説明

コーティングダイ

【課題】リップ部の微調整を行う際の作業性に優れたスロットダイを提供する。
【解決手段】一対のブロックの平面部同士を対向させるとともに離間配置して構成し、平面部間を通過した塗液を吐出させるリップ部と、リップ幅を調節するリップ幅調節手段とを備えて塗液の吐出状態を制御するコーティングダイであって、少なくとも一方のブロックは、リップ部側の面からブロックの内部へ向けてブロックの平面部と略平行に形成されるスリットと、スリットと交差し、リップ幅調節手段の断面形状に沿って形成されたリップ幅調節手段収容溝とを備え、リップ幅調節手段は、ナットと固定リングとの間において回転軸がスリットに直交し、且つ回転軸の一方の端部がブロックの外方に突出した状態でリップ幅調節手段収容溝に収容され、回転軸を回転させて、ナット及び固定リングでスリットを挟み込み又は押し開く力を作用させてリップ幅を調節可能なコーティングダイを採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、塗工液を被塗工部に塗布する際に用いられるコーティングダイに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜の形成、接着剤やインクの塗布等、塗液を被塗工材に塗布する際に、塗液を先端のリップから吐出させるコーティングダイ、スロットダイ等が用いられている。例えば、特許文献1には、連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップを近接させて、スロットから塗布液を吐出するスロットダイに関する発明が開示されている。
【0003】
コーティングダイを用いて塗液を塗工する際、塗工量を任意の厚みに調整したり、その厚みを均一化させたりするための調整機能が望まれる。特許文献1に開示されたスロットダイにおいては、スロット部分で分割可能な少なくとも2つのブロックから構成されたスロットダイとし、2つのブロックを、リップからの位置が異なる2つ以上のボルト群で組み上げ、各ボルトの締め付け力を調節することによりスロット間隙を調整する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288377号公報
【特許文献2】特開2008−229560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術では、スロット間隙を調整するためのボルト群を等間隔でブロックに固定する構成であるため、各ボルトの固定箇所以外の位置におけるスロット間隔の微調整を行うことができなかった。
【0006】
そこで、本件出願人は、特許文献2に開示の発明により、長尺なリップ部形成用ブロック内部にボルト式変形手段をスライド移動可能に配置し、リップ部形成用ブロックの所望の箇所で、リップ幅の微調整を行うことが可能なコーティングダイを提供してきた。この特許文献2に開示のコーティングダイは、ボルト式変形手段全体をスリット内に配置したため、ボルト式変形手段を回転させたり、スライド移動させるためには、スリット内に手を入れて固定ナットを回転操作しなければならず、作業性の点で更なる改善が求められていた。
【0007】
そこで、本件発明は、リップ部の微調整を行う際の作業性に優れたスロットダイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下のスロットダイを採用することで上記課題を達成するに到った。
【0009】
本件発明に係るスロットダイは、平面部を有する一対のブロックを、当該平面部同士を対向させるとともに離間配置して構成し、当該離間配置した平面部同士の間を通過した塗液を吐出させるリップ部と、当該一対のブロックの平面部同士の離間距離であるリップ幅を調節するリップ幅調節手段とを備え、当該リップ幅調節手段により、当該リップ幅を調節して塗液の吐出状態を制御するコーティングダイであって、リップ幅調節手段は、回転軸と、当該回転軸に螺合するナットと、当該回転軸より大きな外周を有する固定リングとを備え、当該一対のブロックのうちの少なくとも一方は、リップ部側の面からブロックの内部へ向けて当該ブロックの平面部と略平行に形成されるスリットと、当該スリットと交差し、リップ幅調節手段の回転軸方向における断面形状に沿って形成されたリップ幅調節手段収容溝とを備え、当該リップ幅調節手段は、ナットと固定リングとの間において、当該回転軸がスリットに直交し、且つ回転軸の一方の端部がブロックの外方に突出した状態でリップ幅調節手段収容溝に収容され、当該リップ幅調節手段の回転軸を回転させることにより、リップ幅調節手段収容溝において、スリットに直交する方向からナット及び固定リングでスリットを挟み込み又は押し開く力を作用させてリップ幅を調節可能とすることを特徴とする。
【0010】
本件発明に係るスロットダイは、前記一対のブロックのうち、少なくともリップ幅調節手段を配置するブロックは、当該リップ部へ向けて当該ブロックの厚さが薄くなる傾斜面を備える形状であるものが、より好ましい。
【0011】
本件発明に係るスロットダイは、前記リップ幅調節手段に備えるナットは、前記スリットと前記平面部との間に配置するものが、より好ましい。
【0012】
本件発明に係るスロットダイは、前記一対のブロックは長尺な部材であり、前記スリット及びリップ幅調節手段収容溝は当該ブロックの長さ方向の略全幅に渡って形成され、前記リップ幅調節手段は、当該リップ幅調節手段収容溝上をスライド移動させて、任意の位置に配置してリップ幅を調節するものが、より好ましい。
【0013】
本件発明に係るスロットダイは、さらに、前記リップ幅調節手段は、前記リップ幅調節手段収容溝に2つ以上配置されるものが、より好ましい。
【0014】
本件発明に係るスロットダイは、前記リップ幅調節手段を配置するブロックは、当該ブロック本体と、前記傾斜面側から前記リップ幅調節手段の固定リングを含む一部を覆い、且つ、ブロック本体と離間配置して前記スリットの一部を形成するように配置する補助ブロックとを備え、当該補助ブロックは、リップ幅調節手段を覆う部分の断面形状に沿って形成された第二リップ幅調節手段収容部を形成したものがより好ましい。
【0015】
本件発明に係るスロットダイは、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックの平面部に、マニホールドとして機能する凹部を設け、当該凹部は、前記平面部同士の間を通過する塗液の流出圧力の調整を行うものが、より好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本件発明に係るスロットダイは、少なくとも一方のブロックにリップ幅調節手段を収容し、当該リップ幅調節手段により当該ブロックを弾性変形させて、リップ部におけるリップ幅の調節を行う構成としたので、吐出状態の制御をより高い精度で行うことができる。また、リップ幅調節手段の回転軸の一方の端部がブロックの外方に突出した状態でリップ幅調節手段収容溝に収容する構成としたので、当該リップ幅調節手段の回転軸を回転させやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0017】
そして、本件発明に係るスロットダイは、広域な塗布領域に対応するためのスロットダイにおいて効果を発揮することができる。つまり、本件発明に用いる一対のブロックを長尺なものとし、当該ブロックに形成するスリット及びリップ幅調節手段収容溝が当該ブロックの長さ方向の略全幅に渡る構成としたことにより、リップ幅調節手段をスライド移動させて任意の位置に配置することができるので、所望の位置のリップ幅の微調整を行うことができる。そして、複数のリップ幅調節手段を備えることにより、塗布領域が長い場合に生じやすい塗布ムラに対しても微調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本件発明に係るコーティングダイの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すB−B線におけるコーティングダイの断面図である。
【図3】本件発明に用いるリップ幅調節手段の一例を示す側面図である。
【図4】本件発明に係るスロットダイのリップ幅調節手段を収容するブロックのスリット及びリップ幅調節手段の形状を示す部分断面図である。
【図5】図1に示すコーティングダイの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本件発明に係るコーティングダイの一実施の形態を示す正面図である。図2(A)は、本件発明に係るコーティングダイの一実施の形態を示す断面図である。図2(A)に示すように、本件発明に係るコーティングダイ1は、一対のブロック2,3と、リップ幅調節手段4とを備える。以下、各構成部材を詳述しながら本件発明に係るコーティングダイを説明する。
【0020】
図2(A)に示すように、ブロック2,3は、それぞれに平面部21,31を有する。この一対のブロック2,3の平面部21,31同士を対向させるとともに離間配置して、各平面部21,31の一端部22,32がリップ部5を構成する。そして、当該離間配置した平面部21,31同士の間を通過した塗液(不図示)をリップ部5から吐出させる。図1に示すように、本実施の形態では、長尺なブロックを用いており、このブロックの平面部の長さにより一度に塗液を塗工可能な幅が決まる。
【0021】
図2(A)に示す本実施の形態では、リップ部5を構成するブロックの一端部22,32が同じ高さで突出した形状である。また、図2(A)に示す本実施の形態では、各ブロック2,3は、リップ部5側からブロックの外側面23,33へ向けて傾斜した傾斜面24,34を有する。このように、ブロック2,3に傾斜面24,34を備えることにより、塗工しやすくなるだけではなく、リップ幅Wを微調整しやすくなる。すなわち、本件発明では、一対のブロック2,3のうち、少なくともリップ幅調節手段4を配置するブロック2は、当該リップ部5へ向けて当該ブロック2の厚さが薄くなる傾斜面24を備えることにより、リップ部5を構成する一端部22が弾性変形しやすく、リップ幅Wの微調整を可能とするのである。
【0022】
そして、リップ部5における塗液の吐出状態は、塗液の粘度、供給量、平面部21,31の材質及び離間距離を考慮して調整する。しかし、これらを考慮してブロック2,3の平面部21,31の離間距離を一定に調節しただけでは、塗布ムラが生じ、不十分な場合がある。そこで、本件発明に係るコーティングダイは、更に、任意の位置に配置できるリップ幅調節手段4により、ブロックを弾性変形させて、ブロック2,3の平面部21,31の離間距離を、リップ部5において微調整し、塗液の吐出状態を高精度に制御するものとした。
【0023】
一対のブロック2,3のうちの少なくともリップ幅調節手段4が収容されるブロックは、後述するスリット6及びリップ幅調節手段収容溝7が形成された状態で、リップ幅調節手段4により、外力が加わることによりブロック2のスリット6から先端部22側の部分が弾性変形し、リップ部5付近における平面部21と、対向する平面部31との距離を調節可能であれば、材質に特段の制限はない。一例を挙げれば、鉄系材料、銅系材料等が挙げられる。
【0024】
ここで、一方のブロックのみにリップ幅調節手段を設けても良く、あるいは、両方のブロックにリップ幅調節手段を備えても良い。図2(A)に示す実施の形態では、一対のブロック2,3のうち、一方のブロック2にのみリップ幅調節手段4を設ける構成とした。そして、他方のブロック3には、平面部31に凹部35を有する。この凹部35は、マニホールドとして機能し、流路を通過する塗工液の流出圧力を調節するものである。
【0025】
リップ幅調節手段4を取り付けるブロック2には、スリット6及びリップ幅調節手段収容溝7を備える。スリット6は、ブロック2のリップ部5側の面(傾斜面)24から、ブロック2の内部へ向けて当該ブロック2の平面部21と略平行に形成される。このスリット6は、ブロック2のリップ部5を構成する端部22の可動範囲に応じた寸法で形成される。具体的には、スリット6は、リップ部5を形成するブロック2の端部22が、他方のブロック3の端部32と当接しない程度に弾性変形可能となる幅で形成される。
【0026】
リップ幅調節手段収容溝7は、図2(A)に示すように、スリット6と交差する位置に、リップ幅調節手段4の回転軸41における軸方向の断面形状に沿った形状に形成する。リップ幅調節手段収容溝7は、リップ幅調節手段4を収容するとともに、これをスライド移動させるためのレールともなる。そのため、リップ幅調節手段収容溝7は、リップ幅調節手段4よりもやや大きい寸法で形成する。リップ幅調節手段収容溝7の形状については、リップ幅調節手段4の説明の後、詳述する。このスリット6及びリップ幅調節手段収容溝7は、ブロック2の長さ方向において略全幅に渡って形成すれば、リップ幅調節手段4を任意の位置に配置することができる。
【0027】
但し、ブロック2のリップ幅調節手段収容溝7にリップ幅調節手段4を配置するためには、リップ幅調節手段4の挿入口が必要となる。そこで、本実施の形態では、図4及び図5に示すように、リップ幅調節手段4を配置するブロック2は、ブロック本体20の他に補助ブロック8を備える構成とした。補助ブロック8は、ブロック本体20のリップ部5側の面(傾斜面)からリップ幅調節手段4の固定リング43を含む一部を覆い、且つ、ブロック本体20と離間配置してスリット6及びリップ幅調節手段収容溝7の一部を形成するように配置した。この補助ブロック8のうち、ブロック本体20のリップ幅調節手段収容溝7と対向する面には、リップ幅調節手段4を覆う部分の断面形状に沿って形成された第二リップ幅調節手段収容部81を形成する。具体的には、補助ブロック8のうち、リップ幅調節手段4を覆う部分に配置される固定リングの断面形状に沿った形状の第二固定リング収容部81aを形成し、このブロック本体20の固定リング収容部73と対向配置して、固定リング43を収容可能とし、第二リップ幅調節手段収容部81とする。
【0028】
図5に示すように、補助ブロック8は、リップ幅調節手段4をリップ幅調節手段収容溝7に配置した状態で、長尺方向の端部において、ブロック本体20と係合させる。具体的には、補助ブロック8の長尺方向の端部に凸部82を形成し、ブロック本体20に有するリップ幅調節手段収容溝7の固定リング収容溝73に嵌合させる。そして、補助ブロック8の長尺方向の端部において、傾斜面84側からネジにより補助ブロック8をブロック本体20に固定する。
【0029】
ここで、本願特許請求の範囲及び明細書では、ブロック2のスリット6及びリップ幅調節手段収容溝7は、ブロックの長さ方向における略全幅に渡って形成すると記載した。ブロックの長さ方向における略全幅とは、ブロックの長さ方向の両端部まで達する全幅の他に、この実施の形態のように、ブロック本体20に、補助ブロック8を取り付けるために、リップ幅調節手段収容溝7の両端部が補助ブロック8の凸部82で塞がれる場合を含むものである。
【0030】
次に、リップ幅調節手段4について説明する。図3は、本件発明に用いるリップ幅調節手段4の一例を示す側面図である。リップ幅調節手段4は、回転軸41と、回転軸41に螺合されるナット42と、回転軸41に固定される固定リング43とを備える。また、回転軸41は、一方の端部がブロック2の内部のリップ幅調節手段収容溝7に収容され、他方の端部がブロック2の外方に突出する長さを有する。ナット42は、外周が多角形状であるものを用いる。また、ナット42は、その外周が、固定リング43と共にスリット6を挟み込みまたは押し開くことが可能な大きさのものを用いる。固定リング43は、回転軸41より大きな外周を有し、ピン44で回転軸41に固定している。固定リング43は、リップ幅調節手段4が回転軸方向(図2(A)に示す矢印M方向)に移動するのを防ぎ、且つ、ナット42と共にスリット6を挟み込みまたは押し開くために、回転軸41より大きな外周とした。
【0031】
図3に示す実施の形態では、回転軸41の一方の端部にナット42が螺合され、このナット42と離間した位置に固定リング43が固定されている。そして、図1,2に示すように、回転軸41は、他方の端部がブロック2から外方に突出している。更に、図2に示す実施の形態のように、リップ幅調節手段4を回転させ易くするために、回転軸41のブロック2から突出した端部にハンドル45を備える構成としても良い。
【0032】
そして、図2(A)に示すように、リップ幅調節手段4は、ナット42と固定リング43との間において、当該回転軸41がスリット6に直交し、且つ回転軸41の一方の端部がブロック2の外方に突出した状態でリップ幅調節手段収容溝7に収容される。
【0033】
再び、リップ幅調節手段収容溝7について詳述する。図4は、リップ幅調節手段を収容するブロックのスリット及びリップ幅調節手段の形状を示す部分断面図である。このリップ幅調節手段収容溝7は、図2及び図4に示すように、リップ幅調節手段4の回転軸41を収容する回転軸収容部71と、ナット42を収容するナット収容部72と、固定リング43を収容する固定リング収容部73,81aとからなる。回転軸収容部71は、リップ幅調節手段4の回転軸41が回転可能であり且つブロック2の長尺方向にスライド移動可能な大きさに形成する。固定リング収容部73は、固定リング43が回転可能であり、且つ、ブロック2の長尺方向にスライド移動可能な大きさに形成する。
【0034】
そして、ナット収容部72は、ナット42の回転が規制され、且つ、ブロック2の長尺方向にスライド移動可能な大きさに形成する。また、ナット収容部72の回転軸方向(図4に示す矢印M方向)の長さは、ナット42の当該回転軸方向への移動可能な領域を規制する長さとする。すなわち、ナット42の回転が規制された状態で、回転軸41を回転し続けることにより、ナット42が回転軸方向(図4に示す矢印M方向)へ移動し、最終的にナット収容部72の側壁72a,72bのいずれかに当接する。このナット収容部72の側壁72a,72bにナット42が当接して作用する力により、スリット6を挟み込む又は押し開くので、ナット収容部72の回転軸方向の長さは、スリット6、リップ幅W及びブロック2の弾性変形量等を考慮した大きさに形成する。
【0035】
リップ幅調節手段4は、リップ幅調節手段収容溝7に収容された状態で回転軸41を回転させると、固定リング43は回転軸41とともに回転する。一方、ナット42は、外周の角部がナット収容部72に当接して、その回転が規制され、回転軸41の回転に伴い回転軸(図2(A)の矢印M方向)に移動する。例えば、図2(A)の矢印C方向から視て、回転軸41を左回転(図2(B)の矢印L方向)に回転させると、ナット42は、スリット6側に移動し、やがて、ナット収容部72のスリット6側の側面72bに当接する。このとき固定リング43の位置は変わらないので、結果として、ナット42と固定リング43との離間距離が小さくなる。その結果、リップ幅調節手段4からブロック2に対し、スリット6を挟み込んでその離間距離を縮める方向の力が作用し、リップ部5のリップ幅Wを広くすることができる。
【0036】
一方、リップ幅調節手段4の回転軸41を右回転(図2(B)の矢印R方向)に回転させると、ナット42は、その回転が規制された状態で平面部21側に移動し、やがて、ナット収容部72の平面部21側の側面72aに当接する。このとき、ナット42と固定リング43との離間距離が大きくなる。その結果、リップ幅調節手段4からブロック2に対し、スリット6を押し開く方向の力が作用して、リップ部5のリップ幅Wを小さくすることができる。
【0037】
本件発明では、スリット6を挟むように固定リング43とナット42とを配置し、ナット42を回転軸41の回転により、回転軸方向に移動させることにより、ナット42及び固定リング43でスリット6に直交する方向からスリット6を挟み込み又は押し開く力を作用させることができれば良い。したがって、ナット42及び固定リング43は、スリット6を挟む位置に配置すれば良く、図2及び図3に示した実施の形態では、平面部21とスリット6との間にナット42を配置し、スリット6とブロック2の外側面23との間に固定リング43を配置した。この他、平面部21とスリット6との間に固定リングを配置し、スリット6とブロック2の外側面23との間にナットを配置しても良い。両者を比べると、図2に示すように、平面部21とスリット6との間にナット42を配置する形態の方が、ブロック2の平面部21とスリット6との間の部分に、直接的な力が作用しやすく、リップ部5におけるリップ幅Wの調整の精度が高いので、好ましい。
【0038】
そして、図1に示すように、長尺なブロックを備えるコーティングダイの場合、リップ幅調節手段を複数用いれば、所望の位置に配置して、各所において、リップ幅Wを微調整することができる。なお、本件発明は、長尺なブロックを備えるものに限らず適用可能であり、任意の数のリップ幅調節手段を用いて、任意の位置のリップ幅を微調整できるものである。そして、図1に示すように、リップ幅調節手段は、回転軸41の一端部がブロック2から突出して配置されるので、リップ幅Wの微調整の際の作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本件発明に係るコーティングダイは、リップ幅調節手段を用いて、塗膜の吐出状態を微調整する作業を容易にでき、且つ、リップ幅調節手段を任意の位置に配置できるので、塗工領域が広く、且つ均一な塗工が求められるコーティングダイの分野、押出ラミネート用Tダイ等の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・コーティングダイ
2,3・・・ブロック
4・・・リップ幅調節手段
5・・・リップ部
6・・・スリット
7・・・リップ幅調節手段収容溝
8・・・補助ブロック
24,34・・・傾斜面
35・・・・凹部
41・・・回転軸
42・・・ナット
43・・・固定リング
81・・・第二リップ幅調節手段収容部
W・・・リップ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部を有する一対のブロックを、当該平面部同士を対向させるとともに離間配置して構成し、当該離間配置した平面部同士の間を通過した塗液を吐出させるリップ部と、当該一対のブロックの平面部同士の離間距離であるリップ幅を調節するリップ幅調節手段とを備え、当該リップ幅調節手段により、当該リップ幅を調節して塗液の吐出状態を制御するコーティングダイであって、
リップ幅調節手段は、回転軸と、当該回転軸に螺合するナットと、当該回転軸より大きな外周を有する固定リングとを備え、
当該一対のブロックのうちの少なくとも一方は、リップ部側の面からブロックの内部へ向けて当該ブロックの平面部と略平行に形成されるスリットと、当該スリットと交差し、リップ幅調節手段の回転軸方向における断面形状に沿って形成されたリップ幅調節手段収容溝とを備え、
当該リップ幅調節手段は、ナットと固定リングとの間において、当該回転軸がスリットに直交し、且つ回転軸の一方の端部がブロックの外方に突出した状態でリップ幅調節手段収容溝に収容され、
当該リップ幅調節手段の回転軸を回転させることにより、リップ幅調節手段収容溝において、スリットに直交する方向からナット及び固定リングでスリットを挟み込み又は押し開く力を作用させてリップ幅を調節可能とすることを特徴とするコーティングダイ。
【請求項2】
前記一対のブロックのうち、少なくともリップ幅調節手段を配置するブロックは、当該リップ部へ向けて当該ブロックの厚さが薄くなる傾斜面を備える形状である請求項1に記載のコーティングダイ。
【請求項3】
前記リップ幅調節手段に備えるナットは、前記スリットと前記平面部との間に配置する請求項1又は請求項2に記載のコーティングダイ。
【請求項4】
前記一対のブロックは長尺な部材であり、前記スリット及びリップ幅調節手段収容溝は当該ブロックの長さ方向の略全幅に渡って形成され、
前記リップ幅調節手段は、当該リップ幅調節手段収容溝上をスライド移動させて、任意の位置に配置してリップ幅を調節する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコーティングダイ。
【請求項5】
前記リップ幅調節手段は、前記リップ幅調節手段収容溝に2つ以上配置される請求項4に記載のコーティングダイ。
【請求項6】
前記リップ幅調節手段を配置するブロックは、ブロック本体と、前記傾斜面側から前記リップ幅調節手段の固定リングを含む一部を覆い、且つ、ブロック本体と離間配置して前記スリットの一部を形成するように配置する補助ブロックとを備え、
当該補助ブロックは、リップ幅調節手段を覆う部分の断面形状に沿って形成された第二リップ幅調節手段収容部を形成した請求項4又は請求項5に記載のコーティングダイ。
【請求項7】
前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックの平面部に、マニホールドとして機能する凹部を設け、当該凹部は、前記平面部同士の間を通過する塗液の流出圧力の調整を行うものである請求項1〜請求項6のいずれかに記載のコーティングダイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194291(P2011−194291A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61835(P2010−61835)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591136883)株式会社城北精工所 (3)
【Fターム(参考)】