説明

コンベアシステム上の積荷を追跡する方法及びコンベア装置

積荷の後縁を用いてコンベア装置上の積荷の追跡を行なう方法及び装置に関する。当該方法は、第1のセンサで積荷の後縁を検出するステップと、該第1のセンサによる積荷の後縁の検出に応答して積荷の積荷記録を更新するステップとを有する。当該装置は、コンベアと、コントローラと、該コントローラと通信接続されコンベア上の積荷の後縁の検出を行なうセンサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ステーション間にある積荷を追跡するためのコンベアロード追跡システムに係り、特に、積荷の後縁(トレーリングエッジ)を用いて積荷を追跡する方法及びコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の取扱い、工業的処理及び手荷物処理システムなどの分野においては、種々の処理ステップを介して積荷(ロード)を自動的に搬送するために自動化装置が用いられている。特に、該積荷がコンベアなどの搬送装置上で移動する場合、各積荷ならびに特定の積荷データを追跡(トラッキング)するとともにコンベアを制御する必要がある。コンベアは種々のコンベア部(セグメント)より構成することがあるので、これら各コンベア部を個々独立して制御するとともに積荷が1つのコンベア部から他のコンベア部へ移動する際の積荷の追跡も求められる。例えば、到着先ないしあて先ステーションでの処理速度、コンベア上での積荷間隔、あるいは複数のあて先の選択などの所定の制御要件に応じて、コントローラが各コンベア部の始動、停止を独立して行ない、あるいは各コンベア部の速度を独立して変えることが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
積荷の追跡及びコンベア制御に用いられる1つの慣用方法は、積荷の前縁(リーディングエッジ)を検出してなされる。積荷の前縁が検出されると、該積荷と係る積荷記録(ロードレコード)が作成されるとともにコントローラによって各コンベア部ないしコンベア領域と係るリストに選択的に転送(トランスファー)される。正確な追跡のためには、コントローラ及びデータ構造内における記録の転送が搬送システム内の積荷の物理的位置を反映していることである。この積荷の「前縁」追跡技術は多くの場合、特に積荷のサイズや形状が共通で一定のパレットコンベアシステムなどの場合には概して望ましいが、種々のサイズや形状の積荷を搬送する場合には、後述するように幻の積荷(ゴーストロード)状態や空転(race)状態に陥る。
【0004】
追跡と制御の両方の目的のために積荷の前縁を用いる場合の1つの問題は、あるコンベア制御状態が不正確な追跡(トラッキング)を招く恐れがあることである。例えば、図1(a)に示す従来の手荷物搬送装置において、手荷物としての積荷Xの前縁がコンベア部C1の終端でセンサBによって検出されるとき、該装置は、通常通り、この積荷記録(ロードレコード)を次位のコンベア部C2に係るリストに転送する。しかし、コンベア部C2の作動継続中に積荷の前縁を検出してコンベア部C1の停止を求める制御状態のとき、コンベア部C1の送出端で実際の物理的積荷が停止しているときでさえもコンベア部C2のエンコーダEはパルスを出し続け、積荷Xのための期待窓(expected window)はコンベア部C2上で前方へ移動する。これにより、コンベア部C2のリストには幻の積荷(ゴーストロード)が出現することとなる。
【0005】
この種の積荷のない幻の状態、いわゆるゴースト状態を確認する1つの技術的方法は、積荷の前縁及び後縁の両方を追跡することである。積荷Xの前縁がセンサBにより検出されたとき、積荷記録(ロードレコード)が更新されるとともにセンサBに係る保持領域におかれる。積荷の後縁の検出に際して、積荷記録はセンサBの保持領域からコンベア部C2のリスト又はデータ列へ解放(リリース)される。この遅延が積荷Xの前縁を位置づけるために積荷のサイズを決定することを要求する。積荷のサイズを決めるために前後縁の間でエンコーダパルス数がカウントされる。このシステムの1つの問題は、コントローラないしはプロセッサ上の要求(デマンド)が著しく増えることである。従って、動作効率を維持するには概してより複雑で高価なコントローラを当該装置による追跡及び制御のために設置しなければならない。
【0006】
又、このような積荷の前後縁にアプローチする方法では、図1(b)で示すように2つのセンサ構成が用いられる。このようなアプローチは多くの場合に適しているが、もし最大積荷長が両センサの間隔より大の場合に動作不能となる。すなわち、センサB2が積荷の前縁を検出したとき、コントローラはコンベア部C2のリストの前側からセンサB2の保持領域へ積荷記録を転送しようとする。しかしセンサB1は積荷Xの後縁をまだ検出していないので、コントローラは積荷記録をセンサB1の保持領域からコンベアC2のリストへ転送しない。従って、コンベア部C2のリストには積荷記録が存在しない。この状態において、当該装置ないしシステムは、予期しない積荷の新しい積荷記録を作成する。このため、センサB1が積荷Xの後縁を検出するとき、積荷記録はセンサB1の保持領域からコンベア部C2のリストに転送される。積荷Xの前縁のための期待窓がセンサB2を通過したものとして計算(カウント)するので、該積荷記録はセンサB2に到着し損なうモデルから除去される。このように両センサ間のスペースよりも最大長が大の積荷の場合にこれを補償するために積荷記録の作成や除去を行なう追加のステップが必要となり、これがコントローラやプロセッサの要求を増やし、追跡動作におけるエラーを生む恐れが大となる。
【0007】
図1(b)に関連して説明した状態は、センサB1が積荷Xの後縁を検出したときには何もなさず、又、センサB2が積荷Xの前縁を検出したときには当該装置ないしシステムがコンベア部C2のリストの前側にある記録よりむしろセンサB1における記録を転送するというように当該装置ないしシステムを構築すれば克服されるかもしれない。しかし、図1(c)に示すように、上記の解決方法では相連続する積荷の前縁の間の距離が両センサの距離よりも小さい場合には、空転(race)状態を創出してしまう。例えば、もし2つの短いX,Yが図示のようにコンベアにのって移動しているとき、センサB1は積荷Xの前縁を検出するとともに記録を更新し、これがセンサB1におけるものであることを指し示す。上述のように、コントローラはセンサB1が積荷Xの後縁を検出したときも何等の記録あるいはリストを更新しない。従って、もし積荷Yの前縁が、積荷Xの前縁とセンサB2で検出される前に、センサB1で検出されると、追跡モデル内で衝突(コリジョン)が生じ、特に積荷Yの積荷記録が、センサB1の保持領域内で積荷Xの積荷記録を上書きしようとするのである。
【0008】
更に、図1(d)に示すように、センサB1における後縁を無視する上述の解決方法では、積荷Xに取付けられた帯状物、タグなどの緩んだ取付け部片(ルーズアイテム)がセンサB1によっては検出されたがセンサB2では検出されなかった場合に作動不能に陥り、上述の空転(race)状態が現実となる。例えば、センサB1が積荷Xの前縁を検出して、これがセンサB1にあることを示すように記録を更新する。次いで、センサB2は積荷Xの前縁を検出し、これが、もはやセンサB1にはなく、センサB2にあることを示すように記録を更新する。次に、積荷Xの後縁に取付けられたルーズアイテムの前縁がセンサB1で検出され、新たな積荷記録がセンサB1で発生ないし作り出される。続いて、このルーズアイテムが移動してセンサB2では積荷Xの後縁から独立しては検出されない。上述のように、コントローラは、センサB1が新たな積荷の後縁を検出したときにも何等の記録ないしはリストを更新しない。そして、センサB2では検出されず、センサB1の保持領域に留まる。従って、積荷Yの前縁がセンサB1で検出されると、上述のように追跡モデル内で衝突が生じる。
【0009】
以上のように、従前の方法の不具合を克服ないし最小化するために種々の方法が提案されているが、その成功度合は極めて限られたものであるので、余分な追加的ステップなしに積荷の効率的な追跡をなすとともに、幻の積荷(ゴーストロード)状態や空転状態あるいは追跡動作の衝突の恐れを解消した簡単な方法が必要とされるところである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明は、処理ステーション間における積荷の追跡のためのコンベアロード追跡システムに係り、特に積荷の後縁を用いて積荷を追跡する新しい方法及び装置を提案するものである。本発明の方法においては、第1のセンサを有するコンベア装置ないしシステム上で後縁と前縁を有する積荷の追跡を可能とする。当該方法は、第1のセンサで積荷の後縁を検出し、該第1のセンサで積荷の後縁の検出に応答して該積荷の記録を更新する各ステップを有する。当該方法によれば、コンベアシステムに沿ってなされる積荷の追跡を後縁のみの使用で可能とし、積荷の前縁の検出あるいは前後両縁の検出に係る問題を解消することができる。
【0011】
本発明の代替的方法によれば、当該方法は起点位置にある起点センサないし起点積荷センサ(ソースロードセンサ)で積荷の後縁を検出し、該積荷の後縁の検出に応答してコントローラ内で積荷記録を更新し、第1のコンベア部上での積荷の移動に直接的に比例した数のパルスを有するパルス信号を発生させ、該発生したパルス信号及び積荷の後縁の検出に応答して更新された積荷記録を用いて第1のコンベア部上での積荷を追跡する各ステップを有する。
【0012】
本発明に係るコンベア装置ないしシステムは、第1のコンベア部と、該第1のコンベア部に対して相対して配置され第1のコンベア部から転送される積荷を受ける第2のコンベア部と、積荷の後縁を検出するセンサと、第1のコンベア部に係る第1のデータ列からの積荷記録を該センサによる積荷の後縁の検出に応答して第2のコンベア部に係る第2のデータ列に転送するコントローラとを備える。
【0013】
本発明の更なる構成ならびに適用態様は以下の本発明の実施形態、特許請求の範囲の記載及び添付図面から明瞭になる。しかし、本発明はこれに限定されず、当業者において明らかな種々の変形例を含み得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るコンベア装置10は、おおむね図3乃至5に示されている。この実施形態では、本発明に係る積荷追跡装置を備えた多数のコンベア部よりなるコンベア装置としての手荷物処理システムを示している。当該コンベア装置10は、コンベアを構成する多数の相互に連結されたコンベア部20を有し、これら各コンベア部はそれぞれモータ26により駆動される。これらコンベア部により構成されたコンベアにより積荷が起点ステーション30よりあて先ステーション40との間で搬送される。コンベア装置10は、1つ又は複数のエンコーダ50とセンサ52に接続されたコントローラ70を有する。図3に示すように、当該コンベア装置10は積荷を起点ステーション30とあて先ステーション40との間で搬送するために多数のコンベア部を備えているが、図においては参照を容易にするために各コンベア部20は20A〜20Eと符合し、又、これに関連して多数設けられたモータ26,エンコーダ50及びセンサ52もそれぞれ26A〜26E,50A〜50E及び52A〜52Eと符合してあるが、以下には、各構成要素を総称する場合にはA〜Eの符号を省略し、個々の特定の要素を指す場合にはA〜Eを付して説明する。コントローラ70は各コンベア部20のモータ26,エンコーダ50及びセンサ52と通信接続しており、以下、述べるように当該コンベア装置の制御及び積荷の追跡動作が遂行される。このコントローラ70は各コンベア部20を個々に制御する制御機能を有するとともに、これらコンベア部20に沿って積荷を追跡する追跡(トラッキング)機能も有する。コントローラ70の追跡機能は、ここに説明する積荷の後縁を用いて個々のコンベア部20上での積荷の追跡を行なうことである。
【0015】
図3において、コンベア部20A〜20Eは、モータ26A〜26Eによりそれぞれ駆動され、これらモータ26A〜26Eはコントローラ70により制御される。エンコーダ50A〜50Eはコンベアのアイドラプーリの軸(図示せず)上に取着されコントローラ70と共働してパルス信号を発生する。これらパルスの周期はコンベア部20の速度に直接的に比例している。例えば、コンベア部20Aは、第1のエンコーダ50Aの隣接する2つのパルス発生の時間内に固定された距離移動する。
【0016】
第1のコンベア部20Aの一端には起点ステーション30があり、このステーション30は、ここに配置された起点ステーションの起点センサないしは起点積荷センサ54を有する。図には示されていないが、コンベア部20に積荷を提供するために複数の起点ステーションを用いてもよいし、又、これら複数の起点ステーションを、特定のコンベア部に積荷を提供する追加的コンベア部(図示せず)上で作動させるようにしてもよい。コンベア部20の他端には、あて先ステーション40が設けられる。コンベア部20の端部にあるセンサ52は、あて先ステーションの積荷センサとして機能するようにしてもよい。又、本発明において複数のあて先ステーション40も用い得る。
【0017】
コントローラ70は、ここにおいてはプロセッサとも称されるが、適宜プログラムされたマイクロプロセッサ,PLCあるいは他の適宜の制御モジュールで構成される。コントローラ70は、エンコーダ50,センサ52及びモータ26と通信接続され、コンベア部20の制御及び各コンベア部20に沿う個々の積荷の追跡を行なう。図2に示すように、コントローラ70は、プロセッサ72,通信モジュール74及びデータ列76より構成し得る。データ列76として、図においては第1〜第3のデータ列76A〜76Cを示す。データ列76はコントローラ70のメモリ内で作成するようにしてもよい。コントローラ70は積荷の後縁を用いてコンベア装置上で積荷の追跡を遂行するに適したコントローラが用いられる。
【0018】
積荷の後縁をセンサが検出すると、その個々のセンサ52からの信号をコントローラ70が受ける。このセンサからの信号を受けて、コントローラ70はデータ列76に積荷記録(ロードレコード)を発生させるか、あるいは更新する。すなわち、積荷記録が発生するとともに第1のデータ列76Aに入力される。全てのコンベア部のために1つのデータ列を用いてよいが、図示の実施形態では該コントローラ70が特定のコンベア部に対応した特定のデータ列76を作成するようになっている。このデータ列はコンベア部20上の積荷に応じて順序付けらた積荷記録のリストである。図示の実施形態において、このリストは、コンベア部上の積荷の順序に従ってリンク付けられたリスト管理表内に連続して整理されている。各積荷記録は積荷の追跡されるべきデータとコンベア部上の積荷の位置情報を含む。その積荷記録が図7に例示されている。従って、積荷が物理的に1つのコンベア部から他のコンベア部へ移動すると、コントローラも又、関係する積荷記録を両データ列の間で転送する。
【0019】
上述したセンサ52は、光電管(ホトセル)、リミットスイッチ、近隣センサなどの適宜の検出装置で構成される。図示の実施形態において、センサ52は積荷の後縁及び前縁の両方を検出するが、コントローラ70は積荷追跡の目的のために該積荷の後縁のみを用いる。センサ52は光電管よりなり、該光電管の光源と該積荷の後縁が通過した後にコンベアの対向側に設けた反射面により反射するときに該後縁を検出する。従って、積荷は反射面からの光電管の光源の反射をもはや止めない。又、別の実施態様として、コントローラは、後縁が積荷追跡のために用いられる一方で、コンベア部の動作制御のために該積荷の前縁を用いることもできる。
【0020】
本発明の積荷追跡の説明に戻る前に、本発明において積荷追跡とコンベア制御のために積荷の後縁を検出するシステムに関して種々の効果ないし利点があることに注目すべきである。積荷の前縁を検出するシステムに代えて本発明のごとく後縁を用いることにより改善される従来の代表的なシステムが、1994年8月9日付で「ベルトコンベアの積荷追跡の方法及び装置」の名称で発行された米国特許第5,335,777号に詳しく述べられている。これを公知の参照文献としてここに挙げたい。
【0021】
図4において、コンベア装置10は起点ステーション30より送出される積荷L1〜L3を追跡する。積荷L1〜L3が起点ステーション30を出ると、該起点ステーションの位置に配置された起点センサないし起点積荷センサ54がこれら積荷の後縁を検出する。従って、積荷L1〜L3が第1のコンベア部20Aに入ると、コントローラ70が各積荷のために第1のデータ列76A内に積荷記録を作成する。各積荷に係る積荷記録は、積荷を追跡、記述、方向付けするのに必要な情報を含む。各積荷に係る情報は、コントローラ70に通信可能に接続されるバーコードリーダ、周波数タグリーダ、計量スケール、プロファイリングセンサ、ビジョンシステム、オペレータキーボードなどの公知の手段によってコントローラ70に提供される。この実施形態において、コントローラ70は各積荷を単一のポイントとして、特に後縁を取扱う。積荷の後縁の追跡のみにより、追跡目的のために積荷のサイズを計算しないことにより、コントローラとしての処理パワーは大きなものを必要としない。又、他の実施形態として、コントローラが制御目的のために各積荷のサイズを測定するようにしてもよい。制御目的の積荷のサイズは、該積荷の前後縁間においてエンコーダ50から発せられるパルス信号をカウントすることにより測定し得る。勿論、制御目的のために積荷のサイズを決定するのに他の方法も用い得る。又、当業者であれば、追跡目的と制御目的のために分離したコントローラを用い得ることは容易に理解される。
【0022】
図2,4及び6において、コンベア装置10の動作を以下説明する。第1の積荷L1がコンベア装置10に沿って図示の位置まで移動する間、この第1の積荷L1は起点ステーションのセンサ54を通るときに、このセンサ54よりコントローラ70に信号が送られる。このセンサ54は積荷の後縁又は前縁のいずれかを用いて積荷の確認を始めるとともに、これによって積荷、例えば手荷物としてのバッグの追跡動作が開始される。図示の実施形態において、コントローラ70は、センサ54が第1の積荷L1の後縁を検出したときに、第1のコンベア部20Aに係る第1のデータ列76Aに第1の積荷L1の積荷記録を発生し新たに作成する。次いで、コントローラ70は第1のエンコーダ50Aを用いて第1のコンベア部20Aに沿う第1の積荷L1の追跡動作を行なう。そして、このような操作は、第2の積荷L2が起点ステーション30を出て第1のコンベア部20Aに入る際も繰返される。すなわち、コントローラ70は、第2の積荷L2の後縁を起点ステーション54により検出したときに第1のデータ列に第2の積荷L2の積荷記録を新たに作成する。第1の積荷L1の後縁が第1のコンベア部20Aに係る第1のセンサ52Aを通過すると、コントローラ70は第1の積荷L1の積荷記録を第1のデータ列76Aから除去して第2のデータ列76Bへ加入ないし転送する。各データ列はリストとして配列されるか、又は積荷を追跡するための他の適宜準備された構成部を有する。次いで、コントローラ70は、第2のコンベア部20Bに沿う第1の積荷L1及び第1のコンベア部20Aに沿う第2の積荷L2の追跡動作を継続して行なう。図4において、第1の積荷L1の後縁は、第2の積荷L2が第1のセンサ52Aに到達する前に、第2のセンサ52Bに到達する。従って、第1の積荷L1の積荷記録は、第1の積荷L1の後縁が第2のセンサ52Bを通過するときに、第2のデータ列76Bから除去されて第3のデータ列76Cへ加入ないし転送される。この間、第1の積荷L1は第2のコンベア部20Bから第3のコンベア部20Cへ移動する。第3の積荷L3が起点ステーション30から第1のコンベア部20Aに入ると、積荷記録は、第1及び第2の積荷について上述したと同様に新たに作成される。第2及び第3の積荷L2,L3は第1の積荷L1と同様にコンベア部の間で追跡されるとともに搬送される。後続の積荷は、第1のコンベア部20Aと係る第1のデータ列76Aで起点ステーション30における積荷記録を新たに作成し、次いで、該積荷記録を次位のコンベア部に入る積荷の後縁がセンサで検出したときに次位のデータ列に転送することにより、第1及び第2の積荷と同様にして追跡される。コンベア部の数は必要に応じて、対応するデータ列とともに追加し得る。
【0023】
積荷の追跡動作において、コントローラ70は各積荷のための期待窓を作成する。この期待窓は、もし特定の積荷が特定のコンベア部上の積荷のスリップに起因して期待窓内で到着しない場合に更新される。すなわち、コントローラ70は積荷の移動を見積るエンコーダ50を用いて積荷が次位のセンサ52へ移動するに伴って該積荷を追跡する。積荷記録がデータ列内で新たに作成されるとすぐに、コントローラ70が該積荷記録に距離領域を付属させ、エンコーダ50がパルスを送る毎に各パルスに応答してコントローラ70がこの距離領域を減少させる。従って、積荷が動くにつれて距離領域が少なくなる方向への読出し、すなわちカウントダウンされるので、この距離領域は常に積荷の後縁から次位のセンサまでの距離に相当する理論値を有する。もし、積荷が期待時間又は時間の期待窓内で到着しない場合、コントローラ70は、積荷の後縁が検出されるまで待ち、次いで、コンベア部上での積荷のスリップを許容する修正ファクターを新たに作成する。この修正ファクターは他の積荷の期待窓の調整に用いられる。この積荷の前縁を用いて積荷の追跡を行なうことにおいて期待窓の作成及び使用に関しての詳細は1994年8月9日付で「ベルトコンベアの積荷追跡方法及び装置」の名称で発行された前記の米国特許第5,335,777号に記載されているが、これは、積荷の追跡のために後縁を用いた本発明の方法により、より改善される。
【0024】
図5において、コントローラ70は、積荷を単一のポイント、すなわち後縁としてのみを取扱うので、一組のセンサの間の距離よりも長い積荷の追跡も可能である。すなわち、第2の積荷L2が起点ステーション30を出るとき、起点ステーションのセンサ54が第2の積荷L2の後縁を検出し、コントローラ70がコンベア部20Aに係る第1のデータ列76Aに第2の積荷の積荷記録を新たに作成する。そして、第2の積荷L2の前縁を検出しても、積荷記録は、第1のセンサ52Aが後縁を検出するまで、すなわち、このとき積荷記録は第2のデータ列76Bへ転送されるが、それまで第1のデータ列76Aに除去されずに残される。同時に、第2のセンサ52Bが積荷の後縁を検出するまで、積荷記録は第2のデータ列76Bに残される。従って、一組のセンサの間の距離よりも長い積荷の追跡のために、前、後縁の両方を用いる場合の問題を回避できるとともに制御ステップや処理要件の簡素化が可能となる。
【0025】
このように本発明に係る積荷の「後縁」を用いた追跡方法は、「前縁」を用いた追跡方法や前後両縁を用いた方法、あるいはそれら両縁を選択的に用いた方法などの従来の方法に比して多くの顕著な利点を有する。例えば1つの利点として、本発明に係る「後縁」を用いた追跡方法は、積荷を単一個所ないしポイントとして取扱うので、積荷のサイズを算出するための処理能力を必要とせず、それだけ動力の節約ができる。又、他の利点として、図1(a)で述べたようにコンベア部が停止した場合に生じる恐れのある幻の積荷状態、いわゆるゴースト状態を解消できることである。これは、コンベア部の端部近傍におかれたセンサが積荷の後縁を検出し、積荷として、例えば、バッグが次位のコンベア部上に物理的に位置するまで積荷記録が次位のコンベア部に渡されないからである。又、空転(race)状態も解消される。積荷の後縁のみを検出することにより、積荷のサイズは関係しない。すなわち、もし該積荷が両センサ間の距離よりも長い場合でも、コントローラは、未だ搬送されていない積荷の前縁の検出によって積荷記録を新たに作成することはない。本発明の更に他の利点は、積荷のサイズを計算するための処理ステップを不要とし、エンコーダを用い、又、積荷の後縁が検出されるまで積荷記録を保持するに必要な余分なメモリを不要としたことである。
【0026】
本発明においては、積荷の後縁による追跡及び前縁による制御の両方を単一のセンサで行ない得る。例えば、処理領域内で積荷の速度を制御するために一連の短いコンベア部が求められる場合の適用である。これらコンベア部は、積荷の先縁を検出するように各コンベア部の端部におかれた各センサによって始動、停止が行なわれ、この同じセンサや積荷の後縁の検出によって積荷の追跡もなされるのである。
【0027】
以上、本発明の実施形態では、制御機能として「前縁」を用いる技術、又、追跡機能として「後縁」を用いる技術を説明した。本発明は、その具体的適用状況に応じ種々の適用構成が考えられる。制御機能と追跡機能を分けることが既存のシステムの改善に利する。例えば、既存の手荷物処理システムが追跡と制御のために従来の「前縁」を用いた技術を採用している場合、この積荷の追跡のために本発明に係る「後縁」を用いた技術を採用し、他方、制御は前縁を用いた技術を残すような選択的採用により、この既存システムを改善することができる。要約すれば、本発明は、積荷の追跡のために積荷の後縁を用いることである。当該コンベア装置の制御のためには積荷の前、後縁のいずれか、あるいは両方を用いてよい。積荷の追跡をコンベア装置の制御と分けることにより、又、更には追跡のための後縁のみを用いることにより、積荷を追跡するのに必要な処理ステップを減少させることができる。更に、追跡用として後縁のみの使用により、望ましくない幻の積荷(ゴーストロード)状態や空転(race)状態や積荷追跡のために前縁あるいは前後縁を用いた従来のシステムで通常生起する他の問題も解消することができる。本発明においても、センサは積荷の前、後縁の両方を検出するものを用い得るが、コントローラは積荷追跡の目的のために積荷の後縁のみを用いる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、当業者にあれば上記の説明や添付図面等から、種々の他の構成例や変形例を容易に認識し得るものであるから、これら他の構成例や変形例も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1(a)】積荷の前縁検出による幻の積荷の追跡状態を示す従来の手荷物処理システムとしてのコンベア装置の概要構成図である。
【図1(b)】両センサの間隔より大きいサイズの積荷の前、後縁の両方を用いて追跡動作した場合のエラー状態を示す従来の手荷物処理システムのコンベア装置の概要構成図である。
【図1(c)】小さい積荷の前、後縁の選択的混合使用により追跡動作した場合の衝突状態を示す従来の手荷物処理システムのコンベア装置の概要構成図である。
【図1(d)】積荷の前、後縁の選択的混合使用により追跡動作した場合において予想しない事態における衝突状態を示す従来の手荷物処理システムのコンベア装置の概要構成図である。
【図2】プロセッサ、通信モジュール、第1のデータ列及び第2のデータ列の間のインターフェースのデータを示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る積荷追跡装置を備えた多数のコンベア部よりなるコンベア装置としての手荷物処理システムの概要構成図である。
【図4】積荷の物理的配列を示す手荷物処理システムの概要構成図である。
【図5】追跡される種々のサイズの積荷を示す図4における手荷物処理システムの概要構成図である。
【図6】図4における手荷物処理システムにおいて移動する積荷としてのバッグを追跡する処理ステップを示すフローチャートである。
【図7】積荷記録に納められた追跡情報を示す代表的な積荷記録図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセンサを有するコンベア装置上で搬送される前縁及び後縁を有する積荷を追跡する方法であって、
前記積荷の後縁を前記第1のセンサで検出するステップと、
該第1のセンサで該積荷の後縁の検出に応答してのみ該積荷の積荷記録を更新するステップとよりなる積荷の追跡方法。
【請求項2】
前記コンベア装置は、第1のコンベア部と、該第1のコンベア部と相対して配置された第2のコンベア部とを含み、該第1のコンベア部から該第2のコンベア部へ積荷が搬送され、該コンベア装置は更に、該第1のコンベア部に係る第1のデータ列と、該第2のコンベア部に係る第2のデータ列とを有し、前記積荷記録を更新するステップは更に、該積荷の後縁を前記第1のセンサで検出した際に該積荷記録を前記第1のデータ列から前記第2のデータ列へ転送するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンベア装置は更に、起点センサを含み、当該方法は更に、前記積荷記録を更新するステップの前に、前記起点センサで積荷を検出した際に積荷記録を発生させるステップを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記起点センサで積荷を検出した際に積荷記録を発生させるステップは、
積荷の後縁を該起点センサで検出するステップと、
該積荷記録を前記第1のデータ列に入力するステップと、
を更に含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンベア装置は更に、前記第2のコンベア部に係る第2のセンサを含み、当該方法は更に、
積荷の後縁を前記第2のセンサで検出するステップと、
積荷の後縁を該第2のセンサで検出した際に該積荷記録を前記第2のデータ列より除去するステップとを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記コンベア装置は、第3のデータ列を有する第3のコンベア部を備え、当該方法は更に、前記第2のデータ列から積荷記録を除去した後に該積荷記録を前記第3のデータ列へ加入するステップを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
当該方法は更に、積荷の追跡のためにコンベア装置上の単一のポイントとして積荷の後縁を取扱うステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンベア装置は、積荷の追跡のために前記第1のセンサと通信接続されたコントローラを含み、当該方法は更に、前記第1のセンサで積荷の後縁を検出する前に積荷の前縁を検出するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセンサで積荷の後縁の検出に応答して積荷の積荷記録を更新するステップは更に、前記コントローラで積荷記録を更新したときに、該後縁のみを用いるステップを含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コンベア装置上の積荷を追跡するとともに該コンベア装置を制御する方法であって、該積荷が前縁と後縁とを有し、該コンベア装置が第1のコンベア部と、該第1のコンベア部に係る起点積荷センサとを有し、該積荷センサはコントローラと通信接続されてなり、当該方法は、
前記起点積荷センサで積荷の後縁を検出するステップと、
該積荷の後縁の検出に応答してのみ前記コントローラ内の積荷記録を更新するステップと、
前記第1のコンベア部上の積荷の移動に直接的に比例した数のパルスを有するパルス信号を発生させるステップと、
該発生したパルス信号と積荷の後縁の検出に応答して更新された積荷記録を用いて第1のコンベア部上の積荷を追跡するステップと、
よりなる方法。
【請求項11】
積荷の前縁を検出するステップと、
積荷の前縁を用いて個々のコンベア部の動作を制御するステップと、
を更に含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コンベア装置は、第2のコンベア部と、前記第1のコンベア部と係る第1のセンサとを備え、前記コントローラ内で積荷記録を更新するステップは更に、起点積荷センサで積荷の後縁を検出する際に積荷の後縁と該第1のセンサとの間の距離を含む距離領域を更新するステップを含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
発生した各パルスに応答して距離領域を減少させるステップを含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンベア装置は、第1のコンベア部と係る第1のセンサと、第2のコンベア部とを更に含み、当該方法は更に、
前記第1のセンサによって積荷の後縁を検出するステップと、
該後縁の検出に際して第1のコンベア部と係る第1のデータ列を更新するステップと、
を含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセンサによって積荷の前縁を検出するステップと、
該前縁の検出に際して前記第1及び第2のコンベア部上の積荷の移動を制御するステップと、
を更に含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のコンベア部に係る第1のデータ列を更新するステップは更に、該第1のデータ列の積荷記録を第2のコンベア部に係る第2のデータ列に転送するステップを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前縁と後縁を有する積荷を追跡するためのコンベア装置であって、
第1のコンベア部と、
該第1のコンベア部と相対して配置された第2のコンベア部であって、該第1のコンベア部から第2のコンベア部へ積荷が搬送されることと、
前記第1のコンベア部と作動連結された第1のセンサと、該第1のセンサは積荷の後縁を検出することと、
前記第1のセンサと通信接続されたコントローラと、該コントローラは、前記第1のセンサによる積荷の後縁の検出に応答してのみ、積荷記録を第1のコンベア部と係る第1のデータ列から第2のコンベア部に係る第2のデータ列へ転送してなること、
よりなるコンベア装置。
【請求項18】
前記コントローラと通信接続された起点センサを更に含み、該起点センサと前記第1のセンサは、前記第1のコンベア部の対向端部にそれぞれ配置され、該コントローラは前記起点センサによる積荷の後縁の検出に際して前記第1のデータ列の積荷記録を発生してなる、請求項17に記載のコンベア装置。

【図1(a)】
image rotate

【図1(b)】
image rotate

【図1(c)】
image rotate

【図1(d)】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−504068(P2007−504068A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524665(P2006−524665)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024422
【国際公開番号】WO2005/023683
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(595057306)ジエービス・ビー・ウエブ・インターナショナル・カンパニー (7)
【Fターム(参考)】