説明

コーティング層が付与されたフィルム、偏光子保護フィルム、及び、それを用いてなる偏光板

【課題】傷付き防止、蛍光灯等の映りこみ防止などのためフィルム表面にコーティングを施す方法が検討されているが、フィルムの破れや白化等の不具合やコーティング層の密着性が悪いなどの課題がある。
【解決手段】グルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であり、イミド化率が0.5〜5.0%、酸価が0.10〜0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有するコーティング積層フィルムにより、上記課題が解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミド樹脂からなる、コーティング層を有するフィルムに関するものであり、更に詳しくは、イミド化されたアクリル系樹脂フィルムに、コーティング層が付与された偏光子保護フィルム、及び、その偏光子保護フィルムを用いてなる偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、ワードプロセッサ、携帯電話、携帯情報端末等に代表されるように、近年、電子機器はますます小型化している。上記例示した電子機器のように表示装置を備える電子機器では、軽量かつコンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
これら液晶表示装置には、その表示品位を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられている。さらに、これら液晶表示装置では、携帯情報端末や携帯電話向けに、該液晶表示装置をさらに軽量化するため、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムまたはシート(以下、特別に記載しない限り、シートおよびフィルムの区別は行わず、フィルムと記載する)を用いた液晶表示装置も実用化されている。
【0004】
この場合、上記樹脂フィルムは、偏光を扱うため、光学的に透明であり、かつ複屈折が小さく、さらに、光学的に均質であることが求められる。つまり、液晶表示装置において、ガラス基板の代わりに用いられる樹脂フィルムには、複屈折と厚みとの積で表される位相差が小さいことが要求されることに加えて、外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくいことが要求される。
【0005】
また、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種撮影装置、CDやDVD等の光ピックアップ装置、プロジェクター等のOA機器等では、従来ガラスレンズが用いられていた。しかし、近年、これらの機器に用いられるレンズは、軽量化を目的として、樹脂レンズへの置き換えが進んでいる。
【0006】
このような樹脂レンズは、温度や湿気等の使用環境による歪みによる焦点距離のズレの発生や射出成形等の加工時の応力発生等による位相差の影響を受けやすい。そのため、樹脂レンズにおいても、液晶表示装置等に用いられる樹脂フィルムと同様に、外部応力により位相差が変化しにくいことが要求されている。
【0007】
ところで、液晶表示装置においては、上記樹脂フィルムとして、非晶性の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが好適に用いられている。より具体的には、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のエンジニアリングプラスチックスや、トリアセチルセルロース等のセルロース類のプラスチックからなる樹脂フィルムを挙げることをできる。この中で、トリアセチルセルロースからなる樹脂フィルムが液晶表示装置に用いられる偏光板の中で偏光子保護フィルムとして多数開示されているが、トリアセチルセルロースフィルムは透湿性が高く、偏光子に使用される二色性色素が含浸されたポリビニルアルコールが水により溶解するため、液晶表示装置としての能力が大きく低下するという課題がある。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムも多数開示されているが、蛍光灯から発する紫外線に対しての劣化が著しいなど、偏光子保護フィルムとしての耐久性が低いため、当該樹脂フィルムを用いた液晶表示装置は、その寿命が短く、そのため廃棄物が大量に発生するなど、環境に対する負荷が大きいという課題がある。
【0008】
さらに、偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられことがあるが、この場合、例えば、テレビやパソコンのように、表面に触れられたり、硬いものと接触した場合に、傷が付きやすくなるのを防止するため、あるいは、室内で使用される場合の蛍光灯等の映りこみを防止するため、また、液晶パネルの弱点である横側から見た場合に色が反転する、いわゆる視野角が低いという問題を解決するため、偏光子保護フィルムの表面にコーティングを施す方法が検討されている。また、傷付き防止の観点から、テレビやパソコンなど、パネル自身が透明保護材(ガラスや透明プラスチック板)で保護されていないような剥き出しの場合、傷付きを改善するために偏光子保護フィルムの表面にハードコート層をコーティングする方法が検討されている。しかしながら、その際、偏光子保護フィルムとしてトリアセチルセルロース樹脂を用いた場合、耐溶剤性が悪く、さらに、低沸点の溶剤を用いてコーティング塗工した場合には、フィルムが破れる等の不具合が起こる。これを改善するため、特許文献1、特許文献2、特許文献3では、メチルイソブチルケトン(MIBK)のような高沸点溶剤が用いられている。しかし、高沸点溶剤は、塗工後の乾燥性が悪く、生産性の低下を引き起こす。さらに、特許文献4では、偏光板のアンカー層の目的で、アクリル系樹脂フィルムにMIBKで希釈したものが用いられているが、アクリル系樹脂に対しては、アンカー効果が不十分である。さらに、環状ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムはアンカー効果が得られず、コーティング層が貼り付かないという欠点がある。
【0009】
反射防止を目的としたコーティングも、特許文献5や特許文献6で開示されている。特許文献5の実施例にはトリアセチルセルロース樹脂フィルムにメチルエチルケトン(MEK)を用いたコーティング剤が開示されているが、この方法であると、アンカー効果は良くなるものの乾燥に時間がかかり、トリアセチルセルロースフィルムが破れやすいという問題がある。特許文献6には、トリアセチルセルロースフィルムにイソプロパノールを主成分とする塗工剤が開示されているが、アンカー効果が得られず、密着性が不十分である。
【0010】
さらに、視野角を改善する方法として、特許文献7や特許文献8が開示されている。これらの方法であると、確かに高視野角のフィルムを得ることができるが、実施例のアクリル系樹脂では耐熱性が低く、熱による寸法変化による位相差変動が大きいなどの液晶表示装置としての寿命が低いという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO06/106758号公報
【特許文献2】特開2006−221188号公報
【特許文献3】特開2002−116323号公報
【特許文献4】特開2008−58768号公報
【特許文献5】特開2003−139904号公報
【特許文献6】特開2006−256310号公報
【特許文献7】特開2002−139623号公報
【特許文献8】特開2002−107541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、透湿性に優れ偏光子の劣化を抑制することができ、コーティング時のフィルムの破れや白化等がなく、コーティング層の密着性に優れたコーティング積層フィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のアクリル系樹脂に溶剤を使用した希釈剤を用いたコーティングにより、課題が解決できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下に関する。
(i)下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であり、イミド化率が2.5〜5.0%、酸価が0.10〜0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有するコーティング積層フィルム。
【0014】
【化1】

【0015】
(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
(ii)厚みが10〜300μmの範囲であることを特徴とする(i)記載のコーティング積層フィルム。
【0016】
(iii)コーティング層がハードコート層であることを特徴とする(i)または(ii)に記載のコーティング積層フィルム。
【0017】
(iv)ハードコート層の形成材料がウレタンアクリレートを含むことを特徴とするに(iii)記載のコーティング積層フィルム。
【0018】
(v)(i)〜(iv)のいずれか1項に記載のコーティング積層フィルムを含有することを特徴とする光学用フィルム。
【0019】
(vi)(v)に記載の光学フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
【0020】
(vii)(v)に記載の光学フィルムを用いてなることを特徴とする位相差フィルム。
【0021】
(viii)(vi)に記載の偏光子保護フィルムおよび/または(vii)に記載の位相差フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、イミド化された単位を含むアクリル樹脂に溶剤で希釈されたコーティング剤を塗工することによって、透湿性に優れ偏光子の劣化を抑制することができる上に、コーティング時にフィルムの破れ等がなく、コーティング層の密着性に優れたコーティング積層フィルム、及び、それを用いた偏光板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明のイミド樹脂は、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であって、その製造方法は、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融し、ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部のイミド化剤で処理する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
【化2】

【0025】
(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
まず、メタクリル酸メチルを重合させることにより、ポリメタクリル酸メチル樹脂を製造する。
【0026】
この工程において、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなども併用しても良いが、アクリル酸エステル単位は1重量%未満である。アクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0027】
また上記モノマー以外にも、スチレン、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合することも可能である。
【0028】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂の構造は、特に限定されるものではなく、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
【0029】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
【0030】
重合方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法などの公知の方法が用いられる。樹脂中の不純物が少なく、生産性の高い塊状重合が好ましく用いられる。
次に、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融して、イミド化剤で処理する。
【0031】
加熱溶融し、イミド化剤と処理する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂をイミド化することができる。
【0032】
押出機を用いて加熱溶融し、イミド化剤と処理する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0033】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、ポリメタクリル酸メチル樹脂に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
【0034】
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
【0035】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008−273140に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜270℃にて行うことが好ましく、さらに200〜250℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が270℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるイミド化樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
【0036】
また、上記イミド樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0037】
上記イミド樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
【0038】
具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
【0039】
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
【0040】
上説したような方法によれば、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸あるいはカルボン酸無水物単位の比率が所望に制御されたイミド樹脂を容易に製造することができる。
【0041】
イミド化剤は、特に限定されるものではなく、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであればよい。具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
【0042】
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0043】
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0044】
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
【0045】
このイミド化の工程において、イミド化剤はポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、0.5〜6重量部であることがより好ましい。イミド化剤の添加量が0.5重量部を下回ると最終的に得られる樹脂組成物のイミド化率が低くなるためその耐熱性が著しく低下し、成形後の外観欠陥を誘発することがある。また、10重量部を上回ると、樹脂中にイミド化剤が残存し、成形後の外観欠陥や発泡を誘発することがある。
【0046】
本発明の製造方法では、上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。
【0047】
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0048】
エステル化剤の添加量としては、特に制限はなく、イミド樹脂の酸価が所望の値になるように設定される。
【0049】
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
【0050】
本発明のイミド樹脂は、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するするイミド樹脂であり、特定のイミド化率、酸価、アクリル酸エステル単位含有量であることを特徴とする。
【0051】
【化3】

【0052】
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基であることがより好ましい。
【0053】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0054】
上記イミド樹脂におけるイミド化率は、グルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位との比で表される。この比は、例えば、イミド樹脂のNMRスペクトル、IRスペクトル、あるいはその他方法により測定することが可能であるが、本発明のイミド化率はH−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂のH−NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CHプロトン由来のピーク面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CHプロトン由来のピークの面積Bより、次式で求めた。
【0055】
Im%=B/(A+B)×100
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
上記イミド化率は、2.5〜5.0%とすることが必要であり、2.5%〜4.5%とすることが好ましく、3.0〜4.5%とすることがさらに好ましい。
【0056】
イミド化率が上記範囲内であれば、得られるイミド樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりすることがない。
【0057】
一方、イミド化率が上記範囲より少ないと、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に脆くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0058】
本発明のイミド樹脂の酸価は、イミド樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えばWO2005−054311に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0059】
上記イミド樹脂の酸価は、0.10〜0.50mmol/gであることが必要であり、0.15〜0.45mmol/gであることが好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたイミド樹脂を得ることができる。
【0060】
一方、例えば、酸価が上記範囲より大きいと、溶融押出時の樹脂の発泡が起こりやすくなり、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。酸価が上記範囲より小さいと、当該酸価に調整するための変性剤をより多く費やす必要があるため、コストアップになったり、変性剤の残存によるゲル状物の発生を誘発することがあるため好ましくない。
本発明のイミド樹脂の酸価は、イミド樹脂中のカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えば特開2005−23272号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
本発明のグルタルイミド樹脂に含まれるアクリル酸エステル単位は1重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満である。
アクリル酸エステル単位が上記範囲内であれば、イミド樹脂は熱安定性に優れたものになるが、上記範囲を超えると熱安定性が悪くなり、樹脂製造時あるいは成形加工時に樹脂の分子量や粘度低下が低下して物性が悪化する傾向がある。
上記イミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸もしくはカルボン酸無水物単位、アクリル酸エステル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
【0061】
その他の単位としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
【0062】
これらのその他の単位は、上記イミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0063】
上記イミド樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×10〜5×10であることが好ましく、5×10〜2×10であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
【0064】
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0065】
また、上記イミド樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。この範囲を下回ると、成形体やフィルムにした場合の耐熱性が劣るため、高温時の物性変化が大きくなり、適用範囲が狭くなる。例えば、光学用途に使用される場合には、ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、成形体もしくはフィルムに高温環境下でゆがみなどが生じ易く、安定した光学的特性が得られない傾向があり、好ましくない。
【0066】
本発明にかかるイミド樹脂は、上説した構成を有するため、溶融押出法によりフィルムに成形する際、成形機のロール等の汚染を低減し、フィルム欠陥の発生を防止することができる。つまり、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物によれば、溶融押出法によるフィルム成形によっても、成形機のロール等を汚染することなく、フィルム欠陥の少ないフィルムを製造することができる。
【0067】
したがって、本発明には、本発明にかかるイミド樹脂を成形してなるフィルムも含まれる。
【0068】
このように、本発明にかかるイミド樹脂によれば、光学用フィルムとして利用可能なフィルムを製造することができる。つまり、本発明にかかるフィルムの好ましい一実施形態として、本発明にかかるイミド樹脂を成形してなる光学用フィルムを挙げることができる。そこで、以下、本発明の一実施形態としては、本発明にかかる光学用フィルムについて、説明するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明にかかるフィルムは、本発明にかかるイミド樹脂を成形してなるフィルムであれば、いかなる用途に用いられるフィルムであってもよい。
【0069】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説した本発明にかかるイミド樹脂を成形してなるものであればよいが、延伸されたフィルム、すなわち、延伸フィルムであることが好ましい。
【0070】
延伸フィルムによれば、機械的特性を向上させることができる。従来、延伸フィルムでは、位相差の発生を避けることが困難であったが、本発明にかかるイミド樹脂によれば、延伸処理を施しても位相差が実質的に発生させずに、機械的特性が向上した延伸フィルムを製造することができる。
【0071】
なお、本発明にかかる光学用フィルムが延伸フィルムである場合、一軸延伸した一軸延伸フィルムであってもよいし、さらに延伸工程を組み合わせて行って得られる二軸延伸フィルムであってもよい。
【0072】
本発明にかかる光学用フィルムが延伸フィルムである場合、その厚みは、10〜300μmであり、20〜250μmであることが好ましく、25〜150μmであることがより好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましい。
【0073】
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
【0074】
一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、延伸倍率が過大になり、ヘーズが悪化する傾向がある。
【0075】
本発明にかかる光学用フィルムは、ヘーズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明にかかる光学フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0077】
本発明にかかる光学用フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
【0078】
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0079】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。
【0080】
より具体的には、面内位相差は原料フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。また、面内位相差は延伸フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
また、厚み方向位相差は原料フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差は延伸フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0082】
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる光学用フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる。
【0083】
一方、フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差が50nmを超えたりすると、本発明にかかる光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルムを、液晶表示装置の偏光板として用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
本明細書では、説明の便宜上、本発明にかかるイミド樹脂をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原料フィルム」と称する。なお、該原料フィルムもまた、本発明にかかるフィルムの一実施形態であることを付言しておく。
【0084】
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。つまり、3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。
【0085】
Re=(nx−ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
【0086】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、配向複屈折の値が、0〜0.1×10−3であることが好ましく、0〜0.01×10−3であることがより好ましい。
【0087】
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
【0088】
なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「配向複屈折」とは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、前述のnx、nyを用いて説明すると、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
【0089】
本発明にかかる光学用フィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10−12/N以下であることが好ましく、10×10−12/N以下であることがより好ましく、5×10−12/N以下であることがさらに好ましい。
【0090】
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0091】
一方、光弾性係数の絶対値が20×10−12/Nより大きいと、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
【0092】
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
【0093】
c=△n/△F
ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
【0094】
本発明にかかる光学用フィルムは、表面処理が施されていることが特徴である。具体的には、例えば、本発明にかかる光学用フィルムを、表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明にかかる光学用フィルムに表面処理を施すことが好ましい。
【0095】
このような表面処理を施すことにより、本発明にかかる光学用フィルムと、コーティングまたはラミネートされる別のフィルムとの間の相互の密着性を向上させることができる。
【0096】
なお、本発明にかかる光学用フィルムに対する表面処理の目的は、作用効果を目的とするものに限定されるものではない。つまり、本発明にかかる光学用フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。
【0097】
上記表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理であることが好ましい。
【0098】
また、本発明にかかるイミド樹脂によれば、上記化学式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位の組成比を変更することにより、位相差の大きなフィルムを製造することができる。つまり、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、位相差フィルム等の光学補償フィルムの製造に好適に用いることができる。
【0099】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したような特性を有するため、そのまま最終製品として各種用途に用いることができる。また、上説したような各種加工を施すことにより、用途の幅を広げることができる。
【0100】
本発明にかかる光学用フィルムの用途は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。
【0101】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
【0102】
また、本発明の光学用フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【0103】
ここで、本発明にかかるフィルムを製造する方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明にかかるイミド樹脂を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0104】
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形等を挙げることができる。
【0105】
また、本発明にかかるイミド樹脂を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本発明にかかるフィルムを製造することができる。
【0106】
中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0107】
また、本発明にかかるイミド樹脂を用いるため、Tダイ製膜を用いるような高温での成形条件下でも、紫外線吸収剤の飛散による成形機の汚染やフィルム欠陥を発生させることなく、フィルムを製造することができる。
【0108】
以下、本発明にかかるフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明にかかるイミド樹脂を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
【0109】
本発明にかかるイミド樹脂を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明にかかるイミド樹脂を、押出機に供給し、該イミド樹脂を加熱溶融させる。
【0110】
イミド樹脂は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0111】
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明にかかるイミド樹脂)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
【0112】
次に、押出機内で加熱溶融されたイミド樹脂を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、イミド樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0113】
次に、Tダイに供給されたイミド樹脂を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜する。
【0114】
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
【0115】
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
【0116】
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
【0117】
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、成膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
【0118】
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで成膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原料フィルムを一旦取得する。その後、該原料フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
【0119】
より具体的に説明すると、厚み40μmの光学用フィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原料フィルムを取得する。その後、該原料フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
【0120】
このように、本発明にかかるフィルムが延伸フィルムである場合、本発明にかかるイミド樹脂を一旦、未延伸状態の原料フィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。
【0121】
原料フィルムを延伸する場合、原料フィルムを成形後、直ちに、該原料フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原料フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原料フィルムの延伸を行ってもよい。
【0122】
なお、原料フィルムに成形後、直ちに該原料フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原料フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間的)しか存在しないことがありうる。
【0123】
また、上記原料フィルムは、その後、延伸される場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原料フィルムは、完成品であるフィルムとしての性能を有していなくてもよい。
【0124】
原料フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
【0125】
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
【0126】
原料フィルムを延伸するとき、原料フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
【0127】
上記範囲内で予熱することにより、原料フィルムの厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
【0128】
一方、原料フィルムの予熱温度が高すぎると、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原料フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原料フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
【0129】
なお、本発明にかかるイミド樹脂は、原料フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られる光学用フィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
【0130】
原料フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。
【0131】
一般的には、DSC法によって求めた原料フィルムのガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。
【0132】
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
【0133】
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
【0134】
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムのヘーズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
【0135】
上記原料フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
【0136】
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロであり、さらに、ヘーズが1%以下である延伸フィルムを製造することができる。
【0137】
また、本発明にかかるイミド樹脂において、イミド樹脂と紫外線吸収剤との混合割合を上説した範囲で調整し、適切な延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じさせることなく、かつ、ヘーズの増大を実質的に伴うことなく、厚みムラの小さなフィルムを容易に製造することができる。
【0138】
本発明は、本発明にかかるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有することを特徴とする。該コーティング層を形成する方法は、具体的には、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させたりする方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0139】
なお、表面処理の種類については、上説した通りである。また、本発明にかかるフィルムにおいて、表面処理を施す場合、その表面処理の程度は特に限定されるものではないが、50dyn/cm以上であることが好ましく、50dyn/cm〜80dyn/cm以下であることがより好ましい。
【0140】
このような程度の表面処理であれば、従来公知の表面処理設備を用いて表面処理を施すことができる。例えば、バーコーター法、ダイコーター法、グラビア法、マイクログラビア法等が挙げられる。使用する塗工液の粘度や塗工する厚みにより公的な方法を選択することができる。
【0141】
上説のハードコート層として、フッ素含有多官能性オリゴマー、シリコン含有多官能性オリゴマー、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー等が挙げられるが、コストや扱いやすさの面から、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマーが好ましく用いられる。
【0142】
表面処理に用いる希釈用の溶剤は、特に限定されるものではないが、酢酸エチル、トルエン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、アセトン、塩化メチレン、クロロホルムのいずれか1種、又は、2種以上の混合物であることが好ましい。これら以外の溶剤では、コーティング層の密着性が低下したり、フィルムの破れ等が発生したりする傾向がある。
【0143】
乾燥温度は、使用する溶剤の沸点に合わせて調整すれば問題なく、公知の乾燥炉や乾燥オーブンを使用しても差し支えない。沸点の高い溶剤は、乾燥温度が高くなり、フィルムが溶融してしまうので好ましくない。
【0144】
コーティング層の硬化の方法も特に限定されるものではなく、公知の熱硬化法、紫外線照射法、電子線照射法、吸湿硬化法等が挙げられる。特に、汎用性、生産性、コストの面から、紫外線照射法が好ましく用いられる。
【0145】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0146】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0147】
(TGA測定)
熱重量測定装置(TGA−50;株式会社 島津製作所)を用いて、窒素気流下(流量50mL/min)で、昇温速度10℃/minとして、開放型アルミニウムパン上で試料を加熱し、温度が100℃に達した際の重量を100%とした。そして、さらに、温度を上昇させ、重量が1%減少したときの温度を1%重量減少温度(TGA)とした。
【0148】
(イミド化率の算出)
H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂のH−NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CHプロトン由来のピーク面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CHプロトン由来のピークの面積Bより、次式で求めた。
【0149】
Im%=B/(A+B)×100
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
(スチレン量の算出)
原料MS樹脂(約10mg)を重クロロホルム(約4mL)に溶解し、その溶液をVarian社製NMR測定装置Gemini−300を用いて、H−NMRスペクトルを測定した。
【0150】
得られたH−NMRスペクトルより、δ=7.4〜6.8におけるスチレンユニットの芳香族由来のプロトンと、δ=3.8〜2.2におけるメタクリル酸メチルユニットのエステルに帰属されるプロトンの積分強度比から、スチレン量を決定した。
【0151】
(ガラス転移温度)
生成物10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
【0152】
(ヘーズ測定)
JIS K 7136記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
【0153】
(全光線透過率測定)
JIS K 7361−1記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
【0154】
(面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth測定)
フィルムから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で面内位相差Reを測定した。
【0155】
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、および、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nm、面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nz、を求め、厚み方向位相差 Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d (||は絶対値を表す)を計算した。
(酸価測定)
樹脂0.3gを塩化メチレン37.5mLに溶解し、さらにメタノール37.5mLを加えた。次に0.1mmol%の水酸化ナトリウム水溶液5mLとフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加えた。次に0.1mmol%の塩酸を用いて逆滴定を行い、中和に要する塩酸の量から酸価を求めた。
【0156】
コーティングフィルムの性能は、次の方法で求めた。
(塗工性能)
溶剤を含んだ塗工剤を塗工する際にフィルムの破れ、白化を目視にて次の観点で評価した。
○:破れ、白化なし
×:破れ、又は、白化が認められる
(鉛筆硬度)
荷重量を4.9Nとし、JIS K 5400−5−4に準拠して測定した。また、その際の基材の破れを目視にて次の観点から評価した。
○:破れなし
×:破れあり
(密着性)
JIS G 3312に準拠し、スリットによる碁盤目試験を実施した。基材フィルムを傷つけないように、スリット板を用いて、120mm×120mmの1mm間隔の10×10マスの計100マス中の剥離した個数を数値で表記した。単位は、個/100個。基材フィルムまで裂ける場合は、×と表記した。
(偏光板の劣化)
http://www.asahi−net.or.jp/〜uu9m−hrt/henkou/henkouban.htmに記載される「偏光に関する教材と偏光板(フィルム)の製作」(大阪府教育センター理科第一室 平田允著)に準拠して偏光子を作成し、偏光子保護フィルムを貼合わせ、80゜C、95%RHの環境下に2000時間放置した。放置後の偏光板の色調を目視にて次の観点で判定した。
○:2000時間しても、変化が見られない。
△:2000時間後には、若干偏光子の色が褪せている。
×:2000時間後には、偏光子に色がないか、又は、偏光子の基材(ポリビニルアルコール)が消失している。
(製造例1)
押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いて、樹脂を製造した。タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機(1)、第2押出機(2)共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機原料供給口に原料樹脂を供給した。又、第1押出機、第2押出機に於ける各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極める為に、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機に関して、原料の樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
第2押出機に関して、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.8部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物のイミド化率は3.7%、酸価は0.29mmol/gであった。
このペレット状の樹脂組成物を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて270℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み130μmのフィルムを得た。
このフィルムについて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より10℃ 高い温度で同時二軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置 X4HD)を行ない、二軸延伸フィルムを作製した。
この二軸延伸フィルムの面内位相差は0.1nm、厚み方向位相差は3.4nmであった。
(実施例1)
ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品であるUV−1700B(日本合成化学社製)を33%の濃度で酢酸エチルに溶解し、UV−1700Bを100重量部に対して、イルガキュア184(チバ社製、光重合開始剤)5部を添加し溶解し、塗工液(a)を得た。製造例1で得た二軸延伸フィルム(A)をA4サイズにカットして静置し、その上にバーコーター#6を用い、濡れベースで15μm厚さで塗工液(a)を塗工した。当該コーティングフィルムを90゜Cに調整した乾燥オーブンの中に1分間放置し、溶剤を乾燥させた。メタルハライドランプを擁した紫外線照射機を用い、この乾燥品を300mJ/cm2の照射エネルギーで光硬化させ、コーティング層が5μmのコーティングフィルム(B−1)を得た。得られたコーティングフィルム(B−1)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。
(実施例2)
塗工液を市販品であるカヤノーバFOP−4000(日本化薬社製、コーティング用塗工液、トルエン、2−ブタノン含有50%溶液)を使った以外は、実施例1と同様の方法とし、コーティング層が7.5μmのコーティングフィルム(B−2)を得た。得られたコーティングフィルム(B−2)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。
(比較例1)
樹脂フィルムを厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムであるKC4UY(コニカミノルタオプト社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗工し、コーティング層が5μmのコーティングフィルム(B−3)を得た。得られたコーティングフィルム(B−3)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。
(比較例2)
樹脂フィルムを厚さ40μmのアクリル樹脂系フィルムであるサンデュレン014NRT(カネカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗工し、コーティング層が5μmのコーティングフィルム(B−4)を得た。得られたコーティングフィルム(B−4)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。
(比較例3)
樹脂フィルムを厚さ50μmのポリエチレンシート(東海ポリエチ工業所製)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で塗工し、コーティング層が7.5μmのコーティングフィルム(B−5)を得た。得られたコーティングフィルム(B−5)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。
【0157】
【表1】

【0158】
表1から、本発明のコーティングフィルムは、表面硬度に優れ、基材フィルムとの密着性が良好で、偏光板の劣化を抑制していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であり、イミド化率が2.5〜5.0%、酸価が0.10〜0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有することを特徴とするコーティング積層フィルム。
【化1】

(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項2】
厚みが10〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のコーティング積層フィルム。
【請求項3】
コーティング層がハードコート層である請求項1または2記載のコーティング積層フィルム。
【請求項4】
ハードコート層の形成材料がウレタンアクリレートを含むことを特徴とする請求項3に記載のコーティング積層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング積層フィルムを含有することを特徴とする光学用フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の光学フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載の光学フィルムを用いてなることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項8】
請求項6に記載の偏光子保護フィルムおよび/または請求項7に記載の位相差フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。

【公開番号】特開2010−284840(P2010−284840A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139180(P2009−139180)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】