説明

コンタクト・レンズを離型させる方法

コンタクト・レンズを製造する方法は、レンズ形成混合物をコンタクト・レンズ用鋳型に添加し;レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;コンタクト・レンズを鋳型から離型させ;ポリマー材料をコンタクト・レンズから除去する操作を含んでいる。そのポリマー材料はレンズ形成モノマーとは反応しないが、コンタクト・レンズを鋳型から容易に離型させるためにレンズ形成モノマーに含まれている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒドロゲルは、さまざまな生体医学装置(例えばコンタクト・レンズ)を製造するための材料の望ましい1つのクラスである。ヒドロゲルは、水和した架橋ポリマー系であり、平衡状態の水を含んでいる。ヒドロゲル製レンズは、望ましい生体適合性と快適さを提供する。シリコーン・ヒドロゲルは、シリコーン含有モノマーを含むヒドロゲル材料であり、そのシリコーン含有モノマーが、得られるヒドロゲル・コポリマーにより大きな酸素透過性を与えている。
【0002】
ヒドロゲル製ポリマー眼科装置(例えばコンタクト・レンズ)を製造する典型的な1つの方法では、複数のレンズ形成モノマーの混合物を含む組成物を鋳型に装填した後、そのレンズ形成モノマーを重合させることで、成形された製品を形成する。鋳型が、前部鋳型半体と後部鋳型半体の2つの部分からなる鋳型組立体である場合には、一方の鋳型半体を取り除くと、成形されたコンタクト・レンズが他方の鋳型半体に付着して残る。コンタクト・レンズは、湿式離型法または乾式離型法によってこの鋳型半体から取り出すことができる。湿式離型法では、レンズを水または水溶液に曝すことで、レンズが水を吸収して膨張して鋳型から離れるようにする。乾式離型法では、レンズは水性媒体を添加することなく、例えば機械的作用によって乾燥状態で鋳型から離れる。コンタクト・レンズは、鋳型から離れた後、さまざまな下流プロセス(例えば検査、包装、殺菌)を施される。
【0003】
レンズを成形するさまざまな段階(例えば鋳型からの乾式離型)の説明が、アメリカ合衆国特許第5,271,875号(Appleton他)に提示されている。
【0004】
本発明では、硬化したコンタクト・レンズが柔らかすぎるとコンタクト・レンズ用鋳型から乾式離型させるのが難しいことに気づいた。言い換えるならば、コンタクト・レンズが鋳型に付着し、しかもコンタクト・レンズは柔らかいため、そのレンズおよび/または鋳型の機械的操作によっては信頼性よく離型させることができない。これは特に、さまざまなヒドロゲル製コンタクト・レンズに当てはまる。なぜならシリコーン含有モノマーは、得られるコポリマーをより柔らかく、そして弾性率をより小さくする傾向があるからである。また、多くの場合にレンズ形成モノマー混合物は非反応性希釈剤(典型例は、低分子量の非ポリマー有機化合物)をさらに含んでいてもよいが、その希釈剤は、重合して得られたコンタクト・レンズに残る。このような希釈剤も、得られる硬化したコンタクト・レンズを柔らかくする可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コンタクト・レンズを鋳型からより信頼性よく離型させる方法を提供することによって上記の諸問題を解決する。その結果、収率が向上し、より効率的な製造法となる。
【0006】
第1の特徴では、この方法は、
互いに反応する複数のレンズ形成モノマーと、そのレンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料とを含むレンズ形成混合物をコンタクト・レンズ用鋳型に添加し;
レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;
そのコンタクト・レンズを鋳型から取り出す操作を含んでいる。
【0007】
第2の特徴では、この方法は、順番に、
互いに反応する複数のレンズ形成モノマーと、そのレンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料とを含むレンズ形成混合物をコンタクト・レンズ用鋳型に添加し;
レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;
そのコンタクト・レンズを鋳型から取り出し;
そのコンタクト・レンズを水和させ、包装し、殺菌する操作を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、さまざまなコンタクト・レンズ材料に適用すること、その中でも特にヒドロゲルに適用することができる。ヒドロゲルは、架橋したポリマー系であり、水を吸収して平衡状態に保持することができる。本発明で用いるモノマー混合物は、従来のレンズ形成モノマー(その中でもフリー・ラジカル重合によって互いに共重合させることのできるエチレン型不飽和モノマー)を含んでいる。(この明細書では、“モノマー”または“モノマー性”などの用語は、フリー・ラジカル重合によって重合させることのできる比較的低分子量の化合物と、より高分子量の化合物(“プレポリマー”、“マクロモノマー”ならびにそれと関連した用語でも呼ばれる)を表わす。)
【0009】
本発明は特に、シリコーン含有ヒドロゲルに適用すること、すなわちシリコーン含有レンズ形成モノマーと親水性レンズ形成モノマーを含むモノマー混合物の水和した重合生成物に適用することができる。
【0010】
シリコーン含有モノマーの第1のクラスは、重合可能なエチレン型不飽和基で末端にキャップをされたポリシロキサン含有プレポリマーである。
【0011】
“ポリシロキサン含有”という用語は、プレポリマーが、ポリシロキサンを含む軟区画を有することを表わす。これらの区画は、ヒドロキシル基またはアミノ基で末端にキャップをされたポリシロキサンに由来することが好ましく、以下の一般式(PS'):
【化1】

で表わされる。ただし、
それぞれのAはヒドロキシル基またはアミノ基であり;
それぞれのRは、独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基の中から選択され、その炭素原子間には、エーテル結合、ウレタン結合、尿素結合のいずれかが含まれていてもよく;
それぞれのR'は、独立に、水素、1価の炭化水素基、ハロゲン置換された1価の炭化水素基の中から選択され、その中の炭化水素基は1〜20個の炭素原子を含んでいて、炭素間にはエーテル結合が含まれていてもよく;
aは少なくとも1である。
【0012】
好ましいR基は、場合によってはエーテル基で置換されたアルキレンである。好ましいR'基として、アルキル基、フェニル基、フルオロ置換アルキル基、フルオロ置換アルケニル基が挙げられ、これらの基は場合によってはエーテル基で置換されている。特に好ましいR'基として、アルキル(例えばメチル)、場合によってはエーテル結合を含むフルオロアルキル(例えば-CH2-CH2-CH2-O-CH2-(CF2)z-H(ここにzは1〜6である))がある。
【0013】
aは約10〜約100であることが好ましく、約15〜約80であることがより好ましい。一般式(PS')のMnは1000〜8000の範囲だが、2000〜6000であることがより好ましい。
【0014】
さまざまなポリシロキサン-ジオールとポリシロキサン-ジアミンを市場で入手することができる。それに加え、ポリシロキサンの代表的な合成法を実施例に示してある。
【0015】
“重合可能なエチレン型不飽和基で末端にキャップをされたプレポリマー”という表現は、そのプレポリマーが重合可能であり、エチレン型不飽和基で末端にキャップをされていることを表わす。このプレポリマーは、重合可能なエチレン型不飽和基で両端にキャップをされている。好ましい重合可能な末端基は、一般式(M'):
【化2】

で表わされる。ただし、
R23は水素またはメチルであり;
それぞれのR24は、水素、1〜6個の炭素原子を持つアルキル基、-CO-Y-R26基(ここにYは、-O-、-S-、-NH-のいずれかである)のいずれかであり;
R25は、1〜10個の炭素原子を持つ2価のアルキレン基であり;
R26は、1〜12個の炭素原子を持つアルキル基であり;
Qは、-CO-、-OCO-、-COO-のいずれかを表わし;
Xは、-O-または-NH-を表わし;
Arは、6〜30個の炭素原子を持つ芳香族基であり;bは0〜6であり;cは0または1であり;dは0または1であり;eは0または1である。M基を形成するための適切な末端キャップ用前駆体として、末端がヒドロキシである(メタ)アクリレート(例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、末端がアミノである(メタ)アクリレート(例えばt-ブチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸)などがある。(この明細書では、“(メタ)”という用語は、場合によっては存在するメチル置換基を表わす。したがって“(メタ)アクリレート”などの用語は、メタクリレートまたはアクリレートを表わし、“(メタ)アクリル酸”は、メタクリル酸またはアクリル酸を表わす。)
【0016】
ポリシロキサン・プレポリマーの1つのクラスはブロック(I)と(II)を含んでおり、それぞれの端部がエチレン型不飽和基:
(*Dii*Diol*Dii*PS)x (I)
(*Dii*PS)y (II)
で終わっている。ただし、
それぞれのDiiは、独立に、ジイソシアネートのジラジカル残基であり;
それぞれのDiolは、独立に、1〜10個の炭素原子を持つジオールのジラジカル残基であり;
それぞれのPSは、独立に、ポリシロキサン-ジオールまたはポリシロキサン-ジアミンのジラジカル残基(すなわちPS'のジラジカル残基(ただしAは-O-または-NH-になろう))であり;
それぞれの*は、独立に、-NH-CO-NH-、-NH-COO-、-OCO-NH-のいずれかであり;
xはブロック(I)の数を表わしていて少なくとも2であり;
yはブロック(II)の数を表わしていて少なくとも1である。
【0017】
このクラスのプレポリマーとして、一般式:
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M (III)または
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*Diol*Dii*M (IV)
で表わされるものがある。ただしDii、Diol、PS、PS'、*、x、yは、上に定義した通りであり、Mは重合可能なエチレン型不飽和基である。
【0018】
一般に、一般式(I)のブロックは、(*Dii*Diol*Dii*で表わされる)超硬区画と(PSで表わされる)軟区画からなることを特徴とする。一般に、一般式(II)のブロックは、(*Dii*で表わされる)より柔らかい硬区画と(PSで表わされる)軟区画からなることを特徴とする。より柔らかい硬ブロック(II)と超硬ブロック(I)の分布は、ランダムでも交互になっていてもよく、xとyは、プレポリマーに含まれるそれぞれの構造のブロックの合計数を表わす。言い換えるならば、一般式(III)と(IV)において、一般式(I)のすべてのブロックが互いに直接結合している必要はない。これらブロックの分布は、プレポリマーの調製中に、ポリシロキサン成分、ジイソシアネート成分、短鎖ジオール成分を付加する順番によって制御することができる。
【0019】
プレポリマーは、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)においてPSによって表わされるポリシロキサン含有軟区画を含んでいる。より詳細には、このポリシロキサン含有軟区画は、ヒドロキシル基またはアミノ基で末端にキャップをされたポリシロキサン(例えば一般式(PS')で表わされるポリシロキサン区画)に由来する。
【0020】
一般式(III)と(IV)のaは約10〜約100であることが好ましく、約15〜約80であることがより好ましい。PSのMnは1000〜8000の範囲だが、2000〜6000であることがより好ましい。
【0021】
プレポリマーの超硬区画は、一般式(I)、(III)、(IV)においてDiolによって表わされるジオールの残基を含んでいる。好ましいDiol基として、1〜10個の炭素原子を持っていて、主鎖にエーテル結合、チオ結合、アミン結合のいずれかを含んでいてもよいアルキルジオール、シクロアルキルジオール、アルキルシクロアルキルジオール、アリールジオール、アルキルアリールジオールいずれかのジアルキル残基が挙げられる。代表的なジオールとして、2,2-(4,4'-ジヒドロキシジフェニル)プロパン(ビスフェノール-A)、4,4'-イソ-プロピリジンジシクロヘキサノール、エトキシ化されたビスフェノール-A、プロポキシル化されたビスフェノール-A、2,2-(4,4'-ジヒドロキシジフェニル)ペンタン、1,1'-(4,4'-ジヒドロキシジフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどがある。特に好ましいのは、アルキレンジオールとエーテル化されたアルキレンジオールで1〜10個の炭素原子を持つものである。
【0022】
上記のポリシロキサン含有区画とジオール残基区画は、そのポリシロキサン含有区画とジオールのヒドロキシル基またはアミノ基と反応するジイソシアネートを通じて結合している。一般に、あらゆるジイソシアネートを用いることができる。これらジイソシアネートは脂環式または芳香族のものが可能であり、アルキルジイソシアネート、アルキルシクロアルキルジイソシアネート、シクロアルキルジイソシアネート、アルキル芳香族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどがあり、脂環式部分または芳香族部分の中には6〜30個の炭素原子が含まれていることが好ましい。具体例として、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレン-4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス-(4,4'-イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネートなどがある。
【0023】
一般に、xの値がより大きくなると、極性ウレタン/尿素結合の数がより多いプレポリマーになる。親水性コ-モノマーとの適合性を保証するにはプレポリマーの極性が重要である。一般に、yの値がより大きくなると、シリコーンの割合が多いプレポリマーになり、その結果として酸素の透過率がより大きくなる。しかしxとyの比は釣り合っている必要がある。したがってx/yは少なくとも0.6(すなわちx:y=0.6:1)であることが好ましく、少なくとも0.75であることがより好ましい。
【0024】
プレポリマーは、一般式(III)と(IV)のMで表わされる重合可能なエチレン型不飽和基で両端にキャップをされている。代表的なM基は、一般式(M')で表わされる。
【0025】
プレポリマーを形成するための第1の代表的な反応スキームは以下の通りである。最初に、ジイソシアネートをジオールとモル比2:1で反応させる。
2x OCN-Dii-NCO + x HO-Diol-OH → x OCN-Dii*Diol*Dii-NCO
このスキームにおいて、*は、ウレタン基である-NH-COOまたは-OCO-NH-を表わす。一般に、この反応は、触媒(例えばジラウリル酸ジブチルスズ)の存在下にて溶媒(例えば塩化メチレン)の中で還流させながら実施する。次に、ジイソシアネートとポリシロキサン-ジオールを、ポリシロキサン-ジオールに対するジイソシアネートの合計(x+y)の比が少なくとも1.1になるように添加する。(一般に、2<x+y≦11;x>0;y>0。)
x OCN-Dii-*-Diol-*-Dii-NCO + (x+y-1) HO-PS-OH + y OCN-Dii-NCO → OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii-NCO
最後に、この生成物の末端に重合可能なエチレン型不飽和基でキャップをする。
OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii-NCO + 2M-OH
→ M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M
【0026】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)のプレポリマーを形成するための第2の代表的な反応スキームは以下の通りである。最初に、ジイソシアネートを、ポリシロキサン-ジオールと、以下に示すモル比で反応させる。
(m+1) OCN-Dii-NCO + m HO-PS-OH → OCN-(Dii*PS)m*Dii-NCO
ここに、(1 + 1/m)は1.05〜1.9の範囲であることが好ましく、1.2〜1.5であることが最も好ましい。このスキームにおいて、*は、やはりウレタン基である-NH-COOまたは-OCO-NH-を表わす。一般に、この反応は、触媒(例えばジラウリル酸ジブチルスズ)の存在下にて溶媒(例えば塩化メチレン)の中で還流させながら実施する。次に、還流を続けながら、ジオールを、超硬区画とより柔らかい硬区画の望ましい比に基づいて選択したモル比で添加する。
z1 OCN-(Dii-*-PS)m-*-Dii-NCO + z2 HO-Diol-OH
→ (OCN-Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)yDii-NCO
ここにz1/z2は2以下だが、1よりも大きい。最後に、この生成物の末端に重合可能なエチレン型不飽和基でキャップをする。
OCN-Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii-NCO+2M-OH→
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M
【0027】
上記の反応スキームでは、ジオールとジイソシアネートの反応によってウレタン基(-NH-COOまたは-OCO-NH-)が生じる。あるいはジアミンとジイソシアネートの反応によって尿素基(-NH-CO-NH-)が生じるであろう。ウレタン・ポリマーまたは尿素ポリマーを形成するための別の方法が従来技術で知られている。
【0028】
ポリシロキサン・プレポリマーの第2のクラスは、一般式:
M(*Dii*PS)x*Dii*M (V)
で表わされる。ただし、Dii、PS、*、Mは、上に示したのと同じ意味である。一般に、一般式(I)の*Dii*PSブロックは、(*Dii*で表わされる)相対的に柔らかい硬区画と(PSで表わされる)軟区画からなることを特徴とする。一般式(V)において、xは少なくとも2だが、少なくとも3であることがより好ましい。
【0029】
このクラスのプレポリマーを形成するための代表的な1つの反応スキームは以下の通りである。最初に、ジイソシアネートをポリシロキサン-ジオールと反応させる。
(n+1) OCN-Dii-NCO + n HO-PS-OH → OCN-(Dii*PS)x*Dii-NCO
このスキームにおいて、*は、ウレタン基である-NH-COOまたは-OCO-NH-を表わす。一般に、この反応は、触媒(例えばジラウリル酸ジブチルスズ)の存在下にて溶媒(例えば塩化メチレン)の中で還流させながら実施する。最後に、この生成物の末端に重合可能なエチレン型不飽和基でキャップをする。
OCN-(Dii*PS)x*Dii-NCO + 2 M-OH → M (*Dii*PS)x*Dii*M
【0030】
上記の反応スキームにおいて、ポリシロキサン-ジオールとジイソシアネートの反応によってウレタン基(-NH-COOまたは-OCO-NH-)が生じる。あるいはポリ-シロキサン-ジアミンとジイソシアネートの反応によって尿素基(-NH-CO-NH-)が生じるであろう。ウレタン・ポリマーまたは尿素ポリマーを形成するための別の方法が従来技術で知られている。
【0031】
別のポリシロキサン含有プレポリマーは、一般式:
M (*Dii*PS*Dii*Diol)x*Dii*PS*Dii*M (VI)
M (*Dii*Diol*Dii*PS)x*Dii*Diol*Dii*M (VII)
で表わされる。ここにDii、PS、Diol、*、Diiは、上に示したのと同じ意味である。一般式(VI)と(VII)において、xは少なくとも1である。一般に、これらプレポリマーは、(*Dii*Diol*Dii*で表わされる)超硬区画と(PSで表わされる)軟区画からなる。これらプレポリマーは、従来技術で一般に知られている方法によって調製することができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,034,461号(Lai他)に開示されている一般的な方法がある(この特許の全開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0032】
ポリシロキサン・プレポリマーの別の1つのクラスは、一般式:
M (*PS*Dii)x'*PS*M (VIII)
で表わされる。ここにDii、PS、*、Mは、上に示したのと同じ意味であり、x'はゼロまたは少なくとも1という整数である。一般に、一般式(I)の*PS*Diiブロックは、(*Dii*で表わされる)相対的に柔らかい硬区画と(PSで表わされる)軟区画からなることを特徴とする。
【0033】
このクラスのプレポリマーを形成するための代表的な1つの反応スキームは以下の通りである。最初に、ジイソシアネートをポリシロキサン-ジオールと反応させる。
(n) OCN-Dii-NCO + (n+1) HO-PS-OH → H-(PS*Dii)x'*PS-H
このスキームにおいて、*は、ウレタン基である-NH-COOまたは-OCO-NH-を表わす。一般に、この反応は触媒(例えばジラウリル酸ジブチルスズ)の存在下にて溶媒(例えば塩化メチレン)の中で還流させながら実施する。最後に、この生成物の末端に重合可能なエチレン型不飽和基でキャップをする。
H-(PS*Dii)x'*PS-H + 2 M-NCO → M (*PS*Dii)x'*PS*M
【0034】
上記の反応スキームにおいて、ポリシロキサン-ジオールとジイソシアネートの反応によってウレタン基(-NH-COOまたは-OCO-NH-)が生じる。あるいはポリ-シロキサン-ジアミンとジイソシアネートの反応によって尿素基(-NH-CO-NH-)が生じるであろう。ウレタンポリマーまたは尿素ポリマーを形成するための別の方法が従来技術で知られている。
【0035】
プレポリマーは、分子量(Mn)が少なくとも10,000であることが好ましく、少なくとも15,000であることがより好ましく、少なくとも20,000であることが最も好ましい。プレポリマーは、ケイ素原子の含有量がこのプレポリマーの少なくとも25質量%であることが好ましく、少なくとも30質量%であることがより好ましい。
【0036】
ポリシロキサン・プレポリマーの別の例として以下のものがある。
【化3】

ここに、
d、f、g、kは0〜250の範囲であり、2〜100であることが好ましく;hは1〜20の整数であり、1〜6が好ましく;
M'は水素またはフッ素である。
【0037】
シリコーン含有モノマーの別の適切なクラスとして、一般式(XIII)で表わされる既知の立体的な一官能性ポリシロキサニルアルキルモノマー:
【化4】

がある。ここにXは、-COO-、-CONR4-、-OCOO-、-OCONR4-のいずれかを表わし、その中のR4はHまたは低級アルキルであり;R3は水素またはメチルを表わし;hは1〜10であり;それぞれのR2は、独立に、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、フェニル基、一般式:
-Si(R5)3
の基(ただしR5は、独立に、低級アルキル基またはフェニル基である)のいずれかを表わす。このような立体的なモノマーとして、特に、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシラン、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボネートなどがある。
【0038】
他の二官能性または多官能性のシリコーン含有モノマーが従来技術で知られており、望むのであればレンズ形成コモノマーとして用いることができる。
【0039】
一般に、初期モノマー混合物には、シリコーン含有モノマーが、この混合物の全質量の5〜95質量%含まれている。この値は20〜70質量%が好ましい。
【0040】
少なくとも1種類の親水性コモノマーを、初期モノマー混合物の中でシリコーン含有モノマーと組み合わせる。代表的な親水性モノマーとして、不飽和カルボン酸(例えばメタクリル酸、アクリル酸);(メタ)アクリル置換アルコール(例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセリルメタクリレート);ビニルラクタム(例えばN-ビニルピロリドン);(メタ)アクリルアミド(例えばメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド)などがある。一般に、少なくとも1種類の親水性コモノマーが、モノマー混合物に、このモノマー混合物の全質量の20〜60質量%含まれている。この値は25〜50質量%が好ましい。
【0041】
モノマー混合物は架橋用モノマーを含んでいる(架橋用モノマーまたは架橋剤は、重合可能な複数の官能基を有するモノマーとして定義される)。シリコーン含有モノマーが、重合可能な基で両端にキャップをされたプレポリマーである場合、そのプレポリマーは架橋剤として機能するであろう。場合によっては、追加の架橋用モノマーを初期モノマー混合物に添加してもよい。代表的な架橋用モノマーとして、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリコールジメタクリレートのビニルカルボネート誘導体、メタクリルオキシエチルビニルカルボネートなどがある。追加の架橋剤を用いるとき、このモノマー材料は、モノマー混合物の中に0.1〜20質量%の割合で含まれていてよい。この値は0.2〜10質量%であることがより好ましい。
【0042】
有機希釈剤が初期モノマー混合物に含まれていてもよい。この明細書では、“有機希釈剤”という用語に、初期モノマー混合物中の諸成分と実質的に反応せず、この混合物中のモノマー成分との不適合性を最少にするため用いられることがしばしばある有機化合物が含まれる。代表的な有機希釈剤として非ポリマー材料があり、例えば1価アルコール(例えばC2〜C10の1価アルコール);ジオール(例えばエチレングリコール);ポリオール(例えばグリセリン);エーテル(例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル);ケトン(例えばメチルエチルケトン);エステル(例えばヘプタン酸メチル)、炭化水素(例えばトルエン))が挙げられる。しかし希釈剤は、モノマー混合物の全質量の20質量%以下の量を使用することが好ましい。
【0043】
モノマー混合物はさらに、従来技術で知られている重合開始剤(特にUV開始剤または可視光開始剤)、着色剤、UV阻止剤を少量含んでいてもよい。
【0044】
レンズやそれ以外の生体医学装置を形成するにあたって、液体のレンズ形成モノマー混合物を、望む形状の鋳型面を有する鋳型に装填した後、その鋳型の中で硬化(または重合)させる。硬化は、モノマー混合物を鋳型の中に入れて加熱するか光(UV光または可視光)を照射してフリー・ラジカル重合を起こさせることによって実現できる。コンタクト・レンズやそれ以外の生体医学装置を製造する際にモノマー混合物を硬化させるためのさまざまな方法が知られており、例えばスピン・キャスティングや静的キャスティングがある。コンタクト・レンズのスピン・キャスティングには、レンズの形状をした凹状鋳型面を有する鋳型にモノマー混合物を装填した後、そのモノマー混合物に光を当てながら制御されたやり方で鋳型を回転させる操作が含まれる。静的キャスティング法には、望むレンズの形状を与える鋳型キャビティを形成する2つの鋳型部の間にモノマー混合物を装填した後、熱および/または光に曝露することによってそのモノマー混合物を硬化させる操作が含まれる。コンタクト・レンズの場合には、一方の鋳型部は、レンズの前面を形成する形状の鋳型面を持ち、他方の鋳型部は、レンズの後面を形成する形状の鋳型面を持つ。このような方法は、アメリカ合衆国特許第3,408,429号、第3,660,545号、第4,113,224号、第4,197,266号、第5,271,875号、第5,260,000号に記載されている(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0045】
成形後、鋳型からコンタクト・レンズを取り出す。鋳型が、後部鋳型半体と前部鋳型半体という2つの部分からなる組立体である場合には、一方の鋳型半体を取り除くと、成形されたコンタクト・レンズが他方の鋳型半体に付着して残る。多くの方法では、コンタクト・レンズが前部鋳型半体とともに残ることが望ましい。コンタクト・レンズは、乾式離型法によってこの鋳型半体から離れる。すなわちレンズは、水性媒体を添加することなく、例えば機械的作用によって鋳型半体から乾燥状態で離れる。コンタクト・レンズは、鋳型から離れた後、さまざまな下流プロセス(例えば検査、包装、殺菌)を施される。オプションとしての他のさまざまな方法を利用することができる。例えばレンズを機械加工して望む最終形状を持つコンタクト・レンズまたは製品にすることができる。
【0046】
本発明では、レンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料をレンズ形成モノマー混合物に添加した後、その混合物を硬化させて、すなわち鋳型の中でレンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成する。このポリマー材料は、得られる硬化したコンタクト・レンズを硬くするのに役立つため、レンズが鋳型からより容易に乾式離型する。
【0047】
ポリマー材料は、ガラス転移温度が少なくとも80℃だが、少なくとも100℃であることが好ましい。ポリマー材料のガラス転移は、ガラス転移温度が-50〜50℃の範囲である硬化した水和していないコンタクト・レンズと対照的である。
【0048】
ポリマー材料は、レンズ形成モノマーと混和することが好ましく、レンズ形成モノマーに溶けることが好ましい。したがってポリマー材料とレンズ形成モノマーを互いに混和させるため、好ましいポリマー材料は、レンズ形成モノマーとして用いるのと似たモノマーに由来するものにする。
【0049】
一例として、シリコーン・ヒドロゲル製レンズは、すでに言及したように、シリコーン含有レンズ形成モノマーと親水性モノマーから形成される。したがってモノマー混合物に添加するのが好ましいポリマー材料は、似たシリコーン含有モノマーをベースとしたポリマー、またはそのようなシリコーン含有モノマーと親水性モノマーのコポリマーである。
【0050】
別の一例として、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)をレンズ形成モノマーとして用いる場合には、モノマー混合物に添加するポリマー材料として、TRISのポリマー、またはTRISと親水性モノマー(例えばDMAまたはNVP)のコポリマーを用いることができる。3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート(TRIS-VC)をレンズ形成モノマーとして用いる場合には、モノマー混合物に添加するポリマー材料として、TRIS-VCのポリマー、またはTRIS-VCと親水性モノマー(例えばNVP)のコポリマーを用いることができる。
【0051】
DMA、および/またはNVP、および/またはTRIS、および/またはTRIS-VCだけに由来する例示したこれらのポリマーは、すべて非常に硬く、高いガラス転移温度(Tg)を持つ。一例として、これらモノマーのそれぞれに由来するホモポリマーは、Tgが少なくとも80℃である。例えばポリ(DMA)はTgが89℃であり、ポリ(NVP)はTgが170℃である。
【0052】
TRISまたはTRIS-VCのポリマー(またはコポリマー)をあらかじめ重合した後にレンズ形成モノマー混合物に添加するため、そのポリマーは、レンズ形成モノマーと反応するエチレン基をもはや大量には含んでいない。言い換えるならば、このポリマー材料にはエチレン型不飽和が欠けている。
【0053】
それに加え、ポリマー材料とレンズ形成モノマーの混和性を改善するため、ポリマー材料の製造に用いるモノマーのモル比は、レンズ形成モノマー混合物に含まれる似たモノマーの比に近いことが好ましい。レンズ形成モノマー混合物と混和するポリマー材料を用いることにより、モノマー混合物と、そのモノマー混合物を成形して得られるレンズは、曇りまたは濁りがより少なくなる可能性が大きくなる。
【0054】
特別なポリマー材料の別の例が実施例に含まれている。ポリマー材料は、レンズ形成混合物の中に、そのレンズ形成混合物の全質量の1〜25質量%が含まれることが好ましい。この値は5〜20質量%であることがより好ましい。一般に、最少量のポリマー材料を用いること、すなわちレンズを鋳型から乾式離型させるのに十分なだけレンズの弾性率を大きくするための最少量を用いることが望ましかろう。
【0055】
言い換えるならば、Tgがより高いポリマー材料はよりガラスに近くなり、Tgがより低い材料よりも硬い。Tgがより高いポリマー材料をレンズ形成モノマー混合物に添加することにより、得られるコンタクト・レンズは、同じレンズ形成モノマー混合物からTgがより高いポリマー材料が欠けているものから調製したコンタクト・レンズよりも硬くなろう。本発明では、硬化したコンタクト・レンズ(特にシリコーン・ヒドロゲル製コンタクト・レンズ)が柔らかすぎるのであれば、コンタクト・レンズ用鋳型半体(特に後部鋳型半体)に固着する傾向があることに気づいた。レンズをより硬くすることで、レンズは鋳型半体からより容易に取り出され、実際、前部鋳型とともに残る傾向がある。コンタクト・レンズは、乾式離型法によって、すなわち鋳型からレンズを離れさせる水性媒体を必要とせずに、前部鋳型半体から容易に外すことができる。
【0056】
コンタクト・レンズをパッケージの中に密封する前と、レンズを鋳型から離した後に、レンズを水性媒体または有機媒体で抽出してレンズからポリマー材料を取り除く。抽出は、完全には重合していない可能性のあるあらゆるレンズ形成モノマー材料の除去、またはレンズ形成モノマー材料の副反応から形成されるオリゴマーの除去、またはポリマー製品に残るオリゴマーの除去にも役立つ。親水性残留材料は、水または水溶液によって抽出できるのに対し、疎水性残留材料は、一般に有機溶媒を用いた抽出と関係する。コンタクト・レンズの抽出に用いられる現在一般的な1つの有機溶媒は、水と混和する有機溶媒であるイソプロパノールである。シリコーン・ヒドロゲル製コンタクト・レンズでのそのような方法の一例が、アメリカ合衆国特許第5,260,000号(Nandu他)に見いだされる。この特許では、シリコーン・ヒドロゲル製コンタクト・レンズを、n-ノナノールまたはn-ヘキサノールを希釈剤として含むモノマー混合物から成形した後、イソプロパノールを用いて抽出することで、希釈剤のほか、反応しなかったモノマーとオリゴマーを除去する。すでに述べたように、本発明では、抽出はポリマー材料の除去にも役立つ。Tgがより高いポリマー材料を除去すると得られるコンタクト・レンズの硬さが低下し、コンタクト・レンズの装着により望ましいより低いレベルになる。
【0057】
シリコーン・ヒドロゲルの場合には、好ましい1つの抽出剤は有機溶媒(例えば低級アルカノール)である。他の適切な抽出剤として、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノールなどがある。
【0058】
抽出後、ヒドロゲル製コンタクト・レンズを水または水溶液に浸すことによって水和させる。この操作は、抽出に用いたあらゆる有機抽出剤を水で置換するのにも役立つ。
【0059】
以下の実施例は本発明の好ましいさまざまな実施態様を表わしている。説明のためのこれら実施例では、以下の略号を用いる。
TRIS:メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
TRIS-VC:3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート
NVP:N-ビニルピロリドン、
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド、
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、
HEMA-VC:メタクリルオキシエチルビニルカルボネート、
IMVT:1,4-ビス[4-(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノン
I5S4H:イソフォロンジイソシアネート(IPDI)と、Mnが4,000で末端がヒドロキシブチルであるポリジメチルシロキサン(HBPDMS)と、末端のキャップとなる2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とに由来し、IPDI:HBPDMS:HEMAが6:5:2のモル比で供給されたウレタン含有ポリシロキサン・プレポリマー、
V2D25:一般式(XII)においてdが約25であるプレポリマー、
V2D90F10:以下の一般式の化合物:
【化5】

(ただしnは約90であり、n'は約10である)。
【実施例1】
【0060】
ポリマー材料(TRIS/DMAのモル比が1:1)の調製
【0061】
容量1リットルの乾燥した三つ首丸底フラスコに、42.34g(0.100モル)のTRISと、9.91g(0.100モル)のDMAと、200mlの乾燥THFを装填した。これら内容物に30分間にわたってアルゴンを吹き込んだ。次いでVaso-64開始剤(0.2688g)を添加し、内容物をアルゴン雰囲気下で一晩にわたって還流させた後、窒素雰囲気下で3日間にわたって乾燥させた。溶媒を真空下で除去した後、生成物を回収した。かなりの収量があった。SECにより、Mn 17,995;Mw 41,032;Pd=2.28であることがわかる。
【実施例2】
【0062】
ポリマー材料(TRIS/DMAのモル比が0.7:1)の調製
【0063】
容量500mlの乾燥した三つ首丸底フラスコに、20.053g(0.0475モル)のTRISと、0.49mlのメルカプトエタノールと、6.54g(0.066モル)のDMAと、90mlの乾燥THFを装填した。これら内容物に15分間にわたって窒素を吹き込んだ。次いでVaso-64開始剤(0.142g)を添加し、内容物を窒素雰囲気下で一晩にわたって還流させた。IRスペクトルから、ビニル(1620cm-1)が残っていないことがわかった。この溶液をエーテルの中に注いで生成物を沈殿させ、その生成物を炉の中で60℃にて乾燥させた。かなりの収量があった。SECにより、Mn3500を超え;Mwが7000を超えることがわかる。
【実施例3】
【0064】
ポリマー材料(TRIS-VC/NVPのモル比が0.7:1)の調製
【0065】
容量500mlの乾燥した三つ首丸底フラスコに、20.053g(0.0475モル)のTRIS-VCと、0.49mlのメルカプトエタノールと、7.33g(0.066モル)のNVPと、90mlの乾燥THFを装填した。これら内容物に15分間にわたって窒素を吹き込んだ。次いでVaso-64開始剤(0.142g)を添加し、内容物を窒素雰囲気下で一晩にわたって還流させた。IRスペクトルを取得し、ビニル(1620cm-1)が残っていないことを確認した。この溶液をエーテルの中に注いで生成物を沈殿させ、その生成物を炉の中で60℃にて乾燥させた。
【0066】
ガラス転移温度の測定
【0067】
示差走査熱量計を用いてガラス転移温度を測定する。この方法による実施例1〜3のガラス転移温度は100℃を超えることが予想される。
【実施例4】
【0068】
コンタクト・レンズの成形
【0069】
以下の諸成分を混合することによってモノマー材料を調製した(質量部またはppmでの値を括弧の中に示す):I5S4H(60質量部);TRIS(15質量部);DMA(15質量部);HEMA(2質量部);NVP(12質量部);HEMA-VC(0.5質量部);n-ヘキサノール(10質量部);Darocur-1173開始剤(0.5質量部);IMVT(150ppm);実施例1のTRIS-DMAコポリマー(5質量部)。この混合物は少し濁っていた。この混合物を2つの部分からなるポリプロピレン製鋳型に添加し、UV光のもとで1時間にわたって硬化させた。後部鋳型半体と前部鋳型半体を分離させた後、すべてのレンズが前部鋳型半体とともに残った。
【実施例5】
【0070】
フィルムの成形
【0071】
実施例4と同じモノマー混合物をシラン処理した2枚のガラス板の間でUV光を2時間当てて硬化させた。炉の中で真空下にてノナノール希釈剤を除去した後、フィルムの弾性率を調べた。弾性率の試験は、Instron(モデル4502)装置を用い、ATSM D-1708aに従って実施した。ヒドロゲル製フィルム・サンプルはホウ酸緩衝化生理食塩水に浸した。適切なサイズのフィルム・サンプルは、ゲージ長22mm、幅4.75mm、厚さ200±50μmであり、Instron装置の締め具でサンプルを掴めるようにイヌの骨の形状になった端部をさらに備えている。このフィルムの弾性率は3213±305g/mm2であった。
【0072】
比較例1
【0073】
実施例4におけるのと同等だがTRIS-DMAコポリマーを使用していないモノマー混合物からコンタクト・レンズを成形した。後部鋳型半体と前部鋳型半体を分離させた後、レンズの66%が前部鋳型半体とともに残り、レンズの33%が後部鋳型半体とともに残った。
【0074】
モノマー混合物にTRIS-DMAコポリマーが欠けているフィルムも実施例5のようにして調製した。このフィルムは、ノナノールを除去した後、弾性率が2865±194g/mm2であった。
【0075】
これらのデータから、5%の質量部のDMA-TRISコポリマーを添加するとレンズはより硬くなり、前部鋳型半体のほうがより好まれたことがわかる。したがってレンズを乾燥状態でより容易に取り出すことができる。
【実施例6】
【0076】
コンタクト・レンズの成形
【0077】
実施例4のようにしてモノマー混合物を調製したが、実施例2のDMA/TRISコポリマーを10質量部用いた点が異なっている。モノマー混合物は透明であった。
【0078】
比較例2:コンタクト・レンズの成形
【0079】
以下の諸成分を混合することによってモノマー材料を調製した(質量部またはppmでの値を括弧の中に示す):V2D25(15質量部);TRIS-VC(55質量部);NVP(30質量部);n-ノナノール(15質量部);Darocur-1173開始剤(150ppm);IMVT(0.5質量部)。次にこの混合物を2つのポリプロピレン製鋳型半体の間で成形し、UV光のもとで硬化させた。後部鋳型半体と前部鋳型半体を分離させた後、すべてのレンズが前部鋳型半体とともに残った。次に、レンズが残ったすべての鋳型を炉の中で60℃にて乾燥させ、n-ノナノールを減らした。すべてのレンズが乾式離型によって前部鋳型半体から容易に離れた。
【0080】
比較例3:コンタクト・レンズの成形
【0081】
以下の諸成分を混合することによってモノマー材料を調製した(質量部またはppmでの値を括弧の中に示す):V2D90F10(40質量部);TRIS-VC(55質量部);NVP(30質量部);Darocur-1173開始剤(0.5質量部);IMVT(150ppm)。この混合物を2つのポリプロピレン製鋳型半体の間で成形し、UV光のもとで硬化させた。後部鋳型半体と前部鋳型半体を分離させた後、90%を超えるレンズが前部鋳型半体とともに残った。しかしレンズをその鋳型半体から乾式離型させることはできなかった。
【0082】
比較例2のモノマー混合物は、レンズに成形できて、Tgが高いポリマー材料を添加せずに鋳型半体から乾式離型させることのできるモノマー混合物の例である。この比較例3のモノマー混合物は、確実に乾式離型することのなかったコンタクト・レンズの例である。そうならなかったのは、この第2のレンズ材料のシリコーン含有量がより多いためにより柔らかくなり、したがって確実に乾式離型させる能力が損なわれたからである。
【0083】
この明細書に開示した実施態様に対してさまざまな変更が可能であることが理解されよう。したがって上記の説明が本発明を制限すると見なしてはならず、好ましい実施態様の単なる例示であると見なすべきである。当業者であれば、本発明の範囲と精神を逸脱することなく、他の構成や方法を実現できよう。さらに、当業者であれば、本発明に伴う特徴と利点の範囲と精神を逸脱することなく、他の変更を思いつくであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクト・レンズを製造する方法であって、
互いに反応する複数のレンズ形成モノマーと、そのレンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料とを含むレンズ形成混合物をコンタクト・レンズ用鋳型に添加し;
上記レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;
そのコンタクト・レンズを上記鋳型から取り出す操作を含む方法。
【請求項2】
上記ポリマー材料のガラス転移温度が少なくとも80℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ポリマー材料のガラス転移温度が少なくとも100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記ポリマー材料が、上記レンズ形成モノマーと混合したときに透明な混合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記ポリマー材料が上記レンズ形成モノマーに溶ける、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記コンタクト・レンズの弾性率が、上記ポリマー材料を除去した後よりもそのポリマー材料を除去する前のほうが大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記コンタクト・レンズを有機溶媒と接触させることによってそのコンタクト・レンズから上記ポリマー材料を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記有機溶媒が低級アルカノールを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記レンズ形成モノマーがエチレン型不飽和を含んでいてフリー・ラジカル重合による共重合が可能であり、上記ポリマー材料がエチレン型不飽和を欠いている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記レンズ形成モノマーが、親水性モノマーとシリコーン含有モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記レンズ形成モノマーが、末端に重合可能なエチレン型不飽和基でキャップをされた少なくとも1種類のポリシロキサン含有プレポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記レンズ形成モノマーが、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメートからなるグループの中から選択した少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記コンタクト・レンズが、上記ポリマー材料を除去する前に少なくとも3,000g/mm2の弾性率を持ち、そのポリマー材料を除去した後により小さな弾性率を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記ポリマー材料がコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記ポリマー材料が、親水性モノマーとシリコーン含有モノマーの重合生成物である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記ポリマー材料が、シリコーン含有モノマーと親水性モノマーのコポリマーである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記レンズ形成混合物が、そのレンズ形成混合物の全質量に対して1〜25質量%の上記ポリマー材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記レンズ形成混合物が、そのレンズ形成混合物の全質量に対して5〜20質量%の上記ポリマー材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
上記コンタクト・レンズが上記鋳型から乾燥状態で離れる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記レンズ形成混合物が、ポリマーでない非反応性の希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
コンタクト・レンズを製造する方法であって、順番に、
互いに反応する複数のレンズ形成モノマーと、そのレンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料とを含むレンズ形成混合物をコンタクト・レンズ用鋳型に添加し;
上記レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;
そのコンタクト・レンズを上記鋳型から取り出し;
そのコンタクト・レンズを水和させ、包装し、殺菌する操作を含む方法。
【請求項22】
コンタクト・レンズを製造する方法であって、順番に、
互いに反応する複数のレンズ形成モノマーと、そのレンズ形成モノマーと反応しないポリマー材料とを含むレンズ形成混合物を、後部鋳型半体と前部鋳型半体を含むコンタクト・レンズ用鋳型組立体に添加し;
上記レンズ形成モノマーを共重合させてコンタクト・レンズを形成し;
上記後部鋳型半体と上記前部鋳型半体を分離して上記コンタクト・レンズを前部鋳型半体に保持し;
その前部鋳型半体からコンタクト・レンズを乾式離型させ;
そのコンタクト・レンズを水和させ、包装し、殺菌する操作を含む方法。

【公表番号】特表2010−511532(P2010−511532A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539438(P2009−539438)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/085604
【国際公開番号】WO2008/070475
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【出願人】(509151887)
【Fターム(参考)】