説明

コンバインにおける穀粒貯留量表示制御

【課題】従来のものは、穀粒タンクに半分以上貯粒しないと方向指示器が点滅しないと共に、点滅開始後から穀粒タンクが満杯になるまでの時間は圃場の収量や刈取速度、タンク容量により異なるので、トラック等の運転手にとっては、穀粒タンク内の穀粒の貯留状況を正確に把握できず、更なる改善が求められていた。
【解決手段】貯留量検出手段(39)による穀粒タンク(6)内の貯留穀粒の検出に基づいて、視認灯(10)の点灯により穀粒貯留量をコンバイン(1)の周辺作業者に知らせる制御手段(31)を設け、制御手段(31)は刈取距離検出手段による刈り取り距離の検出に基づいて、刈り取り距離が長くなるほど視認灯(10)の点滅周期を短くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの穀粒タンク内の穀粒貯留量を周辺作業者に知らせる表示制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの穀粒タンク内における穀粒の貯留高さを有段階に検出すべく、穀粒タンクの内側面に複数の貯留量検出センサを上下方向に所定間隔を隔てた状態で配置すると共に、穀粒タンクの中間部より上位に設けた貯留量検出センサが貯留穀粒を検出した時に方向指示器を一斉点滅させることにより、穀粒を移送収容するトラックの運転手等に対して、コンバインの排出時期を予告するものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004−33098号公報(第2〜5頁,図5,図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のものは、穀粒タンクに半分以上貯留しないと方向指示器が点滅しないと共に、点滅開始後から穀粒タンクが満杯になるまでの時間は刈取速度により異なるので、トラック等の運転手にとっては、穀粒タンク内の穀粒の貯留状況(貯留量)を正確に把握できず、更なる改善が求められていた。
本発明の目的は、上記従来の不具合を改善する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
機体上に脱穀処理した穀粒を一時的に貯留する穀粒タンクと、穀粒タンク内の穀粒貯留量を検出する貯留量検出手段を備えたコンバインにおいて、貯留量検出手段が設定貯留量検出後の刈り取り距離を検出する刈取距離検出手段を設け、貯留量検出手段による穀粒タンク内の貯留穀粒の検出に基づいて、視認灯の点灯により穀粒貯留量をコンバインの周辺作業者に知らせる制御手段を設け、制御手段は刈取距離検出手段による刈り取り距離の検出に基づいて、刈り取り距離が長くなるほど視認灯の点滅周期を短くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように本発明は、貯留量検出手段による穀粒タンク内の貯留穀粒の検出に基づいて、視認灯の点灯により穀粒貯留量をコンバインの周辺作業者に知らせる制御手段を設け、制御手段は刈取距離検出手段による刈り取り距離の検出に基づいて、刈り取り距離が長くなるほど視認灯の点滅周期を短くすることにより、穀粒を移送収容する運搬車の運転手等の周辺作業者は、コンバインから離れた遠方の広範囲なところからでも視認灯の点滅周期が長短に変化することにより穀粒貯留量を容易に視認することができるので、周辺作業者は穀粒タンク内に貯留される穀粒の貯留状態(貯留量)を認識しながらタイミングを見計らって運搬車を適切な穀粒の収容位置に移動させたり、待機させておくことができるようになって穀粒移送作業の作業能率が従来と比較して更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインの全体平面図であり、コンバイン1は左右一対のクローラ走行装置に支持された機体フレームの前部に穀稈を刈取り搬送する昇降自在な前処理部2、その後方一側には前処理部2から搬送された穀稈を脱穀および選別する脱穀部3を設けている。
脱穀部3の他側には運転部5、その後方には脱穀部3から搬送された選別穀粒を貯留す
る穀粒タンク6、その後方には穀粒タンク6内の穀粒を機外に排出する昇降自在に支持した排出オーガ7、脱穀部3と穀粒タンク6の後方には、排藁処理部9を設けている。
【0007】
コンバイン1には一般の車両と同様に、路上走行時等において機体の進路変更や旋回を行う時、点滅して他車に進行方向を知らせる視認灯としてのフラッシャランプ(方向指示器)10を機体の四隅に設けている。
運転部5には前処理部2および脱穀部3への伝動を断続操作する作業機・刈取クラッチレバー11、排出オーガ7への伝動を断続する穀粒排出スイッチ13、メーターパネル14を備えている。
【0008】
図2はメーターパネルの平面図であり、中央にはエンジン回転数を表示する回転計21、左側には燃料計22を含む各種警告を示すインジケータ群23、右側には穀粒タンク6の貯留量をオペレータに表示する穀粒ランプ25を含む各種作業状態を示すインジケータ群26を備えている。
また、回転計21の下部には走行距離を表示するオドメータ27を備えている。
【0009】
図3は制御ブロック図であり、制御ユニット(制御手段)31の入力側には、トランスミッション内の回転軸の回転を検出するトランスミッション回転センサ32、前処理部2の回転を無段階に変速する搬送HSTの出力軸の回転を検出する搬送HST回転センサ33、作業機・刈取クラッチレバー11の刈取クラッチ接続操作位置を検出する刈取クラッチスイッチ35および作業機クラッチ接続操作位置を検出する作業機クラッチスイッチ36、前処理部2に刈り取った穀稈が搬送されていることを検出するメインセンサ37、穀粒タンク6内に貯留した穀粒を3段階に検出する上・中・下段の貯留スイッチ(貯留量検出手段39)39H,39M,39Lと穀粒タンク6内の穀粒が満杯になったことを検出するオーバーフロースイッチ39Fを接続している。
また、制御ユニット31の出力側には、燃料カットソレノイド41、ホーン42、機体の右前後位置と左前後位置に設けたフラッシャランプ(視認灯10)10RF,10RR,10LF,10LR、運転部7に設けた上・中・下段の穀粒ランプ25H,25M,25Lを接続している。
【0010】
制御ユニット31内では、トランスミッション回転センサ32のデータを使い、エンジン始動時からの走行距離を積算しており、メインセンサ37と刈取クラッチスイッチ35と搬送HST回転センサ33と中・下段の貯留スイッチ39M,39Lにより、下段の貯留スイッチ39Lが検出後および中段の貯留スイッチ39Mが検出後の実際の作業距離を計算している(刈取距離検出手段)。
【0011】
図4は穀粒貯留制御のフローチャート、図5は穀粒貯留量表示制御のフローチャート、図6は穀粒貯留量表示制御のタイムチャート図であり、(A)は点滅周期が最大値(=B),(B)は点滅周期が最小値(=U)である。
まず、S1でオーバーフロースイッチ39Fの状態を判断して、ONしていればS2に進み、OFFならばS3に進む。
次に、S2で作業機クラッチスイッチ36の状態を判断して、ONしていればS4で燃料カットソレノイド41に出力してエンジンを停止し、ホーン42に出力してS5で上・中・下段の穀粒ランプ25H,25M,25Lに点灯出力し、フラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRに点灯出力して次に進み、OFFならばS5を経由して次に進む。
【0012】
つまり、オーバーフローセンサ39Fまで穀粒が貯留していれば、それ以上収穫作業はできないので、オペレータが作業機・刈取クラッチレバー11を操作して作業機クラッチを切断するまではエンジンを強制的に停止してホーン42で警告しつづけるとともに、作
業機クラッチを切断後も上・中・下段の穀粒ランプ25H,25M,25Lに点灯出力して穀粒タンク6内の穀粒を排出するように促す。
また、同時にフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRを点灯することにより、周辺作業者にもコンバイン1の穀粒タンク6が満杯状態であることを報知するので、トラックの運転手はコンバイン1に近い畦際までトラックを移動することを促し、全体の作業効率が増すことになる。
【0013】
次に、S3で上段貯留スイッチ39Hの状態を判断して、ONならばS6で中・下段の穀粒ランプ25M,25Lに点灯出力し、周期タイマに設定最小値Uをセットし、ONタイマに設定値TをセットしてS7に進み、OFFならばS8に進む。
次に、S7で作業機クラッチスイッチ36の状態を判断して、ONならばS9でホーン32に所定の周期とONタイムで出力し、S10で上段の穀粒ランプ25Hとフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRにS6でセットした周期UとONタイムT[図6(B)]で出力して次に進み、OFFならばS10を経由して次に進む。
【0014】
つまり、穀粒がオーバーフローセンサ39Fまでは貯留していないが上段貯留スイッチ39Hまで貯留しているので、オペレータが作業機・刈取クラッチレバー11を操作して作業機クラッチを切断するまではホーン42で警告しつづけて穀粒タンク6内の穀粒を排出するように促す。
また、同時に上段の穀粒ランプ25Hとフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRを最も短い周期Uで点滅することにより、穀粒タンク6内の穀粒を排出するように促すとともに、周辺作業者にもコンバイン1の穀粒タンク6が満杯に近い状態であることを報知するので、トラックの運転手はコンバイン1に近い畦際までトラックを移動することを促し、全体の作業効率が増すことになる。
【0015】
次に、S8で中段貯留スイッチ39Mの状態を判断して、ONならばS11に進み、OFFならばS12に進む。
次に、S11で中段貯留スイッチ39MがOFFからONに切り換わったかを判断して、YESならばS13で下段の貯留スイッチ39Lが検出してからの作業距離をリセットし、S14で下段の穀粒ランプ25Lに点灯出力してS15に進み、NOならばS14を経由してS15に進む。
次に、S12で下段貯留スイッチ39Lの状態を判断して、ONしていればS15に進み、OFFならばS16で作業距離,記憶距離,開始距離を全てリセットして次に進む。
【0016】
次に、S15を図5の穀粒貯留量表示制御で説明する。
まず、S20でメインセンサ37の状態を判断して、ONならばS21に進み、OFFならばS22で条件成立フラグをリセット、記憶距離に作業距離をセットしてS23に進む。
次に、S21で刈取クラッチスイッチ35の状態を判断して、ONならばS24に進み、OFFならばS22を経由してS23に進む。
次に、S24で搬送HST回転センサ33の状態を判断して、回転していればS25に進み、停止していればS22を経由してS23に進む。
次に、S25で条件成立フラグの状態を判断して、0ならばS26で条件成立フラグを1にセットして開始距離に現在の走行距離をセットして、S27で作業距離を走行距離−開始距離+記憶距離にセットしてS23に進み、0以外ならS27を経由してS23に進む。
【0017】
つまり、制御ユニット31はメインセンサ37、刈取クラッチスイッチ35、搬送HST回転センサ33からの入力によりコンバイン1が刈取作業中であるか否かを判断して作業距離を算出している。
また、作業を一旦中断した場合には、中段前までの作業距離を記憶距離として記憶することにより、再度作業を開始した場合には記憶距離を加えて作業距離を算出することにより正確な作業距離を計測している。
【0018】
次に、S23で作業距離の状態を判断して、設定距離L(下段貯留スイッチ39Lから中段貯留スイッチ39Mまたは中段貯留スイッチ39Mから上段貯留スイッチ39Hまで穀粒が貯留するのに必要な距離の計算値)以上ならばS28で周期にUをセットしてS29に進み、L未満ならばS30で周期にB−{(B−U)×作業距離/L}をセットしてS29に進む(Bは周期の最大値)。
【0019】
つまり、作業距離が長くなるほど周期が短くなるように、周期をセットしなおすとともに、作業距離が計算値を超えた場合はあらかじめ設定されている最小の周期Uをセットしている。
【0020】
次に、S29で周期タイマの状態を判断して、0ならばS28またはS30でセットした周期をS31で周期タイマにセットし、ONタイマにTをセットしてS32に進み、0以外ならばS32に進む。
次に、S32で現在の周期タイマ>周期−T(現在の周期タイマの時間がONタイムTの時間内)であるか否かを判断して、YES(ONタイムTの時間内)ならばS33に進み、NOならば次に進む。
次に、S33で中段貯留スイッチ39Mの状態を判断して、ONならばS34で中段の穀粒ランプ25Mとフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRにS31で設定したONタイムTで出力して次に進み、OFFならばS35で下段の穀粒ランプ25LにS31で設定したONタイムTで出力して次に進む。
【0021】
つまり、S8で中段貯留スイッチ39MがONならば、穀粒が上段貯留スイッチ39Hまでは貯留していないが中段貯留スイッチ39Mまで貯留しているので、運転部7の中段の穀粒ランプ25Mを作業距離に応じて点滅間隔を図6(A)から(B)まで小さくすることにより、オペレータにあとどれくらいの工程を刈取りできるか予想するための情報を提供する。
また、同時にフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRを穀粒ランプ25Mと同じく作業距離に応じて点滅間隔を図6(A)から(B)まで小さくすることにより周辺作業者にもコンバイン1の穀粒タンク6がどの程度貯留している状態であるかを認識できるので、トラックの運転手に対してもコンバイン1があとどれくらいの工程を刈取りできるか予想するための情報を提供するのでトラックの移動場所を予測することができ、全体の作業効率が増すことになる。
【0022】
また、S12で下段貯留スイッチ39LがONならば、穀粒が中段貯留スイッチ39Mまでは貯留していないが下段貯留スイッチ39Lまで貯留しているので、運転部7の下段の穀粒ランプ25Lを作業距離に応じて点滅間隔を図6(A)から(B)まで小さくすることにより、オペレータに穀粒タンク6内の貯留情報を提供する。
【0023】
また、収穫した穀粒を排出オーガ7により穀粒タンク6から排出すると、上・中・下段の貯留スイッチ39H,39M,39Lが全てOFFになるので、S16で作業距離,記憶距離,開始距離を全てリセットする。
【0024】
本実施例では視認灯10としてフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRを利用したが、別途専用の視認灯10を設置してもよい。
【0025】
また、下段貯留スイッチ39Lから中段貯留スイッチ39Mまでの作業距離の実測を記
憶して、中段貯留スイッチ39Mから上段貯留スイッチ39Hまでのフラッシャランプ10RF,10RR,10LF,10LRと穀粒ランプ25Mの点滅周期をセットするための計算値である作業距離Lを記憶した距離にセットしなおすことにより、点滅周期をより正確にできる。
【0026】
また、メーターパネル14内にLCD等の表示装置を設け、上段貯留スイッチ39Hまでの作業距離の実測により、コンバイン固有の穀粒タンク6収量に対する作業距離から、収穫した圃場に対する概略の収量(収穫物のでき具合)をLCDに表示することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コンバインの全体平面図である。
【図2】メーターパネルの平面図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】穀粒貯留制御のフローチャート図である。
【図5】穀粒貯留量表示制御のフローチャート図である。
【図6】穀粒貯留量表示制御のタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0028】
1 コンバイン
6 穀粒タンク
10RF フラッシャランプ(視認灯)
10RR フラッシャランプ(視認灯)
10LF フラッシャランプ(視認灯)
10LR フラッシャランプ(視認灯)
31 制御ユニット(制御手段)
39H 上段の貯留スイッチ(貯留量検出手段)
39M 中段の貯留スイッチ(貯留量検出手段)
39L 下段の貯留スイッチ(貯留量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体上に脱穀処理した穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク(6)と、穀粒タンク(6)内の穀粒貯留量を検出する貯留量検出手段(39)を備えたコンバインにおいて、
貯留量検出手段(39)が設定貯留量検出後の刈り取り距離を検出する刈取距離検出手段を設け、
貯留量検出手段(39)による穀粒タンク(6)内の貯留穀粒の検出に基づいて、視認灯(10)の点灯により穀粒貯留量をコンバイン(1)の周辺作業者に知らせる制御手段(31)を設け、
制御手段(31)は刈取距離検出手段による刈り取り距離の検出に基づいて、刈り取り距離が長くなるほど視認灯(10)の点滅周期を短くすることを特徴とするコンバインにおける穀粒貯留量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−14696(P2006−14696A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197874(P2004−197874)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】