説明

コーティング用組成物、及びこれを用いたコーティングフィルムの製造方法

【課題】水溶性高分子を含有する層との密着性に優れたコーティング層を提供する。
【解決手段】多官能性モノマーを含むコーティング用組成物であって、
前記モノマーとして、ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを含み、且つ
ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートの含有量が、モノマーの全質量に対して、55〜70質量%であることを特徴とするコーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用組成物、特に、ゼラチンなどの水溶性高分子を含む層上に設けられるコーティング層を形成するためのコーティング用組成物に関する。前記コーティング層は、水溶性高分子を含む層の耐擦傷性を向上させるために設けられる。
【背景技術】
【0002】
従来より、印画紙などの被転写体上に画像が形成された画像形成フィルムが広く用いられている。このような画像形成フィルムでは、支持体上にインク組成物を印刷したり、支持体上に塗布された感光乳剤層に画像を焼付けたりすることにより、支持体上に画像形成層が設けられる。
【0003】
画像形成フィルムでは、高品質の画像を得るために種々の検討が行われている。例えば、特許文献1では、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性高分子を含むインク受容層上に画像を形成し、このインク受容層によりインクの吸収力、画像の鮮明度などを向上させている。
【0004】
このような画像形成フィルムの用途は、写真、外壁装飾、デザイン、広告など多岐に亘っている。したがって、画像形成層には、空気と接触することによる酸化劣化、物理的な接触によって傷が付くことなどを防止して、高品質の画像を長期間維持できることが求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−276321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成層を保護するために、画像形成層上にアクリル樹脂などからなるコーティング層を形成するのが好ましい。しかしながら、画像形成層やインク受容層がバインダー等として水溶性高分子を含む場合、これらの層とコーティング層との密着性が十分ではない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、水溶性高分子を含有する層との密着性に優れたコーティング層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多官能性モノマーを含む、活性エネルギー線の照射により硬化するコーティング用組成物であって、
前記多官能性モノマーとして、ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを含み、且つ
ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートの含有量が、モノマーの全質量に対して、55〜70質量%であることを特徴とするコーティング用組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコーティング用組成物は、ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを特定の量で含むことにより、水溶性高分子を含有する層との密着性に優れたコーティング層を形成することができる。前記コーティング層は優れた硬度を有し、水溶性高分子を含有する層に傷が付いたり、前記層の酸化劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[コーティング用組成物]
本発明の活性エネルギー線の照射により硬化するコーティング用組成物は、多官能性モノマーとして、ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを含む。本発明で使用するヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートは、分子中に、少なくとも1個のヒドロキシル基と、複数個の(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリレート系化合物を意味する。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を意味する。
【0011】
ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリシドールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロオキシプロピル(メタ)アクリレート等の2官能化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の3官能化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能化合物等が挙げられるが、これらの中でも3官能以上の化合物が好ましく、3官能化合物又は/及び5官能化合物が好適に使用される。これらは一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、特にペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましく用いられる。これらのモノマーによれば、水溶性高分子を含有する層との密着性により優れたコーティング層を形成することができる。
【0013】
コーティング用組成物におけるヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートの含有量は、コーティング用組成物に用いられたモノマーの全質量に対して、55〜70質量%、好ましくは60〜70質量%である。ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートの含有量がこの範囲内であれば、水溶性高分子を含有する層との密着性に優れ、高い硬度を有するコーティング層を形成することが可能となる。
【0014】
本発明のコーティング用組成物は、他のモノマーをさらに含んでいてもよい。他のモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートをさらに含むのが好ましい。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートは組成物の硬化反応を促進させることができ、水溶性高分子を含有する層との密着性がより優れたコーティング層を形成することが可能となる。
【0015】
コーティング用組成物におけるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの含有量は、コーティング用組成物に用いられたモノマーの全質量に対して、30〜45質量%、好ましくは30〜40質量%である。
【0016】
本発明のコーティング用組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、照射される活性エネルギー線の種類に応じて用いればよい。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン;アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン系化合物、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビスアシルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ミヒラーケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)等が挙げることができ、さらにBTTBと色素増感剤、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン等との組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、特にベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
光重合開始剤の含有量は、モノマー100質量部に対して5質量部以下、特に0.01〜5質量部が好ましい。
【0018】
コーティング用組成物は、粘度を調整するために、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができる。アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
【0019】
コーティング組成物の粘度は、25℃において3〜35mPa・s、特に10〜20mPa・sの粘度を有するのが好ましい。コーティング組成物の粘度が前記範囲内であれば、表面平滑性に優れることから、水溶性高分子を含有する層との密着性がより優れたコーティング層を形成することが可能となる。
【0020】
本発明のコーティング用組成物には、上述した各成分の他にも、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を挙げることができる。
【0021】
これら添加剤の含有量は、コーティング用組成物の固形分100質量%中、5質量%以下、特に0.01〜5質量%とするのが好ましい。
【0022】
[コーティングフィルム]
上述した本発明のコーティング用組成物を、水溶性高分子を含有する層上に塗布した後に硬化させることにより、水溶性高分子を含有する層上にコーティング層を有するコーティングフィルムを提供することができる。このようなコーティング層は、用途に応じてハードコート層ともよばれ、高い硬度を有する。本発明のコーティング用組成物によれば、JIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有するコーティング層を形成することができる。したがって、前記コーティング層によれば、水溶性高分子を含有する層の酸化劣化を防止し、耐擦傷性を向上させることができる。
【0023】
水溶性高分子を含有する層において、水溶性高分子としては、セルロース誘導体、ゼラチン、でんぷん、及びポリビニルアルコールなどが好ましく挙げられる。セルロース誘導体として具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)、カルボキシメチルセルロースカリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、微結晶性セルロース等が挙げられる。
【0024】
なかでも、従来のコーティング層では密着性が特に低く、本発明の効果をより高く発揮できることから、水溶性高分子としては、ゼラチン、特に5000〜60,000の平均分子量を有するゼラチンを使用することが好ましい。
【0025】
本発明のコーティング用組成物によりコーティングされる水溶性高分子を含有する層は、画像が形成された層であるのが好ましい。具体的には、バインダーとしての水溶性高分子中に顔料や染料が分散されたインクを画像様に印刷することにより形成された層や、現像後の写真乳剤層などが挙げられる。このような画像形成層上にコーティング層を形成することにより、高品質の画像を長期間に亘って維持することができる。なかでも、本発明のコーティング層は、写真乳剤層との接着性に優れることから、水溶性高分子を含む層としては、現像後の写真乳剤層が好ましく挙げられる。
【0026】
写真乳剤層は、水溶性高分子としてゼラチンを含む。現像後の写真乳剤層上に本発明のコーティング用組成物を適用することにより、現像後の画像を保護することができる。
【0027】
このような写真乳剤層は、AgCl、AgBr、AgIなどのハロゲン化銀粒子、結合剤又は保護コロイドとしてゼラチンを含む層である。写真乳剤層の作製は、例えば、臭化カリウム溶液及び硝酸銀溶液を、溶かしたゼラチンに添加する方法などが用いられる。また、写真乳剤層は、分光増感させるためにメチン色素などの色素、硬膜剤、かぶり防止剤、安定剤、及び界面活性剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。写真乳剤層は、カラーフィルムとするために、赤感性乳剤層、緑感性乳剤層、及び青感性乳剤層などの2層以上を用いることもできる。
【0028】
このような写真乳剤としては、従来公知のものが用いられ、例えば、特開平11−305396号公報、特開2000−321698号公報、特開平13−281815号公報、特開2002−72429号公報の実施例に記載されたカラーネガフィルム用乳剤、特開2002−214731号公報に記載されたカラーリバーサルフィルム用乳剤、特開2002−107865号公報に記載されたカラー印画紙用乳剤などが挙げられる。
【0029】
支持体上に現像前の写真乳剤層を有するフィルムとしては、カラー印画紙、カラー撮影用フィルム、カラーリバーサルフィルム、黒白写真感光材料であるX−レイ用フィルム、一般撮影用フィルム、印刷感材用フィルムなどが用いられる。前記フィルムは、特開平08−69075号公報などにも開示されている。
【0030】
本発明のコーティング用組成物は、現像後の写真乳剤層上、すなわち露光処理、現像処理、定着処理、水洗処理、及び安定化処理など処理が行われた写真乳剤層上に適用することができる。これらの各処理工程は、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等における通常の化学現像処理を用いて行えばよい。
【0031】
水溶性高分子を含有する層として、上述した写真乳剤を用いて画像が形成された層を使用した場合、本発明のコーティングフィルムは、支持体上に、画像形成層(現像後の写真乳剤層)と、コーティング層とを有する。また、支持体と画像形成層との間には、ハレーション防止層などの他の層が配置されていてもよい。
【0032】
水溶性高分子を含有する層としては、上述したものの他に、水溶性高分子中に近赤外線吸収材が分散された近赤外線吸収層、水溶性高分子中に色調補正用色素が分散された色調補正層なども挙げられる。これらの層は一般的に光学フィルタに用いられる。近赤外線吸収層及び色調補正層は一般的に透明基材上に形成される。したがって、水溶性高分子を含有する層として近赤外線吸収層及び色調補正層などを用いた場合、本発明のコーティングフィルムは、透明基材上に、近赤外線吸収層及び/又は色調補正層と、コーティング層(ハードコート層)とを有する光学フィルタとして用いられる。
【0033】
コーティング層の厚さは、コーティングフィルムの用途に応じて決定すればよく、1〜50μm、特に5〜40μmとするのが好ましい。
【0034】
コーティングフィルムの用途に応じて、水溶性高分子を含有する層が、画像模様、メッシュ状、ストライプ状などに形成されることにより凹凸形状を有していてもよい。本発明のコーティング用組成物はこのような凹凸形状を有する水溶性高分子を含有する層上に、表面平滑性に優れるコーティング層を形成することができる。
【0035】
[コーティングフィルムの製造方法]
上述したコーティングフィルムを製造するには、本発明のコーティング用組成物を、水溶性高分子を含有する層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることによりコーティング層を形成する方法が用いられる。
【0036】
コーティング用組成物を水溶性高分子を含有する層上に塗布するには、グラビアコート、マイクログラビアコート、ダイコート、リップコート、ロールリバースコート、ワイヤーバーコート、キスコートなどが用いられる。
【0037】
コーティング用組成物を、水溶性高分子を含有する層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射する前に乾燥させるのが好ましい。これにより、水溶性高分子を含有する層とコーティング層との密着性をより向上させることができる。
【0038】
前記乾燥は、70〜130℃、特に75〜125℃の温度で行われるのが好ましい。乾燥時間は、5秒〜15分間、特に5〜15分間とするのが好ましい。
【0039】
コーティング用組成物を硬化させるには、活性エネルギー線を照射することにより行われる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、マイクロ波、超音波、赤外線及びX線などが挙げられる。活性エネルギー線源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、エキシマレーザー、色素レーザーなどの紫外線源、ならびに電子線加速装置を使用することができる。
【0040】
活性エネルギー線としては、紫外線及び電子線、特に紫外線が好ましく用いられる。これにより硬化反応を促進させて、コーティング層と水溶性高分子層との密着性をより向上させることができる。紫外線の波長は200〜400nmであるのが好ましい。
【0041】
コーティング用組成物の塗布層表面に照射する紫外線のエネルギー密度は、1200mJ/cm2以上、特に1200〜4500mJ/cm2、最も1800〜4000mJ/cm2とするのが好ましい。紫外線のエネルギー密度が1200mJ/cm2未満である場合、水溶性高分子を含有する層とコーティング層との密着性の向上が十分に得られない恐れがある。
【0042】
活性エネルギー線の照射時間は、特に限定されないが、0.5〜5分間が好ましく、特に1〜3分間が好ましい。
【0043】
また、活性エネルギー線の照射は、酸素濃度が200ppm以下、特に20〜100ppmの雰囲気下で行われるのが好ましい。これにより、優れた硬度を有し、均一に硬化されることにより水溶性高分子を含有する層との密着性に優れるコーティング層を形成することができる。したがって、活性エネルギー線の照射は、不活性ガス雰囲気又は真空下で行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスなどが好ましく用いられる。また、活性エネルギー線を照射する際の雰囲気温度は、10〜200℃とするのが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0045】
[実施例1]
1.写真乳剤層の作製
暗室内にて、水830ml中にゼラチン50g、硝酸銀7g、塩化ナトリウム2gを含有する乳剤を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)上に塗布し、20℃、60%RHに制御したインキュベータ中で24時間の乾燥を施し、写真乳剤層(厚さ10μm)を作製した。
【0046】
2.現像処理
次に、写真乳剤層を、フォトマスク(線間隔 300μm、線幅5μm)を介して紫外線を照射し露光した後、下記に示す条件で、現像、停止、定着、水洗の各処理を施した。
【0047】
(現像条件)
現像液:イーストマン・コダック社D−72処方(現像液:水=1:2)
温度:20℃
現像時間:90秒
(停止条件)
停止液:1.5%氷酢酸液
温度:20℃
浸漬時間:20秒
(定着条件)
定着液:イーストマン・コダック社F−5処方
温度:20℃
現像時間:10分
(水洗条件)
温度20℃の流水で15分間
【0048】
3.コーティング層の作製
現像後の写真乳剤層上に、下記組成を有するコーティング用組成物(25℃での粘度:10mPa・s)をダイコーターにより塗布し、80℃で1分間、乾燥させた後、酸素濃度が200ppmの窒素ガス雰囲気下で積算光量1800mJ/cm2の紫外線を照射することにより、コーティング層(厚さ9μm)を作製した。これにより現像後の写真乳剤層上にコーティング層を有するコーティングフィルムを得た。
【0049】
(コーティング用組成物の組成)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 19.5g
トリメチロールプロパントリアクリレート 10.5g
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 70.0g
メチルエチルケトン 1.50g
【0050】
[実施例2〜4及び比較例1〜3]
実施例1で使用したコーティング用組成物に代えて、表1に示す組成を有するコーティング用組成物をそれぞれ用いてコーティング層を作製した以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。
【0051】
[評価]
コーティング層と現像後の写真乳剤層との密着性の評価を、JIS K 5600−5−6(1999)のクロスカット法に準拠して行った。カッターで1mmの碁盤目100個(10個×10個)を作り、剥離試験を行い、剥離した碁盤目の個数を計測した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示す通り、本願発明のコーティング用組成物によれば、水溶性高分子を含有する層との密着性に優れるコーティング層が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性モノマーを含む、活性エネルギー線の照射により硬化するコーティング用組成物であって、
前記多官能性モノマーとして、ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを含み、且つ
ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートの含有量が、モノマーの全質量に対して、55〜70質量%であることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び/又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの含有量が、モノマーの全質量に対して、30〜45質量%であることを特徴とする請求項3に記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
水溶性高分子を含有する層をコーティングするために用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング用組成物。
【請求項6】
前記水溶性高分子が、セルロース誘導体、ゼラチン、でんぷん、及びポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング用組成物。
【請求項7】
水溶性高分子を含有する層上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング用組成物を塗布した後、硬化させることにより得られるコーティング層を有することを特徴とするコーティングフィルム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング用組成物を、水溶性高分子を含有する層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射することによりコーティング層を形成する工程を有することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記活性エネルギー線が、紫外線であることを特徴とする請求項8に記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記紫外線の照射量が、1200mJ/cm2以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載のコーティングフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−143994(P2010−143994A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320763(P2008−320763)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】