説明

コンバイン

【課題】撮像手段により穀粒吐出口から排出された穀粒の貯留状態を確認するための画像情報を得ることができるものでありながら、撮像手段が損傷を受けるおそれを少なくすることが可能なコンバインを提供する。
【解決手段】穀粒タンクの穀粒を揚送する縦送りコンベアの上端部に、穀粒を横送りして穀粒吐出口19から穀粒を機外に排出する横送りコンベア20が、起伏揺動可能に且つ縦送りコンベアの縦向き軸芯を中心にして格納位置と穀粒排出位置とにわたり旋回可能に設けられ、穀粒吐出口19の下方側箇所を撮像する撮像手段28が、横送りコンベア20における円筒状の外筒部31の下側箇所に、外筒部31の軸芯方向視で、穀粒吐出口19の下端位置L1よりも上方に位置するとともに外筒部31の横幅方向外端位置L2よりも横幅方向内方側に位置する状態で備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒タンクの底部から搬出される穀粒を揚送する縦送りコンベアの上端部に、穀粒を横送りして先端部に設けられた穀粒吐出口から穀粒を機外に排出する横送りコンベアが連結され、前記横送りコンベアが起伏揺動可能に且つ前記縦送りコンベアの縦向き軸芯を中心にして格納位置と穀粒排出位置とにわたり旋回可能に構成され、且つ、前記穀粒吐出口の下方側箇所を撮像する撮像手段を備えて構成されているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインにおいて、従来では、例えば特許文献1に記載されるように、前記撮像手段としてのカメラが、横送りコンベアにおける穀粒吐出口に近い位置であって且つ横送りコンベアにおける円筒状の外筒部の横側部の上下中央位置に備えられる構成のものがあった。言い換えると、カメラは、横送りコンベアの外筒部の軸芯方向視で、外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向外方側に突出する状態で備えられる構成となっていた。
【0003】
つまり、横送りコンベアにおける穀粒吐出口に近い位置に撮像手段を備えて、穀粒吐出口からトラックの荷台に排出される穀粒の貯留状態を撮像するようにしたものであり、このような撮像手段により得られる穀粒の貯留状態の画像情報に基づいて、トラックの荷台に均平に穀粒を貯留することができるように穀粒吐出口を移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成は、穀粒吐出口から排出されてトラックの荷台に貯留される穀粒の貯留状態が撮像手段(カメラ)により画像情報として得られ、その画像情報からトラックの荷台に均平に穀粒を貯留することができるように穀粒排出状態を調整することが可能となるものであるが、上記従来構成では、撮像手段(カメラ)が、横送りコンベアの外筒部の軸芯方向視で、外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向外方側に突出する状態で備えられることから、次のような不利な面があった。
【0006】
すなわち、撮像手段が、横送りコンベアの外筒部の軸芯方向視で、外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向外方側に突出する状態で備えられることから、例えば、コンバインが畦や路上を走行しているような場合に、コンバインの通過経路の横側に植えられている木から張り出している枝等が、横送りコンベアの外筒部よりも横幅方向外方側に突出する撮像手段が引っ掛かることがあり、このように木の枝等が引っ掛かった状態で走行を継続すると、無理に引っ張られて撮像手段が損傷を受ける等のおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、撮像手段により穀粒吐出口から排出された穀粒の貯留状態を確認するための画像情報を得ることができるものでありながら、撮像手段が損傷を受けるおそれを少なくすることが可能なコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンバインは、穀粒タンクの底部から搬出される穀粒を揚送する縦送りコンベアの上端部に、穀粒を横送りして先端部に設けられた穀粒吐出口から穀粒を機外に排出する横送りコンベアが連結され、前記横送りコンベアが起伏揺動可能に且つ前記縦送りコンベアの縦向き軸芯を中心にして格納位置と穀粒排出位置とにわたり旋回可能に構成され、且つ、前記穀粒吐出口の下方側箇所を撮像する撮像手段を備えて構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記撮像手段が、前記横送りコンベアにおける円筒状の外筒部の下側箇所に、前記外筒部の軸芯方向視で、前記穀粒吐出口の下端位置よりも上方に位置するとともに前記外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向内方側に位置する状態で備えられている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、穀粒吐出口の下方側箇所を撮像する撮像手段が備えられていることから、穀粒吐出口から排出された穀粒を良好に貯留するための画像情報を得ることができる。
【0010】
そして、撮像手段が、横送りコンベアにおける円筒状の外筒部の下側箇所に、外筒部の軸芯方向視で、穀粒吐出口の下端位置よりも上方に位置する状態で備えられているから、横送りコンベアの先端部側に下方側の低い位置で木の枝等の外物が近づく場合、穀粒吐出口が形成される横送りコンベアの先端部分に外物が接当することがあっても、穀粒吐出口の下端位置よりも上方に位置する撮像手段には外物が引っ掛かるおそれが少ないものとなる。
【0011】
又、撮像手段が、外筒部の軸芯方向視で、外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向内方側に位置する状態で備えられているから、長い木の枝等の長尺状の外物が横送りコンベアの横外側から接当することがあっても、そのような長尺状の外物は、横送りコンベアの外筒部の横幅方向外端位置に沿って摺接しながら案内されることになり、撮像手段に引っ掛かるおそれが少ないものとなる。
【0012】
従って、第1特徴構成によれば、撮像手段により穀粒吐出口から排出された穀粒の貯留状態を確認するための画像情報を得ることができるものでありながら、撮像手段が損傷を受けるおそれを少なくすることが可能なコンバインを提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記横送りコンベアが、前記格納位置において、平面視にて基端部が機体右後部に位置するとともに先端部が機体左前部に位置する状態で備えられ、前記撮像手段が、前記外筒部の軸芯方向視で、前記外筒部の横幅方向中央位置と機体左側の横幅方向外端位置との間に位置する状態で備えられている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、横送りコンベアは、格納位置においては、平面視にて基端部が機体右後部に位置し、且つ、先端部が機体左前部に位置することになるが、穀粒吐出口から排出された穀粒の貯留状態を撮像する撮像手段は、機体左前部に近い箇所に位置する状態で備えられることになり、横送りコンベアが格納位置にあるときは、機体の左前部側の箇所を撮像することになる。
【0015】
そして、撮像手段が、外筒部の軸芯方向視で、外筒部の横幅方向中央位置と機体左側の横幅方向外端位置との間に位置する状態で備えられているから、撮像手段は、機体の左前部側の箇所のうち機体の左外側方に位置する箇所を良好に撮像することができる。
【0016】
その結果、横送りコンベアが格納位置に収納されている状態で刈取作業を行う場合、運転座席から最も遠く操作者が目視し難い刈取部の左側端部での刈取作業状況を、撮像手段の撮像情報によって確認することができ、使い勝手がよいものとなる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記外筒部の外周下端箇所に前記外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で補強部材が備えられ、前記撮像手段が、前記補強部材の下端位置よりも上方に位置する状態で備えられている点にある。
【0018】
横送りコンベアを用いてトラックの荷台に穀粒を排出させる場合、上記横送りコンベアの昇降操作並びに旋回操作を行いながら穀粒排出口をトラックの荷台上に位置させて穀粒を排出させる必要があるが、このような穀粒排出作業を行う場合に、横送りコンベアの穀粒排出口よりも少し基端側に寄った箇所がトラックの荷台の縦壁の上縁に衝突して損傷するおそれがある。
【0019】
そこで、第3特徴構成によれば、外筒部の外周下端箇所に前記外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で補強部材を備えるようにしたから、トラックの荷台の縦壁との衝突により横送りコンベアが損傷して穀粒排出作業が不能になることを回避し易いものとなっている。
【0020】
そして、撮像手段が補強部材の下端位置よりも上方に位置する状態で備えられているから、横送りコンベアを用いてトラックの荷台に穀粒を排出させる場合に、撮像手段がトラックの荷台の縦壁との衝突して損傷することを回避することができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記補強部材が、帯状の板材を断面形状が略V字形になるように折り曲げ形成した部材にて構成され、且つ、その長手方向が前記外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で横幅方向両側の端縁部が前記外筒部の外周下側箇所に固定され、前記撮像手段が、支持部材を介して前記補強部材に取り付けられている点にある。
【0022】
第4特徴構成によれば、帯状の板材を断面形状が略V字形になるように折り曲げ形成した部材にて補強部材が構成され、この補強部材の長手方向が外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で横幅方向両側の端縁部が外筒部の外周下側箇所に固定されるのであり、このように補強部材が固定することにより、外筒部がトラックの荷台と衝突するときの強度を持たせることが可能となる。そして、このような構成の補強部材では、左右両側に外筒部の軸芯方向に沿って長い帯状の平面が形成されるので、この平面を利用して支持部材を介して撮像手段を取り付けることができ、例えば、支持部材をボルト・ナットにより締め付けるだけで固定することができる等、簡単な連結構造により容易に撮像手段を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】横送りコンベアの先端部付近の側面図である。
【図4】横送りコンベアの先端部付近の横断平面図である。
【図5】横送りコンベアの先端部付近の一部縦断正面図である。
【図6】横送りコンベアの先端部付近の縦断正面図である。
【図7】制御ブロック図である。
【図8】穀粒排出状態を示す横送りコンベアの先端部付近の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、クローラ走行装置1の上部に設けた走行機体2の前部に刈取部5が設けられ、走行機体2には、キャビン3にて覆われた機体操縦部4、刈取部5から搬送された穀稈の脱穀及び選別を行う脱穀部7、脱穀部7から供給される穀粒を貯留する穀粒タンク8、この穀粒タンク8から機外に穀粒を排出する穀粒排出用アンローダ9等を備えてコンバインが構成されている。尚、図示はしないが、搭載されたエンジン(図示せず)からの動力が、刈取部5、脱穀部7、穀粒排出用アンローダ9等に伝達されてそれらが駆動されるように伝動機構が構成されている。
【0025】
刈取部5は、植立穀稈に対して分草作用して刈取対象穀稈と未刈穀稈とを分草する複数の分草具10、分草された刈取対象穀稈を引起す引起し装置11、刈取対象穀稈の株元を切断するバリカン型刈取装置12、刈取った縦姿勢の穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更しながら後方の脱穀部7に向けて搬送する縦搬送装置13等を備えて構成されている。又、この刈取部5は図示しない油圧シリンダにより横軸芯周りで揺動昇降操作可能に構成されている。
【0026】
脱穀部7は、図示はしないが、刈取穀稈を搬送しながら扱室内で穂先側を扱胴によって脱穀処理して、その脱穀処理で得られた処理物を受網から漏下させ、漏下した処理物に、揺動選別機構による篩い選別や唐箕からの選別風による風力選別などを施して、処理物を、単粒化穀粒、枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、切れワラやワラ屑などに選別し、単粒化穀粒を回収して穀粒タンク8に供給するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラは排ワラ処理装置14にて細断処理されるように構成されている。
【0027】
機体操縦部4の運転座席4Aの前方に位置するフロントパネル4Bには、左右方向の操作で走行機体2の旋回操作を行い且つ前後方向の操作で刈取部5を昇降させる十字揺動操作自在な刈取操向レバー15が備えられ、機体操縦部4の運転座席4Aの左側に位置するサイドパネル4Cには、走行駆動用の静油圧式の無段変速装置(図示せず)の変速操作を行う変速レバー17が備えられており、操縦者が、これらの刈取操向レバー15と変速レバー17を操作しながら車体を走行させながら刈取作業を行うことができるように構成されている。
【0028】
穀粒排出用アンローダ9は、穀粒タンク8の底部に設けられたスクリューコンベア(図示せず)により搬出される穀粒を揚送する縦送りコンベア18と、この縦送りコンベア18の上端部に連結され、穀粒を横送りして先端部に設けられた穀粒吐出口19から穀粒を機外のトラックT(図8参照)の荷台N等に排出する横送りコンベア20とを備えて構成されており、横送りコンベア20が起伏揺動可能に且つ縦送りコンベア18の縦向き軸芯Pを中心にして旋回可能に構成されている。
【0029】
横送りコンベア20について説明を加えると、図2に示すように、この横送りコンベア20は、先端側部分20aを縦軸芯Q周りで基端側部分20bに対して折り畳み格納可能な構造となっている。又、図1及び図3に示すように、横送りコンベア20の先端部には、上下方向に沿う案内通路を形成する短い案内筒部20cが連設されており、この案内筒部20aAの下端部に穀粒吐出口19が形成されている。そして、本実施形態では、この案内筒部20Aに対して、透明で且つ軟質の合成樹脂体からなる筒状のブーツBUが穀粒吐出口19の周囲を覆う状態で設けられている。
【0030】
すなわち、縦送りコンベア18と横送りコンベア20に亘って設けられた油圧シリンダ21を操作することにより、水平軸芯X1周りで横送りコンベア20が起伏揺動操作可能に構成され、縦送りコンベア18の下部に設けた旋回モータ22を回転させることで、縦送りコンベア18及び横送りコンベア20を一体的に縦送りコンベア18の縦向き軸芯Pを中心にして回動させて横送りコンベア20を旋回することができるように構成されている。また、ポテンショメータ式の旋回位置センサ23を備え、旋回する横送りコンベア20の旋回位置を検出できるようになっている。
【0031】
図3及び図5に示すように、横送りコンベア20は、円筒状の外筒部31の内部に駆動回転される搬送用スクリュー44が備えられており、図示はしないが縦送りコンベア18も横送りコンベア20と同様に、円筒状の外筒部の内部に駆動回転される搬送用スクリューを備えて構成されている。
【0032】
図2に示すように、機体操縦部4のサイドパネル4Cには、横送りコンベア20の起伏揺動操作及び旋回操作を指令するレバー操作式のオーガ操作用指令部25が備えられ、図7に示すように、オーガ操作用指令部25の指令に基づいて油圧シリンダ21及び旋回モータ22の作動を制御する制御装置26が備えられている。つまり、オーガ操作用指令部25により横送りコンベア20の上昇揺動が指令されると、制御装置26が油圧シリンダ21を作動させ、オーガ操作用指令部25により横送りコンベア20の旋回が指令されると、制御装置26が旋回モータ22を作動させるように構成されている。
【0033】
又、図示はしないが、搬送用スクリュー44に対するエンジンからの動力伝達を入切する穀粒排出クラッチ(図示せず)が、クラッチ操作レバー(図示せず)の操作によりクラッチ入り状態とクラッチ切り状態とに切り換え自在に備えられており、穀粒排出クラッチがクラッチ入り操作されるとオン状態となり、穀粒排出クラッチが切り操作されるとオフ状態となる排出入切センサ45が設けられ、この排出入切センサ45の検出情報が制御装置26に入力されるように構成されている。
尚、穀粒排出クラッチは、スイッチ式の指令具(図示せず)に基づいて制御装置26により作動制御されるアクチュエータ(例えば電動モータ等)により入切するものでもよく、この場合には、排出入切センサ45の代わりにスイッチ式の指令具の操作により穀粒排出クラッチの入切を判断できる。
【0034】
尚、横送りコンベア20の旋回操作を行う場合、キャビン3に干渉することがないように、旋回可能な範囲を予め設定できるようになっており、制御装置26は、旋回位置センサ23の検出情報に基づいて、横送りコンベア20が旋回可能な範囲を越えると、それ以上の作動を禁止するように構成されている。
【0035】
横送りコンベア20は、穀粒排出作業を行わない非作業状態では、図2の実線にて示すように、横送りコンベア20が機体上部に引退して受け具27に収納支持される格納位置Aに保持され、トラックTの荷台Nに穀粒を排出するときには、横送りコンベア20を格納位置Aから旋回用上昇位置まで上昇させたのち、図2の仮想線にて示すように、穀粒吐出口19がトラックTの荷台N上に位置する穀粒排出位置Bまで縦向き軸芯P周りで旋回操作される。図2に示すように、横送りコンベア20は、格納位置Aにおいて、平面視にて基端部(縦向き軸芯Pが位置する部分)が機体右後部に位置するとともに、先端部(穀粒吐出口19が位置する部分)が機体左前部に位置する状態で備えられている。
【0036】
そして、横送りコンベア20における穀粒吐出口19側の箇所に、例えばCCDカメラ等からなる撮像手段の一例である作業用カメラ28が備えられ、機体操縦部4に作業用カメラ28により撮像された画像を表示する表示手段としてのモニタ29が備えられている。このモニタ29の作動を制御装置26により制御するように構成されている。
【0037】
また、走行機体2の後部の左右中央には、走行機体2の後方の圃場の状況を撮影することができる位置に、例えばCCDカメラ等からなる後方カメラ30が取り付けられ、この後方カメラ30により撮像された画像もモニタ29に表示することができるように構成されている。
【0038】
このように、作業用カメラ28を取り付けることによって、横送りコンベア20が格納位置A以外にある場合、例えば、穀粒を排出する場合には、横送りコンベア20の先端の穀粒吐出口19から排出される穀粒の排出先(トラックTの荷台N等)の映像を撮影することができ、横送りコンベア20を旋回する場合には、旋回させる移動先の映像(移動先に存在する障害物等)を撮影することができる。又、横送りコンベア20が格納位置Aにある場合には、刈取部5の最未刈り側(左端)に位置する分草具10と茎稈列との相対位置状況を撮影することができる。
【0039】
このコンバインでは、横送りコンベア20における円筒状の外筒部31の外周面下側箇所に外筒部31の軸芯方向(図1の図面左右方向)に沿って延びる状態で補強部材32が設けられている。
図5に示すように、この補強部材32は、帯状の板材を断面形状が略V字形になるように折り曲げ形成した部材にて構成され、且つ、その長手方向が外筒部31の軸芯方向に沿って延びる状態で横幅方向両側の端縁部33が外筒部31の外周下側箇所に溶接にて固定されている。
【0040】
図1及び図3に示すように、補強部材32は、横送りコンベア20の先端側部分20aにおける長手方向中央部から先端部に亘って設けられており、横送りコンベア20の先端側部分20aの先端側を効果的に補強できるように構成されている。
【0041】
つまり、図8に示すように、トラックTの荷台Nに穀粒を排出させる場合、横送りコンベア20の穀粒吐出口19よりも少し基端側に寄った箇所がトラックTの荷台Nの縦壁tの上縁に衝突して損傷するおそれがあることから、このようにトラックTの荷台Nの縦壁tの上縁に衝突するおそれがある箇所、すなわち、横送りコンベア20の先端側部分20aにおける長手方向中央部から先端部に亘る箇所に補強部材32が設けられているのである。
【0042】
そして、この補強部材32に、穀粒吐出口19の下方側箇所を撮像すべく斜め前方下方側を撮像する形態で、且つ、外筒部31の軸芯方向に沿って位置変更調節可能に、作業用カメラ28が取り付けられている。
【0043】
以下、補強部材32に対する作業用カメラ28の取り付け構造について説明する。
図3〜図6に示すように、補強部材32には、左右両側に外筒部31の軸芯方向に沿って長い帯状の平面が形成されるので、この平面を取り付け用の平面34として利用するように構成されている。つまり、取り付け用の平面34に支持部材としてのカメラ取り付け用のステー35が取り付け用ボルト36によって締結固定され、このステー35に、穀粒吐出口19の下方側箇所を撮像すべく作業用カメラ28の撮像方向が斜め前方下方側に向く状態で作業用カメラ28が取り付けられている。
尚、補強部材32の一対の平面のうち、横送りコンベア20の格納位置Aで機体操縦部4とは反対側(左側)の平面が取り付け用の平面34として利用されるように構成されている。
【0044】
前記ステー35は、帯板部材を折り曲げることで傾斜姿勢の取り付け用の平面34に当て付けてネジ止めされる取付部35Aと、長辺方向が左右方向に延びるとともに板面が鉛直方向に向くカメラ支持部35Bとを備える構成となっている。
【0045】
図3及び図5に示すように、補強部材32における取り付け用の平面34には、取り付け用ボルト36が挿通するためのボルト挿通孔37が形成されており、この取り付け用の平面34の内面側には、取り付け用ボルト36が螺合するナット38が予め溶接する状態で備えられている。又、ボルト挿通孔37が外筒部31の軸芯方向に沿って適宜間隔をあけて並ぶ状態で複数箇所(この例では4箇所)に夫々形成されており、各ボルト挿通孔37には上述したような溶接ナット38が夫々備えられている。
【0046】
作業用カメラ28を上記複数箇所のボルト挿通孔37のうちのいずれかを選択して取り付けることができ、取り付け対象となるボルト挿通孔37を変更することにより、作業用カメラ28を外筒部31の軸芯方向に沿って位置変更調節することができる。
【0047】
又、作業用カメラ28は、補強部材32に固定されるステー35に対して、外筒部31の軸芯方向と直交する水平軸芯X2周りで姿勢を変更調節することができるように取り付けられている。
【0048】
つまり、図4に示すように、板状を略コの字形に折り曲げた保持部材40の中間支持部40aをボルト41によりステー35に固定してあり、保持部材40の中間支持部40aの左右両側に位置する一対の縦面部40b夫々に、水平軸芯X2と同一軸芯方向に沿って装着されるボルト42により作業用カメラ28を締結固定するようになっている。そして、このボルト42を緩めた状態で作業用カメラ28の向きを変更したのち、ボルト42を再度締め付けることにより、作業用カメラ28の姿勢を水平軸芯X2周りで変更調節することが可能であり、このことにより作業用カメラ28の撮像方向が作業状況の確認に適した向きになるように変更することが可能となる。
【0049】
そして、図6に示すように、作業用カメラ28が、横送りコンベア20における円筒状の外筒部31の下側箇所に、外筒部31の軸芯方向視で、穀粒吐出口19の下端位置L1(案内筒部20cの下端位置)よりも上方に位置するとともに外筒部31の横幅方向外端位置L2よりも横幅方向内方側に位置する状態で備えられている。さらに説明すると、作業用カメラ28が、外筒部31の軸芯方向視で、外筒部31の横幅方向中央位置L3と機体左側(図6の図面上では右側)の横幅方向外端位置L2との間に位置する状態で備えられている。
ちなみに、穀粒吐出口19に備えられるブーツBUは、軟質で透明の合成樹脂材からなり、外物が接触すると容易に変形するので、このブーツBUが接続される案内筒部20cの下端位置(穀粒吐出口19の下端位置L1)よりも上方に位置する状態で作業用カメラ28が備えられることになる。
【0050】
このように作業用カメラ28を配置することで、横送りコンベア20を格納位置Aに収納した状態で畦を走行しているとき等において、木の枝等が横送りコンベア20に接触することがあっても、木の枝は、外筒部31の横幅方向外端位置L2に接当して機体後方に案内されるので、作業用カメラ28に引っ掛かるおそれが少ないものになる。
【0051】
さらに、作業用カメラ28は、横送りコンベア20における外筒部31の下側箇所に、補強部材32の下端位置L4よりも上方に位置する状態で備えられている。
【0052】
このように作業用カメラ28を配置することで、横送りコンベア20を用いてトラックTの荷台Nに穀粒を排出させる場合に、作業用カメラ28がトラックTの荷台Nの縦壁tに衝突して損傷することを回避することができる。
【0053】
後方カメラ30の取り付け構造については説明は省略するが、後進走行するときに、機体後方側に障害物が存在しているか否かが判断できるように、機体後方側箇所を撮像することが可能なように取り付けられる。
【0054】
そして、横送りコンベア20が格納位置Aにあり、穀粒排出作動を行わないときには、後方カメラ30が撮像した画像情報をモニタ29に表示し、横送りコンベア20により穀粒排出作動を行うときには、作業用カメラ28が撮像した画像情報をモニタ29に表示するように使い分けを行うことができるようになっている。
【0055】
モニタ29により後方カメラ30が撮像した画像情報を表示する後方表示状態と、モニタ29により作業用カメラ28が撮像した画像情報を表示する穀粒排出表示状態との切り換えは、機体操縦部4に備えられた手動操作式の表示切換スイッチ46(図7参照)により行えるようになっており、又、横送りコンベア20が格納位置Aから移動させるようにオーガ操作用指令部25が操作された場合、及び、排出入切センサ45がオン状態を検出した場合には、モニタ29の表示内容を強制的に穀粒排出表示状態に切り換えるように構成されている。
【0056】
すなわち、制御装置26は、電源投入後の初期状態では、モニタ29の表示状態を後方表示状態に切り換え、その後、表示切換スイッチ46による切り換えが指令される毎に、後方表示状態と穀粒排出表示状態とに交互にモニタ29の表示状態を切り換えるように構成されている。
【0057】
又、制御装置26は、後方表示状態に切り換えられている状態において、オーガ操作用指令部25により横送りコンベア20を格納位置Aから移動させるために昇降あるいは旋回が指令されると、モニタ29の表示状態を穀粒排出表示状態に切り換えるように構成されている。その後、再度、後方表示状態に切り換えるときは、表示切換スイッチ46により切り換えを指令することになる。
【0058】
さらに、制御装置26は、後方表示状態に切り換えられている状態において、排出入切センサ45がオン状態を検出すると、モニタ29の表示状態を穀粒排出表示状態に切り換えるように構成されている。その後、再度、後方表示状態に切り換えるときは、表示切換スイッチ46により切り換えを指令することになる。
【0059】
このようにモニタ29の表示状態は操作者による表示切換スイッチ46の操作により任意に変更することができるので、例えば、刈取作業中に刈取部5における最左側箇所の刈取作業状態を確認するときは、モニタ29の表示状態を穀粒排出表示状態に切り換えることで対応できる。例えば、右回り方向に沿って回り刈り作業を行う作業形態等では、刈取部5における最左側箇所は既刈領域と未刈領域との境目となるので、刈り残しを起さないために、この箇所における刈取状態を作業用カメラ28の画像情報により確認することができる。
【0060】
又、横送りコンベア20の旋回作業や穀粒の排出作業を行っているときや穀粒排出クラッチが入り状態であるときは、運転者は横送りコンベア20を旋回させる移動先の状況や穀粒の排出先の状況を確認する必要性が高いので、このような作業状況に合わせて、自動的にモニタ29の表示内容を切り替えるようにしている。
【0061】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、作業用カメラ28が、外筒部31の軸芯方向視で、外筒部31の横幅方向中央位置L3と機体左側(図6では右側)の横幅方向外端位置L2との間に位置する状態で備えられる構成としたが、このような構成に代えて、作業用カメラ28を、外筒部31の軸芯方向視で、外筒部31の横幅方向中央位置L3と機体右側(図6であれば左側に相当)の横幅方向外端位置との間に位置する状態で備えられる構成としてもよい。
【0062】
(2)上記実施形態では、作業用カメラ28が、横送りコンベア20における外筒部31の下側箇所に、補強部材32の下端位置L4よりも上方に位置する状態で備えられる構成としたが、作業用カメラ28を補強部材32の下端位置L4よりも下方に突出する状態で備える構成としてもよい。
【0063】
(3)上記実施形態では、補強部材32が、帯状の板材を断面形状が略V字形になるように折り曲げ形成した部材にて構成されるものを示したが、補強部材32としては、帯板を上向きに開口したコの字形に折り曲げた部材等、種々の形状のものを利用することができる。
【0064】
(4)上記実施形態では、補強部材32に適宜間隔をあけて4個のボルト挿通孔37をあけて作業用カメラ28を外筒部31の軸芯方向に沿って位置変更調節可能に取り付ける構成としたが、このような構成に代えて、ボルト挿通孔37の個数は4個に限らず、2個、3個、5個以上のいずれの個数でもよく、又、このように複数のボルト挿通孔37を形成するものに代えて、補強部材32に外筒部31の軸芯方向に沿って長孔(図示せず)を形成してその長孔に沿ってスライド移動させてネジ等で締め付け固定することにより、作業用カメラ28を外筒部31の軸芯方向に沿って位置変更調節可能に取り付ける構成としてもよい。
さらに、作業用カメラ28を位置変更調節可能に取り付ける構成に代えて、作業用カメラ28を位置固定状態で補強部材32に取り付ける構成としてもよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、横送りコンベア20の先端側部分20aにおける長手方向中央部から先端部に亘って補強部材32を設けた構成を示したが、補強部材32の長さは適宜設定可能であり、例えば、横送りコンベア20の先端側部分20aの先端部のみに設けてもよく、横送りコンベア20の先端側部分20aの全長に亘って設けるものでもよい。
【0066】
(6)上記実施形態では、作業用カメラ28をCCDカメラで構成したが、MOS型カメラであってもよく、他の撮像素子を備えるものでもよい。
【0067】
(7)上記実施形態では、補強部材32の一対の平面のうち、横送りコンベア20の格納位置Aで機体操縦部4とは反対側の平面を作業用カメラ28の取り付け用の平面34として利用する構成としたが、横送りコンベア20の格納位置Aで機体操縦部4側の平面を作業用カメラ28の取り付け用の平面34として利用してもよく、補強部材32の一対の平面の両方を作業用カメラ28の取り付け用の平面34として利用してもよい。
【0068】
(8)上記実施形態では、先端側部分20aを基端側部分20bに対して折り畳み格納可能な構造に横送りコンベア20を構成したが、先端側部分20aを基端側部分20bに対して穀粒搬送方向に伸縮自在な構造の横送りコンベア20や、先端側部分20aと基端側部分20bとを一体化した構造の横送りコンベア20等でもよい。
又、上記実施形態では、横送りコンベア20の先端側の案内筒部20cの軟質の合成樹脂材からなるブーツBUを備えるようにしたが、このようなブーツBUを備えない構成としてもよい。
【0069】
(9)上記実施形態では、縦送りコンベア18及び横送りコンベア20を一体的に縦向き軸芯Pを中心にして回動させる構成としたが、縦送りコンベア18を固定状態とし、横送りコンベア20を縦向き軸芯Pを中心にして回動させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、起伏揺動並びに旋回自在な穀粒排出用の横送りコンベアを備えるとともに、穀粒吐出口の下方側箇所を撮像する撮像手段を備えるコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0071】
8 穀粒タンク
18 縦送りコンベア
19 穀粒吐出口
20 横送りコンベア
28 撮像手段
31 外筒部
32 補強部材
33 端縁部
35 支持部材
A 格納位置
B 穀粒排出位置
L1 穀粒吐出口の下端位置
L2 外筒部の横幅方向外端位置
L3 外筒部の横幅方向中央位置
L4 補強部材の下端位置
P 縦向き軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒タンクの底部から搬出される穀粒を揚送する縦送りコンベアの上端部に、穀粒を横送りして先端部に設けられた穀粒吐出口から穀粒を機外に排出する横送りコンベアが連結され、前記横送りコンベアが起伏揺動可能に且つ前記縦送りコンベアの縦向き軸芯を中心にして格納位置と穀粒排出位置とにわたり旋回可能に構成され、且つ、前記穀粒吐出口の下方側箇所を撮像する撮像手段を備えて構成されているコンバインであって、
前記撮像手段が、前記横送りコンベアにおける円筒状の外筒部の下側箇所に、前記外筒部の軸芯方向視で、前記穀粒吐出口の下端位置よりも上方に位置するとともに前記外筒部の横幅方向外端位置よりも横幅方向内方側に位置する状態で備えられているコンバイン。
【請求項2】
前記横送りコンベアが、前記格納位置において、平面視にて基端部が機体右後部に位置するとともに先端部が機体左前部に位置する状態で備えられ、
前記撮像手段が、前記外筒部の軸芯方向視で、前記外筒部の横幅方向中央位置と機体左側の横幅方向外端位置との間に位置する状態で備えられている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記外筒部の外周下端箇所に前記外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で補強部材が備えられ、
前記撮像手段が、前記補強部材の下端位置よりも上方に位置する状態で備えられている請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記補強部材が、帯状の板材を断面形状が略V字形になるように折り曲げ形成した部材にて構成され、且つ、その長手方向が前記外筒部の軸芯方向に沿って延びる状態で横幅方向両側の端縁部が前記外筒部の外周下側箇所に固定され、
前記撮像手段が、支持部材を介して前記補強部材に取り付けられている請求項3記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−90580(P2012−90580A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241123(P2010−241123)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】