説明

コーティング組成物及びその塗布方法

【課題】貯蔵安定性が良く、電気駆動により加圧し微小液滴を噴射時に不安定な噴射が生じず、乾燥が速く、ハジキやにじみのない、品質上好ましい塗装物が得られ、また色の発現に優れたコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、樹脂成分、溶剤、水を含み、20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mのコーティング組成物において、
樹脂成分がコーティング組成物中1〜20重量%であり、
コーティング組成物中の溶剤比率が5〜40重量%で、溶剤として溶剤(a)を1種以上含み、溶剤(a)が全溶剤中5〜100重量%含有するコーティング組成物:
溶剤(a)
20℃における水との接触角が85〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が20°以下
10重量%の該溶剤水溶液の液滴を該プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が70°以下である溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系コーティング組成物及びその塗布方法に関し、より詳しくは、電気駆動により加圧し微小液滴を噴射し塗布する際に不安定な噴射が生じることがなく、乾燥が速く、ハジキやにじみのない、品質上好ましい塗装物が得られ、また色の発現に優れているコーティング組成物及びその塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶剤及び水からなるコーティング組成物で、種々の溶媒を用いたコーティング組成物が多数提案されている。
【0003】
従来のコーティング組成物を用いて微小液滴で塗装物を作製した場合に、不安定な噴射が生じて品質上好ましくない塗装物が得られたり、またそのようなコーティング組成物を用いて塗装物を作製しても色の発現が必ずしも充分でなかったりすることがある。
【0004】
上記、不安定な噴射が生じる要因として、一般的に、組成物中の溶剤の選択によって微小液滴の乾燥が速くなり過ぎてしまい、噴射以前に乾燥が進むことにより吐出機に固着するためであり、これを防ぐために高沸点溶剤を添加する方法がとられている(例えば、特許文献1)。
【0005】
一方、特許文献2には、ハジキやにじみを改善する方法としてシリコーンアクリル樹脂を添加する方法がとられているが、水系の組成物について提供されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3050049号公報
【特許文献2】特開平10−251573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のような課題を解決することであり、コーティング組成物の貯蔵安定性が良く、電気駆動により加圧し微小液滴を噴射する際に不安定な噴射が生じることがなく、乾燥が速く、ハジキやにじみのない、品質上好ましい塗装物が得られ、また色の発現に優れているコーティング組成物及びその塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、塗布後の微小液滴の乾燥工程を解明し、組成物中の溶剤によって、また、塗布後の環境によって乾燥と塗れ広がりを調整できることを見出した。
【0009】
本発明に従って、顔料、樹脂成分、溶剤、水を含み、20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mのコーティング組成物において、
該樹脂成分が該コーティング組成物中1〜20重量%であり、
該コーティング組成物中の該溶剤比率が5〜40重量%であり、該溶剤として下記溶剤(a)を1種以上含み、かつ該溶剤(a)が全溶剤中5〜100重量%含有することを特徴とするコーティング組成物:
溶剤(a)
20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が20°以下であり、かつ、
10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が70°以下である溶剤が提供される。
【0010】
また、本発明に従って、上記コーティング組成物を塗布する方法において、該コーティング組成物を電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出させ基材を塗布する特徴とするコーティング組成物の塗布方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング組成物を用いることにより、貯蔵安定性が良く、微小液滴を塗布する際に不安定な噴射が生じることがなく、乾燥が速く、ハジキやにじみのない、品質上好ましい塗装物が得られ、また優れた色の発現が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のコーティング組成物について具体的に説明する。
【0013】
本発明の顔料、樹脂成分、溶剤、水を含むコーティング組成物において、20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mであり、該樹脂成分が該コーティング組成物中1〜20重量%であり、該コーティング組成物中の溶剤比率が5〜40重量%であることが必須である。樹脂成分が1重量%未満では、基材への密着性や耐水性、耐アルコール性が悪くなり易く、良好な被塗物が得られない。また、20重量%を超えると、吐出不良や貯蔵安定性不良となり易く、良好な被塗物が得られない。コーティング組成物の粘度が30mPa・sを超えると、吐出不良が起こる。また、表面張力が21mN/m未満又は34mN/mを超えると吐出不良が起こる。
【0014】
本発明のコーティング組成物において、20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が20°以下であり、かつ、10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が70°以下である溶剤(a)を1種以上用い、該溶剤が全溶剤中5〜100質量%含有することが必須である。
【0015】
上記20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、エポキシ、アクリルなどを主成分とするプラスチック製品が挙げられ、PET、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリウレタンが主成分であることが一般的であり好ましい。基材形状としては、フィルム、シート、及び成型品が挙げられる。
【0016】
本発明のコーティング組成物に用いられる顔料として特に制限はなく、通常のコーティング組成物に用いられている顔料はいずれも使用することができる。例えば、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、
ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、
ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、60、64、80、
ピグメントグリーン7、36、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントブラック1、7、26、27、28、
酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。顔料の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、好ましくはコーティング組成物の0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。また、該顔料はコーティング組成物において、平均粒子径(d50)が30〜300nmであることが好ましい。平均粒子径が300nmより大きくなると、沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する傾向がある。一方、平均粒子径が30nm未満となると着色力が不足したり、再凝集を起こし易くなるので好ましくない。
【0017】
本発明のコーティング組成物に用いられる樹脂成分として特に制限はなく、通常のコーティング組成物に用いられている樹脂はいずれも使用することができる。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂等の水溶性樹脂、ディスパージョン、エマルションを挙げることができる。
【0018】
上記溶剤としては特に制限はなく、通常のコーティング組成物に用いられる溶剤はいずれも使用することができ、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;
1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類;
アチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の複素環化合物;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物等及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0019】
コーティング組成物中の該溶剤比率は5〜40重量%であることが必須であり、好ましくは10〜30重量%である。溶剤比率が5重量%未満であると、基材との濡れ性が悪くなり、良好な被塗物が得られなくなり、溶剤比率が40重量%を超えると乾燥が遅くなり、ハジキやにじみが起こり易くなる。
【0020】
上記溶剤として、20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が20°以下であり、かつ、10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が70°以下である溶剤(a)を1種以上含有することが必須である。溶剤(a)としては、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、アルカンジオールなどの水溶性溶剤が広く適応できるが、中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル及びそれらの混合物が好ましい。
【0021】
溶剤(a)は、20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が20°以下であり、かつ、10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が70°以下であることが必須である。水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が20°を超えると基材との濡れ性が悪くなり、良好な被塗物が得られなくなる。また、10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の接触角が70°を超えると、基材との濡れ性が悪くなり、良好な被塗物が得られなくなる。
【0022】
溶剤(a)は全溶剤中5〜100重量%含有すること必須であり、好ましくは30〜100重量%である。溶剤(a)が全溶剤中5重量%未満であると基材との濡れ性が悪くなる。
【0023】
更に、上記溶剤(a)として、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物が、全溶剤中10重量%以上の場合、該溶剤水溶液の液滴0.5〜1.5nlを上記プラスチック基材に滴下し、2秒以内に上記プラスチック基材との20℃における接触角が10°以下になることが基材との濡れ性と乾燥時間とのバランスの観点から、より好ましい。
【0024】
本発明のコーティング組成物として、上記プラスチック基材に塗布した時に、0.5〜1.5nlの液滴の体積が、2秒以内に60%以下になることが好ましく、より好ましくは50%以下になることである。2秒以内に液滴の体積が60%を超えると、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、良好な被塗物が得られ難くなる。
【0025】
更に、本発明のコーティング組成物として、上記プラスチック基材に塗布した時に、0.5〜1.5nlの液滴径が、2秒以内に1.2倍以上になることが好ましく、より好ましは1.25倍以上1.5倍以下になることである。2秒以内に液滴径が1.2倍未満では、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、良好な被塗物が得られ難くなる。
【0026】
更に、本発明のコーティング組成物として、上記プラスチック基材に塗布した時に、0.5〜1.5nlの液滴の(高さ)/(液滴径)が0.3以下であることが好ましく、より好ましは0.25以下になることである。0.3を超えると、発色性が悪く、良好な被塗物が得られ難くなる。
【0027】
更に、本発明のコーティング組成物として、上記プラスチック基材に塗布した時に、0.5〜1.5nlの液滴の表面積が、2秒以内に1.4倍以上になることが好ましく、より好ましは1.5倍以上2倍以下になることである。2秒以内に液滴の表面積が1.5倍未満では、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、良好な被塗物が得難くなる。
【0028】
本発明のコーティング組成物の上記樹脂成分として特に制限はないが、該樹脂成分中にポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂を10〜95重量%含有すること、又は該樹脂成分中にスチレン及びメチルメタクリレートを30〜90重量%含有するアクリル系ポリマーを50〜90重量%含有することが好ましい。ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂を10重量%未満では、塗膜強度が不十分となる傾向があるため耐水性、耐アルコール性が悪くなり易く、良好な被塗物が得られない。95重量%を超えると塗膜の光沢が低下する傾向にあり、良好な被塗物が得られない。スチレン及びメチルメタクリレートが30重量%未満では、塗膜強度が不十分となる傾向があるため、耐水性、耐アルコール性が悪くなり易く、良好な被塗物が得られない。90重量%を超えると凝集を起こし易くなり、良好なコーティング組成物が得られない。
【0029】
本発明のコーティング組成物の塗布方法としては、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、ディスペンサーなど一般的な塗布方法が適応できるが、電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下、好ましくは0.5〜1.5nlとなるよう、非接触で液滴を吐出させる塗布方法を用いることが塗布性、乾燥性の点から好ましい。液滴の体積が2nlを超えると、コーティング組成物の十分な乾燥性や塗膜性能が得られ難くなる。
【0030】
また、本発明のコーティング組成物は、基材を35℃以上になるよう加温することが好ましい。基材の温度が35℃未満では、十分な発色性が得られ難く、良好な被塗物が得られない。あまりに加温し過ぎるとコーティング組成物が熱劣化することもあるので、好ましくは37℃〜45℃である。
【0031】
更に、本発明のコーティング組成物を塗布した直後1秒以内の基材に1m/秒以上の風速で風を当てることが好ましい。該コーティング組成物を塗布して1秒を超える時間放置すると、にじみ易くなるため好ましくない。また、被塗物に風を当てないかあるいは1m/秒未満の風を当てる場合、ブロッキングを起こし易くなるため好ましくない。好ましくは2m/秒〜7m/秒である。
【0032】
本発明のコーティング組成物は、基材として塗装に適した大きさ、厚さ、形状であれば一般的な材料が使用でき、予め表面処理や塗装が行われていてもよい。中でも、鉄板、アルミニウム板、ステンレス板又はこれらの塗装物、窯業系塗装板、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂の何れかを主成分とする樹脂シートもしくは成形体が、良好な密着性、光沢が得られるため好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断らない限り重量基準で示す。
【0034】
まず、表1に示される原料を直径0.5mmジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーにて15時間分散させて、顔料を含む分散液を作製した。また同様に、表2に示される原料を直径0.5mmジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーにて24時間分散させて、顔料を含む分散液を作製した。
【0035】
<ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂エマルション1の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートジオール(平均分子量2000)157.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4-シクロヘキサンジメタノール10.2部、プロピオン酸10.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン7.5部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0036】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0部とジエチレントリアミン1.2部とを水20.0部に溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂分35%、粘度70mPa・s、平均粒子径21nmの安定なポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂エマルション1を得た。
【0037】
顔料として、下記のものを用いた:
カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック550、デグサ社製)、
銅フタロシアニン(商品名:イルガライトブルー8700、チバ社製)、
キノキサリンジオン(商品名:ホスタパームイエローH5G、クラリアント社製)、
ジメチルキナクリドン(商品名:スーパーマゼンタRG、DIC社製)、
二酸化チタン(商品名:TR92、ハンツマン社製)。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
(実施例1〜113及び比較例1〜7)
表3〜表9に示すように実施例1〜113及び比較例1〜7の試験塗料を作製した。
【0041】
<ポリカーボネート基非含有ウレタン樹脂エマルション2の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールから得られるポリエステルジオール(平均分子量2000)157.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4-シクロヘキサンジメタノール10.2部、プロピオン酸10.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン7.5部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0042】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基非含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0部とジエチレントリアミン1.2部とを水20.0部に溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、ポリカーボネート基非含有ポリウレタン樹脂分35%、粘度60mPa・s、平均粒子径25nmの安定なポリカーボネート基非含有ポリウレタン樹脂エマルション2を得た。
【0043】
<アクリル樹脂エマルションの合成>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.3部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル3部、アクリル酸1部、スチレン12部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。アクリル樹脂分40%、平均粒子径は75nm、Tg=84℃の良好なアクリル樹脂エマルションを得た。
【0044】
脱イオン水、樹脂として、上記で得られたウレタン樹脂エマルション1、ウレタン樹脂エマルション2、アクリル樹脂エマルション、
表面調整剤として、
ポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:57ADDITIVE、東レ・ダウ社製)、
溶液として(下記の括弧内の角度は、それぞれ20℃における水との接触角が89°である塩化ビニル樹脂シート基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角と、10重量%の溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角とを示す)、
エチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブチルグリコール、日本乳化剤社製、6°、30°)、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ハイソルブDB、東邦化学工業社製、7°、44°)、
ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(商品名:イソブチルジグリコール、日本乳化剤社製、6°、38°)、
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブトキシトリグリコール、ダウ・ケミカル社製、12°、51°)、
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(商品名:メチルエチルジグリコール、日本乳化剤社製、17°、73°)、
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業社製、7°、66°)、
エチレングリコール(商品名:エチレングリコールB、三菱化学社製、62°、84°)、
を加えてディスパー攪拌して各コーティング組成物を作製した。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
【表9】

【0052】
次に、以下のように各種特性・性能評価を行った。結果を表10〜表11に示す。
【0053】
[粘度]
20℃におけるコーティング組成物の粘度をTAインスツルメンツ社製 レオメーター ARESを用いて測定した。
【0054】
[表面張力]
20℃におけるコーティング組成物の表面張力を協和界面科学社製 自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定した。
【0055】
[平均粒子径]
コーティング組成物の顔料の平均粒子径をMicrotrac社製 粒度分布測定器UPAを用いて測定した。
【0056】
[塗布装置]
コーティング組成物の塗布を栄光電子社製 3軸マーキング装置を用いて行った。
【0057】
[液滴の測定]
液滴の体積、液滴径、液滴の高さ、液滴の表面積の測定は、12倍ズームのレンズを取り付けたCCDカメラを用いて行った。
【0058】
<ノズル詰まり性>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で印刷し、印刷の最中にヘッドを15分間その場で放置させ、その後、再度印刷を開始した際に、所定の位置に組成物を吐出できないノズル数をカウントし、下記の基準で評価した。
◎:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の1以下、
○:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の2以下、
×:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の2より多い。
【0059】
<連続吐出性>
塩化ビニルシート表面に栄光電子社製 3軸マーキング装置で1m×4mのベタ印刷を行い、飛行曲がり及び抜けの本数に基づいて下記基準で評価した。
◎:飛行曲がり及び抜けなし、
○:飛行曲がり及び抜けの合計本数が1〜3本、
△:飛行曲がり及び抜けの合計本数が4〜6本、
×:飛行曲がり及び抜けの合計本数が7本以上。
【0060】
<貯蔵安定性>
50℃で28日間保管し、目視にて下記基準で評価した。
◎:変化なし、
○:僅かに浮遊物あり、
×:沈殿・分離を生じる。
【0061】
<乾燥性>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、印刷直後及び30秒後の印刷物を指で触わり、下記基準で評価した。
◎:印刷直後でもコーティング組成物が指に付着しない、
○:印刷直後にはコーティング組成物が指に付着するが、30秒後には付着しない、
×:30秒後でもコーティング組成物が指に付着する。
【0062】
<ハジキ>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、印刷直後の印刷物を目視にて下記基準で評価した。
◎:コーティング組成物にハジキがない、
○:僅かにコーティング組成物にハジキがあるが、実用上問題ないレベル、
×:コーティング組成物にハジキがある。
【0063】
<にじみ>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、印刷直後の印刷物を目視にて下記基準で評価した。
◎:コーティング組成物ににじみがない、
○:僅かにコーティング組成物ににじみがあるが、実用上問題ないレベル、
×:コーティング組成物ににじみがある。
【0064】
<密着性>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、その画像部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN製)を密着させた後にテープを剥がし、剥離部分の状態を目視にて下記基準で評価した。
◎:剥離なし、
○:僅かに剥離の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:剥離あり。
【0065】
<耐水性>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、イオン交換水をしみ込ませたガーゼで画像を10回擦り、画像の外観を目視で評価した。
◎:擦り傷の痕跡なし、
○:僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:擦り傷の痕跡あり。
【0066】
<耐エタノール性>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷し、75%エタノール水溶液をしみ込ませたガーゼで画像を10回擦り、画像の外観を目視で評価した。
◎:擦り傷の痕跡なし、
○:僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:擦り傷の痕跡あり。
【0067】
<光沢>
塩化ビニルシート表面に3軸マーキング装置で画像を印刷した印刷物の光沢を日本電色工業社製 光沢計VG 2000を用いて測定した。
◎:光沢あり、
○:僅かに光沢が劣るが実用上問題ないレベル、
×:光沢なし。
【0068】
<色ムラ>
各種基材に3軸マーキング装置で画像を印刷した印刷物を目視にて下記基準で評価した。
◎:色ムラなし、
○:僅かに色ムラがあるが実用上問題ないレベル、
×:色ムラあり。
【0069】
<発色性>
各種基材に3軸マーキング装置で画像を印刷した印刷物を、マクベス社製 分光光度計COLOR−EYE3100を用いて色差ΔEを測定した。
◎:ΔEが1以内、
○:ΔEが3以内、
×:ΔEが3を超える。
【0070】
<ブロッキング性>
各種基材に3軸マーキング装置で画像を印刷した印刷物を2枚重ね、1kgf/cmの荷重がかかるように重りを載せ、1時間放置後に被塗物の接着度合いを判定した。
◎:全く接着部分がない、
○:一部接着部分があるが実用上問題ないレベル、
×:多くの部分が密着し、塗膜の一部が剥離する。
【0071】
【表10】

【0072】
【表11】

【0073】
(実施例114)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、塩化ビニルシート表面に電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出させる武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いた以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0074】
(実施例115)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、基材である塩化ビニルシートを40℃に加温した以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0075】
(実施例116)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、塗布後1秒以内の基材に3m/秒の風速で風を当てて乾燥させた以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0076】
(実施例117〜123)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、基材を亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂にした以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0077】
(実施例124)
実施例114において、基材である塩化ビニルシートを40℃に加温した以外は、実施例114と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0078】
(実施例125)
実施例114において塗布後1秒以内の基材に3m/秒の風速で風を当てて乾燥させた以外は、実施例114と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0079】
(実施例126〜132)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、基材を亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂にし、その表面に電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出させる武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて塗布した以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0080】
(実施例133)
実施例114において、基材である塩化ビニルシートを40℃に加温し、塗布後1秒以内の基材に3m/秒の風速で風を当てて乾燥させた以外は、実施例114と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0081】
(実施例134〜140)
実施例88におけるコーティング組成物を用い、基材である亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂を40℃に加温し、電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出させる武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いた以外は、実施例88と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0082】
(実施例141〜147)
実施例126〜132において、塗布後1秒以内の基材に3m/秒の風速で風を当てて乾燥させた以外は、実施例126〜132と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0083】
(実施例148〜154)
実施例134〜140において、塗布後1秒以内の基材に3m/秒の風速で風を当てて乾燥させた以外は、実施例134〜140と同様にして画像を印刷し、各種特性・性能評価を行った。結果を表12に示す。
【0084】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、樹脂成分、溶剤、水を含み、20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mのコーティング組成物において、
該樹脂成分が該コーティング組成物中1〜20重量%であり、
該コーティング組成物中の該溶剤比率が5〜40重量%であり、該溶剤として下記溶剤(a)を1種以上含み、かつ該溶剤(a)が全溶剤中5〜100重量%含有することを特徴とするコーティング組成物:
溶剤(a)
20℃における水との接触角が85°〜95°であるプラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が20°以下であり、かつ、
10重量%の該溶剤水溶液の液滴を上記プラスチック基材に滴下した時の10秒後の20℃における接触角が70°以下である溶剤。
【請求項2】
上記溶剤(a)が、10重量%以上の該溶剤水溶液の液滴0.5〜1.5nlを上記プラスチック基材に滴下し、2秒以内に上記プラスチック基材との20℃における接触角が10°以下になる溶剤である請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
上記コーティング組成物を上記プラスチック基材に塗布し、0.5〜1.5nlの液滴の体積が、2秒以内に60%以下になる請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
上記コーティング組成物を上記プラスチック基材に塗布し、0.5〜1.5nlの液滴径が、2秒以内に1.2倍以上になる請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項5】
上記コーティング組成物を上記プラスチック基材に塗布し、0.5〜1.5nlの液滴の(高さ)/(液滴径)が0.3以下である請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項6】
上記コーティング組成物を上記プラスチック基材に塗布し、0.5〜1.5nlの液滴の表面積が、2秒以内に1.4倍以上になる請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
上記樹脂成分中にポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂を10〜95重量%含有し、更に、上記溶剤がグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項8】
上記樹脂成分中にスチレン及びメチルメタクリレートを30〜90重量%含有するアクリル系ポリマーを50〜90重量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項9】
上記コーティング組成物が、電気駆動により加圧され、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出される請求項1〜8のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項10】
35℃以上に加温された基材に塗布される請求項1〜9のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項11】
上記コーティング組成物が、塗布後1秒以内の基材に1m/秒以上の風速で風を当てて乾燥させられる請求項1〜10のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項12】
被塗物が、鉄板、アルミニウム板、ステンレス板又はこれらの塗装物、窯業系塗装板、及び、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂の何れかを主成分とするシートもしくは成形体である請求項1〜11のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のコーティング組成物を塗布する方法において、該コーティング組成物を電気駆動により加圧し、液滴の体積が2nl以下となるよう、非接触で液滴を吐出させ基材を塗布することを特徴とするコーティング組成物の塗布方法。
【請求項14】
前記基材を35℃以上になるよう加温する請求項13に記載のコーティング組成物の塗布方法。
【請求項15】
上記コーティング組成物を塗布後1秒以内の基材に1m/秒以上の風速で風を当てて乾燥させる請求項13又は14に記載のコーティング組成物の塗布方法。

【公開番号】特開2011−213809(P2011−213809A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81735(P2010−81735)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】