンおよびGABAへの分解のより大きい割合を示したことが示された。従って、HPLC移動相における24日後のAN−197溶液のHPLC分析では、ペルフェナジン含有量における0.42%から7.98%への増大が示され、純粋なオイルのHPLC分析では、24日間にわたって、ペルフェナジンおよびGABAへのわずかな分解(ペルフェナジン含有量における0.42%から0.79%への増大)が示されただけであった。
【0271】
より長い処理時間によって特徴づけられる大規模製造の条件のもとでのAN−197の安定性を評価するために、上記の実施例4に記載される手順(経路B)に従って調製されたAN−197のサンプルを、ジクロロメタン、アセトニトリルまたは酢酸エチルに溶解した後、40℃に一晩加熱した。この期間の後でのサンプルの分析では、分解が何ら生じていなかったことが示された。従って、AN−197はそのような条件のもとでは安定であることが結論された。
【0272】
酸性条件下でのAN−197の安定性を評価するために、上記の実施例4に記載される手順(経路B)に従って調製されたAN−197のサンプルを酢酸エチルに溶解し、クエン酸溶液において一晩撹拌した。クエン酸の存在下での撹拌の前後における酢酸エチル溶液の分析では、生成物の加水分解は何ら示されなかった。このことから、クエン酸が、反応生成物の後処理において好まれる酸として役立ち得ることが明らかにされる。
【0273】
(実施例7)
AN−168の安定性研究
上記の実施例2に記載される手順に従って調製されたGABAコンジュゲートのHCl塩(AN−168)の安定性を明らかにするために、この塩の3つのサンプルをHPLC分析によって調べた。従って、乾燥した塩としてのAN−168のサンプルを、5℃、20℃および40℃で24日間にわたって保ち、分解生成物の出現を明らかにするためにHPLCによって分析した。これらの研究の結果が下記の表2に示される。

【0274】
表2において認められ得るように、AN−168は、試験された温度のそれぞれにおいて、時間とともに、ペルフェナジンおよびGABAに分解し、および/または、ペルフェナジンおよび2−ピロリジノンへのトランスエステル化を受けた。
【0275】
(実施例8)
有機酸とのAN−197の付加塩の調製−一般的手順
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの無機酸および有機酸の例示的な付加塩を、下記のスキーム1に例示される一般的な合成経路に従って合成した。これらの塩の合成経路は、一般には、(i)本明細書中上記に記載されるように、向精神薬(例えば、ペルフェナジン)をN保護のアミノ含有有機酸(例えば、N保護のγ−アミノ酪酸)と反応し、その結果、そのN保護された化学的コンジュゲートを得ること;および(ii)形成されたN保護の化学的コンジュゲートを無機酸または有機酸と反応し、その結果、その所望される酸付加塩を得ることを含む。

PGは保護基を示す。
【0276】
従って、いくつかの有機酸と、AN−197との付加塩を、下記の一般的な手順に従って調製した:3グラムのAN−197を、溶液を0℃〜5℃に冷却しながら、窒素雰囲気下で有機溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは酢酸エチルなど)(10ml〜20ml、2体積)に溶解した。トリフルオロ酢酸(6当量〜8当量)の溶液をAN−197溶液に加え、混合物を、室温に、または、35℃にまで加温し、その結果、GABA残基のN保護基を除いた。3時間〜16時間の後、もはやAN−197がHPLCによって検出されなくなったとき、反応液を真空下で濃縮し、得られたオイルを7体積の有機溶媒に再溶解し、1Mの重炭酸ナトリウム(6当量〜8当量)を0℃〜5℃で加え、その結果、混合物のpHを約8にすることによって失活処理した。この失活化手順を1回〜2回繰り返し、その結果、AN−197の対応する遊離塩基を得た。
【0277】
有機酸(1当量〜3当量)を有機溶媒(例えば、アセトンまたはイソプロピルアルコールなど)に溶解した溶液をコンジュゲートの得られた遊離塩基(アミン)の溶液に加え、その後、混合物を0℃〜5℃に冷却し、その結果、塩を沈殿させた。ろ過した固体の塩を有機溶媒により洗浄し、真空下で乾燥し、コンジュゲートのペルフェナジンおよび遊離塩基の痕跡量についてHPLCによって室温で分析した。
【0278】
上記の一般的な手順を使用して、様々な酸付加塩を調製し、分析し、その結果、それらの合成効率および生成物安定性を求めた。下記の表3には、得られた結果が示される。

【0279】
(実施例9)
AN−197のマレイン酸付加塩の調製
AN−197のマレイン酸付加塩を、上記に記載される一般的手順に従って調製した。合成経路が下記のスキーム2に記載される。

【0280】
AN−197(1.0当量)およびジクロロメタン(DCM、40ml、4体積)を、Nが流される清浄な乾燥した100mlの丸底フラスコにおいて混合し、混合物を、出発物質のすべてが溶解するまで撹拌した。その後、溶液を10℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(TFA、7.7当量)を、温度を20℃未満で維持しながら滴下して加えた。添加が完了したとき、得られた混合物を35℃に加熱し、この温度で16時間維持した。その後、得られた溶液を真空下において35℃で濃縮し、得られたオイルをDCM(7体積)に再溶解し、1M重炭酸ナトリウム溶液(7.7当量)の撹拌された溶液に0℃〜5℃で加えた。混合物を0℃〜5℃で15分間撹拌し、その後、層を分離し、下側の有機層を1M重炭酸ナトリウム溶液(7.7当量)の撹拌された溶液に0℃〜5℃で加えた。混合物を0℃〜5℃で15分間撹拌し、その後、層を分離し、有機層を水(5体積)により洗浄した。
【0281】
その後、層を再び分離し、マレイン酸(3.0当量)をイソプロピルアルコール(IPA、2体積)に溶解した溶液を下側の黄色の有機層に加え、これにより、黄色固体の沈殿が生じた。混合物を室温で1時間撹拌し、その後、0℃〜5℃に1時間冷却し、ろ過し、ろ液を冷IPAにより洗浄した(1体積で2回)。その後、固体を真空下において40℃で乾燥して、トリマレイン酸塩を黄色の固体として得た。
【0282】
固体生成物のHPLC分析では、塩については98.31%のピーク面積、ペルフェナジンについては0.82%のピーク面積、および、AN−197については0.01%のピーク面積が示された。
【0283】
本明細書中に示されるマレイン酸付加塩の調製は、100グラムのAN−197を用いて開始したとき、首尾よくスケールアップされた。マレイン酸塩が98%の収率で単離された。
【0284】
生成物のHPLC分析では、塩については99.31%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては0.25%のピーク面積が示された。そのような大規模調製でのペルフェナジンのレベルは、おそらくは、水分進入レベルがより大きい規模での調製ではより低いために、より小さい規模での調製において以前に認められたよりも低かった。
【0285】
本明細書中に示されるマレイン酸付加塩の調製はさらに、200グラムのAN−197を用いて開始したとき、首尾よくスケールアップされて、トリマレイン酸塩を、塩について97%のHPLCピーク面積を有する黄色の固体として得た。
【0286】
(実施例10)
AN−197のシュウ酸塩付加塩の調製
AN−197のシュウ酸塩付加塩を、上記に記載される一般的手順に従って調製した。
【0287】
生成物のHPLC分析では、塩については98.05%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては0.75%のピーク面積が示された。
【0288】
(実施例11)
有機スルホン酸とのAN−197の付加塩の調製−一般的手順
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの有機スルホン酸の例示的な付加塩を、下記のスキーム3に例示される一般的な合成経路に従って合成した。AN−197の有機スルホン酸付加塩を、下記のスキーム3に例示されるように、対応する遊離塩基を分離することなく、AN−197から直接に調製した。脱保護およびその場での塩形成のこの一段階法は塩形成方法をさらに簡便化し、また、エステル結合の加水分解を生じさせ得るため、分解生成物を生じさせ得る水分に対する遊離塩基の暴露を最小限に抑える。この方法は、有機スルホン酸を用いて可能になる。これは、このような酸は、典型的には、化学的コンジュゲートのアミノ基におけるN保護基を除くために十分に強く、そのため、TFAを使用する必要性が回避されるからである。

R=アルキルおよびアリール。
【0289】
従って、いくつかの有機スルホン酸と、AN−197との付加塩を、下記の一般的手順に従って調製した:AN−197(1.0当量)および有機溶媒(40mlm、4体積)を、Nが流される清浄な乾燥した100mlの丸底フラスコに加え、混合物を、出発物質のすべてが溶解するまで撹拌した。溶液を40℃に加熱し、有機スルホン酸(3.0当量)を加えた。得られた反応混合物を40℃で5時間加熱し、0℃〜5℃に冷却し、その温度で1時間維持した。得られたスラリーを窒素下でろ過して除き、冷アセトニトリル(0℃〜5℃)により洗浄し(1体積で2回)、真空下において40℃で乾燥して、トリ有機スルホン酸塩を固体として得た。
【0290】
(実施例12)
AN−197のメタンスルホン酸(メシル酸)付加塩の調製
AN−197のメタンスルホン酸付加塩を、上記の実施例11に記載される一般的手順に従って調製した。AN−197(1.0当量)およびアセトニトリル(MeCN、40ml、4体積)を、Nが流される清浄な乾燥した100mlの丸底フラスコに加え、混合物を、出発物質のすべてが溶解するまで撹拌した。溶液を40℃に加熱し、メタンスルホン酸(3.0当量)を加えた。得られた反応混合物を40℃で5時間加熱し、0℃〜5℃に冷却し、その温度で1時間維持した。得られたスラリーを窒素下でろ過して除き、冷アセトニトリル(0℃〜5℃)により洗浄し(1体積で2回)、真空下において40℃で乾燥して、トリメシル酸塩を白色の固体として得た。
【0291】
生成物のHPLC分析では、塩については97.91%のピーク面積、ペルフェナジンについては1.39%のピーク面積、および、AN−197については0.25%のピーク面積が示された。
【0292】
溶媒の影響を、反応を、反応溶媒としてのジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテルまたはトルエンにおいて行うことによって調べた。酢酸イソプロピル、メチル第三級ブチルエーテルおよびトルエンが溶媒として使用されたとき、付加塩生成物が沈殿せず、生成物は溶液中に留まったままであったか、または、溶液からオイルとして生じたかのいずれかであった。従って、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランが、最も好適な溶媒であることが見出され、アセトニトリルがさらなる研究のための理想的な溶媒として選択された。
【0293】
上記の手順を、その再現性を評価するために、異なる量の出発物質(AN−197)を用いて3回繰り返した。1グラム、3グラムまたは5グラムのAN−197を用いて開始した反応を行い、分析し、塩についてはそれぞれ、98.55%、98.93%および99.92%のピーク面積、AN−197についてはそれぞれ、0.29%、0.2%および0.39%のピーク面積、ならびに、ペルフェナジンについてはそれぞれ、1.08%、0.7%および0.31%のピーク面積が得られた。これらの結果が下記の表4に示される。

【0294】
本明細書中上記に示されるメタンスルホン酸付加塩の調製は首尾よくスケールアップされた。100グラムのAN−197を用いて開始したとき、塩について97.8%のHPLCピーク面積を有するメタンスルホン酸塩が得られた。
【0295】
代わりの経路において、AN−197のメシル酸塩を下記のようにアセトン中で調製した:
【0296】
AN−197(1当量、1.7mmol)およびアセトン(4ml)を窒素雰囲気下における清浄な乾燥したフラスコに仕込み、混合物を40℃に加温した。5分後、AN−197が完全に溶解し、透明な溶液が得られた。その後、メタンスルホン酸(385μl、5.94mmol、3.5当量)をアセトン(2ml)に溶解した溶液を加え、得られた混合物を窒素雰囲気下において40℃で4時間撹拌した。得られた生成物が反応期間中に溶液から沈殿し、従って、反応が生成物形成の方向に変化した。その後、沈殿物を減圧下でろ過し、アセトンにより洗浄し、減圧下で乾燥して、HPLCによって決定されたとき、99.4%の純度を有する1.05グラム(83%の収率)のメシル酸付加塩を得た。
【0297】
(実施例13)
AN−197のp−トルエンスルホン酸付加塩の調製
AN−197のp−トルエンスルホン酸付加塩を、アセトニトリルを反応溶媒として使用して、上記の実施例11に記載される一般的手順に従って調製した。
【0298】
生成物のHPLC分析では、塩については57.92%のピーク面積、AN−197については17.20%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては22.8%のピーク面積が示された。
【0299】
(実施例14)
AN−197の1−ナフタレンスルホン酸付加塩の調製
1−ナフタレンスルホン酸を二水和物として高純度で得て、使用される前に0.21重量パーセントの水分含有量に乾燥した。
【0300】
AN−197の1−ナフタレンスルホン酸付加塩を、100グラムのAN−197を400mlのアセトニトリルにおいて使用して、上記の実施例11に記載される一般的手順に従って調製して、トリ−(1)−ナプシル酸塩を白色の固体として得た。
【0301】
生成物のHPLC分析では、塩については99.2%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては0.4%のピーク面積が示された。
【0302】
(実施例15)
AN−197の2−ナフタレンスルホン酸付加塩の調製
2−ナフタレンスルホン酸を99%の高純度および14.4%の最初の水分含有量で得た。酸を、使用される前に0.09重量パーセントの水分含有量に乾燥した。
【0303】
AN−197の2−ナフタレンスルホン酸付加塩を、上記の実施例11に記載される一般的手順に従って調製して、トリ−(2)−ナプシル酸塩を得た。
【0304】
生成物のHPLC分析では、塩については98.1%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては1.1%のピーク面積が示された。
【0305】
(実施例16)
AN−197のベンゼンスルホン酸(ベシル酸)付加塩の調製
1.4%の最初の水分含有量を有するベンゼンスルホン酸を得た。酸を受領時のまま使用した。
【0306】
AN−197のベンゼンスルホン酸付加塩を、上記の実施例11に記載される一般的手順に従って調製して、トリ−ベシル酸塩を得た。
【0307】
反応が40℃で3時間後に完了した;生成物が溶液からオイルとして分離した。16時間さらに撹拌することにより、生成物が白色の固体として固化し、沈殿した。
【0308】
生成物のHPLC分析では、塩については98.2%のピーク面積、および、ペルフェナジンについては1.6%のピーク面積が示された。
【0309】
この塩の沈殿化が遅かったので、貧溶媒が、生成物の沈殿化を助けるために使用されたさらなる実験を行った。これらの実験および得られた生成物が下記の表5に示される。

【0310】
表5に示されるように、ヘプタンまたはトルエンのいずれかの添加は、生成物が固体として沈殿することをもたらしたが、それにもかかわらず、沈殿化が生じるために要求される時間が2時間から16時間にまで及んだ。固体が高純度で単離され、ペルフェナジンのレベルは、一般には、HPLCピーク面積において1.5%未満であった。安定性を生成物について評価した。一般には、より長い期間にわたって沈殿した塩は、開放バイアルにおいて室温で貯蔵されたとき、より安定であることが見出された。
【0311】
代わりの経路において、AN−197のベシル酸付加塩を下記のように調製した:
AN−197(10グラム、16.97mmol)と、酢酸イソブチル:アセトンの1:1混合物(4ml)とを、窒素雰囲気下における清浄な乾燥したフラスコに仕込み、混合物を40℃に加温した。15分後、AN−197が完全に溶解し、透明な溶液が得られた。その後、ベンゼンスルホン酸(9.96グラム、61.09mmol、3.6当量)を酢酸イソブチル:アセトンの1:1混合物(20ml)に溶解した溶液を加え、得られた混合物を窒素雰囲気下において40℃で4時間撹拌した。得られた生成物が反応期間中に溶液からオイル化し、従って、反応が生成物形成の方向に変化し、反応時間が終了したとき、白色の固体が沈殿物として得られた。その後、沈殿物を減圧下でろ過し、酢酸イソブチル:アセトンの1:1混合物により洗浄し、次いで、アセトンにより洗浄し、その後、減圧下で乾燥して、HPLCによって決定されたとき、99.85%の純度を有する14.695グラム(90%の収率)のベシル酸付加塩を得た。
【0312】
(実施例17)
AN−197のベンゼンスルホン酸付加塩の大規模調製
ベンゼンスルホン酸(188グラム、3.5当量)およびアセトニトリル(200ml、1体積)を、機械的撹拌装置、温度計、均圧滴下漏斗および窒素流のすり合せを備える3リットルの丸底フラスコに入れ、混合物を、酸が溶解するまで撹拌した。
【0313】
AN−197(200グラム、1.0当量)を、混合物を窒素雰囲気下において40℃で加熱することによって別個の2リットルのフラスコにおいてアセトニトリル(800ml、4体積)に溶解した。その後、AN−197溶液を滴下漏斗に移し、温度を40℃近くで保つようにベンゼンスルホン酸溶液に滴下して加えた。得られたピンク色の溶液を、反応進行をHPLCによってモニターしながら40℃で1時間撹拌した。得られた油状の懸濁物を室温に冷却し、さらに1時間撹拌した。その後、ヘプタン(800ml、4体積)を反応混合物に加え、混合物を0℃〜5℃に1時間冷却した。その後、トルエン(800ml、4体積)を加え、混合物をさらに0℃〜5℃で2.5時間撹拌した。そのとき、固体が形成および沈殿し始めた。混合物を0℃〜5℃でさらに2.5時間撹拌することができ、その後、固体を窒素雰囲気下でろ過し、沈殿物を冷アセトニトリル(0℃〜5℃)により洗浄した(400mlで2回、2体積で2回)。固体をフィルター上で1時間乾燥し、その後、アセトニトリルに戻してスラリーにし、ろ過し、真空下において室温で乾燥した。生成物を、塩については77%の収率および99.4%のHPLCピーク面積で灰白色の固体として単離した。
【0314】
(実施例18)
メタンスルホン酸による脱保護を介するAN−197のマレイン酸付加塩の調製
この方法は、TFAの使用を回避しながら、AN−197の最初の脱保護をメタンスルホン酸により行い、その後、中和、および、トリマレイン酸塩の沈殿化を行うように設計された。
【0315】
AN−197(20グラム、1.0当量)およびジクロロメタン(DCM、80ml、4体積)を、Nが流される清浄な乾燥した500mlの丸底フラスコにおいて混合し、混合物を、出発物質のすべてが溶解するまで撹拌した。
【0316】
その後、メタンスルホン酸(3.5当量)を、溶液を40℃で保ちながら滴下して加えた。4時間撹拌した後、得られた混合物を室温に冷却し、0℃〜5℃にさらに冷却し、その温度で1時間維持した。スラリーの形態での反応混合物を窒素雰囲気下でろ過し、冷アセトニトリル(0℃〜5℃)により洗浄し(1体積で4回)、得られた固体生成物を2リットルの丸底フラスコに移した。その後、1体積の水(20ml)を加えて、塩を溶解し、その後、ジクロロメタン(4体積)を加えた。混合物を重炭酸ナトリウム(1M、7.7当量で2回)により2回洗浄して、遊離塩基を生じさせた。有機相を1体積の水によりさらに洗浄し、イソプロパノール(70ml)に溶解した3当量のマレイン酸にゆっくり加えた。黄色がかった固体が沈殿し、スラリーを4℃に冷却し、ろ過し、オーブンで24時間、真空下において40℃で乾燥した。生じたトリマレイン酸塩が、HPLCによって決定されたとき、96%超える純度で得られた。
【0317】
(実施例19)
化学的コンジュゲートの遊離塩基(アミン)の安定性研究
化学的コンジュゲートの純粋な遊離塩基の安定性を、HPLC分析を24日間中毎日行い、その分解生成物(ペルフェナジンおよびGABA)の出現を明らかにすることによって求めた。コンジュゲートの純粋な遊離塩基のサンプルを、上記において実施例9に記載される一般的手順を使用して、マレイン酸塩およびシュウ酸塩の調製において記載されるように、TFAによるAN−197の脱保護の後で集め、HPLC分析で使用される移動相溶液(2:1のアセトニトリル:水、pH8)に溶解し、20℃または40℃のいずれかで保った。
【0318】
結果が下記の表6に示される。結果は、この物質が、遊離塩基の相対的なピーク面積の低下する値、および、ペルフェナジンの相対的なピーク面積の増大する値によって明らかにされるように、両方の温度で非常に不安定であることを示す。最初の24時間の期間中において、およそ5%の相対的なピーク面積での、ペルフェナジンへの分解が、20℃で保たれたサンプルにおいて観測され、一方で、同じ期間中において、遊離塩基の20%超が、40℃で保たれたサンプルではペルフェナジンに分解した。

【0319】
(実施例20)
コンジュゲートのシュウ酸付加塩の安定性および吸湿性
シュウ酸付加塩のサンプルを、開放容器において、5週間の期間(約840時間)にわたって室温で保ち、その後、分析した。シュウ酸塩の吸湿性は、塩の水分含有量を、カールフィッシャー(FK)滴定分析法を使用して追跡することによって求められ、また、シュウ酸塩の化学的安定性は、分解生成物のペルフェナジンの出現をHPLC分析で追跡することによって求められた。
【0320】
シュウ酸塩の初期水分含有量は1.36重量パーセントであり、5週間の期間が終了したとき、水分含有量は1.90重量パーセントに増大した。
【0321】
シュウ酸塩の初期純度は、HPLCによって決定されたとき、98.05%であり、5週間の期間が終了したとき、純度は94.61%に低下した。
【0322】
ペルフェナジンの初期含有量は0.75%であり、5週間の期間が終了したとき、ペルフェナジン含有量は1.71%に増大した。
【0323】
この研究では、AN−197のシュウ酸付加塩が、HCl塩(AN−168)と比較して、より大きい安定性およびより低い吸湿性を有する付加塩であることが示された。
【0324】
(実施例21)
コンジュゲートのメシル酸付加塩およびマレイン酸付加塩の安定性および吸湿性
コンジュゲートのメシル酸付加塩およびマレイン酸付加塩の安定性および吸湿性の研究を様々な条件のもとで行った。これらの塩の吸湿性は、塩の水分含有量を、カールフィッシャー(FK)滴定分析法を使用して追跡することによって求められた。これらの塩の化学的安定性は、分解生成物のペルフェナジンの出現を、HPLC分析を使用して追跡することによって求められた。サンプルを、窒素下での−20℃で、開放容器において室温で、密閉容器において室温で、また、密閉容器において40℃で保った。これらのサンプルを、調製手順の終了時(t=0)、調製時間後72時間(t=72)、調製時間後1週間(t=168)、および、調製時間後2週間(t=336)で調べた。メシル酸付加塩を用いて得られた結果が下記の表7に示される。マレイン酸付加塩を用いて得られた結果が下記の表8に示される。


【0325】
表7において認められ得るように、メシル酸塩は、密閉容器において、−20℃および窒素雰囲気下で保たれたときに最も安定であった。化学的組成および水分含有量における著しい変化は、このサンプルについては何ら観測されなかった。安定性が最も低いサンプルは、おそらくは、生成物の分解および脱エステル化を促進させる塩の急速かつ著しい水分吸収のために、開放容器において室温で保たれたサンプルであった。雰囲気にさらされて室温で保持されたメシル酸塩もまた、表面性状が粘着性となり、色がピンク色から黒色に変化している。


【0326】
表8において認められ得るように、マレイン酸塩はすべてのサンプル形態で安定であった。安定性が最も低いサンプルは、開放容器において室温で保たれたサンプルであり、この場合、塩の水分吸収のわずかに上昇したレベルが検出された。これらの条件のもとで、マレイン酸塩はわずかに変色して、黄色から明るいオレンジ色に変化したが、易流動性の固体として留まっていた。
【0327】
マレイン酸付加塩のサンプルを、開放容器において、5週間の期間(約840時間)にわたって室温でさらに保ち、その後で分析した。サンプルの水分含有量が0.91%に達し、純度が94.98%に低下し、ペルフェナジンが1.46%に増大した。
【0328】
この研究では、マレイン酸付加塩が、HCl塩およびメシル酸塩と比較して、より大きい安定性およびより低い吸湿性を有する付加塩であることが示された。
【0329】
(実施例22)
コンジュゲートの1−ナプシル酸付加塩の安定性および吸湿性
1−ナプシル酸塩の安定性研究をメシル酸付加塩およびマレイン酸付加塩について記載されたように行ったとき(本明細書中上記の実施例21を参照のこと)、この塩は、2週間の期間にわたって密閉容器において窒素下で−20℃および0℃の両方で貯蔵されたときには非常に安定であることが示された。1−ナプシル酸塩は、密閉容器および開放容器の両方において室温で保たれたとき、安定であり、2週間の期間にわたって観察されるようなペルフェナジンへの最小限の分解を示した。
【0330】
(実施例23)
コンジュゲートのメシル酸付加塩およびマレイン酸付加塩の溶解性研究
本明細書中に記載されるように調製されたメシル酸付加塩およびマレイン酸付加塩のそれぞれの1グラムを、室温で1時間、10mlの1%(重量/体積)乳酸溶液において撹拌した。その後で残留する何らかの固体をろ過して除き、ろ過を、さらなる重量変化が検出されなくなるまで真空下で乾燥した。マレイン酸塩について得られた計算後の溶解度は48mg/mlであった。メシル酸塩について得られた計算後の溶解度は100mg/mlを超えていた。
【0331】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0332】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、前記第2の化学的成分はアミノ基を含有する有機酸残基であり、前記有機酸残基は、前記向精神薬がそれ自体で投与されたときに前記向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、前記向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択され、前記アミノ基はその酸付加塩の形態であるが、前記酸付加塩はHCl付加塩ではない、化学的コンジュゲート。
【請求項2】
−50℃〜50℃の範囲の温度で貯蔵した際、少なくとも7日間にわたって化学的に安定である、請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項3】
前記貯蔵の際の化学的コンジュゲートの純度における変化はコンジュゲートの初期純度の4パーセント未満である、請求項2に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項4】
非吸湿性であるとして特徴づけられる、請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項5】
−50℃〜50℃の範囲の温度で貯蔵したときの化学的コンジュゲートの水分含有量における変化がコンジュゲートの総重量の0.4重量パーセント未満である、請求項4に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項6】
前記貯蔵は少なくとも14日間である、請求項5に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項7】
有効成分として、請求項1に記載の化学的コンジュゲートおよび医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項8】
包装材に包装され、かつ、CNSの障害または疾患、増殖性の障害または疾患の治療における使用のために、かつ/あるいは、化学療法剤との組合せでの、および/または、化学感作が有益である医学的状態での化学感作における使用のために包装材の表面または中において印刷で特定される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化学的コンジュゲートの治療効果的な量を対象に投与することを含む、対象におけるCNSの障害または疾患を治療する方法。
【請求項10】
CNSの疾患または障害を治療するための医薬品の製造における、請求項1に記載の化学的コンジュゲートの使用。
【請求項11】
前記CNSの障害または疾患は、精神病性の障害または疾患、不安障害、解離性障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神性の疾患または障害からなる群から選択される、請求項9または10に記載の方法または使用。
【請求項12】
請求項1に記載の化学的コンジュゲートの治療効果的な量を対象に投与することを含む、対象における増殖性の障害または疾患を治療または防止する方法。
【請求項13】
増殖性の疾患または障害を治療するための医薬品の製造における、請求項1に記載の化学的コンジュゲートの使用。
【請求項14】
少なくとも1つの化学療法剤の化学療法効果的な量と、請求項1に記載の化学的コンジュゲートの化学感作効果的な量とをその必要性のある対象に投与することを含む化学感作の方法。
【請求項15】
化学療法剤と組合せての、化学感作剤として使用するための医薬品の製造における、請求項1に記載の化学的コンジュゲートの使用。
【請求項16】
前記酸付加塩は、酢酸付加塩、アスコルビン酸付加塩、ベンゼンスルホン酸付加塩、ショウノウスルホン酸付加塩、クエン酸付加塩、マレイン酸付加塩、メタンスルホン酸付加塩、ナフタレンスルホン酸付加塩、シュウ酸付加塩、リン酸付加塩、コハク酸付加塩、硫酸付加塩、酒石酸付加塩およびトルエンスルホン酸付加塩からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項17】
前記酸付加塩は、マレイン酸付加塩、メタンスルホン酸付加塩、ベンゼンスルホン酸付加塩、ナフタレンスルホン酸付加塩、トルエンスルホン酸付加塩およびシュウ酸付加塩からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項18】
前記第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項19】
前記第2の化学的成分は、カルボキシルエステル結合、アルキルオキシカルボキシルエステル結合、アミド結合およびチオエステル結合からなる群から選択されるエステル結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合により連結される、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項20】
前記向精神薬残基は、抗精神病薬残基、抗不安薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環系向精神薬残基、二環系向精神薬残基、単環系向精神薬残基、フェノチアジン残基、ベンゾジアゼピン残基およびブチロフェノン残基からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項21】
前記向精神薬残基はペルフェナジン残基である、請求項1〜15のいずれかに記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項22】
前記GABAアゴニスト残基はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である、請求項18に記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項23】
前記第2の化学的成分はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である、請求項21に記載の化学的コンジュゲート、医薬組成物、使用または方法。
【請求項24】
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートを調製する方法であって、前記第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、前記第2の化学的成分はアミノ基を含有する有機酸残基であり、前記有機酸残基は、前記向精神薬がそれ自体で投与されたときに前記向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、前記向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択され、前記アミノ基はその酸付加塩の形態であり、この方法は、
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む、N保護された化学的コンジュゲートを提供すること(ただし、前記アミノ基はN保護基によって保護される);
前記N保護基を除去し、それにより、前記化学的コンジュゲートの遊離塩基形態を提供すること;および、
前記化学的コンジュゲートの前記遊離塩基形態を第1の酸と接触させ、それにより化学的コンジュゲートを提供すること
を含む方法。
【請求項25】
前記N保護された化学的コンジュゲートを提供することは、
前記向精神薬をN保護された有機酸と反応すること
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記反応の前に、
前記N保護された有機酸をアシルハリドと反応させて、それにより、前記N保護された有機酸の混合無水物誘導体を得ること
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応は、溶媒、有機塩基および脱水剤の存在下で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記反応の前に、
前記向精神薬、前記有機塩基および前記N保護された有機酸を、約0℃〜約5℃の範囲の温度で混合して、それにより、スラリーを得ること;
前記脱水剤を前記スラリーに加えること;および、
前記スラリーを室温に加温すること
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記保護基の除去および前記接触は連続して行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記保護基の除去は、化学的コンジュゲートを第2の酸と接触させることによって行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の酸は、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の酸は、酢酸、アスコルビン酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、リン酸、コハク酸および酒石酸からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記除去および前記接触は、前記コンジュゲートの前記遊離塩基形態を単離することなく同時に行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の酸は塩酸である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の酸は、ベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸およびトルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記接触に続いて、
貧溶媒を加え、それにより、化学的コンジュゲートの付加塩を沈殿させること
をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記除去および前記接触は、前記第1の酸および前記N保護された化学的コンジュゲートが溶解可能であり、かつ、化学的コンジュゲートが沈殿するように選択される溶媒の存在下で行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
化学的コンジュゲートは、97パーセント以上の純度を有する、請求項24〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む、化学的コンジュゲートを調製する方法であって、前記第1の化学的成分は向精神薬残基であり、さらに、前記第2の化学的成分は、アミノ基を含有する有機酸残基であり、前記有機酸残基は、前記向精神薬がそれ自体で投与されたときに前記向精神薬により誘導される副作用を軽減するように、前記向精神薬の治療的活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択され、この方法は、
前記有機酸をN保護基と反応させ、それにより、N保護された有機酸を得ること;
前記N保護された有機酸を前記向精神薬と反応すること;および、
前記N保護基を除去し、それにより、コンジュゲートを得ること
を含む方法。
【請求項40】
前記N保護された有機酸を前記向精神薬と反応する前に、
前記N保護された有機酸をアシルハリドと反応させて、それにより、前記N保護された有機酸の混合無水物誘導体を得ること
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記N保護された有機酸を前記向精神薬と反応することは、溶媒、有機塩基および脱水剤の存在下で行われる、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記反応の前に、
前記向精神薬、前記有機塩基および前記N保護された有機酸を、約0℃〜約5℃の範囲の温度で混合して、それにより、スラリーを得ること;
前記脱水剤を前記スラリーに加えること;および、
前記スラリーを室温に加温すること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である、請求項25〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記第2の化学的成分は、カルボキシルエステル結合、アルキルオキシカルボキシルエステル結合、アミド結合およびチオエステル結合からなる群から選択されるエステル結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合により連結される、請求項25〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記向精神薬残基は、抗精神病薬残基、抗不安薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環系向精神薬残基、二環系向精神薬残基、単環系向精神薬残基、フェノチアジン残基、ベンゾジアゼピン残基およびブチロフェノン残基からなる群から選択される、請求項25〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記向精神薬残基はペルフェナジン残基である、請求項25〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記GABAアゴニスト残基はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の化学的成分はγ−アミノ酪酸(GABA)残基である、請求項43に記載の方法。

【公表番号】特表2008−545777(P2008−545777A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515378(P2008−515378)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000666
【国際公開番号】WO2006/131923
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(503255958)ラモト アット テル アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (14)
【出願人】(503437093)バル−イラン ユニバーシティ (6)
【出願人】(507402749)バイオリナークス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】