説明

コンバイン

【課題】排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性を向上させることができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバイン1において、制御手段60は、操作手段の操作の開始から予め設定された設定時間T2経過するまでの間は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度になるように、各アクチュエータ35・37を制御し、設定時間T2経過以降は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度よりも速い第二の設定速度になるように、各アクチュエータ35・37を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、特にグレンタンク内の穀粒を排出する排出オーガを遠隔操作装置により無線通信を用いて操作する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀選別後の穀粒をグレンタンク内に貯溜して、その貯溜した穀粒を昇降及び旋回可能な排出オーガにより搬送して、先端部の排出口から外部に排出可能としたコンバインは公知となっている。このようなコンバインの中には、排出オーガを遠隔操作装置(リモートコントローラ)により無線通信を用いて遠隔操作して昇降及び旋回させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された技術においては、排出オーガを昇降及び旋回させるスイッチが遠隔操作装置に備えられている。これにより、作業者は、機体から離れた場所からでも、前記遠隔操作装置のスイッチを操作して、排出オーガを昇降及び旋回させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−185194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排出オーガの昇降速度及び旋回速度は、排出オーガ(排出口)の移動距離等の穀粒排出作業時の状況に応じて最適な速度が異なる。具体的には、排出オーガを昇降させたり旋回させたりして移動させる距離が短い(排出オーガの位置を微調節する)場合には、排出オーガの昇降速度及び旋回速度は遅い速度が適当である。他方、排出オーガを昇降させたり旋回させたりして移動させる距離が長い場合には、排出オーガの昇降速度及び旋回速度は速い速度が適当である。また、排出オーガを昇降させたり旋回させたりして移動させる距離が長い場合であっても、排出オーガの移動開始直後の昇降速度及び旋回速度は操作の便宜上遅い速度が適当である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、排出オーガの昇降速度及び旋回速度が一定速度に設定されているため、排出オーガを遠隔操作装置により操作する際に、作業者は排出オーガを穀粒排出作業時の状況に応じた昇降速度で昇降させ、かつ旋回速度で旋回させることができなかった。そのため、排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような現状の課題に鑑みてなされたものであり、排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性を向上させることができるコンバインを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、グレンタンク内の穀粒を外部に排出する昇降かつ旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを昇降させる昇降用アクチュエータと、前記排出オーガを旋回させる旋回用アクチュエータと、前記昇降用アクチュエータ及び前記旋回用アクチュエータ駆動用の操作手段を有し、この操作手段により前記各アクチュエータを無線通信を用いて遠隔操作する遠隔操作装置と、前記各アクチュエータを前記遠隔操作装置の操作に基づいて駆動制御する制御手段と、を備えるコンバインであって、前記制御手段は、前記操作手段の操作の開始から予め設定された設定時間経過するまでの間は、前記排出オーガの昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度になるように、前記各アクチュエータを制御し、前記設定時間経過以降は、前記排出オーガの昇降速度及び旋回速度が前記第一の設定速度よりも速い第二の設定速度になるように、前記各アクチュエータを制御するものである。
【0009】
請求項2においては、前記設定時間を変更可能とする設定時間変更手段を備えるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一の設定速度及び前記第二の設定速度を変更可能とする設定速度変更手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、遠隔操作装置を用いて操作する作業者は、排出オーガの昇降速度及び旋回速度を操作手段の操作時間に応じて段階的に変更し、排出オーガを操作手段の操作の開始直後から設定時間経過するまでの間は低速で、設定時間経過後は高速で昇降または旋回させることが可能となる。そのため、作業者は、排出オーガの位置を少しだけ調節したり微調節したりする場合には、操作手段の操作時間が短くて済むことから、排出オーガを低速で昇降または旋回させて、所望の場所へ容易に移動させることができる。一方、排出オーガの位置を大きく調節する場合には、操作手段の操作時間が比較的長くなることから、排出オーガを高速で昇降または旋回させて、所望の場所へ速やかに移動させることが可能となる。したがって、排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性を向上させることができる。
【0013】
請求項2においては、遠隔操作装置を用いて操作する作業者は、設定時間を排出オーガによる穀粒排出時の状況に応じて設定し、操作手段の操作時間により変化する排出オーガの昇降速度及び旋回速度を適切に使い分けて、排出オーガを所望の場所へ容易に移動させることが可能となる。したがって、排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性を向上させることができる。
【0014】
請求項3においては、遠隔操作装置を用いて操作する作業者は、排出オーガの昇降速度及び旋回速度を速度設定変更手段により排出オーガによる穀粒排出時の状況に応じて設定し、排出オーガを適切な昇降速度及び旋回速度で所望の場所へ容易に移動させることが可能となる。したがって、排出オーガを遠隔操作する遠隔操作装置の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガにおける縦排出オーガと横排出オーガとの連結部分の構成を示した側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガにおける横排出オーガの先端部の構成を示した側面断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御構成を示したブロック図。
【図6】本発明の一実施形態に係るコンバインの本機側操作装置の構成を示した正面図。
【図7】本発明の一実施形態に係るコンバインの遠隔操作装置の構成を示した正面図。
【図8】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガの操作に係る制御のフローチャート図。
【図9】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガにおける昇降速度及び旋回速度とボタン操作の開始からの経過時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係るコンバイン1について、図1及び図2を用いて説明する。
なお、以下において、図1における矢印Aの指す方向を機体前方向として、機体の前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を機体の左右方向と規定する。
【0017】
コンバイン1は、図1及び図2に示すように、機体フレーム10に対して、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、エンジン部8と、運転部9等とから構成される。
【0018】
走行部2は、機体フレーム10の下部に設けられる。走行部2には、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11等が設けられる。走行部2は、クローラ式走行装置11が駆動することにより機体を走行させるように構成される。
【0019】
刈取部3は、機体フレーム10の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置12と、引起装置13と、切断装置14と、搬送装置15等とから構成される。刈取部3は、分草装置12により圃場の穀稈を分草し、引起装置13により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置14により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置15により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成される。
【0020】
脱穀部4は、機体フレーム10の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェン16と、図示せぬ扱胴等とから構成される。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン16により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を前記扱胴等により脱穀し、その脱穀処理物を選別部5へ落下させるように構成される。
【0021】
選別部5は、機体フレーム10の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、脱穀部4から落下した脱穀処理物を揺動選別及び風選別により、穀粒と、穂付粒や未脱粒と、排藁と、塵埃等とに選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、穂付粒及び未脱粒等の二番物は脱穀部4へ戻すように搬送し、排藁及び塵埃等は機体の外部へ排出するように構成される。
【0022】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム10の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられる。穀粒貯溜部6は、グレンタンク17と、穀粒排出装置30等とから構成される。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒をグレンタンク17に貯溜するとともに、グレンタンク17に貯溜される穀粒を穀粒排出装置30により機体の外部へ排出するように構成される。
【0023】
排藁処理部7は、機体フレーム10の後部であって、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置や排藁切断装置等とから構成される。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を、前記排藁搬送装置で受け継いで排藁として外部へ排出し、又は前記排藁切断装置に搬送して切断した後に機体の外部へ排出するように構成される。
【0024】
エンジン部8は、機体フレーム10の右側部であって、穀粒貯溜部6の前方に設けられる。エンジン部8は、エンジン8a等を有して、エンジン8aの動力を駆動源とする各部の装置に適宜の伝達機構を介して当該エンジン8aの動力を伝達し、各部の装置を駆動させるように構成される。
【0025】
運転部9は、機体フレーム10の右側前部であって、刈取部3の搬送装置15の右側方に設けられる。運転部9は、キャビン18と、座席19と、ハンドル20と、操作ペダルや操作レバー等の操作具類と、操作パネル等とから構成される。運転部9は、キャビン18により座席19やハンドル20等が覆われるように構成される。
【0026】
このようにして、コンバイン1は、運転部9での操作具類の操作によって、エンジン部8のエンジン8aの動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を機体の外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
次に、穀粒貯溜部6のグレンタンク17及び穀粒排出装置30の構成について、図1から図4を用いてさらに詳細に説明する。
【0028】
グレンタンク17は、選別部5による選別後の穀粒を貯溜するものである。グレンタンク17は、図1及び図2に示すように、機体フレーム10上に設けられる。グレンタンク17は、脱穀部4及び選別部5の右側方であって、運転部9の後方に配置される。グレンタンク17は、その後部が穀粒排出装置30の一部(排出オーガ32の縦排出オーガ筒34)に回動可能に支持されて、グレンタンク17の前部が脱穀部4及び選別部5に対して近接又は離間する左右方向へ移動するように構成される。
【0029】
穀粒排出装置30は、グレンタンク17に貯溜される穀粒を機体の外部へ排出するものである。穀粒排出装置30は、図1及び図2に示すように、排出コンベア31と、排出オーガ32とを備える。
【0030】
排出コンベア31は、図2に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を前後方向としてグレンタンク17内の底部に配置される。排出コンベア31は、エンジン8aに伝動機構を介して接続される。そして、排出コンベア31は、エンジン8aの動力により回転して、グレンタンク17内の底部で穀粒を後部へ搬送するように構成される。エンジン8aから排出コンベア31までの動力伝達経路上には、ベルトテンションクラッチ等のオーガクラッチ33(図5参照)が配設される。オーガクラッチ33は、入り切り操作されることにより、エンジン8aの動力が排出コンベア31へ伝達又は遮断されるように構成される。
【0031】
排出オーガ32は、図3及び図4に示すように、縦排出オーガと、横排出オーガと、旋回用アクチュエータ35と、昇降用アクチュエータ37と、穀粒排出筒体40と、筒体回動アクチュエータ41とを備える。排出オーガ32は、使用時には、横排出オーガの横排出オーガ筒36がグレンタンク17や脱穀部4等の上方を移動可能に構成される。横排出オーガ筒36は、図1及び図2に示すように、不使用時には脱穀部4の前上部付近に設けられたオーガレスト21に載置される。
【0032】
縦排出オーガは、機体上下方向に延在して、グレンタンク17からの穀粒を揚送するものである。縦排出オーガは、縦排出オーガ筒34と、縦排出コンベア38とを備える。
【0033】
縦排出オーガ筒34は、図1及び図3に示すように、細長い中空筒状の部材である。縦排出オーガ筒34は、グレンタンク17の後方で長手方向を上下方向として垂直方向(縦方向)に立設される。縦排出オーガ筒34の下端部は、排出コンベア31の後端と連通するように接続される。縦排出オーガ筒34の上端部は、横排出オーガ筒36の基端部と連通するように接続される。縦排出オーガ筒34は、機体フレーム10に対して左右方向(水平方向)へ回動可能に構成される。
【0034】
縦排出コンベア38は、図3に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を上下方向(垂直方向)として縦排出オーガ筒34内に立設される。縦排出コンベア38は、排出コンベア31によりグレンタンク17内の底部で後部へ搬送された穀粒を、縦排出オーガ筒34内で上方へ搬送するものである。縦排出コンベア38の下端部は、排出コンベア31の後端部とベベルギヤ等を介して連動するように連結される。縦排出コンベア38には、エンジン8aの動力が、排出コンベア31を介して伝達される。
【0035】
横排出オーガは、その基端部で縦排出オーガの上部に昇降かつ旋回可能に支持されて、縦排出オーガからの穀粒を搬送し、その先端部から外部に排出するものである。横排出オーガは、横排出オーガ筒36と、横排出コンベア39とを備える。
【0036】
横排出オーガ筒36は、図1から図3に示すように、細長い中空筒状の部材である。横排出オーガ筒36は、縦排出オーガ筒34の上端部から水平方向へ延設される。横排出オーガ筒36の基端部は、縦排出オーガ筒34の上端部に上下方向へ回動可能に支持される。図4に示すように、横排出オーガ筒36の先端部には、投出口体47が固設される。投出口体47は、四角筒を略L形に折り曲げた形状に形成されている。投出口体47は、開口された一側が横排出オーガ筒36の先端部と連通するように接続され、且つ開口された他側が下方を臨むように配置される。横排出オーガ筒36の先端部から排出された穀粒は、投出口体47の前記開口された他側を通じて外部へ排出される。投出口体47には、穀粒排出筒体40が取り付けられる。
【0037】
横排出コンベア39は、図3及び図4に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を水平方向として横排出オーガ筒36内に横設される。横排出コンベア39は、縦排出コンベア38により縦排出オーガ筒34内の上端部に搬送された穀粒を、横排出オーガ筒36内で先端部へ搬送するものである。横排出コンベア39の基端部は、縦排出コンベア38の上端部とベベルギヤ等を介して連動するように連結される。横排出コンベア39には、エンジン8aの動力が、縦排出コンベア38を介して伝達される。
【0038】
旋回用アクチュエータ35は、図3に示すように、縦排出オーガ筒34を左右方向(水平方向)へ回動させる部材である。旋回用アクチュエータ35は、回転軸44を備える。回転軸44には、駆動ギヤ45が固設される。駆動ギヤ45には、縦排出オーガ筒34の上下中途部に外嵌するように固定された従動ギヤ43が噛合される。また、回転軸44には、旋回角度検出センサ46が取り付けられる。旋回角度検出センサ46は、回転式ポテンショメータ等が用いられて、縦排出オーガ筒34(排出オーガ32)の旋回角度を検出することができる。なお、本実施形態において、旋回用アクチュエータ35は、電動モータが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、旋回用アクチュエータ35が駆動されると、回転軸44が軸心回り(左右方向)へ回動され、駆動ギヤ45及び従動ギヤ43を介して、縦排出オーガ筒34が左右方向(水平方向)へ回動するように構成される。
【0039】
昇降用アクチュエータ37は、図3に示すように、横排出オーガ筒36を上下方向へ回動させる部材である。昇降用アクチュエータ37の両端部には、横排出オーガ筒36に突設されるブラケット48と、縦排出オーガ筒34に突設されるブラケット49とが、それぞれ回動自在に接続される。また、昇降用アクチュエータ37には、昇降角度検出センサ54が取り付けられる。昇降角度検出センサ54は、伸縮式ポテンショメータ等が用いられて、昇降用アクチュエータ37のストロークを検出して横排出オーガ筒36(排出オーガ32)の昇降角度を検出することができる。なお、本実施形態において、昇降用アクチュエータ37は、油圧シリンダが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、昇降用アクチュエータ37が駆動されると(伸縮されると)、ブラケット48及びブラケット49を介して、横排出オーガ筒36が基端部を中心として上下方向へ回動するように構成される。
【0040】
穀粒排出筒体40は、図4に示すように、横排出オーガ筒36の先端部に設けられた中空筒状の部材である。穀粒排出筒体40は、基端側の開口部を通じて横排出オーガ筒36の投出口体47が挿入されて、当該投出口体47の後下部に前後方向へ回動可能に支持される。穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向を臨むように配置されている場合、投出口体47の穀粒排出口(前記開口された他側)は穀粒排出筒体40の内側壁により被覆されるので、投出口体47から外部へ穀粒を排出することはできない。他方、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向より下方向を臨むように配置されている場合、投出口体47の穀粒排出口(前記開口された他側)と穀粒排出筒体40の内側壁との間に間隙が設けられて投出口体47から排出された穀粒は、穀粒排出筒体40の先端側の開口部を通じて穀粒排出筒体40(排出オーガ32)の外部へ排出されることとなる。また、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が臨む方向を水平方向より下方向の範囲で前後方向へ調整することにより、穀粒排出筒体40(排出オーガ32)から排出される穀粒の排出方向が調整可能となる。
【0041】
筒体回動アクチュエータ41は、図4に示すように、穀粒排出筒体40を前後方向へ回動させる部材である。筒体回動アクチュエータ41は、横排出オーガ筒36の先端側に取り付けられる。筒体回動アクチュエータ41は、出力軸50を備える。出力軸50には、出力軸ギヤ51が固設されるとともに、回動角度検出センサ56が配置される。出力軸ギヤ51は、扇形の開閉ギヤ52の一端側に歯合される。開閉ギヤ52は、中央部で回動可能に軸支されて、他端側にロッド53の一端側が回動可能に連結される。ロッド53の他端側は、前下方向へ向けて延設されて、平板状の開閉リンク55の一端側に回動可能に連結される。開閉リンク55の他端側は、穀粒排出筒体40に固定されている。回動角度検出センサ56は、穀粒排出筒体40の回動角度を検出する。なお、本実施形態において、筒体回動アクチュエータ41は、電動モータが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、筒体回動アクチュエータ41が駆動されると、出力軸50が軸心回りへ回動され、出力軸ギヤ51を介して、開閉ギヤ52が前後方向へ回動する。そして、開閉ギヤ52が前方向へ回動すると、ロッド53及び開閉リンク55を介して、穀粒排出筒体40が後方向へ回動するように構成される。他方、開閉ギヤ52が後方向へ回動すると、ロッド53及び開閉リンク55を介して、穀粒排出筒体40が前方向へ回動するように構成される。
【0042】
以上のような構成により、排出オーガ32は、旋回用アクチュエータ35により縦排出オーガ筒34を左右方向へ回動させることによって旋回し、昇降用アクチュエータ37により横排出オーガ筒36を上下方向へ回動させることによって昇降するように構成される。また、排出オーガ32は、筒体回動アクチュエータ41により穀粒排出筒体40を前後方向へ回動させて、グレンタンク17内の穀粒を機体の外部の任意の場所へ排出可能に構成される。
また、オーガクラッチ33が「入」の場合、排出オーガ32は、エンジン8aの動力が排出コンベア31を介して縦排出コンベア38及び横排出コンベア39へ伝達されるので、縦排出コンベア38及び横排出コンベア39が駆動して、グレンタンク17内の穀粒が穀粒排出筒体40を通じて排出可能に構成される。他方、オーガクラッチ33が「切」の場合、排出オーガ32は、エンジン8aの動力が排出コンベア31へ伝達されず、縦排出コンベア38及び横排出コンベア39が駆動しないので穀粒が排出されないように構成される。
【0043】
また、排出オーガ32は、本機側操作装置70により有線通信を用いて、又は遠隔操作装置80により無線通信を用いて操作されるように構成される。詳細については後述するが、排出オーガ32は、本機側操作装置70または遠隔操作装置80の操作され、各アクチュエータ35・37・41がその操作に基づいてコンバイン1の任意箇所に設置された制御手段60により駆動制御されることによって、昇降又は旋回或いは穀粒排出筒体40が回動するようになっている。
【0044】
次に、制御手段60の構成について、図5を用いて説明する。
【0045】
制御手段60は、図5に示すように、RAMやROM等の記憶装置63、受信部61、タイマーT、CPU等の演算処理装置62等により構成される。
記憶装置63は、各アクチュエータ35・37・41等の駆動制御に関する制御プログラムや、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度の設定変更可能な範囲等を格納する。受信部61は、遠隔操作装置80の送信部81から無線で送信された各種信号を受信する。タイマーTは、遠隔操作装置80の操作手段の操作開始からの経過時間T1を計測する。演算処理装置62は、受信部61とタイマーT等から入力された各種信号や前記制御プログラムに基づいて演算処理を行い、各アクチュエータ35・37・41へ制御信号を出力するなどする。
【0046】
制御手段60は、本機側操作装置70が有する操作手段としての各種ボタンと、旋回角度検出センサ46と、昇降角度検出センサ54と、回動角度検出センサ56と接続されるとともに、遠隔操作装置80が有する操作手段としての各種ボタンと無線で接続される。
また、演算処理装置62は、旋回用アクチュエータ35と、昇降用アクチュエータ37と、オーガクラッチ33と、筒体回動アクチュエータ41と接続される。
【0047】
制御手段60は、本機側操作装置70又は遠隔操作装置80の各種ボタンが押し操作されると、その操作に対応する操作信号を受信し、受信した操作信号に基づいて、前記制御プログラムと各角度検出センサ46・54・56からの検出信号とを利用しながら、旋回用アクチュエータ35と昇降用アクチュエータ37と筒体回動アクチュエータ41を駆動制御して、排出オーガ32を昇降又は旋回させる。
【0048】
次に、本機側操作装置70の構成について、図5及び図6を用いて説明する。
【0049】
本機側操作装置70は、排出オーガ32を、有線通信を用いて操作するための部材である。本機側操作装置70は、運転部9に設けられた支持ホルダに着脱可能に支持される。本機側操作装置70は、排出オーガ32の操作に関する操作手段としての各種ボタンを備える。なお、本機側操作装置70と同等の機能を有する操作装置を、排出オーガ32の穀粒排出口近傍に設けることも可能である。
【0050】
前記各種ボタンは、自動右セットボタン(「右」表示ボタン)70aと、自動後セットボタン(「後」表示ボタン)70bと、自動リターンボタン(「前」表示ボタン)70cと、オーガクラッチボタン(「クラッチ」表示ボタン)70dと、オーガ上昇ボタン(「上」表示ボタン)70eと、オーガ下降ボタン(「下」表示ボタン)70fと、オーガ左旋回ボタン(「左」表示ボタン)70gと、オーガ右旋回ボタン(「右」表示ボタン)70hと、筒体前回動ボタン(「リターン」表示ボタン)70iと、筒体後回動ボタン(「セット」表示ボタン)70jとからなる。
【0051】
自動右セットボタン70aは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ(以下、単に排出オーガ32という。)がオーガレスト21に載置されている状態で、自動右セットボタン70aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体右側方に位置するように所定位置に自動的に移動する。
【0052】
自動後セットボタン70bは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ筒36がオーガレスト21に載置されている状態で、自動後セットボタン70bが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体後方に位置するように所定位置に自動的に移動する。
【0053】
自動リターンボタン70cは、排出オーガ32を予め設定された非使用時の収納位置(オーガレスト21に載置される位置)へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。自動リターンボタン70cが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、非使用時の収納位置に自動的に移動する。
【0054】
なお、オーガレスト21には、横排出オーガ筒36が載置されているか否かを検出するオーガレストセットセンサ57が配置される。そして、オーガレストセットセンサ57は制御手段60と接続される。
【0055】
オーガクラッチボタン70dは、オーガクラッチ33を入り切りさせるためのものである。オーガクラッチボタン70dが押し操作されている間、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にする。オーガクラッチボタン70dの押し操作が解除されると、制御手段60はオーガクラッチ33を「切」にする。その結果、排出オーガ32は、オーガクラッチボタン70dが押し操作されているときだけ、穀粒を外部に排出する。
【0056】
オーガ上昇ボタン70e、オーガ下降ボタン70fは、それぞれ排出オーガ32を上昇、下降させるためのものである。オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fが押し操作されている間、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fの押し操作が解除されると、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fが押し操作されているときは、その押し操作に対応して上昇又は下降し、押し操作されていないときは、昇降せずに停止する。
【0057】
オーガ左旋回ボタン70g、オーガ右旋回ボタン70hは、それぞれ排出オーガ32を左旋回、右旋回させるためのものである。オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hが押し操作されている間、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hの押し操作が解除されると、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hが押し操作されているときは、その押し操作に対応して左旋回又は右旋回し、押し操作されていないときは、旋回せずに停止する。
【0058】
筒体前回動ボタン70i、筒体後回動ボタン70jは、それぞれ穀粒排出筒体40を前方向へ回動、後方向へ回動させるためのものである。筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jが押し操作されている間、制御手段60は筒体回動アクチュエータ41を受信した操作信号に基づいて駆動させる。筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jの押し操作が解除されると、制御手段60は筒体回動アクチュエータ41を停止させる。その結果、穀粒排出筒体40が、筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jが押し操作されているときは、その押し操作に対応して前方向又は後方向へ回動し、押し操作されていないときは、回動せずに停止する。
【0059】
なお、本機側操作装置70は、本機側操作装置の一例であり、これに限定するものではない。また、本機側操作装置70の各種ボタンは、操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0060】
次に、遠隔操作装置80の構成について、図5及び図7を用いて説明する。
【0061】
遠隔操作装置80は、排出オーガ32を無線通信を用いて操作するための部材である。遠隔操作装置80は、運転部9や排出オーガ32の穀粒排出口近傍位置に設けられた支持ホルダに着脱可能に支持され、作業者が携帯することができるように構成される。遠隔操作装置80は、排出オーガ32の操作に関する操作手段としての各種ボタンと、送信部81と、図示せぬ電源ボタンとを備える。
【0062】
送信部81は、前記各種ボタンと接続され、各種ボタンが押し操作されている間、その押し操作に対応する操作信号を制御手段60(さらに詳しくは、制御手段60の受信部61)へと無線で送信するものである。
【0063】
前記各種ボタンは、自動右セット・リターンボタン(「セット・リターン」表示ボタン)80aと、オーガクラッチボタン(「クラッチ」表示ボタン)80dと、オーガ上昇ボタン(「上」表示ボタン)80eと、オーガ下降ボタン(「下」表示ボタン)80fと、オーガ左旋回ボタン(「左」表示ボタン)80gと、オーガ右旋回ボタン(「右」表示ボタン)80hと、筒体前回動ボタン(「シュータ前」表示ボタン)80iと、筒体後回動ボタン(「シュータ後」表示ボタン)80jとからなる。
【0064】
自動右セット・リターンボタン80aは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置、又は非使用時の収納位置(オーガレスト21に載置される位置)へ自動的に交互に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ(以下、単に排出オーガ32という。)がオーガレスト21に載置されている状態で、自動右セット・リターンボタン80aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体右側方に位置するように所定位置に自動的に移動する。穀粒の排出が終了して自動右セット・リターンボタン80aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、非使用時の収納位置に自動的に移動する。このように、自動右セット・リターンボタン80aは、一つのボタンで本機側操作装置70における自動右セットボタン70a及び自動リターンボタン70cという二つのボタンが果たす機能を兼ね備えるものである。
【0065】
オーガクラッチボタン80dは、オーガクラッチ33を入り切りさせるためのものである。オーガクラッチボタン80dが押し操作されている間、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にする。オーガクラッチボタン80dの押し操作が解除されると、制御手段60はオーガクラッチ33を「切」にする。その結果、排出オーガ32は、オーガクラッチボタン80dが押し操作されているときだけ、穀粒を外部に排出する。ただし、横排出オーガ筒36がオーガレスト21に載置されているときや、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向を望むように配置されているときは、オーガクラッチボタン80dが押し操作されても、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にしない。これにより、誤操作による穀粒の排出を防止することができる。
【0066】
オーガ上昇ボタン80e、オーガ下降ボタン80fは、それぞれ排出オーガ32を上昇、下降させるためのものである。オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fが押し操作されている間、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fの押し操作が解除されると、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fが押し操作されているときは、その押し操作に対応して上昇又は下降し、押し操作されていないときは、昇降せずに停止する。
【0067】
オーガ左旋回ボタン80g、オーガ右旋回ボタン80hは、それぞれ排出オーガ32を左旋回、右旋回させるためのものである。オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hが押し操作されている間、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hの押し操作が解除されると、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hが押し操作されているときは、その押し操作に対応して左旋回又は右旋回し、押し操作されていないときは、旋回せずに停止する。
【0068】
筒体前回動ボタン80i、筒体後回動ボタン80jは、それぞれ穀粒排出筒体40を前方向へ回動、後方向へ回動させるためのものである。筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jが押し操作されている間、制御手段60は筒体回動アクチュエータ41を受信した操作信号に基づいて駆動させる。筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jの押し操作が解除されると、制御手段60は筒体回動アクチュエータ41を停止させる。その結果、穀粒排出筒体40が、筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jが押し操作されているときは、その押し操作に対応して前方向又は後方向へ回動し、押し操作されていないときは、回動せずに停止する。
【0069】
なお、遠隔操作装置80は、遠隔操作装置の一例であり、これに限定するものではない。また、遠隔操作装置80の各種ボタンは、操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0070】
次に、本機側操作装置70と遠隔操作装置80の操作時の制御について説明する。
【0071】
制御手段60は、本機側操作装置70と遠隔操作装置80における排出オーガ32の昇降又は旋回用の各ボタンが押し操作されることによって、昇降用アクチュエータ37と旋回用アクチュエータ35を駆動制御して、排出オーガ32を昇降又は旋回させる際、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を所定条件に従って変速する。
【0072】
なお、本実施形態においては、旋回用アクチュエータ35をなす電動モータへの供給電圧を変更することによって、電動モータの回転速度を変速して、排出オーガ32の旋回速度を変速する。昇降用アクチュエータ37をなす油圧シリンダの供給作動油量を変更することによって、油圧シリンダの伸縮速度を変速して、排出オーガ32の昇降速度を変速する。
【0073】
以下、図8のフローチャートを用いて具体的に説明する。
なお、以下の説明において、本機側操作装置70及び遠隔操作装置80の操作による速度制御は同様となるで、遠隔操作装置80の操作のみについて説明し、オーガ上昇ボタン80e、オーガ下降ボタン80f、オーガ左旋回ボタン80g、又はオーガ右旋回ボタン80hの押し操作は「ボタン操作」と称する。
【0074】
まず、ステップ101において、遠隔操作装置80においてボタン操作されると、ボタン操作が続く間、操作信号が送信部81から制御手段60の受信部61へ送信される。制御手段60は、受信部61が受信した信号を制御手段60の演算処理装置62に入力する。
【0075】
ステップ102において、制御手段60は、タイマーTをリセットした後、このタイマーによりボタン操作の開始から(受信部61からの信号を演算処理装置62に入力した時点から)の時間計測を開始して、経過時間T1を得る。
【0076】
ステップ103において、制御手段60は、ボタン操作に対応した昇降用アクチュエータ37又は旋回用アクチュエータ35を排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度になるように駆動させて、排出オーガ32を昇降又は旋回させる。
ここで、第一の設定速度は、図9に示すように、従来のコンバインで一般的に設定されている排出オーガの通常の昇降速度及び旋回速度よりも遅い範囲内において、0から徐々に速くなる(加速する)ように予め設定される。ただし、前記第一の設定速度を、前記範囲内において、一定の速度となるように設定することも可能である。
【0077】
ステップ104において、制御手段60は、昇降用アクチュエータ37又は旋回用アクチュエータ35をボタン操作に基づいて駆動させている間に、タイマーTにより計測した経過時間T1が、設定時間T2内であるかを判定する。
ここで、設定時間T2は、予め設定されて、制御手段60の記憶装置63に記憶される。
【0078】
その結果、タイマーTにより計測した経過時間T1が設定時間T2以上である場合、つまりボタン操作の開始から設定時間T2が経過している(ボタンが長押し操作されている)場合、制御手段60はステップをステップ105へ移行させる。
一方、タイマーTにより計測した経過時間T1が設定時間T2内である場合には、つまりボタン操作の開始から設定時間T2が経過していない場合、制御手段60はステップをステップ108へ移行させる。
【0079】
ステップ105において、制御手段60は、図9に示すように、ボタン操作に対応した昇降用アクチュエータ37又は旋回用アクチュエータ35を排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が前記第一の設定速度から第二の設定速度に増速するように駆動させて、排出オーガ32を昇降又は旋回させる。
ここで、第二の設定速度は、第一の設定速度よりも速い一定の速度であり、前記従来における通常の昇降速度及び旋回速度と同程度となるように予め設定される。
【0080】
ステップ106において、制御手段60は、遠隔操作装置80の送信部81から送信されている信号が演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、換言すれば、ボタン操作の開始から継続してボタン操作がされているか否かを判定する。
【0081】
その結果、遠隔操作装置80からの信号が演算処理装置62に入力されていない、つまりボタン操作が解除された場合には、制御手段60はステップをステップ107へ移行させる。
また、遠隔操作装置80からの信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている、つまりボタン操作が継続されている場合には、制御手段60はステップをステップ106へ移行させる。この場合、制御手段60は排出オーガ32の移動を続行させる。
【0082】
ステップ107において、制御手段60は、ボタン操作に対応した旋回用アクチュエータ35又は昇降用アクチュエータ37を停止させて、排出オーガ32の昇降又は旋回を停止させる。
【0083】
また、ステップ108において、制御手段60は、遠隔操作装置80の送信部81から送信されている信号が演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、換言すれば、ボタン操作の開始から継続してボタン操作がされているか否かを判定する。
【0084】
その結果、遠隔操作装置80からの信号が演算処理装置62に入力されていない、つまりボタン操作が解除された場合には、制御手段60はステップをステップ107へ移行させる。
また、遠隔操作装置80からの信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている、つまりボタン操作が継続されている場合には、制御手段60はステップをステップ104へ移行させる。この場合、制御手段60は排出オーガ32の移動を続行させる。
【0085】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、グレンタンク17内の穀粒を外部に排出する昇降かつ旋回可能な排出オーガ32と、排出オーガ32を昇降させる昇降用アクチュエータ37と、排出オーガ32を旋回させる旋回用アクチュエータ35と、昇降用アクチュエータ37及び旋回用アクチュエータ35の駆動用の操作手段を有し、この操作手段により各アクチュエータ35・37を無線通信を用いて遠隔操作する遠隔操作装置80と、各アクチュエータ35・37を遠隔操作装置80の操作に基づいて駆動制御する制御手段60と、を備え、制御手段60は、操作手段の操作の開始から予め設定された設定時間T2経過するまでの間は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度になるように、各アクチュエータ35・37を制御し、設定時間T2経過以降は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度よりも速い第二の設定速度になるように、各アクチュエータ35・37を制御するものである。
【0086】
このような構成により、遠隔操作装置80を用いて操作する作業者は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を操作手段の操作時間に応じて段階的に(二段階で)変更し、排出オーガ32を操作手段の操作の開始直後から設定時間経過するまでの間(操作手段の操作時間が短いとき)は低速で、設定時間T2経過後(操作手段の操作時間が長いとき)は高速で昇降または旋回させることが可能となる。そのため、作業者は、排出オーガ32の位置を少しだけ調節したり微調節したりする場合(排出オーガ32の移動距離が短い場合)には、操作手段の操作時間が短くて済むことから、排出オーガ32を低速で昇降または旋回させて、所望の場所へ容易に移動させることができる。一方、排出オーガ32の位置を大きく調節する場合(排出オーガ32の移動距離が長い場合)には、操作手段の操作時間が比較的長くなることから、排出オーガ32を高速で昇降または旋回させて、所望の場所へ速やかに移動させることが可能となる。したがって、遠隔操作装置80による排出オーガ32の操作性を向上させることができる。
【0087】
また、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を、一つの操作手段によりその操作時間に応じて変更することが可能となる。そのため、例えば、低速用と高速用の二つの操作手段を設けて、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を変更する場合に比べて、操作手段の操作を誤って、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を操作手段の操作の開始直後から高速として、排出オーガ32を移動させるおそれがない。したがって、排出オーガ32を遠隔操作装置80により誤りなく操作することができるとともに、排出オーガ32が操作手段の操作の開始直後から高速で移動して機体周辺のものに接触し、これにより損傷することを防止することができる。しかも、部品点数の増加を抑制するとともに、遠隔操作装置80の小型化を図ることができる。
【0088】
なお、遠隔操作装置80におけるボタンの押し操作の操作時間に応じた、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度の第一の設定速度から第二の設定速度への段階的な変更は、本機側操作装置70のボタン操作が行われた際にも同様であることから、本機側操作装置70の操作性を遠隔操作装置80と同様に向上させることができる。
【0089】
なお、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を、本実施形態においては二段階に変更しているが、本機側操作装置70と遠隔操作装置80におけるボタンの押し操作の操作時間に応じて三段階以上に変更するようにしてもよい。
【0090】
なお、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を、本実施形態においては同一速度に設定しているが、異なる速度となるように設定することも可能である。つまり、排出オーガ32の昇降速度に係る第一の設定速度と旋回速度に係る第一の設定速度とを異なる速度に設定し、昇降速度に係る第二の設定速度と旋回速度に係る第二の設定速度とを異なる速度に設定することも可能である。
【0091】
なお、排出オーガ32の穀粒排出筒体40の前後方向への回動速度を、遠隔操作装置80の筒体前回動ボタン80iや筒体後回動ボタン80j、本機側操作装置70の筒体前回動ボタン70iや筒体後回動ボタン70jの押し操作の操作時間に応じて、段階的に変更することも可能である。この構成は、遠隔操作装置80の筒体前回動ボタン80i、又は筒体後回動ボタン80j、及び本機側操作装置70の筒体前回動ボタン70i、又は筒体後回動ボタン70jの押し操作の開始からの経過時間を計測し、その経過時間が設定時間以上であるか否か判定することで実現される。
【0092】
また、コンバイン1は、図5に示すように、制御手段60の記憶装置63に記憶された設定時間T2を変更可能とする設定時間変更手段91を備える構成とすることができる。設定時間変更手段91は、本機側操作装置70、遠隔操作装置80又は運転部9に配置され、回転式のダイヤル又はスイッチ等で構成される。設定時間変更手段91は制御手段60と接続される。設定時間変更手段91が操作されることにより、設定時間T2が制御手段60により操作に応じて任意に長く又は短く変更される。
なお、設定時間変更手段91は、設定時間変更手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0093】
このような構成により、遠隔操作装置80又は本機側操作装置70を用いて操作する作業者は、設定時間を排出オーガ32による穀粒排出時の状況に応じて、例えば各操作装置70・80の操作の慣れ具合や機体と穀粒排出先との位置関係に応じて設定し、操作手段の操作時間により変化する排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を適切に使い分けて、排出オーガ32を所望の場所へ容易に移動させることができる。具体的には、例えば、作業者は、各操作装置70・80を用いた排出オーガ32の操作に不慣れな場合は、設定時間T2をより長い時間に設定すれば、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が低速である時間が操作の開始から長く続くため、排出オーガ32を所望の場所へ容易に移動(昇降及び旋回)させることが可能となる。一方、作業者は、各操作装置70・80を用いた排出オーガ32の操作に慣れている場合には、設定時間T2をより短い時間に設定すれば、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が低速である時間が操作の開始から短い時間で終了して、昇降速度及び旋回速度が高速である時間が比較的に長くなり、排出オーガ32を所望の場所へ容易かつ速やかに移動(昇降及び旋回)させることが可能となる。したがって、排出オーガ32を遠隔操作する遠隔操作装置80の操作性を向上させることができる。同時に、本機側操作装置70の操作性を向上させることもできる。
【0094】
また、コンバイン1は、図5に示すように、制御手段60の記憶装置63に記憶された前記第一の設定速度及び前記第二の設定速度を設定可能とする設定速度変更手段92を備える構成とすることができる。設定速度変更手段92は、本機側操作装置70、遠隔操作装置80又は運転部9に配置され、回転式のダイヤル又はスイッチ等で構成される。設定速度変更手段92は制御手段60と接続される。設定速度変更手段92が操作されることにより、旋回用アクチュエータ35又は昇降用アクチュエータ37の作動速度が制御手段60により操作に応じて任意に速く又は遅く変更され、ひいては排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度が任意に速く又は遅く変更される。
なお、設定速度変更手段92は、設定速度変更手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0095】
このような構成により、遠隔操作装置80又は本機側操作装置70を用いて操作する作業者は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を設定速度変更手段92により排出オーガ32による穀粒排出時の状況に応じて、例えば各操作装置70・80の操作の慣れ具合や機体と穀粒排出先との位置関係に応じて設定し、排出オーガ32を適切な昇降速度及び旋回速度で所望の場所へ容易に移動させることが可能となる。具体的には、例えば、作業者は、各操作装置70・80を用いた排出オーガ32の操作に不慣れな場合は、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を遅く設定すれば、排出オーガ32が前回設定された第一の設定速度又は第二の設定速度よりも低速で昇降及び旋回するため、排出オーガ32を所望の場所へ容易に移動(昇降及び旋回)させることが可能となる。一方、作業者は、各操作装置70・80を用いた排出オーガ32の操作に慣れている場合には、排出オーガ32の昇降速度及び旋回速度を速く設定すれば、排出オーガ32が前回設定された第一の設定速度又は第二の設定速度よりも速く昇降及び旋回するため、排出オーガ32を所望の場所へ容易かつ速やかに移動(昇降及び旋回)させることが可能となる。したがって、排出オーガ32を遠隔操作する遠隔操作装置80の操作性を向上させることができる。同時に、本機側操作装置70の操作性を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0096】
1 コンバイン
17 グレンタンク
32 排出オーガ
35 旋回用アクチュエータ
37 昇降用アクチュエータ
60 制御手段
80 遠隔操作装置
91 設定時間変更手段
92 設定速度変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレンタンク内の穀粒を外部に排出する昇降かつ旋回可能な排出オーガと、
前記排出オーガを昇降させる昇降用アクチュエータと、
前記排出オーガを旋回させる旋回用アクチュエータと、
前記昇降用アクチュエータ及び前記旋回用アクチュエータ駆動用の操作手段を有し、この操作手段により前記各アクチュエータを無線通信を用いて遠隔操作する遠隔操作装置と、
前記各アクチュエータを前記遠隔操作装置の操作に基づいて駆動制御する制御手段と、
を備えるコンバインであって、
前記制御手段は、前記操作手段の操作の開始から予め設定された設定時間経過するまでの間は、前記排出オーガの昇降速度及び旋回速度が第一の設定速度になるように、前記各アクチュエータを制御し、前記設定時間経過以降は、前記排出オーガの昇降速度及び旋回速度が前記第一の設定速度よりも速い第二の設定速度になるように、前記各アクチュエータを制御するコンバイン。
【請求項2】
前記設定時間を変更可能とする設定時間変更手段を備える、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第一の設定速度及び前記第二の設定速度を変更可能とする設定速度変更手段を備える、請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167092(P2011−167092A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31873(P2010−31873)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】