コーナー部亀裂測定方法及び測定装置
【課題】構造物のコーナー部における亀裂の検出精度を高める。
【解決手段】導電性の被検査体の亀裂を検査する電位差法において、電流入出力端子対と被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、電位差測定端子対と被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが、コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように各接触点を配置する。
【解決手段】導電性の被検査体の亀裂を検査する電位差法において、電流入出力端子対と被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、電位差測定端子対と被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが、コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように各接触点を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造物のコーナー部に生ずる亀裂を電位差法によって非破壊検査するためのコーナー部亀裂測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や化学プラント、航空機、船舶、車両等に使用されている金属部材には、長年の使用により亀裂が発生することがある。安全運用のため、これらの亀裂を非破壊で検出し、その大きさを測定することが必要であり、そのための非破壊検査法として下記特許文献1に記載の直流電位差法が知られている。
【0003】
これは図13に示すとおり、金属構造物1の表面にプローブ2を宛がって金属構造物1の亀裂1aを検出するものである。プローブ2には、それぞれ対をなす電流入出力端子3,3と電位差測定端子4,4とが一直線上に設けられており、電位差測定端子4,4が亀裂1aの両側に位置し、かつ、上記端子群の並び方向直線A(同図参照)が亀裂1aの伸び方向に対して直交するように配置される。ここで、電流入出力端子3,3は定電流源5に接続され、電位差測定端子4,4は電圧計6に接続されている。
【0004】
そして、定電流源5から電流入出力端子3,3の間で金属構造物1に電流が流され、その電流経路における電位差測定端子4,4の間の電圧が電圧計6によって測定される。金属構造物1に欠陥がない場合には電流は比較的均一に分散して流れるが、電位差測定端子4,4の間に亀裂1aがある場合には、その亀裂1aによって電流分布に乱れが生じるため、欠陥がない場合に比べて電位差測定端子4,4間の電圧が異なって現れる。その電圧は亀裂1aの長さや深さに依存して異なった値になるから、その値を測定することによって、亀裂1aの状態を精度良く検出することができるのである。なお、この測定方法は、上記の原理によって亀裂1aの状態を検出するものであるから、前述の端子3,4群の並び方向直線Aが亀裂1aの中央を直交するように配置することが検出精度を高めるために重要と考えられていた。
【特許文献1】特開平6−109684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査すべき金属構造物は必ずしも図13に示すような平面形状とは限らない。むしろ、金属構造物のコーナー部には応力が集中して亀裂が発生しやすいため、コーナー部を特に測定したいという要望がある。
【0006】
そこで、従来、コーナー部には、例えばその狭隘部のコーナー線に沿って亀裂が発生することが多いことに鑑み、プローブをコーナー部の内側形状に沿った形状に作成し、各端子群がコーナー線に対して直交する方向に並ぶ配置としてコーナー部に宛がうことが試みられていた。
【0007】
しかしながら、上記従来の測定方法では、例えば同じ角度のコーナー部に同じサイズの亀裂が生じたとしても、そのコーナー部の曲率半径の大きさによって検出される電位差が異なってしまい、結局、コーナー部では亀裂の測定精度を十分に高めることができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、構造物のコーナー部における亀裂の検出精度を高めることができるコーナー部亀裂測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコーナー部亀裂測定方法は、導電性の被検査体のコーナー部に電流入出力端子対と電位差測定端子対とを宛がい、前記電流入出力端子対から前記被検査体に流す電流に基づく前記電位差測定端子対間の電位差を測定するコーナー部亀裂測定方法において、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線(以下「直線I」という)と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線(以下「直線V」という)とが、前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように前記各接触点を配置するところに特徴を有する。
【0010】
また、本発明のコーナー部亀裂測定装置は、導電性の被検査体のコーナー部に宛がわれ電流入出力端子対と電位差測定端子対とを備えたプローブと、前記電流入出力端子対を通して前記被検査体に電流を流す電流源と、前記電流入出力端子対間に流れる電流に基づいて前記電位差測定端子対間に生ずる電位差を測定する電位差測定手段とを備え、前記プローブは、前記直線Iと前記直線Vとが前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差する形態で前記接触点を配置可能になっているところに特徴を有する。
【0011】
従来、上記直線I及び直線Vは重なり合う配置であって、これらが亀裂の延び方向に対して直交する配置とすることが好ましいと考えられていたが、本発明では、これらの直線I及び直線Vを、亀裂が発生しやすいコーナー部のコーナー線に対して傾斜するように前記各端子と前記被検査体との接触点を配置することとした。直線I、Vがコーナー線に対して直交して交差すると、コーナー部の形状(曲率半径の大小等)によって電流経路ひいては電位差分布が大きく影響を受けるが、直線I、Vがコーナー線に対して傾斜して交差していると、その傾斜の分、コーナー部の形状に起因した電流経路の影響が減少する。これによりコーナー部の形状にかかわらず、亀裂を高精度に検出することができるようになる。なお、本発明においてコーナー線とは、コーナー部の内側を検査する場合にはコーナー部の狭隘部に沿った線をいい、コーナー部の外側を検査する場合にはコーナー部の稜線に沿った線をいう。
【0012】
前記直線I、Vの傾斜角度(コーナー線から直線I、Vに向かう角度)は、5°〜30°程度が好ましく、特に約10°(9°〜12°程度)が最も好ましいものであった。また、直線Vの傾斜角度を直線Iの傾斜角度よりも大きくすることがより好ましい結果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電体構造物のコーナー部における亀裂の検出精度を、コーナー部の形状にかかわらず高めることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<有限要素法による端子配置の検討>
亀裂測定装置の実機を製作するに先立ち、有限要素法によって端子配置を検討した。解析は有限要素解析ソフトMarcを用いて実施した。試験体はL字型および平面型のものを想定し、断面形状を図1に示す2種とした。L字型および平面型の試験体を用いたのは、実際のコーナー部には様々なRが存在しているため、R=∞である平面型の試験体S1と、R=0である直角のコーナー部が存在する試験体S4とを比較してコーナー部の形状の影響を受けにくいと判断できれば、全てのRに対して適用できると考えたためである(図2のS1〜S4参照)。
【0015】
解析では、平面型における亀裂が存在する場合の電位差をV1,亀裂が存在しない場合の電位差をV0とし,L字型における亀裂が存在する場合の電位差をV1',亀裂が存在しない場合の電位差をV0'とした。また,全て深さ3mmの二次元亀裂を対象に解析を行った。電流入出力端子対間の入力電流は1A、被試験体の抵抗率は72×10-8Ωmとした。
(端子配置A)
【0016】
図3に示す端子配置Aでは、電流入出力端子対と被検査体との接触点を結ぶ直線(直線I)が、亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、電位差測定端子対と被検査体との接触点を結ぶ直線(直線V)が亀裂に対して電流入出力端子対とは逆方向に傾斜して交差するように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔(端子間の亀裂に沿った方向の空間的距離をいう。以下同様)及び電位差測定端子対の間隔は共に3mmとした。この場合には、
V1 ≒ 64.34 μV V0 ≒ 2.52 μV
V1' ≒ 59.32 μmV V0' ≒ 35.21 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒24.5 (V1'- V0')/ V0'≒0.685となる。
これは、平面型におけるV0の値が0に近いため(V1-V0)/V0の値が(V1'- V0')/ V0'より非常に大きくなってしまうため不適切である。
(端子配置B)
【0017】
図4に示す端子配置Bでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側で亀裂の伸び方向に対して平行になるように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は18mmで、電位差測定端子対の間隔は3mmである。この場合には、
V1 ≒ 8.08 μV V0 ≒ 8.08 μV
V1' ≒ 5.26 μV V0' ≒ 5.26 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒0 (V1'- V0')/ V0'≒0となる。
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'共にほぼ0となっているため不適切である。
(端子配置C)
【0018】
図5に示す端子配置Cでは、端子配置Bに比べて電流入出力端子対の間隔を1/3である6mmとし、その他の配置関係は端子配置Bと同様にした。この場合には、
V1 ≒ 62.36 μV V0 ≒ 62.36 μV
V1' ≒ 45.11 μV V0' ≒ 45.11 μV
【0019】
(V1-V0)/V0≒0 (V1'- V0')/ V0'≒0 となり、端子配置Bと同様に(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'の値がほぼ0になってしまい、不適切であった。
(端子配置D)
【0020】
図6に示す端子配置Dでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側で亀裂の伸び方向に対して直交するように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は、18mmで、電位差測定端子対の間隔は3mmとした。この場合には、
V1 ≒ 0.34 μV V0 ≒ 0.52 μV
V1' ≒ 0.18 μV V0' ≒ 1.29 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒−0.34、(V1'- V0')/ V0'≒−0.86となり、
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'がかなり異なった値となっているため不適切である。
(端子配置E)
【0021】
図7に示す端子配置Eでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側において、前記直線Iと平行になるように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は6mmと短くした。この場合には、
V1 ≒ 44.23 μV V0 ≒ 57.24 μV
V1' ≒ 33.21 μV V0' ≒ 58.98 μV
となり、(V1-V0)/V0≒−0.2273 (V1'- V0')/ V0'≒−0.4369となる。
【0022】
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'自体は大きい値であるが,(V1-V0)/V0が(V1'- V0')/ V0'の52.0%であるため未だ有効とはいえない。
(端子配置F)
【0023】
図8に示す端子配置Fでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、電流入出力端子間の間隔は、端子配置B,Dと同様に18mmと端子配置C,Eよりも大きく設定した。そして、直線Vは前記直線Iと同一方向に傾斜し、かつ亀裂に対して交差するように電位差測定端子対を配置した。この場合には、
V1 ≒17.12 μV V0 ≒9.09 μV
V1'≒16.97 μV V0' ≒9.36 μV
となり、(V1-V0)/V0≒0.883 (V1'- V0')/ V0'≒0.814となる。
【0024】
よって、この端子配置Fが、コーナー部の形状の影響を受けにくく、かつ得られた電位差の値を無次元化した亀裂の影響を表す値が大きくなって、最も適切と考えられる。
<亀裂形状を考慮した検討>
【0025】
図8に示した端子配置Fでの解析をさらに進めた。図9に亀裂の各パラメータを示す。亀裂長さを2a,深さをb,試験体表面から亀裂面までの角度をθとして,各パラメータが電位差に与える影響を調べた。その結果をグラフ化して図10に示した。ここで、b/aは亀裂の形状に関するパラメータであり、b/aが0である亀裂は、bに対してaが無限に大きいことを意味しており、亀裂長さ2aに比べて亀裂深さbが非常に浅い二次元亀裂と呼ばれるものである。b/aが1である亀裂は、b≒aであって2aとの相対的比較において亀裂深さbが比較的深い半円亀裂と呼ばれるものである。
【0026】
図10のグラフから、b及びb/aが同じ値を有する亀裂に対し、L字型の試験体であっても平面型の試験体であっても、近い電位差変化(V1-V0)/V0が現れることが判る。このことは、この端子配置Fがコーナー部のRの相違に対して影響を受けにくいことを意味している。
なお、図10及び表1において、電位差変化はL字型及び平面型の双方について(V1-V0)/V0にて表現している。
【0027】
一方、b/aを0と1とに固定し、L字型試験体と平面型試験体についてθを変化させて電位差変化((V1-V0)/V0)とbとの関係を計算すると次の表1のようになる。
【0028】
【表1】
【0029】
上表から、本発明の端子配置Fでは?の影響をほとんど受けないことがわかる。したがって,本端子配置Fは亀裂の角度θによらず、電位差変化(V1-V0)/V0から亀裂深さbを測定することに有効であることが判る。
【0030】
以上の通り、本発明の端子配置Fによれば、コーナー部の形状(Rの大小)の影響を受けることなく、電位差測定端子対間の電位差変化(V1-V0)/V0から亀裂深さbを測定することが可能であることが証明された。そこで、電位差変化(V1-V0)/V0と亀裂深さbとの関係を示した図10のグラフを数式化し(この数式をここでは「校正式」と呼ぶ)、この校正式に実際に測定したV1,V0の値を代入して演算することで、亀裂深さbを算出することができる。
【0031】
校正式の一例を次の式(1)(2)(3)に示す。各式の係数は次の表2〜表4の通りに設定した。なお、校正式中のs1は、電流入出力端子と亀裂との間の距離を示し、ここでは1.5(mm)である(図 8参照)。
【0032】
【数1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
なお、上記表3中のb'は、L字型被検査体によるグラフと、平面型検査体によるグラフとの交点でのbの値を示す。
【0036】
以上の結果から、被検査体の健全部における電位差V0と、亀裂を跨いだ箇所における電位差V1とを測定して、(V1-V0)/V0の値を算出すると共に、亀裂の長さ(2a)を実測し、a、bの値によって場合分けした上記の表2〜表4のいずれかに基づいて校正式の各係数を決定し、各値を代入することで亀裂の深さbを決定することができる。
<実施例>
【0037】
以上の理論的検討に基づいて図11に示すプローブを試作し、図12に示すコーナー部亀裂測定装置を製作し、SUS304製の被試験体によって亀裂深さを実測した。入力電流は3Aである。
【0038】
図11に示すように、プローブ10,10は分割型であって角柱状をなす合成樹脂製の支持体本体11の先端には先細り形状とするための傾斜面12が形成されている。支持体本体11の先端面には、電流入出力端子13と電位差測定端子14とがそれぞれ1本ずつ突設されている。両端子13,14の配置は、X軸方向について間隔7.5mm、Y軸方向について間隔0.5mmとなるようにしている。
【0039】
図12は本実施例のコーナー部亀裂測定装置の全体構成をブロック図で示してある。L型被検査体Sに対して前記プローブ10、10が同図に示すように宛がわれる。同図では判りやすくするためにプローブ10,10の配置状態を模式化して描いてあるが、実際には、各電流入出力端子13,13と各電位差測定端子14,14とがL型被検査体Sに対して図8に示す配置関係となるようにプローブ10,10を宛がう。
【0040】
電流入出力端子13,13には定電流源15が接続されてL型被検査体Sに定電流(3A)が流される。一方、電位差測定端子14,14には電位差測定手段に相当するデジタル電圧計16が接続され、端子14,14間の電位差がデジタル値として検出される。デジタル電圧計16によって検出された電圧値は、RAM等によって校正した記憶手段17に入力されて記憶される。ここでは、プローブ10,10を被検査体Sの健全部(図示せず)に宛がって電位差を測定した値V0と、L型被検査体Sの狭隘部に発生した亀裂Cを両プローブ10,10によって挟んだ状態(図12参照)で測定した値V1との双方が記憶される。
【0041】
次に、電位差変化量演算手段18では上記2種の値V1,V0から電位差変化量として電位差変化率((V1-V0)/V0)を演算する。一方、例えばEPPROM等により構成した校正式記憶手段19には、前述の校正式(1)〜(3)と共に表2〜表4の各係数が記憶されている。そして、亀裂深さ算出手段20は、電位差変化量演算手段18によって演算された上記電位差変化率と、入力手段21によって入力された亀裂Cの長さ(2a)に基づいて、校正式(1)〜(3)に基づいて亀裂Cの深さbを演算し、これを表示部22に表示する。なお、以上述べた深さbの演算処理は、実際には図示しないCPUを所定のプログラムに従って動作させることで行った。
各種の試験片Sample No.1〜No.5について行った深さの評価結果を次表に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
Sample No.1の試験片は、被試験体の疲労試験によって亀裂を生成させたものであり、Sample No.2〜No.5は被試験体に放電加工によってスリット(亀裂)を生成させたものである。Sample No.1については実際の亀裂深さbに対して評価結果が小さく表示され、Sample No.2〜No.5については実際の亀裂深さbに対して評価結果が大きく表示されている。その理由は、疲労試験によって亀裂を生成させた被検査体では、亀裂の開口幅が微小であって接触によって部分的に電流が流れ、それが一因となり電位差変化が小さく現れるものと考えられる。一方、スリットを生成させた被検査体では、スリットの開口幅が大きいため、それが一因となり電位差変化が大きく現れたものと考えられる。しかし、これらはさらに表2〜表4に示した係数を微調整することで解決できることは明かで実用上の問題はない。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施例ではプローブ10,10を2本の別体型としたが、これは一体の支持体に2本の電流入出力端子と2本の電位差測定端子とを配置する一体型構造としてもよい。
【0045】
(2)上記実施形態ではコーナー部の狭隘部側の亀裂を測定する場合について説明したが、これに限らず、それとは反対側の凸側である稜線に沿った箇所に生ずる亀裂を測定する場合にも適用することができる。
【0046】
(3)上記実施例では亀裂深さ算出手段は、校正式に基づき演算するようにしたが、これに限らず亀裂長さ2aと、電位差変化率(V1-V0)/ V0とをパラメータとした亀裂深さbの値をテーブル化して記憶しておき、それらのパラメータから亀裂深さbを読み出すようにしてもよい。
【0047】
(4)上記実施例では亀裂深さbを表示部に表示するようにしたが、これに限らず、算出された亀裂深さbと基準値とを比較し、その比較結果を合否判定等として表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】被試験体の形状を示す断面図
【図2】L型の被試験体のコーナー部の形状の相違(Rの相違)を示す断面図
【図3】端子配置Aを示す模式図
【図4】端子配置Bを示す模式図
【図5】端子配置Cを示す模式図
【図6】端子配置Dを示す模式図
【図7】端子配置Eを示す模式図
【図8】端子配置Fを示す模式図
【図9】亀裂の形状パラメータを示す斜視図
【図10】解析結果を示すグラフ
【図11】プローブを示す斜視図
【図12】本発明のコーナー部亀裂測定装置を示すブロック図
【図13】従来のコーナー部亀裂測定装置のプローブを示すブロック図
【符号の説明】
【0049】
10…プローブ
13…電流入出力端子
14…電位差測定端子
15…定電流源
16…デジタル電圧計(電位差測定手段)
17…電位差記憶手段
18…電位差変化量演算手段
19…校正式記憶手段
20…亀裂深さ算出手段
22…表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造物のコーナー部に生ずる亀裂を電位差法によって非破壊検査するためのコーナー部亀裂測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や化学プラント、航空機、船舶、車両等に使用されている金属部材には、長年の使用により亀裂が発生することがある。安全運用のため、これらの亀裂を非破壊で検出し、その大きさを測定することが必要であり、そのための非破壊検査法として下記特許文献1に記載の直流電位差法が知られている。
【0003】
これは図13に示すとおり、金属構造物1の表面にプローブ2を宛がって金属構造物1の亀裂1aを検出するものである。プローブ2には、それぞれ対をなす電流入出力端子3,3と電位差測定端子4,4とが一直線上に設けられており、電位差測定端子4,4が亀裂1aの両側に位置し、かつ、上記端子群の並び方向直線A(同図参照)が亀裂1aの伸び方向に対して直交するように配置される。ここで、電流入出力端子3,3は定電流源5に接続され、電位差測定端子4,4は電圧計6に接続されている。
【0004】
そして、定電流源5から電流入出力端子3,3の間で金属構造物1に電流が流され、その電流経路における電位差測定端子4,4の間の電圧が電圧計6によって測定される。金属構造物1に欠陥がない場合には電流は比較的均一に分散して流れるが、電位差測定端子4,4の間に亀裂1aがある場合には、その亀裂1aによって電流分布に乱れが生じるため、欠陥がない場合に比べて電位差測定端子4,4間の電圧が異なって現れる。その電圧は亀裂1aの長さや深さに依存して異なった値になるから、その値を測定することによって、亀裂1aの状態を精度良く検出することができるのである。なお、この測定方法は、上記の原理によって亀裂1aの状態を検出するものであるから、前述の端子3,4群の並び方向直線Aが亀裂1aの中央を直交するように配置することが検出精度を高めるために重要と考えられていた。
【特許文献1】特開平6−109684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査すべき金属構造物は必ずしも図13に示すような平面形状とは限らない。むしろ、金属構造物のコーナー部には応力が集中して亀裂が発生しやすいため、コーナー部を特に測定したいという要望がある。
【0006】
そこで、従来、コーナー部には、例えばその狭隘部のコーナー線に沿って亀裂が発生することが多いことに鑑み、プローブをコーナー部の内側形状に沿った形状に作成し、各端子群がコーナー線に対して直交する方向に並ぶ配置としてコーナー部に宛がうことが試みられていた。
【0007】
しかしながら、上記従来の測定方法では、例えば同じ角度のコーナー部に同じサイズの亀裂が生じたとしても、そのコーナー部の曲率半径の大きさによって検出される電位差が異なってしまい、結局、コーナー部では亀裂の測定精度を十分に高めることができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、構造物のコーナー部における亀裂の検出精度を高めることができるコーナー部亀裂測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコーナー部亀裂測定方法は、導電性の被検査体のコーナー部に電流入出力端子対と電位差測定端子対とを宛がい、前記電流入出力端子対から前記被検査体に流す電流に基づく前記電位差測定端子対間の電位差を測定するコーナー部亀裂測定方法において、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線(以下「直線I」という)と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線(以下「直線V」という)とが、前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように前記各接触点を配置するところに特徴を有する。
【0010】
また、本発明のコーナー部亀裂測定装置は、導電性の被検査体のコーナー部に宛がわれ電流入出力端子対と電位差測定端子対とを備えたプローブと、前記電流入出力端子対を通して前記被検査体に電流を流す電流源と、前記電流入出力端子対間に流れる電流に基づいて前記電位差測定端子対間に生ずる電位差を測定する電位差測定手段とを備え、前記プローブは、前記直線Iと前記直線Vとが前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差する形態で前記接触点を配置可能になっているところに特徴を有する。
【0011】
従来、上記直線I及び直線Vは重なり合う配置であって、これらが亀裂の延び方向に対して直交する配置とすることが好ましいと考えられていたが、本発明では、これらの直線I及び直線Vを、亀裂が発生しやすいコーナー部のコーナー線に対して傾斜するように前記各端子と前記被検査体との接触点を配置することとした。直線I、Vがコーナー線に対して直交して交差すると、コーナー部の形状(曲率半径の大小等)によって電流経路ひいては電位差分布が大きく影響を受けるが、直線I、Vがコーナー線に対して傾斜して交差していると、その傾斜の分、コーナー部の形状に起因した電流経路の影響が減少する。これによりコーナー部の形状にかかわらず、亀裂を高精度に検出することができるようになる。なお、本発明においてコーナー線とは、コーナー部の内側を検査する場合にはコーナー部の狭隘部に沿った線をいい、コーナー部の外側を検査する場合にはコーナー部の稜線に沿った線をいう。
【0012】
前記直線I、Vの傾斜角度(コーナー線から直線I、Vに向かう角度)は、5°〜30°程度が好ましく、特に約10°(9°〜12°程度)が最も好ましいものであった。また、直線Vの傾斜角度を直線Iの傾斜角度よりも大きくすることがより好ましい結果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電体構造物のコーナー部における亀裂の検出精度を、コーナー部の形状にかかわらず高めることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<有限要素法による端子配置の検討>
亀裂測定装置の実機を製作するに先立ち、有限要素法によって端子配置を検討した。解析は有限要素解析ソフトMarcを用いて実施した。試験体はL字型および平面型のものを想定し、断面形状を図1に示す2種とした。L字型および平面型の試験体を用いたのは、実際のコーナー部には様々なRが存在しているため、R=∞である平面型の試験体S1と、R=0である直角のコーナー部が存在する試験体S4とを比較してコーナー部の形状の影響を受けにくいと判断できれば、全てのRに対して適用できると考えたためである(図2のS1〜S4参照)。
【0015】
解析では、平面型における亀裂が存在する場合の電位差をV1,亀裂が存在しない場合の電位差をV0とし,L字型における亀裂が存在する場合の電位差をV1',亀裂が存在しない場合の電位差をV0'とした。また,全て深さ3mmの二次元亀裂を対象に解析を行った。電流入出力端子対間の入力電流は1A、被試験体の抵抗率は72×10-8Ωmとした。
(端子配置A)
【0016】
図3に示す端子配置Aでは、電流入出力端子対と被検査体との接触点を結ぶ直線(直線I)が、亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、電位差測定端子対と被検査体との接触点を結ぶ直線(直線V)が亀裂に対して電流入出力端子対とは逆方向に傾斜して交差するように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔(端子間の亀裂に沿った方向の空間的距離をいう。以下同様)及び電位差測定端子対の間隔は共に3mmとした。この場合には、
V1 ≒ 64.34 μV V0 ≒ 2.52 μV
V1' ≒ 59.32 μmV V0' ≒ 35.21 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒24.5 (V1'- V0')/ V0'≒0.685となる。
これは、平面型におけるV0の値が0に近いため(V1-V0)/V0の値が(V1'- V0')/ V0'より非常に大きくなってしまうため不適切である。
(端子配置B)
【0017】
図4に示す端子配置Bでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側で亀裂の伸び方向に対して平行になるように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は18mmで、電位差測定端子対の間隔は3mmである。この場合には、
V1 ≒ 8.08 μV V0 ≒ 8.08 μV
V1' ≒ 5.26 μV V0' ≒ 5.26 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒0 (V1'- V0')/ V0'≒0となる。
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'共にほぼ0となっているため不適切である。
(端子配置C)
【0018】
図5に示す端子配置Cでは、端子配置Bに比べて電流入出力端子対の間隔を1/3である6mmとし、その他の配置関係は端子配置Bと同様にした。この場合には、
V1 ≒ 62.36 μV V0 ≒ 62.36 μV
V1' ≒ 45.11 μV V0' ≒ 45.11 μV
【0019】
(V1-V0)/V0≒0 (V1'- V0')/ V0'≒0 となり、端子配置Bと同様に(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'の値がほぼ0になってしまい、不適切であった。
(端子配置D)
【0020】
図6に示す端子配置Dでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側で亀裂の伸び方向に対して直交するように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は、18mmで、電位差測定端子対の間隔は3mmとした。この場合には、
V1 ≒ 0.34 μV V0 ≒ 0.52 μV
V1' ≒ 0.18 μV V0' ≒ 1.29 μV
となるため、(V1-V0)/V0≒−0.34、(V1'- V0')/ V0'≒−0.86となり、
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'がかなり異なった値となっているため不適切である。
(端子配置E)
【0021】
図7に示す端子配置Eでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、直線Vが亀裂の一方側において、前記直線Iと平行になるように電位差測定端子対を配置した。電流入出力端子対の間隔は6mmと短くした。この場合には、
V1 ≒ 44.23 μV V0 ≒ 57.24 μV
V1' ≒ 33.21 μV V0' ≒ 58.98 μV
となり、(V1-V0)/V0≒−0.2273 (V1'- V0')/ V0'≒−0.4369となる。
【0022】
(V1-V0)/V0, (V1'- V0')/ V0'自体は大きい値であるが,(V1-V0)/V0が(V1'- V0')/ V0'の52.0%であるため未だ有効とはいえない。
(端子配置F)
【0023】
図8に示す端子配置Fでは、直線Iが亀裂に対して傾斜して交差するように電流入出力端子対を配置した。また、電流入出力端子間の間隔は、端子配置B,Dと同様に18mmと端子配置C,Eよりも大きく設定した。そして、直線Vは前記直線Iと同一方向に傾斜し、かつ亀裂に対して交差するように電位差測定端子対を配置した。この場合には、
V1 ≒17.12 μV V0 ≒9.09 μV
V1'≒16.97 μV V0' ≒9.36 μV
となり、(V1-V0)/V0≒0.883 (V1'- V0')/ V0'≒0.814となる。
【0024】
よって、この端子配置Fが、コーナー部の形状の影響を受けにくく、かつ得られた電位差の値を無次元化した亀裂の影響を表す値が大きくなって、最も適切と考えられる。
<亀裂形状を考慮した検討>
【0025】
図8に示した端子配置Fでの解析をさらに進めた。図9に亀裂の各パラメータを示す。亀裂長さを2a,深さをb,試験体表面から亀裂面までの角度をθとして,各パラメータが電位差に与える影響を調べた。その結果をグラフ化して図10に示した。ここで、b/aは亀裂の形状に関するパラメータであり、b/aが0である亀裂は、bに対してaが無限に大きいことを意味しており、亀裂長さ2aに比べて亀裂深さbが非常に浅い二次元亀裂と呼ばれるものである。b/aが1である亀裂は、b≒aであって2aとの相対的比較において亀裂深さbが比較的深い半円亀裂と呼ばれるものである。
【0026】
図10のグラフから、b及びb/aが同じ値を有する亀裂に対し、L字型の試験体であっても平面型の試験体であっても、近い電位差変化(V1-V0)/V0が現れることが判る。このことは、この端子配置Fがコーナー部のRの相違に対して影響を受けにくいことを意味している。
なお、図10及び表1において、電位差変化はL字型及び平面型の双方について(V1-V0)/V0にて表現している。
【0027】
一方、b/aを0と1とに固定し、L字型試験体と平面型試験体についてθを変化させて電位差変化((V1-V0)/V0)とbとの関係を計算すると次の表1のようになる。
【0028】
【表1】
【0029】
上表から、本発明の端子配置Fでは?の影響をほとんど受けないことがわかる。したがって,本端子配置Fは亀裂の角度θによらず、電位差変化(V1-V0)/V0から亀裂深さbを測定することに有効であることが判る。
【0030】
以上の通り、本発明の端子配置Fによれば、コーナー部の形状(Rの大小)の影響を受けることなく、電位差測定端子対間の電位差変化(V1-V0)/V0から亀裂深さbを測定することが可能であることが証明された。そこで、電位差変化(V1-V0)/V0と亀裂深さbとの関係を示した図10のグラフを数式化し(この数式をここでは「校正式」と呼ぶ)、この校正式に実際に測定したV1,V0の値を代入して演算することで、亀裂深さbを算出することができる。
【0031】
校正式の一例を次の式(1)(2)(3)に示す。各式の係数は次の表2〜表4の通りに設定した。なお、校正式中のs1は、電流入出力端子と亀裂との間の距離を示し、ここでは1.5(mm)である(図 8参照)。
【0032】
【数1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
なお、上記表3中のb'は、L字型被検査体によるグラフと、平面型検査体によるグラフとの交点でのbの値を示す。
【0036】
以上の結果から、被検査体の健全部における電位差V0と、亀裂を跨いだ箇所における電位差V1とを測定して、(V1-V0)/V0の値を算出すると共に、亀裂の長さ(2a)を実測し、a、bの値によって場合分けした上記の表2〜表4のいずれかに基づいて校正式の各係数を決定し、各値を代入することで亀裂の深さbを決定することができる。
<実施例>
【0037】
以上の理論的検討に基づいて図11に示すプローブを試作し、図12に示すコーナー部亀裂測定装置を製作し、SUS304製の被試験体によって亀裂深さを実測した。入力電流は3Aである。
【0038】
図11に示すように、プローブ10,10は分割型であって角柱状をなす合成樹脂製の支持体本体11の先端には先細り形状とするための傾斜面12が形成されている。支持体本体11の先端面には、電流入出力端子13と電位差測定端子14とがそれぞれ1本ずつ突設されている。両端子13,14の配置は、X軸方向について間隔7.5mm、Y軸方向について間隔0.5mmとなるようにしている。
【0039】
図12は本実施例のコーナー部亀裂測定装置の全体構成をブロック図で示してある。L型被検査体Sに対して前記プローブ10、10が同図に示すように宛がわれる。同図では判りやすくするためにプローブ10,10の配置状態を模式化して描いてあるが、実際には、各電流入出力端子13,13と各電位差測定端子14,14とがL型被検査体Sに対して図8に示す配置関係となるようにプローブ10,10を宛がう。
【0040】
電流入出力端子13,13には定電流源15が接続されてL型被検査体Sに定電流(3A)が流される。一方、電位差測定端子14,14には電位差測定手段に相当するデジタル電圧計16が接続され、端子14,14間の電位差がデジタル値として検出される。デジタル電圧計16によって検出された電圧値は、RAM等によって校正した記憶手段17に入力されて記憶される。ここでは、プローブ10,10を被検査体Sの健全部(図示せず)に宛がって電位差を測定した値V0と、L型被検査体Sの狭隘部に発生した亀裂Cを両プローブ10,10によって挟んだ状態(図12参照)で測定した値V1との双方が記憶される。
【0041】
次に、電位差変化量演算手段18では上記2種の値V1,V0から電位差変化量として電位差変化率((V1-V0)/V0)を演算する。一方、例えばEPPROM等により構成した校正式記憶手段19には、前述の校正式(1)〜(3)と共に表2〜表4の各係数が記憶されている。そして、亀裂深さ算出手段20は、電位差変化量演算手段18によって演算された上記電位差変化率と、入力手段21によって入力された亀裂Cの長さ(2a)に基づいて、校正式(1)〜(3)に基づいて亀裂Cの深さbを演算し、これを表示部22に表示する。なお、以上述べた深さbの演算処理は、実際には図示しないCPUを所定のプログラムに従って動作させることで行った。
各種の試験片Sample No.1〜No.5について行った深さの評価結果を次表に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
Sample No.1の試験片は、被試験体の疲労試験によって亀裂を生成させたものであり、Sample No.2〜No.5は被試験体に放電加工によってスリット(亀裂)を生成させたものである。Sample No.1については実際の亀裂深さbに対して評価結果が小さく表示され、Sample No.2〜No.5については実際の亀裂深さbに対して評価結果が大きく表示されている。その理由は、疲労試験によって亀裂を生成させた被検査体では、亀裂の開口幅が微小であって接触によって部分的に電流が流れ、それが一因となり電位差変化が小さく現れるものと考えられる。一方、スリットを生成させた被検査体では、スリットの開口幅が大きいため、それが一因となり電位差変化が大きく現れたものと考えられる。しかし、これらはさらに表2〜表4に示した係数を微調整することで解決できることは明かで実用上の問題はない。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施例ではプローブ10,10を2本の別体型としたが、これは一体の支持体に2本の電流入出力端子と2本の電位差測定端子とを配置する一体型構造としてもよい。
【0045】
(2)上記実施形態ではコーナー部の狭隘部側の亀裂を測定する場合について説明したが、これに限らず、それとは反対側の凸側である稜線に沿った箇所に生ずる亀裂を測定する場合にも適用することができる。
【0046】
(3)上記実施例では亀裂深さ算出手段は、校正式に基づき演算するようにしたが、これに限らず亀裂長さ2aと、電位差変化率(V1-V0)/ V0とをパラメータとした亀裂深さbの値をテーブル化して記憶しておき、それらのパラメータから亀裂深さbを読み出すようにしてもよい。
【0047】
(4)上記実施例では亀裂深さbを表示部に表示するようにしたが、これに限らず、算出された亀裂深さbと基準値とを比較し、その比較結果を合否判定等として表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】被試験体の形状を示す断面図
【図2】L型の被試験体のコーナー部の形状の相違(Rの相違)を示す断面図
【図3】端子配置Aを示す模式図
【図4】端子配置Bを示す模式図
【図5】端子配置Cを示す模式図
【図6】端子配置Dを示す模式図
【図7】端子配置Eを示す模式図
【図8】端子配置Fを示す模式図
【図9】亀裂の形状パラメータを示す斜視図
【図10】解析結果を示すグラフ
【図11】プローブを示す斜視図
【図12】本発明のコーナー部亀裂測定装置を示すブロック図
【図13】従来のコーナー部亀裂測定装置のプローブを示すブロック図
【符号の説明】
【0049】
10…プローブ
13…電流入出力端子
14…電位差測定端子
15…定電流源
16…デジタル電圧計(電位差測定手段)
17…電位差記憶手段
18…電位差変化量演算手段
19…校正式記憶手段
20…亀裂深さ算出手段
22…表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の被検査体のコーナー部に電流入出力端子対と電位差測定端子対とを宛がい、前記電流入出力端子対から前記被検査体に流す電流に基づく前記電位差測定端子対間の電位差を測定するコーナー部亀裂測定方法において、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが、前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように前記各接触点を配置することを特徴とするコーナー部亀裂測定方法。
【請求項2】
前記電位差測定端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度は、前記電流入出力端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のコーナー部亀裂測定方法。
【請求項3】
導電性の被検査体のコーナー部に宛がわれ電流入出力端子対と電位差測定端子対とを備えたプローブと、前記電流入出力端子対を通して前記被検査体に電流を流す電流源と、前記電流入出力端子対間に流れる電流に基づいて前記電位差測定端子対間に生ずる電位差を測定する電位差測定手段とを備え、前記プローブは、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差する形態で前記接触点を配置可能となっていることを特徴とするコーナー部亀裂測定装置。
【請求項4】
前記電位差測定端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度は、前記電流入出力端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項3記載のコーナー部亀裂測定装置。
【請求項5】
前記電位差測定手段によって測定された電位差を記憶する電位差記憶手段と、前記被検査体の亀裂測定部位における前記電位差を測定した値と健全部における前記電位差を測定した値とに基づいて前記電位差の変化量を演算する電位差変化量演算手段と、前記電位差の変化量と亀裂深さとの関係を記憶する亀裂深さ算出手段と、前記電位差変化量演算手段によって演算されて前記電位差の変化量に対応して前記亀裂深さ算出手段により導かれた亀裂深さを表示する表示手段とをさらに備える請求項4記載のコーナー部亀裂測定装置。
【請求項1】
導電性の被検査体のコーナー部に電流入出力端子対と電位差測定端子対とを宛がい、前記電流入出力端子対から前記被検査体に流す電流に基づく前記電位差測定端子対間の電位差を測定するコーナー部亀裂測定方法において、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが、前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差するように前記各接触点を配置することを特徴とするコーナー部亀裂測定方法。
【請求項2】
前記電位差測定端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度は、前記電流入出力端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のコーナー部亀裂測定方法。
【請求項3】
導電性の被検査体のコーナー部に宛がわれ電流入出力端子対と電位差測定端子対とを備えたプローブと、前記電流入出力端子対を通して前記被検査体に電流を流す電流源と、前記電流入出力端子対間に流れる電流に基づいて前記電位差測定端子対間に生ずる電位差を測定する電位差測定手段とを備え、前記プローブは、前記電流入出力端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線と、前記電位差測定端子対と前記被検査体とが接触する接触点を結ぶ直線とが前記コーナー部のコーナー線に対して同一方向に傾斜して交差する形態で前記接触点を配置可能となっていることを特徴とするコーナー部亀裂測定装置。
【請求項4】
前記電位差測定端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度は、前記電流入出力端子対が前記被検査体に接触する接触点を結ぶ直線と前記コーナー線との傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項3記載のコーナー部亀裂測定装置。
【請求項5】
前記電位差測定手段によって測定された電位差を記憶する電位差記憶手段と、前記被検査体の亀裂測定部位における前記電位差を測定した値と健全部における前記電位差を測定した値とに基づいて前記電位差の変化量を演算する電位差変化量演算手段と、前記電位差の変化量と亀裂深さとの関係を記憶する亀裂深さ算出手段と、前記電位差変化量演算手段によって演算されて前記電位差の変化量に対応して前記亀裂深さ算出手段により導かれた亀裂深さを表示する表示手段とをさらに備える請求項4記載のコーナー部亀裂測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−145375(P2010−145375A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326339(P2008−326339)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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