説明

コンポーネント、特に車両用コントロールアーム

本発明は、コンポーネント、特に車両用コントロールアームであって、ベース壁及びベース壁から遠ざかって延びるレール、特にコントロールアームラグを有するコンポーネントに関する。本発明は更に、このようなコンポーネントを製造する方法に関する。本発明によれば、ベース壁の一方の側部をレールの内側輪郭部に連結する深絞り成形された輪郭部を据込み鍛造によってレールの長手方向に短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のコンポーネント、特にコントロールアーム(サスペンションアーム)であって、ベース壁及びベース壁から遠ざかって延びるレール又はビーム、特にコントロールアームラグを有するコンポーネントに関する。本発明は、更に、このようなコンポーネントの製造方法に関する。
【0002】
独国特許出願公開第102005006673(A1)号明細書から、ベース壁及びベース壁から遠ざかって延びるレールを有するコンポーネントが知られている。このコンポーネントは、金属で作られており、このコンポーネントの外側カラー上に成形により取り付けられるプラスチック材料で作られた歯車のためのキャリヤとして働く。歯車の回動を可能にするため、ボールベアリングがレール又は内側カラーの外周部に固定される。
【0003】
このようなコンポーネントは、先ず最初に、深絞り成形により平らなブランクから半球形レールを形成することにより作られる。穴が半球形レールの中央にあけられ、この穴の直径は、半球形レールの最も大きな内径の半分よりも小さい。次に、半球形レールを深絞り成形により付形して円錐形のレールを形成する。次に、このレールを深絞り成形により付形して円筒形のレールを形成する。このような中間ステップにより、深絞り成形作業1回における材料の寸法変化又は変形量は、円筒形レールを直接半球形レールから形成した場合よりも少ない。その後、円筒形レールの高さを減少させることにより円筒形レールの壁厚を増大させる。レールの内径は、一定のままである。
【0004】
ブランクの一方の側部をレールの半径方向外側輪郭部に連結している外側深絞り成形輪郭部は、ボールベアリングをレールの外周部に対して完全に位置決めすることができないほど比較的大きな直径のものである。このような理由で、外周部を除去し、アンダーカットを形成する。このようなアンダーカットの形成を容易にするため、大きな半径を中間ステップとして減少させる。
【0005】
また、外側カラーを形成し、プラスチック製歯車を提供した後、ボールベアリングをレール又は内側カラーの外側輪郭部に押し付ける。
【0006】
独国特許第102006028713(B3)号明細書から、車両用のコントロールアームであるコンポーネントが知られている。内側ベアリング支持面を備えたカラーの形態をした複数本のレールがベース壁から延びている。このようなコンポーネントを金属ストリップで作り、これを完成するまで金属ストリップに連結状態のまま維持する方法が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005006673(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許第102006028713(B3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ベース壁及びベース壁から突き出たレールを有し、このレールが要素、例えばベアリングを良好な仕方で収容し又は受け入れることができるようにするコンポーネントを設計すると共にこのようなコンポーネントをできるだけ容易に製造することができる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。
【0010】
深絞り成形輪郭部を短くすると共に内側輪郭部を短くし、これと関連して、内側輪郭部をベース壁の一方の側にずらすことによって、同一長さのレール及び短くされていない深絞り成形輪郭部とは対照的に、特にベアリング受座として働くことができる長い内側輪郭部を備えたレールを有するコンポーネントを得ることができる。長いベアリング受座は、ベアリングを良好に保持することができ、ベアリングとレールとの間の表面圧力を同時に減少させることができる。このようなコンポーネントが例えば車両用のコントロールアームである場合、ベアリング受座長さを数ミリメートルだけ延長させると、その結果として、ベアリング特性、特に車輪の案内挙動をはっきりと向上させることができる。深絞り成形輪郭部を本発明の方法によってベース壁厚とは無関係に調節することができる。
【0011】
好ましくは、深絞り成形輪郭部をレールの長手方向に丸くするのが良く、その丸め半径を据込み加工により約2mm以下の値、好ましくは約1mm以下の値、最も好ましくは約0.5mm以下の値に減少させるのが良い。丸め半径が最初に例えば5mmの値のものである場合、約2mm、1mm又はそれどころか0.5mmの値まで減少させることは、最新式の車両の場合に良くあることであるが、特にレールに利用できるスペースが僅かである場合、内側輪郭に関して長さの面で明らかな利益であることを意味している。レール長さが例えば8mmを超えてはならない場合、3mm、4mm又はそれどころか4.5mmのベアリング受座長さの増大は、相当なものである。
【0012】
最も好ましくは、レールの内側スパンを減少させると同時に深絞り成形輪郭部を短くするのが良い。したがって、深絞り成形輪郭部を短くすると共に内側スパンを変更することは、統合された一製作ステップで行なわれ、時間が節約される。さらに、深絞り成形輪郭部を短くすると共に内側スパンを変更することは、特にこれら手順を同時に実施する場合のように少ないエネルギーで実施でき、材料硬化の影響は、これら手順を連続して実施する場合よりも僅かであるといえる。さらに、同時に実施された場合、これら2つの手順は、互いから利益を受けることができ、相乗効果が得られる。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、レールの壁厚を深絞り成形輪郭部の減少又は短縮化と同時に増大させることができる。深絞り成形輪郭部を小さくすると共に壁厚を増大させることは、統合された一製作ステップで実施され、時間が節約される。さらに、レールの壁厚を増大させると共に深絞り成形輪郭部を小さくすることは、互いから利益を受けることができ、即ち、相乗効果が得られる。このほかに、これら2つの手順を少ないエネルギーで実施できる。というのは、材料硬化は、2つの手順を次々に実施する場合よりも少ないといえるからである。
【0014】
望ましくは、レールをそのスケジュール設計された最終寸法に合わせて較正すると同時に深絞り成形輪郭部を短くするのが良い。これから推定されることとして、深絞り成形輪郭部の短縮化及び較正が統合された一製造ステップで実施され、時間が節約される。
【0015】
好ましくは、深絞り成形は、初期レールに平らな底部を備えたほぼ円筒形の形状を与えることができる。レールは、次の製造ステップのための材料の良好な貯蔵部を備え、円筒形の端部の形状が望ましい場合、このような円筒形の端部形状に程良く近づけられる。
【0016】
好ましくは、平らな底部全体を打ち抜くのが良い。その結果、レールが例えば底部に設けられた開口部の側に真っ直ぐな円筒形の形状を得るよう円筒形に成形される場合、寸法変化又は変形がほぼ不要である。
【0017】
底部の打ち抜き後の次のステップとして、レールを円筒形に成形するのが良く、それにより底部に作られた開口部の側に真っ直ぐな円筒形の形状を得るのが特に有利である。
【0018】
最も望ましくは、レールの壁厚を初期レールの壁厚から始まって全体として少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.4mm、最も好ましくは少なくとも0.6mm大きくする。このようなレール壁厚の増大により、その耐荷重が増大する。
【0019】
好ましくは、レールの壁厚をベース壁の壁厚よりも大きな値まで大きくするのが良い。ベース壁の壁厚よりも大きな壁厚を有するレールが望ましい場合であっても、ベース壁の所望の壁厚に一致した基礎材料を選択することが可能である。
【0020】
最も望ましくは、レールの壁厚をベース壁の壁厚よりも少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm、最も好ましくは少なくとも0.5mmだけ大きい値まで大きくするのが良い。ベース壁の壁厚が例えば約2mmである場合、レールの壁厚を0.2mm、0.3mm又はそれどころか0.5mm増大させることができるということは、明らかな利益である。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、深絞り成形輪郭部を短くする前に、レールの内側スパンを減少させることによってレールの壁厚を大きくするのが良い。これから推定されることとして、深絞り成形輪郭部の短縮化及び内径の減少は、統合された一製造ステップで実施され、時間が節約される。さらに、深絞り成形輪郭部を小さくすると共に内径を減少させることは、互いから利益を受けることができ、即ち、相乗効果が得られる。このほかに、エネルギーを節約することができる。というのは、材料硬化は、内径を減少させると共に深絞り成形輪郭部を小さくすることを次々に実施する場合よりも統合製造ステップのほうが少ないと言えるからである。
【0022】
最も有利には、引張り強度が500N/mm2以上の鋼を用いてコンポーネントを製造するのが良い。驚くべきこととして、本発明の方法を鋼材料の高い引張り強度にもかかわらず、良好な仕方で実施することができる。
【0023】
本発明の目的は、更に、独立形式の請求項14の特徴部を有するコンポーネントによって達成される。
【0024】
深絞り成形輪郭部が据込み加工により形成されるので、深絞り成形輪郭部を形成する材料の構造的条件は、良好な強度のものである。このような材料が金属である場合、この材料は、据込み変形プロセスによって一段と圧密化されている。
【0025】
さらに、本発明の目的は、請求項15記載の特徴を有するコンポーネントによって達成され、このような特徴によれば、深絞り成形輪郭部は、レールの長手方向に丸くされているのが良く、その丸め半径は、約2mm以下、好ましくは約1mm以下、最も好ましくは約0.5mm以下であるのが良い。レール長さのほんの僅かな比率が深絞り成形輪郭部に相当している。レールの長さが取り付けスペースの制限されている最新式の車両の場合にそうであるように、8mmを超えてはならない場合、約2mm、1mm又は0.5mmの深絞り成形輪郭部がレール長さのほんの僅かな部分となる。レールがコントロールアームラグである場合、この場合、ベアリング受座として働く内側輪郭部に利用できるレール長さの良好な比率が存在する。良好なベアリング特性、特にコントロールアームによって方向づけられる車輪の良好な案内挙動を達成することが可能である。
【0026】
有利には、レールは、ベース壁よりも大きな壁厚のものであるのが良い。このようなコンポーネントは、全体として、このような強化されたレールにもかかわらず、その重量に関して軽量である。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、レールは、ベース壁の壁厚よりも少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm、最も好ましくは少なくとも0.5mmだけ大きい壁厚のものであるのが良い。ベース壁の壁厚が例えば2mmである場合、壁厚の0.2mm、0.3mm又はそれどころか0.5mmの増大は、レールの明らかな強化を意味している。
【0028】
好ましくは、コンポーネントは、引張り強度が500N/mm2以上の鋼から成るのが良い。このようなコンポーネントは、全体として、高い強度のものであるといえ、それにもかかわらず、この重量に関して軽量なものである。
【0029】
本発明の実施形態が図面に示されており、以下、このような実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態としての本発明のコンポーネントを製造する際の一製造ステップを示す図であり、結果的に得られたコンポーネントがそれぞれ縦断面図で示されている図である。
【図2】第1の実施形態としての本発明のコンポーネントを製造する際の別の製造ステップを示す図であり、結果的に得られたコンポーネントがそれぞれ縦断面図で示されている図である。
【図3】第1の実施形態としての本発明のコンポーネントを製造する際の別の製造ステップを示す図であり、結果的に得られたコンポーネントがそれぞれ縦断面図で示されている図である。
【図4】第1の実施形態としての本発明のコンポーネントを製造する際の別の製造ステップを示す図であり、結果的に得られたコンポーネントがそれぞれ縦断面図で示されている図である。
【図5】第1の実施形態としての本発明のコンポーネントを製造する際の別の製造ステップを示す図であり、結果的に得られたコンポーネントがそれぞれ縦断面図で示されている図である。
【図6】完成された又は完全なコンポーネントを示す図である。
【図7】別の実施形態としての本発明のコンポーネントの平面図である。
【図8】図7に示されたコンポーネントのVIII‐VIII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1〜図6は、第1の実施形態としての本発明のコンポーネントをどのように製造するかを示している。
【0032】
コンポーネントは、ブランク又はストリップのいずれで作られても良い。好ましくは、ブランク又はストリップは、一定の材料厚さのものである。コンポーネントは、金属、例えば鋼で作られるのが良い。
【0033】
好ましくは一定壁厚のブランク又はストリップからポットを必要ならば複数のステップで深絞り成形する。図1に示されているようにベース壁2及び初期レール又はビーム3を有するコンポーネント1が形成される。初期レール3、深絞り成形により作られたポット及びベース壁2は、初期レールを包囲したブランク又はストリップ材料により形成される。したがって、初期レール3は、ベース壁の一領域の深絞り成形によって形成されている。
【0034】
初期レール3は、大きな深さ寸法、即ち長さ寸法のものであり、意図した完成状態のレールよりも大きな直径のものである。したがって、後で行なわれる変形又は寸法変化ステップのための材料が予備又は貯蔵状態で保たれている。さらに、初期レール3は、意図した最終形態とほぼ同じ形状のものである。この実施形態によれば、初期レールは、実質的に円筒形の外装材4を有する。というのは、完成したレールは、円筒形の外装材を有することになり、即ち、円筒形のカラーであることになるからである。初期レール3にその最終形状を与えるためには変形量が少ないことが必要になる。さらに、初期レール3は、実質的に平坦な底部5を有する。これから推定されることとして、底部5に必要な材料はほんの僅かであり、深絞り成形中、材料を延伸させることは、例えば丸みが付けられた底部と比較して、最小限に抑えられる。
【0035】
初期レール3の外装材4は、底部5に隣接して位置すると共に半径方向内方に延びる部分17を有し、この部分は、この実施形態では、丸くなっている。さらに、外装材4は、半径方向外方に延びると共にベース壁2に隣接して位置する部分18を有している。半径方向外方に延びる部分18も又、この実施形態では丸くなっている。
初期レール3は、ベース壁2の一方の側部102を外装材4の内側輪郭部106に連結する深絞り成形輪郭部118を有している。図4の記載によれば、ベース壁2のこの側部102は、下側の側部である。初期深絞り成形輪郭部118は、大きさがベース壁の壁厚に1mm〜2mmを加えた寸法に一致した半径を有するのが良い。ベース壁の壁厚は、例えば、3mmであるのが良い。
【0036】
底部5は、例えば、打ち抜きにより除去される。その結果、図2に示されているコンポーネント11は、穴15を有するレール13を備えている。
【0037】
半径方向内方に延びると共に今や穴16に隣接して位置する部分17は、成形により広げられており、即ち、必要ならば幾つかのステップで真っ直ぐにされている。半径方向外方に延びる部分18の半径は、曲げられることにより、例えば、ブランクホルダによって実質的に僅かに減少している。図3に示されているようなコンポーネント21が得られ、このコンポーネントは、半径の減少した半径方向外方に延びる部分28とは別に、真っ直ぐである外装材24を備えたレール23を有している。図2に示されたコンポーネント11の外装材は、既に実質的に円筒形なので、半径方向内方に延びる部分17を広げるのに必要な変形作業は比較的ほんの僅かであり、したがって、円筒形成形による材料の延伸は、ほんの僅かである。その結果、図3に示されたコンポーネント21のレール23の壁厚は、その長さ全体にわたって依然として実質的に同一のままである。深絞り成形輪郭部128の半径は、今でも依然として大きく、例えば、ベース壁の壁厚にほぼ一致した大きさのものである。
【0038】
図3に示されたレール23は、壁厚29、高さ又は長さ30を有し、その内側輪郭126は、内径又は内側スパン29を有している。内側スパン26を維持した状態でプレス加工又は据込み加工によってレールの高さ又は長さを減少させると共にその壁厚を増大させる。図4に示されたコンポーネント31が得られ、このコンポーネントは、増大した壁厚39及び減少した高さ又は長さ40のレール33を有している。据込み加工実施前では、コンポーネントの構造的状態は、深絞り成形によって初期レール3を形成している間、材料の流れを生じさせる深絞り成形のための典型的な顕微鏡写真像であった。構造的状態は、材料の横方向流れによって半径方向内方に延びる部分17の前方領域を広げるだけで変更されている。据込み加工により、構造的状態及び顕微鏡写真像は変化している。特に、深絞り成形によって生じる流れすじは、互いに更に遠ざかり、直線度の低い状態で延びている。換言すると、据込み加工により生じる顕微鏡写真像は、据込み加工にとって特有であり、従来の顕微鏡写真像に対して一線を画している。
【0039】
レール33を必要ならば幾つかのステップで一段とプレス加工し又は据込み加工し、その高さ又は長さが一段と減少すると共にその壁厚が一段と増大する。それと同時に、その内径が減少する。図5に示されているコンポーネント41が得られ、このコンポーネントは、増大した壁厚49、一段と減少した高さ又は長さ50及び減少した内側スパン46のレール43を有する。さらに据込み加工を行なうことにより、レール43の構造は、顕微鏡写真像から推定できるように特徴的な仕方で一段と変化している。
【0040】
図5の拡大図は、これまでレール壁厚をどれほど大きくしてきたかを示している。増大量は、二重線ハッチングによって示されている。レール43の壁厚は、ベース壁2の壁厚よりも既にかなり大きい。ベース壁2の一方の側部102をレール43の内側輪郭部146に連結している内側深絞り成形輪郭部128は、据込み加工中、その大きな半径を維持した。
【0041】
レールは、今や、更にプレス加工され又は据込み加工されており、それと同時に、レールの内側スパンは、減少し、レールは、その最終寸法、特にその内側深絞り成形輪郭部及びその内側輪郭部に合わせて較正されている。これを行なった際、レールの壁厚を一段と増大させ、深絞り成形輪郭部の半径を最小限に抑える。壁厚は、2mm以下、好ましくは1mm以下、最も好ましくは約0.5mm以下の値まで最小限に抑えられる。図6に示されている完成状態の成形部品51が得られ、この部品は、一段と減少した内側スパン56、一段と増大した壁厚59、一段と減少した高さ又は長さ60の内側輪郭156及びこれよりもきつい曲率の深絞り成形輪郭部158を備えたレール53を有している。深絞り成形連結部158の半径を減少させることにより、レール53の長手方向延長に関して、深絞り成形輪郭部の軸方向長さの減少が生じると同時に内側輪郭部156、特に深絞り成形輪郭部に隣接して位置するその初期箇所がベース壁の側部102に向かってずらされる。したがって、深絞り成形輪郭部の短縮化により内側輪郭は、増大した長さを有する。変形例として、深絞り成形輪郭部の軸方向長さが減少し、それと同時に内側輪郭156がベース壁の側部102に向かって延長されたといえる。
【0042】
レール51が例えば支承ラグとして働き、その内側輪郭部156がベアリング受座として働く場合、深絞り成形輪郭部の軸方向短縮化は、深絞り成形輪郭部の軸方向長さが短縮化されず又は減少しなかった場合と比較して、受座長さが相当増大していることを意味している。半径をベース壁の壁厚よりも小さい値、例えば、2mm、1mm又はそれどころか0.5mmまで減少させることは、完成状態のレールの高さ又は長さが例えば8mmである場合、ベアリング受座長さが相当増大することを意味している。百分率としても表すことができる半径のこのような相当な減少又はベアリング受座長さのこのような相当な増大により、ベアリング特性の著しい改善が得られる。というのは、ベアリングは、長さが大きいのでレールによって吊り下げられ、力を吸収しながらその位置の変化の程度が少ないからである。それと同時に、ベアリングを吊り下げる表面圧力を減少させることができ、レール負荷が減少する。
【0043】
完成状態のレール53の壁厚を初期レール53の壁に対して、例えば少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mm又はそれどころか少なくとも0.6mmだけ増大させることができた。完成状態のレール53の壁厚59は、ベース壁2の壁厚又は初期材料の壁厚よりも例えば少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm又はそれどころか少なくとも0.5mmだけ大きいのが良い。ベース壁の壁厚は、例えば、約2mm、約2.5mm又は約3mmの場合がある。
【0044】
さらに、本発明の方法をレールの内側輪郭部に高い輪郭付け精度、特に高い円筒度で且つ特に内側輪郭部の長手方向部分における長さ全体にわたって実質的に一定である壁厚を備えるよう形成することができる。その結果、ベアリングは、レールの内側輪郭に一様に嵌まり、即ち、一様な表面圧力状態が得られ、ベアリングをその定位置に保持する安定性が一段と向上する。さらに、ベアリング押し出し力を生じさせる変動は、非常に小規模であり、押し込み力と押し出し力との間には良好な相関が存在する。厳密な公差が想定可能なので、ベアリング受座は、容易に再現可能である。
【0045】
コンポーネントが例えば車両のコントロールアームである場合、コントロールアームが本発明に従って製造された場合、駆動挙動を例えば、1から10までの評価尺度のうちの約0.5〜0.75ポイントだけ改善することができる。
さらに、このような改良型ベアリング特性のコンポーネントを経済的に製造することができる。というのは、初期材料としていわゆる「あつらえの圧延ブランク」を用いることが不要であり、一定の等しい強度の材料を使用することができるからである。それにもかかわらず、ベース壁の壁厚とは無関係に実質的に調節することができる壁厚を備えた改良型レールを得ることができる。
【0046】
レール壁の拡大により、レール壁は、破断することなく、大きな力でもこれを吸収することができる。換言すると、レールにとって小さすぎる壁厚を有するコンポーネントを製造するための材料を用いることが可能である。したがって、コンポーネントは、全体として、それにもかかわらず、十分な壁厚のレールを備えた軽量構造のものであるといえる。
本発明の方法は、高強度鋼の使用にも適している。引張り強度が400N/mm2を超え、それどころか引張り強度が500N/mm2を超える高強度鋼を用いることができる。例えば、フェライト系ベナイト焼入れ鋼、例えば、HDT450F及びHDT560F又は商業的にFB450、FB540、FB560又はFB590とラベル表示された群の鋼を用いることができる。
【0047】
図7は、別の実施形態としての本発明のコンポーネントの平面図である。このコンポーネントは、車両のコントロールアーム201として設計されており、車輪を案内するために用いられる。コントロールアーム201は、ほぼU字形の断面形態のものであり、側方シェル202,203は、互いに向かい合うと共に後方部材204によって互いに結合されている。
【0048】
コントロールアーム201は、上述の本発明の方法によって製造された一体形成成形品であり、特に、制御アームラグ205,206が本発明に従って製造されたレールを有する。
【0049】
図8は、図7のVIII‐VIII線に沿って取ったコントロールアーム201の断面図であり、柱状コントロールアームラグ205,206が縦断面図で示されている。コントロールアームラグは、例えば9.5mmの高さ又は長さ207,208及び例えば2.5mmの増大した壁厚209,210を有している。これとは対照的に、側部シェル202,203、即ちベース壁の壁厚211,212は、例えば2mmである。対応の側部シェル202,203の外面215,216をそれぞれ対応のコントロールアームラグ205,206の半径方向内側輪郭部217,218に連結している内側深絞り成形輪郭部213,214は、0.5mmの丸め半径を有する。この実施形態のベアリング受座長さは、9mmである。
【0050】
支承ラグ205,206相互間の明確な幅又は距離219は、例えば8mmである。側部シェル202,203の外面215,216は、断面図の高さで見て、例えば27mmの距離220を有する。支承ラグ205,206相互間の距離219は、必要程度の距離か所与の最小距離かのいずれであっても良い。側部シェル202,203の外面215,216の距離220は、構造的に所与の距離又は利用可能なスペースにより定められる最大距離のいずれであっても良い。コントロールアームラグ205,206は、中空円筒形であり、例えば約45mmの内径221,222を有している。
【0051】
内側深絞り成形輪郭部213,214をそれぞれ構成する材料断面材の構造は、据込み加工又はプレス加工によって形成される。したがって、このような材料部分は、据込み加工又はプレス加工に特有の顕微鏡写真像を有する構造的状態のものである。換言すると、据込み加工又はプレス加工が行なわれたということは、顕微鏡写真像から推定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポーネント(51,201)、特にコントロールアームを製造する方法であって、前記コンポーネントは、ベース壁(2,202,203)及び前記ベース壁から延びると共に前記ベース壁によって形成されたレール(53,205,206)、特にコントロールアームラグを有し、
前記レールの形成方法が、
初期レール(3)を形成するステップであって、前記ベース壁の一方の側部(105,215,216)を前記レール(3)の内側輪郭部(106)に連結する深絞り成形された輪郭部(118)が初期形態を獲得するステップと、
前記レールを据込み加工するステップと、を有する製造方法において、
前記深絞り成形輪郭部を据込み加工によって前記レールの長手方向に短くし、前記内側輪郭部を前記ベース壁(2,202,203)の前記側部(102,215,216)に向かってずらす、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記深絞り成形輪郭部を前記レールの前記長手方向に丸くし、その丸め半径を前記据込み加工により約2mm以下の値、好ましくは約1mm以下の値、最も好ましくは約0.5mm以下の値に減少させる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レールの内側スパンを減少させると同時に前記深絞り成形輪郭部を短くする、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記レールの壁厚を大きくすると同時に前記深絞り成形輪郭を短くする、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記レールをその意図した最終寸法に合わせて較正すると同時に前記深絞り成形輪郭部を短くする、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記初期レール(3)は、深絞り成形によって平らな底部(5)を備えたほぼ円筒形の形状を獲得する、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記平らな底部(5)全体を打ち抜く、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記レールを前記底部(5)の打ち抜き後の次のステップとして円筒形に成形する、
請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記初期レール(3)の壁厚から始まって、前記レールの壁厚を全体として少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.4mm、最も好ましくは少なくとも0.6mm大きくする、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レールの壁厚を前記ベース壁(2,202,203)の壁厚(211,212)よりも大きな値まで大きくする、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記レールの壁厚を前記ベース壁(2,202,203)の壁厚(211,212)よりも少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm、最も好ましくは少なくとも0.5mmだけ大きい値まで大きくする、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記深絞り成形輪郭部を短くする前に、前記レールの壁厚を大きくする一方で、前記レールの内側スパンを減少させる、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
引張り強度が500N/mm2以上の鋼を用いて前記コンポーネント(51,201)を製造する、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
コンポーネント(51,201)、特にコントロールアームであって、前記コンポーネントは、ベース壁(2,202,203)及び前記ベース壁から延びると共に前記ベース壁と一体に形成されたレール(53,205,206)、特にコントロールアームラグを有し、深絞り形成輪郭部(158,213,214)が前記ベース壁(2,202,203)の一方の側部(102,215,216)を前記レールの内側輪郭部(156,217,218)に連結しているコンポーネントにおいて、
前記深絞り成形輪郭部(158,213,214)は、据込み加工によって形成されている、
ことを特徴とするコンポーネント。
【請求項15】
特に請求項14記載のコンポーネントであって、前記コンポーネントは、ベース壁(2,202,203)及び前記ベース壁から延びると共に前記ベース壁と一体に形成されたレールを有し、深絞り形成輪郭部(158,213,214)が前記ベース壁(2,202,203)の一方の側部(102,215,216)を前記レールの内側輪郭部(156,217,218)に連結しているコンポーネントにおいて、
前記深絞り成形輪郭部(158,213,214)は、前記レールの長手方向に丸くされており、その丸め半径は、約2mm以下、好ましくは約1mm以下、最も好ましくは約0.5mm以下である、
ことを特徴とするコンポーネント。
【請求項16】
前記レール(53,205,206)は、前記ベース壁(2,202,203)よりも大きな壁厚(209,210)のものである、
請求項14又は15記載のコンポーネント。
【請求項17】
前記レール(53,205,206)は、前記ベース壁(2,202,203)の壁厚(211,212)よりも少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm、最も好ましくは少なくとも0.5mmだけ大きい壁厚(209,210)を有する、
請求項14ないし16のいずれか1項に記載のコンポーネント。
【請求項18】
前記コンポーネント(51,201)は、引張り強度が500N/mm2以上の鋼から成る、
請求項11ないし17のいずれか1項に記載のコンポーネント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504436(P2013−504436A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529150(P2012−529150)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005623
【国際公開番号】WO2011/029630
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(501241575)マグナ インターナショナル インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】