コーティング用モケット地
【課題】紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装でき、繊維屑も発生しないコーティング用モケット地を提供する。
【解決手段】本発明のコーティング用モケット地(10)は、地組織(4)の表面にパイル糸(5)が立毛し、裏面にはバッキング層(7)が形成されており、パイル糸(5)はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛している。このモケット地は、長繊維からなるポリエステルマルチフィラメント加工糸を使用しているため、塗装の際に繊維屑が発生するおそれはなく、粘度の高い塗料であっても塗装できる。モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛等の塗装具に好適である。
【解決手段】本発明のコーティング用モケット地(10)は、地組織(4)の表面にパイル糸(5)が立毛し、裏面にはバッキング層(7)が形成されており、パイル糸(5)はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛している。このモケット地は、長繊維からなるポリエステルマルチフィラメント加工糸を使用しているため、塗装の際に繊維屑が発生するおそれはなく、粘度の高い塗料であっても塗装できる。モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛等の塗装具に好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の床面を塗装したり掃除するためのコーティング用モケット地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からモップの先端にペーパーや布を固定し、床面を擦ることにより、床面の拭き掃除やワックス掛けを行っていた。また、塗料を塗装するために、一般的にはペイントローラー、コテ刷毛、スプレーといった手段が使用される。近年、パイル地を使用した塗装具が特許文献1〜2に開示されている。しかし、これらのパイル地は、単繊維状態にまで毛割りしているため、塗料を多量に含みすぎ、塗料を均一に塗ることができず、不具合があった。とくに、近年高級床面として木製の床面に紫外線硬化塗料を塗ることが広がりつつあるが、この塗料を使用する場合には、均一な塗装と、カスレという欠点の出ない塗装が要求される。従来、このように要請を満足する塗装具は提案されてこなかった。
【特許文献1】特開2002−302863号公報
【特許文献2】特開2005−113315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装でき、繊維屑も発生しないコーティング用モケット地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のコーティング用モケット地は、地組織の表面にパイル糸が立毛し、裏面にはバッキング層が形成されているコーティング用モケット地であって、前記パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコーティング用モケット地は、パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることにより、使用時においても立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できる。また、裏面にバッキング層が形成され、かつパイル糸は長繊維からなるポリエステルマルチフィラメント加工糸であるため、塗装の際に繊維屑が発生するおそれはない。このため、粘度の高い塗料であっても塗装できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のコーティング用モケット地は、地組織が上下2面に形成され、この地組織間にパイル糸が接結され、パイル糸の中間部を切断することにより、2枚のパイル織物を形成する。これにより、地組織の一表面にパイル糸が立毛しているモケット地となる。パイル糸は、長繊維であるポリエステルマルチフィラメント加工糸に実撚を掛け、ヒートセットして撚りを熱固定しておく。ヒートセットは100℃以上のスチームを使用するのが好ましい。これにより実撚は熱固定され、モケット地となっても実撚は残った状態となる。また、長繊維であるポリエステルマルチフィラメント加工糸を使用しているので、塗料などが付着し、引っ張られても繊維屑は発生しない。
【0007】
パイル糸の実撚数は、ポリエステルマルチフィラメント加工糸の繊度にもよるが、1〜4回/10mmの範囲であることが好ましい。ポリエステルマルチフィラメント加工糸1本のトータル繊度は、1111〜2222dtex(1000〜2000デニール)が好ましい。
【0008】
パイル糸の立毛長さは、3〜20mmの範囲が好ましい。さらに好ましくは5〜15mmであり、特に7〜13mmが好ましい。パイル長が前記の範囲であれば、紫外線硬化塗料を塗布する場合、塗料を適度に含み、当業界でいうカスレ欠点の出ない均一な塗装ができる。その上、掃除やワックス塗りなどのモップ作業も好適にできる。もちろん、一般の塗料を塗布するにも有用である。
【0009】
前記地組織は、例えば平組織とし、パイル糸を地組織の糸にU字形又はW字形に絡ませるのが好ましい。
【0010】
地組織の裏面は、パイル糸が抜けないように、バッキング剤である樹脂を塗布したバッキング層を形成する。バッキング樹脂としては、例えば熱硬化性又は光硬化性アクリル樹脂があり、アクリル樹脂と架橋剤を混合して塗布し、加熱又は光を照射して架橋させる。塗布量は90〜120g/m2が好ましい。
【0011】
本発明のコーティング用モケット地は、例えば矩形であり、大面積で使用する場合は、地組織の周囲はかがり糸でオーバーロック縫いすることが好ましい。これにより、地組織の端面から繊維屑などの発生も押さえられる。また、塗装面を傷つけることもない。
【0012】
前記モケット地は、モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛用等に有用である。モップ塗りは主に床面を塗装する際に使用し、一回に広い面を塗装できる。コテ塗りはモップ塗りよりは狭い面積を塗装する際に使用する。布刷毛はさらに狭い範囲を塗装するのに使用する。本発明のモケット地は、これ以外の塗装具にも使用できる。
【0013】
次に図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の断面図である。このモップ用モケット地10は、経糸1,3と緯糸2で構成される例えば平組織の織物で地組織4が形成されている。地組織4の一表面にはパイル糸5が立毛している。パイル糸5はポリエステルマルチフィラメント加工糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛している。パイル糸5は図1の例では地組織にW字状に絡んで固定されている。図1においてパイル糸5は太線と細線の2種類で示されているが、糸の動きを説明するために示しているだけであり、単一のパイル糸であっても良い。地組織4の裏面には、樹脂又はエラストマーなどのバッキング層7を形成する。これにより、毛抜けを防ぐために好ましい。パイル糸5は全体として立毛6を形成している。
【0014】
図2は、本発明の一実施例におけるモップ用モケット地10の斜視図である。地組織4の一表面にはパイル糸5が立毛しており、地組織の周囲はかがり糸8でオーバーロック縫いされている
図3は本発明の一実施例におけるモップ20の上面から見た斜視図、図4は同下から見た斜視図である。モップ20は柄11とプレート12からなり、プレート12の裏面に設けられた取り付け具13,14にモップ用モケット10を取り付け、塗装に使用したり、掃除に使用する。
【0015】
図5は本発明の別の実施例におけるコテ塗り用器具30にモケット地31を装着した斜視図である。このモケット地31の地組織の周囲はカッターで切断し、繊維屑を除いてある。モケット地の裏面に接着剤又は両面接着テープを貼り付け、金属プレート33に装着している。金属プレート33は、コテ塗り用器具30の樹脂プレート部32に嵌め込むように構成されている。樹脂プレート部32と手の把持部34は樹脂で一体成形されている。
【0016】
図6は本発明のさらに別の実施例における布刷毛40にモケット地41を装着した斜視図である。このモケット地41の地組織の周囲はカッターで切断し、繊維屑を除いてある。このモケット地41は、例えば胴部42とこれに挟み込んだ上部プレート43の外側に巻き付け、上部プレート43とその両外側の押さえ板44a,44bとで挟み込み、ねじ46a,46b又はボルトで締め付けることにより装着できる。45は手の把持部である。
【実施例】
【0017】
以下実施例を用いて、さらに本発明を具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
図1〜2に示されるようなモップ用モケット地を、地組織が上下2枚、地組織間をパイル糸で接結して織成し、パイル糸の中間部を切断して製造した。
【0019】
地組織を構成する経糸及び緯糸として、ポリエステル繊維からなる紡績糸(20メートル番手のものを2本より合わせて使用)を用いて、経糸密度15本/インチ、緯糸密度35本/インチの平組織とした。経糸の使用重量は約145g/m2、緯糸の使用重量は約120g/m2とした。
【0020】
パイル糸としては、長繊維であるポリエステルマルチフィラメントウーリー加工糸(繊度:300デニール、構成本数:72本)のものを4本と、ポリエステルマルチフィラメントウーリー加工糸(繊度:150デニール、構成本数:48本)のものを2本使用して撚糸し(撚り回数:240ターン/m)、合計1500デニールとした。次に撚糸を120℃のスチームによりヒートセットした。これにより実撚りは熱固定された。筬羽10羽/インチ、片面パイル糸長さ(図1におけるパイル糸5の長さ)を10mm、立毛数約240株/インチ2、パイル糸の使用重量は約1140g/m2とした。
【0021】
以上のようにして、目付け830g/m2のモップ用モケット地を得た。このモップ用モケット地の裏面にアクリル樹脂に架橋剤を混合したものを、乾燥重量で110g/m2塗布し、加熱硬化した。その後、縦190mm、横470mmの長方形に切断し、地組織の周囲をかがり糸でオーバーロック縫いした。
【0022】
このモップ用モケットを図3〜4に示すモップに取り付け、紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用した。その結果、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、フローリング床の掃除に使用したところ、ワイパー機能が高かった。ワックス掛けにも使い勝手がよかった。さらに、地組織の周囲はかがり糸でオーバーロック縫いされていることにより、塗装面を傷つけることもなく、地組織から繊維屑などの発生も押さえられることが確認できた。
【0023】
(実施例2)
実施例1で使用したモケット地(縦85mm、横160mm、立毛長さ10mm)を図5に示すようにコテ塗り用器具30に装着した。このモケット地31は地組織の周囲を高周波電源を用いた切断装置により融着切断した。モケット地の裏面には接着剤又は両面接着テー部を貼り付け、金属プレート33に装着した。金属プレート33は、コテ塗り用器具30の樹脂プレート部32に嵌め込んだ。
【0024】
このコテ塗り用器具30を使用して紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用したところ、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、壁面にアクリル塗料を塗装する作業に使用したところ、使い勝手はよく、塗装面の仕上がりも良好であった。
【0025】
(実施例3)
実施例1で使用したモケット地(縦70mm、横120mm、立毛長さ10mm)を図6に示すように布刷毛40に装着した斜視図である。このモケット地41は地組織の周囲を高周波電源を用いた切断装置により融着切断した。このモケット地41は、胴部42とこれに挟み込んだ上部プレート43の外側に巻き付け、上部プレート43とその両外側の押さえ板44a,44bとで挟み込み、ねじ46a,46bで締め付けることにより装着した。
【0026】
この布刷毛40を使用して紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用したところ、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、壁面にアクリル塗料を塗装する作業に使用したところ、使い勝手はよく、塗装面の仕上がりも良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の斜視図である。
【図3】図3は本発明の一実施例におけるモップの上面から見た斜視図である。
【図4】図4は本発明の一実施例における下から見た斜視図である。
【図5】図5は本発明の別の実施例におけるコテ塗り用器具にモケット地を装着した斜視図である。
【図6】図6は本発明のさらに別の実施例における布刷毛の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1,3 経糸
2 緯糸
4 地組織
5 パイル糸
6 立毛
7 バッキング層
8 かがり糸
10 モップ用モケット地
11 柄
12 プレート
13,14 取り付け具
20 モップ
30 コテ塗り用器具
31,41 モケット地
32 樹脂プレート部
33 金属プレート
34,45 把持部
40 布刷毛
42 胴部
43 上部プレート
44a,44b 押さえ板
46a,46b ねじ
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の床面を塗装したり掃除するためのコーティング用モケット地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からモップの先端にペーパーや布を固定し、床面を擦ることにより、床面の拭き掃除やワックス掛けを行っていた。また、塗料を塗装するために、一般的にはペイントローラー、コテ刷毛、スプレーといった手段が使用される。近年、パイル地を使用した塗装具が特許文献1〜2に開示されている。しかし、これらのパイル地は、単繊維状態にまで毛割りしているため、塗料を多量に含みすぎ、塗料を均一に塗ることができず、不具合があった。とくに、近年高級床面として木製の床面に紫外線硬化塗料を塗ることが広がりつつあるが、この塗料を使用する場合には、均一な塗装と、カスレという欠点の出ない塗装が要求される。従来、このように要請を満足する塗装具は提案されてこなかった。
【特許文献1】特開2002−302863号公報
【特許文献2】特開2005−113315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装でき、繊維屑も発生しないコーティング用モケット地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のコーティング用モケット地は、地組織の表面にパイル糸が立毛し、裏面にはバッキング層が形成されているコーティング用モケット地であって、前記パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコーティング用モケット地は、パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることにより、使用時においても立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できる。また、裏面にバッキング層が形成され、かつパイル糸は長繊維からなるポリエステルマルチフィラメント加工糸であるため、塗装の際に繊維屑が発生するおそれはない。このため、粘度の高い塗料であっても塗装できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のコーティング用モケット地は、地組織が上下2面に形成され、この地組織間にパイル糸が接結され、パイル糸の中間部を切断することにより、2枚のパイル織物を形成する。これにより、地組織の一表面にパイル糸が立毛しているモケット地となる。パイル糸は、長繊維であるポリエステルマルチフィラメント加工糸に実撚を掛け、ヒートセットして撚りを熱固定しておく。ヒートセットは100℃以上のスチームを使用するのが好ましい。これにより実撚は熱固定され、モケット地となっても実撚は残った状態となる。また、長繊維であるポリエステルマルチフィラメント加工糸を使用しているので、塗料などが付着し、引っ張られても繊維屑は発生しない。
【0007】
パイル糸の実撚数は、ポリエステルマルチフィラメント加工糸の繊度にもよるが、1〜4回/10mmの範囲であることが好ましい。ポリエステルマルチフィラメント加工糸1本のトータル繊度は、1111〜2222dtex(1000〜2000デニール)が好ましい。
【0008】
パイル糸の立毛長さは、3〜20mmの範囲が好ましい。さらに好ましくは5〜15mmであり、特に7〜13mmが好ましい。パイル長が前記の範囲であれば、紫外線硬化塗料を塗布する場合、塗料を適度に含み、当業界でいうカスレ欠点の出ない均一な塗装ができる。その上、掃除やワックス塗りなどのモップ作業も好適にできる。もちろん、一般の塗料を塗布するにも有用である。
【0009】
前記地組織は、例えば平組織とし、パイル糸を地組織の糸にU字形又はW字形に絡ませるのが好ましい。
【0010】
地組織の裏面は、パイル糸が抜けないように、バッキング剤である樹脂を塗布したバッキング層を形成する。バッキング樹脂としては、例えば熱硬化性又は光硬化性アクリル樹脂があり、アクリル樹脂と架橋剤を混合して塗布し、加熱又は光を照射して架橋させる。塗布量は90〜120g/m2が好ましい。
【0011】
本発明のコーティング用モケット地は、例えば矩形であり、大面積で使用する場合は、地組織の周囲はかがり糸でオーバーロック縫いすることが好ましい。これにより、地組織の端面から繊維屑などの発生も押さえられる。また、塗装面を傷つけることもない。
【0012】
前記モケット地は、モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛用等に有用である。モップ塗りは主に床面を塗装する際に使用し、一回に広い面を塗装できる。コテ塗りはモップ塗りよりは狭い面積を塗装する際に使用する。布刷毛はさらに狭い範囲を塗装するのに使用する。本発明のモケット地は、これ以外の塗装具にも使用できる。
【0013】
次に図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の断面図である。このモップ用モケット地10は、経糸1,3と緯糸2で構成される例えば平組織の織物で地組織4が形成されている。地組織4の一表面にはパイル糸5が立毛している。パイル糸5はポリエステルマルチフィラメント加工糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛している。パイル糸5は図1の例では地組織にW字状に絡んで固定されている。図1においてパイル糸5は太線と細線の2種類で示されているが、糸の動きを説明するために示しているだけであり、単一のパイル糸であっても良い。地組織4の裏面には、樹脂又はエラストマーなどのバッキング層7を形成する。これにより、毛抜けを防ぐために好ましい。パイル糸5は全体として立毛6を形成している。
【0014】
図2は、本発明の一実施例におけるモップ用モケット地10の斜視図である。地組織4の一表面にはパイル糸5が立毛しており、地組織の周囲はかがり糸8でオーバーロック縫いされている
図3は本発明の一実施例におけるモップ20の上面から見た斜視図、図4は同下から見た斜視図である。モップ20は柄11とプレート12からなり、プレート12の裏面に設けられた取り付け具13,14にモップ用モケット10を取り付け、塗装に使用したり、掃除に使用する。
【0015】
図5は本発明の別の実施例におけるコテ塗り用器具30にモケット地31を装着した斜視図である。このモケット地31の地組織の周囲はカッターで切断し、繊維屑を除いてある。モケット地の裏面に接着剤又は両面接着テープを貼り付け、金属プレート33に装着している。金属プレート33は、コテ塗り用器具30の樹脂プレート部32に嵌め込むように構成されている。樹脂プレート部32と手の把持部34は樹脂で一体成形されている。
【0016】
図6は本発明のさらに別の実施例における布刷毛40にモケット地41を装着した斜視図である。このモケット地41の地組織の周囲はカッターで切断し、繊維屑を除いてある。このモケット地41は、例えば胴部42とこれに挟み込んだ上部プレート43の外側に巻き付け、上部プレート43とその両外側の押さえ板44a,44bとで挟み込み、ねじ46a,46b又はボルトで締め付けることにより装着できる。45は手の把持部である。
【実施例】
【0017】
以下実施例を用いて、さらに本発明を具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
図1〜2に示されるようなモップ用モケット地を、地組織が上下2枚、地組織間をパイル糸で接結して織成し、パイル糸の中間部を切断して製造した。
【0019】
地組織を構成する経糸及び緯糸として、ポリエステル繊維からなる紡績糸(20メートル番手のものを2本より合わせて使用)を用いて、経糸密度15本/インチ、緯糸密度35本/インチの平組織とした。経糸の使用重量は約145g/m2、緯糸の使用重量は約120g/m2とした。
【0020】
パイル糸としては、長繊維であるポリエステルマルチフィラメントウーリー加工糸(繊度:300デニール、構成本数:72本)のものを4本と、ポリエステルマルチフィラメントウーリー加工糸(繊度:150デニール、構成本数:48本)のものを2本使用して撚糸し(撚り回数:240ターン/m)、合計1500デニールとした。次に撚糸を120℃のスチームによりヒートセットした。これにより実撚りは熱固定された。筬羽10羽/インチ、片面パイル糸長さ(図1におけるパイル糸5の長さ)を10mm、立毛数約240株/インチ2、パイル糸の使用重量は約1140g/m2とした。
【0021】
以上のようにして、目付け830g/m2のモップ用モケット地を得た。このモップ用モケット地の裏面にアクリル樹脂に架橋剤を混合したものを、乾燥重量で110g/m2塗布し、加熱硬化した。その後、縦190mm、横470mmの長方形に切断し、地組織の周囲をかがり糸でオーバーロック縫いした。
【0022】
このモップ用モケットを図3〜4に示すモップに取り付け、紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用した。その結果、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、フローリング床の掃除に使用したところ、ワイパー機能が高かった。ワックス掛けにも使い勝手がよかった。さらに、地組織の周囲はかがり糸でオーバーロック縫いされていることにより、塗装面を傷つけることもなく、地組織から繊維屑などの発生も押さえられることが確認できた。
【0023】
(実施例2)
実施例1で使用したモケット地(縦85mm、横160mm、立毛長さ10mm)を図5に示すようにコテ塗り用器具30に装着した。このモケット地31は地組織の周囲を高周波電源を用いた切断装置により融着切断した。モケット地の裏面には接着剤又は両面接着テー部を貼り付け、金属プレート33に装着した。金属プレート33は、コテ塗り用器具30の樹脂プレート部32に嵌め込んだ。
【0024】
このコテ塗り用器具30を使用して紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用したところ、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、壁面にアクリル塗料を塗装する作業に使用したところ、使い勝手はよく、塗装面の仕上がりも良好であった。
【0025】
(実施例3)
実施例1で使用したモケット地(縦70mm、横120mm、立毛長さ10mm)を図6に示すように布刷毛40に装着した斜視図である。このモケット地41は地組織の周囲を高周波電源を用いた切断装置により融着切断した。このモケット地41は、胴部42とこれに挟み込んだ上部プレート43の外側に巻き付け、上部プレート43とその両外側の押さえ板44a,44bとで挟み込み、ねじ46a,46bで締め付けることにより装着した。
【0026】
この布刷毛40を使用して紫外線硬化塗料を含浸させて木製の床面を塗る作業に使用したところ、立毛部は毛割れすることがなく、塗料を含む量が適度になるよう調整され、紫外線硬化塗料であっても欠点なく均一に床面に塗装できた。パイル糸からの繊維屑の発生は見られなかった。また、壁面にアクリル塗料を塗装する作業に使用したところ、使い勝手はよく、塗装面の仕上がりも良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施例におけるモップ用モケット地の斜視図である。
【図3】図3は本発明の一実施例におけるモップの上面から見た斜視図である。
【図4】図4は本発明の一実施例における下から見た斜視図である。
【図5】図5は本発明の別の実施例におけるコテ塗り用器具にモケット地を装着した斜視図である。
【図6】図6は本発明のさらに別の実施例における布刷毛の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1,3 経糸
2 緯糸
4 地組織
5 パイル糸
6 立毛
7 バッキング層
8 かがり糸
10 モップ用モケット地
11 柄
12 プレート
13,14 取り付け具
20 モップ
30 コテ塗り用器具
31,41 モケット地
32 樹脂プレート部
33 金属プレート
34,45 把持部
40 布刷毛
42 胴部
43 上部プレート
44a,44b 押さえ板
46a,46b ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地組織の表面にパイル糸が立毛し、裏面にはバッキング層が形成されているコーティング用モケット地であって、
前記パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることを特徴とするコーティング用モケット地。
【請求項2】
前記パイル糸の実撚固定は、実撚をかけた後のヒートセットによる固定である請求項1に記載のコーティング用モケット地。
【請求項3】
前記パイル糸の実撚数は、1〜4回/10mmの範囲である請求項1又は2に記載のコーティング用モケット地。
【請求項4】
前記パイル糸の立毛長さが、3〜20mmの範囲である請求項1に記載のコーティング用モケット地。
【請求項5】
前記モケット地は、紫外線硬化塗料を塗布するためのコーティング用モケット地である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【請求項6】
前記地組織の周囲は、かがり糸でオーバーロック縫いされている請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【請求項7】
前記モケット地は、モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛用である請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【請求項1】
地組織の表面にパイル糸が立毛し、裏面にはバッキング層が形成されているコーティング用モケット地であって、
前記パイル糸はポリエステルマルチフィラメント加工糸の実撚糸で構成され、実撚が固定された状態で立毛していることを特徴とするコーティング用モケット地。
【請求項2】
前記パイル糸の実撚固定は、実撚をかけた後のヒートセットによる固定である請求項1に記載のコーティング用モケット地。
【請求項3】
前記パイル糸の実撚数は、1〜4回/10mmの範囲である請求項1又は2に記載のコーティング用モケット地。
【請求項4】
前記パイル糸の立毛長さが、3〜20mmの範囲である請求項1に記載のコーティング用モケット地。
【請求項5】
前記モケット地は、紫外線硬化塗料を塗布するためのコーティング用モケット地である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【請求項6】
前記地組織の周囲は、かがり糸でオーバーロック縫いされている請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【請求項7】
前記モケット地は、モップ塗り用、コテ塗り用、又は布刷毛用である請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング用モケット地。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−291415(P2008−291415A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166731(P2007−166731)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(506419098)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(506419098)
【Fターム(参考)】
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