説明

コンピュータの動作モード制御回路

【課題】コンピュータをスリープモードから通常モードに復帰させる。
【解決手段】マイコン10は、スリープモードに移行する直前のボリューム12の位置に応じた電圧Vxを取り込む。この電圧に対して、上限電圧値VH=Vx+δと下限電圧値VL=Vx−δを設定する。マイコン10がスリープモードに移行した後、コンパレータ22,24は、現在の入力電圧と上限電圧値VH、下限電圧値VLとをそれぞれ比較する。ORゲート26は比較結果に応じて割込み信号をマイコン10に供給する。現在の入力電圧値が上限電圧値VHを超えるか、下限電圧値VLを下回る場合にスリープモードから通常モードに復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータの動作モード制御回路に関し、特にスリープモード(あるいはスタンバイモード)と通常モード間の移行に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオアンプ等の機器において、アナログ回路への外乱を極力抑えてノイズを防止するため、あるいは消費電力を抑制するために、機器内部の複数のマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称する)の中で現在の動作ないし機能に直接関係しないマイコンを通常モードからスリープモードに移行させることが行われている。
【0003】
一方、スリープモードに移行したマイコンの通常モードへの復帰は、外部割込み端子を使用し、ロジックレベルでの変化をマイコンが検知することで行われる。下記の特許文献には、キースイッチの操作を検出することで割込み命令によりスリープモードを解除することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−13671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、機器のパネルに可変抵抗式のボリュームが設けられており、このボリューム位置に対して、特定の処理をマイコンが行う場合を想定する。つまり、ボリューム位置をマイコンに内蔵されたA/Dコンバータを用いて数値化して把握し、数値に応じた処理を行う場合である。この場合においても、マイコンを通常モードからスリープモードに移行させることでノイズ抑制あるいは消費電力抑制を図ることが考えられるが、現在のボリューム位置をA/Dコンバータを用いてマイコンに取り込む構成とした場合、取り込まれた数値が以前に比べて変化しているか否かを判断し続なければならず、結局、通常モードからスリープモードに移行することができない問題がある。もちろん、強制的にスリープモードに移行させることも可能であるが、スリープモードを継続することができなくなる。このような問題は、ボリュームのみならず、任意のアナログスイッチあるいはアナログセンサを用いた場合にも生じ得る。
【0006】
本発明は、ボリューム等のアナログセンサの検出値に基づいて動作するコンピュータをスリープモードに移行でき、かつスリープモードから通常モードに復帰させることが可能な回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アナログセンサの検出値に応じて動作するコンピュータをスリープモードから通常モードに復帰させる制御回路であって、前記コンピュータがスリープモードに移行するときの前記アナログセンサの検出値を基準値として取得する取得手段と、前記コンピュータが前記スリープモードに移行した後において、前記アナログセンサの検出値と、前記基準値に基づいて設定された、前記アナログセンサの検出値が変化したものと判定するための判定しきい値とを比較する比較手段と、前記比較手段での比較結果に応じて前記コンピュータに対して通常モードに復帰させるための復帰信号を割込み信号として供給する供給手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、アナログセンサの検出値に応じて動作するコンピュータをスリープモードから通常モードに復帰させる制御回路であって、前記コンピュータがスリープモードに移行するときの前記アナログセンサの検出値に応じた電圧値を基準電圧値として取得する取得手段と、前記コンピュータが前記スリープモードに移行した後において、前記アナログセンサの検出値に対応する電圧値と、前記基準電圧値に対して所定のマージンを付加して設定された上限電圧値と下限電圧値とをそれぞれ比較する比較手段と、前記アナログセンサの検出値に対応する電圧値が前記上限電圧値を超える場合、あるいは前記下限電圧値を下回る場合に前記コンピュータに対して通常モードに復帰させるための復帰信号を割込み信号として供給する供給手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で現在のアナログセンサの状態を監視してコンピュータに割込み信号を供給することができる。したがって、コンピュータは常に現在のアナログセンサの状態を監視する必要がなく、通常モードからスリープモードに移行し、かつ、スリープモードから通常モードに復帰することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、機器のパネルに設けられたボリュームを例にとり説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態における制御回路の構成を示す。制御回路は、マイコン10とボリューム12との間に設けられ、ローパスフィルタ(LPF)14、A/Dコンバータ16、D/Aコンバータ18,20、コンパレータ22、24及び論理和ゲート(ORゲート)26を含んで構成される。
【0012】
ボリューム12の位置に応じた入力電圧は、LPF14を介してA/Dコンバータ16に供給される。A/Dコンバータ16は、ボリューム位置に応じた入力電圧をデジタル値に変換して入力ポートからマイコン10に供給する。マイコン10は、一定時間の無操作状態を検出することで通常モードからスリープモードに移行するが、スリープモードに移行するとき、より正確には移行する直前のデジタル値をA/Dコンバータ16から取り込む。また、マイコン10は、スリープモードに移行するときのデジタル値に対し、ボリューム12が操作されたと認識できる電圧値を設定する。設定する電圧値は、上限電圧値と下限電圧値である。直前のデジタル値をVxとした場合、所定の値δを用いて、上限電圧値VH=Vx+δ、下限電圧値VL=Vx−δと設定する。上限電圧値VHはこれを超えた場合にボリューム12が上側に操作されたと判定するためのしきい値であり、下限電圧値はこれを下回った場合にボリューム12が下側に操作されたと判定するためのしきい値である。ボリューム12の位置に応じた入力電圧が上限電圧値と下限電圧値の間である場合、実質的にボリューム12は操作されていないとみなす。すなわち、所定値δはボリューム12が操作されたか否かを判定するためのマージンである。マイコン10は、これらの電圧値VH、VLを設定した後、出力ポートからVH及びVLを出力して通常モードからスリープモードに移行する。スリープモードから通常モードへの復帰は、割込み入力ポートからの割込み信号により実行され、入力ポートから入力されるデジタル値の変化により実行されるわけではないので、マイコン10は常に入力ポートからデジタル値を取り込む必要はなく、したがって上限電圧値VHと下限電圧値VLを設定して出力ポートから出力した後は、通常モードからスリープモードに移行することができる。
【0013】
マイコン10の出力ポートから出力された上限電圧値VH及び下限電圧値VLはそれぞれD/Aコンバータ18,20でアナログ電圧値に変換され、コンパレータ22,24の一方の端子に供給される。すなわち、上限電圧値VH(アナログ値)はコンパレータ22の反転入力端子(−)に供給され、下限電圧値(アナログ値)はコンパレータ24の非反転入力端子(+)に供給される。コンパレータ22の非反転入力端子(+)及びコンパレータ24の反転入力端子(−)にはボリューム12の現在の入力電圧値が供給される。コンパレータ22,24は、マイコン10がスリープモードに移行した後に常時、上限電圧値VHと入力電圧値、下限電圧値VLと入力電圧値をそれぞれ比較し、比較結果をVA信号、VB信号としてORゲート26に出力する。コンパレータ22,24は、非反転入力端子の電圧値が反転入力端子の電圧値よりも大きい場合にHi、小さい場合にLowとなる信号を出力する。ORゲート26は、VA信号とVB信号の論理和を演算し、演算結果を割込み信号Vとしてマイコン10の割込み入力ポートに供給する。コンパレータ22,24のいずれかがHiとなる、つまり、ボリューム12の現在の位置に応じた入力電圧が上限電圧値VHを超えた場合、あるいはボリューム12の現在の位置に応じた入力電圧が下限電圧値VLを下回った場合にORゲート26の演算結果である割込み信号VはHiとなり、マイコン10は割込み信号がHiとなることでスリープモードから通常モードに復帰する。
【0014】
図2に、入力電圧値と上限電圧値VH=Vx+δ及び下限電圧値VL=Vx−δとの大小関係と、大小関係に応じた論理値表を示す。入力電圧値が上限電圧値VHと下限電圧値VLの間である場合、割込み信号VはLowのままでありマイコン10はスリープモードを継続する。ユーザがボリューム12を操作して入力電圧値が上限電圧値VHを超えるか、下限電圧値VLを下回った場合、割込み信号VがHiとなってマイコン10は通常モードに復帰し、ボリューム12の現在の位置に応じた処理を実行する。
【0015】
本実施形態では、A/Dコンバータ16とD/Aコンバータ18とD/Aコンバータ20を制御回路の一部として説明しているが、マイコン10に内蔵されたA/Dコンバータ及びD/Aコンバータを用いてもよい。
【0016】
<第2実施形態>
図3に、本実施形態における制御回路の構成を示す。第1実施形態では、上限電圧値VHと下限電圧値VLをマイコン10で設定したが、本実施形態では下限電圧値VLのみをマイコン10で設定し、上限電圧値VHを制御回路内で生成する。
【0017】
図1の構成に対し、D/Aコンバータ18の代わりに加算器28が設けられる。マイコン10は、スリープモードに移行する直前の入力電圧値Vxに対して下限電圧値VL=Vx−δを設定して出力ポートから出力する。D/Aコンバータ20は、下限電圧値VLをアナログ値に変換してコンパレータ24の非反転入力端子(+)に供給するとともに、加算器28にも供給する。
【0018】
加算器28は、下限電圧値VL(アナログ値)に所定値2δを加算して上限電圧値VHを生成し、コンパレータ22の反転入力端子(―)に供給する。下限電圧値VL=Vx−δであるから、加算器28の出力はVH=VL+2δ=Vx+δである。コンパレータ22,24は第1実施形態と同様にそれぞれ上限電圧値VH、下限電圧値VLとボリューム12の現在の位置に応じた入力電圧値とを比較し、比較結果VA,VBをそれぞれORゲート26に供給する。
【0019】
図4に、本実施形態の論理値表を示す。第1実施形態と同様に、入力電圧値が上限電圧値VHと下限電圧値VLの間である場合、割込み信号VはLowのままでありマイコン10はスリープモードを継続する。ユーザがボリューム12を操作して入力電圧値が上限電圧値VHを超えるか、下限電圧値VLを下回った場合、割込み信号VがHiとなってマイコン10は通常モードに復帰し、ボリューム12の現在の位置に応じた処理を実行する。
【0020】
本実施形態では、マイコン10で下限電圧値VLを設定し、加算器28で下限電圧値VLを用いて上限電圧値VHを設定しているが、マイコン10で上限電圧値VHを設定し、減算器で上限電圧値VHを用いて下限電圧値VLを設定してもよい。すなわち、減算器は、VL=VH−2δ=Vx−δにより下限電圧値VLを設定する。マイコン10により設定された上限電圧値VHはコンパレータ22に供給され、減算器により設定された下限電圧値VLはコンパレータ24に供給される。
【0021】
<第3実施形態>
図5に、本実施形態における制御回路の構成を示す。本実施形態では、マイコン10はスリープモードに移行する直前の入力電圧値Vxから基準となる中間電圧値VMを設定する。中間電圧値VMは、VM=Vxとして設定される。マイコン10は、設定した中間電圧値VMを出力ポートから出力する。D/Aコンバータ18は、中間電圧値VMをアナログ値に変換して減算器30に供給する。
【0022】
減算器30は、ボリューム12の現在の位置に応じた入力電圧値Vxと中間電圧値VMとの差分を演算し、その結果Vx−VMをコンパレータ22,24に供給する。コンパレータ22は、差分値Vx−VMと所定値δとを比較し、コンパレータ24は差分値Vx−Vmと所定値−δとを比較する。ボリューム12が操作されない場合には、Vx−VMは
0ないし0近傍の値であり、コンパレータ22,24の出力はいずれもLowとなる。また、ボリューム12が操作された場合には、Vx−VMはδを超えるか、あるいは−δを下回ることになり、コンパレータ22あるいはコンパレータ24の出力はHiとなる。
【0023】
図6に、本実施形態の論理値表を示す。入力電圧値と中間電圧値VMとの差分が上限電圧値δと下限電圧値−δの間である場合、割込み信号VyはLowのままでありマイコン10はスリープモードを継続する。ユーザがボリューム12を操作して入力電圧値が中間値、つまりスリープモードに移行する直前の電圧値と相違して上限電圧値δを超えるか、下限電圧値−δを下回った場合、割込み信号VがHiとなってマイコン10は通常モードに復帰し、ボリューム12の現在の位置に応じた処理を実行する。
【0024】
以上各実施例で説明したように、本実施形態ではマイコン10でスリープモードに移行する直前のアナログスイッチの値を検出し、この検出値を基準として判定しきい値を生成してスリープモードに移行し、マイコン10がスリープモードに移行した後はアナログスイッチの値を制御回路内のコンパレータで比較して割込み信号を生成してマイコン10に供給することで、マイコン10をスリープモードから簡易に通常モードに復帰させることができる。
【0025】
なお、各実施形態では、アナログスイッチあるいはセンサとしてボリューム12を例示したが、他のアナログセンサからの検出値に基づいてマイコン10をスリープモードから通常モードに復帰させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の構成図である。
【図2】第1実施形態の論理値表である。
【図3】第2実施形態の構成図である。
【図4】第2実施形態の論理値表である。
【図5】第3実施形態の構成図である。
【図6】第3実施形態の論理値表である。
【符号の説明】
【0027】
10 マイコン、12 ボリューム、14 ローパスフィルタ(LPF)、16 A/Dコンバータ、18,20 D/Aコンバータ、22,24 コンパレータ、26 ORゲート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログセンサの検出値に応じて動作するコンピュータをスリープモードから通常モードに復帰させる制御回路であって、
前記コンピュータがスリープモードに移行するときの前記アナログセンサの検出値を基準値として取得する取得手段と、
前記コンピュータが前記スリープモードに移行した後において、前記アナログセンサの検出値と、前記基準値に基づいて設定された、前記アナログセンサの検出値が変化したものと判定するための判定しきい値とを比較する比較手段と、
前記比較手段での比較結果に応じて前記コンピュータに対して通常モードに復帰させるための復帰信号を割込み信号として供給する供給手段と、
を有することを特徴とするコンピュータの動作モード制御回路。
【請求項2】
請求項1記載の回路において、
前記判定しきい値は、上限しきい値と下限しきい値とを有し、
前記上限しきい値と下限しきい値の少なくともいずれかは、前記コンピュータが前記スリープモードに移行するときに前記基準値に基づいて設定することを特徴とするコンピュータの動作モード制御回路。
【請求項3】
アナログセンサの検出値に応じて動作するコンピュータをスリープモードから通常モードに復帰させる制御回路であって、
前記コンピュータがスリープモードに移行するときの前記アナログセンサの検出値に応じた電圧値を基準電圧値として取得する取得手段と、
前記コンピュータが前記スリープモードに移行した後において、前記アナログセンサの検出値に対応する電圧値と、前記基準電圧値に対して所定のマージンを付加して設定された上限電圧値と下限電圧値とをそれぞれ比較する比較手段と、
前記アナログセンサの検出値に対応する電圧値が前記上限電圧値を超える場合、あるいは前記下限電圧値を下回る場合に前記コンピュータに対して通常モードに復帰させるための復帰信号を割込み信号として供給する供給手段と、
を有することを特徴とするコンピュータの動作モード制御回路。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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