コークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法
【課題】炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能なコークス炉の炭化室幅測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る炭化室幅測定装置100は、炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部10と、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部20と、測定部10と支持部20とを連結する接続部30とを備える。測定部10は、冷却手段15が設けられた筐体11と、筐体11内に収納され、先端部が筐体11に設けられた貫通孔111を介して筐体11の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子12と、筐体11内に設けられ、接触子12の進退方向の変位を測定する変位測定手段13とを具備する。各組の接触子12は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされている。
【解決手段】本発明に係る炭化室幅測定装置100は、炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部10と、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部20と、測定部10と支持部20とを連結する接続部30とを備える。測定部10は、冷却手段15が設けられた筐体11と、筐体11内に収納され、先端部が筐体11に設けられた貫通孔111を介して筐体11の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子12と、筐体11内に設けられ、接触子12の進退方向の変位を測定する変位測定手段13とを具備する。各組の接触子12は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炭化室の幅を測定する装置及び方法に関し、特に、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中(コークス押出し中又は石炭乾留中)であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能なコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及している室炉式コークス炉では、炭化室と燃焼室とが交互にサンドイッチ状に多数並列に設けられている。斯かるコークス炉において、装炭孔から炭化室内に装入された石炭は、その両側に位置する燃焼室から側壁(炉壁)を介して熱を得て乾留される。乾留終了後のコークスは、押出機により炭化室から押出されて消火され、製品コークスとなる。
【0003】
ここで、コークス炉の側壁は煉瓦で構成されているため、稼動年数が長くなれば、炉体の老朽化が進行する。この老朽化を的確に把握することがコークス炉の寿命延長上重要である。この老朽化の一指針として挙げられるのが、炭化室の側壁を構成する煉瓦の損傷状態である。
【0004】
なお、コークス炉の炭化室における各方向の呼称については、一般に高さ方向を炉高方向、一方の側壁から他方の側壁に向かう方向を幅方向、側壁面に沿ってコークスが押出される方向を炉長方向と称しており、後述する図3に記載の通りである。
【0005】
炭化室側壁の損傷状態を知る方法として、炭化室の幅(炭化室の側壁間の距離であり、窯幅とも称する。通常は430〜450mm程度である)を知ることが有効であるため、炭化室の幅を測定する方法が従来から数多く提案されている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、装置本体、該装置本体から炭化室の幅方向に延びる変位体、該変位体の変位測定手段、炭化室内に前記装置本体を挿入する挿入手段などを備えた接触式の炭化室幅測定装置が提案されている。より具体的には、挿入手段としてのプッシャービームに取り付けた断熱した装置本体内にポテンショメータを設け、このポテンショメータに接続した変位体の先端にローラを取り付け、該ローラを炭化室側壁に接触させて変位体の変位をポテンショメータの回転角から測定する装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、光源及び検出器からなる光学式距離計(レーザ距離計)と、前記光源から出射したレーザ光を炭化室の側壁に向けて反射する反射ミラーとを備えた非接触式の炭化室幅測定装置が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、操業中の炭化室の側壁と、燃焼室を介して前記操業中の炭化室に隣接する炭化室の側壁とが、仕切り煉瓦によって一体となって動くため、前記隣接炭化室を空窯(炭化室内に石炭、コークスが存在しない状態)として、該隣接炭化室の側壁の変位を測定することにより、前記操業中の炭化室の側壁の変位を測定する方法が提案されている。
【0009】
より具体的には、下記の第1〜第3の方法が提案されている。第1の方法(図9参照)は、隣接炭化室の装炭孔から炉内を覗くように炉上に設置した光学距離計(レーザ距離計)5から、測定対象炭化室側の側壁に向けて測距光(レーザ光)を照射してその側壁の変位を測定する方法である。第2の方法(図10参照)は、隣接炭化室の装炭孔よりその隣接炭化室内に装入して固定した光学距離計(レーザ距離計)5から、側壁に向けて測距光(レーザ光)を照射してその側壁の変位を測定する方法である。第3の方法(図11参照)は、隣接炭化室の装炭孔よりその隣接炭化室内に装入した棒体を隣接炭化室の炉壁に接触させることにより、その棒体に伝わる炉壁の変位を測定する方法である。
【0010】
【特許文献1】特開昭57−53612号公報
【特許文献2】特開昭63−191005号公報
【特許文献3】特開2002−5643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
炭化室の幅は、隣接する炭化室の操業状況によって異なる。つまり、隣接する炭化室がコークス押出し中であるか、石炭乾留中であるか、さらには石炭乾留中であってもガス発生量が多い期間かどうか、などの要因が炭化室の幅に影響する。そして、炭化室の側壁を構成する煉瓦の損傷状態を把握する目的からして、隣接炭化室がコークス押出し中や石炭乾留中であるときに炭化室の幅の変動を測定することも要求される。
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された装置又は方法によっては、隣接炭化室がコークス押出し中や石炭乾留中において、炭化室の幅の変動を高精度に長時間に亘って測定することができない。
【0013】
例えば、特許文献1に記載の装置では、変位体の先端部やローラが、常時、断熱された装置本体の外部にあるため、これらの熱膨張の影響によって炭化室幅を長時間に亘って高精度に測定できない。また、装置本体をプッシャービームに取り付けて炭化室内に挿入する構成であるため、必然的に、測定時には炭化室の窯口を開放しておく必要がある。従って、特に、隣接炭化室が石炭乾留中の場合には、幅測定対象である炭化室の窯口を長時間開放しておく必要があり、実用的でない。
【0014】
また、特許文献2に記載の装置や、特許文献3の第1及び第2の方法では、レーザ距離計を使用しているため、レーザ光の熱揺らぎ(レーザ光路中に温度分布が生じているとレーザ光が揺らぐ現象)による測定値のバラツキが生じ、高精度の測定が困難である。特に、特許文献3の第1の方法では、炉上に設置したレーザ距離計で炭化室の装炭孔から炉内を覗くようにして測定する構成であるため、光路中に温度分布が生じ易く、熱揺らぎによる測定誤差の影響が多大である。また、特許文献3の第1の方法では、装炭孔の周囲に光学距離計を設置する必要があり、この光学距離計が炉上を移動する装炭車の障害物になるため、長時間に亘る測定が困難である。一方、特許文献2に記載の装置や、特許文献3の第2の方法では、レーザ距離計を炭化室内に装入する構成であるため、レーザ距離計の動作温度の上限が一般的には45℃程度と低いことからして、レーザ距離計を冷却する冷却設備の費用が高騰するという問題もある。
【0015】
また、特許文献3の第3の方法では、棒体が熱膨張することによる棒体長の変化や、棒体のたわみの影響によって高精度に測定できない。さらに、装炭孔の周囲に目盛等の装置を設置する必要があり、この装置が装炭作業のために定期的に炉上を移動する装炭車の障害物になるため、長時間に亘る測定が困難である。
【0016】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能なコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明の発明者らは鋭意検討し、まず最初に、熱揺らぎ等の回避困難な問題点を有するレーザ距離計を用いた非接触式の測定装置ではなく、熱揺らぎ等の問題がない接触式の測定装置とすることに着眼した。そして、接触式の測定装置における接触子(特許文献1では「変位体」、特許文献3では「棒体」に相当)の熱膨張の影響や、炭化室の装炭孔周囲の障害物の問題を解決できさえすれば、炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能であることに想到し、さらに鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成したものである。
【0018】
すなわち、本発明は、コークス炉の炭化室の幅を測定する装置であって、前記炭化室の幅を測定する際に前記炭化室の側壁間に装入される測定部と、前記炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、前記測定部と前記支持部とを連結する接続部とを備え、前記測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、該筐体内に収納され、先端部が前記筐体に設けられた貫通孔を介して前記筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、前記筐体内に設けられ、前記接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備し、前記各組の接触子は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされていることを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定装置を提供するものである。
【0019】
本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置は、炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部を備える。この測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、筐体内に収納され、先端部が筐体に設けられた貫通孔を介して筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、筐体内に設けられ、接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備する。そして、前記一組の接触子は、互いに略平行な直線上(同一直線上である場合を含む)を互いに逆方向に進退可能とされている。従って、接触子の進退方向と炭化室の側壁の法線方向とが略一致するように測定部を装入し、炭化室の両側壁にそれぞれ当接するまで各接触子の先端部を筐体外に移動させ、各接触子の進退方向の基準位置からの変位を測定すれば、炭化室の幅を測定(演算)可能である。そして、筐体外に移動した各接触子の先端部が、炭化室内の高温雰囲気に晒されたり、高温の側壁に接触することにより、加熱されて熱膨張の影響が無視できない状態となれば、各接触子の先端部を筐体内に移動させて冷却した後、再び筐体外に移動させて測定すればよい。以上のように、本発明に係る炭化室幅測定装置によれば、接触子の先端部が、冷却手段が設けられた筐体の内外に進退可能とされているため、接触子の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減することができ、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定可能である。
【0020】
また、本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置は、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、測定部と支持部とを連結する接続部とを備える。従って、測定部及び接続部を炭化室内に順次装入した後、支持部が装炭孔に係合することにより、接続部を介して測定部が所定位置に自然に吊り下げられることになる。換言すれば、本発明に係る炭化室幅測定装置を炭化室に設置した後(支持部を装炭孔に係合させた後)には、炭化室幅測定装置を吊り下げるための吊下装置等を炉上に設置しておく必要はない。また、炭化室内に装入された測定部の接触子を進退させることによって炭化室幅が測定されるため、レーザ距離計や目盛等の装置を支持部に設置する必要がなく、支持部の高さを低減することも可能である。従って、従来のように炉上を移動する装炭車の障害となることなく、長時間に亘って炭化室の幅を測定可能である。
【0021】
以上のように、本発明によれば、炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能であるため、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室がたとえ操業中(コークス押出し中又は石炭乾留中)であっても問題なく炭化室幅を測定可能である。
【0022】
ここで、前述のように、前記接触子は、炭化室幅を測定する際に、炭化室内の高温雰囲気に晒されたり、高温の側壁に接触するため、完全に熱膨張の影響を無くすことはできない。従って、熱膨張の影響をより一層低減し、炭化室幅の測定精度をより一層高めるには、前記接触子を熱膨張率の小さい材料(例えば、石英ガラス)で形成することが好ましい。例えば、前記接触子を石英ガラス製とすることにより、金属製とする場合に比べて、熱膨張の影響を1桁小さくすることが可能である。
【0023】
ところで、炭化室の側壁面は、側壁を構成する煉瓦の目地や目地近傍の欠損や損耗によって、凹凸表面が存在する一方、これ以外の煉瓦表面は平坦面である場合が多い。そして、炭化室の幅として、平坦な煉瓦表面間の距離で代表させることも多いため、該平坦な煉瓦表面間の距離を測定できるようにすることが好ましい。このため、測定部の位置(接触子の位置)を炉高方向及び炉長方向に調整できる機構を設けることも考えられるが、特に、炉高方向の位置調整は、炉上に位置調整機構を設ける必要があるため、装炭作業のために定期的に炉上を移動する装炭車の障害になるという問題がある。従って、位置調整機構を設けずに、平坦な煉瓦表面間の距離を測定可能にするには、測定部に複数組の接触子を具備させると共に、少なくとも何れか1組の接触子が確実に煉瓦の目地に当接しないように、複数組の接触子の配置条件を決めれば良い。
【0024】
すなわち、好ましくは、前記測定部は、軸方向視においてマトリクス状に配置された少なくとも4組の円筒状又は円柱状の接触子を具備し、前記測定部を前記炭化室の側壁間に装入した際における、炉高方向に相当する接触子の間隔をa0、炉長方向に相当する接触子の間隔をb0とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足するように構成される。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【0025】
斯かる好ましい構成によれば、少なくとも1組の接触子が煉瓦の目地に当接しないことになるため、接触子の炉高方向及び炉長方向の位置を調整しなくても、該煉瓦の目地に当接しない組の接触子によって、平坦な煉瓦表面間の距離を測定できる可能性が高まる。
【0026】
なお、前記課題を解決するため、本発明は、前記コークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、前記接触子の先端部を前記筐体外に移動させて前記炭化室の側壁に当接させることにより前記炭化室の幅を測定するステップと、前記接触子の先端部を前記筐体内に移動させて冷却するステップとを交互に繰り返すことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法としても提供される。
【0027】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記コークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、所定の吊下装置に前記炭化室幅測定装置を取り付け、前記炭化室の装炭孔の上方に吊り上げるステップと、前記吊下装置を用いて、前記炭化室幅測定装置の前記測定部及び前記接続部を前記装炭孔を介して前記炭化室内に順次装入し、前記支持部を前記装炭孔に係合させるステップと、前記吊下装置から前記炭化室測定装置を取り外すステップと、前記炭化室測定装置によって前記炭化室の幅を測定するステップとを含むことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法としても提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法によれば、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉の炭化室幅測定装置(以下、適宜「測定装置」という)の外観を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る測定装置100は、コークス炉の炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部10と、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部20と、測定部10と支持部20とを連結する接続部30とを備えている。
【0030】
支持部20は、装炭孔に係合可能な形状であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、下方から順に、傾斜部21、鍔部22及び突出部23を具備する構成とされている。傾斜部21は、装炭孔に嵌合可能なように、装炭孔の形状に沿ったテーパ面を有する。鍔部22は、装炭孔の内径よりも大きな寸法とされている。以上の構成により、測定装置100を装炭孔から炭化室内に装入すれば、傾斜部21が装炭孔に嵌合し、鍔部22が装炭孔の上端部で係止されることになる。なお、装炭孔より上方に突出する突出部23には、測定部10に冷却水を供給するための水配管、測定部10にエアーを供給するためのエアー配管、測定部10に設置された電動機器に電源を供給したり、制御信号や測定信号の送受信を行うための信号線等を配設するだけでよい。従って、突出部23及び鍔部22の高さ(後述する図3に示すL0)を、例えば炉上(装炭孔の上端部)から60mm以下程度にすることができ、石炭を炭化室に装入するために炉上を移動する装炭車の障害とならない。
【0031】
接続部30は、支持部20から測定部10に冷却水を供給するための水配管、支持部20から測定部にエアーを供給するためのエアー配管、支持部20から測定部10に設置された電動機器に電源を供給したり、制御信号や測定信号の送受信を行うための信号線等を内部に挿通可能な構成である限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0032】
測定部10は、冷却手段が設けられた筐体11と、筐体11内に収納され、先端部が筐体11に設けられた貫通孔111(本実施形態では内径20mm)を介して筐体11の内外に進退可能とされた少なくとも1組(本実施形態では4組)の棒状又は筒状の接触子12(本実施形態では外径10mm)と、筐体11内に設けられ、接触子12の進退方向の変位を測定する変位測定手段13とを具備する。そして、各組の接触子12は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされている。例えば、図1においてハッチを施した1組の接触子12a、12bは、炭化室幅を測定する際、炭化室の側壁に当接するまで互いに略平行な直線L1、L2上を互いに逆方向に移動可能である一方、筐体11内で冷却する際には、接触子12a、12bは、先端部が筐体11内に位置するまで互いに略平行な直線L1、L2上を互いに逆方向に移動可能である。他の組の接触子12についても同様である。
【0033】
本実施形態に係る筐体11は、前述した水配管を介して筐体11の壁面内部に冷却水が循環するように構成された水冷構造とされており、これにより筐体11の内部が冷却されることになる。斯かる水冷構造が本発明の「筐体に設けられた冷却手段」を構成することになる。なお、筐体11の水冷構造としては、公知の各種水冷構造を適用することが可能であるため、その詳細な説明は省略する。
【0034】
なお、筐体11内には、好ましい構成として、接触子12が当接した炭化室側壁の状態を観察するための撮像装置(図示せず)を設置しても良い。筐体11内に撮像装置を設置する場合には、筐体11の炭化室側壁に対向する面(好ましくは、炭化室の各側壁にそれぞれ対向する2面)であって撮像装置の視野内に覗き窓112を設ける必要がある。
【0035】
以下、本実施形態に係る測定部10の構成について、より具体的に説明する。
図2は、図1に示す測定部10が具備する筐体11内の構成(1つの接触子12近傍の構成)を概略的に示す図である。前述のように、測定部10は、先端部が筐体11の内外に進退可能とされた接触子12を備えている。特に、本実施形態に係る接触子12としては、石英ガラス製の円柱状の接触子が用いられている。しかしながら、本発明に係る接触子としては、これに何ら限るものではなく、軽量化のために中空の筒状の接触子とすることも可能である。また、材質も石英ガラスに限定されるものではなく、熱膨張率が小さく耐熱性を有する各種の材料を用いることができる。
【0036】
図2に示すように、測定部10は、前述した構成の他、筐体11内に軸受手段14、エアーパージノズル15、移動機構16及び接触圧調整機構17を具備する。
【0037】
軸受手段14は、筐体11内の所定部位に固定され、接触子12を支持している。これにより、接触子12は、軸方向に直線的にスムーズに移動可能となっている。なお、炭化室幅測定中に接触子12の温度が上昇するため、軸受手段14としては耐熱性を有するものを用いるのが好ましい。
【0038】
エアーパージノズル15は、前述したエアー配管を介して供給されたエアーを接触子12に向けて噴射するように構成されており、これにより、接触子12は冷却されることになる。このエアーパージノズル15も、前述した筐体11に設けられた水冷構造と同様に、本発明の「筐体に設けられた冷却手段」を構成することになる。
【0039】
本実施形態に係る変位測定手段13としては、接触子12の後端部に接続された接続部131の変位を測定することによって、接触子12の進退方向の変位を測定する接触式変位計が用いられている。接触式変位計としては、耐熱性に優れるポテンショメータ式の変位計を用いることが好ましい。なお、ポテンショメータには直線移動式と回転式とがあるが、設置スペースが狭い場合や測定する変位量が大きい場合には、回転式のポテンショメータが好適に用いられる。
【0040】
移動機構16は、接触圧調整機構(本実施形態ではバネ)17を介して接触子12に連結されており、接触子12の先端部を筐体11内の位置から炭化室の側壁に当接する位置まで或いはその逆方向に移動させる。より具体的に説明すれば、本実施形態に係る移動機構16は、シリンダ161及びシリンダ161内を摺動するピストン162によって構成されたエアーシリンダと、一端が接触子12の後端部に接続され、他端にシリンダ161が摺動可能に挿通された摺動部163とを具備する。そして、シリンダ161の先端部と摺動部163との間にバネ17が取り付けられている。なお、ピストン162の進退方向の切り替えは、前述したエアー配管を介して供給されたエアーを、三方電磁弁(図示せず)で制御(三方電磁弁の動作は、前述した信号線を介して外部から送信される制御信号により制御される)してシリンダ161に供給することによりなされる。
【0041】
斯かる構成において、シリンダ161を前進させる(図の右方向に移動させる)と、バネ17が元の長さに戻ろうとする弾性力(引張り力)によって摺動部163もシリンダ161の前進方向に摺動するため、摺動部163に接続された接触子12は、筐体11内に向けて移動することになる。一方、シリンダ161を後退させる(図の左方向に移動させる)と、バネ17が元の長さに戻ろうとする弾性力(押圧力)によって摺動部163もシリンダ161の後退方向に摺動するため、摺動部163に接続された接触子12は、炭化室の側壁に向けて移動することになる。そして、接触子12の先端部が炭化室の側壁に当接した際には、バネ7が接触子12の先端部に加わる押圧力を緩衝させる機能を奏するため、本実施形態のように石英ガラス製の比較的脆い接触子12を用いる場合であっても、接触子12の破損を回避することが可能である。
【0042】
本実施形態では、以上に説明した変位測定手段13、軸受手段14、エアーパージノズル15、移動機構16及び接触圧調整機構17が、各接触子12毎に設置されている。
【0043】
図3は、本実施形態に係る測定部10を炭化室の側壁間に装入した状態における接触子12の配置状況を説明するための説明図であり、図3(a)は正面図(炉長方向から見た図)を、図3(b)は側面図(幅方向から見た図)を示す。図3に示すように、本実施形態では、接触子12の軸方向視において、マトリクス状に4組の接触子12が配置されている。そして、炉高方向の接触子12の間隔(接触子12の重心間距離)をa0、炉長方向の接触子12の間隔(接触子の重心間距離)をb0とし、炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子12の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足するように構成されている。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【0044】
本実施形態では、幅測定対象である炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法a1=121mm、煉瓦の炉長方向の寸法b1=450mm、目地の炉高方向の寸法a2=目地の炉長方向の寸法b2=4mmである。また、前述のように接触子12の外径C=10mmである。そして、本実施形態では、m=1、n=0を選択したため、上記式(1)及び(2)は、それぞれ下記の式(1)’及び(2)’となる。
139<a0<236 ・・(1)’
14<b0<440 ・・(2)’
【0045】
そして、上記式(1)’及び(2)’の条件を満足するように、炉高方向の接触子12の間隔a0=150mm、炉長方向の接触子12の間隔b0=100mmに設定して、4組の接触子12を配置している。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る接触子12は、上記式(1)及び(2)の条件を満足するように配置されているため、接触子12の炉高方向及び炉長方向の位置を調整しなくても、少なくとも1組の接触子12が煉瓦の目地に当接しないことになる。従って、該煉瓦の目地に当接しない組の接触子12を炭化室幅測定に用いれば、平坦な煉瓦表面間の距離を測定できる可能性が高まる。
【0047】
なお、前述のように、好ましい構成として筐体11内に撮像装置を設置する場合には、該撮像装置によって各接触子12が当接している炭化室側壁の状態を観察し、煉瓦目地や目地近傍の欠損等の凹凸表面に当接していない接触子12を炭化室幅測定用として選択することがより一層好ましい。
【0048】
ここで、各接触子12が炭化室の側壁面に対して垂直に当接しないと測定誤差が生じる。図4は、接触子12が傾斜した状態を示す説明図である。図4に示す傾斜角αは、炭化室側壁の法線(図4において、幅方向と表示される方向)を含む水平面上に接触子12を投影した際、該投影した接触子12と前記法線との成す角度を意味する。また、傾斜角βは、接触子12と前記水平面との成す角度(接触子12と前記投影した接触子12との成す角度)を意味する。
【0049】
傾斜角αの影響は、炭化室側壁の法線方向と接触子12の進退方向とが一致するように、測定部10を側壁間に装入することによって、微小にすることが可能である。一方、傾斜角βの影響は、接触子12の傾斜角βを実測する傾斜計を筐体11内に設け、測定値を傾斜角βに応じて補正すれば微小にすることが可能である。本実施形態に係る測定部10は、好ましい構成として、筐体11内の所定位置に傾斜計(図示せず)を具備し、この傾斜計で測定した傾斜角が各接触子12の傾斜角βを代表するものとして、変位測定手段13で測定した接触子12の進退方向の変位を補正している。
【0050】
以下、本実施形態に係る測定装置100を用いて、炭化室の幅を測定する手順について説明する。
図5は、本実施形態に係る測定装置100を炭化室に装入する方法を説明するための説明図である。図5(a)は測定装置100を炭化室に装入した直後の状況を、図5(b)は測定装置100によって炭化室の幅を測定する段階での状況を示す。測定装置100を炭化室に装入するに際しては、まず、図5(a)に示す吊下装置4のワイヤ41に測定装置100の支持部20を取り付けて上方に吊り上げ、測定対象である炭化室の装炭孔まで運搬する。次に、吊下装置4のウインチドラム42を駆動して、これに巻回されたワイヤ41を繰り出すことにより、装炭孔の上方に吊り上げられている測定装置100の測定部10及び接続部30を装炭孔を介して炭化室内に順次装入し、支持部20を装炭孔に係合させる(図5(a)の状態)。そして、ワイヤ41を支持部20から取り外すことによって吊下装置4から測定装置100を取り外し、吊下装置4を装炭孔から炉端に待避させた状態(図5(b)の状態)で、炭化室の幅を測定する。なお、図5(b)に示すように、炭化室の幅を測定する段階では、炉上には、支持部20の鍔部及び突出部と、突出部に向けて配設された水配管、エアー配管及び信号線等が存在するのみであり、石炭を炭化室に装入するために炉上を移動する装炭車の障害とならない。
【0051】
以上のようにして、測定装置100を設置した後、炭化室の幅を測定するに際しては、4組の接触子12の先端部を筐体11外に移動させて炭化室の側壁に当接させる。この際、好ましくは撮像装置によって各接触子12が当接している炭化室側壁の状態を観察(撮像装置によって撮像した映像信号は、前述した信号線を介して外部に出力され、炉外で観察可能とされている)し、煉瓦目地や目地近傍の欠損等の凹凸表面に当接していない1組の接触子12を炭化室幅測定用として選択する。
【0052】
そして、選択した1組の接触子12を所定時間(例えば10秒間)だけ炭化室側壁に当接させて、変位測定手段13で各接触子12の基準位置(例えば、最後退位置)からの変位を測定する。その後、各接触子12の先端部を筐体11内に移動させて、所定時間(例えば50秒間)だけ冷却する。冷却後には、再び各接触子12の先端部を筐体11外に移動させて炭化室の側壁に当接させ、以降同様の動作を繰り返す。
【0053】
変位測定手段13で測定した各接触子12の変位は、前述した信号線を介して外部に出力され、炉外に設置した演算装置(図示せず)に入力される。また、本実施形態では、好ましい構成として、前述した傾斜計で測定した傾斜角βも、信号線を介して外部に出力され、演算装置に入力される。演算装置では、前記測定した各接触子12の変位と、各接触子12の基準位置の離間距離とを加算し(さらに、本実施形態では、前記加算値を傾斜角βに応じて補正し)、炭化室の幅として算出する。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態に係る測定装置100によれば、接触子12の先端部が、冷却手段(水冷構造及びエアーパージノズル15)が設けられた筐体11の内外に進退可能とされているため、接触子12の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減することができ、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定可能である。また、レーザ距離計や目盛等の装置を支持部20に設置する必要がないため、支持部20の高さを低減することも可能である。従って、従来のように炉上を移動する装炭車の障害となることなく、長時間に亘って炭化室の幅を測定可能である。
【0055】
なお、空窯(炭化室内に石炭、コークスが存在しない状態)の炭化室の装入孔から測定装置100を装入して炭化室の幅を測定する際、該炭化室に左右に隣接する両隣接炭化室の操業状態が異なる場合には、測定装置100を装入して測定する炭化室幅の変動が、何れの隣接炭化室の影響で生じたのか判断できない。これを回避するには、測定装置100を装入した炭化室に隣接する一方の炭化室を空窯として炭化室幅を測定すれば良い。この様にすると、空窯とした方の隣接炭化室の側壁は変動しない基準面とすることができるので、高精度な測定が可能となる。
【0056】
また、隣接炭化室がコークス押出し中に炭化室の幅を測定する際には、コークス押出し動作によって生じる炉体振動に起因した幅測定値のバラツキが問題となる。これを回避するには、一方の隣接炭化室がコークス押出し中の場合には、他方の隣接炭化室を空窯として炭化室の幅を測定すれば良い。この様にすると、空窯とした方の隣接炭化室の側壁は変動しない基準面とすることができる一方、コークス押出しに伴う炉体振動は、押出し中の隣接炭化室側壁と、測定対象炭化室の側壁のうち前記押出し中の隣接炭化室側の側壁とにほぼ同じ影響を与えるので、この状態で炭化室幅を測定することで、コークス押出し中の炭化室幅に関しても安定した測定が可能である。また、コークス押出し時間は短時間であるため、他方の隣接炭化室を空窯としても操業に支障を来すことはない。
【0057】
以下、本実施形態に係る測定装置100の効果について、より具体的に説明する。
まず、図6は、石英ガラス製の接触子12を加熱炉に装入し、コークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気(1000℃)に曝した場合における接触子12の温度上昇を調査した結果を示す。図6に示すように、高温雰囲気に曝される時間が長くなると、接触子12の温度は高くなる。隣接炭化室がコークス押出し中等における数分間の炭化室幅測定では、石英ガラスの熱膨張による測定誤差は微少である。しかしながら、隣接炭化室がコークス乾留中に炭化室幅を測定する場合、数十時間に亘って高温雰囲気に曝されるので、熱膨張による測定誤差を回避できない。そこで、前述したように、本実施形態に係る測定装置100では、水冷構造の筐体11から石英ガラス製の接触子12を間欠的に進退させると共に、筐体11内に待機中は、さらに接触子12をエアーパージノズル15でエアーパージして冷却することにしている。
【0058】
図7は、測定部10を加熱炉に装入し、石英ガラス製の接触子12の先端部を筐体11外に移動させてコークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気(1000℃)に10秒間だけ晒した後、接触子12の先端部を筐体11内に移動させて待機する動作を繰り返した場合に、エアーパージの有無による接触子12の温度変化の差を調べた結果を示す。図7に示すように、エアーパージによって冷却した場合には、接触子12の温度を150℃以下と低温に抑制することが可能であり、これにより接触子12の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減し、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定できる。
【0059】
図8は、コークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気温度(1000℃)において、測定装置100の測定精度を検証した結果を示す。なお、測定対象は、炭化室を模擬した熱膨張の小さな石英ガラス製の箱の幅(内壁間距離、430mm程度)とした。石英ガラス製の箱内部に測定部10を装入した状態で加熱炉に装入し、雰囲気温度が設定条件(1000℃)に到達するまで加熱した。そして、設定条件に到達後、測定部10の1組の接触子12の先端部を筐体11外に移動させ、箱の内壁にそれぞれ当接させて幅を測定した。なお、接触子12の当接時間は10秒と固定する一方、測定間隔は1分(筐体11内での待機50秒)、2分(筐体11内での待機1分50秒)、5分(筐体11内での待機4分50秒)と変更して測定した。図8に示すように、石英ガラス製箱の熱膨張による幅膨張(0.170mm)分を考慮して測定値を補正すると、1分間隔の測定においても誤差は0.07±0.02(3σ)mmであり、0.1mm程度の測定精度が得られることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉の炭化室幅測定装置(以下、適宜「測定装置」という)の外観を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示す測定部が具備する筐体内の構成(1つの接触子近傍の構成)を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図1に示す測定部を炭化室の側壁間に装入した状態における接触子の配置状況を説明するための説明図であり、図3(a)は正面図(炉長方向から見た図)を、図3(b)は側面図(幅方向から見た図)を示す。
【図4】図4は、図1に示す接触子が傾斜した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、図1に示す測定装置を炭化室に装入する方法を説明するための説明図である。
【図6】図6は、石英ガラス製接触子の温度上昇を調査した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、エアーパージの有無による石英ガラス製接触子の温度変化の差を調べた結果を示すグラフである。
【図8】図8は、図1に示す測定部の測定精度を検証した結果を示すグラフである。
【図9】図9は、従来技術(特許文献3)の第1の方法を説明する説明図である。
【図10】図10は、従来技術(特許文献3)の第2の方法を説明する説明図である。
【図11】図11は、従来技術(特許文献3)の第3の方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10・・・測定部
11・・・筐体
12・・・接触子
13・・・変位測定手段
14・・・軸受手段
15・・・エアーパージノズル(冷却手段)
16・・・移動機構
17・・・接触圧調整機構
20・・・支持部
21・・・傾斜部
22・・・鍔部
23・・・突出部
30・・・接続部
100・・・炭化室幅測定装置
111・・・貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炭化室の幅を測定する装置及び方法に関し、特に、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中(コークス押出し中又は石炭乾留中)であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能なコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及している室炉式コークス炉では、炭化室と燃焼室とが交互にサンドイッチ状に多数並列に設けられている。斯かるコークス炉において、装炭孔から炭化室内に装入された石炭は、その両側に位置する燃焼室から側壁(炉壁)を介して熱を得て乾留される。乾留終了後のコークスは、押出機により炭化室から押出されて消火され、製品コークスとなる。
【0003】
ここで、コークス炉の側壁は煉瓦で構成されているため、稼動年数が長くなれば、炉体の老朽化が進行する。この老朽化を的確に把握することがコークス炉の寿命延長上重要である。この老朽化の一指針として挙げられるのが、炭化室の側壁を構成する煉瓦の損傷状態である。
【0004】
なお、コークス炉の炭化室における各方向の呼称については、一般に高さ方向を炉高方向、一方の側壁から他方の側壁に向かう方向を幅方向、側壁面に沿ってコークスが押出される方向を炉長方向と称しており、後述する図3に記載の通りである。
【0005】
炭化室側壁の損傷状態を知る方法として、炭化室の幅(炭化室の側壁間の距離であり、窯幅とも称する。通常は430〜450mm程度である)を知ることが有効であるため、炭化室の幅を測定する方法が従来から数多く提案されている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、装置本体、該装置本体から炭化室の幅方向に延びる変位体、該変位体の変位測定手段、炭化室内に前記装置本体を挿入する挿入手段などを備えた接触式の炭化室幅測定装置が提案されている。より具体的には、挿入手段としてのプッシャービームに取り付けた断熱した装置本体内にポテンショメータを設け、このポテンショメータに接続した変位体の先端にローラを取り付け、該ローラを炭化室側壁に接触させて変位体の変位をポテンショメータの回転角から測定する装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、光源及び検出器からなる光学式距離計(レーザ距離計)と、前記光源から出射したレーザ光を炭化室の側壁に向けて反射する反射ミラーとを備えた非接触式の炭化室幅測定装置が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、操業中の炭化室の側壁と、燃焼室を介して前記操業中の炭化室に隣接する炭化室の側壁とが、仕切り煉瓦によって一体となって動くため、前記隣接炭化室を空窯(炭化室内に石炭、コークスが存在しない状態)として、該隣接炭化室の側壁の変位を測定することにより、前記操業中の炭化室の側壁の変位を測定する方法が提案されている。
【0009】
より具体的には、下記の第1〜第3の方法が提案されている。第1の方法(図9参照)は、隣接炭化室の装炭孔から炉内を覗くように炉上に設置した光学距離計(レーザ距離計)5から、測定対象炭化室側の側壁に向けて測距光(レーザ光)を照射してその側壁の変位を測定する方法である。第2の方法(図10参照)は、隣接炭化室の装炭孔よりその隣接炭化室内に装入して固定した光学距離計(レーザ距離計)5から、側壁に向けて測距光(レーザ光)を照射してその側壁の変位を測定する方法である。第3の方法(図11参照)は、隣接炭化室の装炭孔よりその隣接炭化室内に装入した棒体を隣接炭化室の炉壁に接触させることにより、その棒体に伝わる炉壁の変位を測定する方法である。
【0010】
【特許文献1】特開昭57−53612号公報
【特許文献2】特開昭63−191005号公報
【特許文献3】特開2002−5643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
炭化室の幅は、隣接する炭化室の操業状況によって異なる。つまり、隣接する炭化室がコークス押出し中であるか、石炭乾留中であるか、さらには石炭乾留中であってもガス発生量が多い期間かどうか、などの要因が炭化室の幅に影響する。そして、炭化室の側壁を構成する煉瓦の損傷状態を把握する目的からして、隣接炭化室がコークス押出し中や石炭乾留中であるときに炭化室の幅の変動を測定することも要求される。
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された装置又は方法によっては、隣接炭化室がコークス押出し中や石炭乾留中において、炭化室の幅の変動を高精度に長時間に亘って測定することができない。
【0013】
例えば、特許文献1に記載の装置では、変位体の先端部やローラが、常時、断熱された装置本体の外部にあるため、これらの熱膨張の影響によって炭化室幅を長時間に亘って高精度に測定できない。また、装置本体をプッシャービームに取り付けて炭化室内に挿入する構成であるため、必然的に、測定時には炭化室の窯口を開放しておく必要がある。従って、特に、隣接炭化室が石炭乾留中の場合には、幅測定対象である炭化室の窯口を長時間開放しておく必要があり、実用的でない。
【0014】
また、特許文献2に記載の装置や、特許文献3の第1及び第2の方法では、レーザ距離計を使用しているため、レーザ光の熱揺らぎ(レーザ光路中に温度分布が生じているとレーザ光が揺らぐ現象)による測定値のバラツキが生じ、高精度の測定が困難である。特に、特許文献3の第1の方法では、炉上に設置したレーザ距離計で炭化室の装炭孔から炉内を覗くようにして測定する構成であるため、光路中に温度分布が生じ易く、熱揺らぎによる測定誤差の影響が多大である。また、特許文献3の第1の方法では、装炭孔の周囲に光学距離計を設置する必要があり、この光学距離計が炉上を移動する装炭車の障害物になるため、長時間に亘る測定が困難である。一方、特許文献2に記載の装置や、特許文献3の第2の方法では、レーザ距離計を炭化室内に装入する構成であるため、レーザ距離計の動作温度の上限が一般的には45℃程度と低いことからして、レーザ距離計を冷却する冷却設備の費用が高騰するという問題もある。
【0015】
また、特許文献3の第3の方法では、棒体が熱膨張することによる棒体長の変化や、棒体のたわみの影響によって高精度に測定できない。さらに、装炭孔の周囲に目盛等の装置を設置する必要があり、この装置が装炭作業のために定期的に炉上を移動する装炭車の障害物になるため、長時間に亘る測定が困難である。
【0016】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能なコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明の発明者らは鋭意検討し、まず最初に、熱揺らぎ等の回避困難な問題点を有するレーザ距離計を用いた非接触式の測定装置ではなく、熱揺らぎ等の問題がない接触式の測定装置とすることに着眼した。そして、接触式の測定装置における接触子(特許文献1では「変位体」、特許文献3では「棒体」に相当)の熱膨張の影響や、炭化室の装炭孔周囲の障害物の問題を解決できさえすれば、炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能であることに想到し、さらに鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成したものである。
【0018】
すなわち、本発明は、コークス炉の炭化室の幅を測定する装置であって、前記炭化室の幅を測定する際に前記炭化室の側壁間に装入される測定部と、前記炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、前記測定部と前記支持部とを連結する接続部とを備え、前記測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、該筐体内に収納され、先端部が前記筐体に設けられた貫通孔を介して前記筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、前記筐体内に設けられ、前記接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備し、前記各組の接触子は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされていることを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定装置を提供するものである。
【0019】
本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置は、炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部を備える。この測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、筐体内に収納され、先端部が筐体に設けられた貫通孔を介して筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、筐体内に設けられ、接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備する。そして、前記一組の接触子は、互いに略平行な直線上(同一直線上である場合を含む)を互いに逆方向に進退可能とされている。従って、接触子の進退方向と炭化室の側壁の法線方向とが略一致するように測定部を装入し、炭化室の両側壁にそれぞれ当接するまで各接触子の先端部を筐体外に移動させ、各接触子の進退方向の基準位置からの変位を測定すれば、炭化室の幅を測定(演算)可能である。そして、筐体外に移動した各接触子の先端部が、炭化室内の高温雰囲気に晒されたり、高温の側壁に接触することにより、加熱されて熱膨張の影響が無視できない状態となれば、各接触子の先端部を筐体内に移動させて冷却した後、再び筐体外に移動させて測定すればよい。以上のように、本発明に係る炭化室幅測定装置によれば、接触子の先端部が、冷却手段が設けられた筐体の内外に進退可能とされているため、接触子の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減することができ、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定可能である。
【0020】
また、本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置は、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、測定部と支持部とを連結する接続部とを備える。従って、測定部及び接続部を炭化室内に順次装入した後、支持部が装炭孔に係合することにより、接続部を介して測定部が所定位置に自然に吊り下げられることになる。換言すれば、本発明に係る炭化室幅測定装置を炭化室に設置した後(支持部を装炭孔に係合させた後)には、炭化室幅測定装置を吊り下げるための吊下装置等を炉上に設置しておく必要はない。また、炭化室内に装入された測定部の接触子を進退させることによって炭化室幅が測定されるため、レーザ距離計や目盛等の装置を支持部に設置する必要がなく、支持部の高さを低減することも可能である。従って、従来のように炉上を移動する装炭車の障害となることなく、長時間に亘って炭化室の幅を測定可能である。
【0021】
以上のように、本発明によれば、炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能であるため、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室がたとえ操業中(コークス押出し中又は石炭乾留中)であっても問題なく炭化室幅を測定可能である。
【0022】
ここで、前述のように、前記接触子は、炭化室幅を測定する際に、炭化室内の高温雰囲気に晒されたり、高温の側壁に接触するため、完全に熱膨張の影響を無くすことはできない。従って、熱膨張の影響をより一層低減し、炭化室幅の測定精度をより一層高めるには、前記接触子を熱膨張率の小さい材料(例えば、石英ガラス)で形成することが好ましい。例えば、前記接触子を石英ガラス製とすることにより、金属製とする場合に比べて、熱膨張の影響を1桁小さくすることが可能である。
【0023】
ところで、炭化室の側壁面は、側壁を構成する煉瓦の目地や目地近傍の欠損や損耗によって、凹凸表面が存在する一方、これ以外の煉瓦表面は平坦面である場合が多い。そして、炭化室の幅として、平坦な煉瓦表面間の距離で代表させることも多いため、該平坦な煉瓦表面間の距離を測定できるようにすることが好ましい。このため、測定部の位置(接触子の位置)を炉高方向及び炉長方向に調整できる機構を設けることも考えられるが、特に、炉高方向の位置調整は、炉上に位置調整機構を設ける必要があるため、装炭作業のために定期的に炉上を移動する装炭車の障害になるという問題がある。従って、位置調整機構を設けずに、平坦な煉瓦表面間の距離を測定可能にするには、測定部に複数組の接触子を具備させると共に、少なくとも何れか1組の接触子が確実に煉瓦の目地に当接しないように、複数組の接触子の配置条件を決めれば良い。
【0024】
すなわち、好ましくは、前記測定部は、軸方向視においてマトリクス状に配置された少なくとも4組の円筒状又は円柱状の接触子を具備し、前記測定部を前記炭化室の側壁間に装入した際における、炉高方向に相当する接触子の間隔をa0、炉長方向に相当する接触子の間隔をb0とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足するように構成される。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【0025】
斯かる好ましい構成によれば、少なくとも1組の接触子が煉瓦の目地に当接しないことになるため、接触子の炉高方向及び炉長方向の位置を調整しなくても、該煉瓦の目地に当接しない組の接触子によって、平坦な煉瓦表面間の距離を測定できる可能性が高まる。
【0026】
なお、前記課題を解決するため、本発明は、前記コークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、前記接触子の先端部を前記筐体外に移動させて前記炭化室の側壁に当接させることにより前記炭化室の幅を測定するステップと、前記接触子の先端部を前記筐体内に移動させて冷却するステップとを交互に繰り返すことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法としても提供される。
【0027】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記コークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、所定の吊下装置に前記炭化室幅測定装置を取り付け、前記炭化室の装炭孔の上方に吊り上げるステップと、前記吊下装置を用いて、前記炭化室幅測定装置の前記測定部及び前記接続部を前記装炭孔を介して前記炭化室内に順次装入し、前記支持部を前記装炭孔に係合させるステップと、前記吊下装置から前記炭化室測定装置を取り外すステップと、前記炭化室測定装置によって前記炭化室の幅を測定するステップとを含むことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法としても提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るコークス炉の炭化室幅測定装置及び測定方法によれば、幅測定対象である炭化室に隣接する炭化室が操業中であっても、測定対象である炭化室の幅を精度良く且つ長時間に亘って測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉の炭化室幅測定装置(以下、適宜「測定装置」という)の外観を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る測定装置100は、コークス炉の炭化室の幅を測定する際に炭化室の側壁間に装入される測定部10と、炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部20と、測定部10と支持部20とを連結する接続部30とを備えている。
【0030】
支持部20は、装炭孔に係合可能な形状であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、下方から順に、傾斜部21、鍔部22及び突出部23を具備する構成とされている。傾斜部21は、装炭孔に嵌合可能なように、装炭孔の形状に沿ったテーパ面を有する。鍔部22は、装炭孔の内径よりも大きな寸法とされている。以上の構成により、測定装置100を装炭孔から炭化室内に装入すれば、傾斜部21が装炭孔に嵌合し、鍔部22が装炭孔の上端部で係止されることになる。なお、装炭孔より上方に突出する突出部23には、測定部10に冷却水を供給するための水配管、測定部10にエアーを供給するためのエアー配管、測定部10に設置された電動機器に電源を供給したり、制御信号や測定信号の送受信を行うための信号線等を配設するだけでよい。従って、突出部23及び鍔部22の高さ(後述する図3に示すL0)を、例えば炉上(装炭孔の上端部)から60mm以下程度にすることができ、石炭を炭化室に装入するために炉上を移動する装炭車の障害とならない。
【0031】
接続部30は、支持部20から測定部10に冷却水を供給するための水配管、支持部20から測定部にエアーを供給するためのエアー配管、支持部20から測定部10に設置された電動機器に電源を供給したり、制御信号や測定信号の送受信を行うための信号線等を内部に挿通可能な構成である限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0032】
測定部10は、冷却手段が設けられた筐体11と、筐体11内に収納され、先端部が筐体11に設けられた貫通孔111(本実施形態では内径20mm)を介して筐体11の内外に進退可能とされた少なくとも1組(本実施形態では4組)の棒状又は筒状の接触子12(本実施形態では外径10mm)と、筐体11内に設けられ、接触子12の進退方向の変位を測定する変位測定手段13とを具備する。そして、各組の接触子12は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされている。例えば、図1においてハッチを施した1組の接触子12a、12bは、炭化室幅を測定する際、炭化室の側壁に当接するまで互いに略平行な直線L1、L2上を互いに逆方向に移動可能である一方、筐体11内で冷却する際には、接触子12a、12bは、先端部が筐体11内に位置するまで互いに略平行な直線L1、L2上を互いに逆方向に移動可能である。他の組の接触子12についても同様である。
【0033】
本実施形態に係る筐体11は、前述した水配管を介して筐体11の壁面内部に冷却水が循環するように構成された水冷構造とされており、これにより筐体11の内部が冷却されることになる。斯かる水冷構造が本発明の「筐体に設けられた冷却手段」を構成することになる。なお、筐体11の水冷構造としては、公知の各種水冷構造を適用することが可能であるため、その詳細な説明は省略する。
【0034】
なお、筐体11内には、好ましい構成として、接触子12が当接した炭化室側壁の状態を観察するための撮像装置(図示せず)を設置しても良い。筐体11内に撮像装置を設置する場合には、筐体11の炭化室側壁に対向する面(好ましくは、炭化室の各側壁にそれぞれ対向する2面)であって撮像装置の視野内に覗き窓112を設ける必要がある。
【0035】
以下、本実施形態に係る測定部10の構成について、より具体的に説明する。
図2は、図1に示す測定部10が具備する筐体11内の構成(1つの接触子12近傍の構成)を概略的に示す図である。前述のように、測定部10は、先端部が筐体11の内外に進退可能とされた接触子12を備えている。特に、本実施形態に係る接触子12としては、石英ガラス製の円柱状の接触子が用いられている。しかしながら、本発明に係る接触子としては、これに何ら限るものではなく、軽量化のために中空の筒状の接触子とすることも可能である。また、材質も石英ガラスに限定されるものではなく、熱膨張率が小さく耐熱性を有する各種の材料を用いることができる。
【0036】
図2に示すように、測定部10は、前述した構成の他、筐体11内に軸受手段14、エアーパージノズル15、移動機構16及び接触圧調整機構17を具備する。
【0037】
軸受手段14は、筐体11内の所定部位に固定され、接触子12を支持している。これにより、接触子12は、軸方向に直線的にスムーズに移動可能となっている。なお、炭化室幅測定中に接触子12の温度が上昇するため、軸受手段14としては耐熱性を有するものを用いるのが好ましい。
【0038】
エアーパージノズル15は、前述したエアー配管を介して供給されたエアーを接触子12に向けて噴射するように構成されており、これにより、接触子12は冷却されることになる。このエアーパージノズル15も、前述した筐体11に設けられた水冷構造と同様に、本発明の「筐体に設けられた冷却手段」を構成することになる。
【0039】
本実施形態に係る変位測定手段13としては、接触子12の後端部に接続された接続部131の変位を測定することによって、接触子12の進退方向の変位を測定する接触式変位計が用いられている。接触式変位計としては、耐熱性に優れるポテンショメータ式の変位計を用いることが好ましい。なお、ポテンショメータには直線移動式と回転式とがあるが、設置スペースが狭い場合や測定する変位量が大きい場合には、回転式のポテンショメータが好適に用いられる。
【0040】
移動機構16は、接触圧調整機構(本実施形態ではバネ)17を介して接触子12に連結されており、接触子12の先端部を筐体11内の位置から炭化室の側壁に当接する位置まで或いはその逆方向に移動させる。より具体的に説明すれば、本実施形態に係る移動機構16は、シリンダ161及びシリンダ161内を摺動するピストン162によって構成されたエアーシリンダと、一端が接触子12の後端部に接続され、他端にシリンダ161が摺動可能に挿通された摺動部163とを具備する。そして、シリンダ161の先端部と摺動部163との間にバネ17が取り付けられている。なお、ピストン162の進退方向の切り替えは、前述したエアー配管を介して供給されたエアーを、三方電磁弁(図示せず)で制御(三方電磁弁の動作は、前述した信号線を介して外部から送信される制御信号により制御される)してシリンダ161に供給することによりなされる。
【0041】
斯かる構成において、シリンダ161を前進させる(図の右方向に移動させる)と、バネ17が元の長さに戻ろうとする弾性力(引張り力)によって摺動部163もシリンダ161の前進方向に摺動するため、摺動部163に接続された接触子12は、筐体11内に向けて移動することになる。一方、シリンダ161を後退させる(図の左方向に移動させる)と、バネ17が元の長さに戻ろうとする弾性力(押圧力)によって摺動部163もシリンダ161の後退方向に摺動するため、摺動部163に接続された接触子12は、炭化室の側壁に向けて移動することになる。そして、接触子12の先端部が炭化室の側壁に当接した際には、バネ7が接触子12の先端部に加わる押圧力を緩衝させる機能を奏するため、本実施形態のように石英ガラス製の比較的脆い接触子12を用いる場合であっても、接触子12の破損を回避することが可能である。
【0042】
本実施形態では、以上に説明した変位測定手段13、軸受手段14、エアーパージノズル15、移動機構16及び接触圧調整機構17が、各接触子12毎に設置されている。
【0043】
図3は、本実施形態に係る測定部10を炭化室の側壁間に装入した状態における接触子12の配置状況を説明するための説明図であり、図3(a)は正面図(炉長方向から見た図)を、図3(b)は側面図(幅方向から見た図)を示す。図3に示すように、本実施形態では、接触子12の軸方向視において、マトリクス状に4組の接触子12が配置されている。そして、炉高方向の接触子12の間隔(接触子12の重心間距離)をa0、炉長方向の接触子12の間隔(接触子の重心間距離)をb0とし、炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子12の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足するように構成されている。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【0044】
本実施形態では、幅測定対象である炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法a1=121mm、煉瓦の炉長方向の寸法b1=450mm、目地の炉高方向の寸法a2=目地の炉長方向の寸法b2=4mmである。また、前述のように接触子12の外径C=10mmである。そして、本実施形態では、m=1、n=0を選択したため、上記式(1)及び(2)は、それぞれ下記の式(1)’及び(2)’となる。
139<a0<236 ・・(1)’
14<b0<440 ・・(2)’
【0045】
そして、上記式(1)’及び(2)’の条件を満足するように、炉高方向の接触子12の間隔a0=150mm、炉長方向の接触子12の間隔b0=100mmに設定して、4組の接触子12を配置している。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る接触子12は、上記式(1)及び(2)の条件を満足するように配置されているため、接触子12の炉高方向及び炉長方向の位置を調整しなくても、少なくとも1組の接触子12が煉瓦の目地に当接しないことになる。従って、該煉瓦の目地に当接しない組の接触子12を炭化室幅測定に用いれば、平坦な煉瓦表面間の距離を測定できる可能性が高まる。
【0047】
なお、前述のように、好ましい構成として筐体11内に撮像装置を設置する場合には、該撮像装置によって各接触子12が当接している炭化室側壁の状態を観察し、煉瓦目地や目地近傍の欠損等の凹凸表面に当接していない接触子12を炭化室幅測定用として選択することがより一層好ましい。
【0048】
ここで、各接触子12が炭化室の側壁面に対して垂直に当接しないと測定誤差が生じる。図4は、接触子12が傾斜した状態を示す説明図である。図4に示す傾斜角αは、炭化室側壁の法線(図4において、幅方向と表示される方向)を含む水平面上に接触子12を投影した際、該投影した接触子12と前記法線との成す角度を意味する。また、傾斜角βは、接触子12と前記水平面との成す角度(接触子12と前記投影した接触子12との成す角度)を意味する。
【0049】
傾斜角αの影響は、炭化室側壁の法線方向と接触子12の進退方向とが一致するように、測定部10を側壁間に装入することによって、微小にすることが可能である。一方、傾斜角βの影響は、接触子12の傾斜角βを実測する傾斜計を筐体11内に設け、測定値を傾斜角βに応じて補正すれば微小にすることが可能である。本実施形態に係る測定部10は、好ましい構成として、筐体11内の所定位置に傾斜計(図示せず)を具備し、この傾斜計で測定した傾斜角が各接触子12の傾斜角βを代表するものとして、変位測定手段13で測定した接触子12の進退方向の変位を補正している。
【0050】
以下、本実施形態に係る測定装置100を用いて、炭化室の幅を測定する手順について説明する。
図5は、本実施形態に係る測定装置100を炭化室に装入する方法を説明するための説明図である。図5(a)は測定装置100を炭化室に装入した直後の状況を、図5(b)は測定装置100によって炭化室の幅を測定する段階での状況を示す。測定装置100を炭化室に装入するに際しては、まず、図5(a)に示す吊下装置4のワイヤ41に測定装置100の支持部20を取り付けて上方に吊り上げ、測定対象である炭化室の装炭孔まで運搬する。次に、吊下装置4のウインチドラム42を駆動して、これに巻回されたワイヤ41を繰り出すことにより、装炭孔の上方に吊り上げられている測定装置100の測定部10及び接続部30を装炭孔を介して炭化室内に順次装入し、支持部20を装炭孔に係合させる(図5(a)の状態)。そして、ワイヤ41を支持部20から取り外すことによって吊下装置4から測定装置100を取り外し、吊下装置4を装炭孔から炉端に待避させた状態(図5(b)の状態)で、炭化室の幅を測定する。なお、図5(b)に示すように、炭化室の幅を測定する段階では、炉上には、支持部20の鍔部及び突出部と、突出部に向けて配設された水配管、エアー配管及び信号線等が存在するのみであり、石炭を炭化室に装入するために炉上を移動する装炭車の障害とならない。
【0051】
以上のようにして、測定装置100を設置した後、炭化室の幅を測定するに際しては、4組の接触子12の先端部を筐体11外に移動させて炭化室の側壁に当接させる。この際、好ましくは撮像装置によって各接触子12が当接している炭化室側壁の状態を観察(撮像装置によって撮像した映像信号は、前述した信号線を介して外部に出力され、炉外で観察可能とされている)し、煉瓦目地や目地近傍の欠損等の凹凸表面に当接していない1組の接触子12を炭化室幅測定用として選択する。
【0052】
そして、選択した1組の接触子12を所定時間(例えば10秒間)だけ炭化室側壁に当接させて、変位測定手段13で各接触子12の基準位置(例えば、最後退位置)からの変位を測定する。その後、各接触子12の先端部を筐体11内に移動させて、所定時間(例えば50秒間)だけ冷却する。冷却後には、再び各接触子12の先端部を筐体11外に移動させて炭化室の側壁に当接させ、以降同様の動作を繰り返す。
【0053】
変位測定手段13で測定した各接触子12の変位は、前述した信号線を介して外部に出力され、炉外に設置した演算装置(図示せず)に入力される。また、本実施形態では、好ましい構成として、前述した傾斜計で測定した傾斜角βも、信号線を介して外部に出力され、演算装置に入力される。演算装置では、前記測定した各接触子12の変位と、各接触子12の基準位置の離間距離とを加算し(さらに、本実施形態では、前記加算値を傾斜角βに応じて補正し)、炭化室の幅として算出する。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態に係る測定装置100によれば、接触子12の先端部が、冷却手段(水冷構造及びエアーパージノズル15)が設けられた筐体11の内外に進退可能とされているため、接触子12の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減することができ、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定可能である。また、レーザ距離計や目盛等の装置を支持部20に設置する必要がないため、支持部20の高さを低減することも可能である。従って、従来のように炉上を移動する装炭車の障害となることなく、長時間に亘って炭化室の幅を測定可能である。
【0055】
なお、空窯(炭化室内に石炭、コークスが存在しない状態)の炭化室の装入孔から測定装置100を装入して炭化室の幅を測定する際、該炭化室に左右に隣接する両隣接炭化室の操業状態が異なる場合には、測定装置100を装入して測定する炭化室幅の変動が、何れの隣接炭化室の影響で生じたのか判断できない。これを回避するには、測定装置100を装入した炭化室に隣接する一方の炭化室を空窯として炭化室幅を測定すれば良い。この様にすると、空窯とした方の隣接炭化室の側壁は変動しない基準面とすることができるので、高精度な測定が可能となる。
【0056】
また、隣接炭化室がコークス押出し中に炭化室の幅を測定する際には、コークス押出し動作によって生じる炉体振動に起因した幅測定値のバラツキが問題となる。これを回避するには、一方の隣接炭化室がコークス押出し中の場合には、他方の隣接炭化室を空窯として炭化室の幅を測定すれば良い。この様にすると、空窯とした方の隣接炭化室の側壁は変動しない基準面とすることができる一方、コークス押出しに伴う炉体振動は、押出し中の隣接炭化室側壁と、測定対象炭化室の側壁のうち前記押出し中の隣接炭化室側の側壁とにほぼ同じ影響を与えるので、この状態で炭化室幅を測定することで、コークス押出し中の炭化室幅に関しても安定した測定が可能である。また、コークス押出し時間は短時間であるため、他方の隣接炭化室を空窯としても操業に支障を来すことはない。
【0057】
以下、本実施形態に係る測定装置100の効果について、より具体的に説明する。
まず、図6は、石英ガラス製の接触子12を加熱炉に装入し、コークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気(1000℃)に曝した場合における接触子12の温度上昇を調査した結果を示す。図6に示すように、高温雰囲気に曝される時間が長くなると、接触子12の温度は高くなる。隣接炭化室がコークス押出し中等における数分間の炭化室幅測定では、石英ガラスの熱膨張による測定誤差は微少である。しかしながら、隣接炭化室がコークス乾留中に炭化室幅を測定する場合、数十時間に亘って高温雰囲気に曝されるので、熱膨張による測定誤差を回避できない。そこで、前述したように、本実施形態に係る測定装置100では、水冷構造の筐体11から石英ガラス製の接触子12を間欠的に進退させると共に、筐体11内に待機中は、さらに接触子12をエアーパージノズル15でエアーパージして冷却することにしている。
【0058】
図7は、測定部10を加熱炉に装入し、石英ガラス製の接触子12の先端部を筐体11外に移動させてコークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気(1000℃)に10秒間だけ晒した後、接触子12の先端部を筐体11内に移動させて待機する動作を繰り返した場合に、エアーパージの有無による接触子12の温度変化の差を調べた結果を示す。図7に示すように、エアーパージによって冷却した場合には、接触子12の温度を150℃以下と低温に抑制することが可能であり、これにより接触子12の熱膨張に起因した測定精度の劣化を低減し、長時間に亘って精度良く炭化室の幅を測定できる。
【0059】
図8は、コークス炉炭化室内と同様の高温雰囲気温度(1000℃)において、測定装置100の測定精度を検証した結果を示す。なお、測定対象は、炭化室を模擬した熱膨張の小さな石英ガラス製の箱の幅(内壁間距離、430mm程度)とした。石英ガラス製の箱内部に測定部10を装入した状態で加熱炉に装入し、雰囲気温度が設定条件(1000℃)に到達するまで加熱した。そして、設定条件に到達後、測定部10の1組の接触子12の先端部を筐体11外に移動させ、箱の内壁にそれぞれ当接させて幅を測定した。なお、接触子12の当接時間は10秒と固定する一方、測定間隔は1分(筐体11内での待機50秒)、2分(筐体11内での待機1分50秒)、5分(筐体11内での待機4分50秒)と変更して測定した。図8に示すように、石英ガラス製箱の熱膨張による幅膨張(0.170mm)分を考慮して測定値を補正すると、1分間隔の測定においても誤差は0.07±0.02(3σ)mmであり、0.1mm程度の測定精度が得られることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉の炭化室幅測定装置(以下、適宜「測定装置」という)の外観を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示す測定部が具備する筐体内の構成(1つの接触子近傍の構成)を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図1に示す測定部を炭化室の側壁間に装入した状態における接触子の配置状況を説明するための説明図であり、図3(a)は正面図(炉長方向から見た図)を、図3(b)は側面図(幅方向から見た図)を示す。
【図4】図4は、図1に示す接触子が傾斜した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、図1に示す測定装置を炭化室に装入する方法を説明するための説明図である。
【図6】図6は、石英ガラス製接触子の温度上昇を調査した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、エアーパージの有無による石英ガラス製接触子の温度変化の差を調べた結果を示すグラフである。
【図8】図8は、図1に示す測定部の測定精度を検証した結果を示すグラフである。
【図9】図9は、従来技術(特許文献3)の第1の方法を説明する説明図である。
【図10】図10は、従来技術(特許文献3)の第2の方法を説明する説明図である。
【図11】図11は、従来技術(特許文献3)の第3の方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10・・・測定部
11・・・筐体
12・・・接触子
13・・・変位測定手段
14・・・軸受手段
15・・・エアーパージノズル(冷却手段)
16・・・移動機構
17・・・接触圧調整機構
20・・・支持部
21・・・傾斜部
22・・・鍔部
23・・・突出部
30・・・接続部
100・・・炭化室幅測定装置
111・・・貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室の幅を測定する装置であって、
前記炭化室の幅を測定する際に前記炭化室の側壁間に装入される測定部と、前記炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、前記測定部と前記支持部とを連結する接続部とを備え、
前記測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、該筐体内に収納され、先端部が前記筐体に設けられた貫通孔を介して前記筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、前記筐体内に設けられ、前記接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備し、
前記各組の接触子は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされていることを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定装置。
【請求項2】
前記接触子は、石英ガラス製であることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の炭化室幅測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、軸方向視においてマトリクス状に配置された少なくとも4組の円筒状又は円柱状の接触子を具備し、
前記測定部を前記炭化室の側壁間に装入した際における、炉高方向に相当する接触子の間隔をa0、炉長方向に相当する接触子の間隔をb0とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉の炭化室幅測定装置。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のコークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、
前記接触子の先端部を前記筐体外に移動させて前記炭化室の側壁に当接させることにより前記炭化室の幅を測定するステップと、
前記接触子の先端部を前記筐体内に移動させて冷却するステップとを交互に繰り返すことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載のコークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、
所定の吊下装置に前記炭化室幅測定装置を取り付け、前記炭化室の装炭孔の上方に吊り上げるステップと、
前記吊下装置を用いて、前記炭化室幅測定装置の前記測定部及び前記接続部を前記装炭孔を介して前記炭化室内に順次装入し、前記支持部を前記装炭孔に係合させるステップと、
前記吊下装置から前記炭化室測定装置を取り外すステップと、
前記炭化室測定装置によって前記炭化室の幅を測定するステップとを含むことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法。
【請求項1】
コークス炉の炭化室の幅を測定する装置であって、
前記炭化室の幅を測定する際に前記炭化室の側壁間に装入される測定部と、前記炭化室の頂部に設けられた装炭孔に係合可能な形状を有する支持部と、前記測定部と前記支持部とを連結する接続部とを備え、
前記測定部は、冷却手段が設けられた筐体と、該筐体内に収納され、先端部が前記筐体に設けられた貫通孔を介して前記筐体の内外に進退可能とされた少なくとも1組の棒状又は筒状の接触子と、前記筐体内に設けられ、前記接触子の進退方向の変位を測定する変位測定手段とを具備し、
前記各組の接触子は、互いに略平行な直線上を互いに逆方向に進退可能とされていることを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定装置。
【請求項2】
前記接触子は、石英ガラス製であることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の炭化室幅測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、軸方向視においてマトリクス状に配置された少なくとも4組の円筒状又は円柱状の接触子を具備し、
前記測定部を前記炭化室の側壁間に装入した際における、炉高方向に相当する接触子の間隔をa0、炉長方向に相当する接触子の間隔をb0とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の炉高方向の寸法をa1、炉長方向の寸法をb1とし、前記炭化室の側壁を構成する煉瓦の目地の炉高方向の寸法をa2、炉長方向の寸法をb2とし、接触子の外径をCとした場合、下記の式(1)及び式(2)の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉の炭化室幅測定装置。
(m+1)×a2+m×a1+C<a0<m×a2+(m+1)×a1−C・・(1)
(n+1)×b2+n×b1+C<b0<n×b2+(n+1)×b1−C・・(2)
ここで、上記式(1)においてmは0以上の整数を、上記式(2)においてnは0以上の整数を意味する。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のコークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、
前記接触子の先端部を前記筐体外に移動させて前記炭化室の側壁に当接させることにより前記炭化室の幅を測定するステップと、
前記接触子の先端部を前記筐体内に移動させて冷却するステップとを交互に繰り返すことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載のコークス炉の炭化室幅測定装置を用いて、コークス炉の炭化室の幅を測定する方法であって、
所定の吊下装置に前記炭化室幅測定装置を取り付け、前記炭化室の装炭孔の上方に吊り上げるステップと、
前記吊下装置を用いて、前記炭化室幅測定装置の前記測定部及び前記接続部を前記装炭孔を介して前記炭化室内に順次装入し、前記支持部を前記装炭孔に係合させるステップと、
前記吊下装置から前記炭化室測定装置を取り外すステップと、
前記炭化室測定装置によって前記炭化室の幅を測定するステップとを含むことを特徴とするコークス炉の炭化室幅測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−302728(P2007−302728A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129950(P2006−129950)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
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