説明

コーヒー中のスクロース分解と関連している核酸及びタンパク質

種々のスクロース代謝酵素をコードする配列を含む、コーヒー(コフィア種)から単離された核酸分子及びそのコードされるタンパク質が本明細書に開示される。具体的には、コーヒー由来の、3種のインベルターゼ及び4種のインベルターゼ阻害剤及びそれらのコードするポリヌクレオチドが開示されている。また、コーヒー豆の風味、香り及びその他の特徴に影響を及ぼすために、コーヒーノキの遺伝子調節及び糖プロフィールの操作に、これらのポリヌクレオチドを用いる方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、農業バイオ技術の分野に関する。より詳しくは、本発明は、植物、特に、コーヒーにおいてスクロース代謝に関与している酵素並びにこれらの酵素をコードする遺伝子及び核酸配列、並びにこれらの酵素によるスクロース代謝を調節する調節機構に関する。
【0002】
(発明の背景)
本明細書を通じて引用される、特許、公開された出願及び学術論文をはじめとする種々の刊行物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。本明細書内に十分に示されていない引用は、本明細書の最後に見ることができる。
【0003】
スクロースは、コーヒーの子実又は豆によって送達される最終的な香り及び風味において重要な役割を果たしている。スクロースは、コーヒー中の総遊離還元糖の主要な寄与因子であり、還元糖は、コーヒーにおける重要な風味前駆体である。還元糖は、コーヒーの子実を焙煎する間に、メイラード型反応でアミノ基含有分子と反応し、これにより、通常、コーヒーの風味と関連しているカラメルの香り、甘い香り及び焦げた種類の香り並びに暗い色を含む相当な数の生成物が生じる(Russwurm、1969年;Holscher及びSteinhart、1995年;Badoud、2000年)。最高品質のアラビカの子実(コフィア・アラビカ(coffea Arabica))(7.3%から11.4%の間)は、最低品質のロブスタの子実(コフィア・カネフォラ(coffea canephora))(4から5%の間)よりもかなり高レベルのスクロースを有することがわかった(Russwurm、1969年;Illy及びViani、1995年; Chahanら、2002年;Badoud、2000年)。スクロースは、焙煎の間に著しく分解されるにもかかわらず、焙煎された子実の中に、0.4〜2.8%乾燥重量(DW)という濃度でまだ残っており、このため、コーヒーの甘味に直接的に寄与している。子実中のスクロースのレベルとコーヒーの風味の間には明確な相関関係が存在する。したがって、スクロース代謝に預かる主要な酵素を同定し、単離すること及びスクロース代謝のばらつきの根底にある遺伝的機序によって、コーヒーの品質の改良の技術分野における進歩が可能となる。
【0004】
現在、コーヒーにおけるスクロース代謝に関与している遺伝子又は酵素に関して公開された報告はない。しかし、スクロース代謝は、トマト(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))(コーヒーの近縁種、両方ともキク類(asterid)Iのクラスのメンバーである)において、特にトマトの果実形成の間、研究されている。トマトにおけるスクロース代謝に直接関与している酵素の概説が図1に示されている(Nguyen−Quocら、2001年)。この経路における重要な反応として、(1)スクロースシンターゼ(SuSy)及び細胞質型インベルターゼ(I)によるサイトゾルにおけるスクロースの連続迅速分解、(2)SuSy又はスクロース−ホスフェートシンターゼ(SPS)によるスクロース合成、(3)酸性インベルターゼ(液胞型又は細胞壁結合型)による、液胞における、又はアポプラスト(原形質膜の外側の領域、細胞壁、木部導管などを含む)におけるスクロース加水分解、並びに(4)アミロプラストにおけるデンプンの迅速な合成及び分解がある。
【0005】
その他のシンク器官においてと同様に、スクロース負荷軽減のパターンはトマトの果実形成の間一定ではない。果実形成の初期段階では、スクロースは、シンプラスト経路(細胞間の直接的な連絡)によって師部からそのまま負荷軽減され、負荷軽減の間はその複合ヘキソースに分解されない。この段階でSuSyの発現及び酵素活性の両方が最大であり、師部からのスクロース負荷軽減能と直接の相関がある(シンク強度とも呼ばれる現象;Sunら、1992年;Zrennerら、1995年)。果実形成の後期に、シンプラスト連絡が失われる。負荷軽減のこれらの条件下では、スクロースは、細胞壁結合型インベルターゼによって果実細胞の外側で迅速に加水分解され、次いで、グルコース及びフルクトース生成物がヘキソーストランスポーターによって細胞内に運び入れられる。その後、細胞質においてSuSy又はSPSによってde novoでスクロースが合成される(図1)。SPSは、酵素スクロースホスフェートホスファターゼとのその密接な関係によって、in vivoで本質的に不可逆な反応を触媒する(Echeverriaら、1997年)。シンプラスト連絡の喪失と平行して、果実において、SuSy活性が低下し、熟成の開始時に最終的に検出不能となる(Robinsonら1998年;Wangら、1993年)。したがって、トマトの果実形成の後期では、SPS酵素は、SPと関連して、スクロース合成のための主要な酵素と思われる。
【0006】
植物インベルターゼは、活性のための至適pHに基づいて2つの群に分けられている。第1群のインベルターゼは、中性インベルターゼとして同定されており、7〜8.5の範囲に至適pHを有することを特徴とする。中性インベルターゼは、植物細胞のサイトゾルに局在することがわかっている。第2群のインベルターゼは、酸性インベルターゼとして同定されており、pH4.5と5.5の間に活性のための至適pHを有することを特徴とする。酸性インベルターゼは、可溶性型及び不溶性型の両方で存在することがわかっている(Sturm及びChrispeels、1990年)。不溶性酸性インベルターゼは、不可逆的に、細胞壁と共有結合しているのに対し、可溶性酸性インベルターゼは、液胞及びアポプラストの両方に局在している。
【0007】
過去10年にわたる研究により、液胞型及び細胞壁結合型インベルターゼは、種々の種の果実形成の間のスクロース代謝の調節において重要な酵素であるということがわかった。トマトの赤い果実の種、例えば、市販の種、リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)及び野生種L.ピンピネリフォリウム(L. pimpinellifolium)は、例えば、高レベルのスクロースを貯蔵しないが、代わりに、ヘキソースをグルコース及びフルクトースの形で蓄積する。赤い果実の種と、スクロース蓄積性の緑の果実の種との交雑から得た証拠により、赤い果実のトマト種における最終スクロース蓄積の阻止における酸性インベルターゼの重大な役割がわかった(Yelleら、1991年)。遺伝子分析研究により、L.ピンピネリフォリウムの果実中の高レベルの可溶性固体を付与する遺伝子座が、液胞型インベルターゼTIV1の既知の位置に位置づけられた(Tanksleyら、1996年;Grandillo及びTanksley、1996年)。トランスジェニックトマトにおけるアンチセンスTIV1 cDNA構築物の発現の分析からも、同様の結論に到達した(Klannら、1993年;Klannら、1996年)。したがって、液胞型のインベルターゼは、成熟果実におけるヘキソースレベルの調節と液胞に貯蔵されるスクロースの流動の調節の両方において主要な役割を果たすと考えられる(Klannら、1993年;Yau及びSimon、2003年)。細胞壁結合型アイソフォームは、師部負荷軽減及びスクロース分配に関与していると考えられている(Scholesら、1996年)。
【0008】
細胞壁結合型インベルターゼの重要性は、細胞壁型インベルターゼを構成的に過剰発現するトランスジェニックトマト(Dickinsonら、1991年)及びタバコ(von Schaewenら、1990年)植物を用いる研究によって実証されている。このような植物におけるインベルターゼ活性レベルの上昇は、シンク及びソース組織間のスクロース輸送レベルの低下を引き起こし、これは発育不全及び植物形態の全体的な変更をもたらした。細胞外インベルターゼ活性の低下はまた、種々の種における植物及び種子の発達に著しい効果を有することがわかっている。アンチセンス細胞壁型インベルターゼ構築物の構成的発現のために細胞壁型インベルターゼのレベルが低いトランスジェニックニンジンの分析によって(Tangら、1999年)、初期植物発達に対する、及び初期伸長相の間の主根形成に対して著しい結果が示された。
【0009】
miniature−1(mn1)(Lowe及びNelson、1946年)、異常な小花柄及び胚乳の大きさの著しい減少を特徴とするトウモロコシの種子突然変異体の研究により、Mn1種子遺伝子座は細胞壁型インベルターゼ、CWI−2をコードすることがわかった(Miller及びChourey、1992年;Chengら、1996年)。興味深いことに、mn1突然変異体では、全体的な酸性インベルターゼ(液胞型及び細胞壁結合型)活性が著しく低下し、これは、液胞型及び細胞壁型酵素活性両方の協調制御を示唆する。
【0010】
高品質コーヒーの風味にとってのスクロースの重要性のために、スクロース豆の代謝及びその代謝に関与している遺伝子の相互作用を調べる必要性が存在する。また、コーヒー中のこれらの酵素をコードする遺伝子を同定及び単離する必要性もあり、それによってコーヒーの風味及び香りを操作するためにコーヒー豆中のスクロース産生を改変するための遺伝子ツール及び生化学的ツールを提供する。
【0011】
(発明の概要)
本発明の一態様は、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードするコード配列を含む、コーヒー(コフィア種)から単離された核酸分子を特徴とする。一実施形態では、コード配列はインベルターゼをコードし、これは細胞壁型インベルターゼであっても、液胞型インベルターゼであっても、中性インベルターゼであってもよい。特定の実施形態では、細胞壁型インベルターゼは、アミノ酸配列WECPDFを有する保存されたドメインを含む。種々の実施形態では、インベルターゼは、配列番号9又は配列番号13と55%を超えて同一のアミノ酸配列を含み、好ましくは、配列番号9又は配列番号13を含む。例示的な実施形態では、核酸分子は、配列番号1又は配列番号4を含む。
【0012】
別の実施形態では、インベルターゼは液胞型インベルターゼであり、アミノ酸配列WECVDFを有する保存されたドメインを含む。液胞型インベルターゼは、配列番号10と70%以上同一のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号10を含むことが好ましい。例示的一実施形態では、液胞型インベルターゼをコードする核酸分子は、配列番号2を含む。
【0013】
別の実施形態では、インベルターゼは中性インベルターゼであり、配列番号11と84%以上同一のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号11を含むことが好ましい。例示的一実施形態では、中性インベルターゼをコードする核酸分子は、配列番号3を含む。
【0014】
その他の実施形態では、コード配列はインベルターゼ阻害剤をコードする。特定の実施形態では、インベルターゼ阻害剤は、そのアミノ酸配列中に4個の保存されたシステイン残基を含む。インベルターゼ阻害剤は、配列番号13、14、15又は16のうちいずれか1つと25%以上同一であるアミノ酸配列を含むことができ、配列番号13、14、15又は16のいずれか1種を含むことが好ましい。例示的実施形態では、インベルターゼ阻害剤をコードする核酸分子は、配列番号5、6、7又は8のうちいずれか1つを含む。
【0015】
特定の実施形態では、上記のコード配列は、遺伝子のオープンリーディングフレームである。その他の実施形態では、その遺伝子の転写によって生じたmRNA分子、又は特許請求されるmRNA分子の逆転写によって生じたcDNA分子である。別の実施形態は、前記の核酸分子のセグメントと相補的である、8〜100の間の塩基長のオリゴヌクレオチドを対象とする。
【0016】
本発明の別の態様は、上記の核酸分子をコードするインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤のコード配列を含むベクターを特徴とする。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌、酵母及びウイルスベクターからなるベクターの群から選択される発現ベクターである。種々の実施形態は、核酸分子のコード配列が、構成的プロモーターと、又は誘導性プロモーターと、又は組織特異的プロモーターと作動可能に連結されているベクターを含み、後者の実施形態では、種子特異的プロモーターが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様では、上記のベクターのいずれかで形質転換された宿主細胞も提供する。宿主細胞は、植物細胞、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞又は哺乳類細胞であり得る。本発明の形質転換された植物細胞から生じた稔性(fertile)も提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、コーヒー種子内の1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を調節することを含む、コーヒー豆の風味又は香りを調節する方法を特徴とする。特定の実施形態では、本方法は、1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を増大させることを含む。特定の実施形態では、これは、コーヒー種子内の1種又は複数の内因性インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤遺伝子の発現を増大させることによって達成される。その他の実施形態は、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする導入遺伝子を植物に導入することを含む。
【0019】
特定の実施形態では、本方法は1種又は複数のインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を増大させることを含む。この実施形態では、植物中の内因性インベルターゼ活性を、インベルターゼ阻害剤の産生又は活性が増大されていない同等の植物と比較して低減させることができる。さらに、植物は、その種子に、インベルターゼ阻害剤の産生又は活性が増大されていない同等の植物よりも多くのスクロースを含み得る。
【0020】
その他の実施形態では、本方法は、1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を低減させることを含む。これは、1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする遺伝子の発現を阻害する核酸分子をコーヒーに導入することによって達成できる。特定の実施形態では、インベルターゼの発現又は活性が低減される。この実施形態では、植物は、その種子に、インベルターゼの産生又は活性が低減されていない同等の植物よりも多くのスクロースを含み得る。
【0021】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の図、詳細な説明及び実施例を参照することによって理解される。
【0022】
(例示的実施形態の詳細な説明)
定義:
本発明の生体分子及びその他の態様に関する種々の用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通じて用いられている。これらの用語は、本明細書において特に断りのない限り、分子生物学及び生化学の分野におけるそれらの通常の意味を有すると見なされる。
【0023】
用語「スクロース代謝酵素」とは、主にスクロースを植物体内に蓄積するよう、又はスクロースを分解するよう機能する植物中の酵素を指し、これとしては、例えば、スクロースシンターゼ(SuSy)、スクロースホスフェートシンターゼ(SPS)及びスクロースホスファターゼ(SP)並びに種々の種類のインベルターゼ(Inv)及びインベルターゼ阻害剤(Inv I)が挙げられる。種々のスクロース代謝酵素が一緒になって、貯蔵又はエネルギー需要のいずれかのための植物による必要に応じてスクロースの代謝を制御するよう働く。
【0024】
「単離された」とは、天然の状態から「人の手によって」変えられたことを意味する。組成物又は物質が天然に生じる場合には、その最初の環境から変更されるか、又は取り出されている、或いはその両方である場合に「単離されている」。例えば、生存している植物又は動物中に天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチエ(polypeptie)は「単離されて」いないが、その天然状態の共存する物質から分離されている同一ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、本明細書においてこの用語が用いられるように「単離されている」。
【0025】
「ポリヌクレオチド」はまた「核酸分子」とも呼ばれ、通常、修飾されていないRNA若しくはDNA又は修飾されたRNA若しくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、制限するものではないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖であってもよく、より通常は、二本鎖であってもよく、又は一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であり得るDNAとRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、「ポリヌクレオチド」とは、RNA若しくはDNA又はRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語ポリヌクレオチドとはまた、1個又は複数の修飾された塩基を含むDNA又はRNA及び安定性のため、若しくはその他の理由のために主鎖が修飾されているDNA又はRNAを含む。「修飾された」塩基としては、例えば、トリチル化塩基及びイノシンなどの異常な塩基が挙げられる。DNA及びRNAには、さまざまな修飾を行うことができ、したがって、「ポリヌクレオチド」は、通常天然に見られるポリヌクレオチドの化学的に、酵素的に、又は代謝的に修飾された形、並びにウイルス及び細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短いポリヌクレオチドも包含し、これはオリゴヌクレオチドと呼ばれることも多い。
【0026】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合又は修飾されたペプチド結合、すなわち、ペプチドイソスターによって互いに結合している、2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を指す。「ポリペプチド」とは、ペプチド、オリゴペプチド又はオリゴマーとよく呼ばれる短い鎖と、一般に、タンパク質と呼ばれる長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20種の遺伝子によってコードされるアミノ酸以外のアミノ酸も含み得る。「ポリペプチド」は、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによってか、又は当技術分野で周知の化学修飾技術によってのいずれかで修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は、基本的な教本に、より詳細な研究論文に、並びに多量の研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端をはじめ、ポリペプチド中のどこでも起こり得る。当然のことながら、所与のポリペプチド中のいくつかの部位に、同種の修飾が、同程度に又はさまざまな程度に存在し得る。所与のポリペプチドはまた、多数の種類の修飾を含み得る。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分岐している場合もあり、分岐を含むか含まない、環状である場合もある。環状、分岐及び分岐環状ポリペプチドは、天然の翻訳後プロセスの結果である場合もあるし、合成法によって製造することもできる。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、例えば、アルギニル化のようなアミノ酸のタンパク質へのトランスファーRNA媒介性付加、及びユビキチン化が挙げられる。例えば、Proteins −Structure and Molecular Properties、第2版、T. E.Creighton、W. H.Freeman and Company、New York、1993年及びPosttranslational Covalent Modification of Proteins、B. C. Johnson編、Academic Press、New York、1983年中、Wold, F.、Posttranslational Protein Modefications:Perspectives and Prospects、1〜12頁;Seifterら、「Analysis for Protein Modifications and Nonprotein Cofactors」、Meth Enzymol(1990年)182:626〜646頁及びRattanら、「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」、Ann NY Acad Sci(1992年)663:48〜62頁参照のこと。
【0027】
本明細書において「変異体」とは、それぞれ、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるが、本質的特性は保持しているポリヌクレオチド又はポリペプチドである。ポリヌクレオチドの通常の変異体は、別の参照ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列における変化は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更するものである場合もそうでない場合もある。ヌクレオチドの変化は、以下に論じるように、参照配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸置換、付加、欠失、融合及び末端切断をもたらし得る。ポリペプチドの通常の変異体は、別の参照ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、相違は、参照ポリペプチドの配列と変異体の配列が全体的に極めて類似しており、多くの領域では、同一であるよう限定される。変異体及び参照ポリペプチドは、任意の組合せの、1つ又は複数の置換、付加又は欠失によってアミノ酸配列で異なり得る。置換又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものである場合もそうではない場合もある。ポリヌクレオチド又はポリペプチドの変異体は天然に存在する、例えば、対立遺伝子変異体である場合もあり、又は天然に存在することがわかっていない変異体である場合もある。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発技術によって、又は直接合成によって作製できる。
【0028】
突然変異植物に関連して、用語「ヌル突然変異体」又は「機能喪失型突然変異体」とは、遺伝子産物を機能しないように又は大部分存在しないようにさせる突然変異を有する生物又はゲノムDNA配列を示すよう用いられる。このような突然変異は、遺伝子のコード領域及び/又は調節領域において起こり得、個々の残基の変化である場合も、核酸の領域の挿入又は欠失である場合もある。これらの突然変異はまた、遺伝子及び/又はコードされるタンパク質を、そのタンパク質を機能しないように又は大部分存在しないようにさせるよう調節又は制御し得るその他の遺伝子のコード領域及び/又は調節領域において起こり得る。
【0029】
用語「実質的に同一」とは、タンパク質の性質(すなわち、タンパク質の構造、安定性特性、基質特異性及び/又は生物活性)に大きくは影響を及ぼさない配列変化を有する核酸又はアミノ酸配列を指す。核酸配列に特に関連して、用語「実質的に同一」とは、コード領域及び発現を支配する保存された配列を指すものとし、主として、コードされるポリペプチドにおいて同一アミノ酸をコードする縮重コドン又は保存的代替アミノ酸をコードする代替コドンを指す。アミノ酸配列に関連して、用語「実質的に同一」とは、通常、構造又は機能の決定に関与していないポリペプチドの領域中の保存的置換及び/又は変化を指す。
【0030】
また、本明細書において用語「同一性パーセント」及び「類似性パーセント」とは、アミノ酸及び核酸配列間の比較において用いられる。アミノ酸配列を参照する場合に、「同一性」又は「同一性パーセント」とは、配列分析プログラムによって比較されるアミノ酸配列中の同一アミノ酸にマッチされた対象アミノ酸配列のアミノ酸のパーセントを指す。「類似性パーセント」とは、同一又は保存されたアミノ酸とマッチされた対象アミノ酸配列のアミノ酸のパーセントを指す。保存されたアミノ酸とは、構造は異なっているが、物理的特性は類似しており、その結果、互いの交換が、得られるタンパク質の三次構造を大きくは変えないものである。保存的置換は、Taylor(1986年、J. Theor.Biol.119:205)において定義されている。核酸分子に関連して、「同一性パーセント」とは、配列分析プログラムによって同一ヌクレオチドとマッチされた対象核酸配列のヌクレオチドのパーセントを指す。
【0031】
「同一性」及び「類似性」は、既知の方法によって容易に算出できる。核酸配列及びアミノ酸配列は、核酸又はアミノ酸の類似配列をアラインし、そのようにして相違を規定するコンピュータプログラムを用いて比較できる。好ましい方法論では、BLASTプログラム(NCBI)及びそれに用いられるパラメータが用いられ、ゲノムDNA配列の配列断片をアラインするためには、DNAstarシステム(Madison、WI)が用いられる。しかし、標準的なアラインメントソフトウェアのいずれを用いても同等のアラインメント及び類似性/同一性評価を得ることができる。例えば、ウィスコンシン州、マディソンのGenetics Computer Groupから入手可能である、GCG Wisconsin Packageバージョン9.1及びそのプログラムによって用いられるデフォルトパラメータ(ギャップ作製ペナルティ=l2、ギャップ伸長ペナルティ=4)を用いて、配列同一性及び類似性を比較することができる。
【0032】
本明細書において「抗体」としては、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体及びヒト化抗体、並びに抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)及びF)が挙げられ、Fab又はその他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物も含む。抗体に関連して、用語「免疫学的に特異的」又は「特異的」とは、注目するタンパク質の1種又は複数のエピトープと結合するが、抗原性生体分子の混合集団を含むサンプル中のその他の分子を実質的に認識し、結合しない抗体を指す。抗体の結合特異性を調べるスクリーニングアッセイは、当技術分野では周知であり、日常的に実施されている。このようなアッセイの包括的な考察については、Harlowら(編)、ANTIBODIES A LABORATORY MANUAL;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、NY(1988年)、第6章参照のこと。
【0033】
用語「実質的に純粋」とは、少なくとも50〜60重量%の注目する化合物(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)を含む調製物を指す。調製物が注目する化合物を少なくとも75重量%を含むことがより好ましく、90〜99重量%が最も好ましい。純度は、注目する化合物にとって適当な方法(例えば、クロマトグラフィー法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)によって測定される。
【0034】
一本鎖核酸分子に関連して、用語「特異的にハイブリダイズする」とは、当技術分野で通常用いられる所定の条件下でのこのようなハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補的な配列の2つの一本鎖核酸分子間の結合を指す(「実質的に相補的」と呼ばれることもある)。特に、この用語は、一本鎖DNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列とのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを指し、非相補的配列の一本鎖核酸とのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの実質的な排除を指す。
【0035】
「コード配列」又は「コード領域」とは、配列が発現される場合に、遺伝子産物を産生するために必要な配列情報を有する核酸分子を指す。コード配列は、翻訳領域内の非翻訳配列(例えば、イントロン又は5’若しくは3’非翻訳領域)を含む場合もあり、又はこのような介在非翻訳配列を欠く場合もある(例えば、cDNAにおけるように)。
【0036】
「イントロン」とは、タンパク質合成と関連している情報をコードしない核酸中のポリヌクレオチド配列を指す。このような配列はmRNAに転写されるが、mRNAのタンパク質への翻訳の前に除去される。
【0037】
用語「作動可能に連結している」又は「作動可能に挿入された」とは、コード配列の発現に必要な調節配列が、コード配列の発現を可能にするようコード配列と関連する適当な位置で核酸分子中に位置していることを意味する。例として、プロモーターは、プロモーターがそのコード配列の転写又は発現を制御できる場合に、コード配列を作動可能に連結している。コード配列は、プロモーター又は調節配列と、センス又はアンチセンス方向で作動可能に連結し得る。用語「作動可能に連結している」とは、発現ベクター中のその他の転写制御エレメント(例えば、エンハンサー)の配置に適用される場合もある。
【0038】
転写及び翻訳制御配列とは、DNA調節配列であり、例えば、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどがある。
【0039】
用語「プロモーター」、「プロモーター領域」又は「プロモーター配列」とは、通常、コード領域の5’又は3’側に、又はコード領域内に、又はイントロン内に見ることができる遺伝子の転写調節領域を指す。通常、プロモーターは、細胞中でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することを可能にするDNA調節領域である。通常の5’プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位によって結合されており、上流(5’方向)に伸び、バックグラウンドを上回る検出可能なレベルでの転写を開始するのに必要な最小数の塩基又はエレメントを含んでいる。プロモーター配列内に、転写開始部位(好都合なことに、ヌクレアーゼS1を用いるマッピングによって規定される)及びRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)がある。
【0040】
「ベクター」とは、別の核酸セグメントが、そのセグメントの複製又は発現を引き起こすよう作動可能に挿入され得るレプリコン、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド又はウイルスである。
【0041】
用語「核酸構築物」又は「DNA構築物」とは、コード配列を、又は適当な調節配列と作動可能に連結しており、細胞を形質転換するためにベクターに挿入されている配列を指すよう用いられることもある。この用語は、用語「形質転換用DNA」又は「導入遺伝子」と同じ意味で使用できる。このような核酸構築物は、注目する遺伝子産物のコード配列を、選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子とともに含み得る。
【0042】
「マーカー遺伝子」又は「選択マーカー遺伝子」とは、コードされる遺伝子産物が、遺伝子を含む細胞が、遺伝子を含まない細胞の中から選択されることを可能にする特徴を付与する遺伝子である。遺伝子工学に用いられるベクターは、通常、1種又は複数の選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子の種類としては、(1)抗生物質耐性遺伝子、(2)除草剤耐容性又は耐性遺伝子及び(3)形質転換された細胞が、そうでなければ細胞が産生できない必須成分、通常、アミノ酸を合成するのを可能にする代謝又は栄養要求性マーカー遺伝子が挙げられる。
【0043】
「リポーター遺伝子」もまた、マーカー遺伝子の1種である。これは通常、標準的な実験室手段によってアッセイ可能な又は検出可能な遺伝子産物(例えば、酵素活性、蛍光)をコードする。
【0044】
用語、遺伝子を「発現する」、「発現された」又は遺伝子の「発現」とは、遺伝子産物の生合成を指す。このプロセスは、遺伝子のmRNAへの転写と、それに次ぐ、mRNAの1種又は複数のポリペプチドへの翻訳を含み、すべての天然に存在する翻訳後修飾を包含する。
【0045】
「内因性」とは、指定の生物内に天然に見ることができる任意の成分、例えば、遺伝子若しくは核酸又はポリペプチドを指す。
【0046】
核酸構築物の「異種」領域とは、本来は大きな分子と関連して見られない、大きな分子内の核酸分子の同定可能なセグメント(又は複数のセグメント)である。したがって、異種領域が遺伝子を含む場合には、この遺伝子は通常、供給源生物のゲノム中でゲノムDNAに隣接しないDNAによって隣接される。もう1つの実施例では、異種領域は、コード配列自体が本来見られない(すなわち、ゲノムコード配列がイントロンを含むcDNA又は天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)構築物である。対立遺伝子変異又は天然に存在する突然変異事象は、本明細書に定義されるDNAの異種領域を生じさせない。上記で定義される用語「DNA構築物」とはまた、異種領域、特に、細胞の形質転換において使用するために構築されたものを指すよう用いられる。
【0047】
細胞は、外因性又は異種DNAが細胞の内側に導入されている場合に、このようなDNAによって「形質転換」又は「トランスフェクト」されている。形質転換用DNAは、細胞のゲノムに組み込まれている(共有結合されている)場合もそうでない場合もある。例えば、原核生物、酵母及び哺乳類細胞では、形質転換用DNAは、エピソームエレメント、例えば、プラスミド上で維持され得る。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞とは、形質転換用DNAが染色体に組み込まれ、その結果、染色体複製を介して嬢細胞によって遺伝されるようになったものである。この安定性は、真核細胞の、形質転換用DNAを含む嬢細胞の集団を含む細胞株又はクローンを確立する能力によって実証される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一細胞又は共通の祖先に由来する細胞の集団である。「細胞株」とは、多世代にわたってin vitroで安定増殖できる一次細胞のクローンである。
【0048】
「子実」、「種子」又は「豆」とは、別のこのような植物に発達できる顕花植物の繁殖単位を指す。本明細書において、特に、コーヒーノキに関して、この用語は同意語として及び同じ意味で用いられる。
【0049】
本明細書において、用語「植物」は、全植物体、植物器官(例えば、葉、茎、芽、根)、種子、花粉、植物細胞、植物細胞小器官及びその子孫への言及を含む。トランスジェニック植物の一部とは、本発明の範囲内では、例えば、トランスジェニック植物又はその子孫に由来する植物細胞、プロトプラスト、組織、カルス、胚及び花、茎、種子、花粉、果実、葉又は根を含むと理解される。
【0050】
説明:
スクロースは、コーヒーの子実の焙煎中に起こるメイラード反応に関与する遊離還元糖の主な寄与因子である。したがって、緑色のコーヒーの子実中の重要な風味前駆体分子であると広く考えられている。この考えに一致して、最高品質のアラビカの子実は、最低品質のロブスタの子実(4〜5%の間)よりも、かなり高レベルのスクロースを有している(7.3〜11.4%の間)。また、スクロースは、焙煎の間に著しく分解されるが、焙煎された子実中に0.4〜2.8%乾燥重量(DW)という濃度で残存することができ、その結果、コーヒーの甘味に直接関与する。子実中のスクロースのレベルとコーヒーの風味の間の明確な相関関係のために、コーヒーの子実におけるスクロース代謝及び炭素分配における変動について、根底にある遺伝的機序を理解し、操作する能力が重要である。
【0051】
スクロース代謝に関与している重要な酵素は、モデル生物(例えば、トマト、ジャガイモ、シロイヌナズナ)において特性決定されている。実施例に詳細に記載されるように、本発明に従って、これらの酵素のタンパク質配列を用い、tBLASTnアルゴリズムを用いてコフィア・カネフォラ及びコフィア・アラビカcDNAライブラリー及びESTデータベースにおいて類似性検索を実施した。CcInv1(細胞壁結合型インベルターゼ)、CcInv2(液胞型インベルターゼ)及びCaInv3(細胞質型インベルターぜ)をコードする全長cDNAを単離した。部分cDNA配列(CcInv4)もまた、単離し、細胞壁結合型インベルターゼに相当すると考えられる。さらに、インベルターゼ阻害剤CcInvI1、CcInvI2、CcInvI3及びCcInvI4をコードする可能性のある4種の全長cDNA配列を同定し特性決定した。
【0052】
本発明の一態様は、種々のインベルターゼ:細胞壁型インベルターゼCcInv1(配列番号1)及びCcInv4(配列番号4−部分配列)、液胞型インベルターゼCcInv2(配列番号2)及び中性インベルターゼCaInv3(配列番号3)並びに4種の全長インベルターゼ阻害剤:CcInvI1(配列番号5)、CcInvI2(配列番号6)、CcInvI3(配列番号7)及びCcInvI4(配列番号8)をコードするコーヒーに由来する核酸分子に関する。
【0053】
本発明の別の態様は、これらの核酸分子の発現によって産生されるタンパク質及びその使用に関する。配列番号1、2、3、4、5、6、7及び8の発現によって産生されるタンパク質の推定アミノ酸配列が、それぞれ配列番号9、10、11、12、13、14、15及び16として本明細書に示されている。本発明のさらにその他の態様は、植物育種における、また植物の遺伝子操作における、最終的には、コーヒーの風味、香り及びその他の品質の操作における核酸分子及びコードされるポリペプチドの使用に関する。
【0054】
本明細書には、コフィア・カネフォラに由来するインベルターゼ及びインベルターゼ阻害剤をコードするポリヌクレオチドが記載され例示されているが、本発明は、以下に記載される目的で、C.カネフォラ ポリヌクレオチド及びタンパク質と互換的に用いられるよう十分に類似しているその他のコフィア種に由来する核酸及びコードされるタンパク質を包含するものとする。したがって、本明細書において用語「インベルターゼ」及び「インベルターゼ阻害剤」を用いる場合には、特に断りのない限り、それらは、本明細書に記載される全体的な物理的特徴、生化学的特徴及び機能的特徴を有するすべてのコフィア種インベルターゼ及びインベルターゼ阻害剤並びにそれらをコードするポリヌクレオチドを包含するものとする。
【0055】
それらの配列の点から考えると、本発明のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤ポリヌクレオチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7及び8の対立遺伝子変異体及び天然突然変異体を含み、これらはC.カネフォラの種々の品種において見られる可能性があり、配列番号9、10、11、12、13、14、15及び16の相同体は種々のコフィア種において見られる可能性がある。このような変異体及び相同体は、ヌクレオチド及びアミノ酸配列に特定の相違を有すると予測されるので、本発明は(1)配列番号9、10、11又は12のうちいずれか1つのコードされるポリペプチドと、少なくとも70%(より好ましくなる順に、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、70%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%)の同一性を有するそれぞれのポリペプチドをコードする、単離されたインベルターゼをコードする核酸分子、並びに(2)配列番号13、14、15又は16のうちいずれか1つのコードされるポリペプチドと少なくとも約25%(より好ましくなる順に、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70% 71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、70%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%)の同一性を有するそれぞれのポリペプチドをコードし、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか1種に対して同等の範囲の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、単離されたインベルターゼ阻害剤をコードする核酸分子を提供する。種々のコーヒー品種及び種において、インベルターゼ及びインベルターゼ阻害剤並びにそれらをコードする遺伝子間に存在する可能性がある天然配列変異のために、当業者ならば、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの独特の特性を依然として維持しながら、このレベルの変異を見出すことは予想する。このような予想は、一部は、コードされるタンパク質の性質を大きくは変更しない、遺伝暗号の縮重及び保存的アミノ酸配列変異の既知の進化的成功による。したがって、このような変異体及び相同体は、互いに実質的同一と考えられ、本発明の範囲内に含まれる。
【0056】
以下の節は、本発明の実施に関与する一般的な手順を示す。具体的な材料が記載される限り、単に例示目的であり、本発明を制限しようとするものではない。特に断りのない限り、一般的な生化学及び分子生物学の手順、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory (1989年)又はAusubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons (2005年)に示されるものを用いる。
【0057】
核酸分子、タンパク質及び抗体:
本発明の核酸分子は、2つの一般的な方法によって調製できる:(1)適当なヌクレオチド三リン酸から合成できるか、又は(2)生物学的供給源から単離することができる。両方法とも、当技術分野で周知のプロトコールを利用する。
ヌクレオチド配列情報、例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8を有するcDNAを利用できることによって、オリゴヌクレオチド合成による本発明の単離された核酸分子の調製が可能となる。合成オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 38A DNA Synthesizer又は類似の装置において用いられるホスホルアミダイト法によって調製できる。得られた構築物は、当技術分野で公知の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に従って精製できる。長い、二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、本発明のDNA分子は、現在のオリゴヌクレオチド合成法に固有の大きさ制限のために段階で合成しなくてはならない。したがって、例えば、長い、二本鎖分子は、適当な相補性のいくつかの小さなセグメントとして合成すればよい。このように製造された相補的セグメントを、各セグメントが隣接するセグメントの連結のための適当な付着末端を有するようアニーリングすることができる。隣接するセグメントは、DNAリガーゼの存在下でアニーリングする付着末端によって連結し、長い二本鎖分子の全体を構築することができる。次いで、そのように構築された合成DNA分子をクローニングし、適当なベクター中で増幅させることができる。
【0058】
本発明に従って、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤ポリヌクレオチドのコード領域及び/又は調節領域の一部又はすべてと、適当なレベルの配列相同性を有する核酸を、適当なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いることによって同定できる。当業者には当然のことながら、前述の戦略は、ゲノム配列に適用する場合には、スクロース代謝酵素をコードする配列の単離を可能にすることに加え、スクロース代謝酵素遺伝子と関連しているプロモーター及びその他の遺伝子調節配列の単離も、たとえ、調節配列自体が適したハイブリダイゼーションを可能にする十分な相同性を共有していない場合であっても可能にする。
【0059】
代表的な例示として、ハイブリダイゼーションは、Sambrookらの方法に従い、5×SSC、5×デンハルトの試薬、1.0% SDS、100μg/mlの変性、断片化サケ精子DNA、0.05%ピロリン酸ナトリウム及び最大50%のホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液を用いて実施できる。ハイブリダイゼーションは、37〜42℃で少なくとも6時間実施する。ハイブリダイゼーション後、フィルターを以下の通りに洗浄する:(1)2×SSC及び1%SDS中、室温で5分、(2)2×SSC及び0.1%SDS中、室温で15分、(3)2×SSC及び0.1%SDS中、37℃で30分〜1時間、(4)溶液を30分毎に変更しながら、2×SSC及び0.1%SDS中、45〜55℃で2時間。
【0060】
指定の配列相同性の核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するために必要なストリンジェンシー条件を算出するための1つの共通する式は以下の通りである(Sambrookら、1989年):
Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/#二本鎖でのbp
【0061】
上記の式の例示として、[Na+]=[0.368]及び50%ホルムアミドとともに42%というGC含量及び200塩基という平均プローブサイズを用いると、Tmは57℃である。DNA二本鎖のTmは、相同性が1%低下する毎に1〜1.5℃低下する。したがって、42℃というハイブリダイゼーション温度を用いると、約75%を超える配列同一性を有する標的が観察される。一実施形態では、上記のハイブリダイゼーション及び洗浄溶液を用い、ハイブリダイゼーションは37℃、最終洗浄は42℃であり、別の実施形態では、ハイブリダイゼーションは42℃であり、最終洗浄は50℃であり、さらに別の実施形態では、ハイブリダイゼーションは42℃、最終洗浄は65℃である。高ストリンジェンシーの条件として、上記のハイブリダイゼーション溶液中、42℃でのハイブリダイゼーションと、0.1×SSC及び0.1%SDS中、65℃で10分間の最終洗浄が挙げられる。
【0062】
本発明の核酸は、任意の簡便なクローニングベクター中でDNAとして維持できる。好ましい実施形態では、クローンは、プラスミドクローニング/発現ベクター、例えば、pGEM−T(Promega Biotech、Madison、WI)、pBluescript(Stratagene、La Jolla、CA)、pCR4−TOPO(Invitrogen、Carlsbad、CA)又はpET28a+(Novagen、Madison、WI)中で維持し、それらのすべては適した大腸菌(E.coli) 宿主細胞中で増殖させることができる。
【0063】
本発明の核酸分子としては、一本鎖であっても、二本鎖であっても、さらに三本鎖であってもよい、cDNA、ゲノムDNA、RNA及びそれらの断片が挙げられる。したがって、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1種の配列とハイブリダイズできる配列を有するオリゴヌクレオチド(DNA又はRNAのセンス又はアンチセンス鎖)を提供する。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、PCR増幅によって、植物組織の試験サンプル中のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする遺伝子又はmRNAを検出するためのプローブとして、又はインベルターゼ若しくはインベルターゼ阻害剤をコードする遺伝子の、mRNAのタンパク質への翻訳時若しくは翻訳前の発現の正若しくは負の調節のために有用である。インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードするオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド類を、このようなアッセイのためのプローブとして利用できる方法としては、それだけには限らないが、(1)in situハイブリダイゼーション、(2)サザンハイブリダイゼーション、(3)ノーザンハイブリダイゼーション及び(4)取り揃えられた増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCRを含むPCR)及びリガーゼ連鎖反応(LCR)が挙げられる。
【0064】
本発明の核酸分子の少なくとも1種の配列とハイブリダイズできる配列を有するオリゴヌクレオチドとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳にとって重要であるmRNAの特定の領域を標的とし、用いることができる。所定の遺伝子の発現レベルを低下させるためのアンチセンス分子の使用は、当技術分野では公知である。アンチセンス分子は、植物細胞を、転写時にアンチセンスRNA配列を生じるDNA構築物で形質転換することによってin situで提供できる。このような構築物は、全長又は部分アンチセンス配列を生じるよう設計できる。この遺伝子サイレンシング効果は、遺伝子をコードする配列のセンス及びアンチセンスRNAの両方を遺伝子組換えによって過剰に産生させ、その結果、多量のdsRNAが産生されることによって増強できる(例えば、Waterhouseら、1998年、PNAS 95:13959〜13964頁参照のこと)。この関連で、少なくとも1つのイントロンの一部又はすべてに相当するdsRNAを含有する配列が特に有効であるとわかっている。一実施形態では、スクロースインベルターゼをコードする配列アンチセンス鎖の一部又はすべてが、導入遺伝子によって発現される。別の実施形態では、インベルターゼをコードする配列の一部又はすべてのハイブリダイズするセンス及びアンチセンス鎖が、遺伝子組換えによって発現される。別の実施形態では、市販の材料及び方法を用い(例えば、Invitrogen、Inc.、Carlsbad CA)、低分子干渉RNA(siRNA;EIbashirら、2001年、Genes Dev. 15(2):188〜200頁)の使用によって、インベルターゼ遺伝子をサイレンシングすることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、インベルターゼmRNA又はインベルターゼ発現を認識し、サイレンシングすることが好ましい。
【0065】
本発明の核酸によってコードされるポリペプチドは、既知の方法に従って、種々の方法で調製できる。ポリペプチドは、in situで産生される場合には、適当な供給源、例えば、種子、果皮又はその他の植物の部分から精製できる。
【0066】
或いは、ポリペプチドをコードする核酸分子を利用できることによって、当技術分野で公知のin vitro発現法を用いるタンパク質の製造が可能となる。例えば、cDNA又は遺伝子を、in vitro転写のためにpSP64又はpSP65のような適当なin vitro転写ベクターにクローニングし、続いて、適した無細胞翻訳系、例えば、コムギ胚芽又はウサギ網状赤血球において無細胞翻訳できる。In vitro転写及び翻訳系は、例えば、Promega Biotech、Madison、WI、BRL、Rockville、MD又はInvitrogen、Carlsbad、CAから市販されている。
【0067】
好ましい実施形態によれば、多量のポリペプチドを、適した原核生物又は真核生物系における発現によって製造できる。例えば、DNA分子、例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8を有するcDNAの一部又はすべてを、細菌細胞(例えば、大腸菌)又は酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))における発現に適合しているプラスミドベクターに、又は昆虫細胞における発現のためにバキュロウイルスベクターに挿入することができる。このようなベクターは、宿主細胞におけるDNAの発現を可能にするように位置している、宿主細胞におけるDNAの発現に必要な調節エレメントを含む。このような発現に必要な調節エレメントとして、プロモーター配列、転写開始配列及び、場合により、エンハンサー配列が挙げられる。
【0068】
組換え原核生物又は真核生物系において遺伝子発現によって産生されるポリペプチドは、当技術分野で公知の方法に従って精製できる。好ましい実施形態では、組換えタンパク質が発現され、その後、宿主細胞から分泌され、その後、周囲の培地から精製される、市販の発現/分泌系を使用できる。代替アプローチは、親和性分離によって、例えば、組換えタンパク質と特異的に結合する抗体を用いる免疫学的相互作用を介して組換えタンパク質を精製することを含む。
【0069】
前述の方法によって調製された本発明のポリペプチドは、標準的な手順に従って分析できる。
【0070】
コーヒーから精製されたか、又は組換えによって製造されたポリペプチドを用いて、公知の方法に従って、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、抗体フラグメント又は本明細書に定義される誘導体を作製することができる。完全組換えタンパク質に対する抗体を作製することに加え、タンパク質の分析又はサザン及びクローニング分析(下記参照のこと)が、クローニングされた遺伝子がマルチジーンファミリーに属することを示す場合には、タンパク質の非保存領域に相当する合成ペプチドに対して作製されたメンバー特異的抗体を作製できる。
【0071】
本明細書に記載されるあらゆる目的のための、本発明の抗体を含むキットも、本発明の範囲内に含まれる。通常、このようなキットは、抗体が免疫特異的である対照抗原を含む。
【0072】
ベクター、細胞、組織及び植物体:
本発明によれば、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド、又はセンス又はアンチセンス方向のその変異体、又はレポーター遺伝子、及びスクロース代謝酵素プロモーター及びその他の調節配列の制御下にあるその他の構築物を含む、トランスジェニック宿主細胞を製造するためのベクター及びキットも特徴とする。適した宿主細胞としては、それだけには限らないが、植物細胞、細菌細胞、酵母及びその他の真菌細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞が挙げられる。さまざまなこれらの宿主細胞を形質転換するためのベクターが当業者には周知である。それらとしては、それだけには限らないが、プラスミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、並びにその他の細菌、酵母及びウイルスベクターが挙げられる。通常、トランスジェニック宿主細胞を製造するためのキットは、1種又は複数の適当なベクターと、ベクターを用いてトランスジェニック細胞を製造するための使用説明書とを含む。キットは、1種又は複数のさらなる構成要素、例えば、2、3例を挙げると、細胞を培養するための培養培地、細胞の形質転換を実施するための試薬及び遺伝子発現についてトランスジェニック細胞を試験するための試薬をさらに含み得る。
【0073】
本発明は、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする遺伝子の1つ又は複数のコピー、又は植物の内因性インベルターゼの産生若しくは機能を阻害する核酸配列を含むトランスジェニック植物を含む。これは、以下に記載されるように、天然又は組換え調節配列のいずれかによって制御された、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤コード配列の一部又はすべて、又はその突然変異体、アンチセンス又はその変異体、例えばRNAを含む導入遺伝子を用いて植物細胞を形質転換することによって達成される。トランスジェニック植物体コーヒー種としては、例えば、制限するものではないが、C.アベオクテ(C.abeokutae)、C.アラビカ(C.arabica)、C.アルノルディアナ(C.arnoldiana)、C.アルウェミエンシス(C.aruwemiensis)、C.ベンガレンシス(C.bengalensis)、C.カネフォラ(C.canephora)、C.コンゲンシス(C. congensis)、C.デウェブレイ(C.Dewevrei)、C.エクセルサ(C.excelsa)、C.ユージェニオイデス(C.eugenioides)及びC.ヘテロカリックス(c.heterocalyx)、C.カパカタ(C.kapakata)、C.カシアナ(C.khasiana)、C.リベリカ(C.liberica)、C.モロウンドウ(C.moloundou)、C.ラセモサ(C.rasemosa)、C.サルバトリックス(C.salvatrix)、C.セシフロラ(C.sessiflora)、C.ステノフィラ(C. stenophylla)、C.トラベンコレンシス(C.travencorensis)、C.ウェイチアナ(C.wightiana)及びC.ザングエバリエ(C.zanguebariae)が好ましい。任意の種の植物も本発明に含まれ、これとしては、それだけには限らないが、タバコ、シロイヌナズナ及びその他の「実験室で利用しやすい」種、禾穀類、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、ダイズ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、ソルガム、アルファルファ、クローバなど、オイル産生植物、例えば、アブラナ、ベニバナ、ヒマワリ、ピーナッツ、カカオなど、野菜作物、例えば、トマトトマティロ、ジャガイモ、コショウ、ナス、サトウダイコン、ニンジン、キュウリ、レタス、エンドウマメなど、園芸植物、例えば、アスター、ベゴニア、キク、ヒエンソウ、ペチュニア、ヒャクニチソウ、シバフ及びシバクサなどが挙げられる。
【0074】
トランスジェニック植物は、当業者に公知の標準的な植物形質転換法を用いて作製することができる。これらとしては、それだけには限らないが、アグロバクテリウムベクター、プロトプラストのポリエチレングリコール処理、遺伝子銃DNA送達、UVレーザーマイクロビーム、ジェミニウイルスベクター又はその他の植物ウイルスベクター、プロトプラストのリン酸カルシウム処理、単離プロトプラストのエレクトロポレーション、形質転換用DNAでコーティングしたマイクロビーズを含む溶液中での細胞懸濁液の撹拌、形質転換用DNAでコーティングしたシリコンファイバーを含む溶液中での細胞懸濁液の撹拌、直接DNA取り込み、リポソーム媒介性DNA取り込みなどが挙げられる。このような方法は、当技術分野では公開されている。例えば、Methods for Plant Molecular Biology(Weissbach & Weissbach編、1988年);Methods in Plant Molecular Biology(Schuler & Zielinski編、1989年);Plant Molecular Biology Manual(Gelvin、Schilperoort、Verma編、1993年)及びMethods in Plant Molecular Biology − A Laboratory Manual(Maliga、Klessig、Cashmore、Gruissem & Varner編、1994年)参照のこと。
【0075】
形質転換法は、形質転換される植物に応じて変わる。双子葉植物種を形質転換するにはアグロバクテリウムベクターを用いることが多い。アグロバクテリウムバイナリーベクターとしては、それだけには限らないが、BIN19及びその誘導体、pBIベクターシリーズ及びバイナリーベクターpGA482、pGA492、pLH7000(GenBank受託AY234330)及びpCAMBIAベクターのうち任意の適したもの(Hajdukiewicz、Svab & Maliga、(1994年) Plant Mol Biol 25:989〜994頁によって構築されたpPZPベクターに由来、CAMBIA、GPO Box 3200、Canberra ACT 2601、Australiaから入手可能又はCAMBIA.orgでワールドワイドウェブによって入手可能)が挙げられる。単子葉植物種の形質転換には、形質転換用DNAでコーティングした粒子及び形質転換用DNAでコーティングしたシリコンファイバーを用いる遺伝子銃照射が、核の形質転換に有用であることが多い。或いは、コメ、トウモロコシ及び種々のその他の単子葉植物種の形質転換には、アグロバクテリウム「スーパーバイナリー」ベクターが、うまく用いられている。
【0076】
選択された植物を形質転換するためのDNA構築物は、適当な5’調節配列(例えば、プロモーター及び翻訳調節配列)及び3’調節配列(例えば、ターミネーター)と作動可能に連結された注目するコード配列を含む。好ましい実施形態では、その天然5’及び3’調節エレメントの制御下にあるデヒドリン又はLEAタンパク質コード配列を用いる。その他の実施形態では、デヒドリン又はLEAタンパク質コード配列及び調節配列を取り替えて(例えば、CcDH2プロモーターと作動可能に連結しているCcLEA1コード配列)、表現型の、例えば、風味、香り又はその他の特徴の改良のために形質転換された植物の種子の水分含量又はタンパク質含量を変更する。
【0077】
代替実施形態では、遺伝子のコード領域は、強力な構成的プロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター又はゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーターの下に位置する。本発明において使用するために考慮されるその他の構成的プロモーターとしては、それだけには限らないが、T−DNAマンノピン(mannopine)シンセターゼ、ノパリンシンターゼ及びオクトピンシンターゼプロモーターが挙げられる。その他の実施形態では、強力な単子葉植物プロモーター、例えば、トウモロコシユビキチンプロモーター、コメアクチンプロモーター又はコメチューブリンプロモーターを用いる(Jeonら、Plant Physiology.123:1005〜14頁、2000年)。
【0078】
誘導性プロモーターの下でインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤コード配列を発現するトランスジェニック植物も、本発明の範囲内にあると考えられる。誘導性植物プロモーターとしては、2、3例と挙げると、テトラサイクリンリプレッサー/オペレーター制御プロモーター、熱ショック遺伝子プロモーター、ストレス(例えば、損傷)誘導性プロモーター、防御反応性遺伝子プロモーター(例えば、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ遺伝子)、傷害誘導性遺伝子プロモーター(例えば、ヒドロキシプロリンリッチ細胞壁タンパク質遺伝子)、化学誘導性遺伝子プロモーター(例えば、硝酸塩レダクターゼ遺伝子、グルカナーゼ遺伝子、キチナーゼ遺伝子など)及び暗所誘導性遺伝子プロモーター(例えば、アスパラギンシンセターゼ遺伝子)が挙げられる。
【0079】
本発明の種子特異的デヒドリン又はLEAタンパク質プロモーターの他に、組織特異的及び発達特異的プロモーターもまた、本発明において使用するために考慮される。その他の種子特異的プロモーターの限定されない例として、Cim1(サイトカイニン誘導性メッセージ)、cZ19B1(トウモロコシ19kDaゼイン)、milps(ミオイノシトール−1−リン酸シンターゼ)及びcelA(セルロースシンターゼ)(米国特許出願公開第09/377,648号明細書)、マメβファゼオリン、ナピン(napin)、β−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリン(cruciferin)、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDaゼイン、27kDaゼイン、g−ゼイン、waxy、shrunken1、shrunken2及びグロブリン1、ダイズ11Sレグミン(Baumleinら、1992年)及びC.カネフォラ 11S種子貯蔵タンパク質(Marracciniら、1999年、Plant Physiol. Biochem.37:273〜282頁)が挙げられる。end1及びend2遺伝子由来の種子優先プロモーターが開示されている国際公開第00/12733号パンフレットも参照のこと。その他のコフィア種子特異的プロモーター、例えば、それだけには限らないが、所有者共通の、同時係属PCT出願番号[まだ割り当てられていない]に記載されるオレオシン遺伝子プロモーター及び所有者共通の、同時係属PCT出願番号[まだ割り当てられていない]に記載されるデヒドリン遺伝子プロモーターも利用できる。その他の組織特異的プロモーターの例として、それだけには限らないが、リブロース二リン酸カルボキシラーゼ(RuBisCo)小サブユニット遺伝子プロモーター(例えば、Marraciniら、2003年によって記載されるコーヒー小サブユニットプロモーター)又は光合成組織における発現のためのクロロフィルa/b結合タンパク質(CAB)遺伝子プロモーター及び根での発現が望ましい場合の根特異的グルタミンシンターゼ遺伝子プロモーターが挙げられる。
【0080】
コード領域はまた、適当な3’調節配列と作動可能に連結している。天然3’調節配列が用いられない実施形態では、ノパリンシンセターゼポリアデニル化領域を使用できる。その他の有用な3’調節領域としては、それだけには限らないが、オクトピンシンターゼポリアデニル化領域が挙げられる。
【0081】
選択されたコード領域は、適当な調節エレメントの制御下で、核薬剤耐性マーカー、例えば、カナマイシン耐性と作動可能に連結している。その他の有用な選択マーカーシステムとしては、抗生物質又は除草剤耐性(例えば、ハイグロマイシン、スルホニル尿素、ホスフィノトリシン又はグリフォセートに対する耐性)を付与する遺伝子又は選択的増殖を付与する遺伝子(例えば、マンノースでの植物細胞の増殖を可能にするホスホマンノースイソメラーゼ)が挙げられる。選択マーカー遺伝子としては、制限するものではないが、抗生物質耐性をコードする遺伝子、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードするもの、並びに除草化合物に対する耐性を付与する遺伝子、例えば、グリフォセート耐性EPSPS及び/又はグリフォセート酸化還元酵素(GOX)、ブロモキシニルに対する耐性のためのブロモキシニルニトリラーゼ(BXN)、イミダゾリノンに対する耐性のためのAHAS遺伝子、スルホニル尿素耐性遺伝子及び2,4−ジクロロフェノキシアセテート(2,4−D)耐性遺伝子が挙げられる。
【0082】
特定の実施形態では、本発明に包含されるプロモーター及びその他の発現調節配列は、リポーター遺伝子と作動可能に連結している。本発明における使用のために考慮されるリポーター遺伝子としては、それだけには限らないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、セリアンサスオレンジ(Cerianthus Orange)蛍光タンパク質(cOFP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo、G418)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(α−ガラクトシダーゼをコードする)及びキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、β−グルクロニダーゼ(gus)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)又はホタル若しくは細菌ルシフェラーゼ(LUC)をコードする遺伝子が挙げられる。当業者ならば、本発明の実施と関連している多数の標準手順と同様に、マーカー又はレポーターの機能を果たし得るさらなる配列は認識するであろう。
【0083】
細胞宿主における遺伝子発現を増強するためのさらなる配列修飾は、当技術分野で公知である。これらの修飾としては、過剰なポリアデニル化シグナル、エキソン−イントロンスプライス部位シグナル、トランスポゾン様リピート及びその他のこのようなはっきりと特徴付けられた、遺伝子発現にとって有害であり得る配列をコードする配列の排除が挙げられる。或いは、必要に応じて、コード配列のG/C含量を、コーヒーノキ細胞において発現される既知遺伝子を参照することによって算出される所与のコーヒーノキ細胞宿主のレベル平均に調節することができる。また、可能であれば、予測されるヘアピン二次mRNA構造を避けるようコード配列を修飾する。遺伝子発現を増強するためのもう1つの代替法として、5’リーダー配列を使用することがある。翻訳リーダー配列は当技術分野で周知であり、これとしては、タバコモザイクウイルスの5’リーダー配列(ω)のシス作用誘導体(ω’)、ブロムモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス及びカブ黄斑モザイクウイルス由来の5’リーダー配列が挙げられる。
【0084】
植物を形質転換し、その後、1又は複数の特性、例えば、導入遺伝子産物、導入遺伝子をコードするmRNA又は導入遺伝子の発現と関連している表現型の変更の存在についてスクリーニングする。形質転換された植物における導入遺伝子の発現量並びに発現の組織及び時間特異的パターンは、核ゲノム中へのその挿入の位置に応じて変わり得るということは認識されなくてはならない。このような位置の効果は当技術分野では周知である。このために、いくつかの核形質転換体は再生され、導入遺伝子の発現について試験されなければならない。
【0085】
方法:
本発明の核酸及びポリペプチドは多数の方法のうちいずれにおいても使用でき、それによって、タンパク質を発現するコーヒーノキの豆から最終的に製造されるコーヒー飲料又はコーヒー製品の風味及び/又は香りの増強においてタンパク質が役割を果たし得るために、コーヒーノキにおいてタンパク質産物を発現させることができる。
【0086】
緑色豆中のスクロース濃度と高品質のコーヒーの間には強力な相関関係がある(Russwurm、1969年;Holscher及びSteinhart、1995年;Badoud、2000年;Illy及びViani、1995年;Leloupら、2003年)。コーヒー子実スクロース含量の改良は、(1)従来の育種又は(2)遺伝子工学技術によって、及びこれら2つのアプローチを組み合わせることによって得ることができる。両アプローチは、本発明に従うコーヒー中のスクロース代謝関連遺伝子の単離及び特性決定によって大幅に改善された。例えば、スクロース代謝酵素をコードする遺伝子を遺伝学的にマッピングすることができ、コーヒー風味に関与している量的形質遺伝子座(QTL)を同定できる。次いで、このようなQTLがスクロース関連遺伝子の位置と相関しているかどうかを調べることが可能である。スクロース代謝に影響を及ぼす遺伝子の対立遺伝子(ハプロタイプ)もまた、同定し、特異的ハプロタイプの存在が高スクロースと強力に相関しているかどうかを調べることができる。これらの「高スクロース」マーカーを用いてマーカー利用育種プログラムを促進することができる。スクロース代謝に関与しているポリヌクレオチドを単離することの第3の利点は、高スクロースレベル及び低スクロースレベルを有する品種におけるコーヒー豆熟成の間のこれらの遺伝子の発現データを作成することであり、その例が以下の実施例において論じられている。この情報は、以下に詳細に記載される、成熟豆中のスクロースレベルが増大した新規トランスジェニックコーヒーノキを作製することを目的とした遺伝子操作において使用する遺伝子の選択を導くために用いられる。
【0087】
一態様では、本発明は、植物体中の1種又は複数のスクロース代謝酵素の量又は活性を増大させること又は低減させることを含む、植物体、好ましくは、コーヒーにおけるスクロース代謝酵素プロフィール又は糖プロフィールを変更する方法を特徴とする。本発明の具体的な実施形態は、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生を増大させること又は低減させることによって植物体の糖プロフィールを変更する方法を提供する。
【0088】
本発明に従って得られたデータは、コーヒー子実成熟の最終段階でのインベルターゼ活性(酸性又は中性インベルターゼ)の低下が、子実中のスクロース蓄積の増大をもたらすということを強力に示す。したがって、本発明の好ましい一実施形態は、インベルターゼ阻害剤をコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号5、6、7又は8に対応するcDNAを用い、コーヒーの種々の組織においてその阻害剤を過剰産生させることを目的としてコーヒーノキを形質転換することを含む。一実施形態では、例えば、インベルターゼ阻害剤遺伝子と機能的に連結している、RuBisCo小サブユニット(SSU)プロモーター又はCaMV35Sプロモーターなどのプロモーターの使用を介して、インベルターゼ阻害剤産生の全体的な増大のためにコーヒーノキを操作する。インベルターゼ阻害剤の過剰産生を注目するシンク器官、すなわち、子実のみに制限するよう設計された別の実施形態では、子実特異的プロモーター、特に、上記のコフィア子実特異的プロモーターの1種を使用できる。
【0089】
植物体のスクロースプロフィールは、植物体、例えば、コーヒー中の1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を調節することによって増強することができる。さらに、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の天然に存在する変異体について、増強されたスクロースレベルを発現する植物をスクリーニングすることができる。例えば、機能喪失型(ヌル)突然変異植物を、作製できるか、又は現在入手可能な植物体突然変異体の集団から選択できる。当業者には当然のことながら、突然変異植物集団はまた、本明細書に記載される方法のうち1種又は複数を用いて特定のスクロース代謝酵素を低発現又は過剰発現する突然変異体についてスクリーニングできる。突然変異集団は、化学的突然変異誘発、放射線突然変異誘発及びトランスポゾン又はT−DNA挿入又はターゲッティング・インデュースド・ローカル・リーションズ・イン・ゲノムズ(targeting induced local lesions in genomes)(TILLING、例えば、Henikoffら、2004年、Plant Physiol.135(2):630〜636頁; Gilchrist & Haughn、2005年、Curr. Opin. Plant Biol.8(2):211〜215頁参照のこと)によって作製できる。突然変異集団を作製する方法は、当技術分野では周知である。
【0090】
本発明の核酸を用いて、種々の植物種におけるスクロース代謝酵素の突然変異型を同定できる。トランスポゾン挿入株が利用可能であるトウモロコシ又はシロイヌナズナなどの種では、オリゴヌクレオチドプライマーを、インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤遺伝子中の挿入について株をスクリーニングするよう設計できる。次いで、育種によって、中断された遺伝子にとってヘテロ接合性であるかホモ接合性である植物株を発達させることができる。
【0091】
植物体はまた、突然変異誘発技術によって作製されたヌル突然変異体において見られるものと類似の表現型を示すよう操作できる。トランスジェニックヌル突然変異体は、「ドミナントネガティブ効果」を出すために、選択されたインベルターゼタンパク質の突然変異型を発現させることによって作製できる。本発明をいずれか1つの機構に制限するものではないが、この突然変異タンパク質は、相互作用タンパク質又はその他の細胞因子について野生型タンパク質と競合する。この種の「ドミナントネガティブ」効果の例は、昆虫システム及び脊椎動物システムの両方についてよく知られている(Radkeら、1997年、Genetics 145:163〜171頁;Kolchら、1991年、Nature 349:426〜428頁)。
【0092】
「転写後遺伝子サイレンシング」によってスクロース代謝酵素をコードするmRNAの翻訳を阻害することによって、もう1つの種類のトランスジェニックヌル突然変異体を作製できる。これらの技術を用いて、植物子実においてインベルターゼをダウンレギュレートするのを促進し、それによってスクロース蓄積を促進することができる。例えば、ダウンレギュレーションの標的とされた種に由来するインベルターゼをコードする遺伝子、又はその断片を利用してコードされるタンパク質の産生を制御することができる。この目的には、全長アンチセンス分子を使用できる。或いは、翻訳にとって重要であるmRNAの特定の領域に対して標的とされるアンチセンスオリゴヌクレオチドを利用できる。所定の遺伝子の発現レベルを低下させるためのアンチセンス分子の使用は、当技術分野では公知である。アンチセンス分子は、転写されるとアンチセンスRNA配列を生じるDNA構築物で植物細胞を形質転換することによってin situで提供できる。このような構築物は、全長又は部分アンチセンス配列を生じるよう設計できる。この遺伝子サイレンシング効果は、遺伝子をコードする配列のセンス及びアンチセンスRNAの両方を遺伝子組換えによって過剰産生させ、その結果、多量のdsRNAが産生されることによって増強できる(例えば、Waterhouseら、1998年、PNAS 95:13959〜13964頁参照のこと)。この関連で、少なくとも1つのイントロンの一部又はすべてに相当するdsRNAを含有する配列が特に有効であるとわかっている。一実施形態では、インベルターゼをコードする配列アンチセンス鎖の一部又はすべてが、導入遺伝子によって発現される。別の実施形態では、コード配列の一部又はすべてのハイブリダイズするセンス及びアンチセンス鎖が、遺伝子組換えによって発現される。
【0093】
別の実施形態では、植物システムに対して現在利用可能な種々のその他の転写後遺伝子サイレンシング(RNAサイレンシング)技術の使用によって、遺伝子をサイレンシングすることができる。RNAサイレンシングは、RNアーゼHをベースとする酵素(「ダイサー」又は「ダイサー様」)による、二本鎖RNA(dsRNA)の小さな21〜28ヌクレオチド断片へのプロセシングを含む。siRNA(低分子干渉RNA)又はmiRNA(マイクロRNA)である切断生成物は、タンパク質エフェクター複合体中に組み込まれ、これが配列特異的に遺伝子発現を調節する(植物におけるRNAサイレンシングの総説については、Horiguchi、2004年、Differentiation72:65〜73頁;Baulcombe、2004年、Nature 431:356〜363頁;Herr、2004年、Biochem. Soc. Trans. 32:946〜951頁参照のこと)。
【0094】
低分子干渉RNAは、in vitroで化学合成し、転写させ、増幅させ、次いで細胞に送達することができる。送達は、マイクロインジェクション(Tuschl Tら、2002年)、化学トランスフェクション(Agrawal Nら、2003年)、エレクトロポレーション又は陽イオン性リポソーム媒介性トランスフェクション(Brummelkamp TRら、2002年;Elbashir SMら、2002年)、又は当技術分野で利用可能な任意のその他の手段によってであり得、当業者には理解される。或いは、siRNAのDNA鋳型を、例えば、プラスミドによって注目する細胞に挿入することによってsiRNAを細胞内に発現させることができ(Tuschl Tら、2002年)、細胞を選択するために特異的に標的とされ得る。低分子干渉RNAは、植物中にうまく導入されている(Klahre Uら、2002年)。
【0095】
本発明におけるRNAサイレンシングの好ましい方法は、短いヘアピンRNA(shRNA)の使用である。個々の所望のsiRNA配列をコードするDNA配列を含むベクターを、一般的な手段によって標的細胞に送達する。DNA配列は、一度、細胞に入ると、RNA分子に連続的に転写され、これが分子内塩基対形成によって自身で折り曲がり、ヘアピン構造を形成する。これらのヘアピン構造は、ひとたび細胞によってプロセシングされると、siRNA分子に相当し、所望のタンパク質のRNAサイレンシングを媒介するために細胞によって使用される。植物におけるRNAサイレンシングのための特定の有用性を有する種々の構築物は、Horiguchi、2004年、前掲によって記載されている。通常、このような構築物は、プロモーター、「センス」方向のサイレンシングされる標的遺伝子の配列、スペーサー、標的遺伝子配列のアンチセンス及びターミネーターを含む。
【0096】
「コサプレッション(co−suppression)」という技術によって、さらにもう1つの種類の合成ヌル突然変異体を作製することもできる(Vaucheretら、1998年、Plant J. 16(6).651〜659頁)。抑制のために標的とされる内因性遺伝子コピーを用いて植物細胞を形質転換する。多くの場合、これが、天然遺伝子並びに導入遺伝子の完全抑制をもたらす。一実施形態では、注目する植物種由来のインベルターゼをコードする遺伝子を単離し、その同種の細胞を形質転換するために用いる。
【0097】
本発明に従って、任意の前記方法によって製造された突然変異植物又はトランスジェニック植物もまた特徴とする。植物は稔性であり、そのために育種目的にとって有用であることが好ましい。したがって、突然変異体又は前記の所望の表現型のうち1種又は複数を示す植物を、農業又は園芸適用において植物育種のために、又は直接的に使用できる。それらはまた、スクロース代謝酵素の関与及びコーヒー種子の風味、香り及びその他の特徴に影響を及ぼすスクロースレベルに対するその作用についてのさらなる解明のための研究ツールとしても有用である。また、表現型の増強された、又は組み合わされた植物を作製するために、ある導入遺伝子又は指定の突然変異を含む植物を、相補的な導入遺伝子又は遺伝子型を含む植物体と交雑させることもできる。
【0098】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するために提供する。実施例は例示目的であって、本発明を制限しようとするものではない。
【0099】
(実施例1)
以下の実施例のための材料及び方法
植物材料。温室条件(25℃、70%RH)下で増殖させたコフィア・アラビカ(Coffea arabica) L.cv.CaturraT2308から、又はIndonesian Coffee and Cacao Research Center(ICCRI)、インドネシアで屋外で成長させたコフィア・カネフォラ BP409(ロブスタ)から、葉、花、茎、根又は種々の発達段階の果実のいずれかから組織を採取した。果実は、規定の段階で採取し、液体窒素中で直ちに凍結し、次いで、輸送のためにドライアイス中に詰めた。キト(Quito)、エクアドル(Ecuador)において栽培した木から、FRT05、FRT64(ロブスタ)及びCCCA12(アラビカ)由来の果実を得た。サンプルを、輸送のために−25℃で凍結し、次いで、使用まで−80℃で保存した。
【0100】
ユニバーサルゲノムウォーカー(Universal Genome Walker)。Crouzillatら、1996年に従い、BP409由来のゲノムDNAを、温室で成長した木から採取した葉から抽出した。ゲノムDNAを4種の異なる制限酵素(DraI、EcoRV、PvuI、StuI)で消化し、得られた断片を、Universal Genome Walkerキット(BD Biosciences)によって提供されるGenomeWalker Adaptorと平滑末端に連結した。両セットの反応は、キットユーザーマニュアルに従って実施した。次いで、4種のライブラリーを、Gene−Specific Primers(GSP)を用いるPCR反応の鋳型として用いた(表1)。反応混合物は、Takara製の適当なバッファーを含む50μlの最終容積中、1μlのGenome Walkerライブラリー鋳型、10nmolの各dNTP、50pmolの各プライマー及び1UのDNAポリメラーゼ(Takara、Combrex Bio、Belgium)を含んでいた。第1のPCRには以下の条件を用いた:95℃で2分間のプレ変性後、最初の7サイクルは、95℃で30秒間の変性温度と、それに続く、72℃で3分間のアニーリング及び伸長ステップで実施した。さらなる35サイクルは、95℃で30秒間の変性ステップと、それに続く、67℃で3分間のアニーリング/伸長ステップを用いて実施した。プライマー対AP1/GSP−GW1を用いる最初の増幅から得られた産物が、プライマーとしてAP2/GSP−GWN1及びAP2及びGSP−GWNを用いる第2のPCRの鋳型として役割を果たした。第2のPCRは、2μlの最初の増幅反応物(未希釈のもの及び1:50までの種々の希釈)を用い、第2の反応が25サイクルのみの増幅を用いたという点を除いて最初の反応について上記に記載されるように実施した。得られたPCR断片を、アガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。主要なバンドから得られたPCR断片を精製し、クローニングし、配列決定した。
【0101】
【表1】


表1. Genome Walker実験に用いたプライマーの一覧
【0102】
DNA配列分析。DNA配列決定のために、組換えプラスミドDNAを調製し、標準的な方法に従って配列決定した。DNA Star(Lasergene)ソフトウェアを用いてコンピュータ分析を実施した。配列相同性は、BLASTプログラムを用いてGenBankデータベースに対して確認した(Altschulら、1990年)。
【0103】
cDNA調製。RNAは、種々の組織、すなわち、根、茎、葉、花、果皮及び先に記載したように(Benamor及びMc Carthy、2003年)、4つの異なる成熟段階SG(小さく緑色)、LG(大きく緑色)、Y(黄色)及びR(赤色)の子実から抽出した。cDNAは、以下のように、全RNA及びオリゴdT(18)(Sigma)から調製した:1μgの全RNAサンプル及び50ngのオリゴdTを、DEPC処理水を用いて12μlの最終容積とした。この混合物を、続いて、70℃で10分間インキュベートし、次いで、氷上で迅速に冷却した。次いで、4μlの第1鎖バッファー(5×、Invitrogen)、2μlのDTT(0.1M、Invitrogen)及び1μlのdNTPミックス(各10mM、Invitrogen)を加えた。これらの反応混合物を、42℃で2分間プレインキュベートし、その後、1μlのSuperScriptIII Rnアーゼ H逆転写酵素(200U/μl、Invitrogen)を加えた。続いて、この試験管を、42℃で50分間インキュベートし、続いて、70℃で10分間加熱することによって酵素を不活化した。次いで、作製したcDNAサンプルを100倍希釈し、5μlの希釈したcDNAをQ−PCRに用いた。
【0104】
CcINV1 cDNA単離物の3’RACE(3’cDNA末端の迅速増幅)。RNAを、先に記載される(Benamor及びMc Carthy、2003年;Benamorら、報告書準備中)、4つの異なる成熟段階SG、LG、Y、Rの果皮及び子実から抽出した。次いで、dT(18)テール(5’cttccgatccctacgctttttttttttttttttt3’)(配列番号45)プライマーを用い、以下のように全RNAからcDNAを調製した:1μgの全RNAサンプル及び50ngのdT(18)テールプライマーを、DEPC処理水を用いて12μlとした。続いて、この混合物を、70℃で10分間インキュベートし、次いで、氷上で迅速に冷却した。次いで、4μlの第1鎖バッファー(5×、Invitrogen)、2μlのDTT(0.1M、Invitrogen)及び1μlのdNTPミックス(各10mM、Invitrogen)を加えた。これらの反応混合物を、42℃で2分間プレインキュベートし、その後、1μlのSuperScript III Rnアーゼ−H逆転写酵素(200U/μl、Invitrogen)を加えた。続いて、この試験管を、42℃で50分間インキュベートし、続いて、70℃で10分間加熱することによって酵素を不活化した。次いで、作製したcDNAサンプルを、第1のPCRのプライマーとしてInv1−3’a1(5’gacgtgaatggttgctggtcagg3’)(配列番号46)とテール−3’RACE(5’cttccgatccctacgc3’)(配列番号47)とを用い、第2のPCRのプライマーとしてInv1−3’a2(5’tacagtgggtgctgagctttggt3’)(配列番号48)とテール−3’RACEとを用いるPCR反応に用いた。PCR反応は、以下のように50μlの反応液中で実施した:5μlのcDNA;1×PCRバッファー(La PCR Buffer II Mg++プラス)、800nMの各遺伝子特異的プライマー、200μMの各dNTP、0.5UのDNAポリメラーゼ Takara LA Taq(Cambrex Bio Science)。94℃で5分間変性させた後、増幅は、94℃で1分間、55℃で1分間及び72℃で2分間の35サイクルからなっていた。さらなる最終伸長ステップは、72℃で7分間行った。
【0105】
全長INV1及びINV3 cDNA増幅。全長INV1及びINV3 cDNAを増幅するために、2セットのプライマー:INV1−ATG(5’atggctagcttttacctctggctaatgtg3’)(配列番号49)、INV1−STOP(5’tcaattctttcgattgatactggcattct3’)(配列番号50)及びINV3−ATG(5’atggagtgtgttagagaatatcaact3’)(配列番号51)、INV3−STOP(5’tcagcaggtccacgaggaggatctct3’)(配列番号52)をそれぞれ、プライマーウォーキング又は3’RACE実験から得たINV1又はINV3配列で設計した。これら2種のプライマーセットを用い、上記のcDNAサンプルを用いるRT−PCR反応を実施した。PCR反応は、以下のように50μlの反応液中で実施した:5μlのcDNA;1×PCRバッファー(La PCR Buffer II Mg++プラス)、800nMの各遺伝子特異的プライマー、200μMの各dNTP、0.5UのDNAポリメラーゼ Takara LA Taq(Cambrex Bio Science)。94℃で5分間変性させた後、増幅は、94℃で1分間、55℃で1分間及び72℃で2分間の35サイクルからなっていた。さらなる最終伸長ステップは、72℃で7分間行った。得られた断片を、アガロースゲルから精製し、クローニングし、配列決定した。
【0106】
定量的−RT−PCR。TaqMan−PCRは、製造業者(Applied Biosystems、Perkin−Elmer)によって推奨されるように実施した。この実験に用いたcDNAサンプルは、先に記載されている。すべての反応は、1×TaqManバッファー(Perkin−Elmer)及び5mM MgCl、各200μMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、5μlのcDNA及び0.625ユニットのAmpliTaq Goldポリメラーゼを含んでいた。PCRは、800nMの各遺伝子特異的プライマー、フォワード及びリバース並びに200nMのTaqManプローブを用いて実施した。プライマー及びプローブは、PRIMER EXPRESSソフトウェア(Applied Biosystems、表2)を用いて設計した。反応混合物を、50℃で2分間、95℃で10分間インキュベートし、続いて、95℃で15秒間/60℃で1分間の40増幅サイクルを行った。GeneAmp7500 Sequence Detection System (Applied Biosystems)でサンプルを定量化した。転写物レベルは、比較の基準としてrpl39を用いて調べた。
【0107】
【表2】


表2. Q−PCR実験に用いるプライマー及びプローブの一覧
MGBプローブは、5’を蛍光レポーター色素6−カルボキシフルオレセイン(FAM)を用いて、3’をクエンチャー色素6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)を用いて標識した。rpl39プローブは、5’を蛍光レポーター色素VICを用いて、3’末端をクエンチャーTAMRAを用いて標識した。すべての配列は5’から3’に示されている。
【0108】
可溶性糖質定量化。子実組織を果皮及び外皮から分離した。子実を液体窒素を用い低温粉砕機でホモジナイズし、得られた粉末を48時間凍結乾燥した(Lyolab bII、Secfroid)。各サンプルを秤量し、70mlの、70℃に予め加熱しておいた再蒸留水に懸濁し、次いで、激しく振盪し、70℃で30分間インキュベートした。室温に冷却した後、再蒸留水を加えることによってサンプルを100mlとし、次いで、濾紙(Schleicher and Schuellフィルターペーパー597.5)で濾過した。抽出したコーヒー子実組織の糖質を、Locherら、1998年に従ってDionex PA 100(4×250mm)カラムを用いてHPAE−PEDによって分離した。糖濃度は、g/100gDW(乾燥重量)で表した。
【0109】
酵素活性分析。中性及び酸性インベルターゼ活性は、Kingら、1997年に従って測定した。
【0110】
(実施例2)
C.カネフォラにおけるインベルターゼタンパク質をコードするcDNAの同定
若い葉から単離した、また、異なる発達段階で収穫した果実の子実及び果皮組織から単離したRNAを用いて作製したいくつかのコーヒーライブラリーから、47,000を超えるEST配列を同定した。続いて、重複するESTを「ユニジーン(unigene)」(すなわち、コンティグ)に「クラスタリングし」、NCBI非重複タンパク質データベースに対して個々の配列各々のBLAST検索を行うことによってユニジーン配列に注釈を付けた。
【0111】
スクロースの合成及び分解に直接関与している酵素は植物では、特に、果実、塊茎及び種子発達の間、トマト(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))及びトウモロコシ(ゼア・メイズ(Zea mays))などの植物で広く研究されている。いくつかの種では、スクロース合成及び分解に関与しているすべての既知の重要なタンパク質をコードするDNA配列が同定されており、特性決定されており、GenBankにおいて入手可能である。したがって、植物酵素の既知の配列、特に、コーヒーと密接に関連している生物(例えば、トマト及びジャガイモ)から得た配列を用いて、上記のESTライブラリー中、及びその他のコーヒーcDNAライブラリー中に存在する類似の配列を見出すことができた。実施例1に記載されるように、上記のEST収集物を検索するために、「ユニジーン」セット5のtBLASTn検索においてトマト及びジャガイモのタンパク質配列を用いた。オープンリーディングフレームが、「クエリー」配列と最高程度の同一性を示したインシリコの「ユニジーン」を、さらなる研究のために選択した。いくつかの場合では、選択した「ユニジーン」は、全長cDNAクローンに相当する可能性がある少なくとも1種のEST配列を含んでおり、次いで、そのクローンを再配列決定のために選択し、同一性及び「ユニジーン」配列の両方を確認した。
【0112】
可溶性、細胞内局在、至適pH及び等電点に基づいて、3種の異なる種類のインベルターゼアイソザイムを区別することができる:液胞型(InvV)、細胞壁結合型(InvCW)及び中性(InvN)インベルターゼ。InvV及びInvCWは類似の酵素特性及び生化学的特性を有し、高度の配列全体の相同性及び2種の保存されたアミノ酸モチーフを共有している。1つの共通の特徴は、ペンタペプチドN−DPN−G/A(配列番号77)(β−フルクトフラノシダーゼ−モチーフ;Sturm及びChrispeels、1990年;Roitsch及びGonzalez、2004年)。第2の保存された特徴は、高度に保存されたシステイン配列WECX(P/V)DF(配列番号78)(Sturm及びChrispeels、1990年)(式中、V及びPはそれぞれ、液胞型及び細胞壁型(ペリプラズム)インベルターゼを区別する)である。
【0113】
コーヒーにおいて3種のインベルターゼアイソザイムをコードするcDNAを見出すために、(1)トマト液胞型インベルターゼTIV−1、(2)トマト細胞壁型インベルターゼLIN6及び(3)シロイヌナズナ(A.thaliana)中性(細胞質)インベルターゼ様タンパク質に相当するタンパク質配列を用い、tBLASTnアルゴリズムを用いてユニジーンセットの類似性検索を実施した。
【0114】
A.CcInv2(配列番号10)
ユニジーン127336のORFが、トマト液胞型インベルターゼTIV−1(NCBIタンパク質識別子番号P29000;Klannら、1992年)と高度の相同性を有することがわかった。このユニジーン中の単一のEST、クローンcccl20f11を単離し、その挿入断片を完全に配列決定した。cDNA挿入断片は2212bpの長さであることがわかった。このクローンの完全ORF配列は、位置192で始まり位置1952で終わる1761bpの長さであった。推定されるタンパク質は586aaの長さであり、予測分子量は64kDaであった。cccl20f11によってコードされるタンパク質は、CcInv2(コフィア・カネフォラ インベルターゼ2)と注釈を付けた。CcInv2は、トマト液胞型インベルターゼTIV−1と69.6%同一であり、ジャガイモSTVInvに特徴付けられるインベルターゼと68.5%同一である(図2)。Marracciniらは、最近、液胞型インベルターゼをコードしている可能性のあるC・アラビカ由来の部分cDNA配列を、公開データベースに入れた(NCBIヌクレオチド識別子番号AJ575258)。彼らは、この部分タンパク質配列をInv2(NCBIタンパク質識別子番号CAE01318)と呼んだ。CcInv2とinv2の間の部分アラインメントは93.8%の同一性を示した(図2)。このロブスタインベルターゼの提案される液胞局在は、高度に保存されたWECVDFドメイン中のVの存在によって支持されるが(図2、Sturm及びChrispeels、1990年)、inv2タンパク質配列は、このドメイン中のPの存在を特徴とし、このことは、inv2が細胞壁結合型インベルターゼであり得るということを示唆する。図2中のアラインメントは、CcInv2のN末端領域は、その他の植物から得た2種の相同体について見られるものよりも短いということを示す。しかし、cccl20f11のcDNA挿入断片は、実際には、図2においてCcInv2について示される最初のアミノ酸を190bp超えて始まる。この190bpの配列は2つのオープンリーディングフレームを含むが、どちらも、主要なORFとインフレームではない。さらに、短いORFのアミノ酸配列は、その他の2種の相同配列において見られる配列に対応しない(図2)。これらの結果は、このコフィア・カネフォラタンパク質のN末端領域が、その他の植物の相同タンパク質中の匹敵する領域よりも短いこと、又はcDNAクローンのこの領域におけるイントロンの存在のいずれかによって説明できる。
【0115】
B.CcInv3(配列番号11)
クローンcccp28p22(ユニジーン96095)によってコードされるタンパク質は、シロイヌナズナ由来の中性細胞質型インベルターゼ(タンパク質識別子番号NP_567347)に対して高い相同性を有する。cccp28p22クローンによってコードされるタンパク質は、CcInv3(コフィア・カネフォラ インベルターゼ3)と注釈を付けた。得られた最適アラインメントによれば、cccp28p22のcDNA挿入断片は、全長ではなく、すなわち、全タンパク質をコードしていない(約1500個の塩基が失われている)。本発明者らは、数ラウンドのプライマー指向性ゲノムウォーキングを用い、cccp28p22配列5’領域上流に相当するC.カネフォラ由来のゲノム配列を増幅することができた。本発明者らは、特異的プライマーを用い、RT−PCRによって全長cDNAを増幅した。C・アラビカ及びC.カネフォラ由来のいくつかのRNAサンプルを用いたが、全長cDNA配列に相当する陽性の増幅は、黄色段階のアラビカ子実から抽出したRNAを用いてのみ得られた。この新規cDNA配列によってコードされるタンパク質は、CaInv3(コフィア・アラビカ インベルターゼ3)と注釈を付けた。CaInv3 cDNAは1675bpの長さである。推定タンパク質は558aaの長さであり、予測分子量は63.8kDaである。CaInv3 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、シロイヌナズナ由来の中性細胞質型インベルターゼと極めて高レベルの相同性(83.7%)を示す(図3)。
【0116】
C.CcInv4(配列番号12)
クローンcccs46w27d20(ユニジーン123705)によってコードされるタンパク質は、トマト細胞壁結合型インベルターゼLIN6(NCBIタンパク質識別子番号AAM28823)とかなりの程度の同一性を有している(62.7%)。アラインメントは図4に示されている。得られた最適アラインメントによれば、cccs46w27d20のcDNA挿入断片は、全長ではなく、すなわち、全タンパク質をコードしていない(約1500個の塩基が失われている)。cccs46w27d20によってコードされるタンパク質がまた、トマト液胞型インベルターゼTIV−1とも38%の同一性を共有することに留意することは重要である(Klannら、1992年)。cccs46w27d20クローンによってコードされるタンパク質は、CcInv4(コフィア・カネフォラ インベルターゼ4)と注釈を付けた。このタンパク質は、細胞壁結合型インベルターゼよりも液胞型インベルターゼと高い相同性を共有している。5’末端の失われている領域を単離するために、Genome Walker及び5’RACEを実施した。
【0117】
本発明者らは、上記に示したデータに基づいて、C.カネフォラ データベースから各種類のインベルターゼアイソザイムをコードする1種のcDNAを単離した。
【0118】
D.CcInv1(配列番号9)
コフィア・アラビカ由来の細胞壁型インベルターゼをコードする部分cDNA配列(Marracciniらによって入手可能になった:NCBIヌクレオチド識別子番号AJ575257、コードされる部分タンパク質配列(Inv1)NCBIタンパク質識別子番号CAE1317.1)を用いて、C.カネフォラ(ロブスタ)から相同全長cDNA配列を単離した。部分cDNA配列及び3’RACE、並びに実施例1に記載される「プライマー利用」ゲノムウォーキング実験を用いて、相同全長cDNAが1731bpの長さであることがわかり、推定タンパク質は576aaの長さであり、予測分子量は64.6kDaであった。このタンパク質にはCcInv1(コフィア・カネフォラ インベルターゼ1)と注釈を付けた。
【0119】
CcInv1について得られたタンパク質配列は、Marracciniらによって得られた配列と同一ではなく、部分アラビカcDNA配列の既知の163個のアミノ酸にわたって4つのアミノ酸の相違を有している。CcInv1の、いくつかの高度に相同なデータベース配列とのアラインメントは、CcInv1がトマト細胞壁結合型LIN6と55.2%の同一性及びDCCW Inv、すなわちニンジンにおいて同定された細胞壁結合型インベルターゼと54.3%の同一性を有するということを示す(図5)。CcInvの提案される細胞内局在は、高度に保存されたWECPDFドメイン中のPの存在によって支持される(図5、Sturm及びChrispeels、1990年)。
【0120】
(実施例3)
C.カネフォラにおけるインベルターゼ阻害剤タンパク質をコードするcDNAの同定
過去10年の最近の刊行物は、インベルターゼの活性は、インベルターゼ阻害剤と呼ばれる小分子量タンパク質(<20kDa)の群との相互作用によって翻訳後レベルで調節できるということを示した(Greinerら、1998;Greinerら、2000;Helentjarisら、2001年;Bateら、2004年)。公開データベースにおいて、いくつかの植物種から多数の配列が同定されたが、そのうち生化学的に特性決定されたものはほとんどない。最近、2種のインベルターゼ阻害剤、タバコ由来のNtINVINH1(タンパク質識別子番号CAA73333;Greinerら、1998年)及びトウモロコシ由来のZM−INVINH1(ヌクレオチド同定番号AX214333;Bateら、2004年、Helentjarisら、2001年のタンパク質ID.1に相当する)が、生化学的に特性決定された。例えば、ZM−INVINH1は、スクロースセンサーとして作用するその能力によってスクロース代謝を直接制御することがわかった(Bateら、2004年)。高スクロース濃度の存在下では、インベルターゼ阻害剤ZM−INVINH1は不活性のままであり、初期果実形成の間のスクロース加水分解が可能となる。このインベルターゼ阻害剤は、スクロースレベルが指定のレベルを下回って低下すると、活性となり、インベルターゼ活性を阻害する(Helentjarisら、2001年;Bateら、2004年)。
【0121】
さまざまな生物(トマト、タバコ、トウモロコシ及びシロイヌナズナ)に由来するインベルターゼ阻害剤配列が、GenBankにおいて入手可能であるが、そのほとんどは単純に、BLASTを用いて得られた相同性結果に基づいて注釈が付けられており、その生化学的活性の直接的特性決定によってではない。生化学的に特性決定されている比較的少数のインベルターゼ阻害剤は、概して、互いに弱い相同性しか示さず(Bateら、2004年)、今日まで、このクラスのタンパク質は、明確な高度に保存された配列モチーフを有さない(Bateら、2004年)ということは留意される。したがって、「インベルターゼ阻害剤」又は「インベルターゼ阻害剤様タンパク質」として注釈が付けられたデータベース登録は、注意して解釈されなければならない。本発明者らは、コーヒーデータベースにおいて、コーヒーインベルターゼについてblast検索を実施するために、生化学的に特性決定されたインベルターゼ阻害剤ZM−INVINH1をコードする配列、NtInvI及びHelentjarisら、2001年中のタンパク質ID.31(タンパク質識別子番号CAC69345)を用いた。
【0122】
この検索に基づいて、ESTデータベースにおいて、データベースインベルターゼ阻害剤と類似性を有する、4種のクローンcccp2d1(ユニジーン124209)、cccs30w14i24(ユニジーン125332)、cccs30w24n8(ユニジーン122705)及びA5−1462を同定した。
【0123】
A.CcInvI1(配列番号13)
cccp2d1クローンの670bpのcDNA挿入断片は、おそらく全長であり、20.7kDaという分子量を有する可能性があるタンパク質をコードする558bpの完全ORF配列を含む。cccp2d1のタンパク質配列は、トウモロコシにおいて特性決定されたインベルターゼ阻害剤ZM−INVINH1(Bateら、2004年)と31.2%同一である(図6)。このcDNAは、CcInvI1(コフィア・カネフォラ インベルターゼ阻害剤1)と注釈を付けた。
【0124】
B.CcInvI2(配列番号14)
cccs30wl4i24クローンの629bpのcDNA挿入断片は、おそらく全長であり、19.6kDaという分子量を有する可能性があるタンパク質をコードする537bpの完全ORF配列を含む。cccs30wl4i24のタンパク質配列は、タバコにおいて特性決定されたインベルターゼ阻害剤NtInvI(Greinerら、1998年;Weilら、1994年)と34.6%同一である(図6)。このcDNAはCcInvI2(コフィア・カネフォラ インベルターゼ阻害剤2)と注釈を付けた。
【0125】
C.CcInvI3(配列番号15)
PCT出願PTC/EP2004/006805に記載されるcDNAライブラリーのBlastスクリーニングの結果、cDNAクローンA5−1462が発見された。A5−1462クローンの704bpのcDNA挿入断片は、おそらく全長であり、18.4kDaという分子量を有する可能性があるタンパク質をコードする495bpの完全ORF配列を含む。A5−1462のタンパク質配列は、ZM−INVINH1と13%しか同一でないが(図6)、タンパク質ID.31(ヌクレオチド同定番号AX214363;Helentjarisら、2001年)とは24.4%同一である。このcDNAは、CcInvI3(コフィア・カネフォラ インベルターゼ阻害剤3)と注釈を付けた。
【0126】
D.CcInvI4(配列番号16)
cccs30w24n8クローンの640bpのcDNA挿入断片は、おそらく全長であり、20.2kDaという分子量を有する可能性があるタンパク質をコードする555bpの完全ORF配列を含む。cccs30w24n8のタンパク質配列は、ZM−INVINH1と20.5%同一であり(図6)、タンパク質ID.31(ヌクレオチド同定番号AX214363;Helentjarisら、2001年)と25.7%同一である。このcDNAは、CcInvI4(コフィア・カネフォラ インベルターゼ阻害剤4)と注釈を付けた。
【0127】
先に記載したように、CcInvIタンパク質はあまり保存されておらず、例えば、ZM−INVINH1又はNtInvIと弱い相同性しか共有していない。機能に必須であると知られている4つの「保存された」Cys残基(Rausch及びGreiner、2003年;Scognamiglioら、2003年;Hothornら、2003年;Hothomら、2004年)は、各タンパク質中に存在している(図6)。
【0128】
(実施例4)
コーヒー豆成熟の間の酸性及び中性インベルターゼ活性
FRT05(ロブスタ)及びCCCA12(アラビカ)から得た全粒において、コーヒー子実成熟の間のグルコース、フルクトース及びスクロースの濃度を調べた。本発明者らは、これまでにこれら2種の遺伝子型が大幅に異なるレベルのスクロースを有するとわかっていたので、分析するよう選択した(Charles Lambot、公開されていないデータ)。本発明者らは、この相違の機序を理解するために、これら2種の品種の子実発達の間のスクロースの蓄積、並びにグルコース及びフルクトースのレベルを分析した。同時に、酸性及び中性インベルターゼ活性を、遊離糖蓄積とこれらの特定の活性の間に相関関係があり得るかどうかを調べるために調べた。同様の実験は、第2のロブスタ品種、FRT64から得たサンプルを用いて実施した。結果は表3及び図7に示されている。
【0129】
表3.コーヒー豆成熟の間の酸性及び中性インベルターゼ活性。
この研究には大きさ及び色を特徴とする4つの異なる成熟段階のコーヒー果実を用いた:すなわち、SG(小さく緑色)、LG(大きく緑色)、Y(黄色)及びR(赤色)。コーヒー子実中のスクロース、グルコース及びフルクトースの濃度を、インベルターゼ活性のアッセイのために採取したものと同時に採取したサンプルにおいて測定した。糖濃度は、g/100gDW(乾重)で表されているのに対し、酵素活性は、μモル.h−1.mg−1タンパク質で表されている。
【表3】

【0130】
A.コーヒー子実成熟の間の糖レベル
調べた成熟度の最初期段階(SG段階)では、主要な遊離糖はグルコースであったが、その濃度は、CCCA12(14%)において、FRT05(1.5%)よりも10倍高かった。同じ段階で、フルクトース濃度もアラビカ(1.5%)において、FRT05(0.3%)よりも高かったが、フルクトースはグルコースよりも蓄積されないことは明らかであった。子実発達の最後までに、両種の、グルコースとフルクトースの濃度が極めて低いレベルに低下し、成熟した赤い段階(R)では微量しか検出されなかった。これら2種の糖の減少はスクロースの増大と同時に起こり、これは成熟した子実中の全遊離糖の100%に迫り、やはり、アラビカ(9.82%)において、ロブスタ(6.71%)よりも高い。スクロース、グルコース及びフルクトース変動に関する同様の全体的な所見は、FRT64コーヒー豆成熟の間にもなされ得る。最初期段階では、グルコースが、フルクトースよりも蓄積される。発達の最後では、スクロースが主要な蓄積される糖であった。興味深いことに、FRT64及びFRT05が、R段階において同様の最終スクロース濃度(およそ6.6%DW)を有する場合であっても、スクロースは、すべてのそれまでの段階、すなわち、SG(60%多く)、LG(25%多く)及びY(30%多く)では、FRT64において、FRT05サンプルよりも蓄積された。これらの結果は遊離糖蓄積のみを表すものであって、スクロース代謝に直接関与しているUDP−G、F6−P及びS6−Pのようなその修飾された形を含まないことを留意することは重要である。
【0131】
B.コーヒー子実成熟の間のインベルターゼ活性(酸性及び中性)
酸性及び中性酵素活性は、CCCA12コーヒー子実成熟間に同様に展開した。CCCA12のSG段階において低い酸性(0.17U)及び中性(0.09U)インベルターゼ活性が観察された。両酵素活性は、SGとLG段階の間に劇的に増大し、酸性インベルターゼについては1.70U、中性インベルターゼについては0.49Uという活性に到達した。発達の後期段階では、AI及びNI活性は劇的に低下し、Y段階でほぼ同様の低いレベルの活性に到達した(それぞれ、0.19U及び0.20U)。YとR段階の間に、AI活性が最大0.34Uに増大したのに対し、NI活性は0.14Uに低下した。興味深いことに、AI及びNI活性は、同じサンプルについて先に観察されたSuSy活性よりも類似の変動を有している(所有者共通の、同時係属仮出願[まだ、割り当てられていない]参照のこと)。CCCA12子実成熟の最後の段階における両インベルターゼ活性の低下とスクロース蓄積には明確な相関関係がある。
【0132】
FRT05及びFRT64のAI及びNI活性が、CCCA12について観察されるものに対して極めて異なる様式で展開することは明白である。AI(1.50U)及びNI(0.43U)酵素は、FRT05発達の初期(SG段階)に高度に活性であった。AI活性は、SGとY段階の間に劇的に低下し、0.26Uに達した(Y段階でCCCA12について観察されるものとほとんど同じ活性)。FRT05ではAI活性はYとR段階の間に上がり、1.44Uに達した。中性インベルターゼの活性の低下も観察されたが、SGとLG段階の間のみにおいて観察された。中性インベルターゼの活性の上昇は、LGとR段階の間に観察された。NIは、その最大活性0.54Uに達した。FRT05後期子実発達段階は、高いAI及びNI活性を特徴とする。FRT64遺伝子型については、AI活性及びNI活性は、SG FRT64子実において低かった。両活性はSG及びLG段階の間は安定なままであり、LGとR段階の間に増大し、増大はNIについて、AIよりもより高かった。FRT64は、LGとR段階の間にFRT05と同様の中性インベルターゼ活性増大を有していたが、同時に、酸性インベルターゼ活性もFRT05において、FRT64 R段階よりも2.5倍高かった。結論として、FRT05及びFRT64は、成熟子実において同様の最終スクロース濃度を有するが、インベルターゼ、主に酸性の活性は大きく異なる。
【0133】
全体に、CCCA12は、成熟の最終段階でのより弱い全体的なインベルターゼ活性のために、FRT05及びFRT64よりも、ある程度より多くのスクロースを蓄積し得るようである。後期発達においてスクロースが師部から運び入れられた後に合成される場合であっても、両ロブスタではインベルターゼ活性が即時分解によってスクロース蓄積を妨げている。
【0134】
(実施例5)
コーヒー豆成熟の間のインベルターゼ及びインベルターゼ阻害剤mRNA蓄積
T2308(コフィア・アラビカ)及びBP409(C.カネフォラ)子実発達の間のインベルターゼ遺伝子、CcInv1、CcInv2及びCcInv3並びにインベルターゼ阻害剤遺伝子CcInvI1、2、3及び4の発現を特性決定した。本発明者らは、比較目的のため、種々のコーヒー組織、例えば、葉、花及び根におけるこれらの遺伝子の発現も特性決定した。これらの遺伝子発現研究は、酵素活性分析実験に用いられたものとは異なる品種と関連していることは留意される。それにもかかわらず、この発現データは、アラビカ対ロブスタにおけるこれらの遺伝子の発現間の全体的な比較を可能にする。
【0135】
RNAは、大きさ及び色を特徴とする4つの異なる成熟段階、すなわち、SG(小さく緑色)、LG(大きく緑色)、Y(黄色)及びR(赤色又は成熟)のBP409及びT2308コーヒー果実から抽出した。実施例1に記載されるように、各段階について、果皮及び子実を分離し、その後、RNAを抽出した。全RNAはまた、その他の組織(葉、根及び花)からも抽出した。遺伝子発現は、リアルタイムRT−PCR(TaqMan、Applied Biosystems)を実施することによって分析した。相対的な転写物レベルを、内因性構成的転写物rpl39に対して定量化した。用いた遺伝子特異的プライマー及びTaqManプローブが、上記の表2に列挙されている。
【0136】
CcInv遺伝子発現に関する最初の全体的な所見は、これらの遺伝子は、特に、子実では、すべての成熟段階で、両遺伝子型についてあまり発現されないということがわかったということである(図8)。CcInv1転写物(細胞壁型インベルターゼ)は、いずれの遺伝子型の子実でも検出されなかった。興味深いことに、CcInv1の転写物は、T2308果皮では検出されなかったのに対し、同じ段階でBP409の果皮では相当なレベルが検出され得た。反対に、BP409の根及び葉組織では、相対的にかなりのレベルのCcInv1が検出されたが、T2308から得た同一組織では検出されなかった。このインベルターゼ発現は、これらの相違は、BP409及びT2308遺伝子をコードするこれらの転写物における対立遺伝子の相違によるものではなく、おそらく、各遺伝子型におけるこれらの遺伝子の転写物レベルの相違によるものであるということを強力に示唆する。T2308の花において、BP409における発現と比較して、極めて高レベルのCcInv2発現が検出された(図8、パネルA:およそ10倍の相違、T2308(4.8RQ)対BP409(0.38RQ))。
【0137】
これまでは、本明細書において用いられるT2308及びBP409の全花サンプル中のいくつかのその他の遺伝子(例えば、CcHQT、CcPAL1及びCcPAL3、未公開データ)の発現に有意差があることが留意され、これがこれらの全花サンプルは正確に同じ発達段階ではない可能性があるという考えをもたらしてきた。CcInv2の発現データをより詳細に調べたところ(図8、パネルB)、CcInv2は、ロブスタの小さい緑色の子実とは別に、アラビカ又はロブスタの子実において極めて低レベルで発現されるということがわかった。しかし、子実におけるCcInv2の弱い発現については、成熟へ向けた増大への極めて小さい傾向であるようであるということは留意される。アラビカ及びロブスタ果皮組織において、CcInv2の相対的にかなりの発現が検出されたが、この発現のパターンは異なっていた。
【0138】
試験したすべてのアラビカ果皮段階において、相対的に類似の発現があったのに対し、ロブスタでは、CcInv2の発現は、小さな緑色果皮では極めて低く、次いで、徐々に増大し、最高発現は成熟果皮組織において検出された。低CcInv2発現はまた、BP409の根及び葉において検出されたが、T2308では検出されなかった。
【0139】
中性(細胞質型)インベルターゼをコードすると考えられているCcInv3の最高発現は、アラビカ及びロブスタの花において見られた。かなり低いレベルのCcInv3発現がその他の組織で検出された。子実では、すべての段階において、CcInv3転写物のレベルは、アラビカにおいてロブスタよりもわずかに高いようであったが、果皮では、反対であるようであり、大きな緑色から赤い段階ではロブスタにおける発現が、アラビカにおいてよりもわずかに高い。
【0140】
転写レベルでのインベルターゼの制御は重要であるが、大幅な制御はまた、インベルターゼタンパク質と、インベルターゼ阻害剤と呼ばれる小分子量タンパク質(<20kDa)の群との相互作用によって転写後レベルでも行うことができる(Greinerら、1998年;Greinerら、2000年;Helentjarisら、2001年;Bateら、2004年)。上記のように、インベルターゼ阻害剤をコードすると考えられる4種の全長cDNAを、ESTライブラリーから単離した。これらの遺伝子の発現分析の結果は、図9に示されている。
【0141】
CcInv1は、アラビカでは、もっぱら、小さな緑色段階の子実において発現され、大きな緑色の段階ではかなり少ない程度に発現されるのに対し、この遺伝子は、ロブスタでは、主に大きな緑色の子実において発現されることがわかった(図9)。極めて低いレベルのCcInvI1発現が、アラビカ及びロブスタ黄色子実の両方において検出されたが、成熟子実(赤)においては検出されなかった。
【0142】
CcInvI2の発現についてはあまり特異性は見られなかった(図9)。この遺伝子は、アラビカ及びロブスタ両方の全花において相対的に高レベルで発現される。アラビカ及びロブスタ果皮では、小さな緑色段階の間、CcInvI2発現を比較的低レベルで検出できたが、果実成熟につれて両種において大幅に増大することは明らかである。CcInvI2は、すべての段階の子実において、並びに根及び葉において極めて低レベルで発現されるようである。
【0143】
CcInvI1同様、CcInvI3及びCcInvI4の発現は高レベルの組織特異性を示した。CcInvI3はもっぱら、アラビカの小さな緑色の子実において、またロブスタの黄色の子実において発現されるようである。CcInvI4発現は、ほぼ例外なく、アラビカ子実の小さな緑色組織において検出されたのに対し、ロブスタでは、大きな緑色の子実において、及びより低い程度で葉において発現された。
【0144】
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【0145】
本発明は、上記で記載され、例示される実施形態に制限されないが、添付の特許請求の範囲内で改変及び修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】トマト果実におけるスクロース代謝のモデル。S(スクロース)は、シンプラスト経路によって師部から移入されるか、又は細胞壁型インベルターゼによって加水分解される。グルコース及びフルクトースは、特異的糖輸送体タンパク質によってサイトゾル中に移入される。スクロースは、サイトゾルでSS(スクロースシンターゼ)によって分解され、その再合成は、SP(スクロースホスファターゼ)又はSSと関連して、SPS(スクロースホスフェートシンターゼ)によって触媒される。スクロースは、液胞中に運び出され、液胞型インベルターゼによって加水分解される。修飾後、UDP−グルコースは、有色体においてデンプン合成に用いられ得る。略語:G、グルコース;F、フルクトース;F6−P、フルクトース6−リン酸;UDP−G、UDP−グルコース;G6−P、グルコース6−リン酸;S6−P、スクロース6−リン酸;I、インベルターゼ;SP、スクロースホスファターゼ、SPPスクロースホスフェートシンターゼ。
【図2】液胞型酸性インベルターゼタンパク質との、CcInv2のタンパク質配列アラインメント。タンパク質配列は、CcInv2(コフィア・カネフォラ インベルターゼ2、配列番号10)を用いたBLASTp相同性検索に基づいて選択した。トマトTIV1(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))由来の酸性インベルターゼ(配列番号17)のGenBank受託番号はP29000であり、ニンジン(ダウカス・カロタ(Daucus carota))由来の酸性インベルターゼ(配列番号18)についてはCAA47636.1であり、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))由来の酸性インベルターゼ(配列番号19)についてはAAQ17074であり、コフィア・アラビカ由来のinv2(配列番号20)についてはCAE01318である。CcInv2配列のものとは異なるアミノ酸は、灰色で色付けしてある。アラインメントは、MegAlign Software(Lasergene package、DNA STAR)中のClustal Wプログラムを用いて行った。アミノ酸配列NDPNGは、植物酸性インベルターゼ(βF−モチーフ)の顕著な特徴である。配列WECVDFは、液胞型インベルターゼに特異的である。
【図3】液胞型酸性インベルターゼタンパク質との、CaInv3のタンパク質配列アラインメント。タンパク質配列は、CaInv3(コフィア・アラビカ インベルターゼ3、配列番号11)を用いたBLASTp相同性検索に基づいて選択した。AT NInv(シロイヌナズナ由来の中性細胞質型インベルターゼ)(配列番号21)のGenBank受託番号は、NP_567347であり、LJNInv1(ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus)由来の中性細胞質型インベルターゼ)(配列番号22)についてはCAG30577である。アラインメントは、MegAlign Software(Lasergene package、DNA STAR)中のClustal Wプログラムを用いて行った。CaInv3配列のものと異なるアミノ酸は、灰色で色付けしてある。
【図4】TIV1及びLIN6酸性インベルターゼタンパク質との、CcInv4の部分タンパク質配列アラインメント。CcInv4(配列番号12)、TIV1(液胞型インベルターゼ)(配列番号17)及びLIN6(細胞壁結合型インベルターゼ)(配列番号23)間の部分タンパク質アラインメントは、MegAlign Software(Lasergene package、DNA STAR)中のClustal Wプログラムを用いて行った。TIV1のGenBank受託番号は、P29000であり、トマト(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))由来のLIN6についてはAAM28823である。CcInv4配列のものとは異なるアミノ酸は、灰色で色付けしてある。
【図5】細胞壁結合型インベルターゼタンパク質との、CcInv1のタンパク質配列アラインメント。タンパク質配列は、CcInv1(コフィア・カネフォラ インベルターゼ1、配列番号9)を用いたBLASTp相同性検索に基づいて選択した。LIN5(配列番号24)のGenBank受託番号はCAB85897であり、トマト(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))(配列番号23)由来のLIN6についてはAAM28823であり、ニンジン(ダウカス・カロタ(Daucus carota))由来のDCCWInvインベルターゼ(配列番号25)についてはCAA49162.1であり、コフィア・アラビカ由来のinv1(配列番号26)についてはCAE01317である。CcInv1配列のものとは異なるアミノ酸は、灰色で色付けしてある。アラインメントは、MegAlign Software(Lasergene package、DNA STAR)中のClustal Wプログラムを用いて行った。アミノ酸配列NDPNG(配列番号27)は、植物酸性インベルターゼ(βF−モチーフ)の顕著な特徴である。配列WECPDF(配列番号28)はペリプラズム又は細胞壁結合型インベルターゼに特異的である。
【図6】インベルターゼ阻害剤タンパク質との、CcInvIのタンパク質配列アラインメント。トウモロコシ(ゼア・メイズ(Zea mays))由来のZM−InvI(CAC69335.1)(配列番号29)及びタバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum))由来のNt InvI(AAT01640)(配列番号30)との、CcInvI1、2、3及び4タンパク質(それぞれ、配列番号13、14、15及び16)のアラインメントを示す図である。コンセンサス配列と同一のアミノ酸は、灰色で色付けしてある。4個の保存されたCys残基が注目される。アラインメントは、MegAlign Software(Lasergene package、DNA STAR)中のClustal Wプログラムを用いて行った。
【図7A】CCCA12(コフィア・アラビカ)及びFRT05、FRT64(C.カネフォラ)の間の、全子実(果皮及び房から分離した)中の酸性及び中性インベルターゼ活性の変化。この研究には、大きさ及び色によって特徴付けられる4つの異なる成熟段階でのコーヒー果実、すなわち、SG(小さく緑色)、LG(大きく緑色)、Y(黄色)及びR(赤色)を用いた。酵素活性は、μモル.h−1.mg−1タンパク質で表されている。
【図7B】CCCA12(コフィア・アラビカ)及びFRT05、FRT64(C.カネフォラ)の間の、全子実(果皮及び房から分離した)中の酸性及び中性インベルターゼ活性の変化。この研究には、大きさ及び色によって特徴付けられる4つの異なる成熟段階でのコーヒー果実、すなわち、SG(小さく緑色)、LG(大きく緑色)、Y(黄色)及びR(赤色)を用いた。酵素活性は、μモル.h−1.mg−1タンパク質で表されている。
【図8A】リアルタイムRT−PCRを用いる、C.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInv1(細胞壁結合型)、CcInv2(液胞型)(A及びB)並びにCcInv3(細胞質型)インベルターゼの組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。示されるデータは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図8B】リアルタイムRT−PCRを用いる、C.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInv1(細胞壁結合型)、CcInv2(液胞型)(A及びB)並びにCcInv3(細胞質型)インベルターゼの組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。示されるデータは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図8C】リアルタイムRT−PCRを用いる、C.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInv1(細胞壁結合型)、CcInv2(液胞型)(A及びB)並びにCcInv3(細胞質型)インベルターゼの組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。示されるデータは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図9A】リアルタイムRT−PCRを用いるC.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInvI1、CcInvI2、CcInvI3及びCcInvI4インベルターゼ阻害剤の組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。データは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図9B】リアルタイムRT−PCRを用いるC.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInvI1、CcInvI2、CcInvI3及びCcInvI4インベルターゼ阻害剤の組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。データは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図9C】リアルタイムRT−PCRを用いるC.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInvI1、CcInvI2、CcInvI3及びCcInvI4インベルターゼ阻害剤の組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。データは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。
【図9D】リアルタイムRT−PCRを用いるC.カネフォラ(ロブスタ、BP409)及びC・アラビカ(アラビカ、T2308)におけるCcInvI1、CcInvI2、CcInvI3及びCcInvI4インベルターゼ阻害剤の組織特異的発現プロフィール。根、花、葉並びに4つの異なる成熟段階、すなわち、小さく緑色(SG)、大きく緑色(LG)、黄色(Y)及び赤色(R)で収穫されたコーヒー豆から全RNAを単離した。各成熟段階について、コーヒー果実を果皮(P)と子実(G)に分離した。全RNAを逆転写し、TaqMan−MGBプローブを用いるリアルタイムPCRに付した。rpl39転写物レベルに対して相対量を算出し、正規化した。データは、3回の増幅反応から得られた平均値を表し、エラーバーは平均のSDを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードするコード配列を含む、コーヒー(コフィア種)から単離された核酸分子。
【請求項2】
コード配列がインベルターゼをコードする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
インベルターゼが細胞壁型インベルターゼ、液胞型インベルターゼ又は中性インベルターゼである、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
インベルターゼが細胞壁型インベルターゼであり、アミノ酸配列WECPDFを有する保存されたドメインを含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
インベルターゼが、配列番号9又は配列番号13と55%を超えて同一であるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
インベルターゼが配列番号9又は配列番号13を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
配列番号1又は配列番号4を含む、配列番号6に記載の核酸分子。
【請求項8】
インベルターゼが液胞型インベルターゼであり、アミノ酸配列WECVDFを有する保存されたドメインを含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項9】
インベルターゼが、配列番号10と70%以上同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
インベルターゼが配列番号10を含む、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
配列番号2を含む、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
インベルターゼが中性インベルターゼである、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項13】
インベルターゼが、配列番号11と84%以上同一であるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項14】
インベルターゼが配列番号11を含む、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項15】
配列番号3を含む、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
コード配列がインベルターゼ阻害剤をコードする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項17】
インベルターゼ阻害剤が、そのアミノ酸配列中に4個の保存されたシステイン残基を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
インベルターゼ阻害剤が、配列番号13、14、15又は16のうちいずれか1つと25%以上同一であるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
インベルターゼ阻害剤が、配列番号13、14、15又は16のうちいずれか1つを含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項20】
配列番号5、6、7又は8のうちいずれか1つを含む、請求項19に記載の核酸分子。
【請求項21】
コード配列が遺伝子のオープンリーディングフレームである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の遺伝子の転写によって生じるmRNA分子。
【請求項23】
請求項22に記載のmRNA分子の逆転写によって生じるcDNA分子。
【請求項24】
請求項1に記載の核酸分子のセグメントと相補的である、8〜100の間の塩基長のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
請求項1に記載の核酸分子のコード配列を含むベクター。
【請求項26】
プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌、酵母及びウイルスベクターからなるベクターの群から選択される発現ベクターである、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
核酸分子のコード配列が、構成的プロモーターと作動可能に連結している、請求項25に記載のベクター。
【請求項28】
核酸分子のコード配列が、誘導性プロモーターと作動可能に連結している、請求項25に記載のベクター。
【請求項29】
核酸分子のコード配列が、組織特異的プロモーターと作動可能に連結している、請求項25に記載のベクター。
【請求項30】
組織特異的プロモーターが種子特異的プロモーターである、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
種子特異的プロモーターがコーヒー種子特異的プロモーターである、請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
請求項25に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項33】
植物細胞、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞からなる群から選択される、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
コーヒー、タバコ、シロイヌナズナ、トウモロコシ、コムギ、コメ、ダイズ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、ソルガム、アルファルファ、クローバ、アブラナ、ベニバナ、ヒマワリ、ピーナッツ、カカオ、トマティロ、ジャガイモ、コショウ、ナス、サトウダイコン、ニンジン、キュウリ、レタス、エンドウマメ、アスター、ベゴニア、キク、ヒエンソウ、ヒャクニチソウ及びシバクサからなる植物の群から選択される植物細胞である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項35】
請求項34に記載の植物細胞から生じる稔性植物。
【請求項36】
コーヒー豆の風味又は香りを調節する方法であって、コーヒー種子内の1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を調節するステップを含む方法。
【請求項37】
1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を増大させるステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
コーヒー種子内の1種又は複数の内因性インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤遺伝子の発現を増大させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
インベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする導入遺伝子を、植物に導入するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
1種又は複数のインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を増大させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
インベルターゼ阻害剤の産生又は活性が増大されていない同等の植物と比較して、植物中の内因性インベルターゼ活性が低下している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
植物が、その種子に、インベルターゼ阻害剤の産生又は活性が増大されていない同等の植物よりも多くのスクロースを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤の産生又は活性を低減させるステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
1種又は複数のインベルターゼ又はインベルターゼ阻害剤をコードする遺伝子の発現を阻害する核酸分子をコーヒーに導入するステップを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
インベルターゼの発現又は活性が低減される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
植物が、その種子中に、インベルターゼの産生又は活性が低減されていない同等の植物よりも多くのスクロースを含む、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2009−509509(P2009−509509A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532502(P2008−532502)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/037600
【国際公開番号】WO2007/038566
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508065732)コーネル ユニヴァーシティー (4)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】