説明

コンバイン

【課題】コンバインにおける穀類排出オーガの無線操作装置において、受信アンテナと制御装置との配線が捩じられることを考慮する必要が無く、受信アンテナが排出オーガの旋回動作に邪魔にならず、機体側の受信アンテナと作業者が持っている無線オーガ操作器との無線通信が良好に行えるようにする。
【解決手段】機体後部に立設した揚穀筒(24)の上端に支持した排出オーガ(5)を無線オーガ操作器(11)で旋回及び昇降の動作指示を可能にしたコンバインにおいて、前記無線オーガ操作器(11)からの指令電波を受信するアンテナ(23)と該指令電波に基づいて制御信号を出力するオーガ制御ボックス(26)を揚穀筒(24)の後で機体後側部に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインからその収穫穀類を運搬車等に積替えるための排出オーガ装置は、機体の操縦席から操作指令を入力して旋回や排出動作の運転することができるほか、携帯用の無線オーガ操作器を使用することにより、操縦席から離れた機外の積替え位置で運搬車等への積替え状況を直接的に目視確認しつつオーガ部の排出位置調節等を操作指令することが出来るようにしている。
【0003】
特許文献1や特許文献2に示すように、排出オーガの回動中心となる揚穀筒の上端に受信アンテナが取り付ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−43939号公報
【特許文献2】特開2010−75056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の機体側の受信アンテナは、何れも旋回する揚穀筒側に設けられているために、この受信アンテナとコンバイン機体に固定の制御装置との間を繋ぐ配線が排出オーガを旋回する度に捩じられるようになる。
【0006】
本発明では、コンバインにおける穀類排出オーガの無線操作装置において、受信アンテナと制御装置との配線が捩じられることを考慮する必要が無く、受信アンテナが排出オーガの旋回動作に邪魔にならず、機体側の受信アンテナと無線オーガ操作器との無線通信が良好に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1記載の発明は、機体後部に立設した揚穀筒(24)の上端に排出オーガ(5)を支持し、該排出オーガ(5)を無線オーガ操作器(11)で旋回及び昇降操作可能としたコンバインにおいて、前記無線オーガ操作器(11)からの指令電波を受信するアンテナ(23)と該指令電波に基づいて制御信号を出力するオーガ制御ボックス(26)を前記揚穀筒(24)の後側の部位に配置したことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
この構成で、アンテナ(23)とオーガ制御ボックス(26)がコンバインの機体後側部に配置され、コンバイン機体の後方で運搬車の近くに居る作業者が持っている無線オーガ操作器(11)からの指令電波を受信し易く、排出オーガ(5)の起伏・旋回等の動作を確実に行える。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記アンテナ(23)の基部とオーガ制御ボックス(26)を排出オーガ(5)よりも低い位置に配置すると共に、アンテナ(23)における少なくとも排出オーガ(5)下端部よりも上側の部分を可撓性部材により構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0010】
この構成で、アンテナ(23)が排出オーガ(5)の旋回動作の支障となりにくく、コンバインの機体前方の作業者が持った無線オーガ操作器(11)からでも排出オーガ(5)を操作できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記アンテナ(23)を排出オーガ(5)旋回範囲の外側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
この構成で、アンテナ(23)と排出オーガ(5)が接触しにくくなる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、排出オーガ(5)が平面視で揚穀筒(24)を中心に回動する為、排出オーガ(5)先端からアンテナ(23)までの距離が常に略一定となり、無線による通信を良好に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、排出オーガ(5)の旋回によって、この排出オーガ(5)がアンテナ(23)に接触しても、アンテナ(23)が破損しにくくなる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、アンテナ(23)と排出オーガ(5)の接触を防ぎ、排出作業の能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】無線オーガ操作器の平面図である。
【図3】制御部ブロック図である。
【図4】液晶表示画面である。
【図5】コンバイン機体の一部拡大側面図である。
【図6】コンバイン機体の一部拡大平面図である。
【図7】排出オーガの旋回範囲を示す平面図である。
【図8】無線オーガ操作器の斜視図である。
【図9】揚穀筒の駆動部を示す断面図である。
【図10】図9のS1−S1断面矢視図である。
【図11】揚穀筒駆動部の拡大断面図である。
【図12】コンバイン機体の一部拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1は、本発明の排出オーガ装置を適用したコンバインの全体左側面図である。
コンバインは、左右のクローラ走行装置1,1によって支持された平面視略矩形状の機体フレーム54に、刈取部2、脱穀部3、グレンタンク4、排出オーガ5、操縦席6等を搭載し、排出オーガ5はグレンタンク4から穀類を排出する。
【0017】
排出オーガ5は、先端に排出口5aを備えるとともに、この排出口5aの位置決め調節のために、上下動作、水平旋回動作、伸縮動作が可能に構成され、操縦席6に設ける排出オーガ操作装置のほかに、機体から離れた位置で操作する無線オーガ操作器11により動作を制御可能に構成される。
【0018】
無線オーガ操作器11は、図2の如く、オーガ上下スイッチ7a、オーガ旋回スイッチ7b、オーガ伸縮スイッチ7c、ナローガイド開閉スイッチ7eを備えている。
無線オーガ操作器11の各スイッチの操作信号が無線で制御部10に送られて、排出オーガ5に設ける上下油圧シリンダと伸縮シリンダと旋回モータが作動して、上下動作、水平旋回動作、伸縮動作するのであるが、その制御ブロック図を図4に示す。
【0019】
操縦席6に設ける排出オーガ操作装置のオーガ上下スイッチ7aとオーガ旋回スイッチ7bとオーガ伸縮スイッチ7cとナローガイド開閉スイッチ7eの各操作信号及びクローラ走行装置1に設ける車速センサ15の信号が入力インターフェース12を介して制御部10に送られる。
【0020】
また、無線オーガ操作器11からも受信機22を介して排出オーガ操作装置と同様なオーガ上下スイッチ7aとオーガ旋回スイッチ7bとオーガ伸縮スイッチ7cとナローガイド開閉スイッチ7eの各操作信号が制御部10に送られる。
【0021】
制御部10からは、出力インターフェース13を介して、油圧シリンダのオーガ上下ソレノイド16と旋回モータのオーガ旋回リレー17と伸縮シリンダのオーガ伸縮リレー18とナローガイドを開閉するモータのナローガイド開閉リレー19とブザー20に制御信号が出力され、さらに、通信インターフェース14を介して操縦席6の前に設ける液晶表示装置21に排出オーガ5の作動状態が表示される。
【0022】
また、コンバインの制御部を点検整備モードにすると、無線オーガ操作器11が液晶表示装置21の画面表示切換装置として機能し、図4の如く表示する。すなわち、オーガ上下スイッチ7aで表示項目21a,21b,21c,21d,21e,21fを選択し、オーガ伸縮スイッチ7cで戻る21gと進む21hをそれぞれ選択するようにする。
【0023】
無線オーガ操作器11は、各コンバインに対する識別機能を持たせて特定のコンバインのみで使用可能にするが、サービス業者用に全てのコンバインに対して使用可能な無線オーガ操作器11も設定すると点検作業が容易となる。
【0024】
また、無線オーガ操作器11は、図8の如く、操作スイッチ等を配備した面の上面をループ面としたループアンテナ29を埋め込んでいる。この上面、即ち最も磁束密度の高いループ面に対する垂直方向をアンテナ23方向に向けることで送信電波が伝わり易くなる。
【0025】
さらに、アンテナ23はコンバイン機体の広い鉄板上に導通状態で設置するとコンバイン機体がアンテナの機能を持って前側を除く方位に対して受信距離を均等化する。特にアンテナ長さを辺長とする矩形平板或いは円盤上にアンテナを設置することで電波の受信感度が向上する。
【0026】
図5と図6及び図12に制御処理部10を内装したオーガ制御ボックス26をコンバイン機体に取り付けた状態を示す。
グレンタンク4の後側でコンバイン機体の最後部で、且つグレンタンク4内の穀類を排出オーガ5へ送り揚げる揚穀筒24の後側部位に、オーガ制御ボックス26を取り付け、その後外側をバックサイドカバー30で覆っている。このオーガ制御ボックス26の位置は、排出オーガ5を旋回しても当たらないように低い位置としている。このオーガ制御ボックス26よりも機体内側でアンテナ23を立設する受信機22をコンバイン機枠27に取り付けている。アンテナ23は、揚穀筒24の上端よりも長く立てているが、排出オーガ5が図7に示す旋回範囲Sを旋回しても当たらない位置としている。
【0027】
前記オーガ制御ボックス26及びアンテナ23の取付部の構成について詳述すると、脱穀部3の脱穀機枠(図示省略)に固定したタンク後側第一フレーム55に上端を、機体フレーム54下端を連結した第一縦フレーム34と、脱穀機枠に固定したタンク後側第二フレーム56に上端を連結し、下端を機体フレーム54に連結した第二縦フレーム27の間にオーガ制御ボックス26を配置して、取付ブラケット34a,27aを介して取付けている。アンテナ23は取付ブラケット34a上端に取付けている。
【0028】
そして、受信機22とオーガ制御ボックス26を接近させ、コード28で連結している。アンテナ23は、少々曲がっても元に戻る弾性体として作業者が触ることが有っても安全で破損することが無い。
【0029】
アンテナ23の位置は、機体の後部に立って無線オーガ操作器11を操作するに、電波を受け易く、電波の干渉が少ない位置となっている。
アンテナ23の左側の機体中央に近付けて左サイドカバー33から突出させてリアモニタ用カメラ32をその先端をバックサイドカバー30より僅かに後方へ位置させて取付ブラケット31で第一縦フレーム34に取り付けている。第一縦フレーム34はコンバイン機枠27と機体フレーム54を連結していて強固で、取付ブラケット31は上下に角度調整可能にしている。このリアモニタ用カメラ32の取付位置で、コンバイン機体の後方左右が良く映るようになる。なお、リアモニタ用カメラ32の位置は、排出オーガ5の取付基部よりも低く、排出オーガ5が旋回しても当たらないようになっている。
【0030】
図9〜11に揚穀筒24内の揚穀螺旋36の駆動構成を示している。
グレンタンク4内の横送り螺旋49の軸端に、引継ケース37を設け、繋ぎ螺旋48を横送り螺旋49の軸方向へ軸支し、繋ぎ螺旋48内の入力軸39が引継ケース37に取り付けたギヤケース38を通して軸端に入力プーリ40を取り付け、入力プーリ40に入力する回転が入力軸39から繋ぎ螺旋48と横送り螺旋49に伝動される。
【0031】
ギヤケース38には、入力軸39と直交して縦伝動軸43が軸支され、入力軸39にスプライン嵌合した第一ベベルギヤ41から縦伝動軸43に固着した第二ベベルギヤ42へ伝動する。ギヤケース38内の繋ぎ螺旋48側に軸受ハウジング51を設けていて、第一ベベルギヤ41の第二ベベルギヤ42に対する噛み合い位置を繋ぎ螺旋48側に変更すると縦伝動軸43の回転方向すなわち揚穀螺旋36の回転方向が逆となる。
【0032】
縦伝動軸43の下端に第一スプロケット44を固着し、引継ケース37とギヤケース38の下側に取り付けるチェンケース47内で、第一スプロケット44と前記揚穀筒24の揚穀螺旋36の軸端に固着の第二スプロケット45をチェン46で連結して伝動している。チェン46にテンションを付与しているチェンスラシ50は揚穀螺旋36の回転方向を逆にする場合には取付位置を変更する。
【0033】
引継ケース37は、繋ぎ螺旋48支持部と揚穀螺旋36支持部を分離可能にし、繋ぎ螺旋48の軸受支持部52に円盤53を取り付けている。これにより引継ケース内周との間に微小な隙間を形成し、穀類の漏れを防ぎゴミ抜きを可能にしている。
【0034】
上記の構成で、大豆の収穫時に、排出オーガ5内に大豆が残ったままで排出オーガ5を旋回すると大豆が揚穀筒24内で逆流して揚穀螺旋36が逆回転し、横送り螺旋49が逆回転して大豆を潰したり螺旋を破損したりすることが無い。
【符号の説明】
【0035】
5 排出オーガ
11 無線オーガ操作器
23 アンテナ
24 揚穀筒
26 オーガ制御ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部に立設した揚穀筒(24)の上端に排出オーガ(5)を支持し、該排出オーガ(5)を無線オーガ操作器(11)で旋回及び昇降操作可能としたコンバインにおいて、前記無線オーガ操作器(11)からの指令電波を受信するアンテナ(23)と該指令電波に基づいて制御信号を出力するオーガ制御ボックス(26)を前記揚穀筒(24)の後側の部位に配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記アンテナ(23)の基部とオーガ制御ボックス(26)を排出オーガ(5)よりも低い位置に配置すると共に、アンテナ(23)における少なくとも排出オーガ(5)下端部よりも上側の部分を可撓性部材により構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記アンテナ(23)を排出オーガ(5)旋回範囲の外側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−29571(P2012−29571A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169093(P2010−169093)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】