説明

コンバイン

【課題】エンジンカバーの開閉操作性を向上させると共に、グリップの兼用化により、部品点数の削減、構造の簡略化、コストダウンなどを図る。
【解決手段】エンジンカバー15を、右下端部に設けた前後方向の回動支点18を中心として右側方へ開放可能としたコンバイン1において、右側面視で運転シート9の前後幅内で、かつ、吸気パネル17の左側面上方位置に、前後方向に沿うグリップ21を配置すると共に、該グリップ21の前端部21aは、コンバイン乗降時に乗降口左側グリップとして機能するように前下がり傾斜状に形成し、グリップの前端部より後方部分21bは、コンバイン作業時に運転シート右側グリップ兼運転シート右側アームレスト、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するように水平状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンカバーを、右下端部に設けた前後方向の回動支点を中心として右側方へ開放可能としたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、オペレータが乗車する運転部を備えており、運転部には、オペレータが着座する運転シート、オペレータが操作する各種の操作具、コンバイン乗降時に使用される乗降口グリップなどが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この種のコンバインのなかには、エンジンの上方を覆い、かつ、運転シートを支持するシートフレームと、エンジンの右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の吸気口が形成された吸気パネルとを一体的に有するエンジンカバーを備えると共に、該エンジンカバーを、右下端部に設けた前後方向の回動支点を中心として右側方へ開放可能としたものが知られている。このようなコンバインでは、エンジンカバーを開放することにより、エンジンの右側方及び上方を同時に露出させることができるので、エンジン整備時の作業性が向上するという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−289483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンバインには、エンジンカバーを開閉する際に使用可能なエンジンカバー開閉操作用グリップが設けられていないので、エンジンカバーを開閉する際に持つ場所が特定されず、開閉操作性に劣るという問題があった。また、エンジンカバーの開閉に際し、エンジンカバーに取り付けた部品がグリップ代わりに握られることもあり、このような場合に、グリップ代わりに握られた部品のブラケットが強度不足により破損する惧れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、エンジンの上方を覆い、かつ、運転シートを支持するシートフレームと、エンジンの右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の吸気口が形成された吸気パネルとを一体的に有するエンジンカバーを備えると共に、該エンジンカバーを、右下端部に設けた前後方向の回動支点を中心として右側方へ開放可能としたコンバインにおいて、右側面視で運転シートの前後幅内で、かつ、吸気パネルの左側面上方位置に、前後方向に沿うグリップを配置すると共に、該グリップの前端部は、コンバイン乗降時に乗降口左側グリップとして機能するように前下がり傾斜状に形成し、グリップの前端部より後方部分は、コンバイン作業時に運転シート右側グリップ兼運転シート右側アームレスト、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するように水平状に形成したことを特徴とする。
また、前記吸気パネルの上方位置にフラッシャランプを設けるにあたり、前記グリップを、側面視でフラッシャランプの上方近傍を通過するように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するグリップを備えるので、エンジンカバーの開閉操作性を向上させることができるだけでなく、エンジンカバーの開閉に際し、エンジンカバーに取り付けた部品をグリップ代わりに握り、部品のブラケットを破損させるような不都合も解消することができる。しかも、グリップは、エンジンカバー開閉操作用グリップとしてだけでなく、乗降口左側グリップ、運転シート右側グリップ及び運転シート右側アームレストとしても機能するので、グリップの兼用化により、部品点数の削減、構造の簡略化、コストダウンなどを図ることができる。
また、請求項2の発明によれば、グリップは、側面視でフラッシャランプの上方近傍を通過するように設けられるので、エンジンカバーの開閉に際し、フラッシャランプをグリップ代わりに握り、フラッシャランプのブラケットを破損させるような不都合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コンバインの全体右側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】運転部の斜視図である。
【図4】エンジンカバーの斜視図である。
【図5】エンジンカバー閉状態を示す運転部の正面図である。
【図6】エンジンカバー開状態を示す運転部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒が貯留される穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、オペレータが乗車する運転部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0010】
運転部6は、走行機体の右前端部に配置されており、その右側面部に形成される乗降口8を介して乗り降りされるようになっている。また、図3〜図6に示すように、運転部6に設けられる運転シート9の下方スペースは、エンジンルーム10となっており、ここに、エンジン11、ラジエータ12、エアクリーナ13、リザーブタンク14などが配置されている。
【0011】
図4に示すように、エンジンルーム10を覆うエンジンカバー15は、エンジン11の上方を覆い、かつ、運転シート9を支持するシートフレーム16と、エンジン11の右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の吸気口17aが形成された吸気パネル17とを一体的に備えて構成されている。例えば、本実施形態のエンジンカバー15は、板材を側面視逆U字状に曲げ加工して形成されたシートフレーム16の右端部に、吸気パネル17を一体的に取り付けて構成されている。
【0012】
図6に示すように、エンジンカバー15は、その右下端部に設けた前後方向の回動支点18を中心として右側方へ開放可能としてある。このようにすると、エンジンカバー15を開放することにより、エンジン11の上方及び右側方(本実施形態では、前方及び後方も露出)を露出させることができるので、エンジン整備時の作業性が向上するという利点がある。
【0013】
尚、エンジンカバー15の上面左端部には、エンジンカバーロック用フック19が設けられており、このエンジンカバーロック用フック19を固定側に設けられるエンジンカバーロック用クランプ20で係止することにより、エンジンカバー15の開放動作がロックされるようになっている。
【0014】
エンジンカバー15には、右側面視で運転シート9の前後幅内で、かつ、吸気パネル17の左側面上方位置に、前後方向に沿うグリップ21が設けられている。例えば、グリップ21は、側面視逆U字状に曲げ加工されたパイプ材からなり、両端が吸気パネル17の左側面にネジ固定される。
【0015】
グリップ21の前端部21aは、コンバイン乗降時に乗降口左側グリップとして機能するように前下がり傾斜状に形成されている。また、グリップ21の前端部より後方部分21bは、コンバイン作業時に運転シート右側グリップ兼運転シート右側アームレスト、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するように水平状に形成されている。
【0016】
つまり、本発明の実施形態に係るコンバイン1は、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するグリップ21を備えるので、エンジンカバー15の開閉操作性を向上させることができるだけでなく、エンジンカバー15の開閉に際し、エンジンカバー15に取り付けた部品をグリップ代わりに握り、部品のブラケットを破損させるような不都合も解消することができる。
【0017】
しかも、グリップ21は、エンジンカバー開閉操作用グリップとしてだけでなく、乗降口左側グリップ、運転シート右側グリップ及び運転シート右側アームレストとしても機能するので、グリップの兼用化により、部品点数の削減、構造の簡略化、コストダウンなどを図ることができる。
【0018】
また、グリップ21は、右側面視で運転シート9の前後幅内で、かつ、吸気パネル17の左側面上方位置に、前後方向に沿うように配置されるので、多機能でありながら、コンパクトに構成することができる。
【0019】
本実施形態のコンバイン1は、吸気パネル17の上方位置にフラッシャランプ22を備えている。本実施形態では、グリップ21の後端固定部にブラケット23を延設し、ここにフラッシャランプ22をネジ固定している。
【0020】
本実施形態では、上記のようなフラッシャランプ22を設けるにあたり、グリップ21を、側面視でフラッシャランプ22の上方近傍を通過するように設けている。このようにすると、エンジンカバー15の開閉に際し、フラッシャランプ22をグリップ代わりに握り、フラッシャランプ22のブラケット23を破損させるような不都合を解消することができる。
【0021】
また、本実施形態では、正面視でフラッシャランプ22と運転シート9との間にグリップ21を設けている。このようにすると、フラッシャランプ22の運転シート9側がグリップ21でガードされるので、作業中にオペレータの肘がフラッシャランプ22に接触することを防止できる。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、エンジン11の上方を覆い、かつ、運転シート9を支持するシートフレーム16と、エンジン11の右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の吸気口17aが形成された吸気パネル17とを一体的に有するエンジンカバー15を備えると共に、該エンジンカバー15を、右下端部に設けた前後方向の回動支点18を中心として右側方へ開放可能としたコンバイン1において、右側面視で運転シート9の前後幅内で、かつ、吸気パネル17の左側面上方位置に、前後方向に沿うグリップ21を配置すると共に、該グリップ21の前端部21aは、コンバイン乗降時に乗降口左側グリップとして機能するように前下がり傾斜状に形成し、グリップの前端部より後方部分21bは、コンバイン作業時に運転シート右側グリップ兼運転シート右側アームレスト、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するように水平状に形成したので、エンジンカバー15の開閉操作性を向上させることができるだけでなく、エンジンカバー15の開閉に際し、エンジンカバー15に取り付けた部品をグリップ代わりに握り、部品のブラケットを破損させるような不都合も解消することができる。しかも、グリップ21は、エンジンカバー開閉操作用グリップとしてだけでなく、乗降口左側グリップ、運転シート右側グリップ及び運転シート右側アームレストとしても機能するので、グリップ21の兼用化により、部品点数の削減、構造の簡略化、コストダウンなどを図ることができる。また、グリップ21は、右側面視で運転シート9の前後幅内で、かつ、吸気パネル17の左側面上方位置に、前後方向に沿うように配置されるので、多機能でありながら、コンパクトに構成することができる。
【0023】
また、吸気パネル17の上方位置にフラッシャランプ22を設けるにあたり、グリップ21を、側面視でフラッシャランプ22の上方近傍を通過するように設けたので、エンジンカバー15の開閉に際し、フラッシャランプ22をグリップ代わりに握り、フラッシャランプ22のブラケット23を破損させるような不都合を解消することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 コンバイン
6 運転部
8 乗降口
9 運転シート
10 エンジンルーム
11 エンジン
15 エンジンカバー
16 シートフレーム
17 吸気パネル
17a 吸気口
18 回動支点
21 グリップ
21a 前端部
21b 後方部分
22 フラッシャランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの上方を覆い、かつ、運転シートを支持するシートフレームと、
エンジンの右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の吸気口が形成された吸気パネルとを一体的に有するエンジンカバーを備えると共に、該エンジンカバーを、右下端部に設けた前後方向の回動支点を中心として右側方へ開放可能としたコンバインにおいて、
右側面視で運転シートの前後幅内で、かつ、吸気パネルの左側面上方位置に、前後方向に沿うグリップを配置すると共に、該グリップの前端部は、コンバイン乗降時に乗降口左側グリップとして機能するように前下がり傾斜状に形成し、グリップの前端部より後方部分は、コンバイン作業時に運転シート右側グリップ兼運転シート右側アームレスト、エンジン整備時にエンジンカバー開閉操作用グリップとして機能するように水平状に形成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記吸気パネルの上方位置にフラッシャランプを設けるにあたり、前記グリップを、側面視でフラッシャランプの上方近傍を通過するように設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83213(P2011−83213A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237067(P2009−237067)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】