説明

コンタクト及びコネクタ並びにその製造方法

【課題】複数の接点部を備え、フレッティング現象による接触抵抗の変動を考慮した構造を有するコンタクトを提供すること。
【解決手段】第1接点部及び第2接点部を少なくとも備えるコンタクトに、前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚とが互いに異なるようにメッキを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットコンタクトやピンコンタクトのようなコンタクト及びそのコンタクトを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンタクトとしては、例えば、特許文献1に開示されているように接点部が3点のもの(図9参照)や、特許文献2に開示されているように接点部が2点のもの(図10参照)がある。
【0003】
一般に、上述したコンタクトにはスズ又はスズ合金などのメッキが施されているが、かかるコンタクトは、例えば車載用コネクタなどのように振動(微摺動)が生じてしまう環境下で使用され続けると、フレッティング現象が生じてしまう問題がある。なお、フレッティング現象については、例えば、特許文献3の[0005]段落などで言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−139826号公報
【特許文献2】特開2010−123264号公報
【特許文献3】特開2009−230931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の接点部を有するコンタクトであってフレッティング現象による接触抵抗の変動を考慮した構造を有するコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1のコンタクトとして、
第1接点部及び第2接点部を少なくとも備えるコンタクトであって、
前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚とが互いに異なる
コンタクトが得られる。
【0007】
また、本発明によれば、第2のコンタクトとして、第1のコンタクトであって、
相手側コンタクトとなるピンコンタクトを所定方向に沿って受容する受容部を有する
コンタクトが得られる。
【0008】
また、本発明によれば、第3のコンタクトとして、第2のコンタクトであって、
前記コンタクトは、互いに表裏となる第1面及び第2面を有する一枚の金属中間体を折り曲げて構成されたものであり、
前記コンタクトを展開した際に、前記第1接点部及び前記第2接点部の一方は、前記金属中間体の前記第1面上に位置しており、前記第1接点部及び前記第2接点部の他方は、前記金属中間体の前記第2面上に位置している
コンタクトが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第4のコンタクトとして、第3のコンタクトであって、
前記金属中間体の前記第1面上及び前記第2面上のそれぞれに、一様にメッキが施されており、
前記第1面上のメッキ厚と前記第2面上のメッキ厚とが互いに異なっている
コンタクトが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第5のコンタクトとして、第2乃至第4のコンタクトのいずれかであって、
前記第1接点部と前記第2接点部とは、前記所定方向と直交する方向において、前記受容部に受容された前記ピンコンタクトを挟持する
コンタクトが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第6のコンタクトとして、第2のコンタクトであって、
前記受容部は、前記所定方向と直交する面内において半環毎にメッキ厚の異なる環状形状を有している
コンタクトが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第7のコンタクトとして、第1のコンタクトであって、
相手側コンタクトとなるソケットコンタクトに受容される
コンタクトが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第8のコンタクトとして、第7のコンタクトであって、
互いに表裏となるように形成された第1面及び第2面を有しており、
前記第1接点部は、前記第1面上に形成されており、
前記第2接点部は、前記第2面上に形成されている
コンタクトが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第9のコンタクトとして、第8のコンタクトであって、
前記第1面上及び前記第2面上のそれぞれに一様にメッキが施されており、
前記第1面上のメッキ厚と前記第2面上のメッキ厚とが互いに異なっている
コンタクトが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第10のコンタクトとして、第7のコンタクトであって、
前記所定方向と直交する面内において円形形状の断面を有しており、
半円における異なる厚さのメッキが施されている
コンタクトが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第11のコンタクトとして、第1乃至第10のコンタクトのいずれかであって、
前記第1接点部のメッキ厚に対する、前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率が50%以上である
コンタクトが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第12のコンタクトとして、第1乃至第10のコンタクトのいずれかであって、
前記第1接点部のメッキ厚に対する、前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率が70%以上である
コンタクトが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第1乃至第12のコンタクトのいずれかを備えるコネクタが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第1のコンタクト対として、
第1オス側接点部と第2オス側接点部とを少なくとも有するピンコンタクトと、
前記ピンコンタクトを受容する受容部を有するソケットコンタクトであって、前記ピンコンタクトが前記受容部に受容された際に前記第1オス側接点部及び前記第2オス側接点部とそれぞれ接触する第1メス側接点部と前記第2メス側接点部とを少なくとも有するソケットコンタクトと
からなるコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第1メス側接点部のメッキ厚との組み合わせは、前記第2オス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚との組み合わせと異なる
コンタクト対が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第2のコンタクト対として、第1のコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第2オス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率と、前記第1メス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1メス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率のうち、いずれか一方が50%以上である
コンタクト対が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第3のコンタクト対として、第1のコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第2オス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率と、前記第1メス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1メス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率のうち、いずれか一方が70%以上である
コンタクト対が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、コンタクトを製造する第1の方法として、
板状の金属母材に対して表裏で異なる厚みのメッキを施した後に打ち抜き加工を行って、互いに表裏となり且つ互いにメッキ厚の異なる第1面及び第2面を有する金属中間体を形成するステップと、
相手側コンタクトとなるピンコンタクトを受容する受容部内に前記第1面の一部が第1接点部として位置すると共に前記受容部内に前記第2面の一部が第2接点部として位置するように、前記金属中間体を折り曲げ加工するステップと
を備えることにより、互いにメッキ厚の異なる前記第1接点部と前記第2接点部とを有するコンタクトを製造する方法が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、コンタクトを製造する第2の方法として、コンタクトを製造する第1の方法であって、
前記金属中間体を形成するステップにおいて、前記第1面のメッキ厚に対して、前記第1面のメッキ厚と前記第2面のメッキ厚の差の絶対値の比率が50%以上となるようにメッキを施すことにより
コンタクトを製造する方法が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、コンタクトを製造する第3の方法として、コンタクトを製造する第1の方法であって、
前記金属中間体を形成するステップにおいて、前記第1面のメッキ厚に対して、前記第1面のメッキ厚と前記第2面のメッキ厚の差の絶対値の比率が70%以上となるようにメッキを施すことにより
コンタクトを製造する方法が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第1接点部及び第2接点部のメッキ厚を互いに異ならせることにより、フレッティング現象による接触抵抗の変動の時期を第1接点部と第2接点部とで異ならせることとしたため、コンタクト全体として考えた場合に極端な接触抵抗の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態によるソケットコンタクトを示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるコネクタを示す図である。
【図3】図1のソケットコンタクトの製造に係る金属板を示す部分断面図である。
【図4】図1のソケットコンタクトの製造に係る金属中間体を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態による他のソケットコンタクトとピンコンタクトを示す斜視図である。
【図6】コンタクトの接点部における振動回数と接触抵抗の関係を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態による他のソケットコンタクトを示す図である。(a)はソケットコンタクトの概略形状を示す斜視図であり、(b)は受容部におけるメッキ厚を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態によるピンコンタクトを示す図である。(a)はピンコンタクトの概略形状を示す斜視図であり、(b)は表面上のメッキ厚を模式的に示す断面図である。
【図9】接点部を3点備えた従来のソケットコンタクトを示す断面図である。
【図10】接点部を2点備えた従来のソケットコンタクトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態(以下「本実施形態」という。)について図面を使用して説明する。
【0028】
図2から理解されるように、本実施形態による金属製のソケットコンタクト10は、コネクタ30に組み込まれて、相手側コンタクトとなる金属製のピンコンタクト20と嵌合する。ピンコンタクト20は、X軸に沿って見たとき円形断面を有している(図8(a)参照)。ピンコンタクト20は、コネクタ(図示せず)の前端部分に備えられており、ケーブル(図示せず)と接続されている。ソケットコンタクト10も、ケーブルと接続されており、ソケットコンタクト10とピンコンタクト20との嵌合により、ケーブル同士が電気的に接続される。換言すれば、ソケットコンタクト10とピンコンタクト20とは互いに嵌合可能なコンタクト対をなしている。
【0029】
図1及び図2から理解されるように、ソケットコンタクト10の内部にはピンコンタクト20をX方向(所定方向)に沿って受容する受容部14が形成されている。換言すれば、本実施形態によるピンコンタクト20は、相手側コンタクトとなるソケットコンタクト10の受容部14に受容される。
【0030】
図1に示されるように、ソケットコンタクト10は、第1接点部11と、第2接点部12と、第3接点部13とを備えており、各接点部にはスズ又はスズ合金などのメッキが施されている。第2接点部12と第3接点部13は、メッキ厚が同一となるようにメッキが施されている。一方、第1接点部11は、第2接点部12及び第3接点部13とメッキ厚が異なるようにメッキが施されている。換言すれば、ソケットコンタクト10は、少なくとも2つの接点部(第1接点部11及び第2接点部12)を備えており、2つの接点部のメッキ厚は互いに異なっている。
【0031】
図1から理解されるように、ソケットコンタクト10の受容部14にピンコンタクト20が挿入されると、ピンコンタクト20の上部(+Z方向側)は第1接点部11と接触し、下部(−Z方向側)は第2接点部12及び第3接点部13と接触する。換言すれば、ソケットコンタクト10の第1接点部11と第2接点部12(第3接点部13)とは、所定方向(X方向)と直交する方向(Z方向)において、受容部14に受容されたピンコンタクト20を挟持するように構成されている。
【0032】
ソケットコンタクト10は、シート製造ステップと、メッキ施行ステップと、打ち抜き加工ステップと、折り曲げ加工ステップとを経て製造される。シート製造ステップにおいては、金属材料を原料とする板状の金属母材41を製造する。メッキ施行ステップにおいては、図3に示されるように、金属母材41の表面(第1面)42と裏面(第2面)43に異なる厚みのメッキを一様に施し、第1メッキ層44と第2メッキ層45とを備えた金属板40を形成する。図3の例では、第1メッキ層44はメッキ厚TF1を有し、第2メッキ層45はメッキ厚TF2を有しており、メッキ厚TF2<メッキ厚TF1である。即ち、第2メッキ層45は第1メッキ層44よりも薄くメッキされているが、逆に、第1メッキ層44の方を薄くメッキしてもよい。打ち抜き加工ステップにおいては、金属板40に対して連続して打ち抜き加工を行い、図4に示すような連続体50を形成する。図4から理解されるように、連続体50には、金属中間体51がY方向に連なっており、金属中間体51は、互いに表裏となり且つ互いにメッキ厚の異なる第1面42及び第2面43とを有している。
【0033】
折り曲げ加工ステップにおいては、金属中間体51を折り曲げてソケットコンタクト10を形成する。詳しくは、金属中間体51を折り曲げ軸AXの回りに折り曲げて、筒状に形成する。このとき、第1接点部11は、Z方向において第2接点部12及び第3接点部13と対向する位置に置かれる。次に、第1接点部11を筒内に折り曲げる。また、第2接点部12及び第3接点部13を筒内に向けて湾曲させる。上記の折り曲げ加工によって、ピンコンタクト20を受容する受容部14が形成される。受容部14の内部には、第2面43の一部が第1接点部11として位置すると共に、第1面42の一部が第2接点部12及び第3接点部13として位置することになる。最後に、左カットラインCL1及び右カットラインCL2を切断線として、ソケットコンタクト10を連続体50から切り離す。
【0034】
以上のように製造したソケットコンタクト10は、互いにメッキ厚の異なる第1接点部11と第2接点部12(第3接点部13)とを有している。また、第1接点部11は第2面43上に形成されており、第2接点部12及び第3接点部13は、第1面42上に形成されている。しかしながら、金属板40を打ち抜き加工する際、金属板40の表裏を逆にしてもよい。換言すれば、ソケットコンタクト10を展開した際に、第1接点部11及び第2接点部12の一方が、金属中間体51の第1面42上に位置しており、第1接点部11及び第2接点部12の他方が、第2面43上に位置していればよい。なお、1枚の金属板40からではなく、複数の金属板を組み合わせてソケットコンタクト10を製造することもできる。例えば、金属板40とは別の金属板にメッキを施して第1接点部11を形成し、金属中間体51に固定してもよい。
【0035】
本発明によるコンタクトは上述したソケットコンタクト10に限られない。例えば、図5に示すように、金属板40を矩形状に切断して折り曲げて、ソケットコンタクト10aを形成することもできる。ソケットコンタクト10aは、ソケットコンタクト10と同様に、第1接点部11a、第2接点部12a、第3接点部13a及び受容部14aを備えている。図5から理解されるように、第1接点部11aと、第2接点部12aとは金属板40の異なる面に形成されており、メッキ厚が異なるように施されている。なお、ソケットコンタクト10aを製造する際、ソケットコンタクト10と同様に金属板40の表裏それぞれに一様な厚さにメッキを施してもよいし、第1接点部11a、第2接点部12a及び第3接点部13aのそれぞれの部分だけメッキ厚が異なるようにメッキを施してもよい。
【0036】
図5に示すように、金属板40と同様に金属板(図示せず)の表裏にメッキ厚が異なるようにメッキを施して矩形状に切断して、ピンコンタクト20aを形成することもできる。ピンコンタクト20aは、互いに表裏となるように形成された第1面42a及び第2面43aを有している。第1面42aにはメッキ厚TM1のメッキが施されており、第2面43aにはメッキ厚TM2のメッキが施されている。第1面42a上には第1接点部21aが形成され、第2面43a上には第2接点部22aと第3接点部23aとが形成されている。ピンコンタクト20aをソケットコンタクト10aと嵌合させると、第1接点部(第1オス側接点部)21a、第2接点部(第2オス側接点部)22a及び第3接点部(第3オス側接点部)23aが、それぞれ、第1接点部(第1メス側接点部)11a、第2接点部(第2メス側接点部)12a及び第3接点部(第3メス側接点部)13aと接触する。
【0037】
一般に、コンタクトの接点部のメッキは振動(微摺動)によって摩耗し、その結果、接点部の接触抵抗が一時的に上昇する。詳しくは、メッキ厚が比較的薄い場合、図6において実線L1で示すように、振動回数が比較的少ない段階(振動回数=N1)で接触抵抗が初期値(R)から緩やかに増加し、接触抵抗がピーク(R1)に達した後、緩やかに低下する。一方、メッキ厚が比較的厚い場合、破線L2で示すように、振動回数が比較的大きくなってから(振動回数=N2)で接触抵抗が急激に増加し、接触抵抗がピーク(R2)に達した後、急激に低下する。換言すれば、メッキ厚に応じて、接触抵抗の一時的上昇時期が変動する。従って、本発明のように2つの接点部のメッキ厚を異ならせることにより、各接点部における接触抵抗の変動の時期をずらすことができ、コンタクト全体として考えた場合に極端な接触抵抗の上昇を抑えることができる。以上の説明から理解されるように、ピンコンタクト20aとソケットコンタクト10aの両方について接点毎に異なる厚さのメッキを施す必要はない。いずれか一方が、接点毎に異なる厚さのメッキ層を備えていればよい。
【0038】
上述したように、ピンコンタクト20aがソケットコンタクト10aの受容部14aに受容されると、ピンコンタクト20aの各接点部がソケットコンタクト10aの各接点部と接触する。このとき、第2オス側接点部22aのメッキ厚TM2と第2メス側接点部12aのメッキ厚TF1との組み合わせは、第3オス側接点部23aのメッキ厚TM2と第3メス側接点部13aのメッキ厚TF1との組み合わせと同一である。一方、第1オス側接点部21aのメッキ厚TM1と第1メス側接点部11aのメッキ厚TF2との組み合わせは、第2オス側接点部22aのメッキ厚TM2と第2メス側接点部12aのメッキ厚TF1との組み合わせと異なっている。このように、互いに接触するオス側接点部とメス側接点部のメッキ厚の組み合わせを、少なくとも2つの接触部分において異なるようにすることで、各接触部分における接触抵抗の一時的上昇時期を変えることができる。なお、各接触部分におけるオス側接点部とメス側接点部のメッキ厚の比率が同じであったとしても、メッキの厚さの組み合わせが異なっていれば、上記の効果を得ることができる。なお、2つのメッキ厚a、bの組み合わせと、2つのメッキ厚a’、b’
の組み合わせについて、a=a’かつb=b’の関係が成立しているか、又はa=b’かつb=a’の関係が成立している場合は、上記のメッキ厚の組み合わせは同一であり、いずれの関係も成立していない場合は、上記のメッキ厚の組み合わせは異なる。
【0039】
本発明は、図7に示すようなソケットコンタクト10bに適用することもできる。ソケットコンタクト10bは、環状形状の受容部14bを備えており、受容部14bには、中心線CLFの上下に、それぞれ上部半環(第1接点部)15bと下部半環(第2接点部)16bとが形成されている。上部半環15b及び下部半環16bはいずれも半環形状に形成されており、メッキが施されて、第1メッキ層17b及び第2メッキ層18bが形成されている。第1メッキ層17bと第2メッキ層18bのメッキ厚は異なっている。換言すれば、受容部14bは、X方向(所定方向)と直交する面内において半環毎にメッキ厚の異なる環状形状を有している。ソケットコンタクト10bは、X方向と直交する方向において対向する接点部を備えたピンコンタクト(図示せず)と嵌合する。当該ピンコンタクトをX軸に沿って受容部14bに挿入すると、ピンコンタクトがX軸の回りにどのような角度に傾いていても、各接点部は、それぞれメッキ厚の異なる第1メッキ層17b又は第2メッキ層18bと接触することになる。
【0040】
本発明は、図8に示されるように、ピンコンタクト20bに適用することもできる。ピンコンタクト20bは、中心線CLMの上下に、それぞれ上部半円(第1接点部)25bと下部半円(第2接点部)26bとを備えている。上部半円25b及び下部半円26bにはメッキが施されて、第1メッキ層27b及び第2メッキ層28bが形成されている。第1メッキ層27bと第2メッキ層28bのメッキ厚は異なっている。換言すれば、ピンコンタクト20bは、X方向(所定方向)と直交する面内において円形形状の断面を有しており、半円における異なる厚さのメッキが施されている。ピンコンタクト20bは、X方向と直交する方向において対向する接点部を備えたソケットコンタクト(図示せず)と嵌合する。ピンコンタクト20bを、X軸に沿って当該ソケットコンタクトに挿入すると、ソケットコンタクトがX軸の回りにどのような角度に傾いていても、ソケットコンタクトの各接点部は、それぞれメッキ厚の異なる第1メッキ層27b又は第2メッキ層28bと接触することになる。
【実施例】
【0041】
次に、具体的な例を挙げ、本発明についてより詳しく説明する。
【0042】
(実施例1〜3)
図1に示される形状を有するソケットコンタクトについて、第1接点部のメッキ厚(メッキ厚1)と第2接点部及び第3接点部のメッキ厚(メッキ厚2)の比率を変えて、ソケットコンタクト全体としての接触抵抗を測定した。
【0043】
具体的には、メッキ厚1とメッキ厚2の差(絶対値)がメッキ厚1の30%となるようにメッキを施してソケットコンタクトを作製し、実施例1のソケットコンタクトとした。また、メッキ厚1とメッキ厚2の差(絶対値)がメッキ厚1の50%となるようにメッキを施してソケットコンタクトを作製し、実施例2のソケットコンタクトとした。さらに、メッキ厚1とメッキ厚2の差(絶対値)がメッキ厚1の70%となるようにメッキを施してソケットコンタクトを作製し、実施例3のソケットコンタクトとした。なお、いずれのソケットコンタクトもSnを材料としてメッキを施した。実施例1〜3のそれぞれに対して振動を与えて、ソケットコンタクト全体としての接触抵抗の変化を測定した。実施例1〜3のそれぞれについての測定結果から、フレッティング現象によって生じる接触抵抗のピーク値と、振動を与える前の接触抵抗の初期値との差分ΔRを求めた。
【0044】
実施例1についての差分ΔRに対する実施例1〜3についての差分ΔRの比率(%)を表1に示す。表1に示されるように、実施例2及び実施例3では実施例1に比べて差分ΔRが大きく減少している。このことから、メッキ厚1とメッキ厚2の差(絶対値)をメッキ厚1の50%以上とすることで、コンタクト全体として、フレッティング現象による極端な接触抵抗の上昇を、より効果的に防止できることが分かった。また、メッキ厚1とメッキ厚2の差(絶対値)をメッキ厚1の70%以上とすることで、さらに顕著な効果が得られることが分かった。
【0045】
【表1】

【符号の説明】
【0046】
10,10a,10b ソケットコンタクト
11,11a 第1接点部(第1メス側接点部)
12,12a 第2接点部(第2メス側接点部)
13,13a 第3接点部(第3メス側接点部)
14,14a,14b 受容部
15b 上部半環(第1接点部)
16b 下部半環(第2接点部)
17b 第1メッキ層
18b 第2メッキ層
20,20a,20b ピンコンタクト
21a 第1接点部(第1オス側接点部)
22a 第2接点部(第2オス側接点部)
23a 第3接点部(第3オス側接点部)
25b 上部半円(第1接点部)
26b 下部半円(第2接点部)
27b 第1メッキ層
28b 第2メッキ層
30 コネクタ
40 金属板
41 金属母材
42,42a 表面(第1面)
43,43a 裏面(第2面)
44 第1メッキ層
45 第2メッキ層
50 連続体
51 金属中間体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接点部及び第2接点部を少なくとも備えるコンタクトであって、
前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚とが互いに異なる
コンタクト。
【請求項2】
請求項1記載のコンタクトであって、
相手側コンタクトとなるピンコンタクトを所定方向に沿って受容する受容部を有する
コンタクト。
【請求項3】
請求項2記載のコンタクトであって、
前記コンタクトは、互いに表裏となる第1面及び第2面を有する一枚の金属中間体を折り曲げて構成されたものであり、
前記コンタクトを展開した際に、前記第1接点部及び前記第2接点部の一方は、前記金属中間体の前記第1面上に位置しており、前記第1接点部及び前記第2接点部の他方は、前記金属中間体の前記第2面上に位置している
コンタクト。
【請求項4】
請求項3記載のコンタクトであって、
前記金属中間体の前記第1面上及び前記第2面上のそれぞれに、一様にメッキが施されており、
前記第1面上のメッキ厚と前記第2面上のメッキ厚とが互いに異なっている
コンタクト。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のコンタクトであって、
前記第1接点部と前記第2接点部とは、前記所定方向と直交する方向において、前記受容部に受容された前記ピンコンタクトを挟持する
コンタクト。
【請求項6】
請求項2記載のコンタクトであって、
前記受容部は、前記所定方向と直交する面内において半環毎にメッキ厚の異なる環状形状を有している
コンタクト。
【請求項7】
請求項1記載のコンタクトであって、
相手側コンタクトとなるソケットコンタクトに受容される
コンタクト。
【請求項8】
請求項7記載のコンタクトであって、
互いに表裏となるように形成された第1面及び第2面を有しており、
前記第1接点部は、前記第1面上に形成されており、
前記第2接点部は、前記第2面上に形成されている
コンタクト。
【請求項9】
請求項8記載のコンタクトであって、
前記第1面上及び前記第2面上のそれぞれに一様にメッキが施されており、
前記第1面上のメッキ厚と前記第2面上のメッキ厚とが互いに異なっている
コンタクト。
【請求項10】
請求項7記載のコンタクトであって、
前記所定方向と直交する面内において円形形状の断面を有しており、
半円における異なる厚さのメッキが施されている
コンタクト。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコンタクトであって、
前記第1接点部のメッキ厚に対する、前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率が50%以上である
コンタクト。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコンタクトであって、
前記第1接点部のメッキ厚に対する、前記第1接点部のメッキ厚と前記第2接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率が70%以上である
コンタクト。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のコンタクトを備えるコネクタ。
【請求項14】
第1オス側接点部と第2オス側接点部とを少なくとも有するピンコンタクトと、
前記ピンコンタクトを受容する受容部を有するソケットコンタクトであって、前記ピンコンタクトが前記受容部に受容された際に前記第1オス側接点部及び前記第2オス側接点部とそれぞれ接触する第1メス側接点部と前記第2メス側接点部とを少なくとも有するソケットコンタクトと
からなるコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第1メス側接点部のメッキ厚との組み合わせは、前記第2オス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚との組み合わせと異なる
コンタクト対。
【請求項15】
請求項14に記載のコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第2オス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率と、前記第1メス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1メス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率のうち、いずれか一方が50%以上である
コンタクト。
【請求項16】
請求項14に記載のコンタクト対であって、
前記第1オス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1オス側接点部のメッキ厚と前記第2オス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率と、前記第1メス側接点部のメッキ厚に対する、前記第1メス側接点部のメッキ厚と前記第2メス側接点部のメッキ厚の差の絶対値の比率のうち、いずれか一方が70%以上である
コンタクト対。
【請求項17】
板状の金属母材に対して表裏で異なる厚みのメッキを施した後に打ち抜き加工を行って、互いに表裏となり且つ互いにメッキ厚の異なる第1面及び第2面を有する金属中間体を形成するステップと、
相手側コンタクトとなるピンコンタクトを受容する受容部内に前記第1面の一部が第1接点部として位置すると共に前記受容部内に前記第2面の一部が第2接点部として位置するように、前記金属中間体を折り曲げ加工するステップと
を備えることにより、互いにメッキ厚の異なる前記第1接点部と前記第2接点部とを有するコンタクトを製造する方法。
【請求項18】
請求項17に記載のコンタクトを製造する方法であって、
前記金属中間体を形成するステップにおいて、前記第1面のメッキ厚に対して、前記第1面のメッキ厚と前記第2面のメッキ厚の差の絶対値の比率が50%以上となるようにメッキを施すことにより
コンタクトを製造する方法。
【請求項19】
請求項17に記載のコンタクトを製造する方法であって、
前記金属中間体を形成するステップにおいて、前記第1面のメッキ厚に対して、前記第1面のメッキ厚と前記第2面のメッキ厚の差の絶対値の比率が70%以上となるようにメッキを施すことにより
コンタクトを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−124112(P2012−124112A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275922(P2010−275922)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】