説明

コンロ用バーナ

【課題】バーナヘッド4の周面に、上下2段の炎孔が夫々周方向の間隔を存して多数設けられ、上段炎孔5Uと下段炎孔5Lとに各別の混合管6U,6Lから混合気を供給すると共に、下段炎孔の総面積を上段炎孔の総面積より小さくしたコンロ用バーナにおいて、大きな炎を生ずることなくスムーズな点火を行うことができるようにする。
【解決手段】下段炎孔5Lへの点火を行う点火プラグ9と、点火プラグ9の配置位置とはバーナヘッド4の周方向反対側の位置で下段炎孔5Lの火炎を検知する火炎検知素子10とを備える。バーナの点火操作時に、下段炎孔5Lのみに混合気を供給した状態で点火プラグ9により下段炎孔に点火し、火炎検知素子10が火炎を検知したところで上段炎孔5Uへの混合気の供給を開始する。また、火炎検知素子10が火炎を検知したときに、報知手段18を作動させてから上段炎孔5Uへの混合気の供給を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強火からとろ火まで広範囲に火力調節が可能なコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンロ用バーナとして、バーナヘッドの周面に、上下2段の炎孔が夫々周方向の間隔を存して多数設けられ、上段炎孔と下段炎孔とに各別の経路で混合気を供給すると共に、下段炎孔の総面積を上段炎孔の総面積より小さくしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このバーナによれば、上段炎孔と下段炎孔との両者で燃焼させる強火状態から下段炎孔のみで燃焼させるとろ火状態まで火力を広範囲に可変することができる。
【0003】
また、このバーナでは、下段炎孔への点火を行う点火プラグに隣接して下段炎孔の火炎を検知する火炎検知素子たる熱電対を配置している。そして、バーナの点火操作時に、上段炎孔と下段炎孔との両者に混合気を供給した状態で点火プラグにより下段炎孔に点火し、下段炎孔から上段炎孔に火移り点火させるようにしている。また、上段炎孔と下段炎孔とに共通の燃料ガス通路に介設した電磁安全弁を熱電対の起電力で開弁保持し、失火時に電磁安全弁が閉じられるようにしている。
【0004】
ところで、点火操作時には、各炎孔用の混合気供給経路からの空気の押し出し(エアパージ)が完了するまで各炎孔から燃焼可能な濃度の混合気が噴出しない。ここで、下段炎孔は上段炎孔より総面積が小さく、且つ、混合気の供給量が少ないため、下段炎孔用の混合気供給経路のエアパージに要する時間は上段炎孔用の混合気供給経路のエアパージに要する時間より長くなり勝ちである。従って、下段炎孔から燃焼可能な濃度の混合気が噴出してこれに点火される前に、上段炎孔から燃焼可能な濃度の混合気が噴出されてしまうことがある。その結果、下段炎孔への点火時にそれまで上段炎孔から噴出されていた混合気に引火して大きな炎を生じ、使用者を驚かせてしまうことがある。
【特許文献1】特開平9−303719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、上下2段の炎孔を有するにも拘わらず、大きな炎を生ずることなくスムーズな点火を行うことができるようにしたコンロ用バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バーナヘッドの周面に、上下2段の炎孔が夫々周方向の間隔を存して多数設けられ、上段炎孔と下段炎孔とに各別の経路で混合気を供給すると共に、下段炎孔の総面積を上段炎孔の総面積より小さくしたコンロ用バーナにおいて、上記課題を解決するために、下段炎孔への点火を行う点火プラグと、点火プラグの配置位置とはバーナヘッドの周方向反対側の位置で下段炎孔の火炎を検知する火炎検知素子とを備え、バーナの点火操作時に、下段炎孔のみに混合気を供給した状態で点火プラグにより下段炎孔に点火し、火炎検知素子が火炎を検知したところで上段炎孔への混合気の供給を開始することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、下段炎孔用の混合気供給経路からのエアパージに時間がかかっても、上段炎孔に混合気を供給しない状態で下段炎孔への点火が行われるため、点火時に大きな炎を生ずることはない。また、火炎検知素子は点火プラグの配置位置とはバーナヘッドの周方向反対側に位置するため、火炎検知素子が火炎を検知するときにはバーナヘッドのほぼ全周の下段炎孔に火移りした状態になる。そして、この状態で上段炎孔への混合気の供給が開始されるため、バーナヘッドの全周に亘り下段炎孔から上段炎孔へのスムーズな火移りが行われる。
【0008】
また、本発明においては、火炎検知素子が火炎を検知したときに、報知手段を作動させてから上段炎孔への混合気の供給を開始することが望ましい。これによれば、上段炎孔への火移りで急に強火状態になっても、使用者は報知手段の作動で強火状態になることを予め知ることができる。従って、強火状態への急な変化で使用者を驚かせることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照して、1はコンロ本体、2はコンロ本体1の上面を覆う天板、3はコンロ用バーナを示している。天板2にはバーナ用開口2aが開設されている。また、天板2上には、バーナ用開口2aを囲うようにして図示省略した五徳が載置される。そして、五徳に載置する調理容器がバーナ3で加熱される。
【0010】
バーナ3は天板2上に露出するバーナヘッド4を備えている。バーナヘッド4の周面には、図2に示す如く、上下2段の炎孔5U,5Lが夫々周方向の間隔を存して多数設けられている。ここで、五徳の複数の五徳爪に合致する周方向複数箇所には、五徳爪に火炎が触れて不完全燃焼することを防止するため、上段炎孔5Uが設けられていない。従って、下段炎孔5Lの個数は上段炎孔5Uの個数より若干多くなる。但し、各下段炎孔5Lの面積は各上段炎孔5Uの面積より遥かに小さく、そのため、下段炎孔5Lの総面積は上段炎孔5Uの総面積より小さくなる。また、上段炎孔5Uと下段炎孔5Lには後述するように各別の経路を介して混合気が供給される。
【0011】
バーナ3は、更に、コンロ本体1内に設置される混合管ユニット6を備える。混合管ユニット6には上段炎孔5U用の第1混合管6Uと下段炎孔5L用の第2混合管6Lとが並設されている。そして、第1と第2の各混合管6U,6Lの上流端に臨ませて配置した第1と第2の各ノズル7U,7Lから噴出される燃料ガスと一次空気との混合気が各混合管6U,6L内で生成されるようにしている。
【0012】
混合管ユニット6には、更に、天板2のバーナ用開口2a内に向けて立ち上がる内外3重の筒部61,62,63が設けられている。第1混合管6Uからの混合気は内筒部61と中間筒部62との間の空間に供給され、第2混合管6Lからの混合気は中間筒部62と外筒部63との間の空間に供給される。
【0013】
上記バーナヘッド4は、内筒部61に嵌合する内周の筒部41aを有する環状の上ヘッド部材41と、中間筒部62に嵌合する内周の筒部42aを有する環状の中間ヘッド部材42と、外筒部63の上端に結合される筒状の下ヘッド部材43との上下3部材で構成されている。中間ヘッド部材42の上面外周部には、上ヘッド部材41が着座する環状突起が立設され、この突起に上部炎孔5Uとなる溝が形成されている。また、中間ヘッド部材42の下面外周部には、下ヘッド部材43の上端部に着座する環状突起が垂設され、この突起に下部炎孔5Lとなる溝が形成されている。
【0014】
かくして、第1混合管6U、内筒部61と中間筒部62との間の空間及び上ヘッド部材41と中間ヘッド部材42との間の空間で上部炎孔5U用の混合気供給経路が構成される。また、第2混合管6L、中間筒部62と外筒部63との間の空間及び中間ヘッド部材42と下ヘッド部材43との間の空間で下段炎孔5L用の混合気供給経路が構成される。
【0015】
尚、下ヘッド部材43には、その上端部外周から下方にのびるスカート部43aが設けられている。そして、スカート部43aに、天板2のバーナ用開口2aを覆うカバーリング8を外挿し、バーナ用開口2aからの煮こぼれ汁の侵入をカバーリング8により防止できるようにしている。
【0016】
バーナ3には、下段炎孔5Lへの点火を行う点火プラグ9と、点火プラグ9の配置位置とはバーナヘッド4の周方向反対側の位置で下段炎孔5Lの火炎を検知する熱電対から成る火炎検知素子10とが付設されている。尚、火炎検知素子10は点火プラグ9の配置位置から周方向に180°離れた位置に配置されることが望ましいが、本実施形態では混合管ユニット6との干渉回避のため、点火プラグ9と熱電対10との間の周方向間隔をやむを得ず180°より狭くしている。また、中間ヘッド部材42には、点火プラグ9に対向するターゲット部42bが設けられている。バーナ3には、更に、バーナヘッド4で囲われるバーナ内周空間に位置させて、調理容器の温度を検出する鍋底温度センサ11が付設されている。
【0017】
図2を参照して、バーナ3用の燃料ガス供給路12には、電磁安全弁13とその下流側の主弁14とが介設されている。燃料ガス供給路12は、主弁14の下流側で、第1混合管6Uに臨ませた第1ノズル7Uに接続される第1分岐路12Uと、第2混合管6Lに臨ませた第2ノズル7Lに接続される第2分岐路12Lとに分岐される。第1と第2の各分岐路12U,12Lには流量調節弁15U,15Lが介設され、第1分岐路12Uには更に電磁開閉弁16が介設されている。
【0018】
主弁14は図示省略した公知の操作ボタンの操作で開閉される。また、流量調節弁15U,15Lは図示省略した火力調節レバーで操作される。そして、火力調節レバーにより第1分岐路12Uに介設した第1流量調節弁15Uを介して上段炎孔5Uの燃焼量が強火から消火まで調節されると共に、第2分岐路12Lに介設した第2流量調節弁15Lを介して下段炎孔5Lの燃焼量が弱火からとろ火まで調節される。
【0019】
電磁安全弁13と電磁開閉弁16は火炎検知素子10の出力信号を入力する制御器17により制御される。また、制御器17により制御されるブザーから成る報知手段18が設けられている。
【0020】
次に、図3を参照して、操作ボタンの操作による点火時の作動について説明する。尚、操作ボタンは、消火位置から点火位置まで押し込み自在であり、点火位置で押圧を解くと点火位置の若干手前の燃焼位置に復動してこの位置に係止され、燃焼位置で再度押し操作すると消火位置に復帰する。
【0021】
操作ボタンを点火位置まで押し操作すると(時刻t1)、電磁安全弁13が押圧開弁されると共に主弁14が開弁され、更に、点火スイッチが閉成されて点火プラグ9での火花放電が行われる。一方、電磁開閉弁16は閉弁されたままである。従って、点火操作時には下段炎孔5Lのみに混合気が供給される。そして、下段炎孔5L用の混合気供給経路からのエアパージに時間がかかっても、上段炎孔5Uに混合気を供給しない状態で下段炎孔5Lへの点火が行われるため、点火時に大きな炎を生ずることはない。
【0022】
点火後、操作ボタンを燃焼位置に復動させるが(時刻t2)、主弁14は燃焼位置においても開弁状態に維持される。一方、操作ボタンの燃焼位置への復動により点火プラグ9での火花放電が停止されると共に、電磁安全弁13の押圧が解除される。但し、電磁安全弁13は制御器17により所定のホールド時間だけ強制的に通電されて開弁状態に保持される。そして、このホールド時間中に火炎検知素子10に臨む下段炎孔5Lまで火移りして、火炎検知素子10が火炎を検知すると(時刻t3)、以後火炎検知素子10からの検知信号の出力で電磁安全弁13は開弁状態に保持される。また、火炎検知素子10から検知信号が出力されると、制御器17により報知手段18が所定時間作動される。そして、報知手段18の作動中又は作動完了後に電磁開閉弁16が開弁される(時刻t4)。これにより、上段炎孔5Uへの混合気の供給が開始される。
【0023】
ここで、火炎検知素子10は点火プラグ9の配置位置とはバーナヘッド4の周方向反対側に位置するため、火炎検知素子10が火炎を検知するときにはバーナヘッド4のほぼ全周の下段炎孔5Lに火移りした状態になる。そして、この状態で上段炎孔5Uへの混合気の供給が開始されるため、バーナヘッド4の全周に亘り下段炎孔5Lから上段炎孔5Uへのスムーズな火移りが行われる。
【0024】
また、上段炎孔5Uへの混合気の供給開始に先立って報知手段18が作動される。そのため、上段炎孔5Uへの火移りで急に強火状態になっても、使用者は報知手段18の作動で強火状態になることを予め知ることができる。従って、強火状態への急な変化で使用者を驚かせることはない。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、各下段炎孔5Lの面積を各上段炎孔5Uの面積より小さくしたが、バーナヘッド4の周方向に細長くのびる、上段炎孔5Uより面積の大きな下段炎孔を設けることも可能である。この場合、下段炎孔の個数を上段炎孔の個数より少なくして、下段炎孔の総面積が上段炎孔の総面積より小さくなるようにする。また、上記実施形態では、火炎検知素子10として熱電対を用いたが、フレームロッドを用いても良い。更に、上記実施形態では、報知手段18としてブザーを用いたが、上段炎孔5Uへの混合気の供給を開始する旨を音声で報知するものやランプ等で視覚的に報知するものを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態のバーナの断面図。
【図2】実施形態のバーナの斜視図。
【図3】実施形態のバーナの点火時の作動を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0027】
3…コンロ用バーナ、4…バーナヘッド、5U…上段炎孔、5L…下段炎孔、6U…上段炎孔用混合管、6L…下段炎孔用混合管、9…点火プラグ、10…火炎検知素子、18…報知手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナヘッドの周面に、上下2段の炎孔が夫々周方向の間隔を存して多数設けられ、上段炎孔と下段炎孔とに各別の経路で混合気を供給すると共に、下段炎孔の総面積を上段炎孔の総面積より小さくしたコンロ用バーナにおいて、
下段炎孔への点火を行う点火プラグと、点火プラグの配置位置とはバーナヘッドの周方向反対側の位置で下段炎孔の火炎を検知する火炎検知素子とを備え、
バーナの点火操作時に、下段炎孔のみに混合気を供給した状態で点火プラグにより下段炎孔に点火し、火炎検知素子が火炎を検知したところで上段炎孔への混合気の供給を開始することを特徴とするコンロ用バーナ。
【請求項2】
前記火炎検知素子が火炎を検知したときに、報知手段を作動させてから前記上段炎孔への混合気の供給を開始することを特徴とする請求項1記載のコンロ用バーナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−196785(P2008−196785A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33066(P2007−33066)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】