説明

コーティングを電解堆積するための方法および組立体

本発明によれば、次の要素が提供される:カソードを形成するブレード(120、130)であって、臨界ゾーン領域(21)を画定する、コーティングされる表面を有するブレード、アノード(19)、不溶解性の粒子を含む電解浴、および基準壁(14)に対する作業位置に前記ブレードが装着される装着台(12)。装着台(12)は、前記浴中に置かれ、粒子およびアノードの金属は、コーティング(20)をコーティングされる表面上に形成するために同時堆積される(19)。前記アノード(19)は、通常、臨界領域(21)に面して配置され、前記装着台(12)には、臨界ゾーン(12)に対して比較的一定の予め決められた厚さであって、前記コーティング(20)の縁部に沿ってほぼゼロの値まで徐々に低下する厚さを有するコーティング(20)を得るために電流線を監視する手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ブレード、詳細には、ただし限定されないがガスタービンノズルのブレードを補修する目的で、粒子を含有する金属マトリクスを含む複合コーティングを堆積する方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、MCrAlMタイプのコーティングを堆積する方法に関し、ここでMは、Ni、Co、もしくはFeまたはそれらの混合物から選択され、Mは、Y、Si、Ti、Hf、Ta、Nb、Mn、Ptおよびレアアースから選択される。
【背景技術】
【0003】
現代のガスタービンの効率性における継続的な向上は、かつてない高さのタービン入口温度を使用することを必要としている。この傾向により、可動ブレードおよびノズルなどの高圧タービンの部分を作製するためにこれまで以上の難燃性の材料が開発されてきている。
【0004】
この目的のため、硬化特性を有する非常に高い体積率のガンマプライム相を備えた単結晶超合金が、開発されている。
【0005】
それにも関わらず、超合金の開発は、高温に耐える構成部品の耐用年限に関する要求事項の高まりに追いつくまでには至っていない。そういった理由で、より最近では、内部対流によって冷却された構成部品の金属の温度を低下させるために、断熱コーティングが利用されるようになってきている。これらの断熱コーティングまたは「熱障壁」は、酸化イットリウムによって安定化させられたジルコニアベースのセラミックの層から作製され、金属結合層上に堆積されてセラミックコーティングに付着力をもたらしながら、その部分の金属が酸化されるのを保護する。
【0006】
アンダーコートと称される結合層は、さまざまなタイプのものであり得る。(Mがニッケルまたはコバルトを表す)MCrAlYタイプの層に関して言及され得る。特に、50原子%のニッケルおよびアルミニウムを有すると規定される化合物である、金属間の構造を有するアルミナイド(NiAl)タイプの層に関して言及され得る。そのようなアルミナイドは、プラチナなどの貴金属によって改質されてよい。アルミナイドコーティングは、基材内に拡散する層と一緒になって形成された外側層から構成される。これらのアンダーコート系のすべては、その共通因子として、アルミナ形成するという特性を有し、すなわち酸化により、これらは保護アルミナ膜を形成し、この膜は、良好に付着しかつその部分の金属を酸化環境から隔離する。
【0007】
アンダーコートおよび熱障壁などの、構成部品に加えられたあらゆる保護に関わらず、これらはそうではあるが酸化し、割れのリスクを負っている。したがって、そのような構成部品を連続して使用されることを可能にするために、一定の長さの作動後に存在し得るさまざまな欠陥を補修することが必要である。
【0008】
熱障壁でコーティングされたノズルなどの構成部品を補修するために、セラミックコーティング、次いで金属アンダーコートを除去する必要があることが知られている。次いで、ハロゲン雰囲気下で熱的および化学的処理によって構成部品を脱酸化することが必要である。構成部品は、次いで、溶接および/またはろう付け技術によって補修され得る。構成部品がビルドアップされた後、金属アンダーコート、次いでセラミック層が復元される。
【0009】
熱障壁は従来、サンドブラスティングによって除去される。サンドブラスティングは、セラミック層および金属アンダーコートの両方に対して侵攻性の工程である。アンダーコートはその後、酸浴中で化学的に溶解させられることによって除去される。この工程は、アルミナイドコーティングの拡散層が溶解されることになり、したがって実際にはその部分の壁厚を低減することになるため、難しいものである。その部分の壁厚のそのような低減は、特にノズルの流れセクションを増大させることになる。
【0010】
ターボ機械のノズルでは、1セクタは、相互連結されたプラットフォーム上に装着された1つまたは複数のブレードを備える部分である。複数のセクタが結合されて、本質的にノズルを構成するリングを形成する。厳密に言えば、セクタの流れセクションは、2つの隣接するブレード間の、ストリームがノズルセクタを通路に沿って通過する通路の、流れ方向に対して垂直に測定された領域である。つまり、流れセクションは、より簡単には、ノズルセクタを通るストリームの通路の幅を示すために使用される。この流れセクションは、従来、前縁と後縁の間の、流れセクションの値が最小であり、ストリームの最も狭い通路の場所に対応する場所で測定される。
【0011】
流れセクションは、増大すると、排気温度温度(EGT)マージンを小さくすることによってエンジンのパフォーマンスを低下させる傾向があることが知られている。
【0012】
したがって、この部分がエンジンのパフォーマンスを決定する場所に材料を追加しながら、機械的特性ならびに酸化および腐食に耐える能力を良好に維持できることが必要である。
【0013】
従来技術は、超合金ベースのフリット上にろう付け材料をろう付けすることによってその部分をビルドアップすることを含む。この技術は、さまざまな欠点を有しているため、特に適したものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
定義では、フリットおよびろう付け粉末は、その部分の作動温度に近い融点を有する化合物を形成する融解可能な要素から作製される。したがって、極限温度にさらされる大きな領域に対してこの種類の材料を使用することは勧められない。結果として、ろう付けされたゾーンの機械的特性は、覆いがない基材の機械的特性を大きく下回る。
【0015】
さらに、ろう付けによって堆積物を作り出すことにより、段を形成する縁部、すなわちビルドアップされたゾーンすべてに沿って材料のさらなる厚さが常に生じる。この段の存在は、(空気の流れセクション内の)空気ストリームの流れを妨害し得るため、それに続いて機械加工が、適正な空気力学的プロファイルを復元するために必要である。
【0016】
さらに、ノズルの後縁が、ろう付けするのに十分な厚さではないことが起こり得る。ろう付けには、要素が、300マイクロメートル(μm)ほどの大きさになり得る厚さにわたって拡散され、それによって、前記厚さにわたって基材の完全性を劣化させることが伴われる。
【0017】
本発明の重要な態様は、特に流れセクションを復元しながらその部分の環境によって課された基準にも適合させるという問題に対処することを可能にすることによって、従来技術の欠点を克服することを可能にする方法を提供することである。
【0018】
したがって、特に流れセクションの測定ゾーンをビルドアップするために、機械的特性を劣化させない材料を使用することが必要である。さらに、ビルドアップは、ストリームラインの妨害を回避するようにして実行される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のため、本発明によれば、本方法は、金属ブレードを補修する目的で、粒子を含有する金属マトリクスを含む複合コーティングを電解堆積する方法であって、以下のステップ:
カソードを形成する少なくとも1つのブレードであって、臨界ゾーンを画定する、コーティングされる表面を有する、ブレードを提供するステップと、
金属から作製され、電流源と連結するアノードを提供するステップと、
電解浴を形成し、不溶解性の粒子を含有する溶液を提供するステップと、
電気を伝導しない材料から作製され、基準壁を有し、前記ブレードを基準壁に対して作業位置に受け入れるのに適した支持体を提供するステップと、
前記作業位置で前記ブレードを前記支持体に装着するステップと、
前記支持体を前記溶液中に置くステップと、
コーティングされる表面上にコーティングを形成するために、粒子およびアノードからの金属を同時堆積するステップとを実施する方法である。
【0020】
特徴的な方法では、前記アノードは臨界ゾーンに面して置かれ、前記支持体にはブレード毎に、臨界ゾーンに対して予め決められ比較的一定であり、かつ前記コーティングの縁部に沿ってほぼゼロの値まで漸進的に減少する可変厚さを有するコーティングを、前記ブレードのコーティングされる表面上に得るように電流線を制御する手段が取り付けられる。
【0021】
電流線を制御するこれらの手段は、好ましくは、ブレードのコーティングされる表面に面する前記支持体の表面上に1つまたは複数のシールド部分を含む。
【0022】
このようにして、実施が簡単である電気めっき技術を使用することによって、コーティングに望まれる厚さ、すなわちその部分上で場所に応じて変化する厚さを直接得ることが可能であることが理解可能であり、これは、コーティングの縁部に沿って段を形成することなく、流れセクションの厳しい寸法制約に適合させながら行われることが可能である。
【0023】
この解決策はまた、コーティングされる必要がある、コーティングされる表面のゾーン、または各ゾーン上だけにコーティングを堆積することが可能であるというさらなる利点も有する。
【0024】
さらに、本発明の方法は、複数の部分を同時に処理することを可能にする。
【0025】
また、電解技術は、ろう付けを用いるビルドアップ方法とは異なり、拡散は数マイクロメートルだけにわたって発生するため、基材を僅かしか妨害しないこともまた言及されなければならない。
【0026】
全体として、本発明の解決策は、酸化および腐食に耐えるということに関して所望の特性を有し、その後の修正(機械加工)を必要とすることなくストリームラインに対するいかなる妨害も回避する厚さおよび形状を有する堆積物を作り出すことを可能にする。
【0027】
好ましい実施形態では、前記コーティングされる表面は、ブレードの根元部と先端部の間を長手方向に延びる。非伝導性の支持体が、アノードを前記コーティングされる表面に面して保持するように構築される。アノードの形状は、臨界ゾーンへの電流の流れを制御し、絞り点において最大のコーティング厚さおよびコーティング領域から非コーティング領域への滑らかな移行を生み出すように選択され得る。アノードの形状は、それだけに限定されないが、ロッド、棒、シート、または翼の形をたどる形状を含む数多くのさまざまな設計から選択されてよい。
【0028】
アノードのための非伝導性の支持体は、コーティングされる表面に対するアノードの位置を規定し、アノードからコーティングされる表面に流れる電流線を制御するように設計され得る。この目的のため、電流線を制御する前記手段は、前記ブレードの前記コーティングされる表面に面するのに適した支持体の長手方向部分であって、長手方向に延び臨界ゾーンに面するアノードの場所を画定する部分を含んでおり、コーティングされる表面に対する、支持体の長手方向部分のプロファイルおよび位置ならびにアノードの形状および位置は、電流線を限定および配向するように選択される。
【0029】
好ましくは、ブレード(複数可)は、ターボ機械ノズルのブレードである。
【0030】
本発明はまた、ブレードを復元する方法であって、
(i)コーティングされる表面を形成するために既存のコーティングをブレードから除去ステップと、
(ii)前記コーティングされる表面を調製または洗浄するステップと、
(iii)ブレードをビルドアップするために、上記で説明された本発明のコーティングを電解堆積する方法によって、M1CrAlM2タイプの材料を用いてブレードの前記コーティングされる表面をコーティングするステップと、
(iv)拡散熱処理を実施するステップとを含む方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、コーティングをブレード上に電解堆積するための組立体であって、詳細には本発明の方法を実施するように適合された組立体も提供する。
【0032】
この目的のため、コーティングをブレード上に電解堆積するための組立体であって、
カソードを形成する、臨界ゾーンを画定するコーティングされる表面を有する少なくとも1つのブレードと、
電気を伝導しない材料から作製され、基準壁を有し、前記ブレードを基準壁に対して作業位置に受け入れるのに適した支持体であって、ブレード毎に、前記ブレードの前記コーティングされる表面に面するのに適した、長手方向に延び臨界ゾーンに面するアノードのための場所を画定する長手方向部分をさらに含み、アノードが、前記場所内に収容され、コーティングされる表面に対する支持体の長手方向部分のプロファイルおよび位置ならびにアノードの形状および位置が、臨界ゾーンに対して予め決定され、かつ前記コーティングの縁部に沿ってほぼゼロの値まで漸進的に減少する可変厚さを有するコーティングを、前記ブレードのコーティングされる表面上に得るようにして電流線を限定および配向するように選択される、支持体とを備える組立体が提供される。
【0033】
特に、長手方向の部分はコーティングされる表面に面する作業壁であって、コーティングを、特にその厚さに関して所望の特性を有するようにコーティングされる表面上に堆積させることを電流線が可能にするように適合された形状のプロファイルを有する作業壁を含む。
【0034】
本発明の他の利点および特性は、例を用いて、また添付の図を参照してなされる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】流れセクションが測定される場所を示す、ノズルセクタの2つのブレードの軸に対して垂直な断面図である。
【図2】本発明の方法を用いてコーティングされたブレードのより大きい縮尺の断面図である。
【図3】図2のゾーンIIIの拡大図である。
【図4】図2のゾーンIVの拡大図である。
【図5】図3のゾーンIIIに対応する断面の顕微鏡写真の図であり、その縁部の1つに沿ったコーティング厚さの漸進的な変化が見られ得る。
【図6】図3の臨界ゾーンに対応する断面の断面顕微鏡写真の図であり、臨界ゾーンのコーティングの、予め決定され比較的一定な厚さが見られ得る。
【図7】本発明の方法を実施するために、前記支持体上に装着されたツーリング支持体およびブレードを備える本発明の組立体の可能な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に部分的に示されるノズルセクタ100は、ノズル100の軸を中心にほぼ円筒形状の2つのほぼ平行なプラットフォームを備える(2つのプラットフォーム110のうち1つだけが図1に見られ得る)。
【0037】
これらのプラットフォーム110は、四辺形状、詳細には平行四辺形状の外形を有する。平行四辺形の4辺は、(組み立てられた相対位置において)測定下にあるセクタ100の両側に配設された2つのノズルセクタ200および300に向かってそれぞれ向けられた接触表面111および112を形成する2つの対向辺を含む。接触表面111、112は、隣接するノズルセクタ、例えば図1のセクタ100、200および300を接触相対位置に保持するように設計される。平行四辺形の他の2つの辺は、ノズルによって形成されたリングの2つの外円を画定する横方向の面113および114を形成する。
【0038】
ノズルセクタ100はまた、2つのブレード120、130も有する。これらのブレードの各々は、吸引側121、131および圧力側122、132を有する空気力学的プロファイルを有する。セクタ100内には2つのブレードしか存在しないので、ブレード110、120の各々は端部ブレードである。したがって、これらのブレードの各々は、組み立てられた相対位置にあるとき、隣接するノズルセクタの端部ブレードに面して置かれる。より正確には、吸引側121は、ブレード230の圧力側232に面しており、圧力側132は、ブレード320の吸引側321に面している。ブレード230および320は、ノズル100を貫通する流れセクションを測定するための参照ブレードとして使用される標準ブレードである。さまざまなブレード230、120、130、320間には、それぞれブレード間通路101、102、および103が形成される。ブレード間通路102は、セクタ100のブレード120と130の間に形成される。これに対して、ブレード間通路101および103は、第1には、検討下にあるセクタ100のブレード(120または130)の1つと、第2には、これに面する参照ブレード230または320との間に形成される。
【0039】
図1に見られ得るように、所与のブレード間チャネル内では、ブレード間の距離は、チャネルに沿った位置に応じて変化する。たいてい、いかなる所与のブレード間チャネルにおいても、この距離および流れセクションが最小である平面はチャネル内には1つしか存在しない。この平面は、ブレード間通路101、102、および103に対してそれぞれ平面P1、P2およびP3に対応し、これらのセクション内のブレード間の距離は、それぞれD1、D2およびD3であり、このときこれら3つの距離は、測定ベンチ上でとられた3つの測定値に対応している。
【0040】
図2により明確に見られ得るように、本発明の方法のこの実施では、前記ブレード120(または130)のコーティングされる表面は、その吸引側の壁121(または131)である。
【0041】
そうではあるが、本発明の方法を実施することにより、コーティング20をノズルセクタ110の2つのブレード120および130の圧力側122、132上に同時に施すことも可能である。
【0042】
図2では、ブレード120がそれに沿って延びる長手方向に直交する横断平面内におけるブレード120の断面が見られ得る。図2では、本発明の方法によって得られたコーティング20は、吸引側121だけ、本質的には前記吸引側121の全体領域にわたって、第1には、プラットフォーム上に装着された2つの長手方向端部の間、第2には、前縁124と後縁123の間を延びる。
【0043】
図2に見られ得るように、コーティング20は、コーティング20の厚さが、その平均値Eからほぼゼロの値まで漸進的に減少する縁部を除いて、その全体領域にわたって比較的一定である平均厚さEを有する。
【0044】
より正確には、図3に示されるように、コーティング20の上流側縁部22、すなわちブレード120の前縁124に隣接する縁部は、前縁124に向かって厚さが減少する層を形成し、それにより、前縁124と吸引側121を覆うコーティング20の間に不連続部または段は存在しなくなる。いかなる段も存在しないことにより、図1のブレード間チャネル101内の流れに対するいかなる妨害も回避される。
【0045】
類似の方法で、また図4に見られ得るように、コーティング20の下流側縁部24、すなわちブレード120の後縁123に隣接する縁部は、後縁123に向かって減少する厚さの層を形成し、それにより、後縁123と吸引側121を覆うコーティング20の間に不連続部または段は存在しなくなる。したがって、コーティング20の存在は、ブレード間チャネル102を通る空気のストリームの流れに影響を与えない。
【0046】
コーティングの平均厚さEは、10μmから500μmの範囲内にある。
【0047】
説明された例では、臨界ゾーン21は、流れセクションが測定され、それにより本発明の補修方法が、ブレード120の流れセクションを、ブレードをビルドアップすることによって復元できるようになるゾーンである。
【0048】
上記に記載された理由のため、前記コーティング20は、この例では流れセクションが測定される場所(図1の距離D2)に対応する臨界ゾーン21の場所、すなわち吸引側壁121ののど部と称される場所に正確かつ一定である予め決められた厚さを有する(図2)。
【0049】
この点に関して、また好ましくは、前記コーティング20は、10μmから500μmの範囲、特に10μmから300μmの範囲内にある厚さE1を臨界ゾーン21内に有する。好ましくは、この厚さE1は、臨界ゾーン21全体にわたって一定である。
【0050】
用語「臨界」ゾーン21は、図2および図3に見ることができる幅Lにわたって、ブレード120の全長さに沿って延びるものと理解されるべきであり、このときこの長さ方向は、すべての図面に直交して延びる方向である。
【0051】
縁以外の全体領域にわたって比較的一定である平均厚さEを有する代わりに、コーティングは、臨界ゾーンまたはのど部21を離れるとき、すなわち前記臨界ゾーン21のすぐ後で小さくなり始める厚さを有することができる。
【0052】
例として、ブレード120は、ニッケルまたはコバルトベースの超合金から作製されたブレードであり、特にこれは、低硫黄タイプの標準的なAM1タイプ(またはNiTa8Cr8CoWA):ReneN5、DSR142、Rene125(またはNiCo10Cr9WAlTaTiMo)、IN100(またはNiCo15Cr10AlTi)、CMSX4のものでよい。
【0053】
コーティング20は、MCrAlMタイプの、粒子を含有する金属マトリクスを含む複合物によって構成され、ここではMは、Ni、Co、もしくはFeまたはそれらの混合物から選択され、Mは、Y、Si、Ti、Hf、Ta、Nb、Mn、Pt、およびレアアースから選択される。
【0054】
用語「レアアース」は、ランタニド群(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウム)、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、およびハフニウムに属する元素をカバーするために使用される。
【0055】
CrAlMタイプの、そのようなコーティング20を堆積するために、粒子がCrAlMの粒子である溶液から電解液が形成され、MはY、Si、Ti、Hf、Ta、Nb、Mn、Pt、およびレアアースから選択される。
【0056】
金属Mから作製されたアノードもまた使用され、ここでMは、Ni、Co、もしくはFe、またはそれら金属の混合物から選択される。
【0057】
例えば、NiCrAlYの堆積物を得るために、第1にはニッケルおよび第2にはCrAlYの粒子を含む複合堆積物(NiはCoで置き換えられてもよい)を使用することが必要である。
【0058】
NiCrAlYのコーティングは、従来の電解浴中に存在するCrAlYの粉末をアノードからのニッケルと共に制御された同時堆積することによって生成される。
【0059】
電極(コーティングされる部分によって形成されたカソードとアノード)間にかけられた電位差の影響下で、金属アノード(この例ではNi)は、酸化され、Ni2+イオンを溶液中に放出する。これらのイオンは、依然として電位差の影響下にある溶液中で移動し、カソードに向かって進み、進行途中で溶液中に存在する分散した粒子と混合される。イオンおよび粒子によって構成された組立体は、次いで、カソードに向かって移動し、最後には組立体が堆積されるその表面に到達することになり(このときNi2+は、金属Niに還元される)、こうしてCrAlYの粒子が最終的にNiマトリクス内に分散されるNiCrAlYのコーティングをカソード上に形成する。
【0060】
次いで、基材上に電気めっきされた未加工のコーティングによって形成された組立体を、適切な熱処理を施してその組成を均一にし、2相コーティングを得るようにすることによって拡散させることが必要である:
M+CrAlY−>MCrAlY
通常、ノズルセクタは、真空エンクロージャ内にしばらく置かれ、基材材料に適した温度処理による熱処理にかけられ、この一般的な例は、1080°Cで2時間であり得る。
【0061】
本発明の方法を実施することを可能にする同時堆積装置10の例を示す図7を参照する。
【0062】
この目的のため、装置10は、電気を伝導しない材料から作製され、基準壁14を有し、前記ブレード120、130を基準壁14に対して作業位置に受け入れるのに適した支持体12を備える。
【0063】
図7の例では、前記支持体12は、2つのブレード120および130を基準壁14に対して作業位置に受け入れるのに適している。これは、2つのブレード120および130がその間を延びる2つのプラットフォーム(図7ではプラットフォーム110だけが見ることができる)から作製された完璧なノズルセクタ100を装着することに相当する。
【0064】
本発明の範囲を超えることなく、支持体12は、3つ以上のブレードを基準壁14に対して作業位置に受け入れるのに適するようにすることが可能である。
【0065】
この作業位置では、支持体12の基準壁14は、ノズルセクタのプラットフォーム110の2つの横方向の面113、114の1つに対して押し付けられる。
【0066】
コーティング対象であるブレード毎に、支持体12には電流線を制御する手段が取り付けられ、この手段は、電流線を誘導し、コーティング対象である前記ブレードの壁に向かって集中させることによってこの電流線を配向することを可能にする。
【0067】
この目的のため、図7に示される実施形態では、セクタ100のブレード120、130毎に、支持体12は、作業壁17が取り付けられた長手方向の部分15を備え、この作業壁17は、対応するブレード130の吸引側壁131のすべてに面して、プラットフォームに取り付けられた2つの長手方向の端部の間を延び、その前縁からその後縁に至る。
【0068】
したがって、図7の支持体12は、第1には、作業壁17とコーティングされる表面(吸引側壁131)の間を延びるゾーン13内の電流線を限定し、配向するように相互平行して働く2つの同一の長手方向の部分15を含む。第2には、セクタ100の2つのブレード120、130の間にある長手方向部分15は、前記長手方向部分15の作業壁17の反対側に位置する他のブレード130の圧力側壁132のためのスクリーンを形成する。
【0069】
ゾーン13内にこれらの電流線を生み出すために、作業壁17には、場所16において電流源に連結されたアノード19が取り付けられる。
【0070】
例として、このアノード19は、数ミリメートルの直径を有し、Ni、Co、およびF、またはそれらの混合物から選択された金属Mから作製されたシリンダによって形成され、このまたはこれらの元素を溶液に供給し、MCrAlMタイプのコーティング20を形成する。アノードの形状は、ロッド、棒、シートまたは翼の形をたどる形状を含む数多くのさまざまな設計から選択されてよい。
【0071】
このアノード19は、これを担持する長手方向部分15に締め付けられる。コーティングされる表面に対する支持体12の長手方向部分15およびアノード19のプロファイルおよび位置は、電流線を限定および配向するように選択される。アノード19は、カソード(ブレード130)とアノード19の間に電位差を発生させるように電流源に連結される。
【0072】
したがって、支持体12と、その作業位置に締め付けられたノズルセクタ100とを備える、図7に見ることができる組立体は、電位差にさらされる前に電解浴中に浸漬される。
【0073】
特に、吸引側壁121、131のプロファイルの形状に概ね相補的である形状を有する、位置15の作業壁17のプロファイルにより、また前記壁17と吸引側壁121、131の間の距離により、コーティング20を吸引側壁121、131上に形成するためにその力線を最適に配向することが可能である。
【0074】
さらに、コーティング20の堆積を吸引側壁121、131だけに限定することも可能である。
【0075】
これらの幾何学的パラメータ、さらにはアノード19の形状、サイズ、および位置、電位差、ならびに電解同時堆積の期間は、コーティング20を所望の特性を有して堆積できるようにモデル計算の間に事前に最適化される。
【0076】
この電解同時堆積の方法は、冷却オリフィスおよび穴の一部分を少しずつ塞いでいく影響を与える。
【0077】
特定の状況では、コーティング対象ではないブレード120、130のゾーン、特に穿孔穴および他の穴の場所に事前マスキングが実行される。
【0078】
この目的のため、例えばプラスチック材料のシートが、電解同時堆積中被覆されないノズルセクタ(またはより全般的にはコーティングのための任意の部分)のゾーンを覆うように置かれる(例えばノズルセクタの内側および外側のプラットフォーム)。また、被覆されないゾーン上、特に穿孔穴および他の穴の入口に置かれるワックスを使用することも可能であり、その結果、コーティングがその穴のサイズを変更し、またはコーティングが到達したときにこれらを塞ぐことを回避する。
【0079】
均一なコーティングを得るための有利な配置では、電解浴中で粉末を制御しながら撹拌するための対策がなされる。この目的のため、1つの実施では、同時堆積が行われる間、溶液の第1の空間内に上方向の流れ、および溶液の第2の空間内に下向きの流れを有する循環が溶液中に確立され、支持体12は、前記第2の空間内に位置している。
【0080】
良好な品質のコーティングを得るために有利な別の配置では、同時堆積が行われている間、支持体12は、水平構成要素を有する軸を中心に回転させられる。
【0081】
電解液および電解液中の構成部分に適用可能な運動条件およびガルバニックパラメータに関しては、欧州特許第0355051号明細書および欧州特許第0724658号明細書を参照する。
【0082】
したがって、電解同時堆積によって堆積物を作り出すことにより、特に臨界ゾーン内およびその縁部に沿って、制御された厚さを達成しながらも、任意のMCrAlY組成、またはより一般的にはMCrAlM組成を有するコーティングを行うことが可能である。
【0083】
電気めっきによって得られたそのようなコーティング20は、非常に小さい粗度(約1μmから2μmのRa)を有し、多孔質のものではなく、基材とコーティングの間の強力な(金属)結合を達成するという利点も有する。
【0084】
電解同時堆積のこの方法を実施することにより、形状が複雑である部分をコーティングすることができるが、その理由は、この方法は完全な指向性ではなく、その部分の全体表面は電解浴と接触しているためであることもまた認められるはずである。
【0085】
さらに、そのような方法は、基材を熱ストレスにさらさないという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ブレード(120、130)を補修する目的で、粒子を含有する金属マトリクスを含む複合コーティングを電解堆積する方法であって、以下のステップ:
カソードを形成する少なくとも1つのブレード(120、130)であって、臨界ゾーン(21)を画定し、ブレード(120、130)の根元部と先端部の間を長手方向に延びるコーティングされる表面を有するブレードを提供するステップと、
金属から作製され、電流源と連結するアノード(19)を提供するステップと、
電解浴を形成し、不溶解性の粒子を含有する溶液を提供するステップと、
電気を伝導しない材料から作製され、基準壁(14)を有し、前記ブレード(120、130)を基準壁(14)に対して作業位置に受け入れるのに適した支持体(12)を提供するステップと、
前記ブレード(120、130)を前記作業位置の前記支持体上(12)に装着するステップと、
支持体(12)を前記溶液中に置くステップと、
コーティング(20)をコーティングされる表面上に形成するために、粒子およびアノード(19)からの金属を同時堆積するステップとを実施する、方法において、
前記アノード(19)が、臨界ゾーン(21)に面して置かれること、および前記支持体(12)にはブレード(120、130)毎に、臨界ゾーン(21)に対して予め決められ比較的安定であり、かつ前記コーティング(20)の縁部に沿ってほぼゼロの値まで漸進的に減少する可変厚さを有するコーティング(20)を、前記ブレード(120、130)のコーティングされる表面上に得るように電流線を制御する手段が取り付けられることを特徴とする、方法。
【請求項2】
電流線を制御する前記手段が、前記ブレード(120、130)の前記コーティングされる表面に面するのに適した支持体(12)の長手方向部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分(15)が、長手方向に延び臨界ゾーン(21)に面するアノードの場所(16)を画定し、コーティングされる表面に対する支持体(12)の長手方向部分(15)およびアノード(19)のプロファイルおよび位置が、電流線を限定および配向するように選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粒子を含有する金属マトリクスを含む前記複合コーティング(20)が、MCrAlMタイプのものであること、前記アノード(19)が、Ni、Co、およびFe、またはそれらの混合物から選択される金属Mから作製されること、および溶液の粒子が、CrAlMの粒子であり、ここでMは、Y、Si、Ti、Hf、Ta、Nb、Mn、Ptおよびレアアースから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング(20)が、臨界ゾーン(21)内に10μmから500μmの範囲にある厚さを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレード(120、130)のコーティングされる表面が、吸引側壁(121、131)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
臨界ゾーン(21)が、流れセクションが測定され、それにより補修方法が、ブレード(120、130)の流れセクションを、ビルドアップされることによって復元できるようになるゾーンであること特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持体(12)が、2つのブレード(120、130)を基準壁(14)に対して作業位置に受け入れるのに適することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
支持体(12)が、3つ以上のブレード(120、130)を基準壁(14)に対して作業位置に受け入れるのに適することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ブレード(120、130)が、ターボ機械ノズルのブレード(120、130)であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コーティングされる対象でないブレード(120、130)のゾーンが、特に穿孔穴および他の穴の場所において事前にマスキングされることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
堆積が行われている間、溶液の第1の空間内に上方向の流れおよび溶液の第2の空間内に下方向の流れを有する循環が溶液中に確立され、支持体(12)が、前記第2の空間内に置かれることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
同時堆積が行われている間、支持体(12)が、水平構成要素を含む軸を中心に回転させられることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ブレードを復元する方法であって、
(i)コーティングされる表面を形成するために既存のコーティングをブレードから除去ステップと、
(ii)コーティングされる表面を調製または洗浄するステップと、
(iii)ブレードをビルドアップするために、請求項1から12のいずれかに記載の方法によって、M1CrAlM2タイプの材料を用いてブレードのコーティングされる表面をコーティングするステップと、
(iv)拡散熱処理を実施するステップとを含む、方法。
【請求項15】
コーティング(20)をブレード(120、130)上に電解堆積するための組立体であって、
カソードを形成する少なくとも1つのブレード(120、130)であって、臨界ゾーン(21)を画定し、ブレード(120、130)の根元部と先端部の間を長手方向に延びるコーティングされる表面を有する、ブレードと、
電気を伝導しない材料から作製され、基準壁(14)を有し、前記ブレード(120、130)を基準壁(14)に対して作業位置に受け入れるのに適した支持体(12)であって、ブレード(120、130)毎に、前記ブレード(120、130)の前記コーティングされる表面に面するのに適した長手方向部分(15)であって、長手方向に延び臨界ゾーン(21)に面するアノードの場所を画定する部分(15)をさらに含み、コーティングされる表面に対する支持体(12)の長手方向部分(15)およびアノード(19)のプロファイルおよび位置が、臨界ゾーン(21)に対して予め決定され比較的一定であり、かつ前記コーティング(20)の縁部に沿ってほぼゼロの値まで漸進的に減少する可変厚さを有するコーティング(20)を、前記ブレード(120、130)のコーティングされる表面上に得るようにして電流線を限定および配向するように選択される、支持体(12)とを備える、組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−515860(P2013−515860A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546495(P2012−546495)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052928
【国際公開番号】WO2011/080485
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】