説明

ゴムクローラ用ゴム組成物及びゴムクローラ

【課題】本発明は、耐熱性と、硬さと大変形追随性とを兼ね備え、耐久性に優れるゴムクローラ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて内周面に突起を形成したゴムクローラを提供することを目的とする。
【解決手段】ゴムクローラ内周面に突設される突起を形成するゴムクローラ用ゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂を5〜20質量部、及び該樹脂の硬化剤を含有し、かつ加硫後のJIS−A硬度が80〜100であることを特徴とするゴムクローラ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として農業機械や土木建設機械等の足回りに装着されるゴムクローラに使用されるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて製造されたゴムクローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムクローラは、通常、無端帯状のゴム弾性体に芯金とスチールコードを埋設して補強したゴムクローラ本体の外周表面(トレッド面)にラグと呼ばれる多数の凸部を形成した構成とされたものであり、湿田や畑、泥濘地等の通常のタイヤでは走行が困難な軟弱な地面での走行が要求されるコンバイン、トラクター、ミニショベル等の様々な農業機械や土木建設機械の足回りに装着されている。
【0003】
しかしながら、上記の芯金を埋設したゴムクローラを装着した上記機械では、駆動輪(スプロケット)を該芯金に引っ掛けて上記ゴムクローラを駆動させることから、金属同士が接触し振動や騒音が発生し易く、特に高速走行時には、振動や騒音が大きくなるという問題がある。このため最近では、芯金を埋設しない(芯金レス)クローラを採用する機械が増えている。
【0004】
上記芯金レスクローラでは、上記芯金に替えて、上記スプロケットと噛み合う突起(突起ゴム)が該クローラの内周面全周に亘って連続的に形成されている。この突起は、上記機械の走行装置の転輪と噛み合い、その駆動力を効率よく伝達するとともに、脱輪を防止するためのものである。そのため、この芯金レスクローラを採用した場合、該ゴムクローラにスプロケットと接触する金属部が存在しないため、走行中の振動と騒音が低減され、優れた乗り心地を実現するほか、長時間作業での作業者の疲労を軽減することもできる。は、金属部同士の接触がないため、機械の足回りの耐久性向上にも効果的である。
【0005】
また、上記芯金レスゴムクローラは、上記突起形成の主目的により、ポジティブ駆動タイプとフリクション駆動タイプとに分類される。前者はスプロケット(駆動輪)と噛み合い、機体からの駆動力をこの噛み合いによってゴムクローラに伝達することを主たる目的としたものであり、後者は脱輪防止を主たる目的として配したもので、駆動力はクローラの内周面と駆動輪との摩擦力によって伝達される。
【0006】
いずれにしても上記の突起は、その役割から非常に高い耐久性が要求される。これまでに突起の耐久性を向上させるために様々な試みがなされており、出願人は特開平10−53171号公報(特許文献1)で、ゴムクローラの内周面に突出する突起における他部材(スプロケット、アイドラーあるいは転輪等)との接触面に、低摩擦性能を有する高硬度の樹脂部材を露出させることにより該突起を補強する技術を提案している。また、特開2002−211455号公報(特許文献2)には、駆動用突起の突起形状に沿って板金製の補強材を設けることよって該突起を補強する技術が開示されている。
【0007】
また、上記ゴムクローラにおける駆動力伝達性能及び脱輪防止性能をより確実なものとするために、上述した突起の補強の他に、該突起を形成するゴムの硬度向上及び摩擦係数低減が求められている。この要求に応えるため、従来はゴムの硬度を高めるためにカーボンや硫黄の配合量を増加してゴムの硬度を高めることが行われてきたが、この方法は、著しい作業性の低下を招いたり、硬度が高まっても大変形への追随性が損なわれてしまう場合があり、結果として耐久性向上の効果が薄くなることが多かった。、高速走行時には、上記ゴムクローラと上記スプロケット等との摩擦により上記突起ゴムが過熱され、剛性の低下や熱劣化を起こし、脱輪防止性能や耐久性が悪化する懸念もあるため、上記ゴムには耐熱性も求められている。
【0008】
これに対し、出願人は特開平9−164980号公報(特許文献3)に、原料ゴムに所定量の脂肪酸アミドや超高分子量ポリエチレンを配合することにより突起ゴムの摩擦係数を低減して、ゴムクローラの耐摩耗性能や脱輪防止性能の向上を可能にしたゴムクローラ用突起ゴム組成物を提案している。
【0009】
しかしながら、走行中にゴムクローラに対して大きな衝撃や斜行させる力が加わった時には、突発的な噛み合い異常等を生じ、大きな変形を生じることがあり、このような時には、上記従来の補強や、ゴムの配合による改善等を施した突起では、ゴムのモジュラス(引張応力)が高く、伸びが低いことから、突起が破損しやすい上、大変形を生じた後の耐久性にも悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0010】
このように、上記突起の耐久性を向上させるには、突起を形成するゴムの配合を見直すことにより、その硬度と大変形追随性を両立させることが重要であり、ゴムの配合の工夫により、高硬度化と大変形追随性向上という課題を解決することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−53171号公報
【特許文献2】特開2002−211455号公報
【特許文献3】特開平9−164980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は耐熱性と、硬さと大変形追随性とを兼ね備え、耐久性に優れるゴムクローラ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて内周面に突起を形成したゴムクローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、まず、ゴム成分の一部として、1,2−ポリブタジエンを用いることにより、高剛性と高耐久性とを両立させ得ることを見出した。しかしながら、1,2−ポリブタジエンを用いる方法では、剛性の温度依存性が高くなって高温下での性能を保障することが困難になるおそれがあり、この点を改善すべく他の方策を検討した結果、ゴムクローラ用ゴム組成物に適量のノボラック型フェノール樹脂、及び該樹脂の硬化剤を添加配合することにより、優れた耐熱性を備えると共に、高硬度でかつ良好な大変形追随性を達成することができ、このゴム組成物を用いることにより、ゴムクローラ内周面に形成される突起の耐久性向上が図られることを見出した。
【0014】
そこで、本発明者らは検討を進めた結果、ゴム組成物を構成するゴム成分100質量部に対してノボラック型フェノール樹脂を5〜20質量部と、該樹脂の硬化剤を配合することにより、低歪領域の引張応力(モジュラス)に優れると共に、高歪領域でのモジュラスが低減化又は維持され、良好な大変形追随性を有するゴムが得られ、これにより充填剤の増量や高架橋密度化などを行うことなく、良好な大変形追随性を達成しつつJIS−A硬度で80〜100の良好な硬度を達成することが可能である。しかも、上記ノボラック型フェノール樹脂はゴム成分との相溶性に優れる熱硬化性樹脂であり、高温でも軟化しにくいため、ゴムが過熱されて高温になっても、その硬度を維持することができる。そして、このノボラック型フェノール樹脂及び該樹脂の硬化剤を配合したゴムクローラ用ゴム組成物を用いてゴムクローラ内周面に突起を形成することにより、良好な耐熱性と、硬度と大変形追随性とを兼ね備え、かつ良好な摩擦係数の突起を作業性よく形成することができ、走行中にゴムクローラに大きな衝撃や斜行させる力が加わって、脱輪や大変形が生じた際にも、破損しにくく耐久性に優れるゴムクローラを得ることができ、高速走行時における安定した脱輪防止性能が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
従って、本発明は、ゴムクローラ内周面に突設される突起を形成するゴムクローラ用ゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂を5〜20質量部、及び前記ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤を含有し、かつ加硫後のJIS−A硬度が80〜100であることを特徴とするゴムクローラ用ゴム組成物、及び、ゴムクローラ内周面に突設される突起が前記ゴム組成物を用いて形成されたものであるゴムクローラを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴムクローラ用ゴム組成物は、加硫後に優れた耐熱性と、高い硬度と大変形追随性とを兼ね備えたゴムとすることができるため、ゴムクローラ内周面の突起を該ゴム組成物を用いて形成することにより、走行中の振動や騒音が少なく、高速走行時の安定性が向上すると共に、大きな衝撃や斜行させる力が加わった際に、突発的な噛み合い異常や大変形を生じた際にも、破損しにくく耐久性に優れるゴムクローラを提供することができる。また、上記ゴム組成物に、脂肪酸アミド及び/又は超高分子量ポリエチレンを所定量配合することにより、加硫ゴムの摩擦係数を低減することができ、耐久性を向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき詳述する。
本発明のゴムクローラ用ゴム組成物は、上記の通り、ゴム成分と所定量のノボラック型フェノール樹脂と、前記ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤とを含んでなり、加硫後のJIS−A硬度が80〜100であるものである。
【0018】
ゴム成分としては、公知の天然ゴムや、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン・イソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エポキシ化天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム等の合成ゴム、及び、これら天然ゴム又は合成ゴムの分子鎖末端が変性されたもの等を用いることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択すればよい。本発明においては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム及びイソプレンゴムを好適に用いることができる。
【0019】
ノボラック型フェノール樹脂は、ゴムの高剛性化と伸びを向上させるために配合されるものであり、フェノールもしくは変性フェノールとホルムアルデヒドとを、ホルムアルデヒド/フェノール(モル比)が通常0.6〜1.0の範囲となるように縮合重合して得られる固形の樹脂である。該樹脂の融点は、50〜120℃の範囲である。本発明で用いることのできる上記ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、ストレート型フェノール、アルキル置換フェノール及びオイル変性フェノール等が挙げられる。上記ノボラック型フェノール樹脂の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部である。配合量が20質量部を超えると、ゴムの剛性が高くなりすぎて、柔軟性に乏しいものとなるため、耐疲労性の著しい悪化を招くおそれがあり、5質量部未満になると十分な剛性向上効果が得られないおそれがある。
【0020】
上記ノボラック型フェノール樹脂を硬化させるためには、硬化剤を必要とする。この硬化剤としては、上記ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として公知の化合物を用いることができ、特に制限されるものではないが、本発明では、ヘキサメチレンテトラミンを好適に用いることができる。上記硬化剤の配合量は、上記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、5〜20質量部である。20質量部を超えると、耐疲労性が低下するおそれがあり、5質量部未満になると硬化が十分に進行せず、必要とされる剛性を達成できないおそれがある。
【0021】
本発明では、上記ゴム成分に対して、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、ゴム工業で通常使用されている加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、可塑剤、カーボン、ワックス類、低摩擦剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤、発泡剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0022】
低摩擦剤としては、公知の低摩擦剤を用いることができ特に制限されるものではないが、例えば、脂肪酸アミドや超高分子量ポリエチレンを用いることができる。
【0023】
上記脂肪酸アミドは、脂肪族カルボン酸のアミドを用いることができ、特に炭素数が12から22の脂肪族モノカルボン酸のアミドを好適に用いることできる。その具体例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド等を挙げることができ、これらの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いればよい。本発明においては、オレイン酸アミドを好適に用いることができる。これらの脂肪酸アミドの配合により、ゴム組成物の硬化物表面の摩擦係数を低下させることができる。上記脂肪酸アミドの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、15質量部以下(0〜15質量部)、好ましくは1〜10質量部である。15質量部を超えると、剛性の低下につながり、かつ表面へのブルームがひどくなり、外観を損ねてしまうおそれがある。
【0024】
また、超高分子量ポリエチレンは、100万以上の平均分子量を有するポリエチレンを用いることができ、本発明においては、150万〜300万、好ましくは150万〜250万の範囲の平均分子量を有するものを好適に用いることができる。なお、ここでいう平均分子量とは、粘度平均分子量を意味する。上記超高分子量ポリエチレンの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、30質量部以下(0〜30質量部)、好ましくは1〜25質量部である。30質量部を超えると、破断伸びの低下や耐疲労性の低下を招くおそれがある。なお、上記脂肪酸アミド及び超高分子量ポリエチレンは、本発明のゴム組成物に単独で配合してもよく、必要に応じて両者を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
カーボンブラックとしては、ゴム工業で通常使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを挙げることができる。本発明においては、耐摩耗性等の観点から高級カーボンの使用が望ましく、FEF、HAF、ISAF、SAFを好適に用いることができる。なお、上記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が
10〜150m2/g、DBP吸収量(A法)が50〜200ml/100gであることが好ましい。また、これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記カーボンブラックの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して10〜80質量部である。
【0026】
加硫剤としては、この分野において通常用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、本発明においては硫黄を好適に用いることができる。その配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.5〜4質量部である。
【0027】
加硫促進剤としては、この分野において通常用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤、DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の加硫促進剤等が挙げられる。上記加硫促進剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0〜10質量部である。
【0028】
加硫促進助剤は、加硫を促進する観点から配合されるものであり、公知の亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等を配合することができる。該脂肪酸としては飽和,不飽和あるいは直鎖状、分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数としても特に制限されるものではないが、例えば炭素数1〜30、好ましくは15〜30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。これら加硫促進助剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0〜10質量部である。
【0029】
ワックス類としては、公知のパラフィンワックス及びミクロクリスタリンワックス等のワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミド等のアマイド化合物等を挙げることができ、1種を単独で又は2種以上を併用して用いればよい。特に本発明においては、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックスを好適に用いることができる。これらの配合により、成形作業性を向上させることができる。上記ワックス類の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0〜10質量部である。
【0030】
可塑剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、具体例として、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油等を挙げることができ、これらの中から1種単独又は2種以上を適宜選択使用すればよい。上記可塑剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0〜20質量部である。
【0031】
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。上記老化防止剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0〜10質量部である。
【0032】
本発明のゴム組成物は、上記配合とすることにより、加硫後にJIS−A硬度が80〜100、特に80〜95のゴムを得ることができる。この硬度が80未満であると、突起ゴムの剛性が不十分なため、ゴムクローラとして十分な駆動力伝達性能が得られないおそれがあり、一方100を超えると、突起ゴムは柔軟性に乏しいものとなり、破損しやすくなるおそれがある。なお、加硫条件は、通常の条件を採用することができ、特に制限されないが、100〜180℃、1分間〜5時間の条件とすることができる。
【0033】
本発明のゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分原料を一度に配合して混練しても良いが、2段階あるいは3段階に分けて各成分を配合して混練を行うほうが好適である。特に、カーボン、ワックス類、脂肪酸アミド、超高分子量ポリエチレン、可塑剤、充填剤等の加硫成分(加硫剤及び加硫促進剤等)以外の成分を混練配合するA練り工程と、前記A練り工程で得た混練物に加硫剤及び加硫促進剤等の加硫成分を混練配合するB練り工程とを含む製造方法を採用することが好ましい。
【0034】
また、上記のノボラック型フェノール樹脂及び該樹脂の硬化剤は、両者とも上記A練り工程で配合してもよいが、上記ノボラック型フェノール樹脂をA練り工程で配合し、上記硬化剤をB練り工程で配合するほうが効果的である。
【0035】
なお、上記製造方法では公知の混練機を用いることができ、ロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機から適宜選択して使用すればよい。
【0036】
本発明のゴムクローラ用ゴム組成物は、あらゆるゴムクローラに対して適用することができ、特に芯金レスクローラ内周面の突起用として好適に用いることができる。そして、本発明のゴム組成物を用いた突起を内周面に形成してゴムクローラを製造する場合には、従来公知の製造方法を採用し得る。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1〜21、比較例1〜12]
表1〜3に示す配合のゴム組成物を常法に従って混練りし、長さ150mm×幅150mm×厚さ2mmのシート状に成形し、155℃,30分間の条件で加硫硬化したものを評価体とした。得られた評価体の特性について以下の方法により評価し、その結果を表1〜3に併記した。
【0039】
この場合、表1〜3に示した各配合成分の詳細は次の通りである。
NR:天然ゴム、「RSS#4」
SBR:スチレン・ブタジエンゴム、TSRC社製「Taipol1500E」
BR:ブタジエンゴム、JSR社製「BR01」
RB:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、JSR社製「RB820」
カーボンブラック:HAF級カーボンブラック、旭カーボン社製「旭#70」
オイル:アロマオイル、新日本石油社製「コウモレックスNH−60T」
フェノール樹脂:住友ベークライト社製「スミライトレジンPR12686」
ヘキサメチレンテトラミン:大内新興化学社製「ノクセラーH」
ステアリン酸:ACIDCHEM社製「PALMAC1600」
亜鉛華:東邦亜鉛社製「銀嶺SR」
ワックス:日本精蝋社製「OZOAGE−0017」
老化防止剤:住友化学社製「ANTIGENE6C」
超高分子量ポリエチレン:三井化学社製「ミペロン」
脂肪酸アミド:オレイン酸アミド、日本化成社製「ダイヤミッドM309」
硫黄:鶴見化学工業社製「サフファックス5」
加硫促進剤:大内新興化学社製「ノクセラーCZ−G」
【0040】
《評価方法》
・ムーニー粘度
JIS K6300−1に準拠して測定した。
・硬さ(JIS−A硬度)
JIS K6253に準拠し、デュロメーターAにより測定した。
・モジュラス(引張応力)及び伸び
JIS K6251に準拠し、ダンベル状3号形試験片を用い、常温及び70℃における伸び50%時、100%時、300%時の引張応力、及び切断時伸びを測定した。
・耐疲労性(200%疲労性)
DIN S3A型ダンベル試験片を用い、室温にて、0〜200%、5Hzの条件で測定した。
なお、表1では比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜7及び比較例2〜4の測定結果を比較例1に対する指数で表し、表2では比較例5の測定結果を100とし、実施例8〜14及び比較例6〜8の測定結果を比較例5に対する指数で表した。表3では比較例9の測定結果を100とし、実施例15〜21及び比較例10〜12の測定結果を比較例9に対する指数で表した。
・損失正接(tanδ)
JIS K 6384の「4.6 小型試験装置による動的性質試験の一般事項」に準拠して、15Hz振幅,2%歪、15%伸張,室温の条件で測定した。
・耐摩耗性(摩擦係数)
DIN 53516に準拠し、DIN摩耗試験機を用い、室温にてDIN摩耗を測定した。その結果を表1〜3に示す。なお、表1では比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜7及び比較例2〜4の測定結果を比較例1に対する指数で表し、表2では比較例5の測定結果を100とし、実施例8〜14及び比較例6〜8の測定結果を比較例5に対する指数で表した。表3では比較例9の測定結果を100とし、実施例15〜21及び比較例10〜12の測定結果を比較例9に対する指数で表した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
上記表1〜3の結果より、ゴム成分の一部に1,2−ポリブタジエン(RB)を添加配合した場合(比較例1,2,5,6,9,10)は、高剛性かつ大変形追随性に優れるものの、tanδが高いことから、摩擦や変形によって発熱しやすく(エネルギーを吸収し易く)、耐熱性が必ずしも十分ではなく、高温下ではモジュラスなどの物性を十分に保障することが困難である。このため、ゴムクローラが高速走行時にスプロケット等との摩擦により過熱された際に、十分な突起の剛性を保つことができなくなって、噛み込み異常や脱輪等を起こし易くなり、更には熱劣化が促進されて耐久性の低下を招くおそれもある。
【0045】
加硫剤を増量した場合(比較例3,7,11)は、JIS−A硬度及び50%モジュラスが高くなり、脱輪防止性能が向上した。また、高温物性の測定結果から、耐熱性も維持されている。しかし、伸びが比較例1の60%に低下すると共に、高歪領域のモジュラス(特に300%モジュラス)が著しく上昇(破断のため測定不能)したことから、大変形追随性が著しく損なわれている。更に、耐疲労性も著しく低下している。従って、加硫剤の増量による改善では、架橋密度を高めることにより硬度等を高め、脱輪防止性能を向上させることはできるが、硬くなりすぎて大変形追随性及び耐疲労性を大きく損なうものとなった。なお、ムーニー粘度は低く、加工性は維持されている。
【0046】
カーボンを増量した場合(比較例4,8,12)は、加硫剤を増量した場合と同様に、JIS−A硬度及び50%モジュラスが高くなり、脱輪防止性能が向上した。また、高温物性の測定結果から、耐熱性も維持されている。しかし、伸びが低下すると共に、高歪領域のモジュラス(特に300%モジュラス)が著しく上昇(破断のため測定不能)したことから、大変形追随性が著しく損なわれている。更に、耐疲労性も著しく低下した。従って、カーボンの増量による改善では、硬度等を高めて脱輪防止性能を向上させることはできるが、硬くなりすぎて大変形追随性及び耐疲労性を大きく損なうものとなった。更に、カーボンを増量することによって、ムーニー粘度が上昇し、加工性の低下をも招く結果となった。
【0047】
上記の比較例に対し、ゴム成分に対して所定量のノボラック型フェノール樹脂を配合した実施例では、JIS−A硬度及び50%モジュラスが高くなり、脱輪防止性能が向上しており、伸び及び高歪領域のモジュラス(特に300%モジュラス)が低く維持されていることから、大変形追随性に優れていることが確認された。更に、高温物性の測定結果から、高温環境下におかれてもモジュラスの低下が抑えられており、耐熱性にも優れることが確認された。従って、本発明のゴム組成物は、耐熱性が高く、高硬度で大変形追随性に優れ、耐久性及び加工性にも優れるゴムが得られることが確認できた。
【0048】
このように、上記表1〜3に示した実施例では、本発明のゴムクローラ用ゴム組成物を用いてゴムクローラ内周面に突起を形成することにより、良好な耐熱性、硬度及び大変形追随性を兼ね備え、かつ良好な摩擦係数の突起を作業性よく形成することができ、走行中にゴムクローラに大きな衝撃や斜行させる力が加わって、脱輪や大変形が生じた際にも、破損しにくく耐久性に優れ、更に耐熱性が高いため、高速走行中にゴムクローラが過熱された場合でも剛性を保つことができ、脱輪しにくく走行安定性に優れるゴムクローラを得られることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムクローラ内周面に突設される突起を形成するゴムクローラ用ゴム組成物であって、
ゴム成分100質量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂を5〜20質量部、及び前記ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤を含有し、かつ加硫後のJIS−A硬度が80〜100であることを特徴とするゴムクローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
上記硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミンを上記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して5〜20質量部含有する請求項1記載のゴムクローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
上記ゴム成分として、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム及びイソプレンゴムから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1又は2記載のゴムクローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
脂肪酸アミドを上記ゴム成分100質量部に対して15質量部以下、及び/又は、超高分子量ポリエチレンを上記ゴム成分100質量部に対して30質量部以下配合した請求項請求項1〜3のいずれか1項記載のゴムクローラ用ゴム組成物。
【請求項5】
ゴムクローラ内周面の突起が請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム組成物を用いて形成されたものであるゴムクローラ。

【公開番号】特開2010−254166(P2010−254166A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107748(P2009−107748)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】