説明

コンベア

【課題】ピッキング作業の安全性および効率性を高めることができるコンベアを提供する。
【解決手段】搬送している荷物を、人手によるピッキング作業のために、所定のピッキング位置Pで一時停止させることができるコンベア1であって、ピッキング位置Pにおける荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する当接部41〜44が設けられている。当接部44は、荷物の到来方向であるピッキング位置Pの上流側に設けられ、弾性体45にて荷物の通路内へ付勢され、荷物が搬送方向に乗り越えることができ、かつ通過後の荷物の逆戻りを規制する。当接部43は、ピッキング作業後の荷物を搬送する再入庫コンベア20の方向に設けられ、頂部の高さは、再入庫コンベア20の荷物搬送高さ以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人手によるピッキング作業のために荷物を搬送するコンベアに関し、特に、ピッキング作業の安全性および効率性を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流の分野において、在庫物品のなかから、要求された物品を取り分けるピッキングと呼ばれる作業が行われる。
【0003】
ピッキング作業は、例えば、在庫物品を収納したケースを出庫し、作業者がケースから要求された物品を取り出した後、残った物品が入ったケースを再入庫するといった手順で行われる。ケースの搬送にはコンベアが用いられる。
【0004】
ピッキング作業に用いられるコンベアの一例として、物品が入ったケースを、出庫用のコンベアからピッキング用の荷台へ簡単に移動できるようにしたピッキング装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
以下では、ピッキング作業の対象物を物品と呼び、物品および物品を収納したケースを含むコンベアが搬送する全体物を荷物と呼んで区別する。
【特許文献1】特開2000−168949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピッキング装置、広くはピッキング作業に用いられるコンベアでは、荷物をピッキング位置へ簡単に移動できることの他にも、ピッキング位置において荷物を安定的に保持できることが重要である。
【0007】
ピッキング位置において荷物が不安定であれば、作業者の安全や作業効率が損なわれるだけでなく、荷物が予期しない位置へずれてしまい、再入庫用のコンベアと干渉するといった不都合が生じやすくなる。
【0008】
しかしながら、従来のピッキング装置は、かかる不都合を回避して、ピッキング作業の安全性および効率性を高めるための構成を有していない。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ピッキング作業の安全性および効率性を高めることができるコンベアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明のコンベアは、搬送している荷物を、人手によるピッキング作業のために、所定のピッキング位置で一時停止させることができるコンベアであって、前記ピッキング位置における荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する複数の当接部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、物品は4方の当接部によってピッキング位置からの移動を規制され安定的に保持される。その結果、物品の不安定に起因する作業者の危険や作業の効率低下が回避され、ピッキング作業の安全性および効率性が高まる。
【0012】
また、前記当接部の1つは、荷物の到来方向である前記ピッキング位置の上流側に設けられ、弾性体にて荷物の通路内へ付勢され、荷物が搬送方向に乗り越えることができ、かつ通過後の荷物の逆戻りを規制してもよい。
【0013】
この構成によれば、前記当接部は、荷物の慣性力と弾性体の復元力だけで荷物の進路内へ出没して荷物の通過の許可と逆戻りの規制とを行うから、別途の動力で駆動される必要はない。
【0014】
また、前記コンベアは、荷物の底面を第1高さに支持して搬送する第1コンベアと、荷物の底面を前記第1高さよりも高い第2高さに支持して搬送する第2コンベアと、前記第1コンベアから出没して、前記第1コンベア上の荷物を前記第2コンベアへ移載する移載コンベアとを有し、前記ピッキング位置は、前記第1コンベアの前記移載コンベアが出没する部分に設けられ、前記当接部の1つは、前記第2コンベアの方向に設けられ、頂部の高さが前記第1高さよりも高くかつ前記第2高さよりも低いとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、前記当接部は、前記第2コンベアの方向である前記ピッキング位置の下流側に設けられ、荷物が第1コンベア上にあるときは、荷物の第2コンベア方向への移動を規制する一方で、荷物の底面が第2高さまで持ち上げられると、もはや荷物と当接せず、荷物が第2コンベアへ移載されることを妨げない。このため、固定された当接部を用いて、荷物の第2コンベア方向へのずれの抑止と、第2コンベアへの移載の許可とを行うことができる。すなわち、上記のようなコンベア間での荷物の移載機構(荷物の搬送方向の転換機構)を利用することで、当接部の駆動を必要とせずに下流側の当接部を超えて荷物を搬送することができる。
【発明の効果】
【0016】
前記説明したように、本発明のコンベアによれば、ピッキング位置における荷物を取り囲む4方に設けた当接部によって、ピッキング位置からの物品の移動を規制して、物品を安定的に保持する。その結果、物品の不安定に起因する作業者の危険や作業の効率低下が回避され、ピッキング作業の安全性および効率性を高めることができるコンベアが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のコンベアは、搬送している荷物を、人手によるピッキング作業のために、作業者が待機しているピッキング位置で一時停止させることができるコンベアであって、ピッキング位置における荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する複数の当接部(メカニカルストッパ)が設けられていることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るコンベアについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、実施の形態のコンベア1の構成の一例を示す上面図である。以下では便宜上、紙面の上下左右方向を、奥、手前、左、右と呼んで説明する。
【0020】
図2(A)は、コンベア1の前面図であり、図2(B)は、コンベア1の右側側面図である。
【0021】
コンベア1は、出庫コンベア10、再入庫コンベア20、および移載コンベア30からなるコンベアシステムである。
【0022】
出庫コンベア10は、多数のローラ11を敷設してなるローラコンベアであり、荷物の底面をローラ11の頂部で支持して、荷物を左から右へ搬送する。ローラ11の頂部の高さは第1搬送高さである。
【0023】
再入庫コンベア20は、多数のローラ21を敷設してなるローラコンベアであり、荷物の底面をローラ21の頂部で支持して、荷物を手前から奥へ搬送する。ローラ21の頂部の高さは第1搬送高さよりも高い第2搬送高さである。
【0024】
移載コンベア30は、多数のローラ31を敷設してなるローラコンベアであり、出庫コンベア10の下部空間に設置される。移載コンベア30は、昇降機構32によって昇降駆動され、出庫コンベア10のローラ11の間から出没して、出庫コンベア10上の荷物を再入庫コンベア20へ移載する。
【0025】
出庫コンベア10の、移載コンベア30が出没する部分は、ピッキング位置Pとされている。出庫コンベア10は、搬送している荷物をピッキング位置Pで一時停止させる。
【0026】
荷物とは、前述したようにコンベア1で搬送される全体物であり、例えば、ピッキング作業の対象となる物品が入った上面開放のケースである。ケースがパレットなどの載置具に載って搬送される場合は、載置具も荷物に含まれる。
【0027】
ピッキング位置Pにおける荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する4つの当接部41〜44が設けられる。図1、および図2(A)、(B)では、当接部41〜44をハッチングで強調して示している。
【0028】
当接部41、42は、それぞれピッキング位置Pの手前、右に設けられ、頂部の高さが、第1搬送高さよりも高い。
【0029】
当接部41、42は、荷物がピッキング位置Pから逸脱すると荷物と当接して、ピッキング位置Pから手前、右方向への荷物の移動を規制する。
【0030】
なお、当接部41、42は、ピッキング作業中に不意に荷物が動くことを防ぐだけでなく、ピッキング位置Pの全幅にわたって設けることで、作業者の身体や着衣が、出庫コンベア10の可動部に巻き込まれることを防ぐガードになる。
【0031】
さらに、当接部42は、出庫コンベア10にて搬送されてきた荷物がピッキング位置Pをオーバランすることを防ぐ。
【0032】
当接部43は、再入庫コンベア20の方向であるピッキング位置Pの奥に設けられ、頂部の高さが、第1搬送高さよりも高く、かつ第2搬送高さ以下である。
【0033】
当接部43は、ピッキング作業中、荷物が出庫コンベア10上にあるとき、つまり荷物の底面が第1搬送高さにあるときは、荷物がピッキング位置Pから逸脱すると荷物と当接して、ピッキング位置Pから奥方向への荷物の移動を規制する。
【0034】
他方、ピッキング作業後、移載コンベア30によって、荷物の底面が第2搬送高さまで持ち上げられると、当接部43は、もはや荷物とは当接せず、荷物が再入庫コンベア20へ移載されることを妨げない。荷物は、出庫コンベア10から再入庫コンベア20へ移載されることで搬送方向を転換され、奥方向(下流)へ搬送されていく。
【0035】
このように、当接部43により荷物の移動が規制される状態と再入庫コンベア20への移載が許可される状態とは、移載コンベア30によって荷物が持ち上げられるだけで切り替わるから、当接部43は固定的に設置でき、駆動される必要はない。
【0036】
すなわち、荷物の搬送方向の転換機構としての移載コンベア30の上下動を利用することで、当接部43の駆動を必要とせずに当接部43を超えて荷物を再入庫コンベア20へ移載して、下流へ搬送することができる。
【0037】
当接部44は、荷物の到来方向であるピッキング位置Pの左(上流側)に設けられ、例えば、ばねなどの弾性体45にて荷物の通路内へ付勢され、荷物が搬送方向に乗り越えることができ、かつ通過後の荷物の逆戻りを規制する。
【0038】
当接部44は、例えば図2(A)に見られるような三角形の断面形状を有する爪部材で構成できる。また、このような爪部材に限らず、周知のラチェット機構を用いることもできる。当接部44は、例えば、荷物の通過方向にのみ可倒に支持され、弾性体にて起立方向に付勢された杭であってもよい。
【0039】
当接部44は、移動する荷物の慣性力と弾性体の復元力だけで荷物の進路内へ出没して荷物の通過の許可と逆戻りの規制とを行うから、別途の動力で駆動される必要はない。
【0040】
以上のように構成されたコンベア1において、作業者は、ピッキング位置Pに到着した荷物へ、出庫コンベア10および再入庫コンベア20が邪魔にならない右側および手前側から接近して、要求された物品を取り出す。
【0041】
荷物が、例えばパレットに載せられたケースであり、第1搬送高さが、例えば作業者の膝ぐらいの高さであれば、作業者はケースの中から物品を取り出すためにパレットに足を掛けることができる。そうすると、パレットは、作業者から左および奥方向へ向かう力を受ける。
【0042】
パレットが左方向への移動を規制されなければ、パレットはローラ11上で簡単に移動してしまい、作業者が転倒する事故につながる。また、パレットは移載コンベア30、および再入庫コンベア20に載ることができない位置へずれてしまう。
【0043】
パレットが奥方向への移動を規制されなければ、パレットは再入庫コンベア20の下部へ入り込んでしまい、移載コンベア30で持ち上げられた場合に再入庫コンベア20と干渉する。
【0044】
そこで、当接部43、44を設けて、荷物の奥および左方向への移動を規制することで、このような不都合は回避され、ピッキング作業の安全性および効率性が高まる。
【0045】
同様に、当接部41、42を設けて、荷物の手前および右方向への不都合な移動を規制することで、ピッキング作業の安全性および効率性はさらに高まる。
【0046】
このように、コンベア1は、ピッキング位置Pにおける荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する複数の当接部41〜44を設けたことによって特徴付けられる。なかでも、ピッキング位置Pにおいて荷物を安定的に保持する観点から、巻き込み防止やオーバラン防止といった兼用される機能がない当接部43、44を独自に設けた技術的な意義は大きい。
【0047】
以上、本発明の自動倉庫について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0048】
例えば、出庫コンベア10、再入庫コンベア20、および移載コンベア30は、必ずしもローラコンベアである必要はなく、ローラにベルトが掛け渡されてなるベルトコンベアであってもよい。
【0049】
また、当接部41、42は、それぞれ1枚の壁で構成されてもよく、また柵で構成されてもよい。当接部41、42を柵で構成する場合は、作業者の身体や着衣が通過しない程度に目が細かいことが望ましい。また、当接部41〜44に、緩衝材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ピッキング作業に用いられるコンベアとして、種々の物流システムに広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態に係るコンベアの上面図
【図2】(A)実施の形態に係るコンベアの正面図、(B)実施の形態に係るコンベアの右側側面図
【符号の説明】
【0052】
1 コンベア
10 出庫コンベア
20 再入庫コンベア
30 移載コンベア
11、21、31 ローラ
32 昇降機構
41〜44 当接部
45 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送している荷物を、人手によるピッキング作業のために、所定のピッキング位置で一時停止させることができるコンベアであって、
前記ピッキング位置における荷物を取り囲む4方に、荷物の移動を規制する複数の当接部が設けられている
ことを特徴とするコンベア。
【請求項2】
前記当接部の1つは、荷物の到来方向である前記ピッキング位置の上流側に設けられ、弾性体にて荷物の通路内へ付勢され、荷物が搬送方向に乗り越えることができ、かつ通過後の荷物の逆戻りを規制する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンベア。
【請求項3】
前記コンベアは、
荷物の底面を第1高さに支持して搬送する第1コンベアと、
荷物の底面を前記第1高さよりも高い第2高さに支持して搬送する第2コンベアと、
前記第1コンベアから出没して、前記第1コンベア上の荷物を前記第2コンベアへ移載する移載コンベアと
を有し、
前記ピッキング位置は、前記第1コンベアの前記移載コンベアが出没する部分に設けられ、
前記当接部の1つは、前記第2コンベアの方向に設けられ、頂部の高さが前記第1高さよりも高くかつ前記第2高さよりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載のコンベア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−214991(P2009−214991A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60029(P2008−60029)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】