説明

コンバータ制御装置

【課題】リアクトル電流を検出する電流センサの応答遅れの個体差によらず、より精度良くリアクトル電流を検出することが可能なコンバータ制御装置を提供する。
【解決手段】リアクトル電流検知手段230は、発振手段210から供給される三角波の谷、及び山(すなわち、三角波の最大変化ポイント)の時点でリアクトル電流を検知し、これを平均リアクトル電流導出手段240に出力する。平均リアクトル電流導出手段240は、リアクトル電流検知手段230から供給される、三角波の谷の時点で検知されるリアクトル電流Idaと三角波の山の時点で検知されるリアクトル電流Imoの対(例えば、リアクトル電流ida−1とリアクトル電流Imo−1)を平均化することで、平均リアクトル電流Iave−1〜Iave−kを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車等に搭載される燃料電池システムにおいては、燃料電池の発電能力を超える急な負荷の変化等に対応するため、動力源として燃料電池とバッテリとを備えたハイブリッド型の燃料電池システムが種々提案されている。
【0002】
ハイブリッド型の燃料電池システムにおいては、燃料電池の出力電圧等をDC−DCコンバータで制御している。このような制御を行うDC−DCコンバータとしては、パワートランジスタ、IGBT、FET等のスイッチング素子をPWM動作させて電圧の変換を行う形式のものが広く利用されている。一般的なDC−DCコンバータにおいては、スイッチング素子を駆動するためのデューティ指令は、リアクトルに流れる電流(リアクトル電流)の値や、出力電圧の値を用いるフィードバック系のPI(Proportional Integral)制御によって導出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−176567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなDC−DCコンバータでは、リアクトル電流を検知するための電流センサが設けられているが、かかる電流センサには応答遅れが存在する。このため、従来は電流センサの応答遅れを見込んでリアクトル電流の検出タイミングを一律に決定していたが、電流センサの応答遅れには個体差があるため、例えば複数の相から構成される多相DC−DCコンバータについては、各相の電流センサの応答遅れの相違により精度よくリアクトル電流を検知することができない、という問題があった。
【0005】
本発明は以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、リアクトル電流を検出する電流センサの応答遅れの個体差によらず、より精度良くリアクトル電流を検出することが可能なコンバータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンバータ制御装置は、燃料電池に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れるリアクトル電流を制御するスイッチとを備えたコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、所定周波数の三角波を発生する発振器と、前記三角波に同期した変化を示すリアクトル電流が得られるように、前記スイッチのオン、オフを切り換えるためのゲート信号を生成する生成回路と、前記三角波の山と谷の時点で、前記リアクトル電流を検出する電流センサと、前記山の時点で検出されるリアクトル電流と、前記谷の時点で検出されるリアクトル電流との平均値を導出するリアクトル電流導出手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、三角波の谷の時点でリアクトル電流を検知するとともに、三角波の山の時点でリアクトル電流を検知し、これら両リアクトル電流の対を平均化することで(図4等参照)、たとえ電流センサの応答遅れにばらつき(例えば、電流センサの個体差など)が生じていたとしても、このばらつきの影響度を抑制することができ、結果として精度の高いリアクトル電流の検出が可能となる。
【0008】
ここで、上記構成にあっては、前記生成回路は、前記三角波の谷から山へ向かう略中間地点で前記スイッチをオフからオンに切り換えるゲート信号を生成する一方、前記三角波の山から谷へ向かう略中間地点で前記スイッチをオンからオフに切り換えるゲート信号を生成する態様が好ましい。
【0009】
また、本発明に係る別のコンバータ制御装置は、一端が前記燃料電池の高電位側の端子に接続された主リアクトルと、一端が前記主リアクトルの他端に接続され、他端が前記燃料電池の低電位側の端子に接続された、スイッチングを行う主スイッチと、カソードが前記主リアクトルの他端に接続された第一ダイオードと、前記第一ダイオードのアノードと前記主スイッチの他端との間に設けられた平滑コンデンサとを有する主昇圧回路と、前記主スイッチに並列に接続され、かつ前記主リアクトルの他端と前記燃料電池の低電位側の端子に接続された、第二ダイオードとスナバコンデンサとを含む第一直列接続体と、前記第二ダイオードと前記スナバコンデンサとの接続部位と前記主リアクトルの一端との間に接続された、第三ダイオードと補助リアクトルと前記補助スイッチとを含む第二直列接続体とを有する補助回路とを備えたソフトスイッチングコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、所定周波数の三角波を発生する発振器と、前記三角波に同期した変化を示す主リアクトルのリアクトル電流が得られるように、前記主スイッチのオン、オフを切り換えるためのゲート信号を生成する生成回路と、前記三角波の山と谷の時点で、前記リアクトル電流を検出する電流センサと、前記山の時点で検出されるリアクトル電流と、前記谷の時点で検出されるリアクトル電流との平均値を導出するリアクトル電流導出手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リアクトル電流を検出する電流センサの応答遅れの個体差によらず、より精度良くリアクトル電流を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るハイブリッド燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係る各相コンバータの回路構成を示す図である。
【図3】同実施形態に係るリアクトル電流導出機能を示す機能ブロック図である。
【図4】同実施形態に係る三角波、ゲート信号、リアクトル電流、電流センサの出力信号の関係をあらわすタイミングチャートである。
【図5】従来技術に係る三角波、ゲート信号、リアクトル電流、電流センサの出力信号の関係をあらわすタイミングチャートである。
【図6】第2実施形態に係る多相FCソフトスイッチングコンバータの回路構成を示す図である。
【図7】同実施形態に係る多相FCソフトスイッチングコンバータの一相分の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施形態
以下、各図を参照しながら本発明に係わる実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る車両に搭載されたFCHVシステムの構成を示す。なお、以下の説明では車両の一例として燃料電池自動車(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)を想定するが、電気自動車などにも適用可能である。また、車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源、さらには携帯型の燃料電池システムにも適用可能である。
【0013】
<システムの全体構成>
FCHVシステム100は、燃料電池110とインバータ140の間にFCコンバータ2500が設けられるとともに、バッテリ120とインバータ140の間にDC/DCコンバータ(以下、バッテリコンバータ)180が設けられている。
【0014】
燃料電池110は、複数の単位セルを直列に積層してなる固体高分子電解質型セルスタックである。燃料電池110には、燃料電池110の出力電圧Vfcmesを検出するための電圧センサV0、及び出力電流Ifcmesを検出するための電流センサI0が取り付けられている。燃料電池110においては、アノード極において(1)式の酸化反応が生じ、カソード極において(2)式の還元反応が生じ、燃料電池110全体としては(3)式の起電反応が生じる。
【0015】
2 → 2H++2e- ・・・(1)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O ・・・(2)
2+(1/2)O2 → H2O ・・・(3)
【0016】
単位セルは、高分子電解質膜等を燃料極及び空気極の二つの電極で挟み込んだMEAを燃料ガスと酸化ガスとを供給するためのセパレータで挟み込んだ構造を有している。アノード極はアノード極用触媒層を多孔質支持層上に設けてあり、カソード極はカソード極用触媒層を多孔質支持層上に設けてある。
【0017】
燃料電池110には、燃料ガスをアノード極に供給する系統、酸化ガスをカソード極に供給する系統、及び冷却液を提供する系統(いずれも図示略)が設けられており、コントローラ160からの制御信号に応じて、燃料ガスの供給量や酸化ガスの供給量を制御することにより、所望の電力を発電することが可能となっている。
【0018】
FCコンバータ2500は、燃料電池110の出力電圧Vfcmesを制御する役割を担っている。本実施形態に係るFCコンバータ(多相DC−DCコンバータ)2500は、図1に示すように、U相コンバータ20a、V相コンバータ20b、W相コンバータ20cの三相を並列に接続した構成を有しており、例えば負荷の要求電力などに応じてU相のみを使用した一相駆動、U相とV相を使用した二相駆動、U相とV相とW相を使用した三相駆動といった駆動相の切換え制御が行われる。なお、以下の説明において、U相コンバータ20a、V相コンバータ20b、W相コンバータ20cを特に区別する必要がない場合には、単に各相コンバータ20と呼ぶ。
【0019】
このFCコンバータ2500により、燃料電池110の出力電圧Vfcmesが目標出力に応じた電圧となるように制御する。ここで、FCコンバータ2500の入力電流Ifcmesは、図1に示すように電流センサ2510により検出され、また入力電圧Vfcmesは電圧センサ2520により検出される。また、各相のリアクトルに流れる電流(以下、リアクトル電流)は、電流センサ2610a〜2610cによって検出される。具体的には、U相のリアクトル電流は電流センサ2610aによって検出され、V相のリアクトル電流は電流センサ2610bによって検出され、W相のリアクトル電流は電流センサ2610cによって検出される。なお、U相の電流センサ2610a、V相の電流センサ2610b、W相の電流センサ2610cを特に区別する必要がない場合には、単に電流センサ2610と呼ぶ。
【0020】
図2は、各相コンバータ20(すなわち、FCコンバータ2500の1相分)の回路を抜き出した負荷駆動回路の構成図である。なお、以下の説明では、各相コンバータ20に入力される昇圧前の電圧を入力電圧Vinと呼び、各相コンバータ20から出力される昇圧後の電圧を出力電圧Voutと呼ぶ。
【0021】
図2に示すように、各相コンバータ20は、リアクトルL1と、整流用のダイオードD1と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などからなるスイッチング素子SW1とを備えている。リアクトルL1は、その一端が燃料電池110の出力端(図示略)に接続され、他端がスイッチング素子SW1のコレクタに接続されている。ここで、リアクトルL1に流れる電流は、前述したように各相のリアクトル電流を検知する電流センサ2610によって検知される。スイッチング素子SW1は、インバータ140の電源ラインとアースラインの間に接続されている。具体的には、スイッチング素子SW1のコレクタが電源ラインに接続され、エミッタがアースラインに接続されている。かかる構成において、まず、スイッチSW1をONにすると、燃料電池110→インダクタL1→スイッチSW1へと電流が流れ、このときインダクタL1が直流励磁されて磁気エネルギが蓄積される。
【0022】
続いてスイッチSW1をOFFにすると、インダクタL1に蓄積された磁気エネルギによる誘導電圧が燃料電池110のFC電圧(入力電圧Vin)に重畳され、入力電圧Vinよりも高い作動電圧(出力電圧Vout)がインダクタL1から出力されるとともに、ダイオードD1を介して出力電流が出力される。コントローラ160は、このスイッチSW1のON/OFFのデューティ比(後述)を適宜変更することで、所望の出力電圧Voutを得る。
【0023】
図1に戻り、バッテリ120は、負荷130に対して燃料電池110と並列に接続されており、余剰電力の貯蔵源、回生制動時の回生エネルギ貯蔵源、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギバッファとして機能する。バッテリ120としては、例えば、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池等の二次電池が利用される。
【0024】
バッテリコンバータ180は、インバータ140の入力電圧を制御する役割を担っており、例えばFCコンバータ2500と同様の回路構成を有している。なお、バッテリコンバータ180として昇圧型のコンバータを採用しても良いが、これに代えて昇圧動作および降圧動作が可能な昇降圧型のコンバータを採用しても良く、インバータ140の入力電圧の制御が可能なあらゆる構成を採用することができる。
【0025】
インバータ140は、例えばパルス幅変調方式で駆動されるPWMインバータであり、コントローラ160からの制御指令に従って、燃料電池110またはバッテリ120から出力される直流電力を三相交流電力に変換して、トラクションモータ131の回転トルクを制御する。
【0026】
トラクションモータ131は、本車両の主動力となるものであり、減速時には回生電力を発生するようにもなっている。ディファレンシャル132は減速装置であり、トラクションモータ131の高速回転を所定の回転数に減速し、タイヤ133が設けられたシャフトを回転させる。シャフトには図示せぬ車輪速センサ等が設けられ、これにより当該車両の車速等が検知される。なお、本実施形態では、燃料電池110から供給される電力を受けて動作可能な全ての機器(トラクションモータ131、ディファレンシャル132を含む)を負荷130と総称している。
【0027】
コントローラ160は、FCHVシステム100の制御用のコンピュータシステムであり、例えばCPU、RAM、ROM等を備えている。コントローラ160は、センサ群170から供給される各種の信号(例えば、アクセル開度をあらわす信号や車速をあらわす信号、燃料電池110の出力電流や出力端子電圧をあらわす信号など)を入力して、負荷130の要求電力(すなわち、システム全体の要求電力)を求める。
【0028】
負荷130の要求電力は、例えば車両走行電力と補機電力との合計値である。補機電力には車載補機類(加湿器、エアコンプレッサ、水素ポンプ、及び冷却水循環ポンプ等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、及び懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配設される装置(空調装置、照明器具、及びオーディオ等)で消費される電力などが含まれる。
【0029】
そして、コントローラ(コンバータ制御装置)160は、燃料電池110とバッテリ120とのそれぞれの出力電力の配分を決定し、発電指令値を演算する。コントローラ160は、燃料電池110及びバッテリ120に対する要求電力を求めると、これらの要求電力が得られるようにFCコンバータ2500及びバッテリコンバータ180の動作を制御する。
【0030】
図3はコントローラ160などによって実現されるリアクトル電流導出機能を示すブロック図であり、図4は本実施形態に係る三角波、ゲート信号、リアクトル電流、電流センサの出力信号の関係をあらわすタイミングチャートである。
【0031】
発振手段(発振器)210は、基準となる所定周波数の三角波を発振し、これをゲート信号生成回路220、リアクトル電流検知手段230などに出力する。
ゲート信号生成回路(生成回路)220は、三角波と同様な変化を示すリアクトル電流が得られるように、ゲート信号の生成を行う。詳述すると、ゲート信号生成回路220は、図4に示すように、発振手段210から供給される三角波の谷から山へ向かう略中間点でタイマ割り込みを行い、スイッチSW1をオフからオンに切り換えるゲート信号(ゲートオン信号)の生成を行う一方、発振手段210から供給される三角波の山から谷へ向かう略中間点でタイマ割り込みを行い、スイッチSW1をオフからオンに切り換えるゲート信号(ゲートオフ信号)の生成を行う。
【0032】
リアクトル電流検知手段(電流検知手段)230は、発振手段210から供給される三角波の谷、及び山(すなわち、三角波の最大変化ポイント)の時点でリアクトル電流を検知し、これを平均リアクトル電流導出手段240に出力する。なお、図4では、三角波の谷の時点で検知されるリアクトル電流をIda−1〜Ida−k(k≧2)、三角波の山の時点で検知されるリアクトル電流Imo−1〜Imo−kであらわす。
【0033】
平均リアクトル電流導出手段(リアクトル電流導出手段)240は、リアクトル電流検知手段230から供給される、三角波の谷の時点で検知されるリアクトル電流Idaと三角波の山の時点で検知されるリアクトル電流Imoの対(例えば、リアクトル電流ida−1とリアクトル電流Imo−1)を平均化することで、平均リアクトル電流Iave−1〜Iave−kを導出する。なお、このように検知されたリアクトル電流は、フィードバック、フィードフォワード制御などに用いられる。
【0034】
ここで、図5は従来例に係る三角波、ゲート信号、リアクトル電流、電流センサの出力信号の関係をあらわすタイミングチャートである。
図5に示すように、リアクトル電流と電流センサ2610の出力信号との間には、電流センサ2610に起因した応答遅れdが存在する。
【0035】
従来、リアクトル電流の平均値を得るために、この電流センサ2610の応答遅れdを見越して、応答遅れ分だけ早いタイミングで電流センサ2610の出力信号を読み取っていたが、かかる構成では、電流センサの応答遅れのばらつき(例えば、電流センサの個体差など)に対応することができず、精度よくリアクトル電流(ここでは、リアクトル電流の平均値)を検知することができないという問題があった。
【0036】
これに対し、図4に示すように、三角波の谷の時点でリアクトル電流Idaを検知するとともに、三角波の山の時点でリアクトル電流Imoを検知し、これら両リアクトル電流の対(例えば、リアクトル電流ida−1とリアクトル電流Imo−1)を平均化することで、たとえ電流センサの応答遅れにばらつき(例えば、電流センサの個体差など)が生じていたとしても、このばらつきの影響度を抑制することができ、結果として精度の高いリアクトル電流の検出が可能となる。
【0037】
B.第2実施形態
上述した本実施形態では、DC−DCコンバータとしてIGBT等のスイッチング素子をPWM動作させて電圧の変換を行う形式のものを想定したが、これに限定する趣旨ではない。周知のとおり、DC−DCコンバータは、電子機器の省電力化、小型化及び高性能化に伴い、一層の低損失、高効率及び低ノイズ化が望まれており、特に、PWM動作に伴うスイッチング損失やスイッチングサージの低減が望まれている。
【0038】
このようなスイッチング損失、スイッチングサージを低減させる技術のひとつにソフトスイッチング技術がある。ここで、ソフトスイッチングは、ZVS(Zero Voltage Switching)又はZCS(Zero Current Switching)を実現するためのスイッチング方式であり、例えばインダクタ、スイッチング素子、ダイオードを備えた一般的な昇降圧型DC−DCコンバータに、スイッチング損失を低減させる補助回路を付加したもの(いわゆるソフトスイッチングコンバータ)によって実現される。本変形例では、燃料電池110の電圧を制御するDC−DCコンバータとして多相のソフトスイッチングコンバータ(以下、多相FCソフトスイッチングコンバータ)を採用した場合について説明する。
【0039】
図6は、多相FCソフトスイッチングコンバータ250の回路構成を示す図である。
多相FCソフトスイッチングコンバータ250は、U相コンバータ150a、V相コンバータ150b、W相コンバータ150cのほか、フリーホイール回路32c(ここではフリーホイールダイオードD6)を備えて構成されている。なお、以下の説明においてFCソフトスイッチングコンバータ250を構成する1相分のコンバータを特に区別する必要がない場合には、単にソフトスイッチングコンバータ150と呼ぶ。また、FCソフトスイッチングコンバータ150に入力される昇圧前の電圧をコンバータ入力電圧Vinと呼び、FCソフトスイッチングコンバータ150から出力される昇圧後の電圧をコンバータ出力電圧Voutと呼ぶ。
【0040】
図7は、多相FCソフトスイッチングコンバータ250を構成する1相分(例えばU相)の回路構成を示す図である。
FCソフトスイッチングコンバータ150は、昇圧動作を行うための主昇圧回路12aと、ソフトスイッチング動作を行うための補助回路12bとを備えて構成されている。
主昇圧回路12aは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などからなるメインスイッチS1とダイオードD4で構成されるスイッチング回路のスイッチ動作によって、コイルL1に蓄えられたエネルギを負荷130にダイオードD5を介して解放することで燃料電池22の出力電圧を昇圧する。
【0041】
詳述すると、コイル(リアクトル)L1の一端が燃料電池22の高電位側の端子に接続され、メインスイッチS1の一端の極がコイルL1の他端に接続され、メインスイッチS1の他端の極が燃料電池22の低電位側の端子に接続されている。また、ダイオードD5のカソード端子がコイルL1の他端に接続され、さらに、平滑コンデンサとして機能するコンデンサC3は、ダイオードD5のアノード端子とメインスイッチS1の他端との間に接続されている。主昇圧回路12aには、燃料電池22側に平滑コンデンサC1が設けられており、これにより燃料電池22の出力電流のリップルを低減することが可能となる。
【0042】
ここで、燃料電池110の高電位側の端子とコイルL1との間には、コイルL1に流れる電流(すなわちリアクトル電流)を検知するための電流センサ2610が設けられている。また、コンデンサC3にかかる電圧VHは、FCソフトスイッチングコンバータ150のコンバータ出力電圧Voutとなり、平滑コンデンサC1にかかる電圧VLは、燃料電池22の出力電圧であってFCソフトスイッチングコンバータ150のコンバータ入力電圧Vinとなる。
【0043】
補助回路12bには、メインスイッチS1に並列に接続された、ダイオードD3とこのダイオードD3に直列に接続されたスナバコンデンサC2とを含む第1直列接続体が含まれている。第1直列接続体は、ダイオードD3のカソード端子がコイルL1の他端に接続され、ダイオードD3のアノード端子がスナバコンデンサC2の一端に接続されている。さらに、スナバコンデンサC2の他端は、燃料電池22の低電位側の端子に接続されている。
【0044】
さらに、補助回路12bには、ダイオードD2と、補助スイッチS2及びダイオードD1で構成されるスイッチング回路と、誘導素子であるコイルL2とが直列に接続された第2直列接続体が含まれる。この第2直列接続体は、ダイオードD2のアノード端子が第1直列接続体のダイオードD3とスナバコンデンサC2との接続部位に接続されている。さらに、ダイオードD2のカソード端子が補助スイッチS2の一端の極に接続されている。また、補助スイッチS2の他端は、各相に共通のコイルL2の一端側に接続され、コイルL2の他端側は燃料電池22の高電位側の端子に接続されている。
【0045】
このように構成されるFCソフトスイッチングコンバータ150においては、コントローラ160がメインスイッチS1のスイッチングデューティー比を調整することで、FCソフトスイッチングコンバータ150による昇圧比、すなわちコンバータ入力電圧Vinに対するコンバータ出力電圧Voutの比が制御される。また、メインスイッチS1のスイッチング動作において補助回路12bの補助スイッチS2のスイッチング動作を介在させることで、ソフトスイッチングが実現される。
【0046】
本実施形態も上述した第1実施形態と同様、コントローラ160が、三角波の谷の時点でメインスイッチL1に流れるリアクトル電流Idaを検知するとともに、三角波の山の時点でメインスイッチL1に流れるリアクトル電流Imoを検知し、これら両リアクトル電流の対(例えば、リアクトル電流ida−1とリアクトル電流Imo−1)を平均化することで、精度の高いリアクトル電流の検出が可能となる。
【0047】
なお、以上説明した各実施形態では、複数の相を備えた多相コンバータの制御装置を例に説明したが、かかる構成に限定する趣旨ではなく、単相コンバータの制御装置についても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
20a…U相コンバータ、20b…V相コンバータ、20c…W相コンバータ、100…FCHVシステム、110…燃料電池、120…バッテリ、130…負荷、140…インバータ、2500…FCコンバータ、2610a,2610b,2610c…電流センサ、160…コントローラ、210…発振手段、220…ゲート信号生成回路、230…リアクトル電流検知手段、240…平均リアクトル電流導出手段、170…センサ群、180…バッテリコンバータ、250…FCソフトスイッチングコンバータ、S1…メインスイッチ、S2…補助スイッチ、C1,C3…平滑コンデンサ、C2…スナバコンデンサ、L1,L2,…コイル、D1,D2,D3,D4,D5…ダイオード、D6…フリーホイールダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れるリアクトル電流を制御するスイッチとを備えたコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、
所定周波数の三角波を発生する発振器と、
前記三角波に同期した変化を示すリアクトル電流が得られるように、前記スイッチのオン、オフを切り換えるためのゲート信号を生成する生成回路と、
前記三角波の山と谷の時点で、前記リアクトル電流を検出する電流センサと、
前記山の時点で検出されるリアクトル電流と、前記谷の時点で検出されるリアクトル電流との平均値を導出するリアクトル電流導出手段と
を具備するコンバータ制御装置。
【請求項2】
前記生成回路は、前記三角波の谷から山へ向かう略中間地点で前記スイッチをオフからオンに切り換えるゲート信号を生成する一方、前記三角波の山から谷へ向かう略中間地点で前記スイッチをオンからオフに切り換えるゲート信号を生成する、請求項1に記載のコンバータ制御装置。
【請求項3】
一端が前記燃料電池の高電位側の端子に接続された主リアクトルと、
一端が前記主リアクトルの他端に接続され、他端が前記燃料電池の低電位側の端子に接続された、スイッチングを行う主スイッチと、
カソードが前記主リアクトルの他端に接続された第一ダイオードと、
前記第一ダイオードのアノードと前記主スイッチの他端との間に設けられた平滑コンデンサとを有する主昇圧回路と、
前記主スイッチに並列に接続され、かつ前記主リアクトルの他端と前記燃料電池の低電位側の端子に接続された、第二ダイオードとスナバコンデンサとを含む第一直列接続体と、
前記第二ダイオードと前記スナバコンデンサとの接続部位と前記主リアクトルの一端との間に接続された、第三ダイオードと補助リアクトルと前記補助スイッチとを含む第二直列接続体とを有する補助回路とを備えたソフトスイッチングコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、
所定周波数の三角波を発生する発振器と、
前記三角波に同期した変化を示す主リアクトルのリアクトル電流が得られるように、前記主スイッチのオン、オフを切り換えるためのゲート信号を生成する生成回路と、
前記三角波の山と谷の時点で、前記リアクトル電流を検出する電流センサと、
前記山の時点で検出されるリアクトル電流と、前記谷の時点で検出されるリアクトル電流との平均値を導出するリアクトル電流導出手段と
を具備するコンバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−288366(P2010−288366A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139968(P2009−139968)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】