説明

コンピュータシステム

【課題】コンピュータシステムにおいて、個人認証にユーザの体重を利用することにより、アクセス時の負担が少ない認証手段と、認証時に測定した体重データを用いた健康管理手段を有するシステムを提供する。
【解決手段】コンピュータシステム10へのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステム10であって、ユーザが座ったときの椅子100が受ける重量を測定する重量測定手段30を備え、前記ユーザを特定する情報が入力されると、前記重量測定手段30により測定される重量と事前登録されているユーザの体重との差によって不正使用を防止し、前記重量測定手段30より測定される重量からユーザの体重増減を算出し、ユーザが健康管理に参照できる体重増減情報を作成し、規定値より大きい体重増減が発生するとユーザに健康管理上の警告を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンピュータシステムでは、指紋、虹彩などの身体情報を用いてユーザの特定を行うコンピュータシステムが提案されている(例えば、特許文献1のコンピュータシステム)。
【0003】
また、特許文献2に記載されているコンピュータシステムの認証方法では、コンピュータシステムの使用者が座る椅子の重量を測定し、その重量測定値にて個人を特定するする方法が提案されている。
【0004】
特許文献1記載のコンピュータシステムは、身体情報を判別するには専用の設備が必要となり、且つ、コンピュータシステムを使用するときに認証動作が必要となる。また、特許文献2記載のコンピュータシステムでは、認証動作を不要としているが、椅子による体重測定値の誤差及び変化量を吸収する許容範囲を設けていることから、不正使用の検出精度が低いという問題が発生する。ID等の個人情報との二重チェックを行うとしても、体重測定に必要な設備費用に対する効果が小さいと考えられ、導入が難しい。
【0005】
【特許文献1】特開平10−187266号公報
【特許文献2】特開平9−198349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般のコンピュータシステムでは、IDとパスワードによる個人特定のみで不正使用を防止している。不正使用の防止をIDとパスワードのみ行うことに、不安を感じてきているため、新たな認証を採用または追加すべきである。新たな認証の導入においては、新たな認証動作を追加せずに行いたい。また、設備はなるべく安価であることが望ましい。さらに、身体情報を使用する場合は、情報の管理体制を構築し、尚且つ、身体情報の使用に対する理解を得ることが必要である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ユーザが椅子に座っている状態で椅子上の重量を測定し、事前に登録されているユーザの体重との差によって、本人確認を行うことで不正使用を防止し、且つ、体重の増減情報を健康管理に活用する方法を見出し、本発明に想達した。
【0008】
身体情報である体重をセキュリティに使用しているが、健康管理の目的でも積極的に活用することで、利用者の理解を得やすくしている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、新たな認証動作を追加せずに、IDとパスワードを用いた従来の認証確認よりも不正使用の防止効果が高いコンピュータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、第1発明に係るコンピュータシステムは、コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、コンピュータシステムのユーザが座ったときの椅子が受ける重量を測定する重量測定手段を備え、前記ユーザを特定する情報が入力されると、前記重量測定手段により測定される重量と事前登録されているユーザの体重との差によって不正使用を防止し、前記重量測定手段より測定される重量からユーザの体重増減を算出し、ユーザが健康管理に参照できる体重増減情報を作成し、規定値より大きい体重増減が発生するとユーザに健康管理上の警告を表示することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、いすに座る通常動作によってユーザ情報が発生するので、個人認証のための追加動作が不要であり、導入が容易となる。また、体重を個人情報として使用しているが、健康管理として積極的な利用をすることから、個人情報利用に対する抵抗感を取り除くことができる。
【0012】
第2発明に係るコンピュータシステムは、コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、前記体重増減情報により前記不正使用を防止する閾値を変化させて、不正使用の検出条件の最適化を行うことを特徴とする。
【0013】
体重による認証は、日々の生活で発生する体重の変化量を考慮しておく必要があり、余裕を持たせると不正使用の検出精度を下げることになる。この構成によれば、体重増減情報を用いて不正使用防止の閾値を最適化させることにより、不正防止効果を確保することができる。
【0014】
第3発明に係るコンピュータシステムは、コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、入場時に個人認証を行う入退出管理で入場時の個人認証と合わせて体重測定を行い、コンピュータシステムのユーザが座ったときの椅子が受ける重量を測定する重量測定手段による重量測定を行い、入場時の体重と椅子が受ける重量とを比較し、不正使用を防止することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、入退出管理を行うシステムにおいて、入場時の個人認証時に体重測定を行い、利用者がコンピュータを使用するときの椅子からの体重情報と前記体重の測定情報を比較することによって個人認証を行うことができる。前記比較による個人認証では、日々の体重変化による影響を受けないため、さらに高精度の認証が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、認証時のユーザ作業負担が少ないコンピュータシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施例1)
本発明の好適な実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るコンピュータシステム10の実施例1の構成を示すブロック図である。
【0018】
コンピュータシステム10は、コンピュータ端末20、体重測定部30、入力部40、表示部50を備えている。コンピュータ端末20は、メモリ部60、受信機70、時系列体重データ処理部80、体重認証処理部90を備えている。また、体重計測部30は、椅子100、荷重センサ110、送信機120を備えている。
【0019】
体重測定部30は、荷重センサ110によって椅子100に座ったユーザの体重を測定(重量測定手段)し、送信機120にて、体重情報をコンピュータ端末20へ送信する。
【0020】
コンピュータ端末20は、前記体重情報を受信機70で受け取り、体重認証処理部90によって本人確認を行う。また、メモリ部60は、体重情報を測定日時と合わせて保持し、時系列体重データ処理部80では、メモリ部60からデータを取りだし、経過時間に対する体重変化を計算する。
【0021】
前記経過時間に対する体重変化から体重認証の誤差範囲(閾値)を決める。前記閾値は、ユーザ設定で変更することも可能であり経験則から最適化してもよい。さらに、前記経験則から最適化した閾値をベースとして、経過時間による微調整を加える方式でもよい。
また、ユーザが健康管理に参照できる体重増減情報を作成し、あらかじめ決めておいた規定値より大きい体重増減が発生すると、ユーザに健康管理上の警告を表示するとよい。
【0022】
入力部40は、コンピュータ端末20への入力をするために用いるものであり、表示部50は、コンピュータ端末の表示するために用いるものである。入力部40と表示部50は、一般のコンピュータ端末に用いるものと同様でよい。
【0023】
図2は、実施例1の体重認証処理のフローであり、体重認証処理部90と体重測定部30における動作を説明している。
【0024】
体重認証処理部90において、ユーザID入力を行い(S100)、時系列体重処理部30からIDに対応したアクセス可能な体重範囲を入手する(S102)。次に、体重測定部30へ体重を問い合わせる(S104)。
【0025】
S104を受けた体重測定部30は、0.5秒に1回、荷重センサの値を計測し(S200)、連続3回の計測の最大値と最小値の差が0.5kg以内になるまで測定を繰り返す(S202)。これは、荷重変動などによる誤差発生を防ぐものである。次に、体重成分を計算する(S204)。これは、S202の平均値から事前に測定しておいた座る前に既に有している荷重をマイナスすることにより算出する。そして、この値を体重認証部90へ送信する(S206)。
【0026】
体重認証処理部90は、S206で受けた体重がアクセス可能な体重であるかどうかを判定する(S106)。アクセス可能な範囲内でない場合は、アクセスを拒否し(S108)、注意事項を表示した(S110)後に、ユーザID入力(S100)に戻る。
アクセス可能な範囲内である場合は、アクセスを許可する(S112)。許可を受けた後は、メモリ部の時系列データに記録し(S114)、健康管理画面表示する(S116)。その後、一定時間が経過した後に再度計測体重問い合わせを行う(S118)。
体重測定部150が問い合わせを受け、前記S200に戻る。
【0027】
前記のように、ユーザが使用している間は、時間間隔をおいて体重認証を行うため、使用途中における不正使用を検出することができる。
体重認証の終了は、ログオフと同時に行う(S120)ため、特別な作業を必要としない。また、前記ログオフはシステムにおけるログオフに限定するものではなく、アプリケーション毎で行っても良い。
【0028】
図3は、本発明に係る実施例1の健康管理画面表示の説明図である。
前記図2の健康管理画面表示指示(S116)があったときの動作内容を説明するものである。毎回必ず本動作を実施するようしてもよいが、予め設定を行うことにより、動作回数を制限してもよい。例えば、ID入力後の1回目のみ動作し、2回目以降は動作しないようにするとよい。
【0029】
前記S116があったとき、日本人の平均体重をメモリ部から取得し(S300)、メモリ部から時系列体重データを取得する(S302)。次に、時系列体重グラフの表示を行い(S304)、体重傾向(例えば、体重増加傾向有りなど)を計算し、アドバイス表示を行う(S306)。
前記健康管理画面表示により、ユーザの体重の増減をグラフによりわかりやすく表現されるので、健康管理に活用し易くなる。また、閾値設定により、警告等を行ってもよい。
【0030】
(実施例2)
図4は、本発明に係るコンピュータシステム10の実施例2の構成を示すブロック図であり、体重測定部30において、椅子の下に荷重測定機115を備えている。
【0031】
実施例1のコンピュータシステムでは、椅子を支える構造部に荷重センサ110を配置しているため、足を上げて体重測定を行う必要がある。これを回避するために、荷重センサに荷重がかかる位置に足置きを設置してもよい(図示せず)。
【0032】
実施例2のコンピュータシステムでは、荷重測定機115を床の上に、また、前記荷重測定機115の上に椅子を配置することで、利用者が椅子の付近にいるだけで体重測定ができる。
また、荷重センサ110を有する専用の椅子に置き換えることなく、一般のオフィスに使用されている椅子を利用できる。
【0033】
(実施例3)
図5は、本発明に係るコンピュータシステム10の実施例3の構成を示すブロック図であり、コンピュータシステム10に入退出管理機能を追加している。
【0034】
コンピュータ端末20は、ネットワーク130を介して入退出認証装置140と外部メモリ170との間で通信を行う。入退出認証装置140は、体重測定部150とID認証処理部160を備えている。
【0035】
入退出認証装置140は、ID認証処理部160において入場者のID認証を行う。また、この認証作業時を利用して体重測定部150が入場者の体重を測定する。
【0036】
このように入場時の認証作業時に体重測定を行うことで、体重測定を測定するためだけに時間を待つ必要がなくなる。さらに、デスクにてコンピュータシステムを利用する場合には、椅子100に座ったときの体重を荷重センサ110で測定し、前記入退出装置140での体重測定結果と照合することで、不正使用を防止することができる。
【0037】
体重だけを用いて不正使用を防止するのではなく、従来のパスワードを用いた認証とのダブルチェックを行ってもよい。また、外部メモリ170で体重情報を含む認証に必要な情報を管理することで、利用者がシステム内でコンピュータを利用するとき、すべての端末において同じ認証手続きで管理することができる。
【0038】
さらに、定期的に体重を用いた認証を行えば、同じ端末であっても、他人が利用する不正行為を排除できる。当然ではあるが、一度、ログインすれば、誰でも利用できる設定にしてもよい。或いは、ファイル(例えば、アプリケーション)毎に設定を決めてもよい。
【0039】
健康管理においても、一日の中で複数回のサンプリング(体重測定)を行うことで、変動状況を監視することができ、前記変動状況をグラフ化し、尚且つ、昨年、昨月、または、昨日の変動状況と比較表示すれば、健康状態のチェックに役立つ。
【0040】
個人情報保護の観点から、体重情報を認証に利用することに賛同が得られない場合が考えられる。本件発明では、体重情報を健康管理に積極的利用を目指すものであり、外部への情報漏洩がないように注意する必要があるものの、健康管理上の取り扱いをすることで理解が得られやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述の実施例では、オフィスで用いるコンピュータシステムとして説明してきた。
しかし、本発明は、オフィスだけでなく、様々な場所で用いるコンピュータシステムにも利用できると言える。例えば、工場、病院、家庭などでの利用が考えられる。
【0042】
以上につき好適な実施例を挙げて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るコンピュータシステムの実施例1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る実施例1の体重認証処理を示す説明図である。
【図3】本発明に係る実施例1の健康管理画面表示の説明図である。
【図4】本発明に係るコンピュータシステムの実施例2の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るコンピュータシステムの実施例3の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
10 コンピュータシステム
20 コンピュータ端末
30 体重測定部
40 入力部
50 表示部
60 メモリ部
70 受信機
80 時系列体重データ処理部
90 体重認証処理部
100 椅子
110 荷重センサ
115 荷重測定機
120 送信機
130 ネットワーク
140 入退出認証装置
150 体重測定部
160 ID認証処理部
170 外部メモリ部
A 重量測定対象のユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、コンピュータシステムのユーザが座ったときの椅子が受ける重量を測定する重量測定手段を備え、前記ユーザを特定する情報が入力されると、前記重量測定手段により測定される重量と事前登録されているユーザの体重との差によって不正使用を防止し、前記重量測定手段より測定される重量からユーザの体重増減を算出し、ユーザが健康管理に参照できる体重増減情報を作成し、規定値より大きい体重増減が発生するとユーザに健康管理上の警告を表示することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項2】
コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、前記体重増減情報により前記不正使用を防止する閾値を変化させて、不正使用の検出条件の最適化を行うことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
コンピュータシステムへのアクセスまたは特定処理に先立ちユーザを特定する情報入力を要求するコンピュータシステムであって、入場時に個人認証を行う入退出管理で入場時の個人認証と合わせて体重測定を行い、コンピュータシステムのユーザが座ったときの椅子が受ける重量を測定する重量測定手段による重量測定を行い、入場時の体重と椅子が受ける重量とを比較し、不正使用を防止することを特徴とする請求項1記載のコンピュータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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