説明

コンパクト蛍光ランプ用の蛍光体ブレンド及びこれを含有するランプ

LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体、Y23:Eu3+蛍光体、Sr6BP520:Eu2+蛍光体、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体及び随意としてのBaMgAl1117:Eu2+蛍光体を含むコンパクト蛍光ランプ用の蛍光体ブレンドであって、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体を5〜20重量%含有し且つ前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を5〜30重量%含有する前記ブレンドが記載される。該蛍光体ブレンドを含有する蛍光体コーティングを有するコンパクト蛍光ランプは、標準的なコンパクト蛍光ランプによって発生する光より心地よいと感じる光を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト蛍光ランプ(コンパクト蛍光灯、CFL)は、住宅用照明用途において次第に広く受け入れられるようになってきている。CFLは従来の白熱ランプ(白熱灯)よりエネルギー効率がよいので、世界規模でのエネルギー消費にとってこれは重要なことである。特に、ランプによって発生する光は、全光束又はランプルーメンに関して規定される。ランプの入力電力に対する発生光は、一般的にルーメン/ワット(LPW)に関して定量化される。従来の白熱ランプは15〜30LPWの範囲で働くのに対して、CFLは典型的には50〜90LPWの範囲で働く。従って、CFLランプは二分の一から三分の一の電力消費で同等の光出力を産み出す。
【背景技術】
【0002】
エネルギー節約におけるこの有意の利点にも拘らず、CFLがさらに広く受け入れられるようになるのには依然として障壁が存在する。これらの障壁の1つは、かなりの割合の人々がCFLによって発生する光の質に満足していないということである。光の質の1つの尺度は演色指数(CRI)であり、これは光源が物体の色相を歪み無しに照らす能力の尺度である。CFLランプは典型的には80より大きいCRIを有し、これはHID及び直線型蛍光ランプのような他の人工光源については高いと見なされる。これらの高いCRIにも拘らず、CFLランプの色の質は一般的に不十分又は受け入れがたいものとされている。従って、CFLランプがもっと広く受け入れられるようにもっと「心地よい」光を見出すことが有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の欠点を取り除くことにある。
【0004】
本発明の他の目的は、コンパクト蛍光ランプに用いるための蛍光体ブレンドを提供することにある。
【0005】
本発明のさらなる目的は、多くの人々にとってより一層心地よい光を発するコンパクト蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの目的に従えば、LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体、Y23:Eu3+蛍光体、Sr6BP520:Eu2+蛍光体、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体及び随意(任意)としてのBaMgAl1117:Eu2+蛍光体を含む蛍光体ブレンドであって、Sr6BP520:Eu2+蛍光体を5〜20重量%含有し且つMg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を5〜30重量%含有する前記蛍光体ブレンドが提供される。好ましくは、前記蛍光体ブレンドはまた、前記Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜50重量%、そして前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜10重量%含有する。
【0007】
別の実施形態において、前記蛍光体ブレンドは、LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜30重量%、Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、Sr6BP520:Eu2+蛍光体を1〜5重量%、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を10〜30重量%、そしてBaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜2重量%含む。
【0008】
さらなる実施形態において、前記蛍光体ブレンドは、LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体約27重量%、Y23:Eu3+蛍光体約54重量%、Sr6BP520:Eu2+蛍光体約5重量%、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体約15重量%及びBaMgAl1117:Eu2+蛍光体約0.1重量%未満を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、LaPO4:Ce3+,Tb3+(LAP)蛍光体を用いて作られたCFLランプのスペクトルパワー分布図である。
【図2】図2は、Y23:Eu3+蛍光体(YOE)を用いて作られたCFLランプのスペクトルパワー分布図である。
【図3】図3は、BaMgAl1117:Eu2+蛍光体(BAM)を用いて作られたCFLランプのスペクトルパワー分布図である。
【図4】図4は、Sr6BP520:Eu2+蛍光体を用いて作られたCFLランプのスペクトルパワー分布図である。
【図5】図5は、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を用いて作られたCFLランプのスペクトルパワー分布図である。
【図6】図6は、標準CFLランプ及び本発明に従う強化CFLランプのx、y色座標をプロットしたグラフである。
【図7】図7は、コンパクト蛍光ランプの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明並びに本発明の他の及びさらなる目的、利点及び能力をよりよく理解するために、以下の開示及び添付した特許請求の範囲を、上記の図面と関連づけて参照する。
【実施例】
【0011】
より「心地よい」質の光を発生させるためにCFLランプに用いることができる蛍光体ブレンドを割り出すために、人間による標本調査を行った。この調査を行うために、濃い青色から濃い赤色までの発光範囲の個々のタイプの蛍光体を用いて、様々なCFLランプを造った。個々のタイプの蛍光体を含有させた試験ランプを表1に示し、それらのスペクトルパワー分布を図1〜5に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
調光安定器(dimming ballasts)を用いて、これらのランプからの光と基本的な(primary)2700K白色CFLランプからの光とを様々な割合で混合した。次いでこの混合照明下で多くの色つき材料を検査した。色つき材料は、中間色から純色までにわたるものだった。最初のグループの観察者について、「心地よい」又は「好みだ」という返答を観察者から引き出す2つのタイプの蛍光体を選び出すことができた。色つき材料は総じて、ブレンドされた光源下においてより一層「鮮明」に見えた。
【0014】
このサンプル調査(投票)結果を利用し、標準2700K相関色温度(CCT)に近い白色光を発生させるために、調光された光源による初期スクリーニング(選別)において導き出された割合に従ってブレンドされた個々のタイプの蛍光体を用いて、26WのCFLランプを製造した。2700Kはこのブレンドについての目標色温度として選択したが、他の色温度、例えば3000K、3500K、4100K及び5000Kについても同様の効果が期待される。強化CFL蛍光体ブレンドの組成を表2に与える。
【0015】
【表2】

【0016】
強化CFLランプの色のメトリクスを、表3及び図6において標準CFLランプと比較する。
【0017】
【表3】

【0018】
これらのランプを用いて、(1)色彩豊かな衣服を着せたマネキン人形、(2)黒っぽい衣服を着せたマネキン人形、(3)木製家具、(4)額に入れられた絵、(5)果実及び野菜、(6)切り花、又は(7)淡い色調の壁及び窓縁:から成る2つの別個のしかし同じ外見の観察対象に照明を当てた。これらの観察対象は、家庭で見られる代表的な物として選んだ。
【0019】
試験では、普通の調査対照例として白熱照明を含ませた。調査手順は、年齢、性別、人種が異なる35人の観察者のグループに、照明を替えた時の2つの観察対象の見た目の好みを答えさせるものだった。各調査についての条件を表4に与える。
【0020】
【表4】

【0021】
観察者は、年齢及び性別無作為サンプルとなるように選んだ(表5)。いずれの観察者も、色覚異常はなかった。調査結果を表6に示す。
【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
調査1は対照用調査であり、両方の部屋に同じランプを用いた。反応変数は表7に示したように割り当てられた。
【0025】
【表7】

【0026】
好みのものがなければ調査の平均値は0になる。Aが好みであれば平均値はプラスになる。次いで平均が0となる蓋然性(表8においてP(0))を見つけ出すためにスチューデントT検定を計算する。調査2、5及び6は、0とは有意に異なることが示される。これらの場合の平均はすべてプラスであり、強化CFLランプの方が好みであることを示している。
【0027】
【表8】

【0028】
また、対照試験(即ち調査1)との平均の差を決定するために、ペアードt検定も計算した。調査結果が対照試験のものとは異なるものとなる蓋然性は、下記表9においてP(0)に見出される。調査2及び5は0とは有意に異なる。これらの場合の平均差は共にプラスであり、強化CFLの方が好みであることを示している。
【0029】
【表9】

【0030】
図7に、コンパクト蛍光ランプを示す。このランプは、螺旋形状の管状封体部2の内側表面上に本発明に従う蛍光体ブレンドを含有する蛍光体コーティングを有するものである。封体部2にはさらに、少量の水銀及び低圧水銀ガス放電を発生させるための一対の電極が入れられる。封体部2は、ランプを作動させるための自蔵式安定器5の上に乗せられ、従来のねじ込み口金7を有する。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態であると現時点で考えられるものを示して説明してきたが、当業者であれば添付した特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び改良を加えることができるだろう。
【符号の説明】
【0032】
2・・・管状封体部
5・・・自蔵式安定器
7・・・ねじ込み式口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体、Y23:Eu3+蛍光体、Sr6BP520:Eu2+蛍光体、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体及び随意としてのBaMgAl1117:Eu2+蛍光体を含むコンパクト蛍光ランプ用蛍光体ブレンドであって、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体を5〜20重量%含有し且つ前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を5〜30重量%含有する、前記蛍光体ブレンド。
【請求項2】
前記Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜50重量%、そして前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜10重量%含有する、請求項1に記載の蛍光体ブレンド。
【請求項3】
LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜30重量%、Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、Sr6BP520:Eu2+蛍光体を1〜5重量%、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を10〜30重量%、そしてBaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜2重量%含む、コンパクト蛍光ランプ用蛍光体ブレンド。
【請求項4】
前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体約27重量%、前記Y23:Eu3+蛍光体約54重量%、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体約5重量%、前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体約15重量%及び前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体約0.1重量%未満を含有する、請求項3に記載の蛍光体ブレンド。
【請求項5】
前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体26.8重量%、前記Y23:Eu3+蛍光体54.0重量%、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体4.7重量%及び前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体14.5重量%を含有する、請求項4に記載の蛍光体ブレンド。
【請求項6】
LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体、Y23:Eu3+蛍光体、Sr6BP520:Eu2+蛍光体、Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体及び随意としてのBaMgAl1117:Eu2+蛍光体のブレンドを含む蛍光体コーティングを有するコンパクト蛍光ランプであって、前記ブレンドが前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体を5〜20重量%含有し且つ前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を5〜30重量%含有する、前記コンパクト蛍光ランプ。
【請求項7】
前記ブレンドが前記Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜50重量%、そして前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜10重量%含有する、請求項6に記載のコンパクト蛍光ランプ。
【請求項8】
約2700Kの相関色温度を有する光を発生する、請求項6に記載のコンパクト蛍光ランプ。
【請求項9】
前記ブレンドが前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体を20〜30重量%、前記Y23:Eu3+蛍光体を40〜70重量%、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体を1〜5重量%、前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体を10〜30重量%、そして前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体を0〜2重量%含有する、請求項6に記載のコンパクト蛍光ランプ。
【請求項10】
前記ブレンドが前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体約27重量%、前記Y23:Eu3+蛍光体約54重量%、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体約5重量%、前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体約15重量%及び前記BaMgAl1117:Eu2+蛍光体約0.1重量%未満を含有する、請求項9に記載のコンパクト蛍光ランプ。
【請求項11】
前記ブレンドが前記LaPO4:Ce3+,Tb3+蛍光体26.8重量%、前記Y23:Eu3+蛍光体54.0重量%、前記Sr6BP520:Eu2+蛍光体4.7重量%及び前記Mg4GeO5.5F:Mn4+蛍光体14.5重量%を含有する、請求項10に記載のコンパクト蛍光ランプ。
【請求項12】
約2700Kの相関色温度を有する光を発生する、請求項11に記載のコンパクト蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−539297(P2010−539297A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525065(P2010−525065)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076405
【国際公開番号】WO2009/036425
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】