コンバイン
【課題】 左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインにおいて、穀粒貯留部の容量を減らすことなく機体の左右の重量バランスをとりやすい全面刈り可能なものにする。
【解決手段】 左右のクローラ走行装置１における踏み幅Ｈの左右外端位置と、刈取り部３における刈り幅Ｗの左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、穀粒貯留部２２の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に揚穀装置を入り込み配置してある。
【解決手段】 左右のクローラ走行装置１における踏み幅Ｈの左右外端位置と、刈取り部３における刈り幅Ｗの左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、穀粒貯留部２２の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に揚穀装置を入り込み配置してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、２〜３条の刈取りを行う少数条仕様のコンバインに係り、特には、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【０００２】
２条刈仕様のコンバインとしては、例えば、特許文献１に示されているように、左右のクローラ走行装置の踏み幅より小さい刈り幅を有する刈取り部を機体左側（脱穀装置側）に片寄せて配置し、機体左側を未刈り地として左周りに回り刈りするのが標準の刈取り形態としている。
【特許文献１】特開２００５−２１０９３８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
この構成によると、刈り幅の左端位置を機体左側のクローラ走行装置の左外端位置の近くに位置させたり、刈り幅の左端位置をクローラ走行装置の左外端位置よりも左外方に張り出すことができ、湿田で回り刈りを行う場合に、左側のクローラ走行装置を未刈り作物から離すことで、クローラ走行装置の沈下によって機体左側に盛り上がった泥土が未刈り作物の株元に及ぶことを防止できる。これによって、盛り上がった泥土による未刈り作物の押し倒しや、次に未刈り作物を刈り取る際に、株元に盛り上げられた泥土へ刈取り装置が突入することを未然に回避して、刈取り装置の早期損耗を防止することができるものとなる。
【０００４】
その反面、機体左右を未刈り地として圃場の中間を突っ切る中割り作業を行うと、右側のクローラ走行装置の右端位置が、機体左方に片寄せた刈取り部における刈り幅の右端位置よりも右側に大きくはみ出ることになる。これにより、刈り幅に３条の作物を導入しても右側のクローラ走行装置で右側の未刈り作物の株元を踏みつけて倒してしまうことになり、以後の刈取り工程での作物引起しが良好に行えなくなる。
【０００５】
この場合、左右のクローラ走行装置による踏み幅を小さくするとともに、刈取り部の刈り幅をできるだけ踏み幅に近くなるようにし、かつ、この刈取り部を走行機体の正面に位置させれば、標準的な回り刈り作業はもちろんのこと、未刈り作物の踏み倒しのない中割り作業を行うことができる、いわゆる全面刈り仕様に構成することができる。
【０００６】
しかし、左右のクローラ走行装置の踏み幅を小さくすると、機体の左右方向での安定性が低下しやすくなり、特に、脱穀装置と左右に並列配備された穀粒貯留部に穀粒が多量に貯留されると、左右の重量バランスが崩れて穀粒貯留部側に蛇行しやすくなる。もちろん、穀粒貯留部の容量を犠牲にして、貯留できる穀粒の重量を抑えれば、左右の重量バランスの悪化を抑制することが可能になるが、これでは、例えば穀粒タンク（穀粒貯留部の一例）の場合、貯留した穀粒を排出する頻度が高まって、穀粒排出のために刈取り作業を中断する時間が長くなり、収穫作業全体の能率が低下することになってしまう。
【０００７】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、穀粒貯留部の容量を減らすことなく機体の左右の重量バランスをとりやすい全面刈り可能なコンバインを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
第１の発明は、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインにおいて、
左右の前記クローラ走行装置における踏み幅の左右外端位置と、前記刈取り部における刈り幅の左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、前記穀粒貯留部の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に前記揚穀装置を入り込み配置してあることを特徴とする。
【０００９】
上記構成によると、左右のクローラ走行装置が刈り幅から横外方に大きくはみ出すことがないので、未刈り作物を踏みつけることのない中割り作業を行うことができる。
穀粒貯留部の凹部に揚穀装置を入り込ませる分、穀粒貯留部を脱穀装置側に近づけて、穀粒貯留部の重心を機体内側に寄せることができる。これによって、穀粒貯留部の横幅を小さくして穀粒貯留部の容量を減少させるようなことをしなくても、穀粒貯留部に貯留した穀粒による左右の重量バランスの悪化を抑えることができる。
【００１０】
従って、第１の発明によると、穀粒貯留部の容量を減らすことなく機体の左右の重量バランスを良好に保つことができる全面刈りが可能なコンバインを得ることができる。
【００１１】
第２の発明は、上記第１の発明において、
前記穀粒貯留部の前方に、エンジンをボンネットに収容した原動部を配置するとともに、前記穀粒貯留部の前面上半部を前方に膨出して前記原動部の上方に張り出し配置してあるものである。
【００１２】
上記構成によると、穀粒貯留部の前方に膨出して穀粒貯留部の容量の増大を図るので、膨出部に貯留された穀粒の重量は左右の重量バランスへ悪影響をおよぼすことが少なく、上記第１の発明の上記効果を助長する。
【００１３】
第３の発明は、上記第２の発明において、
箱形に形成された前記ボンネットを外方下端部の支点を中心にして機体横外方に揺動開放可能に構成するとともに、ボンネットの後端上部の角部を欠如してあるものである。
【００１４】
上記構成によると、ボンネットにおける後端上部が揺動移動するスペースが小さくなり、その分、穀粒貯留部の前面上半部に形成する膨出部の下端位置を下げて、容量の大きい膨出部を形成することができ、左右の重量バランスへ悪影響を及ぼすこと少なく、穀粒貯留部の容量の増大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１〜図４に、自脱型のコンバインの全体が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置１を備えた走行機体２の前部に、刈取り部３が上下揺動可能に連結されるとともに、走行機体２に脱穀装置４と穀粒回収部５が左右に並列して搭載され、穀粒回収部５の前方に原動部６を含む運転部７が装備された構造となっている。
【００１６】
前記刈取り部３は左右一対の引起し装置８を備え、３条の刈取りが可能な刈り幅Ｗに設定されるともに、左右の前記クローラ走行装置１における踏み幅Ｈの左右外端位置と、刈取り部３における刈り幅Ｗの左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致されて、全面刈りが可能に構成されている。これによって、図１０（イ）に示すように、通常の回り刈り作業時には２条の刈取りを行い、図１０（ロ）に示すように、中割り作業においては未刈り作物を踏むつけることなく全面刈りによる３条の刈取りを行うことが可能となっている。
【００１７】
前記原動部６は、箱形に形成されたボンネット９にエンジン１０を収容配備して構成されており、ボンネット９の上に運転座席１１が装備されている。ボンネット９は、外側下端の支点ａを中心として、横外方に揺動開放してエンジンルームを大きく露出することができるよう構成されている。
【００１８】
前記運転部７は、運転座席１１の前方に操縦塔１２およびアーチ形の固定ハンドル１３を立設するとともに、運転座席１１の機体内側にサイド操作パネル１４を配備して構成されている。操縦塔１２には操縦レバー１５が十字揺動操作可能に立設されており、操縦レバー１５の左右揺動操作によってレバー倒し方向への機体操向を行い、操縦レバー１５の前方および後方への揺動操作によって刈取り部３の下降および上昇を行うよう構成されている。サイド操作パネル１４には、前後進の切換えと前後進での無段変速を行う変速レバー１６、アクセルレバー１７、各種の操作スイッチやモニターランプ、等の電装機器１８が備えられている。
【００１９】
前記穀粒回収部５には、脱穀装置４から立設されたスクリュー式の揚穀装置２１で揚送された穀粒を貯留回収する穀粒タンク２２（穀粒貯留部に相当）と、貯留した穀粒を搬出するスクリュー式のアンローダ２３が備えられている。穀粒タンク２２は、走行機体２に固設された底ケース２２Ａとた脱着自在なタンク本体２２Ｂとから構成されており、底ケース２２Ａに対してタンク本体２２Ｂが取り外し可能に嵌合連結されている。底ケース２２Ａは板金構造で前後に向かう樋状に形成されており、この底ケース２２Ａの前壁板２２ｆと後壁板２２ｒとに亘って穀粒排出用の底スクリュー２４が回転自在に軸支されるとともに、底スクリュー２４の上方において山形断面形状の流下案内板２５が、前壁板２２ｆと後壁板２２ｒとに亘って架設固定されている。
【００２０】
前壁板２２ｆには駆動ケース２６が備えられており、この駆動ケース２６に横向きに装備された駆動軸２７と底スクリュー２４の前端とが駆動ケース２６においてベベルギヤ連動されている。駆動軸２７の機体内方端部とエンジン１０の出力軸１０ａとが伝動ベルト２８を介して巻き掛け連動されるとともに、伝動ベルト２８に作用するベルトテンション式の排出クラッチ２９の入り切り操作によって底スクリュー２４の駆動および停止が行われるようになっている。
【００２１】
前記タンク本体２２Ｂは樹脂材のブロー成形によって形成されており、図５に示すように、その上面に点検カバー３１が開閉自在に装備されるとともに、タンク前面の上部に透視窓３０が備えられ、かつ、タンク本体２２Ｂの下端部が下すぼまり形状に形成されて、底ケース２２Ａの上端開口部に挿抜可能に嵌入連結されるよう構成されている。図５〜７、および図９に示すように、タンク本体２２Ｂにおける機体内向きの側面には、上端側の一部を残して縦長の凹部３２が上下方向に沿って形成されるとともに、凹部３２の上端部からその上方箇所に亘って開口３３が形成され、この凹部３２に揚穀装置２１が入り込み配備されるとともに、前記開口３３に揚穀装置２１の上部が挿入配備されている。
【００２２】
揚穀装置２１を凹部３２に入り込み配置することにより、穀粒タンク２２を脱穀装置側
に近づけて、穀粒タンク２２の重心を機体内側に寄せることができる。この場合、図２に
示すように、左右のクローラ走行装置１における踏み幅の左右外端位置から外側に、脱穀
装置４及び穀粒タンク２２が出ているのであるが、左のクローラ走行装置１における踏み
幅の左外端位置と脱穀装置４の左外端位置との間隔Ｈ１に比べて、右のクローラ走行装置
１における踏み幅の右外端位置と穀粒タンク２２の右外端位置との間隔Ｈ２が小さいもの
になっている。
【００２３】
揚穀装置２１を凹部３２に入り込み配置することにより、揚穀装置２１の前側および後側にも穀粒貯留空間を形成して穀粒タンク２２の容量の増大が図られている。図１に示すように、タンク本体２２Ｂにおける前面の上半部が原動部６の上方に重複するように前方に膨出形成されて、穀粒タンク２２の容量が更に増大されている。
【００２４】
なお、原動部６におけるボンネット９を外側下端の支点ａ周りに揺動開放する際に、ボンネット９がタンク本体２２Ｂの前方膨出部２２ｂに干渉するのを回避するために、ボンネット９における後部上方の角部９ａは、斜めに欠如された形状に形成されている。
【００２５】
図５〜９に示すように、揚穀装置２１の上部には連結板３４が固着されており、この連結板３４の上端に備えたフック３５に、タンク本体２２Ｂの上面に装備したバックル式のクランプ金具３６を係止締結することで、下端が底ケース２２Ａに嵌入支持されたタンク本２２Ｂが所定の立ち姿勢に固定されるようになっている。前記連結板３４は、揚穀装置２１の脱穀装置側の外端に位置する縦板部３４ａと、揚穀装置２１を斜めに貫通支持する傾斜板部３４ｂとを一連に備えており、クランプ金具３６の締結作用によって機体内方に引き寄せられるタンク本体２２Ｂの上部を連結板３４に当て付け支持することで前記開口３３を閉塞するよう構成されている。連結板３４の外面周辺にはスポンジ状のシール材３７が備えられており、揚穀装置２１の上部と穀粒タンク２２Ｂとが密着状態で接続され、揚穀装置２１の上端排出口２１ａから吹き出される排出風に乗ってタンク内の埃が開口３３から漏れ出ることが防止されている。
【００２６】
前記アンローダ２３は、底ケース２２Ａの後壁板２２ｒに連結されて立設された縦送りオーガ２３Ａと、縦送りオーガ２３Ａの上端部に横支点ｘ周りに起伏揺動可能に連結された横送りオーガ２３Ｂとで構成されており、縦送りオーガ２３Ａに内装された縦スクリュー３８の下端と前記底スクリュー２４の後端とがベベルギヤ連動されるとともに、縦スクリュー３８の上端と横送りオーガ２３Ｂに内装された横スクリュー３９の基端とが、支点ｘに配備された中間スクリュー４０を介してベベルギヤ連動されている。
【００２７】
前記縦送りオーガ２３Ａは、底ケース２２Ａの後壁板２２ｒに連結された接続ケース４１に対してスクリュー軸心と同芯の縦支点ｙ周りに旋回可能に支持されるとともに、縦送りオーガ２３Ａの下端部に備えたリングギヤ４３が、電動モータ４４で駆動されるピニオンギヤ４５に咬合連動されており、電動モータ４４の正逆転駆動によってアンローダ２３全体が前記縦支点ｙ周りに正逆に旋回操作されるようになっている。
【００２８】
縦送りオーガ２３Ａと横送りオーガ２３Ｂとに亘って電動シリンダ４６が架設されており、この電動シリンダ４６の伸縮作動によって横送りオーガ２３Ｂが横支点ｘ周りに上下揺動されるようになっている。なお、横送りオーガ２３Ｂは、その長手方向中間において横折れ格納可能な２分割構造に構成されている。
【００２９】
図６〜８に示すように、前記連結板３４にはブラケット４７を介してオーガ受け４８とアンローダ用の操作部４９が装備されている。オーガ受け４８は上向きＵ形に形成されており、所定の格納位置にある前記横送りオーガ２３Ｂを受け入れて支持するよう構成されている。なお、非作業時には支持された横送りオーガ２３Ｂをゴムバンド５０で押さえ込み保持することで、機体の動揺などで横送りオーガ２３Ｂが浮動することが阻止される。
【００３０】
アンローダ用の前記操作部４９には、タンク本体２２Ｂの機体内方側の側面より脱穀装置側に突出されるとともに、タンク本体２２Ｂの前面より前方に突出しない操作ボックス５１が備えられており、この操作ボックス５１の下方に脱穀装置４の一部が入り込み配置されている。操作ボックス５１の前面上部には、前記電動モータ４４を正逆転作動させる旋回スイッチ５２が備えられるとともに、その下方には、前記電動シリンダ４６を伸縮作動させる昇降スイッチ５３が備えられており、これら旋回スイッチ５２および昇降スイッチ５３を操作することで、横送りオーガ２３Ｂを旋回および昇降させて、その先端の吐出位置を任意に変更することができるようになっている。
【００３１】
操作ボックス５１の前面右側箇所には、前記排出クラッチ２９のテンションアーム２９ａに操作ワイヤ５４を介して連係された排出クラッチレバー５５が、上下揺動操作可能に備えられて前方に突設されている。排出クラッチレバー５５をデッドポイントを越えて上方操作位置に移動することで、テンションアーム２９ａを引き上げ揺動させて排出クラッチ２９を入れ、排出クラッチレバー５５をデッドポイントを越えて下方操作位置まで移動することで、テンションアーム２９ａを下方揺動させて排出クラッチ２９を切ることができるようになっている。
【００３２】
図４に示すように、脱穀装置４は、扱胴を軸支した上部ケース４ａを穀粒タンク側を支点にして上方に揺動し、扱室を開放することが可能となっており、上方に揺動開放された上部ケース４ａに干渉しない高さに前記操作部４９が設置されている。
【００３３】
［発明の実施の別形態］
穀粒タンク２２に代えて、袋詰め用のホッパーを穀粒貯留部としてもよい。本発明は自脱型のコンバインばかりではなく、全稈投入型（普通型）のコンバインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】コンバインの側面図
【図２】コンバインの平面図
【図３】コンバインの側面図
【図４】コンバインの正面図
【図５】穀粒回収部の正面図
【図６】穀粒タンクの上部を機体内方から見た側面図
【図７】アンローダの操作部を示す平面図
【図８】排出クラッチの操作構造を示す側面図
【図９】穀粒タンクと揚穀装置の接続部を示す分解斜視図
【図１０】回り刈り作業形態（イ）と中割り作業形態（ロ）を示す機体前部の平面図
【符号の説明】
【００３５】
４ 脱穀装置
６ 原動部
９ ボンネット
９ａ 角部
１０ エンジン
２１ 揚穀装置
２２ 穀粒貯留部
３２ 凹部
ａ 支点
Ｈ 踏み幅
Ｗ 刈り幅
【技術分野】
【０００１】
本発明は、２〜３条の刈取りを行う少数条仕様のコンバインに係り、特には、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【０００２】
２条刈仕様のコンバインとしては、例えば、特許文献１に示されているように、左右のクローラ走行装置の踏み幅より小さい刈り幅を有する刈取り部を機体左側（脱穀装置側）に片寄せて配置し、機体左側を未刈り地として左周りに回り刈りするのが標準の刈取り形態としている。
【特許文献１】特開２００５−２１０９３８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
この構成によると、刈り幅の左端位置を機体左側のクローラ走行装置の左外端位置の近くに位置させたり、刈り幅の左端位置をクローラ走行装置の左外端位置よりも左外方に張り出すことができ、湿田で回り刈りを行う場合に、左側のクローラ走行装置を未刈り作物から離すことで、クローラ走行装置の沈下によって機体左側に盛り上がった泥土が未刈り作物の株元に及ぶことを防止できる。これによって、盛り上がった泥土による未刈り作物の押し倒しや、次に未刈り作物を刈り取る際に、株元に盛り上げられた泥土へ刈取り装置が突入することを未然に回避して、刈取り装置の早期損耗を防止することができるものとなる。
【０００４】
その反面、機体左右を未刈り地として圃場の中間を突っ切る中割り作業を行うと、右側のクローラ走行装置の右端位置が、機体左方に片寄せた刈取り部における刈り幅の右端位置よりも右側に大きくはみ出ることになる。これにより、刈り幅に３条の作物を導入しても右側のクローラ走行装置で右側の未刈り作物の株元を踏みつけて倒してしまうことになり、以後の刈取り工程での作物引起しが良好に行えなくなる。
【０００５】
この場合、左右のクローラ走行装置による踏み幅を小さくするとともに、刈取り部の刈り幅をできるだけ踏み幅に近くなるようにし、かつ、この刈取り部を走行機体の正面に位置させれば、標準的な回り刈り作業はもちろんのこと、未刈り作物の踏み倒しのない中割り作業を行うことができる、いわゆる全面刈り仕様に構成することができる。
【０００６】
しかし、左右のクローラ走行装置の踏み幅を小さくすると、機体の左右方向での安定性が低下しやすくなり、特に、脱穀装置と左右に並列配備された穀粒貯留部に穀粒が多量に貯留されると、左右の重量バランスが崩れて穀粒貯留部側に蛇行しやすくなる。もちろん、穀粒貯留部の容量を犠牲にして、貯留できる穀粒の重量を抑えれば、左右の重量バランスの悪化を抑制することが可能になるが、これでは、例えば穀粒タンク（穀粒貯留部の一例）の場合、貯留した穀粒を排出する頻度が高まって、穀粒排出のために刈取り作業を中断する時間が長くなり、収穫作業全体の能率が低下することになってしまう。
【０００７】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、穀粒貯留部の容量を減らすことなく機体の左右の重量バランスをとりやすい全面刈り可能なコンバインを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
第１の発明は、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインにおいて、
左右の前記クローラ走行装置における踏み幅の左右外端位置と、前記刈取り部における刈り幅の左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、前記穀粒貯留部の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に前記揚穀装置を入り込み配置してあることを特徴とする。
【０００９】
上記構成によると、左右のクローラ走行装置が刈り幅から横外方に大きくはみ出すことがないので、未刈り作物を踏みつけることのない中割り作業を行うことができる。
穀粒貯留部の凹部に揚穀装置を入り込ませる分、穀粒貯留部を脱穀装置側に近づけて、穀粒貯留部の重心を機体内側に寄せることができる。これによって、穀粒貯留部の横幅を小さくして穀粒貯留部の容量を減少させるようなことをしなくても、穀粒貯留部に貯留した穀粒による左右の重量バランスの悪化を抑えることができる。
【００１０】
従って、第１の発明によると、穀粒貯留部の容量を減らすことなく機体の左右の重量バランスを良好に保つことができる全面刈りが可能なコンバインを得ることができる。
【００１１】
第２の発明は、上記第１の発明において、
前記穀粒貯留部の前方に、エンジンをボンネットに収容した原動部を配置するとともに、前記穀粒貯留部の前面上半部を前方に膨出して前記原動部の上方に張り出し配置してあるものである。
【００１２】
上記構成によると、穀粒貯留部の前方に膨出して穀粒貯留部の容量の増大を図るので、膨出部に貯留された穀粒の重量は左右の重量バランスへ悪影響をおよぼすことが少なく、上記第１の発明の上記効果を助長する。
【００１３】
第３の発明は、上記第２の発明において、
箱形に形成された前記ボンネットを外方下端部の支点を中心にして機体横外方に揺動開放可能に構成するとともに、ボンネットの後端上部の角部を欠如してあるものである。
【００１４】
上記構成によると、ボンネットにおける後端上部が揺動移動するスペースが小さくなり、その分、穀粒貯留部の前面上半部に形成する膨出部の下端位置を下げて、容量の大きい膨出部を形成することができ、左右の重量バランスへ悪影響を及ぼすこと少なく、穀粒貯留部の容量の増大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１〜図４に、自脱型のコンバインの全体が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置１を備えた走行機体２の前部に、刈取り部３が上下揺動可能に連結されるとともに、走行機体２に脱穀装置４と穀粒回収部５が左右に並列して搭載され、穀粒回収部５の前方に原動部６を含む運転部７が装備された構造となっている。
【００１６】
前記刈取り部３は左右一対の引起し装置８を備え、３条の刈取りが可能な刈り幅Ｗに設定されるともに、左右の前記クローラ走行装置１における踏み幅Ｈの左右外端位置と、刈取り部３における刈り幅Ｗの左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致されて、全面刈りが可能に構成されている。これによって、図１０（イ）に示すように、通常の回り刈り作業時には２条の刈取りを行い、図１０（ロ）に示すように、中割り作業においては未刈り作物を踏むつけることなく全面刈りによる３条の刈取りを行うことが可能となっている。
【００１７】
前記原動部６は、箱形に形成されたボンネット９にエンジン１０を収容配備して構成されており、ボンネット９の上に運転座席１１が装備されている。ボンネット９は、外側下端の支点ａを中心として、横外方に揺動開放してエンジンルームを大きく露出することができるよう構成されている。
【００１８】
前記運転部７は、運転座席１１の前方に操縦塔１２およびアーチ形の固定ハンドル１３を立設するとともに、運転座席１１の機体内側にサイド操作パネル１４を配備して構成されている。操縦塔１２には操縦レバー１５が十字揺動操作可能に立設されており、操縦レバー１５の左右揺動操作によってレバー倒し方向への機体操向を行い、操縦レバー１５の前方および後方への揺動操作によって刈取り部３の下降および上昇を行うよう構成されている。サイド操作パネル１４には、前後進の切換えと前後進での無段変速を行う変速レバー１６、アクセルレバー１７、各種の操作スイッチやモニターランプ、等の電装機器１８が備えられている。
【００１９】
前記穀粒回収部５には、脱穀装置４から立設されたスクリュー式の揚穀装置２１で揚送された穀粒を貯留回収する穀粒タンク２２（穀粒貯留部に相当）と、貯留した穀粒を搬出するスクリュー式のアンローダ２３が備えられている。穀粒タンク２２は、走行機体２に固設された底ケース２２Ａとた脱着自在なタンク本体２２Ｂとから構成されており、底ケース２２Ａに対してタンク本体２２Ｂが取り外し可能に嵌合連結されている。底ケース２２Ａは板金構造で前後に向かう樋状に形成されており、この底ケース２２Ａの前壁板２２ｆと後壁板２２ｒとに亘って穀粒排出用の底スクリュー２４が回転自在に軸支されるとともに、底スクリュー２４の上方において山形断面形状の流下案内板２５が、前壁板２２ｆと後壁板２２ｒとに亘って架設固定されている。
【００２０】
前壁板２２ｆには駆動ケース２６が備えられており、この駆動ケース２６に横向きに装備された駆動軸２７と底スクリュー２４の前端とが駆動ケース２６においてベベルギヤ連動されている。駆動軸２７の機体内方端部とエンジン１０の出力軸１０ａとが伝動ベルト２８を介して巻き掛け連動されるとともに、伝動ベルト２８に作用するベルトテンション式の排出クラッチ２９の入り切り操作によって底スクリュー２４の駆動および停止が行われるようになっている。
【００２１】
前記タンク本体２２Ｂは樹脂材のブロー成形によって形成されており、図５に示すように、その上面に点検カバー３１が開閉自在に装備されるとともに、タンク前面の上部に透視窓３０が備えられ、かつ、タンク本体２２Ｂの下端部が下すぼまり形状に形成されて、底ケース２２Ａの上端開口部に挿抜可能に嵌入連結されるよう構成されている。図５〜７、および図９に示すように、タンク本体２２Ｂにおける機体内向きの側面には、上端側の一部を残して縦長の凹部３２が上下方向に沿って形成されるとともに、凹部３２の上端部からその上方箇所に亘って開口３３が形成され、この凹部３２に揚穀装置２１が入り込み配備されるとともに、前記開口３３に揚穀装置２１の上部が挿入配備されている。
【００２２】
揚穀装置２１を凹部３２に入り込み配置することにより、穀粒タンク２２を脱穀装置側
に近づけて、穀粒タンク２２の重心を機体内側に寄せることができる。この場合、図２に
示すように、左右のクローラ走行装置１における踏み幅の左右外端位置から外側に、脱穀
装置４及び穀粒タンク２２が出ているのであるが、左のクローラ走行装置１における踏み
幅の左外端位置と脱穀装置４の左外端位置との間隔Ｈ１に比べて、右のクローラ走行装置
１における踏み幅の右外端位置と穀粒タンク２２の右外端位置との間隔Ｈ２が小さいもの
になっている。
【００２３】
揚穀装置２１を凹部３２に入り込み配置することにより、揚穀装置２１の前側および後側にも穀粒貯留空間を形成して穀粒タンク２２の容量の増大が図られている。図１に示すように、タンク本体２２Ｂにおける前面の上半部が原動部６の上方に重複するように前方に膨出形成されて、穀粒タンク２２の容量が更に増大されている。
【００２４】
なお、原動部６におけるボンネット９を外側下端の支点ａ周りに揺動開放する際に、ボンネット９がタンク本体２２Ｂの前方膨出部２２ｂに干渉するのを回避するために、ボンネット９における後部上方の角部９ａは、斜めに欠如された形状に形成されている。
【００２５】
図５〜９に示すように、揚穀装置２１の上部には連結板３４が固着されており、この連結板３４の上端に備えたフック３５に、タンク本体２２Ｂの上面に装備したバックル式のクランプ金具３６を係止締結することで、下端が底ケース２２Ａに嵌入支持されたタンク本２２Ｂが所定の立ち姿勢に固定されるようになっている。前記連結板３４は、揚穀装置２１の脱穀装置側の外端に位置する縦板部３４ａと、揚穀装置２１を斜めに貫通支持する傾斜板部３４ｂとを一連に備えており、クランプ金具３６の締結作用によって機体内方に引き寄せられるタンク本体２２Ｂの上部を連結板３４に当て付け支持することで前記開口３３を閉塞するよう構成されている。連結板３４の外面周辺にはスポンジ状のシール材３７が備えられており、揚穀装置２１の上部と穀粒タンク２２Ｂとが密着状態で接続され、揚穀装置２１の上端排出口２１ａから吹き出される排出風に乗ってタンク内の埃が開口３３から漏れ出ることが防止されている。
【００２６】
前記アンローダ２３は、底ケース２２Ａの後壁板２２ｒに連結されて立設された縦送りオーガ２３Ａと、縦送りオーガ２３Ａの上端部に横支点ｘ周りに起伏揺動可能に連結された横送りオーガ２３Ｂとで構成されており、縦送りオーガ２３Ａに内装された縦スクリュー３８の下端と前記底スクリュー２４の後端とがベベルギヤ連動されるとともに、縦スクリュー３８の上端と横送りオーガ２３Ｂに内装された横スクリュー３９の基端とが、支点ｘに配備された中間スクリュー４０を介してベベルギヤ連動されている。
【００２７】
前記縦送りオーガ２３Ａは、底ケース２２Ａの後壁板２２ｒに連結された接続ケース４１に対してスクリュー軸心と同芯の縦支点ｙ周りに旋回可能に支持されるとともに、縦送りオーガ２３Ａの下端部に備えたリングギヤ４３が、電動モータ４４で駆動されるピニオンギヤ４５に咬合連動されており、電動モータ４４の正逆転駆動によってアンローダ２３全体が前記縦支点ｙ周りに正逆に旋回操作されるようになっている。
【００２８】
縦送りオーガ２３Ａと横送りオーガ２３Ｂとに亘って電動シリンダ４６が架設されており、この電動シリンダ４６の伸縮作動によって横送りオーガ２３Ｂが横支点ｘ周りに上下揺動されるようになっている。なお、横送りオーガ２３Ｂは、その長手方向中間において横折れ格納可能な２分割構造に構成されている。
【００２９】
図６〜８に示すように、前記連結板３４にはブラケット４７を介してオーガ受け４８とアンローダ用の操作部４９が装備されている。オーガ受け４８は上向きＵ形に形成されており、所定の格納位置にある前記横送りオーガ２３Ｂを受け入れて支持するよう構成されている。なお、非作業時には支持された横送りオーガ２３Ｂをゴムバンド５０で押さえ込み保持することで、機体の動揺などで横送りオーガ２３Ｂが浮動することが阻止される。
【００３０】
アンローダ用の前記操作部４９には、タンク本体２２Ｂの機体内方側の側面より脱穀装置側に突出されるとともに、タンク本体２２Ｂの前面より前方に突出しない操作ボックス５１が備えられており、この操作ボックス５１の下方に脱穀装置４の一部が入り込み配置されている。操作ボックス５１の前面上部には、前記電動モータ４４を正逆転作動させる旋回スイッチ５２が備えられるとともに、その下方には、前記電動シリンダ４６を伸縮作動させる昇降スイッチ５３が備えられており、これら旋回スイッチ５２および昇降スイッチ５３を操作することで、横送りオーガ２３Ｂを旋回および昇降させて、その先端の吐出位置を任意に変更することができるようになっている。
【００３１】
操作ボックス５１の前面右側箇所には、前記排出クラッチ２９のテンションアーム２９ａに操作ワイヤ５４を介して連係された排出クラッチレバー５５が、上下揺動操作可能に備えられて前方に突設されている。排出クラッチレバー５５をデッドポイントを越えて上方操作位置に移動することで、テンションアーム２９ａを引き上げ揺動させて排出クラッチ２９を入れ、排出クラッチレバー５５をデッドポイントを越えて下方操作位置まで移動することで、テンションアーム２９ａを下方揺動させて排出クラッチ２９を切ることができるようになっている。
【００３２】
図４に示すように、脱穀装置４は、扱胴を軸支した上部ケース４ａを穀粒タンク側を支点にして上方に揺動し、扱室を開放することが可能となっており、上方に揺動開放された上部ケース４ａに干渉しない高さに前記操作部４９が設置されている。
【００３３】
［発明の実施の別形態］
穀粒タンク２２に代えて、袋詰め用のホッパーを穀粒貯留部としてもよい。本発明は自脱型のコンバインばかりではなく、全稈投入型（普通型）のコンバインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】コンバインの側面図
【図２】コンバインの平面図
【図３】コンバインの側面図
【図４】コンバインの正面図
【図５】穀粒回収部の正面図
【図６】穀粒タンクの上部を機体内方から見た側面図
【図７】アンローダの操作部を示す平面図
【図８】排出クラッチの操作構造を示す側面図
【図９】穀粒タンクと揚穀装置の接続部を示す分解斜視図
【図１０】回り刈り作業形態（イ）と中割り作業形態（ロ）を示す機体前部の平面図
【符号の説明】
【００３５】
４ 脱穀装置
６ 原動部
９ ボンネット
９ａ 角部
１０ エンジン
２１ 揚穀装置
２２ 穀粒貯留部
３２ 凹部
ａ 支点
Ｈ 踏み幅
Ｗ 刈り幅
【特許請求の範囲】
【請求項１】
左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインにおいて、
左右の前記クローラ走行装置における踏み幅の左右外端位置と、前記刈取り部における刈り幅の左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、前記穀粒貯留部の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に前記揚穀装置を入り込み配置してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項２】
前記穀粒貯留部の前方に、エンジンをボンネットに収容した原動部を配置するとともに、前記穀粒貯留部の前面上半部を前方に膨出して前記原動部の上方に張り出し配置してある請求項１記載のコンバイン。
【請求項３】
箱形に形成された前記ボンネットを外方下端部の支点を中心にして機体横外方に揺動開放可能に構成するとともに、ボンネットの後端上部の角部を欠如してある請求項２記載のコンバイン。
【請求項１】
左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に脱穀装置と穀粒貯留部とを左右に並列搭載し、脱穀された穀粒を脱穀装置から起立延出された揚穀装置で揚送して穀粒貯留部に投入するよう構成したコンバインにおいて、
左右の前記クローラ走行装置における踏み幅の左右外端位置と、前記刈取り部における刈り幅の左右外端位置とをそれぞれ前後に略一致させるとともに、前記穀粒貯留部の機体内側の側面に形成した縦長の凹部に前記揚穀装置を入り込み配置してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項２】
前記穀粒貯留部の前方に、エンジンをボンネットに収容した原動部を配置するとともに、前記穀粒貯留部の前面上半部を前方に膨出して前記原動部の上方に張り出し配置してある請求項１記載のコンバイン。
【請求項３】
箱形に形成された前記ボンネットを外方下端部の支点を中心にして機体横外方に揺動開放可能に構成するとともに、ボンネットの後端上部の角部を欠如してある請求項２記載のコンバイン。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２００９−１１１９４（Ｐ２００９−１１１９４Ａ）
【公開日】平成２１年１月２２日（２００９．１．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１７４１７１（Ｐ２００７−１７４１７１）
【出願日】平成１９年７月２日（２００７．７．２）
【出願人】（０００００１０５２）株式会社クボタ (4,415)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１月２２日（２００９．１．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年７月２日（２００７．７．２）
【出願人】（０００００１０５２）株式会社クボタ (4,415)
【Ｆターム（参考）】
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