説明

コンベアレールの摩耗検査装置

【課題】コンベアレールの下フランジの上面の摩耗状態の検査を、簡素な構成により迅速かつ高精度に行う。
【解決手段】コンベアレール4上を走行するトロリ2からコンベアレール4の下フランジ7,8よりも下側に垂下する支持部材32により非接触変位センサ34,35を上向きに支持し、該センサ34,35により下フランジ7,8の下面7B,8Bまでの距離D1,D2を測定し、この距離D1,D2を基準値と比較することによりコンベアレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aの摩耗状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンベアレールの摩耗検査装置として、開口同士を対向させてなる左右一対の溝形鋼により構成したフリーレールの内部を走行する装置本体と、フリーレールに接触して装置本体の移動距離を測定する移動距離測定部と、溝形鋼の上フランジ及び下フランジまでの距離を測定する、装置本体に固定された距離センサと、移動距離測定部および距離センサからの測定データを取り込んで記憶するとともに、フリーレールの全長にわたって装置本体の移動位置に対する下フランジの上面の磨耗量を演算する演算部を有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、コンベアレール上を走行するトロリに、コンベアレールの長手方向に対して垂直方向に切断する光帯を照射する光照射手段と、光照射手段からコンベアレールに照射され反射してきた光を受光する受光手段と、トロリを含めた周囲の背景を動画像にて撮像するための撮像手段とを備え、撮像手段にて撮像した動画像と受光手段からの光に基づいて変換されたレールの動画像とを時刻同期した状態で同時再生するための時刻同期再生手段を設け、画像処理により摩耗状態の把握及び摩耗箇所の特定を行うものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−34139号公報(図1−7)
【特許文献2】特開2004−279076号公報(図1−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンベアレールの摩耗検査装置は、フリーレールを構成する左右の溝形鋼の各々に対して、下フランジの上面までの距離を測定する第1距離センサ及び上フランジの下面までの距離を測定する第2距離センサを設け、これらセンサの測定データから溝形鋼の下フランジの上面の摩耗量を求める構成であるため、検査対象に対して2個の距離センサが必要になる。その上、左右の溝形鋼の下フランジの内側面もガイドローラが当接するため摩耗するが、該摩耗状態を検査することができない。その上さらに、装置本体の車輪の回転軸に連結したエンコーダにより移動距離を測定するものであるため、車輪のスリップや空転の発生により移動距離の測定精度が悪くなり、レールの摩耗位置を特定しにくい悪い場合がある。
また、特許文献2のコンベアレールの摩耗検査装置は、撮像した動画像を画像処理して摩耗箇所を特定する構成であり、車輪のスリップ等に起因する誤差の影響がなくなるため、レールの摩耗位置を特定する精度が向上する等の特長を有するものであるとともに、左右のレール間の距離も測定することができるため、左右の溝形鋼の下フランジの上面の摩耗状態に加えて、左右の溝形鋼の下フランジの内側面の摩耗状態も検査することができるものである。しかし、光切断法による画像を画像処理する構成であり、画像処理や調整作業に時間がかかるため結果を迅速に得ることができないとともに画像処理を行うため測定精度が低下する場合がある。
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、コンベアレールの下フランジの上面の摩耗状態の検査及び下フランジの内側面の摩耗状態の検査を、簡素な構成により迅速かつ高精度に行うことができるコンベアレールの摩耗検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンベアレールの摩耗検査装置は、前記課題解決のために、工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、前記トロリから前記レールの下フランジよりも下側に垂下する支持部材により非接触変位センサを上向きに支持し、該センサにより前記下フランジの下面までの距離を測定することにより前記下フランジの上面の摩耗状態を検査するものである。
【0007】
また、本発明に係るコンベアレールの摩耗検査装置は、前記課題解決のために、工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、前記レールが互いに間隔をおいて開口同士を対向させてなる左右一対の断面略コ字状のものであり、前記トロリの本体に垂直支軸まわりに揺動可能に中央が支持された揺動アームの遊端部に垂直軸まわりに回転可能なガイドローラを取り付け、該左右のガイドローラを前記左右のレールの下フランジの内側面に圧接した状態で、前記トロリに設けた角度センサにより前記トロリの本体に対する前記揺動アームの揺動角度を測定することにより前記下フランジの内側面の摩耗状態を検査するものである。
【0008】
ここで、前記角度センサが、前記揺動アームと一体となって前記垂直支軸まわりに回転する、径方向異方性又は部分ラジアル異方性の磁場配向とした円環状又は円盤状のマグネットと、該マグネットの外側面に対向するように前記トロリの本体側に固定されたホール素子であると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコンベアレールの摩耗検査装置によれば、工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、前記トロリから前記レールの下フランジよりも下側に垂下する支持部材により非接触変位センサを上向きに支持し、該センサにより前記下フランジの下面までの距離を測定することにより前記下フランジの上面の摩耗状態を検査するので、コンベアレールの下フランジの上面が摩耗して薄くなっている箇所では、該下フランジの上を転動する車輪を介してコンベアレールに沿って移動する非接触変位センサの位置がコンベアレールに対して低くなり、非接触変位センサにより直接測定された下フランジの下面までの距離が長くなるため、この距離を基準値と比較することにより、検査対象に対して1個のみの非接触変位センサを使用する簡素な構成により、コンベアレールの下フランジの上面の摩耗状態の検査を迅速かつ高精度に行うことができる。
あるいは、車輪の下面及び非接触変位センサの測定基準位置(上記測定距離が零の位置)間の距離から上記測定距離を引いて求めた下フランジの厚さを基準値と比較して摩耗状態の検査を行っても同様の効果を奏する。
【0010】
また、工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、前記レールが互いに間隔をおいて開口同士を対向させてなる左右一対の断面略コ字状のものであり、前記トロリの本体に垂直支軸まわりに揺動可能に中央が支持された揺動アームの遊端部に垂直軸まわりに回転可能なガイドローラを取り付け、該左右のガイドローラを前記左右のレールの下フランジの内側面に圧接した状態で、前記トロリに設けた角度センサにより前記トロリの本体に対する前記揺動アームの揺動角度を測定することにより前記下フランジの内側面の摩耗状態を検査するので、コンベアレールの下フランジの内側面が摩耗している箇所では、該内側面間の距離(レール間距離)が長くなり、よって前記内側面に圧接されるガイドローラを支持する揺動アームがトロリ本体に対して揺動する角度が大きくなり、角度センサにより直接測定された揺動角度が大きくなるため、この揺動角度を基準値と比較することにより、検査対象に対して1個のみの角度センサを使用する簡素な構成により、コンベアレールの下フランジの内側面の摩耗状態の検査を迅速かつ高精度に行うことができる。
あるいは、角度センサにより測定された揺動角度からレール間距離を求め、このレール間距離を基準値と比較して摩耗状態の検査を行っても同様の効果を奏する。
【0011】
さらに、前記角度センサが、前記揺動アームと一体となって前記垂直支軸まわりに回転する、径方向異方性又は部分ラジアル異方性の磁場配向とした円環状又は円盤状のマグネットと、該マグネットの外側面に対向するように前記トロリの本体側に固定されたホール素子であると、前記効果に加え、角度センサを極めて簡素かつコンパクトに構成して装置に組み込んで使用することができるとともに、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、コンベアレールに沿って摩耗検査装置のトロリが移動する方向(図中矢印A参照。)を前方とし、左右は前方に向かっていうのものとする。また、左方から見た図を正面図とする。
【0013】
図1〜図6は、本発明の実施の形態に係るコンベアレールの摩耗検査装置の説明図であり、図1は正面図、図2は牽引トロリを前方から見た図、図3は検査トロリを前方から見た図、図4は検査トロリの要部拡大部分縦断正面図、図5は検査トロリの平面図、図6はマグネット及びホール素子を用いたレール間距離測定の説明用概略図であり、図6(a)は要部拡大平面図、図6(b)はマグネットの磁場配向を示す平面図、図6(c)はホール素子と磁力線の方向とを示す平面図である。
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態に係るコンベアレールの摩耗検査装置は、例えばコンベアレールの例として示す、互いに間隔をおいて開口同士を対向させて設置された左右一対の断面略コ字状のレール(溝形鋼)5,6からなるフリーレール4に沿って走行し、該フリーレール4の摩耗状態を検査するものであり、前後の牽引トロリ1及び検査トロリ2を連結具3により連結して構成される。
【0014】
図1及び図2に示すように、牽引トロリ1は、トロリ本体11に支持された前後左右の車輪12,…,13,…をフリーレール4に係合させ、ガイドローラ14を左右のレール5,6の下フランジ7,8間に位置させた状態で、図示しないパワーチェーンのカムドッグ9によりドライビングドッグ10が後押しされることによりフリーレール4に沿って走行する。
トロリ本体11に取り付けられて下フランジ7,8よりも下側に垂下する支持部材15には、検査トロリ2を含めた周囲の背景を動画像にて撮影するように後方上側に向けられたレール外撮影用カメラ17が取付具16を介して取り付けられ、レール外撮影用カメラ17及び後述する検査トロリに設けられる各センサを制御するとともにデータを蓄積するシグナルコンディショナ及びコントローラ18、地上側の受信機へデータを無線送信する送信機19並びに各機器及びセンサに電力を供給する電源ユニット20が取り付けられる。
【0015】
図1及び図3〜図5に示すように、検査トロリ2は、トロリ本体21に支持された前後左右の車輪22,…,23,…をフリーレール4に係合させ、ガイドローラ24,25を左右のレール5,6の下フランジ7,8間に位置させた状態で、連結具3を介して牽引トロリ1により牽引されてフリーレール4に沿って走行する。
トロリ本体21に取り付けられて下フランジ7,8よりも垂下する支持部材32には、センサ取付具33を介して非接触変位センサである例えばレーザ変位計34,35が上向きに取り付けられ、これら左右のレーザ変位計34,35によりフリーレール4の下フランジ7,8の下面7B,8Bまでの距離を測定することができる。
なお、レーザ変位計34,35には、牽引トロリ1上の電源ユニット20から電力が供給されるとともに、レーザ変位計34,35の測定電圧がケーブルにより牽引トロリ1上のシグナルコンディショナ及びコントローラ18に送られて処理される。
【0016】
また、トロリ本体21に前後には、垂直支軸31まわりに揺動可能に中央が支持された上下に離間した揺動アーム26,26が設けられ、該揺動アーム26,26の遊端部には、垂直軸26A,26Bまわりに回転可能なガイドローラ24,25が上下の揺動アーム26,26間に取り付けられており、該ガイドローラ24,25は前記のとおり下フランジ7,8間に位置している。なお、上下の揺動アーム26,26は垂直支軸31と一体化されており、したがって垂直支軸31は揺動アーム26,26とともに揺動する。
図5に示すように、前側の揺動アーム26の垂直支軸31から略右側に離間した位置には上下に延びるピン27が突設されるとともに、トロリ本体21の右側面には左右に延びる支持ボルト28が取り付けられ、ピン27及び支持ボルト28には引張りコイルばね29の端末29A,29Bが掛止される。したがって、前側の揺動アーム26遊端部の左右のガイドローラ24,25は引張りコイルばね29の弾性付勢力により左右のレール5,6の下フランジ7,8の内側面7C,8Cに圧接される。
なお、前後の揺動アーム26,26は連結ロッド30により連結されているため、後側の揺動アーム26にも前記弾性付勢力が作用するため、後側の揺動アーム26の左右のガイドローラ24,25も下フランジ7,8の内側面7C,8Cに圧接される。
このようにして左右のガイドローラ24,25が下フランジ7,8の内側面7C,8Cに圧接されることから、検査トロリ2は、フリーレール4の左右のレール5,6に対して下フランジ7,8の内側面7C,8Cの中央にセンタリングされる。
【0017】
図4、図5及び図6(a)に示すように、前側の垂直支軸31の揺動アーム26よりも下側には円筒部材36が取り付けられ、その外側には円環状のマグネット37が取り付けられているため、該円環状のマグネット37は、揺動アーム26が揺動すると、垂直支軸31及び円筒部材36とともに垂直支軸31まわりに揺動する。
また、円環状のマグネット37の外側面に近接して対向するように、検査トロリ2の本体側の支持部材32には、ホール素子38,39が取り付けられており、後述するようにマグネット37及びホール素子38,39が角度センサを構成するため、該角度センサにより検査トロリ2のトロリ本体21に対する揺動アーム26の揺動角度を測定することができる。
【0018】
次に、コンベアレールの摩耗検査について説明する。
まず、フリーレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aの摩耗状態の検査について説明する。図3において、フリーレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aが摩耗して薄くなっている箇所では、下フランジ7,8上を転動する車輪22,23の高さ位置が低くなる。したがって、下フランジ7,8上を転動する車輪22,23を介してフリーレール4に沿って移動する前記レーザ変位計34,35の位置も、フリーレール4に対して低くなる。よって、左右のレーザ変位計34,35により直接測定したフリーレール4の下フランジ7,8の下面7B,8Bまでの距離D1,D2が長くなるため、この距離D1,D2を基準値と比較することにより、フリーレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aの摩耗状態を検査することができる。
あるいは、車輪22,23の下面とレーザ変位計34,35の測定基準位置(上記測定距離が零の位置)との距離から上記測定距離D1,D2を引いて求めた下フランジ7,8の厚さを基準値と比較して摩耗状態の検査を行ってもよい。
以上のようなフリーレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aの摩耗状態の検査によれば、検査対象である下フランジ7又は8に対して1個のみの非接触変位センサ34又は35を使用して上記距離D1,D2を直接測定する簡素な構成により、摩耗状態の検査を迅速かつ高精度に行うことができる。
なお、このようなレーザ変位計等の非接触変位センサを用いてコンベアレールの下フランジの上面の摩耗状態を検査する構成は、コンベアレールが互いに間隔をおいて開口同士を対向させて設置された左右一対の断面略コ字状のレール5,6からなるフリーレール4である場合でなくても、例えばコンベアレールが他の形態のフリーレールである場合又はI形鋼等からなるパワーレールである場合等においても容易に適用することができる。
【0019】
次に、フリーレール4の下フランジ7,8の内側面7C,8Cの摩耗状態の検査について説明する。
まず、角度センサを構成するホール素子38,39及びマグネット37について、これらの構成例を説明する。図4、図5及び図6(a)に示すホール素子38,39は、InSbやGaAsなどの半導体薄膜に電流を流し、発生するホール電圧から薄膜と垂直方向の磁界を検出するものであり、測定面を貫く磁力線の密度に比例した電圧を生じるものである。
また、図6(b)に示すように、円環状のマグネット37は、磁場配向が径方向異方性(2極異方性)となるように着磁されており、マグネット37は前記のとおり揺動アーム26とともに垂直支軸31まわりに揺動するため、マグネット37の外側面に対向するようにトロリ本体21側に固定されているホール素子38,39の測定面を貫く磁力線Gの密度が変化し、該変化が電圧変化として出力される。したがって、ホール素子38,39の出力電圧から揺動アーム26の揺動角度を測定することができる。なお、マグネット37は円盤状であってもよく、磁場配向を部分ラジアル異方性としてもよい。
【0020】
例えばホール素子39を例として、その構成の一例を説明すると、図6(c)に示す状態において、ホール素子39の出力電圧Vは、素子を貫く磁力線Gの密度に比例するため、磁力線Gとホール素子39の測定面との角度をθとし、ホール素子39の仕様により決まる比例定数をkとすると、V=k・sinθとなる。
また、図6(a)に示すように、フリーレール4の下フランジ7,8の内側面7C,8C間の距離(以下において、レール間距離という。)Wは、揺動アーム26とガイドローラ24,25のアーム長手方向の全長(以下において、アーム長という。)をLとし、アーム長手方向が移動方向Aと平行な状態からガイドローラ24,25が内側面7C,8Cに圧接された揺動状態までの揺動角をθとすると、W=L・sinθとなる。
【0021】
以上より、磁力線Gはマグネット37の周囲の全ての領域で平行かつ等密度ではないが、マグネット37の磁力線Gの方向とホール素子39の測定面の角度(θ)と、上記揺動アーム26の揺動角(θ)とをなるべく近づけるように設定することにより、ホール素子39の出力電圧Vとレール間距離Wとを略比例するように設定することができる。よって、分解能を高くすることができるため高精度にレール間距離Wを測定することができる。
なお、このようにホール素子39の出力電圧Vとレール間距離Wとを略比例するように設定してホール素子の出力電圧Vからレール間距離Wを演算により求めてもよいし、出力電圧Vとレール間距離Wとの対応関係を実測して予めテーブルにしておいて参照するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、広い測定角度範囲で分解能を高めるために位相を90°ずらして2個のホール素子38,39を配設しているが、ホール素子の数は1個でもよいし3個以上であってもよい。
【0022】
以上のようにホール素子及びマグネットにより角度センサを構成すれば、角度センサを極めて簡素かつコンパクトに構成して装置に組み込んで使用することができるとともに、低コスト化を図ることができる。
なお、ホール素子38,39には、牽引トロリ1上の電源ユニット20から電力が供給されるとともに、ホール素子38,39の測定電圧がケーブルにより牽引トロリ1上のシグナルコンディショナ及びコントローラ18に送られて処理される。
また、角度センサとしては、ホール素子及びマグネットからなる構成に限定されるものではなく、ポテンショメータ等の回転角度センサを用いてもよい。
【0023】
次に角度センサを用いたフリーレール4の下フランジ7,8の内側面7C,8Cの摩耗状態の検査について説明する。
図5及び図6(a)において、フリーレール4の下フランジ7,8の内側面7C,8Cが摩耗している箇所では、レール間距離Wが長くなり、内側面7C,8Cに圧接されるガイドローラ24,25を支持する揺動アーム26がトロリ本体21に対して揺動する角度が大きくなる。したがって、前記のとおり角度センサにより測定された揺動角度からレール間距離Wを求め、このレール間距離を基準値と比較して摩耗状態の検査を行うことにより、検査対象に対して1個のみの角度センサを使用する簡素な構成により、フリーレール4の下フランジ7,8の内側面7C,8Cの摩耗状態の検査を迅速かつ高精度に行うことができる。
あるいは、検査トロリ2に設けた前記角度センサにより直接測定されたトロリ本体21に対する揺動アーム26の揺動角度自体を基準値と比較することにより下フランジ7,8の内側面7C,8Cの摩耗状態の検査を行ってもよい。
【0024】
以上のようなフリーレール4の下フランジ7,8の上面7A,8Aの摩耗状態の検査の基になるレーザ変位計34,35の測定電圧及びホール素子38,39の測定電圧は、前記のとおり牽引トロリ1上のシグナルコンディショナ及びコントローラ18に送られて処理された後、該処理後の測定データが牽引トロリ1上の送信機19により地上側の受信機へ無線送信される。
したがって、摩耗状態の検査データと送信機19により地上側の受信機へ無線送信された前記レール外撮影用カメラ17の画像データと突き合わせることにより、コンベアレール4の摩耗箇所を特定することができる。
なお、本実施形態においては、摩耗箇所の特定のためにレール外撮影用カメラ17を使用しているが、レール外撮影用カメラ17に代えて牽引トロリ1又は検査トロリの車輪の回転軸に取り付けたエンコーダにより移動距離を測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンベアレールの摩耗検査装置の正面図である。
【図2】牽引トロリを前方から見た図である。
【図3】検査トロリを前方から見た図である。
【図4】検査トロリの要部拡大部分縦断正面図である。
【図5】検査トロリの平面図である。
【図6】マグネット及びホール素子を用いたレール間距離測定の説明用概略図であり、(a)は要部拡大平面図、(b)はマグネットの磁場配向を示す平面図、(c)はホール素子と磁力線の方向とを示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 牽引トロリ
2 検査トロリ
3 連結具
4 フリーレール(コンベアレール)
5,6 レール(溝形鋼)
7,8 下フランジ
7A,8A 上面
7B,8B 下面
7C,8C 内側面
9 カムドッグ
10 ドライビングドッグ
11 トロリ本体
12,13 車輪
14 ガイドローラ
15 支持部材
16 取付具
17 レール外撮影用カメラ
18 コントローラ
19 送信機
20 電源ユニット
21 トロリ本体
22,23 車輪
24,25 ガイドローラ
26 揺動アーム
26A,26B 垂直軸
27 ピン
28 支持ボルト
29 引張りコイルばね
29A,29B 端末
30 連結ロッド
31 垂直支軸
32 支持部材
33 センサ取付具
34,35 レーザ変位計(非接触変位センサ)
36 円筒部材
37 マグネット
38,39 ホール素子
A 移動方向
D1,D2 距離
G 磁力線
L アーム長さ
W レール間距離
θ 角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、
前記トロリから前記レールの下フランジよりも下側に垂下する支持部材により非接触変位センサを上向きに支持し、該センサにより前記下フランジの下面までの距離を測定することにより前記下フランジの上面の摩耗状態を検査することを特徴とするコンベアレールの摩耗検査装置。
【請求項2】
工場内の生産ラインに設けられたコンベアレール上を走行するトロリに設けたセンサを用いてコンベアレールの摩耗状態を検査する検査装置であって、
前記レールが互いに間隔をおいて開口同士を対向させてなる左右一対の断面略コ字状のものであり、
前記トロリの本体に垂直支軸まわりに揺動可能に中央が支持された揺動アームの遊端部に垂直軸まわりに回転可能なガイドローラを取り付け、該左右のガイドローラを前記左右のレールの下フランジの内側面に圧接した状態で、前記トロリに設けた角度センサにより前記トロリの本体に対する前記揺動アームの揺動角度を測定することにより前記下フランジの内側面の摩耗状態を検査することを特徴とするコンベアレールの摩耗検査装置。
【請求項3】
前記角度センサが、前記揺動アームと一体となって前記垂直支軸まわりに回転する、径方向異方性又は部分ラジアル異方性の磁場配向とした円環状又は円盤状のマグネットと、該マグネットの外側面に対向するように前記トロリの本体側に固定されたホール素子である請求項2記載のコンベアレールの摩耗測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−249508(P2008−249508A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91475(P2007−91475)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】