説明

コンタクトレンズの製造方法およびそれにより得られたコンタクトレンズ

【課題】高い酸素透過性を有し、汚れ付着性の低いコンタクトレンズを安価に提供する方法。
【解決手段】式(1)
【化1】


(R1は−Hまたは−CH3、Xは−O−または−NH−、n1は1〜10の整数、Yは双性イオン基)で表される双性イオンモノマー、および、特定構造のシリコーンモノマーを含有する混合物を塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
双性イオンモノマーおよびシリコーンモノマーからなるコンタクトレンズの製造方法、および該製造方法により得られたコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料からなる医療機器は、その用途によって、高い生体親和性が要求される場合がある。なかでも、コンタクトレンズを始めとする眼用レンズにおいては特に高い生体親和性が要求されている。装用することによりレンズに付着したタンパク質や脂質は、眼疾患の原因の1つと考えられており、タンパク質や脂質などの汚れが付着しくいものや涙濡れ性の高いものが求められている。このため、新たな原料モノマーの開発やプラズマなどを利用した材料表面の改質などが種々検討されている。
【0003】
ところで、近年、シリコーンモノマー(もしくはマクロマー)と含水性モノマーを共重合させたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SH−CL)が商品化され始めている。このSH−CLは高い酸素透過性と良好な装用感を両立させたコンタクトレンズとして脚光を浴びており、近い将来コンタクトレンズの主流となるものと考えられている。
【0004】
SH−CLはシリコーン成分を含んでいるため脂質の付着性や撥水性が高いために、十分な生体親和性を得ることがかなり困難である。この問題を解消するために、いくつかのメーカーでは、レンズ材料表面の改質などにより改善を図っている。例えば、特許文献1には、眼用レンズ表面に高周波プラズマまたはエキシマ光を照射させ、親水性モノマー溶液を接触させた後、紫外線を照射して、親水性モノマーを眼用レンズ表面へ固定化(グラフト重合)させる技術が開示されている。また、特許文献2では、炭化水素と親水性モノマーをプラズマ重合反応することにより、眼用レンズ表面へ親水性モノマーをグラフト重合させている。これらの方法は共有結合性の反応を利用しているため、永続的に脂質に対する付着性を減らしたり、高い水濡れ性を付与できるものと考えられている。
【0005】
しかしながら、このような材料表面の改質処理を行うことは、プラズマ照射装置や紫外線照射装置などの整備や製造工程自体の増加につながるために、コスト増は不可欠である。またこのような表面改質工程ののちには未反応モノマーを除去するための水などを用いた洗浄工程が新たに必要となり、その工程は微生物繁殖に対する防御手段が不可欠で、細心の注意が必要である。よって、脂質を始めとする汚れ付着性の低減および涙濡れ性の向上のために、前述のような材料表面の改質手法を選択することは、コスト上大きな問題となりうるのである。
【0006】
ここで、2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)などの双性イオンモノマーからなる高分子材料はタンパク質の吸着を抑制するといわれており(Ishihara K. , J. Biomater. Sci. Polym. Edn., 1999,10, 1047-1061,Shiraishi K, Macromol. Chem. Phys., 1998, 199, 2023-2028)、また、イオン性のモノマーであるため、脂質の付着抑制にも効果があると考えられる。そのため、双性イオンモノマーは以前より注目されており、とりわけMPCを用いたコンタクトレンズはすでに商品化もされている。しかし、このコンタクトレンズはシリコーン成分を含有していないため、含水率に依存する程度の酸素透過性しか確保できておらず、連続装用には不向きである。つまり、より高い安全性を保時しているとはいえないのである。これを解消するために、前述のSH−CLを指向して双性イオンモノマーとシリコーンモノマー(もしくはマクロマー)を混ぜ合わせ、コンタクトレンズを作製しようとした場合、両者の極性の大きな相違から容易に相分離を起こしてしまうために、透明なレンズ成型体を得ることは至難の業である。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)やメタクリル酸(MAA)などソフトコンタクトレンズの原料として一般的なモノマーは、シリコーンモノマーと相溶しないために、作製できたコンタクトレンズが相分離してしまうことが分かっている。
【0007】
このように、高い生体親和性を有し、高い安全性を持ったコンタクトレンズを安価にユーザーへ提供するためには、これら課題を解消する必要がある。
【0008】
【特許文献1】特開2001−337298号公報
【特許文献2】特表2003−500507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い酸素透過性を有し、汚れ付着性の低いコンタクトレンズを安価に提供する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)
【0011】
【化1】

(R1は−Hまたは−CH3、Xは−O−または−NH−、n1は1〜10の整数、Yは双性イオン基)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして
式(2)
【0012】
【化2】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0013】
【化3】

式(3)
【0014】
【化4】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3,−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,または−CH(CF32)、
式(4)
【0015】
【化5】

(R10は−CH2CF3または−CH(CF32、n5は1〜10の整数、R11,R12,R13は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−O−Si(CH33)、および
式5
【0016】
【化6】

(R14,R15,R13は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0017】
【化7】

の少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を、塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法に関する。
【0018】
双性イオンモノマーが、
【0019】
【化8】

(R1は、−Hまたは−CH3)、
【0020】
【化9】

(R1は、−Hまたは−CH3)、
【0021】
【化10】

(R1は−Hまたは−CH3)、
【0022】
【化11】

(R1は−Hまたは−CH3)、または
【0023】
【化12】

(R1は−Hまたは−CH3)であることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、式(6)
【0025】
【化13】

(R17は−Hまたは−CH3、Zは−O−または−NH−、R18はアルキレンオキシ基または−CH2−、n7,n8はそれぞれ0〜10の整数)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして、
式(2)
【0026】
【化14】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0027】
【化15】

式(3)
【0028】
【化16】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3,−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,または−CH(CF32)、
式(5)
【0029】
【化17】

(R14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0030】
【化18】

のうち、少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を、塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法に関する。
【0031】
双性イオンモノマーが、
【0032】
【化19】

であることが好ましい。
【0033】
双性イオンモノマーとシリコーンモノマーの重量比が、20:80〜80:20であることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法においては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、シクロヘキサンのうち少なくとも1種の有機溶媒の存在下で塊状重合をすることができる。
【0035】
さらに、本発明は、前記製造方法によって得られるコンタクトレンズに関する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、タンパク質や脂質が付着しにくく、高い酸素透過性を有するコンタクトレンズの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は、式(1)
【0038】
【化20】

(R1は−Hまたは−CH3、Xは−O−または−NH−、n1は1〜10の整数、Yは双性イオン基)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして
式(2)
【0039】
【化21】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0040】
【化22】

式(3)
【0041】
【化23】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3,−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,または−CH(CF32)、
式(4)
【0042】
【化24】

(R10は−CH2CF3または−CH(CF32、n5は1〜10の整数、R11,R12,R13は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−O−Si(CH33)、および
式5
【0043】
【化25】

(R14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0044】
【化26】

の少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を、塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法に関する。
【0045】
双性イオンモノマーは、前記式(1)の構造を満足するものであれば好ましく用いられるが、防汚効果、合成の容易さ、原料費などのコスト面、および安全性の点から、双性イオンモノマーにおけるYで表わされる双性イオン基のカチオンが、第四級アンモニウムイオンであり、アニオンが炭酸イオンまたは硫酸イオンであることが好ましい。
【0046】
前記式(1)において、n1は1〜10の整数であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。n1が10をこえる整数の場合は、汎用性、重合性の点で好ましくない。
【0047】
双性イオンとしては、具体的には、
【0048】
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

(いずれにおいても、R1は−Hまたは−CH3)があげられる。
【0049】
シリコーンモノマーは、前記式(2)〜(5)を満足するものであれば好ましく用いることができ、単独でも、複数を混合して用いてもよい。前記式(2)〜(5)を満たすシリコーンモノマーは、前記特定の構造とすることで、該モノマーの極性を適当なものに設定しているので、本発明の双性イオンと相分離をおこさず、塊状重合に適用することができる。
【0050】
前記式(2)のシリコーンモノマーにおいて、R2は、重合性、低コストおよび原料入手のしやすさなどの点から、Hまたはメチル基であることが好ましく、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0051】
【化32】

であることが好ましい。これらのなかでも、酸素透過性への効果が高く、また、原料の入手のしやすさ、合成の容易さ、低コスト、安全性などの点から、メチル基,
【化33】

であることがより好ましい。
【0052】
前記式(2)のシリコーンモノマーにおいて、n2は1〜10の整数であって、より好ましくはnが3の場合である。n2が10をこえる整数の場合は、酸素透過性が低下したり、コストが高くなり、また、重合性の面から好ましくない傾向がある。
【0053】
前記式(2)のシリコーンモノマーとしては、具体的には、
【0054】
【化34】

【化35】

があげられる。
【0055】
前記式(3)のシリコーンモノマーにおいて、R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基であることが好ましく、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3,−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,または−CH(CF32である。これらのなかでも、酸素透過性への効果や原料の入手のしやすさ、低コスト、重合性、安全性などの点から、R7が−CH3、R8が−CH3または−C24CF3、R9が−CH3であることがより好ましい。
【0056】
前記式(3)のシリコーンモノマーにおいて、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数であることが好ましく、n3およびn4は、酸素透過性への効果や原料の入手のしやすさ、低コスト、重合性、安全性などの点からいずれも3であることが好ましい。
【0057】
前記式(3)のシリコーンモノマーとしては、具体的には、
【0058】
【化36】

(Raは−Hまたは−CH3)、
【0059】
【化37】

(Raは−Hまたは−CH3)があげられる。
【0060】
前記式(4)のシリコーンモノマーにおいて、R10は−CH2CF3または−CH(CF32であり、R11,R12,R13は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−O−Si(CH33である。
【0061】
前記式(4)のシリコーンモノマーにおいて、n5は1〜10の整数であればよいが、原料の入手のしやすさ、低コスト、合成の容易さ、重合性などの点から、n5は3であることが好ましい。
【0062】
前記式(4)のシリコーンモノマーとしては、例えば、
【0063】
【化38】

【化39】

があげられる。
【0064】
前記式(5)におけるR14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0065】
【化40】

から選択される。
【0066】
前記式(5)におけるn6は、1〜10の整数であって、n6が2〜6、好ましくは3のものが原料の入手しやすさ、低コスト、重合性、安全性、合成の容易さなどの点から好ましい。
【0067】
前記式(5)のシリコーンモノマーとしては、例えば、
【0068】
【化41】

があげられる。
【0069】
ここで、本発明における双性イオンモノマーとシリコーンモノマーは、前記構造において、適切な極性を有するようにスクリーニングしてあるので、相分離を起こさず混合することができる。また、このように両モノマーが相分離を起こさないことから、本発明においては塊状重合により重合を行なうことが可能となる。塊状重合によりモノマーを重合することにより、従来の製造方法に比べて、製造工程の簡素化やコスト削減ができる。
【0070】
本発明における塊状重合する工程は、双性イオンモノマーとシリコーンモノマーを含有する混合物を重合開始剤により共重合せしめる工程をいう。
【0071】
前記混合物において、双性イオンモノマーとシリコーンモノマーの重量比が、20:80〜80:20であることが好ましい。前記混合物における双性イオンモノマーの含有量が20重量%未満の場合は、双性イオンモノマーが少なすぎて、汚れの付着を低減する効果が期待できない傾向があり、80重量%をこえる場合は、シリコーンモノマーが少なすぎて、酸素透過性が劣る傾向がある。
【0072】
本発明の製造方法においては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、シクロヘキサンのうち少なくとも1種の有機溶媒の存在下で塊状重合をすることができる。これらの有機溶媒の含有量は、混合物100重量部に対して3〜500重量部であることが好ましく、3〜110重量部であることが好ましい。有機溶媒の含有量が3重量部未満である場合は、相溶性への効果または相分離を発生させないことへの効果がなく、500重量部をこえる場合は、コンタクトレンズとしての機械的強度が不充分である傾向がある。ここで、本発明において、有機溶媒とは、メディエーター(媒体)であって、メディエーターを介して双性イオンモノマーとシリコーンモノマーを相溶させるものである。
【0073】
塊状重合の重合開始剤には、たとえばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられる。電磁波を利用して共重合させる場合には、たとえばメチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルホルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、o−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノンなどのフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジルなどの光重合開始剤を、単独または2種以上混合して用いることができる。また、このほかにも、たとえば、1,2−ベンゾアントラキノンなどの光重合増感剤をさらに反応混合物に添加することが好ましい。なかでも、低コスト、安全性、汎用性などの点から、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルが好ましい。
【0074】
前記重合開始剤や光重合増感剤の含有量は、混合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度であることが好ましく、0.01〜3重量部であることがより好ましい。
【0075】
また、本発明の効果を損なわない程度で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EDMA)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼンなどの架橋剤を適宜添加してもよい。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
なお、本明細書において、「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレートおよび/または〜メタクリレート」を意味し、他の(メタ)アクリレート誘導体についても同様である。
【0077】
前記混合物に有機溶媒、重合開始剤を添加した混合溶液を、室温〜140℃程度の範囲で徐々に加熱する方法や、マイクロ波、紫外線、放射線などの電磁波を照射することにより共重合体を得る。ここで、重合時間は、用いるモノマーの種により適宜選択されるが、生産性の面から、0.01〜48時間であることが好ましい。
【0078】
前記共重合体をコンタクトレンズに成形する方法はとくに限定されるものではないが、低コスト、再現性の点から、棒状、ブロック状、板状の素材を得た後に切削加工する方法や、コンタクトレンズの形状の型に前記混合液を流し込み、重合することによって得る方法、それに加えて必要に応じて切削加工するによることが好ましい。
【0079】
また、本発明は、式(6)
【0080】
【化42】

(R17は−Hまたは−CH3、Zは−O−または−NH−、R18はアルキレンオキシ基または−CH2−、n7,n8はそれぞれ0〜10の整数)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして、
式(2)
【0081】
【化43】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0082】
【化44】

式(3)
【0083】
【化45】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,−CH(CF32)、
式(5)
【0084】
【化46】

(R14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【0085】
【化47】

のうち、少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を、塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法に関する。
【0086】
前記式(6)の双性イオンモノマーにおけるR17は、−Hまたは−CH3、Zは−O−または−NH−、R18はアルキレンオキシ基または−CH2−である。
【0087】
前記式(6)におけるn7,n8は、それぞれ0〜10の整数であり、低コスト、汎用性の点から、n7が0〜8であることが好ましく、n8が1〜6であることが好ましい。
【0088】
前記式(6)の双性イオンモノマーとしては、シリコーンイオンモノマーとの相分離をしないこと、安全性、低コスト、汎用性などの点から、
【0089】
【化48】

が好ましく用いられる。
【0090】
前記式(6)の双性イオンモノマーとともに用いられるシリコーンモノマーとしては、前記式(2)〜(5)のシリコーンモノマーがあげられるが、安全性、低コスト、汎用性などの点から、
【0091】
【化49】

【化50】

【化51】

(Raは−Hもしくは−CH3)、
【0092】
【化52】

(Raは−Hもしくは−CH3)、
【0093】
【化53】

であることが好ましい。
【0094】
前記式(6)の双性イオンモノマーと前記シリコーンモノマーは、相分離せずに、均一に混合することができる。
【0095】
前記式(6)の双性イオンモノマーとシリコーンモノマーを含む混合物の塊状重合条件およびコンタクトレンズへの成形、製造方法は、前記式(1)の双性イオンモノマーとシリコーンモノマーの塊状重合条件と同じ条件で、コンタクトレンズを製造することができる。
【0096】
また、本発明は、前記式(1)または(6)とシリコーンモノマーを含む混合物を塊状重合する工程を含む製造方法により得られるコンタクトレンズに関する。
【0097】
以下、本発明の製造方法およびコンタクトレンズを実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
実施例に用いた双性イオンモノマーおよびシリコーンモノマーを以下にあげる。
【0099】
(双性イオンモノマー)
N,N−ジメチル−N−(2−カルボキシエチル)−2’−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムベタイン(DAEMA−CO2
【0100】
【化54】

【0101】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)
【化55】

【0102】
(シリコーンモノマー)
(3−メタクリロキシプロピル)ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(純度:99.1%(GC)、S−502CT、信越化学工業(株)製)
【化56】

【0103】
SK−5556(信越化学工業(株)製)
【化57】

【0104】
X−70−143A(信越化学工業(株)製)
【化58】

【0105】
SK−5001(信越化学工業(株)製)
【化59】

【0106】
実施例1
表1の配合量に従い、50重量部のDAEMA−CO2と、50重量部のSK−5556を混合した。エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)を5重量部と、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(D1173、メルク製)0.5重量部を添加し、メタノール107重量部を加えて混合溶液を得た。この混合溶液を、コンタクトレンズの成形型に流し込み、UV照射装置(岩崎電気(株)製)を用いて10mW/cm2の照射条件でUV照射を30分間行い、共重合体を得た。前記共重合体を生理食塩水、蒸留水などにより水和させて、φ14mm、厚さ0.1〜0.4mmのプレートを得た。得られたプレートを以下の評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0107】
(プレート成形性)
ピンセットでのつまみやすさ、重合の可否、離型性、形状保持性によりプレート成形性を評価した。
○:良好
△:やや不良
×:混合溶液の段階で相分離、または、重合しなかった
【0108】
(透明性)
肉眼での観測により得られたプレートの透明性を評価した。
【0109】
(酸素透過性:Dk)
ISO9913−1に準拠したFATT法により、プレートの酸素透過性を測定した。
【0110】
(タンパク質付着性、脂質付着性)
人工涙液(リゾチーム、γ−グロブリン、アルブミン、コレステロール、コレステロールパルミテート、2−オクチルドデシルオリエート、スクアレンを含む0.9%NaCl/0.045%NaH2PO4/0.011%CaCl2水溶液)2mLに得られたコンタクトレンズを浸漬させ、37℃で約16時間振盪した。振盪後プレートを取り出し、タンパク質付着性を評価するために、アセトニトリル/TFA(体積比、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸=50:50:0.2)水溶液にてプレートに付着したタンパク質を抽出し、HPLC(日本ウォーターズ社製)により定量した。結果を表1に示す。また、脂質付着性を評価するために、クロロホルム/MeOH(体積比7:3)溶液にてプレートに付着した脂質を抽出し、GC/MS(Agilent Technologies製)にて定量した。結果を表1に示す。
【0111】
(含水率)
得られたプレートの含水率を、ISO10339に準拠した方法により測定した。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例2〜5、比較例1〜3
表1の配合量に従い、実施例1と同様の方法によりプレートを得て、種々の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0114】
実施例6〜15、比較例4〜6
表2の配合量に従い、実施例1と同様の方法によりプレートを得て、種々の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
実施例16〜23、比較例7
表3の配合量に従い、実施例1と同様の方法によりプレートを得て、種々の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
比較例8〜21
表4の配合量に従い、実施例1と同様の方法によりプレートを得て、種々の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
2−HEMAでは、どのシリコーンモノマーと共重合させた場合においても、得られるプレートが白濁したが、DAEMA−CO2、MPCの双性イオンモノマーと組み合わせた混合物を塊状重合する工程を経て得られたプレートは、透明かつ酸素透過性に優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(R1は−Hまたは−CH3、Xは−O−または−NH−、n1は1〜10の整数、Yは双性イオン基)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして
式(2)
【化2】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【化3】

式(3)
【化4】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,−CH(CF32)、
式(4)
【化5】

(R10は−CH2CF3または−CH(CF32、n5は1〜10の整数、R11,R12,R13は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−O−Si(CH33)、および
式5
【化6】

(R14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【化7】

の少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法。
【請求項2】
双性イオンモノマーが、
【化8】

(R1は、−Hまたは−CH3)である請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項3】
双性イオンモノマーが、
【化9】

(R1は、−Hまたは−CH3)である請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項4】
双性イオンモノマーが、
【化10】

(R1は−Hまたは−CH3)である請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項5】
双性イオンモノマーが、
【化11】

(R1は−Hまたは−CH3)である請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項6】
双性イオンモノマーが、
【化12】

(R1は−Hまたは−CH3)である請求項1記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
式(6)
【化13】

(R17は−Hまたは−CH3、Zは−O−または−NH−、R18はアルキレンオキシ基または−CH2−、n7,n8はそれぞれ0〜10の整数)で表される双性イオンモノマー、および、シリコーンモノマーとして、
式(2)
【化14】

(R2は−Hまたは−CH3、R3,R4,R5は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【化15】

式(3)
【化16】

(R6はメタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基、n3,n4はそれぞれ1〜10の整数、R7,R8,R9は同一でもあっても、異なっていてもよく、−CH3または−C25,−C37,−CH(CH32,−CF3,−CH2CF3,−C24CF3,−CH(CF32)、
式(5)
【化17】

(R14,R15,R16は同一でもあっても、異なっていてもよく、
【化18】

のうち、少なくとも1つのシリコーンモノマーを含有する混合物を、塊状重合する工程を含むコンタクトレンズの製造方法。
【請求項8】
双性イオンモノマーが、
【化19】

である請求項7記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項9】
双性イオンモノマーとシリコーンモノマーの重量比が、20:80〜80:20である請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項10】
メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、シクロヘキサンのうち少なくとも1種の有機溶媒の存在下で塊状重合する請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の製造方法によって得られるコンタクトレンズ。

【公開番号】特開2007−56220(P2007−56220A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246587(P2005−246587)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】