説明

ゴムシートの切断装置および生タイヤの製造方法

【課題】製造コストやランニングコストを抑えつつ、生成される切断面にコードが露出することを抑制し、ゴムシートを精度よく確実に切断する。
【解決手段】内部に長手方向に交差する交差方向に延びるコードが複数埋設された長尺状のゴムシートWを、前記交差方向に切断するゴムシートの切断装置1であって、ゴムシートWが載置される載置面11、および載置面11に形成され前記交差方向に延びる凹条部12を有する載置台13と、載置面11に対して進退可能に配設されるとともに前進移動時に凹条部12内に進入しかつ載置面11を超える切断刃14と、を備え、載置面11を挟む切断刃14の反対側には、載置面11上に載置されるゴムシートWとの間に隙間が設けられ、かつ前進端位置に位置した切断刃14が間に進入する一対の支持壁部24が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシートの切断装置および生タイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に長手方向に交差する交差方向に延びるコードが複数埋設された長尺状のゴムシートを、前記交差方向に切断するゴムシートの切断装置として、従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、ゴムシートが載置される載置面、および該載置面に形成され前記交差方向に延びる凹条部を有する載置台と、載置面に対して進退可能に配設されるとともに前進移動時に凹条部内に進入しかつ載置面を超える切断刃と、を備え、切断刃が前記交差方向に直交する直交方向に移動自在に配設された構成が知られている。
そして、ゴムシートの切断時に、ゴムシート内のコードの位置に合わせて切断刃を前記直交方向に移動させることで、生成される切断面にコードが露出するのを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−113688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のゴムシートの切断装置では、ゴムシートの切断時に、切断刃がゴムシート内のコードの位置に合わせて前記直交方向に移動することがあるため、切断後に、切断刃の、載置台に対する前記直交方向に沿う位置を、切断前の原点位置に復帰させる機構が必要となり、この装置の製造コストやランニングコストが嵩むおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、製造コストやランニングコストを抑えつつ、生成される切断面にコードが露出するのを抑制することができるとともに、ゴムシートを精度よく確実に切断することができるゴムシートの切断装置および生タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のゴムシートの切断装置は、内部に長手方向に交差する交差方向に延びるコードが複数埋設された長尺状のゴムシートを、前記交差方向に切断するゴムシートの切断装置であって、前記ゴムシートが載置される載置面、および該載置面に形成され前記交差方向に延びる凹条部を有する載置台と、前記載置面に対して進退可能に配設されるとともに前進移動時に前記凹条部内に進入しかつ前記載置面を超える切断刃と、を備え、前記載置面を挟む前記切断刃の反対側には、前記載置面上に載置されるゴムシートとの間に隙間が設けられ、かつ前進端位置に位置した前記切断刃が間に進入する一対の支持壁部が配設されていることを特徴とする。
また、本発明の生タイヤの製造方法は、本発明のゴムシートの切断装置を用いて長尺状のゴムシートを切断して切り取った定長のゴムシートを成形ドラム上に巻き付けて生タイヤを成形することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、切断刃を前進移動させ、載置面上のゴムシートを一対の支持壁部側に向けて押し込んでいくと、このゴムシートには当初、一対の支持壁部が非接触となっているので、該ゴムシートは、一対の支持壁部には何ら拘束されることはない。
従って、切断刃の前進移動時に、たとえ切断刃が、ゴムシートの表面のうち、直ぐ内側にコードが埋設されている硬い部分に当接しても、切断刃が前進移動する過程で、この硬さが抵抗になることによって、ゴムシートの表面の前記硬い部分が切断刃上を摺動して、該切断刃上に、ゴムシートの表面のうち、直ぐ内側にコードが埋設されていない軟らかい部分を引き入れ易くすることが可能になる。
これにより、ゴムシートの表面のうち前記軟らかい部分に切断刃を突き刺してゴムシートを切断することが可能になり、生成される切断面にコードが露出するのを抑制することができる。
さらに、切断刃が、前進端位置に位置したときに、一対の支持壁部同士の間に進入するので、切断刃がゴムシートを突き刺して切断を開始するときは、ゴムシートを一対の支持壁部に当接させて支持させ、ゴムシートの切断刃に対する位置ずれを抑えることが可能になる。
これにより、ゴムシートのうち一対の支持壁部同士の間に位置する部分に、切断刃から効率よく力を加えることが可能になり、ゴムシートを精度よく確実に切断することができる。
さらにまた、生成される切断面にコードが露出するのを抑制するために、切断刃ではなく、ゴムシートを切断刃上で移動させるので、例えば、ゴムシートの切断後に、切断刃の、載置台に対する前記交差方向に直交する方向の位置を、切断前の原点位置に復帰させる機構等が不要となり、この装置の製造コストやランニングコストを抑えつつ前述の作用効果を奏功させることができる。
【0008】
ここで、前記一対の支持壁部は、前記載置面を挟む前記凹条部の反対側に、前記載置面との間に前記ゴムシートの厚さより大きい隙間をあけて配設されてもよい。
【0009】
この場合、一対の支持壁部が、載置面を挟む切断刃の反対側で、かつ載置面を挟む凹条部の反対側に配設されているので、切断刃を載置面に向けて前進移動させると、切断刃は、凹条部内からその外側に向けて突出したときに、載置面上に載置されたゴムシートに到達することとなる。従って、切断刃の載置面に向けた前進移動に伴い、ゴムシートが、凹条部の外側に向けて変形若しくは変位させられながら、一対の支持壁部側に向けて押し込まれることとなる。これにより、このゴムシートの変形や変位が、凹条部を画成する壁面によって拘束されるのを回避することが可能になり、切断刃を前進移動させた後、切断刃がゴムシートを突き刺して切断を開始する前までは、ゴムシートの表面の前記硬い部分を、切断刃上で確実に摺動させることができる。
【0010】
また、前記載置面における前記凹条部の開口周縁部に対して進退可能に配設された押さえ手段を備え、該押さえ手段は、前記切断刃が前記載置面上のゴムシートを切断するのに先立って、該ゴムシートのうち前記凹条部の開口周縁部に位置する部分を、該ゴムシートの切断が完了するまで、前記載置面上に押さえ付ける構成とされてもよい。
【0011】
この場合、押さえ手段を備えているので、切断開始後切断完了までの間に、ゴムシートが切断刃に対して位置ずれするのを抑制することが可能になり、ゴムシートをより一層精度よく確実に切断することができる。
【0012】
さらに、前記長尺状のゴムシートの前端部を保持可能で、かつ前記凹条部を跨いで前記長手方向に進退可能に配設されるとともに、前記載置面に対して進退可能に配設された第1保持部材と、前記長尺状のゴムシートから前記切断刃により切り取られた定長のゴムシートの後端部を保持可能で、かつ前記凹条部を跨いで前記長手方向に進退可能に配設されるとともに、前記載置面に対して進退可能に配設された第2保持部材と、が備えられ、該第2保持部材は、前記押さえ手段を兼ねてもよい。
【0013】
この場合、まず、第1保持部材および第2保持部材を、凹条部の後方に位置させておき、その後、第1保持部材を載置面に向けて前進移動させ該第1保持部材により長尺状のゴムシートの前端部を保持させた後に、この第1保持部材を、ゴムシートの前端部ごと載置面から後退移動させるとともに、凹条部の前方に移動させる。これにより、長尺状のゴムシートが、載置面上で凹条部から前方に定量だけ引き出される。
次に、第2保持部材を載置面に向けて前進移動させ、載置面上のゴムシートのうち、凹条部の開口周縁部に位置する対応部分を、第2保持部材により載置面上に押さえ付ける。
そして、前述のように切断刃により長尺状のゴムシートを切断することによって定長のゴムシートを切り取る。
ここで、第2保持部材は、長尺状のゴムシートの前記対応部分を載置面上に押さえ付けてから、定長のゴムシートが切り取られるまでの間に、ゴムシートの前記対応部分を保持する。
次に、定長のゴムシートのうち、前端部は第1保持部材で保持され、かつ前記対応部分である後端部は第2保持部材で保持されているので、切断後に第2保持部材を定長のゴムシートの後端部ごと載置面から後退移動させれば直ちに、第1保持部材および第2保持部材を双方ともに前方に移動させることで、定長のゴムシートを前方に搬送することが可能になる。
以上より、第2保持部材が押さえ手段を兼ねていることと相俟って、装置の大型化および高コスト化を回避しつつ、ゴムシートをより一層精度よく確実に切断することができるとともに、切断、搬送効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るゴムシートの切断装置および生タイヤの製造方法によれば、製造コストやランニングコストを抑えつつ、生成される切断面にコードが露出するのを抑制することができるとともに、ゴムシートを精度よく確実に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したゴムシートの切断装置であって、第1工程を示す図である。
【図2】本発明に係る一実施形態として示したゴムシートの切断装置であって、第2工程を示す図である。
【図3】本発明に係る一実施形態として示したゴムシートの切断装置であって、第3工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るゴムシートの切断装置の一実施形態を、図1、図2および図3を参照しながら説明する。
ゴムシートの切断装置1は、内部に長手方向に交差する交差方向に延びるコードが複数埋設された長尺状のゴムシートWを、前記交差方向に切断する構成とされ、ゴムシートWが載置される載置面11、および該載置面11に形成され前記交差方向に延びる凹条部12を有する載置台13と、載置面11に対して進退可能に配設されるとともに前進移動時に凹条部12内に進入しかつ載置面11を超える切断刃14と、を備えている。
【0017】
切断装置1はさらに、長尺状のゴムシートWが長手方向に沿ってライナーLとともにロール状に巻き取られたロール体Rをその軸線回りに回転させることにより、ゴムシートWを載置台13側に繰り出す繰り出し装置15と、繰り出し装置15と載置台13との間に配設され繰り出し装置15からのゴムシートWを載置台13の載置面11上に導く供給ローラ16と、載置面11上のゴムシートWを長手方向に沿って繰り出し装置15側と反対に搬送する搬送手段17と、を備えている。
【0018】
図示の例では、載置面11は、水平方向に沿って延在し、鉛直方向の上方を向いていて、繰り出し装置15から長手方向に繰り出された長尺状のゴムシートWを、その表裏面を鉛直方向に向けた状態で鉛直方向の下方から支持するように構成されている。
以下、繰り出し装置15側から載置台13側に向かう方向を前方といい、これと逆方向を後方という。
さらに本実施形態では、前記交差方向は、水平方向のうち前後方向に直交する左右方向と一致している。
【0019】
載置台13は、前後方向に沿って延設されるとともに後端部が送出ローラ16に前方から隣接する供給台18と、前後方向に沿って延設されるとともに後端部が供給台18に前方から隣接する定長台19と、を備えていて、両台18、19の各上面が前記載置面11となっている。
本実施形態では、凹条部12は、供給台18と定長台19との間の前後方向の隙間とされていて、載置台13を鉛直方向に貫いている。載置面11および凹条部12それぞれの前記左右方向の長さは、ゴムシートWの幅よりも広くなっている。
【0020】
切断刃14は、載置面11が沿う沿面方向に直交する方向、つまり図示の例では鉛直方向に沿って、載置面11に対して進退可能に配設されている。また、切断刃14は、載置面11の鉛直方向の下方に配設されていて、載置面11に向けて前進移動したときに、切断刃14の先端部が、凹条部12内から外側の上方に突出することで載置面11を下方から上方に超えるように配設されている。
【0021】
さらに本実施形態では、切断刃14における前記左右方向の大きさは、ゴムシートWの幅よりも小さくなっていて、切断刃14は、凹条部12内を前記左右方向に沿って走行可能に配設されることにより、ゴムシートWをその全幅にわたって切断できるようになっている。また、切断刃14は前記左右方向に二分割されるとともに、切断前の待機時に、載置面11および凹条部12における前記左右方向の中央部に位置していて、切断刃14の各分割体は、凹条部12内を前記左右方向に互いに逆向きに走行することで接近離間するように配設されている。
【0022】
繰り出し装置15は、ロール体Rをその軸線回りに回転可能に支持する駆動軸20と、駆動軸20の上方に回転可能に配設され、ロール体RのライナーLをゴムシートWから引き剥がしながら巻き取る巻き取り軸21と、を備えている。なお、駆動軸20および巻き取り軸21の各軸線は前記左右方向に沿って延在している。
供給ローラ16は、前記左右方向に延びる回転軸線回りに回転自在に配設されるとともに、前後方向に間隔あけて一対配設されていて、これらの供給ローラ16同士の間には、フェスツーンFが配設されている。
【0023】
搬送手段17は、長尺状のゴムシートWの前端部を保持可能で、かつ凹条部12を跨いで前後方向に進退可能に配設されるとともに、載置面11に対して鉛直方向に進退可能に配設された第1保持部材22と、長尺状のゴムシートWから切断刃14により切り取られた定長のゴムシートW1の後端部を保持可能で、かつ凹条部12を跨いで前後方向に進退可能に配設されるとともに、載置面11に対して鉛直方向に進退可能に配設された第2保持部材23と、を備えている。
【0024】
第1保持部材22は、第2保持部材23よりも前方に位置している。両保持部材22、23それぞれにおいて、下方の載置面11を向く吸引面には、バキュームパッド22a、23aが配設されていて、バキュームパッド22a、23aからの吸引力によってゴムシートWが保持されるようになっている。両保持部材22、23の吸引面は、凹条部12における前記左右方向の全域にわたって延在し、かつバキュームパッド22a、23aは、この吸引面の全域にわたって多数配設されており、定長のゴムシートW1における前後方向の両端部を前記左右方向の全域にわたって吸引して保持できるようになっている。
【0025】
両保持部材22、23は、載置台13の上方に前後方向に沿って延設された図示されない左右一対のガイドレールに、前後方向に進退可能に架設されている。また、両保持部材22、23は、定長のゴムシートW1を、その前後方向の両端部を保持した状態で前方に搬送するように構成され、両保持部材22、23のうちの少なくとも第1保持部材22は、載置台13の前方に位置する図示されない成形ドラムに到達して定長のゴムシートW1の前端部を成形ドラム上に直に配置するようになっている。
さらに本実施形態では、第2保持部材23は、切断刃14が載置面11上のゴムシートWを切断するのに先立って、該ゴムシートWのうち、凹条部12の開口周縁部に位置する対応部分を、該ゴムシートWの切断が完了するまで、載置面11上に押さえ付けるようになっている。
【0026】
そして本実施形態では、図2に示されるように、載置面11を挟む切断刃14の反対側に、載置面11上に載置されるゴムシートWとの間に隙間が設けられ、かつ前進端位置に位置した切断刃14が間に進入する一対の支持壁部24が配設されている。
一対の支持壁部24は、載置面11を鉛直方向に挟む凹条部12の反対側に、載置面11との間にゴムシートWの厚さより大きい隙間をあけて配設されている。
【0027】
ここで図示の例では、一対の支持壁部24は、第2保持部材23に装着されていて、第2保持部材23とともに一体に移動する。
そして、一対の支持壁部24は、第2保持部材23が後述のように、載置面11上のゴムシートWの前記対応部分を載置面11上に押さえ付けた状態で、ゴムシートWから上方に離間し、かつこのゴムシートWを介して凹条部12および切断刃14と鉛直方向で対向している。
【0028】
さらに支持壁部24は、載置面11の上方に、前後方向に間隔をあけて一対配設されている。また、一対の支持壁部24の上端同士は、表裏面が水平方向に沿って延びる頂壁部24aにより連結されている。さらに、一対の支持壁部24のうち、前方に位置する支持壁部24は、第2保持部材23の後端部に装着されている。
一対の支持壁部24同士の前後方向の間隔は、凹条部12の前後方向の大きさよりも小さく、かつゴムシートW内の長手方向で隣り合うコード同士の間隔や、切断刃14の前後方向の大きさより大きくなっている。一対の支持壁部24の前記左右方向の大きさは、凹条部12の前記左右方向の大きさやゴムシートWの幅よりも小さく、かつ切断刃14の前記左右方向の大きさより大きくなっている。
【0029】
ここで、一対の支持壁部24は、凹条部12における前記左右方向の全域にわたって延設されているのではなく、切断刃14が載置面11に向けて前進移動しゴムシートWを突き刺す切断始端位置に限定して配設されている。図示の例では、この切断始端位置は、切断前の待機時に、二分割された切断刃14がともに位置している載置面11および凹条部12の前記左右方向の中央部となっている。
【0030】
次に、以上のように構成されたゴムシートの切断装置1の作用について説明する。
【0031】
まず、長尺状のゴムシートWの前端縁が凹条部12上に位置し、かつ第1保持部材22を供給台18の前端部に位置させた状態で(図1)、第1保持部材22を載置面11に向けて前進移動させ、第1保持部材22によりゴムシートWの前端部を吸引して保持させる。次に、この第1保持部材22を載置面11から後退移動させた後に、繰り出し装置15において、巻き取り軸21により、ロール体RのライナーLをゴムシートWから引き剥がして巻き取りながら、駆動軸20上のロール体RからゴムシートWを、供給ローラ16およびフェスツーンFを介して前方に繰り出しつつ、第1保持部材22をゴムシートWの前端部とともに、凹条部12を前方に跨いで定長台19の前端部上に移動させる。これにより、長尺状のゴムシートWが、載置面11上で凹条部12から前方に定量だけ引き出される。
【0032】
一方、第2保持部材23を、凹条部12を前方に跨がせて定長台19の後端部上に移動させる。そして、第2保持部材23を載置面11に向けて前進移動させ、この第2保持部材23により、載置面11上のゴムシートWの前記対応部分を、載置面11上に押さえ付けるとともに、吸引して保持させる(図2)。
この際、一対の支持壁部24は、ゴムシートWを介して凹条部12および切断刃14と鉛直方向で対向し、かつゴムシートWから上方に離間している。なお図示の例では、第2保持部材23は、ゴムシートWの前記対応部分のうち、凹条部12の前方に位置する部分を載置面11上に押さえ付けている。
【0033】
そして、切断刃14を載置面11に向けて前進移動させて、凹条部12内から上方に突出させ載置面11に下方から到達させることで、切断刃14により、ゴムシートWを、下方から上方に向けて一対の支持壁部24同士の間に押し込みながら突き破る。
次に、切断刃14の各分割体を、凹条部12内を前記左右方向の外側に向けて各別に走行させ互いに離間させ、ゴムシートWをその全幅にわたって切断することで、定長のゴムシートW1を切り取る。
【0034】
そして、切断刃14を載置面11から後退移動させ、かつ第2保持部材23を前記対応部分である定長のゴムシートW1の後端部とともに載置面11から後退移動させた後に、両保持部材22、23を前方に移動させることで、第1保持部材22に前端部が保持され、かつ第2保持部材23により後端部が保持された定長のゴムシートW1が前方に搬送される(図3)。その後、第1保持部材22を定長のゴムシートW1の前端部とともに成形ドラムに到達させたときに、定長のゴムシートW1を両保持部材22、23から解放し成形ドラム上に巻き付けて生タイヤを成形する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるゴムシートの切断装置1によれば、切断刃14を前進移動させ、載置面11上のゴムシートWを一対の支持壁部24側に向けて押し込んでいくと、このゴムシートWには当初、一対の支持壁部24が非接触となっているので、該ゴムシートWは、一対の支持壁部24には何ら拘束されることはない。
従って、切断刃14の前進移動時に、たとえ切断刃14が、ゴムシートWの表面のうち、直ぐ内側にコードが埋設されている硬い部分に当接しても、切断刃14が前進移動する過程で、この硬さが抵抗になることによって、ゴムシートWの表面の前記硬い部分が切断刃14上を摺動して、該切断刃14上に、ゴムシートWの表面のうち、直ぐ内側にコードが埋設されていない軟らかい部分を引き入れ易くすることが可能になる。
これにより、ゴムシートWの表面のうち前記軟らかい部分に切断刃14を突き刺してゴムシートWを切断することが可能になり、生成される切断面にコードが露出するのを抑制することができる。
【0036】
さらに、切断刃14が、前進端位置に位置したときに、一対の支持壁部24同士の間に進入するので、切断刃14がゴムシートWを突き刺して切断を開始するときは、ゴムシートWを一対の支持壁部24に当接させて支持させ、ゴムシートWの切断刃14に対する位置ずれを抑えることが可能になる。
これにより、ゴムシートWのうち一対の支持壁部24同士の間に位置する部分に、切断刃14から効率よく力を加えることが可能になり、ゴムシートWを精度よく確実に切断することができる。
【0037】
さらにまた、生成される切断面にコードが露出するのを抑制するために、切断刃14ではなく、ゴムシートWを切断刃14上で移動させるので、例えば、ゴムシートWの切断後に、切断刃14の、載置台13に対する前後方向の位置を、切断前の原点位置に復帰させる機構等が不要となり、この装置1の製造コストやランニングコストを抑えつつ前述の作用効果を奏功させることができる。
【0038】
また、一対の支持壁部24が、載置面11を挟む切断刃14の反対側で、かつ載置面11を挟む凹条部12の反対側に配設されているので、切断刃14を載置面11に向けて前進移動させると、切断刃14は、凹条部12内からその外側に向けて突出したときに、載置面11上に載置されたゴムシートWに到達することとなる。
従って、切断刃14の載置面11に向けた前進移動に伴い、ゴムシートWが、凹条部12の外側に向けて変形若しくは変位させられながら、一対の支持壁部24側に向けて押し込まれることとなる。これにより、このゴムシートWの変形や変位が、凹条部12を画成する壁面によって拘束されるのを回避することが可能になり、切断刃14を前進移動させた後、切断刃14がゴムシートWを突き刺して切断を開始する前までは、ゴムシートWの表面の前記硬い部分を、切断刃14上で確実に摺動させることができる。
【0039】
さらに本実施形態では、第2保持部材23が、切断刃14が載置面11上のゴムシートWを切断するのに先立って、該ゴムシートWの前記対応部分を、当該ゴムシートWの切断が完了するまで、載置面11上に押さえ付けるので、切断開始後切断完了までの間に、ゴムシートWが切断刃14に対して位置ずれするのを抑制することが可能になり、ゴムシートWをより一層精度よく確実に切断することができる。
【0040】
さらにまた、このような第2保持部材23を搬送手段17が備えているので、装置の大型化および高コスト化を回避しつつ、ゴムシートWをより一層精度よく確実に切断することができる。
また、切断後に、第2保持部材23を定長のゴムシートW1の後端部ごと載置面11から後退移動させれば直ちに、第1保持部材22および第2保持部材23を双方ともに前方に移動させることで、定長のゴムシートW1を前方に搬送することが可能になるので、切断、搬送効率の向上を図ることができる。
【0041】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば前記実施形態では、凹条部12として、載置台13を鉛直方向に貫く構成を示したが、これに限らず、載置台13に非貫通であってもよい。この構成において、切断刃14は、非貫通の凹条部内に配設してもよい。
また、載置台13として、供給台18と定長台19とを有する構成を示したが、これら18、19が一体に形成され、かつその表面に前記交差方向に延びる溝状の凹条部が形成された構成を採用してもよい。
【0043】
さらに、繰り出し装置15および供給ローラ16は配設しなくてもよい。
また、載置面11は、水平方向に交差する方向に延在させてもよく、さらに鉛直方向の下方に向けてもよい。
また、切断刃14の前記左右方向の大きさは、ゴムシートWの幅以上としてもよく、この場合、切断刃14は、凹条部12内を前記左右方向に走行させなくてもよい。さらにまた、切断刃14として前記左右方向に二分割された構成を示したが、一体であってもよい。
【0044】
さらに、第2保持部材23により、ゴムシートWの前記対応部分を載置面11上に押さえ付けるのは、切断刃14が載置面11上のゴムシートWを切断する前であれば、切断刃14が載置面11に向けて前進移動を開始した後であってもよい。
また、第2保持部材23により、ゴムシートWの前記対応部分を吸引して保持するのは、第2保持部材23が、該対応部分を載置面11上に押さえ付けたときから、ゴムシートWの切断が完了した後に載置面11に対して後退移動する前までの間であればいつでもよい。
【0045】
さらに、第1保持部材22および第2保持部材23は、バキュームパッド22a、23aからの吸引力によってゴムシートWを保持する構成に限らず、ゴムシートW内のコードが例えばスチール等の場合には、磁石の磁力によりゴムシートWを磁着するようにしてもよい。なお、コードが例えばスチール等の場合、載置面11に磁石を埋設してもよい。
【0046】
また、第2保持部材23とは別に、あるいは第2保持部材23を配設せずに、載置面11における凹条部12の開口周縁部に対して進退可能な押さえ手段を配設し、切断刃14が載置面11上のゴムシートWを切断するのに先立って、この押さえ手段を、載置面11に向けて前進移動させ、該ゴムシートWの前記対応部分を、当該ゴムシートWの切断が完了するまで、該押さえ手段により載置面11上に押さえ付けるようにしてもよい。
【0047】
さらに、載置面11に対して、切断刃14を鉛直方向の上方に位置させ、かつ支持壁部24を鉛直方向の下方に位置させてもよい。この構成において、支持壁部24は、凹条部12内に配設してもよい。
支持壁部24は、第2保持部材23と別体としてもよく、また、一対の支持壁部24は頂壁部24aにより互いに連結されなくてもよく、さらに、一対の支持壁部24は、載置台13に対して位置を固定させて配設してもよい。
搬送手段17および押さえ手段は配設しなくてもよい。
搬送手段17を配設せず、載置台13をベルトコンベヤとしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、ゴムシートW内のコードが延びる前記交差方向として前記左右方向を示したが、これに限らず適宜変更してもよい。
さらに、ゴムシートWの切断装置1として、生タイヤを成形する装置の一部を示したが、これに限らず他の用途に適用してもよい。
【0049】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
製造コストやランニングコストを抑えつつ、生成される切断面にコードが露出するのを抑制することができるとともに、ゴムシートを精度よく確実に切断することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ゴムシートの切断装置
11 載置面
12 凹条部
13 載置台
14 切断刃
22 第1保持部材
23 第2保持部材(押さえ手段)
24 支持壁部
W 長尺状のゴムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に長手方向に交差する交差方向に延びるコードが複数埋設された長尺状のゴムシートを、前記交差方向に切断するゴムシートの切断装置であって、
前記ゴムシートが載置される載置面、および該載置面に形成され前記交差方向に延びる凹条部を有する載置台と、
前記載置面に対して進退可能に配設されるとともに前進移動時に前記凹条部内に進入しかつ前記載置面を超える切断刃と、
を備え、
前記載置面を挟む前記切断刃の反対側には、前記載置面上に載置されるゴムシートとの間に隙間が設けられ、かつ前進端位置に位置した前記切断刃が間に進入する一対の支持壁部が配設されていることを特徴とするゴムシートの切断装置。
【請求項2】
請求項1記載のゴムシートの切断装置であって、
前記一対の支持壁部は、前記載置面を挟む前記凹条部の反対側に、前記載置面との間に前記ゴムシートの厚さより大きい隙間をあけて配設されていることを特徴とするゴムシートの切断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴムシートの切断装置であって、
前記載置面における前記凹条部の開口周縁部に対して進退可能に配設された押さえ手段を備え、
該押さえ手段は、前記切断刃が前記載置面上のゴムシートを切断するのに先立って、該ゴムシートのうち前記凹条部の開口周縁部に位置する部分を、該ゴムシートの切断が完了するまで、前記載置面上に押さえ付ける構成とされたことを特徴とするゴムシートの切断装置。
【請求項4】
請求項3記載のゴムシートの切断装置であって、
前記長尺状のゴムシートの前端部を保持可能で、かつ前記凹条部を跨いで前記長手方向に進退可能に配設されるとともに、前記載置面に対して進退可能に配設された第1保持部材と、
前記長尺状のゴムシートから前記切断刃により切り取られた定長のゴムシートの後端部を保持可能で、かつ前記凹条部を跨いで前記長手方向に進退可能に配設されるとともに、前記載置面に対して進退可能に配設された第2保持部材と、
が備えられ、
該第2保持部材は、前記押さえ手段を兼ねていることを特徴とするゴムシートの切断装置。
【請求項5】
請求項1記載のゴムシートの切断装置を用いて長尺状のゴムシートを切断して切り取った定長のゴムシートを成形ドラム上に巻き付けて生タイヤを成形することを特徴とする生タイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179854(P2012−179854A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45470(P2011−45470)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】