説明

コンタクタの接続・遮断方法

【課題】コンタクタの接続・遮断に対して十分な耐久性を持たせることができるコンタクタの接続・遮断方法を提供する。
【解決手段】順序決定フラグが「0」である場合には(S102、Yes)、コンタクタの負極側のスイッチにON指令を出し(S103)、次いで正極側のスイッチにON指令を出し(S105)、順序決定フラグ「0」を「1」に書き換える(S107)。そして、次回コンタクタが接続される場合には、順序決定フラグが「1」であるので(S102、No)、コンタクタの正極側のスイッチにON指令を出し(S108)、次いで負極側のスイッチにON指令を出し(S110)、順序決定フラグ「1」を「0」に書き換える(S112)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリチャージ回路を持たないコンタクタの接続・遮断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池自動車では、燃料電池とともに補助電源として二次電池が設けられており、走行モータと燃料電池との間と、走行モータと二次電池との間に、それぞれ電気的に接続遮断するためのコンタクタが設けられている。この種の燃料電池自動車では、走行モータに電力を供給する際に突入電流を防止するために、二次電池側のコンタクタをオンにし、二次電池側の電圧が所定値以上になってから燃料電池側のコンタクタをオンにする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−166376号公報(図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のコンタクタの接続方法では、接続時の突入電流は低く抑えることはできるようになるものの、突入電流を完全になくすことは困難である。
【0004】
また、特許文献1のようなプリチャージ回路を持たないコンタクタを備えた高圧回路では、これまで、P側、N側のスイッチに同時に接続信号を出していた。しかし、接続信号を出してから実際にスイッチが接続されるまでの時間には製品上のバラツキがあるため、P側、N側のどちらに突入電流が流れるかは管理できなかった。このため、一方のスイッチに毎回突入電流が流れて、片側のスイッチのみの性能が落ちる可能性があった。
【0005】
また、コンタクタの遮断時においても同様で、実際にコンタクタが遮断されるまでの時間には製品上のバラツキがあるため、P側とN側のスイッチのどちらにアーク放電が発生するかは管理できず、いずれか一方のスイッチに毎回アーク放電が発生して、片側のスイッチのみの性能が落ちる可能性があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、コンタクタの接続・遮断に対して十分な耐久性を持たせることができるコンタクタの接続・遮断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有し、かつ、プリチャージ回路を有しないコンタクタにおいて、前記コンタクタを接続する接続信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続するタイミングにずれを生じさせ、前記接続信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番を入れ替えることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、正極側と負極側のスイッチを接続する順番を所定回数毎に入れ替えて、正極側と負極側のそれぞれのスイッチに対して均等に突入電流を受け持たせることができるので(片持ちがなくなるので)、コンタクタ全体として、耐久性を増すことが可能になる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断するタイミングにずれを生じさせ、前記遮断信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を入れ替えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、遮断のときも、正極側と負極側のスイッチを遮断する順番を所定回数毎に入れ替えて、正極側と負極側のそれぞれのスイッチに対して均等にアーク放電を受け持たせることができるので(片持ちがなくなるので)、コンタクタ全体として、耐久性を増すことが可能になる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記接続信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番と、前記遮断信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を等しくすることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、接続と、遮断とを等しい順番にすることで、より均等に受け持ちを分担できる。ちなみに、アーク放電と、突入電流の負荷の度合いが異なり、突入電流のほうが負荷が大きくなる。
【0013】
請求項4に係る発明は、電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有し、かつ、プリチャージ回路を有しないコンタクタにおいて、前記コンタクタを接続する接続信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番と、前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を等しくすることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、接続と、遮断とを等しい順番にすることで、均等に受け持ちを分担できるので、コンタクタ全体として、耐久性を増すことが可能になる。
【0015】
請求項5に係る発明は、電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有するコンタクタにおいて、前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断するタイミングにずれを生じさせ、前記遮断信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を入れ替えることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、正極側と負極側のスイッチを遮断する順番を所定回数毎に入れ替えて、正極側と負極側のそれぞれのスイッチに対して均等にアーク放電を受け持たせることができるので(片持ちがなくなるので)、コンタクタ全体として、耐久性を増すことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンタクタの接続・遮断方法によれば、コンタクタの接続・遮断に対して十分な耐久性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本実施形態のコンタクタの接続・遮断方法が適用される燃料電池自動車を示す全体構成図である。なお、本実施形態では、燃料電池自動車Vに適用した場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、電気自動車、ハイブリット自動車、船舶、航空機などに適用してもよい。
【0019】
図1に示すように、燃料電池自動車Vは、燃料電池スタック(電力源)10、走行モータ(負荷)20、モータPDU(Power Drive Unit)30、燃料電池用コンタクタ40、高圧二次バッテリ50、ECU(Electric Control Unit)60などを備えている。
【0020】
前記燃料電池スタック(FCスタック)10は、プロトン伝導性を有する固体高分子からなる電解質膜の一面側をアノード(水素極)、他面側をカソード(空気極)でそれぞれ挟んで構成した膜電極接合体を有し、この膜電極接合体の両側を導電性のセパレータで挟んで構成した単セルを複数積層した構造を有している。この燃料電池スタック10では、水素タンク(図示せず)からアノードに水素が供給され、エアコンプレッサ(図示)を駆動してカソードに空気(酸素)が供給されることにより、アノードでは、水素イオン(プロトン)が電解質膜をアノードに向けて透過し、電子が走行モータ20(負荷)などを介してカソードに移動することにより発電が行われ、カソードでは透過した水素イオンと空気中の酸素と電子とにより水が生成される。なお、発電により生成された水は、例えば車外に排出される。
【0021】
前記走行モータ20は、例えば永久磁石式の3相交流同期モータで構成され、燃料電池スタック10や高圧二次バッテリ50から供給される電力によって燃料電池自動車Vに設けられた駆動輪を回転駆動させる。なお、走行モータ20は、モータPDU(Power Drive Unit)30を介して燃料電池スタック10と接続される。
【0022】
前記モータPDU30は、インバータ回路などで構成され、燃料電池スタック10や後記する高圧二次バッテリ50からの直流電力を交流電力に変換して、交流電力を走行モータ20に供給する機能を有している。また、モータPDU30は、走行モータ20の回生電力を直流電力に変換して高圧二次バッテリ50に充電する機能も有している。
【0023】
前記燃料電池用コンタクタ40は、プリチャージ回路を有しないものであって、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1,L2上に設けられている。すなわち、燃料電池スタック10の正極とモータPDU30の正極とを接続する電力線L1上に接続・遮断を行う燃料電池用コンタクタ40の正極側のスイッチ(電磁開閉器)41が設けられている。また、燃料電池スタック10の負極とモータPDU30の負極とを接続する電力線L2上に接続・遮断を行う燃料電池用コンタクタ40の負極側のスイッチ(電磁開閉器)42が設けられている。
【0024】
前記高圧二次バッテリ50は、燃料電池スタック1に対して並列に接続され、モータPDU30を介して走行モータ20と接続されている。なお、高圧二次バッテリ50は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などであり、燃料電池スタック1からの発電電力を受けて充電可能であると共に放電可能なものである。
【0025】
また、高圧二次バッテリ50は、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1,L2と、電力線L3,L4を介して接続されている。さらに説明すると、この電力線L3,L4は、燃料電池用コンタクタ40の下流側、つまりモータPDU30と燃料電池用コンタクタ40との間に接続され、電力線L3が電力線L1と接続され、電力線L4が電力線L2と接続されている。
【0026】
また、前記電力線L3,L4上には、バッテリ用コンタクタ51、DC/DCコンバータ56が設けられている。バッテリ用コンタクタ51は、電力線L3上に正極側のスイッチ(電磁開閉器)52が設けられ、電力線L4上に負極側のスイッチ(電磁開閉器)53が設けられている。また、バッテリ用コンタクタ51は、スイッチ52とともにプリチャージ回路54が設けられている。
【0027】
前記プリチャージ回路54は、電線54a、抵抗体54b、電磁開閉器からなる予備スイッチ54cで構成されている。電線54aの両端は、スイッチ52の上流側と下流側にそれぞれ接続され、電線54a上に、抵抗体54bと予備スイッチ54cが直列に設けられている。
【0028】
前記DC/DCコンバータ56は、直流の電圧を別の直流の電圧に変換する機能を有し、バッテリ用コンタクタ51の下流側の電力線L3,L4上に設けられている。
【0029】
なお、バッテリ用コンタクタ51とDC/DCコンバータ56との間の電力線L3,L4には、電力線L3と電力線L4とを接続するようにコンデンサ57が設けられている。
【0030】
前記ECU60は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、プログラムなどで構成され、燃料電池用コンタクタ40のスイッチ41,42、バッテリ用コンタクタ51のスイッチ52,53および予備スイッチ54cを適宜開閉制御する。また、ECU60は、例えば、燃料電池用コンタクタ40の上流側(燃料電池スタック1側)に設けられた電圧センサ61から電圧値V1、燃料電池用コンタクタ40の下流側に設けられた電圧センサ62から電圧値V2をそれぞれ取得する。
【0031】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態のコンタクタの接続・遮断方法について、図2および図3を参照して、燃料電池用コンタクタ(以下、コンタクタと略記する)40の接続方法について説明する。図2は第1実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャート、図3は第1実施形態におけるタイミングチャートである。第1の実施形態は、コンタクタ40を接続する接続信号が出されたときに、正極側のスイッチ41を接続するタイミングと負極側のスイッチ42を接続するタイミングにずれを生じさせ、接続信号が出された所定回数毎に、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42を接続する順番を入れ替えることを特徴としている。なお、燃料電池自動車Vの運転停止時には、コンタクタ40の正極側のスイッチ41および負極側のスイッチ42は遮断(オフ)されている。同様に、バッテリ用コンタクタ51のスイッチ52,53および予備スイッチ54cも遮断(オフ)されている。
【0032】
まず、運転者によって燃料電池自動車Vのイグニッションスイッチ(図示せず)がオンにされると、ECU60は、コンタクタ40を接続する接続信号を出力するとともに、バッテリ用コンタクタ51のスイッチ(負極側)53を接続(ON)し、プリチャージ回路54の予備スイッチ54cを接続(ON)して、コンデンサ57の充電を開始する。このとき、プリチャージ回路54に設けられた抵抗体54bによって、突入電流が流れるのを制限している。そして、コンデンサ57が充電されると、スイッチ(正極側)52が接続(ON)される。そして、予備スイッチ54cが遮断(OFF)される。
【0033】
また、ECU60は、高圧二次バッテリ50に蓄積された電力を利用して、例えば、水素タンクの遮断弁を開くとともにエアコンプレッサを駆動して、燃料電池スタック10に水素と空気を供給して、燃料電池スタック10の電圧(開放端電圧)を所定値まで上昇させる。なお、所定値とは、燃料電池スタック10からの給電が可能になる電圧値を意味している。
【0034】
そして、ステップS101において、ECU60は、コンタクタ40の接続を行ってもよいかどうかを判断する。なお、このときの接続条件とは、高圧二次バッテリ50から供給されてDC/DCコンバータ56により電圧変換された後の、コンタクタ40の下流側の電圧V2が、コンタクタ40の上流側の電圧V1とほぼ等しくなったかどうかによって判断できる。ステップS101において、ECU60は、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1にほぼ等しくなっていないと判断した場合には(No)、ステップS101を繰り返し、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1にほぼ等しくなったと判断した場合には(Yes)、ステップS102に進む。
【0035】
ステップS102において、ECU60は、順序決定フラグが「0」であるかどうかを判断する。なお、順序決定フラグは例えば「0」または「1」であり、いずれかのフラグがメモリに記憶され、適宜読み出され、また書き換えが行われるようになっている。ステップS102において、ECU60は、読み出された順序決定フラグが「0」であると判断した場合には(Yes)、ステップS103に進む。
【0036】
ステップS103において、ECU60は、コンタクタ40の負極側(N側)のスイッチ42を接続するON指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L2を導通させる。
【0037】
そして、ステップS104に進み、ECU60は、ステップS103でON指令を出してから所定時間が経過したかどうかを判断する。なお、ここでの所定時間とは、負極側のスイッチ42が確実に接続されるのに必要な時間であり、例えばECU60に設けられたタイマ(図示せず)によって判断される。ステップS104において、ECU60は、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS104の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS105に進む。
【0038】
ステップS105において、ECU60は、コンタクタ40の正極側(P側)のスイッチ41を接続するON指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1を導通させる。
【0039】
そして、ステップS106に進み、ECU60は、ステップS105でON指令を出してから所定時間が経過したかどうかを判断する。なお、ここでの所定時間についても前記と同様に、正極側のスイッチ41が確実に接続されるのに必要な時間であり、例えば図示しないタイマによって判断される。ステップS106において、ECU60は、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS106の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS107に進む。
【0040】
ステップS107において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグ「0」を「1」に書き換え、コンタクタ40の接続を終了する。コンタクタ40の接続が完了すると、燃料電池スタック10の発電電力が走行モータ20などに供給可能になる。また、高圧二次バッテリ50からの給電から燃料電池スタック10の給電に切り替えて、エアコンプレッサなどを駆動させる。
【0041】
そして、運転者によってイグニッションスイッチがオフにされ、次回コンタクタ40を接続する接続信号が出力された場合には、図2のフローのステップS102において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグは「1」であると判断して、ステップS108に進む。
【0042】
ステップS108において、ECU60は、前回とは逆にまずコンタクタ40の正極側(P側)のスイッチ41を接続するON指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1を導通させる。
【0043】
そして、ステップS109に進み、ECU60は、ステップS106と同様にして、所定時間が経過したかどうかを判断し、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS109の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS110に進む。
【0044】
ステップS110において、ECU60は、コンタクタ40の負極側(N側)のスイッチ42を接続するON指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L2を導通させる。
【0045】
そして、ステップS111に進み、ECU60は、ステップS104と同様にして、所定時間が経過したかどうかを判断し、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS111の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS112に進む。
【0046】
ステップS112において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグ「1」を「0」に書き換え、コンタクタ40の接続を終了する。
【0047】
そして、また次回にコンタクタ40を接続する場合には、ステップS101〜S107の処理が実行される。
【0048】
さらに、図3のタイムチャートを参照して説明すると、1回目のコンタクタ40の接続では、図3(a)に示すように、時刻t1において、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1にほぼ等しくなると(S101、Yes)、コンタクタ40の負極側のスイッチ42にON指令が出される(S103)。そして、ON指令から所定時間(t2−t1)経過したら(S104、Yes)、正極側のスイッチ41にON指令が出される(時刻t2、S105)。このとき、正極側のスイッチ41を介して突入電流が流れ、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1に等しくなる。そして、正極側のスイッチ41に対するON指令から所定時間(t3−t2)が経過したら(S106、Yes)、順序決定フラグ「0」を「1」に書き換える(時刻t3、S107)。
【0049】
そして、次回(2回目)のコンタクタ40の接続では、図3(b)に示すように、時刻t1において、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1にほぼ等しくなると(S101、Yes)、コンタクタ40の正極側のスイッチ41にON指令が出される(S108)。そして、ON指令から所定時間(t2−t1)経過すると(S109、Yes)、負極側のスイッチ42に対するON指令が出される(時刻t2、S110)。このとき、負極側のスイッチ42を介して突入電流が流れ、コンタクタ40の下流側の電圧V2が上流側の電圧V1に等しくなる。そして、負極側のスイッチ42に対するON指令から所定時間(t3−t2)が経過したら(S111、Yes)、順序決定フラグ「1」を「0」に書き換える(時刻t3、S112)。
【0050】
このような本実施形態によれば、コンタクタ40の正極側のスイッチ41を接続するタイミングと、負極側のスイッチ42を接続するタイミングを互いにずらし、1回毎(所定回数毎)に、それぞれの接続の順番を入れ替える。これにより、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42とに交互(均等)に突入電流を受け持たせることができるので、コンタクタ40の耐久性を増すことが可能になる。
【0051】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャート、図5は第2実施形態におけるタイミングチャートである。第2実施形態は、コンタクタ40を遮断する遮断信号が出されたときに、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42を遮断するタイミングにずれを生じさせ、遮断信号が出された所定回数毎に、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42を遮断する順番を入れ替えることを特徴としている。
【0052】
例えば、運転者によってイグニッションスイッチがオフにされると、ECU60は、コンタクタ40を遮断する遮断信号を出力し、ステップS201において、コンタクタ40の遮断を行ってもよいかどうかを判断する。なお、このときの遮断条件とは、燃料電池自動車Vの場合であれば、燃料電池スタック10内を掃気ガス(空気など)で掃気して、燃料電池スタック10の電圧が所定値まで低下したかどうかによって判断できる。ステップS201において、ECU60は、燃料電池スタック10の電圧(V1,V2)が所定値まで低下していないと判断した場合には(No)、ステップS201を繰り返し、燃料電池スタック10の電圧が所定値まで低下したと判断した場合には(Yes)、ステップS202に進む。
【0053】
ステップS202において、ECU60は、順序決定フラグが0であるかどうかを判断する。なお、順序決定フラグは、例えば「0」または「1」であり、いずれかのフラグがメモリに記憶され、適宜読み出され、また書き換えが行われるようになっている。ステップS202において、ECU60は、読み出された順序決定フラグが「0」であると判断した場合には(Yes)、ステップS203に進む。
【0054】
ステップS203において、ECU60は、コンタクタ40の負極側(N側)のスイッチ42を遮断するOFF指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L2を遮断する。
【0055】
そして、ステップS204に進み、ECU60は、ステップS103でOFF指令を出してから所定時間が経過したかどうかを判断する。なお、ここでの所定時間とは、負極側のスイッチ42が確実に遮断されるのに必要な時間であり、例えばECU60に設けられたタイマ(図示せず)によって判断される。ステップS204において、ECU60は、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS204の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS205に進む。
【0056】
ステップS205において、ECU60は、コンタクタ40の正極側(P側)のスイッチ41を遮断するOFF指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1を遮断する。
【0057】
そして、ステップS206に進み、ECU60は、ステップS205でOFF指令を出してから所定時間が経過したかどうかを判断する。なお、ここでの所定時間についても前記と同様に、正極側のスイッチ41が確実に遮断されるのに必要な時間であり、例えば図示しないタイマによって判断される。ステップS206において、ECU60は、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS206の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS207に進む。
【0058】
ステップS207において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグ「0」を「1」に書き換え、コンタクタ40の遮断を終了する。また、バッテリ用コンタクタ51のスイッチ(正極側)52が遮断(オフ)され、スイッチ(負極側)53が遮断(オフ)されて、電力線L3,L4が遮断される。
【0059】
そして、運転者によってイグニッションスイッチがオンにされて、次回コンタクタ40を遮断する遮断信号が出力された場合には、図4のフローのステップS202において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグは「1」と判断して、ステップS208に進む。
【0060】
ステップS208において、ECU60は、前回とは逆にまずコンタクタ40の正極側(P側)のスイッチ41を遮断するOFF指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L1を遮断する。
【0061】
そして、ステップS209に進み、ECU60は、ステップS206と同様にして、所定時間が経過したかどうかを判断し、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS209の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS210に進む。
【0062】
ステップS210において、ECU60は、コンタクタ40の負極側(N側)のスイッチ42を遮断するOFF指令を出力して、燃料電池スタック10とモータPDU30とを接続する電力線L2を遮断する。
【0063】
そして、ステップS211に進み、ECU60は、ステップS204と同様にして、所定時間が経過したかどうかを判断し、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS211の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS212に進む。
【0064】
ステップS212において、ECU60は、メモリに記憶された順序決定フラグ「1」を「0」に書き換え、コンタクタ40の遮断を終了する。そして、また次回にコンタクタ40を遮断する場合には、ステップS201〜S207の処理を実行する。
【0065】
さらに、図5のタイムチャートを参照して説明すると、1回目のコンタクタ40の遮断では、図5(a)に示すように、時刻t4において、燃料電池スタック10の掃気などによって燃料電池スタック10の電圧が所定値まで低下すると(S201、Yes)、コンタクタ40の負極側のスイッチ42にOFF指令が出される(S203)。このとき、負極側のスイッチ42を介してアーク放電が発生し、コンタクタ40の下流側の電圧V2が徐々に低下する。そして、OFF指令から所定時間(t5−t4)経過したら(S204、Yes)、正極側のスイッチ41にOFF指令が出される(時刻t5、S205)。そして、OFF指令から所定時間(t6−t5)が経過したら(S206、Yes)、順序決定フラグ「0」を「1」に書き換える(時刻t6、S207)。
【0066】
そして、次回(2回目)のコンタクタ40の遮断では、図5(b)に示すように、順序決定フラグは「1」であるので、時刻t4において、燃料電池スタック10の掃気などによって燃料電池スタック10の電圧が所定値まで低下すると(S201、Yes)、コンタクタ40の正極側のスイッチ41にOFF指令が出される(S208)。このとき、正極側のスイッチ41を介してアーク放電が発生し、コンタクタ40の下流側の電圧V2が徐々に低下する。そして、OFF指令から所定時間(t5−t4)経過したら(S209、Yes)、負極側のスイッチ42にOFF指令が出される(時刻t5、S210)。そして、OFF指令から所定時間が経過したら(S211、Yes)、順序決定フラグ「1」を「0」に書き換える(時刻t6、S212)。
【0067】
このように本実施形態によれば、コンタクタ40の正極側のスイッチ41を遮断するタイミングと、負極側のスイッチ42を遮断するタイミングをずらし、1回毎(所定回数毎)に、それぞれの遮断する順番を入れ替えることにより、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42とに交互(均等)にアーク放電の発生を受け持たせることができ、コンタクタ40の耐久性を増すことが可能になる。
【0068】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャート、図7は第3実施形態におけるタイミングチャートである。第3実施形態は、コンタクタ40を接続する接続信号が出されたときの正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42を接続する順番と、コンタクタ40を遮断する遮断信号が出されたときの正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42を遮断する順番を等しくすることを特徴としている。
【0069】
なお、図6のステップS301、S302、S303、S304、S305は、燃料電池自動車Vの運転準備期間であり、図2に示す第1実施形態のステップS101、S103、S104、S105、S106とそれぞれ同様である。また、図6のステップS308、S309、S310、S311、S312は、停止期間であり、図4に示す第2実施形態のステップS201、S203、S204、S205、S206とそれぞれ同様である。
【0070】
ステップS305において所定時間が経過した場合には(Yes)、ステップS306に進み、ECU60は、運転準備期間から通常運転に移行する。通常運転では、例えば、燃料電池スタック10の発電電力を走行モータ20や補機に供給し、また必要に応じて高圧二次バッテリ50などを充電する。
【0071】
そして、ステップS307に進み、ECU60は、運転者によってイグニッションスイッチがオフにされたかどうかを判断し、オフにされていないと判断した場合には(No)、ステップS306に戻って通常運転を継続し、オフにされたと判断した場合には(Yes)、ステップS308に進む。
【0072】
また、図7のタイミングチャートを参照して説明すると、運転準備期間におけるコンタクタ40の接続時には、まずコンタクタ40の負極側のスイッチ42がONにされ(時刻t7)、所定時間(t8−t7)経過後に正極側のスイッチ41がONにされ(時刻t8)、通常運転に移行する。そして、イグニッションスイッチがオフにされてコンタクタ40が遮断される時には、まずコンタクタ40の負極側のスイッチ42がOFFにされ(時刻t9)、所定時間(t10−t9)経過後に正極側のスイッチ41がOFFにされる(時刻t10)。
【0073】
このように、接続する順番と遮断する順番を等しくして、コンタクタ40の接続時には正極側のスイッチ41に突入電流を受け持たせ、コンタクタ40の遮断時には負極側のスイッチ42にアーク放電を受け持たせることで、正極側のスイッチ41と負極側のスイッチ42に対してさらに均等に受け持ちを分担させることが可能になる。
【0074】
なお、第3実施形態では、コンタクタ40の負極側のスイッチ42を先に接続する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、正極側のスイッチ41を先に接続するようにしてもよい。
【0075】
また、第1実施形態および第2実施形態では、所定回数として1回毎に順番を入れ替えた例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、5回毎、10回毎など適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態のコンタクタの接続・遮断方法が適用される燃料電池自動車を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態におけるタイミングチャートである。
【図4】第2実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態におけるタイミングチャートである。
【図6】第3実施形態のコンタクタの接続・遮断方法を示すフローチャートである。 である。
【図7】第3実施形態におけるタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10 燃料電池スタック(電力源)
20 走行モータ(負荷)
40 燃料電池用コンタクタ(コンタクタ)
41 正極側のスイッチ
42 負極側のスイッチ
70 ECU
L1,L2 電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有し、かつ、プリチャージ回路を有しないコンタクタにおいて、
前記コンタクタを接続する接続信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続するタイミングにずれを生じさせ、前記接続信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番を入れ替えることを特徴とするコンタクタの接続・遮断方法。
【請求項2】
前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断するタイミングにずれを生じさせ、前記遮断信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を入れ替えることを特徴とする請求項1に記載のコンタクタの接続・遮断方法。
【請求項3】
前記接続信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番と、前記遮断信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を等しくすることを特徴とする請求項2に記載のコンタクタの接続・遮断方法。
【請求項4】
電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有し、かつ、プリチャージ回路を有しないコンタクタにおいて、
前記コンタクタを接続する接続信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを接続する順番と、前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたときの前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を等しくすることを特徴とするコンタクタの接続・遮断方法。
【請求項5】
電力源とこの電力源の電力供給を受ける負荷とをつなぐ電力線上の正極と負極にそれぞれ接続遮断を行うスイッチを有し、かつ、プリチャージ回路を有しないコンタクタにおいて、
前記コンタクタを遮断する遮断信号が出されたとき、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断するタイミングにずれを生じさせ、前記遮断信号が出された所定回数毎に、前記正極側のスイッチと前記負極側のスイッチを遮断する順番を入れ替えることを特徴とするコンタクタの接続・遮断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−27848(P2009−27848A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189040(P2007−189040)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】