説明

ゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックス

【課題】 高温加硫後の繊維コードの強力低下が少なく、かつゴムと繊維との間に良好な接着力を有し、かつRFL液の泡立ちが少なく浸漬作業性の改善されたゴムとポリエステル繊維用の接着剤用共重合体ラテックスの提供。
【解決手段】 ブタジエン35〜75重量%、ビニルピリジン10〜30重量%およびスチレン10〜55重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量部(固形分換算)とブタジエン3〜20重量%、スチレン75〜96.9重量%、エチレン系不飽和カルボン酸0.1〜10重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%を乳化重合して得られるガラス転移温度が40〜90℃である共重合体ラテックス(B)10〜50重量部(固形分換算)からなる(ただし、(A)と(B)の合計は100重量部)ことを特徴とするゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムとポリエステル繊維との接着剤用共重合体ラテックスに関するものである。さらに詳しくは、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品に含まれるポリエステル繊維とゴムとの接着に適した、改良された接着剤用共重合体ラテックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維はナイロン繊維と比較して伸びが少なく寸法安定性に優れているため、ラジアルタイヤのカーカス用コード等の用途を中心にゴム補強用繊維として広く用いられている。
しかしながら、ゴム補強用のポリエステル繊維はナイロン繊維やレーヨン繊維に比べゴムとの接着に不活性であるため、通常加硫後の繊維/ゴム間の接着力(初期接着力)が低いという問題がある。このため、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体ラテックス単独またはそれとブタジエン−スチレン共重合体ラテックスとの混合物、およびレゾルシン−ホルマリン樹脂(RFレジン)からなる接着剤組成物(RFL)を用いて接着処理するだけでは、実用的な接着力が得られず、あらかじめポリエステル繊維をエポキシ樹脂やイソシアネート化合物で前処理した後RFL処理したり、RFLにP−クロロフェノール、ホルムアルデヒド、レゾルシノールの縮合物のアンモニア溶液(ナガセ化成工業社製:デナボンド)等の接着助剤を添加した接着処理液を用いる等して実用に供されている。
また、ポリエステル繊維は耐熱性が劣るため、高温加硫後や高温履歴後の繊維/ゴム間の接着力(耐熱接着力)および繊維強度(コード強力)の低下が激しいという問題もある。さらに近年のポリエステル繊維用のRFL処方は繊維/ゴム間の高い接着力を得るためにより繁雑になっておりRFL液の泡立ちが多くなる問題もある。
このため、RFLに用いられるブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスの改良検討が行われており、例えば特公平7−78207号公報(特許文献1)、特公平8−32864号公報(特許文献2)では特定単量体組成のブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスが提案されており、さらに特公平6−74401号公報(特許文献3)、特公平7−5871号公報(特許文献4)、特開2007−154126号公報(特許文献5)では特定単量体組成のブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスと特定単量体組成のSBRからなる共重合体ラテックスが提案されている。また、特許第3986654号公報(特許文献6)では、特定構造を有する共重合体粒子からなる共重合体ラテックスが提案されている。
しかしながら、近年のタイヤの高性能化に対応するためや、或いは、タイヤの生産性向上を目的とした高温加硫など、ますます耐熱接着力に対する品質要求は厳しくなっており、さらなる改良が望まれている。即ち、高温加硫後のコード強力の低下が少なく、また、初期接着力、耐熱接着力にも優れたゴムとポリエステル繊維との接着剤用共重合体ラテックスが求められている。
さらに近年のゴムとポリエステル繊維の接着への高性能要求からポリエステル繊維用のRFL処方の繁雑下に伴って、RFL液の泡立ちが多くなり浸漬処理作業を低下させる問題もある。すなわちポリエステル繊維を浸漬処理する際のRFL液の泡立ちが少ないポリエステル繊維用の接着剤用共重合体ラテックスも求められている。
【特許文献1】特公平7−78207号公報
【特許文献2】特公平8−32864号公報
【特許文献3】特公平6−74401号公報
【特許文献4】特公平7−5871号公報
【特許文献5】特開2007−154126号公報
【特許文献6】特許第3986654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高温加硫後の繊維コードの強力低下が少なく、かつゴムと繊維との間に良好な接着力を有し、かつ本発明の共重合体ラテックスを含有するRFL液の泡立ちが少なく浸漬作業性をも改善してなるゴムとポリエステル繊維用の接着剤用共重合体ラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明はブタジエン系単量体35〜75重量%、ビニルピリジン系単量体10〜30重量%およびスチレン系単量体10〜55重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量部(固形分換算)とブタジエン系単量体3〜20重量%、スチレン系単量体75〜96.9重量%、エチレン系不飽和カルボン酸0.1〜10重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%を乳化重合して得られるガラス転移温度が40〜90℃である共重合体ラテックス(B)10〜50重量部(固形分換算)からなる(ただし、(A)と(B)の合計は100重量部)ことを特徴とするゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックスを提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の共重合体ラテックスを使用することにより、高温加硫後の繊維コードの強力低下が少なく、かつゴムと繊維との間に良好な接着力を有し、かつRFL液の泡立ちが少なく浸漬作業性が改善されるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明について詳しく説明する。原則として、共重合体ラテックス(A)および共重合体ラテックス(B)の間で異なる点はその旨を明示し、共通する点は同時に説明する。
【0007】
本発明の共重合体ラテックス(A)および(B)に使用されるブタジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
共重合体ラテックス(A)に用いられる単量体のうち、ブタジエン系単量体が35重量%未満では初期接着力が低下し、75重量%を越えるとコード強度および耐熱接着力が低下する。好ましくは40〜70重量%である。
また、共重合体ラテックス(B)に用いられる単量体のうち、ブタジエン系単量体が3重量%未満では初期接着力が低下し、20重量%を越えるとコード強度および耐熱接着力が低下する。好ましくは4〜18重量%である。
【0008】
本発明の共重合体ラテックス(A)に使用されるビニルピリジン系単量体としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等が挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。特に2−ビニルピリジンが好ましい。
共重合体ラテックス(A)に用いられる単量体のうち、ビニルピリジン系単量体が10重量%未満では初期接着力、耐熱接着力共に低下し、30重量%を越えると初期接着力が低下する。好ましくは13〜25重量%である。
【0009】
本発明の共重合体ラテックス(A)および(B)に使用されるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン等が挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。特にスチレンが好ましい。
共重合体ラテックス(A)に用いられる単量体のうち、スチレン系単量体が10重量%未満では耐熱接着力が低下し、55重量%を超えると初期接着力、耐熱接着力共に低下する。好ましくは15〜50重量%である。
また、共重合体ラテックス(B)に用いられる単量体のうち、スチレン系単量体が75重量%未満ではコード強度および耐熱接着力が低下し、96.9重量%を超えると初期接着力、耐熱接着力共に低下する。好ましくは76〜95.5重量%である。
【0010】
本発明の共重合体ラテックス(B)に使用されるエチレン系不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などがあげられるが、これらは1種または2種以上使用することができる。
共重合体ラテックス(B)に用いられる単量体のうち、エチレン系不飽和カルボン酸は0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。好ましくは0.5〜10重量%である。
【0011】
本発明における共重合体ラテックス(B)において使用することのできる他の共重合可能な単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単量体等が挙げられ、それぞれ1種または2種以上使用することができる。これら他の共重合可能な単量体は共重合体ラテックス(B)に用いられる単量体のうち0〜20重量%の範囲で使用することができる。
なお、本発明においては、その目的を阻害しない範囲内において、共重合体ラテックス(A)の一部をこれら他の共重合可能な単量体に置換することも可能である。
【0012】
また、共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度は40〜90℃であることが必要である。40℃未満では耐熱接着力が低下し、90℃を超えると初期接着力が低下するため好ましくない。
なお、共重合体ラテックス(B)は、酸性条件下で重合を行った後に、pH調整剤にてpHを5〜12の範囲に調整し、共重合体ラテックス(A)と混合するのが好ましい。
【0013】
本発明の共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)の重量部(固形分換算)比は(A)/(B)=50〜90/10〜50(ただし、(A)と(B)の合計は100重量部)である。この範囲外ではRFL液の泡立ち、コード強度、耐熱接着力の改善効果が小さい。好ましくは50〜80/20〜50(ただし、(A)と(B)の合計は100重量部)である。
【0014】
本発明にて用いられる共重合体ラテックス(A)および(B)は、公知の乳化重合法により製造される。
これら共重合体ラテックス(A)および(B)の重合に際しては、乳化剤として、ロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
【0015】
また、本発明の共重合体ラテックス(A)および(B)の乳化重合法においては、従来公知の連鎖移動剤、重合開始剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等、さらには炭化水素系溶剤を使用することができる。さらに、各種成分の添加方法については特に制限はなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、二段重合方法、パワーフィード方法などが適用できる。
【0016】
連鎖移動剤としてはn−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
これらの連鎖移動剤は、通常、単量体100重量部に対して0〜10重量部にて使用される。
【0017】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0018】
また、重合に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用しても良い。特に本発明にて用いられる共重合体ラテックス(B)の重合に際しては、シクロヘキセンの存在下で乳化重合することで、さらに本発明の効果をより一層高めることができる。 なお、これら炭化水素化合物の使用量には特に制限はないが、炭化水素化合物の使用量は共重合体ラテックス(B)を構成する単量体100重量部に対して0.1〜30重量部である。
【0019】
また、特に本発明にて用いられる共重合体ラテックス(A)の乳化重合に際して1段目のブタジエン系単量体10〜60重量%、ビニルピリジン系単量体10〜40重量%、およびスチレン系単量体30〜70重量%からなる単量体(a)30〜70重量部を乳化重合して得られる共重合体の存在下に、2段目のブタジエン系単量体40〜90重量%、ビニルピリジン系単量体5〜30重量%およびスチレン系単量体5〜30重量%からなる単量体(b)30〜70重量部を添加し乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)(但し、単量体(a)と単量体(b)の合計は100重量部)を前記の共重合体ラテックス(B)と特定の割合で混合することで、さらに本発明の効果をより一層高めることができる。なお、1段目の単量体(a)が30〜70重量部の範囲外では初期および耐熱接着力が低下する傾向にある。好ましく40から60重量部である。また、本発明の共重合体ラテックス(A)の乳化重合においては、1段目の単量体(a)の重合転化率が60〜90%になった時点で、2段目の単量体(b)を添加して乳化重合することが好ましい。
【0020】
前記の2段重合法で重合される共重合体ラテックス(A)に用いられる単量体のうち、1段目のブタジエン系単量体が10重量%未満では初期接着力が低下し、60重量%を越えるとコード強度および耐熱接着力が低下する傾向にある。好ましくは20〜55重量%である。ビニルピリジン系単量体が10重量%未満では初期接着力、耐熱接着力共に低下する傾向にあり、40重量%を超えると初期接着力が低下する傾向にある。好ましくは12〜35重量%である。スチレン系単量体が30重量%未満ではコード強度が低下し、70重量%を超えると初期接着力が低下する傾向にある。好ましくは30〜60重量%である。
【0021】
前記の2段重合法で重合される共重合体ラテックスに用いられる単量体のうち、2段目のブタジエン系単量体が40重量%未満では初期接着力が低下し、90重量%を越えるとコード強度および耐熱接着力が低下する傾向にある。好ましくは50〜80重量%である。ビニルピリジン系単量体が5重量%未満では初期接着力、耐熱接着力共に低下し、30重量%を超えると初期接着力が低下する傾向にある。好ましくは10〜25重量%である。スチレン系単量体が5重量%未満ではコード強度が低下し、30重量%を超えると初期接着力が低下する傾向にある。好ましくは10〜25重量%である。
【0022】
本発明の接着剤組成物(RFL)における共重合体ラテックスとレゾルシン−ホルマリン樹脂の使用比率は特に限定されないが、通常、共重合体ラテックス100重量部(固形分)に対してレゾルシン−ホルマリン樹脂を5重量%〜100重量部(固形分)を使用することが好ましい。
【0023】
また、この接着剤組成物には、イソシアネート、ブロックドイソシアネート、エチレン尿素、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール、一塩化イオウとレゾルシンの縮合物及びレゾルシン−ホルマリン縮合物との混合物などの変性レゾルシン−ホルマリン樹脂、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル、カーボンブラックといった接着助剤、充填剤、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤等を必要に応じて配合しても差し支えない。
【0024】
本発明の接着剤組成物が使用されるポリエステル繊維はコード、ケーブル、織物、帆布、短繊維等いずれの形態であっても良い。
【0025】
また、本発明の接着剤組成物で処理された繊維と接着に供されるゴムとしては、天然ゴム、SBR、NBR、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム更にはそれらの各種変性ゴム等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の部および%は断りのない限り全て重量部および重量%を意味する。
【0027】
(共重合体ラテックス(A)−1〜3の製造)
攪拌機付きオートクレーブに、水135部、ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物1部、水酸化ナトリウム0.5部とロジン酸カリウム5.0部を加え溶解させる。これに、さらに表−1に示した1段目単量体とt−ドデシルメルカプタン0.3部を加えて乳化させる。次いで、過硫酸カリウム0.5部を加え、全体を55℃に保ち重合を行う。1段目単量体の重合転化率が82%に示した値に達したならば、更に表−1に示した2段目単量体とt−ドデシルメルカプタン0.25部を連続的に添加して重合を継続し、重合転化率が93重量%に達した時点で、ハイドロキノン0.1部を加え、重合を停止させた。得られた共重合体ラテックスは減圧蒸留により未反応単量体を除去し、共重合体ラテックス(A)−1〜3を得た。
【0028】
(共重合体ラテックス(A)−4〜6の製造)
攪拌機付きオートクレーブに、水130部、ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物1部、水酸化ナトリウム0.5部とロジン酸カリウム4部を加え溶解させる。次に、表−1に示した単量体とt−ドデシルメルカプタン0.55部を仕込み、乳化させる。次いで、過硫酸カリウム0.5部を加え、全体を50℃に保ち重合を行う。重合転化率が、全単量体の95%に達したら、ハイドロキノン0.1部を加え、重合を停止させる。得られた共重合体ラテックスは減圧蒸留により未反応単量体を除去し、共重合体ラテックス(A)−4〜6を得た。
【0029】
(共重合体ラテックス(B)−1〜5の製造)
攪拌機付きオートクレーブに水125部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、炭酸ナトリウム0.2部、過硫酸カリウム0.7部を仕込み、十分攪拌した後、t−ドデシルメルカプタン0.1部を加え、表−2に示す各単量体とシクロヘキセンを加えて65℃に保ち重合を開始し、重合転化率が98%になった時点で重合を終了した。次いでこれら共重合体ラテックスを水酸化ナトリウム水溶液にてpHを8に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体等を除去し、共重合体ラテックス(B)−1〜5を得た。
【0030】
(共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度の測定)
得られた各々の共重合体ラテックスをガラス板に0.5g程度塗り、室温で48時間乾燥してフィルムを作成する。乾燥後のフィルムをDSC試験用のアルミパンにセットし、測定温度を−100〜150℃まで速度10℃/分で昇温して、相変化の吸熱の開始点を読み取って各々の共重合体ラテックスのガラス転移温度(℃)とした。
【0031】
実施例−1
(RFL液の調整)
水260部に10%水酸化ナトリウム4部を添加し攪拌後、レゾルシン7.9部および37%ホルマリン8.6部を加え攪拌混合して、30℃にて6時間熟成を行い、RFレジンを作成する。次いで、共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)を表3に示した比率(固形分)で混合したゴムと繊維の接着剤用共重合体ラテックス100部の中に、RFL液の固形分濃度が16.5%になるように水を添加し攪拌後、得られたRFレジン全量と28%アンモニア水11.4部を添加し攪拌混合し、さらに27%ブロックドイソシアネート分散液(明成化学工業(株)製SU−125F)46.3部添加して、30℃にて48時間熟成させ、RFL液C−1〜11を得た。得られたRFL液を用いて以下の評価を行った。
【0032】
(RFL液の泡立ち試験)
1000mlのメスシリンダーに得られたRFL液を200g取り、この中に空気700ccを吹き込み、直後の泡の高さ(発泡体積)とこの泡が消えるまでの時間を測定した。その結果を表−3に示した。
【0033】
(タイヤコード浸漬処理、コード強力および接着力測定)
試験用シングルコードディッピングマシンを用いて、得られたRFL液にて各々、前処理したポリエステル・タイヤコード(1500D/2)を浸漬処理し、120℃で120秒間乾燥したのち、240℃で60秒間、焼き付けを行った。
浸漬処理された各々のタイヤコードを表−4の配合処方に基づくゴム配合物ではさみ、170℃で30分間加硫プレスした。加硫されたゴム配合物からタイヤコードを取り出し、JIS−L1017に従いコード強力を測定した。結果を表−3に示す。
また、浸漬処理された各々のタイヤコードを表―4の配合処方に基づくゴム配合物ではさみ、160℃で20分、および170℃で50分の各々の条件にて加硫プレスした。ASTM D2138−67(H Pull Test)に従い接着力および高温覆歴による接着力の低下を測定した。結果を表−3に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表−4
<配合ゴム処方1>
天然ゴム 70 部
SBRゴム 30 部
FEFカーボン 40 部
プロセスオイル 4 部
アンチゲンRD(*1) 2 部
ステアリン酸 1.5 部
亜鉛華 5 部
加硫促進剤DM(*2) 0.9 部
硫黄 2.7 部
*1:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(住友化学(株)社製)
*2:ジベンゾチアジルジスルフィド

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の共重合体ラテックスを含有する接着剤組成物(RFL)は、従来のものに比べて高温加硫後の繊維コードの強力低下が少なく、かつゴムと繊維との間に良好な接着力を与える。また、本発明の共重合体ラテックスを含有する接着剤組成物は、RFL液の泡立ちが少ないことより、浸漬作業性も改善されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエン系単量体35〜75重量%、ビニルピリジン系単量体10〜30重量%およびスチレン系単量体10〜55重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量部(固形分換算)とブタジエン系単量体3〜20重量%、スチレン系単量体75〜96.9重量%、エチレン系不飽和カルボン酸0.1〜10重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%を乳化重合して得られるガラス転移温度が40〜90℃である共重合体ラテックス(B)10〜50重量部(固形分換算)からなる(ただし、(A)と(B)の合計は100重量部)ことを特徴とするゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックス。
【請求項2】
前記共重合体ラテックス(A)が、ブタジエン系単量体10〜60重量%、ビニルピリジン系単量体10〜40重量%およびスチレン系単量体30〜70重量%からなる単量体(a)30〜70重量部を乳化重合して得られる共重合体の存在下に、ブタジエン系単量体40〜90重量%、ビニルピリジン系単量体5〜30重量%およびスチレン系単量体5〜30重量%からなる単量体(b)30〜70重量部を添加して乳化重合して得られる共重合体ラテックス(但し、単量体(a)と単量体(b)の合計は100重量部)であることを特徴とする請求項1に記載のゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックス。
【請求項3】
前記共重合体ラテックス(B)が、シクロヘキセンの存在下で乳化重合して得られる共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項1に記載のゴムとポリエステル繊維の接着剤用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2010−106089(P2010−106089A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277649(P2008−277649)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】