コンバイン
【課題】 制御操作の安定性や確実性に優れるとともに、機器への負荷を確実に抑制することができる穀物搬出オーガの動作制御機能を備えたコンバインを提供する。
【解決手段】 穀物搬出オーガ17の旋回駆動部49及び駆動停止部76を操作する操作部による穀物搬出オーガ17の旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部76のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御する。
【解決手段】 穀物搬出オーガ17の旋回駆動部49及び駆動停止部76を操作する操作部による穀物搬出オーガ17の旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部76のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はそのコンバイン機体上の穀物タンクに貯留された穀物を外部に取出すための穀物搬出オーガを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物タンクからの穀物の取出しに際しては、コンバインのオーガレストに支持させた格納位置の穀物搬出オーガの先端部を、穀物運搬用トラックの荷台などの穀粒排出位置にモータなどの旋回駆動部を用いて旋回させる。そして、旋回駆動部が停止して一定時間経過後にブレーキを作動させることによって、逆起電力による駆動ユニットの破壊やシャーピン(安全ピン)の破損などを防止して穀物搬出オーガをその搬出位置で保持させるようにしている。
また、コンバインの穀物搬出が傾斜地などで行われている場合、その傾斜状態によっては穀物搬出オーガの重量によってバランスが崩れて自然旋回力が生じるために、ブレーキ稼働中の移動量が変動して目標位置から外れてしまったり、この制御に際してブレーキユニットなどに過大な負荷を生じさせたりするといった不都合があった。
そして、このようなコンバインにおける穀物搬出オーガの旋回制御に関連して例えば以下のような技術のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、穀物搬出オーガの旋回を停止維持させる旋回ブレーキ機構を備えたコンバインにおいて、前記穀物搬出オーガの旋回速度を検出する速度検出手段を設け、旋回速度に応じて旋回ブレーキ機構の作動開始タイミングを変更させるようにしたコンバインが提案されている。
【0004】
特許文献2には、穀物搬出オーガの方向転換を阻止する旋回ブレーキを設け、前記穀物搬出オーガを駆動するオーガクラッチが入状態のとき、並びに、前記オーガクラッチが切状態であっても前記排出オーガが自然旋回する角度に機体が傾いたとき、前記旋回ブレーキを制動作動させるようにしたコンバインが記載されている。
【特許文献1】特開平11−168963号公報
【特許文献2】特開平7−107848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の従来の技術のものは以下のような課題があった。
特許文献1に記載のコンバインでは、穀物搬出オーガの旋回速度に応じて旋回ブレーキ機構の作動開始タイミングを変更しているので、穀物搬出オーガの旋回速度を検出する速度検出手段の検出精度によっては、この旋回ブレーキ機構の動作結果によるフィードバックされた旋回速度に伴う予期しない振動や制御不良を生じる場合があり、制御操作の安定性や確実性に欠ける。また、旋回ブレーキ機構による制御が単にその作動開始タイミングを変えているだけなので、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合には、その遅延時間だけでは対応しきれず、完全停止までの時間が長くなったり、その制動負荷が過大となって機器へのダメージが大きくなったりしやすいという課題があった。
【0006】
また、特許文献2にコンバインでは、排出オーガ(穀物搬出オーガ)を旋回操作させる操作部の操作状態とは無関係に、排出オーガが自然旋回する角度に機体が傾いたときに旋回ブレーキを作動させるようにしているので、その時点での穀物搬出オーガの旋回速度などを反映することができず、所定の穀物搬出位置に穀物搬出オーガの先端を安定かつ確実に位置付けることができない場合があり操作性に欠けるという課題があった。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、穀物搬出オーガの旋回速度を検出するための速度検出手段などを要せず、制御操作の安定性や確実性に優れるとともに、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合でもこれに適正に対応して機器への負荷を確実に抑制することができる穀物搬出オーガの動作制御機能を備えたコンバインを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、起伏の大きい圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことのできる操作性に優れたコンバインを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御するように構成されている。
【0010】
(2)本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するように構成されている。
【0011】
(3)本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部と、上記穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、機体の傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを具備し、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御するようにしているので、穀物搬出オーガの旋回制御機構に過度の負荷をかけることなく、しかも安定かつスムーズに穀物搬出オーガをその搬出位置に位置付けることができる。また、穀物搬出オーガの旋回速度を検出するための速度検出手段などを要せず、制御操作の安定性や確実性に優れるとともに、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合でもこれに適正に対応することができる。
【0013】
本発明によれば、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、モータなどの駆動機器への負荷を適正に抑制することができる。
【0014】
また、本発明によれば、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、この制御部を介して操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御する。これによって、穀物搬出オーガの旋回制御機構に過度の負荷をかけることなく穀物搬出オーガをその搬出位置に安定的にかつスムーズに停止させることができる。また、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えるような場合でもこれに的確に対応して駆動装置にかかるダメージを最小限度に留めることができる。
【0016】
穀物搬出オーガは、コンバインに搭載された穀物タンク内から穀物を外部に搬出するための略円筒状の搬送装置である。その一端側の基部がコンバインの機体本体に立設された支持部に設けられ、その支持部を支点としてその胴部が水平旋回及び傾斜、昇降可能に支持される。そして、その先端側から内部の回転するスクリュウコンベアなどを介して穀物タンク内の穀粒が外部のトラック上などに搬出されるようになっている。
【0017】
旋回駆動部は、穀物搬出オーガの基端側を支持して穀粒の垂直搬送路を内蔵する搬送オーガを回転駆動させるための電動モータなどを備えた駆動装置である。
駆動停止部は、例えば、前記穀物搬出オーガの基端側を支持する搬送オーガの周面などをその摩擦力や、電磁気力などで制動するブレーキ機構を備えた装置である。
【0018】
制御部は、例えば、コンバインの全体動作を管理するコンピュータやシーケンサなどの制御装置の一部である。この制御部が操作部からの操作信号を取得して、予め設定された操作信号の操作パターンとこれに対応して実行される制御操作との対照関係などに基づいて旋回駆動部や駆動停止部を所定のモードで制御する。例えば、穀物搬出オーガの旋回操作時間が所定値以上となる操作パターンの場合には、穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うようなポンピングブレーキモードが設定されるようにしている。
【0019】
本実施形態のコンバインは、前記操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することもできる。これによって、穀物搬出オーガをその搬出位置に確実に位置付けることができ、その操作安定性に優れている。また、穀物搬出オーガの旋回慣性力が旋回駆動部の電動モータに衝撃的に作用するなどの不都合を解消させて、このモータやモータ保護用のシャーピンなどの破損を防止して、耐久性向上を図ることができる。
【0020】
本実施形態のコンバインは、穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを備え、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することもできる。これによって、遅延時間を適正に変化させ、モータなどの駆動機器への負荷を抑制することができる。
【0021】
オーガ位置検出部としては、例えば、リミットスイッチを多数回動軸上に配置したものや、ポテンショメータ型センサ、磁気歪検知式センサ、直線変位を直接検出するリニアポテンショメータ、ロータリエンコーダ、非接触で基準点を測定する光学式センサなどの位置センサを適用することができる。
【0022】
機体傾斜状態検出部としては、前記の位置センサを適用して水平基準面と機体面との傾斜角度や離隔量など検出するセンサなどを適用できる。この機体傾斜状態検出部には、コンバインにおける機体進行方向の傾斜角度を測定するための前後傾斜センサと、機体左右方向の傾斜角度を測定するための左右傾斜センサとの互いに直交して配置される2基のセンサなどを組み合わせて用いることができる。
【0023】
以下、本発明の実施例に係るコンバインについて図面に基づいて詳述する。図1はコンバインにおける穀物搬出オーガを制御するオーガコントローラ(制御部)の構成図、図2はコンバインの側面図、図3は同平面図である。
図2、図3において、100は本実施例のコンバイン、1は走行クローラ2を装設するコンバイン100のトラックフレーム、3はトラックフレーム1に架設する機台、4はフィードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダ、13は排藁チェン14終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒16を介して搬入する穀物タンク、17は穀物タンク15の穀粒を機外に搬出するための搬出口が水平旋回自在に設けられた穀物搬出オーガ、18は運転操作部19及び運転席20を備える運転キャビン、21は運転キャビン18下方に設けられたエンジンである。
【0024】
図1に示すようにコンバイン100の穀物搬出オーガ17の旋回、昇降、傾斜などの動作を制御するオーガコントローラ(制御部)74は、運転席20近傍に設けられたオーガ操作パネル(操作部)19aと、穀物搬出オーガ17の排出口50先端の外側面に設けられた遠隔操作ボックス(操作部)59に接続されている。
さらに制御部74には、コンバイン100の傾斜状態を検出するための傾斜センサ(機体傾斜状態検出部)101と、機体フレーム上の穀物搬出オーガ17の位置を検出するためのオーガ位置センサ(オーガ位置検出部)57とが設けられている。
制御部74はこれらのオーガ操作パネル19aや遠隔操作ボックス59などの操作部を介してそれぞれの操作信号を受信して、オーガ昇降バルブ75や、オーガ旋回モータ(旋回駆動部)49、オーガ旋回ブレーキ(駆動停止部)76、オーガクラッチ61を制御するように構成されている。
【0025】
この操作部となるオーガ操作パネル19aには、オーガ上昇スイッチ68、オーガ下降スイッチ69、オーガ左旋回スイッチ70、オーガ右旋回スイッチ71、オーガクラッチ入スイッチ72、オーガ切スイッチ73、オートスイッチ65、オートリターンスイッチ64、オートセットボリュム67などが装備されている。
また、他方の操作部となる遠隔操作ボックス59には、オーガ上昇スイッチ68、オーガ下降スイッチ69、オーガ左旋回スイッチ70、オーガ右旋回スイッチ71、オーガクラッチ入スイッチ72、オーガ切スイッチ73、オートリターンスイッチ64、エンジン緊急停止ボタン65などが装備されている。
【0026】
図4はコンバイン100の脱穀部周囲の説明図である。この図4において、符号22は機体の前後方向に軸架する軸流型の扱胴6を内設させる扱室、23は前記扱室22に穀稈を挿入する扱口、24は前記扱室22下方に張架させるクリンプ網、25は前記クリンプ網24下方に前端を臨ませて前後方向に揺動自在に支持する揺動選別盤、26、27は前記クリンプ網24の下方に上下2段に配設する選別盤25の前後フィードパン、28は前フィードパン26の後端側に上下揺動自在に設ける選別篩い線、29は後フィードパン27後端後方に連設するチャフシーブ、30はチャフシーブ29下方に配設するグレンシーブ、31は前後フィードパン2627の上下間に選別風を送給するプレファンである送塵ファン、32はチャフシーブ29とグレンシーブ30間及びグレンシーブ30下方に選別風を送給するメインの送風装置である唐箕、33は揚穀筒16に連通させて穀物タンク15に穀粒を取出す1番コンベア、34は2番物を2番還元コンベア35を介し前記選別盤25の篩い線28上方に還元する2番コンベア、36は前記選別盤25を前後及び上下に揺動させる駆動軸、37は前記選別盤25の後端上方に配設する吸排塵ファンである。こうして、前記扱胴6及び処理胴7により脱穀された穀粒を揺動選別盤25で選別し整粒のみを前記穀物タンク15に取出すと共に、排藁を排藁チェン14を介し排藁処理部13に送り込んで排藁カッタ13aによる切断後機外に排出させるように構成している。なお38は排藁チェン14の下方に配設する4番樋である。
【0027】
さらに、図4、図5、図6に示す如く、穀物タンク15の後部外側に揚穀筒16を立設させ、左側に隣接配置する脱穀部4上方にタンク15の左側上部を張り出させるもので、タンク15の左側上部に膨出部39を設け、膨出部39を脱穀部4上方に被せる状態に配設させ、タンク15の貯留容量を増大させ、該タンク15内に穀粒が貯留されたときにも左右バランスを保って、湿田での走行性能の向上が図れるように構成している。
【0028】
揚穀筒16の揚穀コンベア40下端を中継コンベア41を介し1番コンベア33に連動連結させるもので、1番コンベア33の右端を脱穀部4より右外側に突出させ、前後方向の中継コンベア41の前端に1対のベベルギヤ42を介して連動連結させている。中継コンベア41の後端には揚穀コンベア40の下端を1対のベベルギヤ(図示省略)を介し連動連結させ、平面視略L形状の中継コンベア路を形成する中継ケース43で脱穀部4と揚穀筒16間を接続させる。こうして、脱穀部4で脱穀された穀粒を穀物タンク15後部の揚穀筒16上部の投入口16aよりタンク15内に投入して貯留するように構成している。
【0029】
また、穀物タンク15底部に横送オーガ44を設け、上部の穀物搬出オーガ17と横送オーガ44の間に縦送オーガ45を取付け、脱穀部4後側位置の4番樋38とタンク15後部側壁との間の余剰空間に揚穀筒16を立設させ、タンク15の後部で縦送オーガ45と揚穀筒16とを並列状に近接させて立設させ、保守点検作業などの簡略化を図るように構成している。
【0030】
図8、図9に示す如く、穀物搬出オーガ17の後側基部を中心に前側先端部を昇降させる油圧昇降シリンダ46を設け、縦送オーガ45上端部に穀物搬出オーガ17の基部を水平軸芯回りに上下回動自在に連結させる。この縦送オーガ45の上半分を1対のギヤ47、48を介し軸芯回りに回転させる電動旋回機構であるオーガ旋回モータ49が機台3に設けられる。オーガ旋回モータ49は、縦送オーガ45の略垂直な軸芯回りに縦送オーガ45上半分及び穀物搬出オーガ17を一体回転させるもので、昇降シリンダ46の制御によって穀物搬出オーガ17先端の排出口50を昇降させると共に、オーガ旋回モータ49の制御によって穀物搬出オーガ17先端の排出口50を左右に旋回させるように構成している。
【0031】
また、オーガ旋回モータ49を支持部材51などを介し、機台3及びタンク15など本機側に固設し、オーガ旋回モータ49の駆動軸52上に設けた袋状の軸孔53を設け、駆動軸52に軸孔53を介して小径ギヤ47を軸方向及び円周方向に移動自在に嵌合させると共に、駆動軸52と小径ギヤ47の軸受部に直径方向で一体的に貫通するピン孔54を設け、ピン孔54に所定値以上のトルクが負荷されたときに破断させるためのシャーピン55を抜取自在に挿入保持させ、前記シャーピン55を介して駆動軸52と小径ギヤ47間でトルクを伝達し、縦送オーガ45の異常旋回によるオーガ旋回モータ49の破損を防止するように構成している。
【0032】
さらに、オーガ旋回モータ49上面に固設するセンサブラケット56にポテンショメータ型オーガ位置センサ57を取付け、センサ57の検出軸58を小径ギヤ47に取外し自在に連結させて、穀物搬出オーガ17の旋回位置(旋回角度)を位置センサ57で検出するように構成している。
【0033】
図10に示す如く、排出口50先端の左外側面に遠隔操作ボックス59を設けると共に、穀物搬出オーガ17を昇降及び旋回操作するクロス形オーガ操作レバー60と、各オーガ17,44,45の電磁式オーガクラッチ61の入切を行うオーガクラッチスイッチ62と、機体外側の排出位置まで旋回した穀物搬出オーガ17を自動で元のオーガレスト63位置まで戻すオートリターンスイッチ64と、エンジン21を緊急に停止させるエンジン緊急停止スイッチ65とを遠隔操作ボックス59に設けて、運転席20より離れた排出作業位置でこれらレバー60と各スイッチ62,64,65による穀物搬出オーガ17やエンジン21の操作を可能とさせるようにしている。
【0034】
また図1、図3に示す如く、運転席20近傍のオーガ操作パネル19aにも、前述同様のオーガ操作レバー60と、オーガクラッチスイッチ62、オートリターンスイッチ64を設けると共に、前記穀物搬出オーガ17を自動でオーガレスト63の収納位置から機体外側の排出位置まで旋回(オートセット)するオートセットスイッチ66と、この排出位置を任意に設定するポテンショメータ型のオートセット設定器であるオートセットボリウム67とを設けて、運転席20で穀物搬出オーガ17の各種操作を行うように構成している。
【0035】
そして図1に示すように、操作レバー60の昇降操作を検出するオーガ上昇スイッチ68及び下降スイッチ69と、操作レバー60の旋回操作を検出するオーガ左及び右旋回スイッチ70、71と、前記オーガクラッチスイッチ62の入切操作を検出するオーガクラッチ入及び切スイッチ72、73と、オートリターンスイッチ64と、エンジン緊急停止スイッチ65と、オートセットスイッチ66と、オーガ位置センサ57と、オートセットボリウム67とをマイクロコンピュータで構成するコントローラ74に接続させると共に、昇降シリンダ46を作動する電磁昇降バルブ75と、オーガ旋回モータ49と、オーガ旋回モータ49に内設させてこの回転を停止保持する駆動停止部である電磁式のオーガ旋回ブレーキ76と、電磁式オーガクラッチ61と、エンジン燃料を供給停止してエンジン21駆動を停止させるエンジン停止機構77とにコントローラ74を接続させて、穀物搬出オーガ17の自動及び手動による旋回動作を行うように構成している。なお78は前記排出口50の投口下方に延設させるビニール製など可撓性排出口カバーである。
【0036】
以上のように構成された本実施例のコンバイン100に適用される穀物搬出オーガ17の制御方法について図を参照して説明する。
図11は穀物搬出オーガ17の旋回駆動操作におけるオーガ旋回モータ49(旋回駆動部)とオーガ旋回ブレーキ76(駆動停止部)の制御パターンの一例を示す説明図である。
制御部74には運転キャビン18に設けられたオーガ操作パネル10aをオペレータが操作することによって穀物搬出オーガ17を旋回駆動させるためのオンオフ信号が図示するように出力される。
このオン信号の開始時刻(Ton)からオフ信号の開始時刻(Toff)までの継続する旋回操作時間Sに対応して、オフ信号の開始時刻(Toff)からオーガ旋回ブレーキ76の駆動が開始されるまでの遅延時間(ディレイ時間)Dが、例えば以下の図12に示すような旋回操作時間Sと遅延時間Dとの関係を用いて設定される。
【0037】
図12は実験的に設定された旋回操作時間Sに対応する最適な遅延時間Dとの関係を示したグラフである。図示するように旋回操作時間Sが0〜0.1秒まではこの旋回操作時間Sに比例してオーガ旋回ブレーキ76の遅延時間Dが0〜0.25秒まで増大する。しかし、旋回操作時間Sが0.1〜0.5秒までは遅延時間Dは一定の0.25秒で維持される。そして、旋回操作時間Sが0.5秒〜2秒の間は遅延時間Dが直線的に1秒まで増加して、旋回操作時間Sが2秒以上の場合は一定値(D=1秒)となるように設定される。
【0038】
例えば、オペレータが操作部のオーガ旋回スイッチ70、71をプッシュしている間の旋回操作時間Sが2秒である場合は、遅延時間Dは1秒に設定されることになる。こうして、図11に示すように旋回操作時間Sに対応した遅延時間Dでオーガ旋回ブレーキ76を作動させる。そして、このようなディレイ制御に引き続いて、オーガ旋回ブレーキ76を所定のポンピングブレーキ間隔K(例えばK=0.1秒)でオンオフ動作を所定のポンピング持続時間L(例えばL=1秒)に渡って繰り返すようなポンピング制御を実行することができる。これのように操作時間Sに対応するD、K、Lなどの各パラメータを設定して、旋回駆動力がオフとなってその慣性力により旋回する穀物搬出オーガ17をその所定位置にさらに安定に停止させることができる。
【0039】
図13は旋回操作時間Sに応じて設定される遅延時間Dによってオーガ旋回ブレーキ76を制御した様子を示す模式図である。図示するように、旋回操作時間S1の場合にはこれに対応した遅延時間D1によってオーガ旋回ブレーキ76が制動される。そして、これより長くなる旋回操作時間S2の場合には、図12などで規定される遅延時間D2が設定されることを示している。こうして、旋回操作時間Sに対応して設定されたオーガ旋回ブレーキ76やオーガクラッチ61などを含む駆動停止部の制御パターンが適用され、その駆動力がオフとなってもなお旋回する穀物搬出オーガ17の運動が制御されるようになっている。
【0040】
本実施例のコンバイン100は、穀物搬出オーガ17の位置を検出するオーガ位置検出部57と、機体の傾斜状態を検出する機体傾斜状態検出部101とを備えており、これによって穀物搬出オーガ17の位置と機体の傾斜状態とを判断して、穀物搬出オーガ17の駆動停止部76を作動開始させるまでの遅延時間D(遅延時間)を設定することができるようにしている。
【0041】
図14は、例えば機体の最大傾斜方向の傾斜角度θと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
図示するように、傾斜角度θがθ=0〜約7.5度の範囲では遅延時間Dが1秒から約0.25秒までの範囲で直線的に減少し、傾斜角度θが約7.5度以上となる範囲では、ほぼ一定のD=約0.25秒となる遅延時間が維持される。
こうして、本実施例のコンバイン100では、穀物搬出オーガ17の位置と機体の傾斜状態とを判断して、穀物搬出オーガ17の駆動を停止させる駆動停止部76を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことができる。
【0042】
図15は駆動停止部を制御して穀物搬出オーガを停止させる制動ルーチンのフローチャートの一例である。
ステップS1のコンバイン作動状態監視の処理では、タイマリセットなどの初期化処理がなされた後、コンバイン100におけるオーガ操作パネル10aや遠隔操作ボックス59などの操作部の操作状態や、機体傾斜角度などのデータをその時刻とともに取得する。
【0043】
ステップS2では、操作部のモニタにより旋回駆動部49の操作においてオン操作が継続中か否かがチェックされる。ここでオン操作からオフ操作へ切り換わったと判定された場合は、次のステップS3へ移行し、オン操作が継続中の場合は、再度このチェックが実行されることとなる。
ステップS3では、制御部74に内蔵するタイマに基づいて旋回駆動部49におけるオン操作が継続した時間、すなわち旋回操作時間Sが算出される。
【0044】
ステップS4では、予め設定された旋回操作時間Sとこれに対応した制御パターンとの図13、図14などに示すような対応関係から、この旋回操作時間Sに対応して実行される駆動停止部76の制御パターンを決定する。
最後のステップS5では、この決定された制御パターンにしたがって駆動停止部76が制御されることで穀物搬出オーガ17を所定位置に停止させ、制動ルーチンにリターンされる。
こうして、以上の駆動停止部76の制動ルーチンが実行されることで、旋回する穀物搬出オーガ17を安全かつ安定に制御することができる。
【0045】
また、オートセットスイッチ66操作による穀物搬出オーガ17の自動セット旋回時にあっては、オーガレスト63から機体右外側の排出作業位置まで穀物搬出オーガ17をオーガ旋回モータ49でもって旋回するもので、作業位置に近づくとき旋回速度を微速に減速し、作業位置に到達したときには即時に前記ブレーキ70を作動させて、作業位置にオーガ17を位置固定させることができる。
【0046】
操作レバー60による穀物搬出オーガ17の手動セット旋回時には、穀物搬出オーガ17の旋回速度や重力のかかる方向をオーガ位置センサ57や傾斜センサ101で検出して、オーガ旋回ブレーキ76を所定のタイミングで作動させることもできる。こうして傾斜地などで旋回操作終了後に穀物搬出オーガ17が旋回方向とは逆方向に回動する状態にあるのを検出して、適正なディレイ制御によりオーガ旋回ブレーキ76をオン(入)とさせて、穀物搬出オーガ17をその場に停止維持させる。また旋回操作終了後、穀物搬出オーガ17の逆方向の回動を検出しないときには、一定の遅延時間Dの経過後にオーガ旋回ブレーキ76をオン(入)とさせることができる。こうして、図12などに示すように、旋回操作時間Sに対応して遅延時間Dを変更させるように設定して、穀物搬出オーガ17の旋回慣性力が大となる程、遅延時間Dを長くして、大きな慣性旋回力がオーガ旋回モータ49やシャーピン55などに作用して破損させるなどの不都合を防止することができる。
【0047】
なお、オーガ旋回ブレーキ76に換えオーガクラッチ61をオフとして穀物が目標物の荷台などから零れ落ちるのを防止しても良く、またオーガ旋回ブレーキ76のオンとクラッチ61のオフの両方を同時に行う構成としても良い。
【0048】
さらに、前記操作レバー60による穀物搬出オーガ17の手動セット旋回時で、旋回操作終了後に逆方向にオーガ17が回動するときには、オーガ旋回ブレーキ76をオン(入)、オーガクラッチ61をオフ(切)とさせると共に、操作終了後の一定時間経過後も同一方向の回動を検出するとき、オーガクラッチ61のみをオフ(切)とさせることもできる。これによって、オーガ17の旋回慣性力がオーガ旋回モータ49やシャーピン55などに作用するのを回避させ、また穀物搬出オーガ17が目標位置(荷台)より、例え外れても穀物搬出オーガ17の駆動停止を円滑にして穀物が零れ落ちるのを効果的に防止することができる。
【0049】
本発明は以上説明したように操作部における旋回操作時間に対応した制御パターンで穀物搬出オーガの駆動停止部を制御することを要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。例えば、本実施例では、特定の制御パラメータ(D、K、Lなど)を設定したポンピングブレーキ制御やディレイ制御について述べたが、これらのパラメータは、その時点での機体傾斜角度や穀物搬出オーガの重量、サイズによって変動するものであって、実験的にその範囲が定められるものであり、これらの数値に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインにおける制御部の構成図である。
【図2】コンバインの全体側面図である。
【図3】コンバインの全体平面図である。
【図4】脱穀部の断面説明図である。
【図5】タンク部の背面説明図である。
【図6】脱穀部の平面説明図である。
【図7】タンク部の平面図である。
【図8】縦送オーガ部の側面説明図である。
【図9】旋回モータ部の説明図である。
【図10】排出口部の説明図である。
【図11】制御パターンの説明図である。
【図12】旋回操作時間Sと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
【図13】駆動停止部の制御方法の模式図である。
【図14】傾斜角度θと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
【図15】制動ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
100 実施例のコンバイン
15 穀物タンク
17 穀物搬出オーガ
49 オーガ旋回モータ(旋回駆動部)
57 オーガ位置センサ(オーガ位置検出部)
74 オーガコントラーラ(制御部)
76 オーガ旋回ブレーキ(駆動停止部)
101 傾斜センサ(機体傾斜状態検出部)
【技術分野】
【0001】
本発明はそのコンバイン機体上の穀物タンクに貯留された穀物を外部に取出すための穀物搬出オーガを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物タンクからの穀物の取出しに際しては、コンバインのオーガレストに支持させた格納位置の穀物搬出オーガの先端部を、穀物運搬用トラックの荷台などの穀粒排出位置にモータなどの旋回駆動部を用いて旋回させる。そして、旋回駆動部が停止して一定時間経過後にブレーキを作動させることによって、逆起電力による駆動ユニットの破壊やシャーピン(安全ピン)の破損などを防止して穀物搬出オーガをその搬出位置で保持させるようにしている。
また、コンバインの穀物搬出が傾斜地などで行われている場合、その傾斜状態によっては穀物搬出オーガの重量によってバランスが崩れて自然旋回力が生じるために、ブレーキ稼働中の移動量が変動して目標位置から外れてしまったり、この制御に際してブレーキユニットなどに過大な負荷を生じさせたりするといった不都合があった。
そして、このようなコンバインにおける穀物搬出オーガの旋回制御に関連して例えば以下のような技術のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、穀物搬出オーガの旋回を停止維持させる旋回ブレーキ機構を備えたコンバインにおいて、前記穀物搬出オーガの旋回速度を検出する速度検出手段を設け、旋回速度に応じて旋回ブレーキ機構の作動開始タイミングを変更させるようにしたコンバインが提案されている。
【0004】
特許文献2には、穀物搬出オーガの方向転換を阻止する旋回ブレーキを設け、前記穀物搬出オーガを駆動するオーガクラッチが入状態のとき、並びに、前記オーガクラッチが切状態であっても前記排出オーガが自然旋回する角度に機体が傾いたとき、前記旋回ブレーキを制動作動させるようにしたコンバインが記載されている。
【特許文献1】特開平11−168963号公報
【特許文献2】特開平7−107848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の従来の技術のものは以下のような課題があった。
特許文献1に記載のコンバインでは、穀物搬出オーガの旋回速度に応じて旋回ブレーキ機構の作動開始タイミングを変更しているので、穀物搬出オーガの旋回速度を検出する速度検出手段の検出精度によっては、この旋回ブレーキ機構の動作結果によるフィードバックされた旋回速度に伴う予期しない振動や制御不良を生じる場合があり、制御操作の安定性や確実性に欠ける。また、旋回ブレーキ機構による制御が単にその作動開始タイミングを変えているだけなので、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合には、その遅延時間だけでは対応しきれず、完全停止までの時間が長くなったり、その制動負荷が過大となって機器へのダメージが大きくなったりしやすいという課題があった。
【0006】
また、特許文献2にコンバインでは、排出オーガ(穀物搬出オーガ)を旋回操作させる操作部の操作状態とは無関係に、排出オーガが自然旋回する角度に機体が傾いたときに旋回ブレーキを作動させるようにしているので、その時点での穀物搬出オーガの旋回速度などを反映することができず、所定の穀物搬出位置に穀物搬出オーガの先端を安定かつ確実に位置付けることができない場合があり操作性に欠けるという課題があった。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、穀物搬出オーガの旋回速度を検出するための速度検出手段などを要せず、制御操作の安定性や確実性に優れるとともに、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合でもこれに適正に対応して機器への負荷を確実に抑制することができる穀物搬出オーガの動作制御機能を備えたコンバインを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、起伏の大きい圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことのできる操作性に優れたコンバインを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御するように構成されている。
【0010】
(2)本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するように構成されている。
【0011】
(3)本発明のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部と、上記穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、機体の傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを具備し、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御するようにしているので、穀物搬出オーガの旋回制御機構に過度の負荷をかけることなく、しかも安定かつスムーズに穀物搬出オーガをその搬出位置に位置付けることができる。また、穀物搬出オーガの旋回速度を検出するための速度検出手段などを要せず、制御操作の安定性や確実性に優れるとともに、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えて大きくなった場合でもこれに適正に対応することができる。
【0013】
本発明によれば、操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、モータなどの駆動機器への負荷を適正に抑制することができる。
【0014】
また、本発明によれば、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態のコンバインは、穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、この制御部を介して操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御する。これによって、穀物搬出オーガの旋回制御機構に過度の負荷をかけることなく穀物搬出オーガをその搬出位置に安定的にかつスムーズに停止させることができる。また、穀物搬出オーガの旋回速度が限度を超えるような場合でもこれに的確に対応して駆動装置にかかるダメージを最小限度に留めることができる。
【0016】
穀物搬出オーガは、コンバインに搭載された穀物タンク内から穀物を外部に搬出するための略円筒状の搬送装置である。その一端側の基部がコンバインの機体本体に立設された支持部に設けられ、その支持部を支点としてその胴部が水平旋回及び傾斜、昇降可能に支持される。そして、その先端側から内部の回転するスクリュウコンベアなどを介して穀物タンク内の穀粒が外部のトラック上などに搬出されるようになっている。
【0017】
旋回駆動部は、穀物搬出オーガの基端側を支持して穀粒の垂直搬送路を内蔵する搬送オーガを回転駆動させるための電動モータなどを備えた駆動装置である。
駆動停止部は、例えば、前記穀物搬出オーガの基端側を支持する搬送オーガの周面などをその摩擦力や、電磁気力などで制動するブレーキ機構を備えた装置である。
【0018】
制御部は、例えば、コンバインの全体動作を管理するコンピュータやシーケンサなどの制御装置の一部である。この制御部が操作部からの操作信号を取得して、予め設定された操作信号の操作パターンとこれに対応して実行される制御操作との対照関係などに基づいて旋回駆動部や駆動停止部を所定のモードで制御する。例えば、穀物搬出オーガの旋回操作時間が所定値以上となる操作パターンの場合には、穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うようなポンピングブレーキモードが設定されるようにしている。
【0019】
本実施形態のコンバインは、前記操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することもできる。これによって、穀物搬出オーガをその搬出位置に確実に位置付けることができ、その操作安定性に優れている。また、穀物搬出オーガの旋回慣性力が旋回駆動部の電動モータに衝撃的に作用するなどの不都合を解消させて、このモータやモータ保護用のシャーピンなどの破損を防止して、耐久性向上を図ることができる。
【0020】
本実施形態のコンバインは、穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを備え、穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することもできる。これによって、遅延時間を適正に変化させ、モータなどの駆動機器への負荷を抑制することができる。
【0021】
オーガ位置検出部としては、例えば、リミットスイッチを多数回動軸上に配置したものや、ポテンショメータ型センサ、磁気歪検知式センサ、直線変位を直接検出するリニアポテンショメータ、ロータリエンコーダ、非接触で基準点を測定する光学式センサなどの位置センサを適用することができる。
【0022】
機体傾斜状態検出部としては、前記の位置センサを適用して水平基準面と機体面との傾斜角度や離隔量など検出するセンサなどを適用できる。この機体傾斜状態検出部には、コンバインにおける機体進行方向の傾斜角度を測定するための前後傾斜センサと、機体左右方向の傾斜角度を測定するための左右傾斜センサとの互いに直交して配置される2基のセンサなどを組み合わせて用いることができる。
【0023】
以下、本発明の実施例に係るコンバインについて図面に基づいて詳述する。図1はコンバインにおける穀物搬出オーガを制御するオーガコントローラ(制御部)の構成図、図2はコンバインの側面図、図3は同平面図である。
図2、図3において、100は本実施例のコンバイン、1は走行クローラ2を装設するコンバイン100のトラックフレーム、3はトラックフレーム1に架設する機台、4はフィードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀部、8は刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部8を昇降させる油圧シリンダ、13は排藁チェン14終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒16を介して搬入する穀物タンク、17は穀物タンク15の穀粒を機外に搬出するための搬出口が水平旋回自在に設けられた穀物搬出オーガ、18は運転操作部19及び運転席20を備える運転キャビン、21は運転キャビン18下方に設けられたエンジンである。
【0024】
図1に示すようにコンバイン100の穀物搬出オーガ17の旋回、昇降、傾斜などの動作を制御するオーガコントローラ(制御部)74は、運転席20近傍に設けられたオーガ操作パネル(操作部)19aと、穀物搬出オーガ17の排出口50先端の外側面に設けられた遠隔操作ボックス(操作部)59に接続されている。
さらに制御部74には、コンバイン100の傾斜状態を検出するための傾斜センサ(機体傾斜状態検出部)101と、機体フレーム上の穀物搬出オーガ17の位置を検出するためのオーガ位置センサ(オーガ位置検出部)57とが設けられている。
制御部74はこれらのオーガ操作パネル19aや遠隔操作ボックス59などの操作部を介してそれぞれの操作信号を受信して、オーガ昇降バルブ75や、オーガ旋回モータ(旋回駆動部)49、オーガ旋回ブレーキ(駆動停止部)76、オーガクラッチ61を制御するように構成されている。
【0025】
この操作部となるオーガ操作パネル19aには、オーガ上昇スイッチ68、オーガ下降スイッチ69、オーガ左旋回スイッチ70、オーガ右旋回スイッチ71、オーガクラッチ入スイッチ72、オーガ切スイッチ73、オートスイッチ65、オートリターンスイッチ64、オートセットボリュム67などが装備されている。
また、他方の操作部となる遠隔操作ボックス59には、オーガ上昇スイッチ68、オーガ下降スイッチ69、オーガ左旋回スイッチ70、オーガ右旋回スイッチ71、オーガクラッチ入スイッチ72、オーガ切スイッチ73、オートリターンスイッチ64、エンジン緊急停止ボタン65などが装備されている。
【0026】
図4はコンバイン100の脱穀部周囲の説明図である。この図4において、符号22は機体の前後方向に軸架する軸流型の扱胴6を内設させる扱室、23は前記扱室22に穀稈を挿入する扱口、24は前記扱室22下方に張架させるクリンプ網、25は前記クリンプ網24下方に前端を臨ませて前後方向に揺動自在に支持する揺動選別盤、26、27は前記クリンプ網24の下方に上下2段に配設する選別盤25の前後フィードパン、28は前フィードパン26の後端側に上下揺動自在に設ける選別篩い線、29は後フィードパン27後端後方に連設するチャフシーブ、30はチャフシーブ29下方に配設するグレンシーブ、31は前後フィードパン2627の上下間に選別風を送給するプレファンである送塵ファン、32はチャフシーブ29とグレンシーブ30間及びグレンシーブ30下方に選別風を送給するメインの送風装置である唐箕、33は揚穀筒16に連通させて穀物タンク15に穀粒を取出す1番コンベア、34は2番物を2番還元コンベア35を介し前記選別盤25の篩い線28上方に還元する2番コンベア、36は前記選別盤25を前後及び上下に揺動させる駆動軸、37は前記選別盤25の後端上方に配設する吸排塵ファンである。こうして、前記扱胴6及び処理胴7により脱穀された穀粒を揺動選別盤25で選別し整粒のみを前記穀物タンク15に取出すと共に、排藁を排藁チェン14を介し排藁処理部13に送り込んで排藁カッタ13aによる切断後機外に排出させるように構成している。なお38は排藁チェン14の下方に配設する4番樋である。
【0027】
さらに、図4、図5、図6に示す如く、穀物タンク15の後部外側に揚穀筒16を立設させ、左側に隣接配置する脱穀部4上方にタンク15の左側上部を張り出させるもので、タンク15の左側上部に膨出部39を設け、膨出部39を脱穀部4上方に被せる状態に配設させ、タンク15の貯留容量を増大させ、該タンク15内に穀粒が貯留されたときにも左右バランスを保って、湿田での走行性能の向上が図れるように構成している。
【0028】
揚穀筒16の揚穀コンベア40下端を中継コンベア41を介し1番コンベア33に連動連結させるもので、1番コンベア33の右端を脱穀部4より右外側に突出させ、前後方向の中継コンベア41の前端に1対のベベルギヤ42を介して連動連結させている。中継コンベア41の後端には揚穀コンベア40の下端を1対のベベルギヤ(図示省略)を介し連動連結させ、平面視略L形状の中継コンベア路を形成する中継ケース43で脱穀部4と揚穀筒16間を接続させる。こうして、脱穀部4で脱穀された穀粒を穀物タンク15後部の揚穀筒16上部の投入口16aよりタンク15内に投入して貯留するように構成している。
【0029】
また、穀物タンク15底部に横送オーガ44を設け、上部の穀物搬出オーガ17と横送オーガ44の間に縦送オーガ45を取付け、脱穀部4後側位置の4番樋38とタンク15後部側壁との間の余剰空間に揚穀筒16を立設させ、タンク15の後部で縦送オーガ45と揚穀筒16とを並列状に近接させて立設させ、保守点検作業などの簡略化を図るように構成している。
【0030】
図8、図9に示す如く、穀物搬出オーガ17の後側基部を中心に前側先端部を昇降させる油圧昇降シリンダ46を設け、縦送オーガ45上端部に穀物搬出オーガ17の基部を水平軸芯回りに上下回動自在に連結させる。この縦送オーガ45の上半分を1対のギヤ47、48を介し軸芯回りに回転させる電動旋回機構であるオーガ旋回モータ49が機台3に設けられる。オーガ旋回モータ49は、縦送オーガ45の略垂直な軸芯回りに縦送オーガ45上半分及び穀物搬出オーガ17を一体回転させるもので、昇降シリンダ46の制御によって穀物搬出オーガ17先端の排出口50を昇降させると共に、オーガ旋回モータ49の制御によって穀物搬出オーガ17先端の排出口50を左右に旋回させるように構成している。
【0031】
また、オーガ旋回モータ49を支持部材51などを介し、機台3及びタンク15など本機側に固設し、オーガ旋回モータ49の駆動軸52上に設けた袋状の軸孔53を設け、駆動軸52に軸孔53を介して小径ギヤ47を軸方向及び円周方向に移動自在に嵌合させると共に、駆動軸52と小径ギヤ47の軸受部に直径方向で一体的に貫通するピン孔54を設け、ピン孔54に所定値以上のトルクが負荷されたときに破断させるためのシャーピン55を抜取自在に挿入保持させ、前記シャーピン55を介して駆動軸52と小径ギヤ47間でトルクを伝達し、縦送オーガ45の異常旋回によるオーガ旋回モータ49の破損を防止するように構成している。
【0032】
さらに、オーガ旋回モータ49上面に固設するセンサブラケット56にポテンショメータ型オーガ位置センサ57を取付け、センサ57の検出軸58を小径ギヤ47に取外し自在に連結させて、穀物搬出オーガ17の旋回位置(旋回角度)を位置センサ57で検出するように構成している。
【0033】
図10に示す如く、排出口50先端の左外側面に遠隔操作ボックス59を設けると共に、穀物搬出オーガ17を昇降及び旋回操作するクロス形オーガ操作レバー60と、各オーガ17,44,45の電磁式オーガクラッチ61の入切を行うオーガクラッチスイッチ62と、機体外側の排出位置まで旋回した穀物搬出オーガ17を自動で元のオーガレスト63位置まで戻すオートリターンスイッチ64と、エンジン21を緊急に停止させるエンジン緊急停止スイッチ65とを遠隔操作ボックス59に設けて、運転席20より離れた排出作業位置でこれらレバー60と各スイッチ62,64,65による穀物搬出オーガ17やエンジン21の操作を可能とさせるようにしている。
【0034】
また図1、図3に示す如く、運転席20近傍のオーガ操作パネル19aにも、前述同様のオーガ操作レバー60と、オーガクラッチスイッチ62、オートリターンスイッチ64を設けると共に、前記穀物搬出オーガ17を自動でオーガレスト63の収納位置から機体外側の排出位置まで旋回(オートセット)するオートセットスイッチ66と、この排出位置を任意に設定するポテンショメータ型のオートセット設定器であるオートセットボリウム67とを設けて、運転席20で穀物搬出オーガ17の各種操作を行うように構成している。
【0035】
そして図1に示すように、操作レバー60の昇降操作を検出するオーガ上昇スイッチ68及び下降スイッチ69と、操作レバー60の旋回操作を検出するオーガ左及び右旋回スイッチ70、71と、前記オーガクラッチスイッチ62の入切操作を検出するオーガクラッチ入及び切スイッチ72、73と、オートリターンスイッチ64と、エンジン緊急停止スイッチ65と、オートセットスイッチ66と、オーガ位置センサ57と、オートセットボリウム67とをマイクロコンピュータで構成するコントローラ74に接続させると共に、昇降シリンダ46を作動する電磁昇降バルブ75と、オーガ旋回モータ49と、オーガ旋回モータ49に内設させてこの回転を停止保持する駆動停止部である電磁式のオーガ旋回ブレーキ76と、電磁式オーガクラッチ61と、エンジン燃料を供給停止してエンジン21駆動を停止させるエンジン停止機構77とにコントローラ74を接続させて、穀物搬出オーガ17の自動及び手動による旋回動作を行うように構成している。なお78は前記排出口50の投口下方に延設させるビニール製など可撓性排出口カバーである。
【0036】
以上のように構成された本実施例のコンバイン100に適用される穀物搬出オーガ17の制御方法について図を参照して説明する。
図11は穀物搬出オーガ17の旋回駆動操作におけるオーガ旋回モータ49(旋回駆動部)とオーガ旋回ブレーキ76(駆動停止部)の制御パターンの一例を示す説明図である。
制御部74には運転キャビン18に設けられたオーガ操作パネル10aをオペレータが操作することによって穀物搬出オーガ17を旋回駆動させるためのオンオフ信号が図示するように出力される。
このオン信号の開始時刻(Ton)からオフ信号の開始時刻(Toff)までの継続する旋回操作時間Sに対応して、オフ信号の開始時刻(Toff)からオーガ旋回ブレーキ76の駆動が開始されるまでの遅延時間(ディレイ時間)Dが、例えば以下の図12に示すような旋回操作時間Sと遅延時間Dとの関係を用いて設定される。
【0037】
図12は実験的に設定された旋回操作時間Sに対応する最適な遅延時間Dとの関係を示したグラフである。図示するように旋回操作時間Sが0〜0.1秒まではこの旋回操作時間Sに比例してオーガ旋回ブレーキ76の遅延時間Dが0〜0.25秒まで増大する。しかし、旋回操作時間Sが0.1〜0.5秒までは遅延時間Dは一定の0.25秒で維持される。そして、旋回操作時間Sが0.5秒〜2秒の間は遅延時間Dが直線的に1秒まで増加して、旋回操作時間Sが2秒以上の場合は一定値(D=1秒)となるように設定される。
【0038】
例えば、オペレータが操作部のオーガ旋回スイッチ70、71をプッシュしている間の旋回操作時間Sが2秒である場合は、遅延時間Dは1秒に設定されることになる。こうして、図11に示すように旋回操作時間Sに対応した遅延時間Dでオーガ旋回ブレーキ76を作動させる。そして、このようなディレイ制御に引き続いて、オーガ旋回ブレーキ76を所定のポンピングブレーキ間隔K(例えばK=0.1秒)でオンオフ動作を所定のポンピング持続時間L(例えばL=1秒)に渡って繰り返すようなポンピング制御を実行することができる。これのように操作時間Sに対応するD、K、Lなどの各パラメータを設定して、旋回駆動力がオフとなってその慣性力により旋回する穀物搬出オーガ17をその所定位置にさらに安定に停止させることができる。
【0039】
図13は旋回操作時間Sに応じて設定される遅延時間Dによってオーガ旋回ブレーキ76を制御した様子を示す模式図である。図示するように、旋回操作時間S1の場合にはこれに対応した遅延時間D1によってオーガ旋回ブレーキ76が制動される。そして、これより長くなる旋回操作時間S2の場合には、図12などで規定される遅延時間D2が設定されることを示している。こうして、旋回操作時間Sに対応して設定されたオーガ旋回ブレーキ76やオーガクラッチ61などを含む駆動停止部の制御パターンが適用され、その駆動力がオフとなってもなお旋回する穀物搬出オーガ17の運動が制御されるようになっている。
【0040】
本実施例のコンバイン100は、穀物搬出オーガ17の位置を検出するオーガ位置検出部57と、機体の傾斜状態を検出する機体傾斜状態検出部101とを備えており、これによって穀物搬出オーガ17の位置と機体の傾斜状態とを判断して、穀物搬出オーガ17の駆動停止部76を作動開始させるまでの遅延時間D(遅延時間)を設定することができるようにしている。
【0041】
図14は、例えば機体の最大傾斜方向の傾斜角度θと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
図示するように、傾斜角度θがθ=0〜約7.5度の範囲では遅延時間Dが1秒から約0.25秒までの範囲で直線的に減少し、傾斜角度θが約7.5度以上となる範囲では、ほぼ一定のD=約0.25秒となる遅延時間が維持される。
こうして、本実施例のコンバイン100では、穀物搬出オーガ17の位置と機体の傾斜状態とを判断して、穀物搬出オーガ17の駆動を停止させる駆動停止部76を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御するので、圃場などの傾斜地においても穀物搬出オーガの旋回操作を安定かつ安全に行うことができる。
【0042】
図15は駆動停止部を制御して穀物搬出オーガを停止させる制動ルーチンのフローチャートの一例である。
ステップS1のコンバイン作動状態監視の処理では、タイマリセットなどの初期化処理がなされた後、コンバイン100におけるオーガ操作パネル10aや遠隔操作ボックス59などの操作部の操作状態や、機体傾斜角度などのデータをその時刻とともに取得する。
【0043】
ステップS2では、操作部のモニタにより旋回駆動部49の操作においてオン操作が継続中か否かがチェックされる。ここでオン操作からオフ操作へ切り換わったと判定された場合は、次のステップS3へ移行し、オン操作が継続中の場合は、再度このチェックが実行されることとなる。
ステップS3では、制御部74に内蔵するタイマに基づいて旋回駆動部49におけるオン操作が継続した時間、すなわち旋回操作時間Sが算出される。
【0044】
ステップS4では、予め設定された旋回操作時間Sとこれに対応した制御パターンとの図13、図14などに示すような対応関係から、この旋回操作時間Sに対応して実行される駆動停止部76の制御パターンを決定する。
最後のステップS5では、この決定された制御パターンにしたがって駆動停止部76が制御されることで穀物搬出オーガ17を所定位置に停止させ、制動ルーチンにリターンされる。
こうして、以上の駆動停止部76の制動ルーチンが実行されることで、旋回する穀物搬出オーガ17を安全かつ安定に制御することができる。
【0045】
また、オートセットスイッチ66操作による穀物搬出オーガ17の自動セット旋回時にあっては、オーガレスト63から機体右外側の排出作業位置まで穀物搬出オーガ17をオーガ旋回モータ49でもって旋回するもので、作業位置に近づくとき旋回速度を微速に減速し、作業位置に到達したときには即時に前記ブレーキ70を作動させて、作業位置にオーガ17を位置固定させることができる。
【0046】
操作レバー60による穀物搬出オーガ17の手動セット旋回時には、穀物搬出オーガ17の旋回速度や重力のかかる方向をオーガ位置センサ57や傾斜センサ101で検出して、オーガ旋回ブレーキ76を所定のタイミングで作動させることもできる。こうして傾斜地などで旋回操作終了後に穀物搬出オーガ17が旋回方向とは逆方向に回動する状態にあるのを検出して、適正なディレイ制御によりオーガ旋回ブレーキ76をオン(入)とさせて、穀物搬出オーガ17をその場に停止維持させる。また旋回操作終了後、穀物搬出オーガ17の逆方向の回動を検出しないときには、一定の遅延時間Dの経過後にオーガ旋回ブレーキ76をオン(入)とさせることができる。こうして、図12などに示すように、旋回操作時間Sに対応して遅延時間Dを変更させるように設定して、穀物搬出オーガ17の旋回慣性力が大となる程、遅延時間Dを長くして、大きな慣性旋回力がオーガ旋回モータ49やシャーピン55などに作用して破損させるなどの不都合を防止することができる。
【0047】
なお、オーガ旋回ブレーキ76に換えオーガクラッチ61をオフとして穀物が目標物の荷台などから零れ落ちるのを防止しても良く、またオーガ旋回ブレーキ76のオンとクラッチ61のオフの両方を同時に行う構成としても良い。
【0048】
さらに、前記操作レバー60による穀物搬出オーガ17の手動セット旋回時で、旋回操作終了後に逆方向にオーガ17が回動するときには、オーガ旋回ブレーキ76をオン(入)、オーガクラッチ61をオフ(切)とさせると共に、操作終了後の一定時間経過後も同一方向の回動を検出するとき、オーガクラッチ61のみをオフ(切)とさせることもできる。これによって、オーガ17の旋回慣性力がオーガ旋回モータ49やシャーピン55などに作用するのを回避させ、また穀物搬出オーガ17が目標位置(荷台)より、例え外れても穀物搬出オーガ17の駆動停止を円滑にして穀物が零れ落ちるのを効果的に防止することができる。
【0049】
本発明は以上説明したように操作部における旋回操作時間に対応した制御パターンで穀物搬出オーガの駆動停止部を制御することを要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。例えば、本実施例では、特定の制御パラメータ(D、K、Lなど)を設定したポンピングブレーキ制御やディレイ制御について述べたが、これらのパラメータは、その時点での機体傾斜角度や穀物搬出オーガの重量、サイズによって変動するものであって、実験的にその範囲が定められるものであり、これらの数値に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインにおける制御部の構成図である。
【図2】コンバインの全体側面図である。
【図3】コンバインの全体平面図である。
【図4】脱穀部の断面説明図である。
【図5】タンク部の背面説明図である。
【図6】脱穀部の平面説明図である。
【図7】タンク部の平面図である。
【図8】縦送オーガ部の側面説明図である。
【図9】旋回モータ部の説明図である。
【図10】排出口部の説明図である。
【図11】制御パターンの説明図である。
【図12】旋回操作時間Sと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
【図13】駆動停止部の制御方法の模式図である。
【図14】傾斜角度θと遅延時間Dとの関係を示したグラフである。
【図15】制動ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
100 実施例のコンバイン
15 穀物タンク
17 穀物搬出オーガ
49 オーガ旋回モータ(旋回駆動部)
57 オーガ位置センサ(オーガ位置検出部)
74 オーガコントラーラ(制御部)
76 オーガ旋回ブレーキ(駆動停止部)
101 傾斜センサ(機体傾斜状態検出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、
操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、
操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部と、上記穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、機体の傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを具備し、
穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、
操作部による穀物搬出オーガの旋回操作終了後、一定時間を経過した後に、駆動停止部のオン・オフ作動を所定の時間間隔で繰り返し行うように制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部とを具備し、
操作部による穀物搬出オーガの旋回操作時間に応じて、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
穀物タンク内の穀物を搬出すべく旋回自在に設けた穀物搬出オーガと、同穀物搬出オーガを旋回駆動させる旋回駆動部と、同穀物搬出オーガの旋回を停止させる駆動停止部と、同駆動停止部及び上記旋回駆動部を制御する制御部と、同制御部を介して上記旋回駆動部及び駆動停止部を操作する操作部と、上記穀物搬出オーガの位置を検出して制御部に出力するオーガ位置検出部と、機体の傾斜状態を検出して制御部に出力する機体傾斜状態検出部とを具備し、
穀物搬出オーガの位置と機体の傾斜状態とを判断して、駆動停止部を作動開始させるまでの遅延時間を変化させるように制御することを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−75009(P2007−75009A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267489(P2005−267489)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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