説明

コード読取装置

【課題】近距離での広い読取範囲で安定した読み取りを行うことができると共に筐体を小型化することが可能なレーザスキャナを提供する。
【解決手段】読取対象の面上をレーザビームにより走査しその反射光を受光部で受光して前記読取対象を読み取るレーザスキャナにおいて、前記受光部は、広角の視野を有し且つ前記読取対象の読取幅方向であるX方向の曲率と集光効率を高めるY方向の曲率とが異なる曲面から成る入射面を有する集光レンズ21と、その後方において前記X方向に配置される複数の受光素子22と、を含み、前記X方向の両端部側に配置された受光素子22における前記反射光の受光量が前記X方向の中央部側に配置された受光素子22よりも大きくなるように、受光素子22の入光面を前記集光レンズ21の中心軸と直交する面に対して所定の傾斜角度で傾斜させて各受光素子22を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア等の搬送手段によって搬送される物品の表面に付されたラベルの情報を光学的に読み取るレーザスキャナの構造に関し、特に、近距離で広い読取範囲に適した、小型化可能な固定式レーザスキャナの受光部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
1次元コードや2次元コードなどのコードを読取対象として光学的に読み取るコード読取装置(バーコードリーダ)には、操作者が装置を手に持って利用する手持ち式のタイプと、読取窓の前をバーコードの付いた物品等を通過させる固定式(「定置式」とも呼ぶ)のタイプがある。
【0003】
固定式のコード読取装置は、物流配送センター等において使用されている。例えば、物流配送センターにおいては、届け先や種類をコード化したラベルが貼付された物品をランダムに投入してベルトコンベア等で搬送し、その物品のラベルの情報をバーコードリーダで読み取り、その情報に基づいて各種の物品を仕分装置によって自動的に仕分けることが行われている。
【0004】
このような固定式のコード読取装置には、レーザスキャナ方式とイメージセンサを使用した撮像カメラ方式(例えば、特許文献1参照)方式のものがある。レーザスキャナ方式の場合は、スキャナを搬送路の所定位置に設置しておき、搬送されてくる物品に貼付されたラベル面をレーザビームで走査し、そのラベル面からの反射光を受光し、光電変換後の信号を回路処理して、ラベルのコードを解読している。
【0005】
読み取り対象のラベルが大きいとか、大きな物品への貼付位置が不定のラベルの読み取りでは、レーザスキャナは通常のラベルサイズよりも広い範囲をスキャンして読み取る必要がある。このためにスキャナをラベル面から遠ざけてスキャン範囲を広げることが行われるが、コンベアとスキャナとの間の占有空間が増し設置スペースが大きくなりがちであった。このためにスペースコストや設置コストが増大していた。
【0006】
レーザスキャナの読み取り範囲を広げるためには、レーザの走査幅を広げると共にラベルからの反射光を受光できる範囲を広げる必要がある。ラベルからの反射光を受光する受光部において、複数個の受光素子を設けた構造が開示されている。例えば下記特許文献2の開示によれば、振動ミラーによりレーザビームを走査角40度程度で走査する場合において、2ケの受光素子を同一平面上に配置して受光特性を改善させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−148786号公報
【特許文献2】特開平11−259592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーザビームの走査角(ビーム走査の端から端までに至るビーム振れの全角)が更に広い広角、例えば、80°〜120°程度の広い走査角の範囲での読み取りでは、走査端部付近から受光する信号量が更に少なくなるため走査端部付近への読み取りが難しくなり、広い読み取り範囲を確保できないという問題があった。また走査中央部からの受光信号量に対して走査端部から受光量が極端に少なくなることによる受光信号量の不均一性が甚だしくなるため、安定した読み取りが難しくなるという問題があった。
【0009】
本発明は上述のような事情から成されたものであり、本発明の目的は、近距離での広い読取範囲で安定した読み取りを行うことができるレーザスキャナを提供することにある。同時に、筐体を小型化することが可能なレーザスキャナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、読取対象の面上をレーザビームにより走査しその反射光を受光部で受光して読取対象を読み取るレーザスキャナに関するものであり、本発明の上記目的は、前記受光部は、広角の視野を有し且つ前記読取対象の読取幅方向であるX方向の曲率と集光効率を高めるY方向の曲率とが異なる曲面から成る入射面を有する集光レンズと、その後方において前記X方向に配置される複数の受光素子と、を含み、前記X方向の両端部側に配置された受光素子における前記反射光の受光量が前記X方向の中央部側に配置された受光素子よりも大きくなるように、受光素子の入光面を前記集光レンズの中心軸と直交する面に対して所定の傾斜角度で傾斜させて各受光素子を配置して成ることによって達成される。
【0011】
さらに、前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、入光面の法線がそれぞれ、前記X方向における読取視野の両端部のうちの近方側の端部に向くように配置されていること、
前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、前記傾斜角度がそれぞれ、前記X方向における読取視野の両端部のうちの近方側の端部からの光に対する受光感度が最大となる角度で角度付けされていること、
前記傾斜角度は、前記X方向における読取視野の中央部側に配置される受光素子と比較して両端部側に配置される受光素子の方が大きな角度となっていること、
前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、前記中心軸に対して左右対称の位置に且つ左右対称の傾斜角度を付けて配置されていること、
前記受光素子は、前記集光レンズの前方の最短読み取り距離の位置で且つ前記集光レンズの視野領域の前記X方向における両端部の位置に第1視点位置及び第2視点位置を設定し、第1視点位置及び第2視点位置からそれぞれ、前記集光レンズの中心軸に対して両側に配置される一方の受光素子と他方の受光素子のうち当該視点位置に近い側の各受光素子の入光面を前記集光レンズを通して見た場合に、隣り合う入光面の端部が互いに重なり合う状態となる位置に配置されていること、
前記集光レンズのX方向の入射面は、レンズ中央部が略平面形状で形成されると共に、その中央部の両端からレンズの両端部に至る部分は端部へ行くにつれて連続的に曲率半径が小さくなるように曲率を変化させた曲面形状で形成されていること、
前記集光レンズのX方向の出射面が平面で形成されており、前記受光素子がその出射面に近接して直線状に配置されていること、
前記集光レンズは1枚のレンズで構成されていること、
前記レーザビームの射出領域に並設して前記受光部を設けると共に、前記走査部と前記受光部とを同一ユニット内に収納し、且つ該ユニットに設けた前記レーザビームの射出窓が前記受光部の入射窓を兼ねる構成としていること、
前記レーザスキャナは、搬送コンベアに載せて搬送される物品に付されたコードを自動的に読み取る固定式のレーザスキャナであること、
によってそれぞれ一層効果的に達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広角の視野を有する集光レンズと複数の受光素子とでレーザスキャナの受光部を構成すると共に、読取幅方向の両端部側に配置された受光素子における受光量が中央部側に配置された受光素子よりも大きくなるように、入光面を傾斜させて各受光素子を配置した構成としているので、レーザ走査の画角変化に対する各受光素子の受光感度特性を平坦化させることができ、近距離での広い読取範囲で安定した読み取りを行うことが可能になる。
【0013】
また、集光レンズは、読取幅方向であるX方向の曲率と集光効率を高めるY方向の曲率とが異なる曲面から成る入射面を有するレンズ(好ましくは1枚のレンズ)で構成しているので、レンズ系の部品点数が少なくなり、筐体を小型化することが可能となる。さらに、レーザビームの射出領域に並設して受光部を設けると共に、レーザビームの射出窓が受光部の入射窓を兼ねる構成とすることで、レーザスキャナの筐体をより小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るレーザスキャナの配置構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係るレーザスキャナの主要部の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るレーザスキャナの走査部と受光部の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るレーザスキャナの受光部の構造を説明するための模式図である。
【図5】本発明に用いる集光レンズのY方向における曲面形状を説明するための模式図である。
【図6】図4中の受光素子22の実装例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係るレーザスキャナは、読取対象の面上をレーザビームにより走査してその反射光を受光部で受光し、光電変換して得られる信号に基づいて読取対象を非接触で光学的に読み取るものであり、近距離且つ広角の読み取りが可能な固定式のコード読取装置(又はそのスキャナ部)として好適に適用されるものである。
【0016】
そして、本発明においては、受光素子の指向特性と受光素子の入光面の立体角に着目し、レーザスキャナの受光部の構造を工夫することによって、近距離での広い読取範囲で且つ安定した読み取りができるレーザスキャナを実現している。
【0017】
受光素子の入光面の立体角について説明する。レーザビーム走査によるラベル面からの反射光成分は正反射光と拡散反射光の2つからなっている。前者は指向性が強く、後者は指向性の少ない等方的な強度分布を持っている。特殊な読み取りを除き、一般のバーコードリーダに利用されるのは拡散反射光成分である。拡散反射光成分から受ける受光素子の受光量は、レーザビームの反射点に対して受光素子の入光面の張る立体角の大きさに比例する。走査端部からの受光量を大きくするためには、受光部のトータルの立体角を大きくすればよい。そのために、複数の受光素子を配置して各々の入光面が最寄りの走査端部方向を向くように傾けて配置している。各受光素子の入光面が最寄りの走査端部位置から見て、互いに重なることなく隙間なく配置すれば更に効率のよい受光量を得ることができる。各受光素子の入光面を傾けることにより、走査中央部の反射点に対して受光素子の入光面の張る立体角は逆に減少するので、走査中央部に対する受光量を低減することができる。
【0018】
受光素子の指向特性について説明する。受光素子としてシリコン型PINフォトダイオードを例にとると、その代表的な指向特性は入光面の法線方向からの受光感度1に対して、法線に対する傾き20°方向(走査角40°相当)では約0.95、40°方向(走査角80°相当)では約0.85、60°方向(走査角120°相当)では約0.6となる。走査角40°では受光素子の指向特性の殆ど影響はなかったが、走査角80〜120°では感度低下への影響が大きくなるので、各受光素子の入光面を走査線の端部方向に向けることにより受光感度の低下を防ぐことができる。同時に、走査線の中央部からの反射光に対しては受光感度を下げることができる。
【0019】
受光部の各受光素子の信号量は、入光面の立体角に因るもの、指向特性に因るもの、アンプゲインに因るものが相乗的に作用(乗算)して得られる。更に各受光素子の信号を回路的に合成して、受光部の合成信号量を得るようにしている。
【0020】
以上の構成とすることにより、レーザ走査端部方向に対する感度を最大にすると共に、レーザ走査中央部への感度を下げることができるので、レーザ走査の画角変化に対する受光感度特性を平坦化できる。その結果、広い読取範囲で安定した読み取りができる。
【0021】
また、中央部付近に対する感度を下げる構成としては、上記のほかに中央部付近に対向配置される受光素子の入光面の面積を相対的に小さくすることによっても実現できる。また中央部付近の受光素子のアンプゲインを下げることによっても実現できる。
【0022】
さらに、受光部のコンパクト化によりスキャナを小型化し、読み取りできる視野画角の拡大と相俟って、スキャナの設置スペースの節約と設置費用の軽減を図っている。
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照にしながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、搬送される物品に付されたバーコードラベルを読取対象として自動的に読み取る固定式レーザスキャナを例として説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るレーザスキャナの配置構成の一例を示す模式図である。図1において、読取対象であるバーコードラベル51が付された物品52(製品又はその収容体)は、例えば図中の矢印Aで示す方向を進行方向(搬送方向)として、ベルトコンベア53等の搬送手段によって連続的に若しくは間欠的に搬送されて来る。その際、物品52は、バーコードラベル51が付された面をレーザスキャナ1側に向けてレーザスキャナ1の走査領域内に搬送されて来る。レーザスキャナ1は、搬送路の所定位置に配置されており、読み取ったバーコードラベル51の情報を外部装置に出力する。
【0025】
本実施形態におけるレーザスキャナ1は、物品52を走査するレーザビームの射出領域10bに並設して受光部20が設けられており、レーザビームの射出窓10bは受光部20の入射窓を兼ねる構成としている。そして、後述する受光部20の構造上の工夫によって近距離且つ広角の読み取りを可能とすると共にレーザスキャナ1の筐体の小型化を図ることにより、設置スペースの少ない場所にも設置できるようにしている。その設置位置としては、本例ではベルトコンベア53の搬送路の幅方向における片側の端部に近接した位置を採用している。なお、図1の例は、片寄機構又は人の操作によって物品52を搬送路の片側に寄せた状態で搬送する搬送系を例示しており、その場合、レーザスキャナ1は搬送路の片寄側の端部に近接した位置に設置される。
【0026】
次に、レーザスキャナ1の主要部の構成について概略を説明する。
【0027】
図2は、本発明に係るレーザスキャナ1の主要部の構成例を示すブロック図である。図2において、レーザスキャナは1、読取対象であるバーコードラベル51の面上にレーザビームL1を照射する走査部10と、その反射光L2を受光して光電変換しそのデジタル信号を出力する受光部20と、CPU及び入出力インターフェース等から構成される制御部30とを含んで構成される。
【0028】
レーザスキャナ1の筐体(以下「スキャナユニット」と呼ぶ)には、上記構成要素10〜30の他に、受光部20の出力に基づいてバーコードラベルの情報を復号化して出力する復号処理部40と、が搭載される。この復号処理部40は、スキャナユニット内に搭載せずに外部装置100に搭載する形態としても良い。
【0029】
図3は、レーザスキャナ1の走査部と受光部の構成を概略的に示す斜視構成図である。レーザスキャナ1の走査部(図2中の走査部10)は、図3に示すように、レーザ光源11、集束レンズ14、走査用の偏向ミラー13(回転動作するポリゴンミラー)、などから構成され、レーザ光源11からのレーザビームを偏向ミラー13によって周期的に偏向させ、副走査方向(図2中のY方向)に搬送される物品の表面上を主走査方向Xに走査する。
【0030】
本実施の形態では、スキャナユニットを小型化するために、図1に例示したように走査レーザビームの射出窓10aが受光部20の入射窓を兼ねる構成としており、受光部20の構成要素である図3中の集光レンズ21の光軸に対して所定の角度を成す光ビームL1が射出窓10aから射出され、物品表面からの反射光L2は、その射出窓10a(本実施の形態では、射出窓10a=入射窓)から、レンズのXY面の大きさが入射窓と略同じ大きさの集光レンズ21を通して受光素子22の入射面に入射される形態としている。図3中の受光素子部22は複数の受光素子で構成され、各受光素子を集光レンズ21の後方においてX方向(読取対象の読取幅方向=レーザビームの走査幅方向)に並べて配置した構成としている。受光素子としてはフォトダイオード、PINフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等が使用できる。図示しないが、各受光素子で光電変換したアナログ信号は更にアンプで増幅されて、全受光素子の各アナログ信号が相加算されて一つの合成信号となり、更にアナログ・デジタル変換されて、デジタル信号として受光部20が出力される。また、好ましい実施の形態では、各受光素子は同一素子としているが、中央部は幅の短い素子を多くするなど、異なる素子を用いた形態としても良い。
【0031】
上記走査部10における射出窓10a以外の構成と、制御部30、及び復号処理部40の各構成は公知の技術なので、それらの詳細については説明を省略する。
【0032】
以下、本発明に係るレーザスキャナの受光部20の構成について詳細に説明する。
【0033】
図4は、受光部20の構造を説明するための模式図である。受光部20は、広角の視野を有する1枚の集光レンズ21と複数の受光素子22とを含み、X方向の両端部側に配置された受光素子におけるレーザビームの反射光L22の受光量が中央部側に配置された受光素子よりも相対的に大きくなるように、一部(少なくとも集光レンズ21の視野の両端部の受光素子)又は全ての受光素子22は、その入光面を、集光レンズ21の中心軸21cと直交する面に対して所定の傾斜角度θで傾斜させて、各受光素子22を中心軸21cに対して左右対称に且つ左右対称の傾斜角度を付けて配置した構成としている。
【0034】
そして、受光素子22のうち左右対称の傾斜角度を付けて配置される一方側の受光素子群22A(以下「第1受光素子群」と呼ぶ)と他方側の受光素子群22B(以下「第2受光素子群」と呼ぶ)は、入光面の法線がそれぞれ、X方向における読取視野の両端部のうちの近方側の端部に向くように配置されている。なお、本例では読取幅方向X=レーザ走査幅方向Xであり、読取対象の読取幅≒レーザL1の走査幅(通常は、読取幅≦走査幅)としている。
【0035】
上記第1受光素子群22Aと第2受光素子群22Bの受光素子はそれぞれ、X方向における読取視野の周辺部(集光レンズ21の視野両端部)のうちの近方側の端部からの光に対する受光感度が最大となる角度θで角度付けして配置する形態とするのが好ましい。言い換えると、レーザ走査幅両端部の反射光L22に対しては、端部のレーザ光の反射位置から受光素子面を見込む立体角(∝受光収量)が最大、且つ受光素子の指向特性に伴う感度が最大となる角度、すなわち受光素子の入光面の法線をレーザ走査端部に向けて配置する形態とするのが好ましい。さらに、レーザ走査幅中央部の反射光L21に対しては、中央部のレーザの反射位置から反射受光素子を見込む立体角が減少し、且つ受光素子22の指向特性に伴う感度が低下する角度で角度付けして配置する形態とするのが好ましい。
【0036】
一方、集光レンズ21は、読取対象の読取幅方向であるX方向の曲率と集光効率を高めるY方向の曲率とが異なる曲面から成る入射面を有する1枚の集光レンズを用いるのが好ましい。
【0037】
本実施の形態では、図4の例のように、集光レンズ21のX方向の入射面Rxは、視野中心部の近辺領域に相対する部分が略平面形状で形成されると共に、視野の両端部に行くにつれて相対する入射面Rxは連続的に曲率半径が小さくなるように曲率を変化させた曲面形状で形成されている。そして、集光レンズ21のX方向の曲率は、レーザ走査幅の中心部(=集光レンズ21の中心軸21c)に対して右側端部からの光線(図4中の光線L22)が第2受光素子群22B(視野中心部の右側に位置する各受光素子)へ全て入光し、レーザ走査の左側端部からの光線が第1受光素子21A(視野中心部の左側に位置する各受光素子)へ全て入光する曲率とするのが望ましい。
【0038】
一方、レーザ走査幅の中心部からの光線L21は距離も近く入光面の張る立体角が大きいため、又両側の受光素子群へも入光するために、両端部からの受光量に比べて受光量が大きくなるので、レンズ入力面に入力光した光の一部は受光素子の入光面の外側を通過しても構わない。そのため、集光レンズ21の中央部(視野中心部の近辺領域)の入射面は略平面形状としている。
【0039】
そして、図5(A)に示すように、集光レンズ21のY方向の入射面Ryは、レーザ走査幅の周辺部(集光レンズ21の視野周辺部)からの光線L22が集光レンズ21で収束されて受光素子の入力面に全て入光するように、レーザ走査幅の周辺部におけるY方向の入射面Ryは、曲率半径を小さくした曲面としている。そして、図5(B)に示すように、レーザ走査幅の中心部におけるY方向の入射面Ryは、近距離(最短読み取り距離=読み取りできる集光レンズ21の前面からラベル面まで最短距離、例えば52mm)且つスキャン幅中心部からの光線が全て受光素子の入力面に入光することを避けるため、曲率半径Rを大きくした曲面としている。その場合、遠距離(例えば150mm)からの光線がレンズを通して受光素子の入光面へ入光する際には、入光面への入光効率は高まる。
【0040】
このように、集光レンズ21のY方向の入射面Ryは、レーザ走査幅の中心部と周辺部とで曲率が異なる曲面形状としている。
【0041】
また、集光レンズ21のX方向の出射面は平面で形成し、図4の例のように、各受光素子22はその出射面に近接して直線状に配置した構成とするのが好ましい。
【0042】
図6は、図4中の受光素子22の実装例を示す模式図であり、各受光素子22の最適な配置形態を示している。この図6の実装例は、リード線挿入タイプの受光素子を実装した例を示している。例えば、シリコン型PINフォトダイオードを例にとると、素子の入光面の大きさは約7mm□(そのうち光電変換に寄与する面積は約5mm□)、厚さ約3mmであり、2本のリードをプリント基板に半田付けする。表面実装タイプの受光素子を用いた場合は、フレキシブル基板に半田付けで実装し、角度を形成した台に固定することで、図6に示すような配置形態とする。なお、レーザ走査の走査角は約80°〜120°である。
【0043】
図6において、各受光素子22の傾斜角度は、X方向における読取視野の中央部側に配置される受光素子と比較して両端部側に配置される受光素子の方が大きな角度となっている。また、各受光素子22の配置構成としては、集光レンズ21の前面からのラベル面までの最短読み取り距離(本例では52mm)の位置で且つ集光レンズ21の視野領域のX方向における左端部の位置を第1視点位置P1、右端部の位置を第1視点位置P2とし、それらの第1視点位置P1及び第2視点位置P2からそれぞれ、集光レンズ21の中心軸21cに対して左右対称の位置に配置される第1受光素子群22Aと第2受光素子群22Aのうち当該視点位置に近い側の各受光素子の入光面22aを集光レンズ21を通して見た場合に、隣り合う入光面22aの端部が互いに重なり合う状態となる位置に配置した構成としている。具体的には、集光レンズ21を通した時の光の屈折率に依存するが、例えば、隣接する受光素子の入光面の端部(傾斜面のX方向の端部)が陰にならないように、陰から外れた所に読取幅の端部側から中央部に向けて順次配置した構成とする。その場合、第1視点位置P1と第2視点位置P2との間の中央部の視点位置P3から各受光素子の入光面22aを集光レンズ21を通して見た場合に、受光素子22間の隙間が、端部側より中央部側の方が広く見える状態となる。このことは、視点位置P3に対して全受光素子の張る立体角の総和は、第1視点位置P1または第2視点位置P2に対するものよりも実質的に小さくなることを意味し、走査ビームの画角変化に伴う合成受光量の不均一性を改善し平坦化させることができる。
【0044】
図6の例では、各受光素子22の傾斜角度は、X方向における読取視野の中央部側に配置される受光素子22と比較して両端部側に配置される受光素子22の方が大きな角度としている。また、図6の例においては、集光レンズ21の中心軸21cと直交する面に対する入光面22aの傾斜角度をθとした場合、両端部側に配置される受光素子22の傾斜角度θ=約35°とし、両端部側から中央部へ行くに従って傾斜角度θを徐々に小さくして各受光素子22を配置した構成としている。なお、入射窓の端部や集光レンズの両端部で受光束がケラレて制限を受ける場合など必要に応じて、両端部側に配置される受光素子の方が小さな角度となる構成としてもよい。
【0045】
図4、図5の実施の形態では集光レンズ21は1枚のレンズとしたが、上述のレンズ曲面Rx,Ryを有するレンズを複数枚に分割した構成とすることもできる。1枚レンズの場合は、レンズ自体が大きくなってしまうが部品点数を削減でき組み立ても容易にできる。複数枚の組みレンズに分割すると、部品点数が増えるが部品が小さくてすむ利点がある。部品の管理や組み立ての難易によりレンズの分割を選択すればよい。その場合、前述の「集光レンズ21の中心軸21c」は、XY面上にX方向に配置された複数枚のレンズの中心位置を通るZ方向の軸(枚数が奇数の場合は中央に位置するレンズの中心軸、枚数が偶数の場合は真中の空隙部の位置若しくは中央のレンズ接触部の位置を通る軸)を指しているものとする。
【0046】
なお、上述した実施の形態にいては、1次元コードから成るバーコードラベルを読取対象とした場合を例として説明したが、読取対象は、1次元コードや2次元コードに限るものではなく、情報を幾何学模様で符号化したものや色彩の違いなど符号化したもの全てを対象とすることができる。
【0047】
また、レーザスキャナの設置位置は図1の例に限るものではなく、搬送路の上方や下方に設置するようにしても良い。例えば、搬送物の底部に貼付されたバーコードラベルを読取対象とした場合には、コンベア連結部の隙間の下方に設置し、搬送されるハンガーの支柱部側面に貼付されたバーコードラベルを読取対象とした場合には、その支柱部の位置の側方に設置し、同一形状の箱体の上面に貼付されたバーコードラベルを読取対象とした場合には、その箱体の上面に近接した位置に設置するなど、読取対象の貼付場所や搬送形態に応じて設置することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザスキャナ
10 走査部
10a 射出窓(入射窓)
10b 射出領域
11 レーザ光源
12 反射ミラー
13 偏向ミラー13
14 集束レンズ
20 受光部
21 集光レンズ
Rx X方向の入射面
Ry Y方向の入射面
22 受光素子
22A 第1受光素子
22B 第2受光素子
22a 入光面
30 制御部
40 復号処理部
51 読取対象
52 物品
53 ベルトコンベア
100 外部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象の面上をレーザビームにより走査しその反射光を受光部で受光して前記読取対象を読み取るレーザスキャナにおいて、
前記受光部は、広角の視野を有し且つ前記読取対象の読取幅方向であるX方向の曲率と集光効率を高めるY方向の曲率とが異なる曲面から成る入射面を有する集光レンズと、その後方において前記X方向に配置される複数の受光素子と、を含み、前記X方向の両端部側に配置された受光素子における前記反射光の受光量が前記X方向の中央部側に配置された受光素子よりも大きくなるように、受光素子の入光面を前記集光レンズの中心軸と直交する面に対して所定の傾斜角度で傾斜させて各受光素子を配置して成ることを特徴とするレーザスキャナ。
【請求項2】
前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、入光面の法線がそれぞれ、前記X方向における読取視野の両端部のうちの近方側の端部に向くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項3】
前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、前記傾斜角度がそれぞれ、前記X方向における読取視野の両端部のうちの近方側の端部からの光に対する受光感度が最大となる角度で角度付けされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザスキャナ。
【請求項4】
前記傾斜角度は、前記X方向における読取視野の中央部側に配置される受光素子と比較して両端部側に配置される受光素子の方が大きな角度となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項5】
前記傾斜角度を付けて前記中心軸に対して一方側と他方側に配置される受光素子は、前記中心軸に対して左右対称の位置に且つ左右対称の傾斜角度を付けて配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項6】
前記受光素子は、前記集光レンズの前方の最短読み取り距離の位置で且つ前記集光レンズの視野領域の前記X方向における両端部の位置に第1視点位置及び第2視点位置を設定し、第1視点位置及び第2視点位置からそれぞれ、前記集光レンズの中心軸に対して両側に配置される一方の受光素子と他方の受光素子のうち当該視点位置に近い側の各受光素子の入光面を前記集光レンズを通して見た場合に、隣り合う入光面の端部が互いに重なり合う状態となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項7】
前記集光レンズのX方向の入射面は、レンズ中央部が略平面形状で形成されると共に、その中央部の両端からレンズの両端部に至る部分は端部へ行くにつれて連続的に曲率半径が小さくなるように曲率を変化させた曲面形状で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項8】
前記集光レンズのX方向の出射面が平面で形成されており、前記受光素子がその出射面に近接して直線状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項9】
前記集光レンズは1枚のレンズで構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項10】
前記レーザビームの射出領域に並設して前記受光部を設けると共に、前記走査部と前記受光部とを同一ユニット内に収納し、且つ該ユニットに設けた前記レーザビームの射出窓が前記受光部の入射窓を兼ねる構成としていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のレーザスキャナ。
【請求項11】
前記レーザスキャナは、搬送コンベアに載せて搬送される物品に付されたコードを自動的に読み取る固定式のレーザスキャナである請求項1乃至10のいずれかに記載のレーザスキャナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−98807(P2012−98807A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244134(P2010−244134)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000151601)株式会社東研 (18)
【Fターム(参考)】