説明

ゴムストリップの切断装置および切断方法

【課題】間欠的に送給されるゴムストリップを、所定の長さに切断後、切断面相互の意図しない接着を有効に抑制して、形成されるストリップ部材の長さのばらつきの発生等を防止する切断方法を提供する。
【解決手段】ゴムストリップ30の表面側に配設されて、幅方向に向けて変位可能な可動カッタ1と、表面側で、可動カッタを隔てて送給方向の前方側および後方側に設けた一対の表面押え部材2,3と、裏面側に配置されて、ゴムストリップを上昇変位させて、表面押え部材との間に挟み込み固定する上昇手段4とを具え、可動カッタを隔てて位置する一対の表面押え部材のいずれか一方を、他方の表面押え部材より、送給姿勢のゴムストリップ表面に近接させて配置して、一方の表面押え部材とストリップ上昇手段との間での、ゴムストリップの挟込み固定位置を、他方の表面押え部材での挟込み固定位置よりも低くしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップを、所定の長さに切断するためのゴムストリップ切断装置および、ゴムストリップの切断方法に関するものであり、とくには、ゴムストリップ切断後の、切断面の相互の、意図しない接着を有効に抑制して、ゴムストリップを、常に所期したとおりの長さで切断することができる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、空気入りタイヤの製造に際しては、スチールコードもしくは有機繊維コード等の複数本を、未加硫ゴムでコーティングして、形成されるゴムストリップの内部に、それの長手方向に対して所要の角度で傾斜して延びる複数本のコードを埋設配置し、そして、そのゴムストリップを、長手方向に対する所定の角度および、所定の長さで切断して、所要の長さを有するストリップ部材とし、しかる後、該ストリップ部材を、ベルト・トレッド成型ドラムの外周側に、直接的もしくは間接的に一周巻き付けることで、円筒状をなすベルト層素材を形成することがある。
【0003】
ここで、上述したゴムストリップの切断には、図5に模式図で示すように、コンベア100上で、図の右側に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップ101の表面側(図の上面側)に配設されて、ゴムストリップ101を切断するための、ゴムストリップ101の幅方向に向けて変位可能な可動カッタ102と、ゴムストリップ101の表面側で、可動カッタ102を隔ててゴムストリップ101の送給方向の後方側および前方側のそれぞれに設けた一対の表面押え部材103a,103bと、ゴムストリップ101の裏面側(図の下面側)に配置されて、ゴムストリップ101を、可動カッタ102および表面押え部材103a,103bに向けて、可動カッタ102の直下で上昇変位させて、それぞれの表面押え部材103a,103bとの間にゴムストリップ101を挟み込み固定するストリップ上昇手段104とを具える切断装置を用いることとしていた。
【0004】
この切断装置を用いて、ゴムストリップ101を切断するには、はじめに、コンベア100上で、図の右側に向けて送給されるゴムストリップ101の送給を、図5(a)に示すように所定の位置で停止させる。
次いで、ストリップ上昇手段104を作動させて、ゴムストリップ101を、図5(b)に示すように、可動カッタ102および表面押え部材103a,103bに向けて上昇変位させ、それぞれの表面押え部材103a,103bと、ストリップ上昇手段104との間に、ゴムストリップ101を挟み込んで固定するとともに、可動カッタ102が、ゴムストリップ101に突き刺さった状態で、可動カッタ102を、ゴムストリップ101の幅方向に変位させて、ゴムストリップ101を切断する。
【0005】
しかる後は、ストリップ上昇手段104を、図5(c)に示すように下降変位させて、それぞれの表面押え手段103a,103bとの間での、ゴムストリップの挟み込み固定状態を解除することにより、切断によって送給方向の前方側に形成されたストリップ部材101aおよび、送給方向の後方側に位置するゴムストリップ101bのそれぞれを、再度コンベア100上に配置し、図5(d)に示すように、コンベア100による、ストリップ部材101aおよびゴムストリップ101bの送給を再開させる。
なお図示は省略するが、その後、ストリップ部材101aは、コンベア100によって、ベルト・トレッド成型ドラムまで搬送されて、その搬送姿勢のまま、ベルト・トレッド成型ドラムの周囲に巻き付けられることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の従来の切断装置では、可動カッタ102を、ゴムストリップ101の幅方向に変位させて、ゴムストリップ101を切断する際に、図5(b)に示すように、各表面押え部材103a,103bおよび、ストリップ上昇手段104によって、可動カッタ102を隔ててストリップ送給方向の前方側および後方側のそれぞれに位置するゴムストリップ部分を、コンベア100からの、相互に等しい高さで挟み込み固定することから、可動カッタ102で切断した後に、ゴムストリップ101bおよびストリップ部材101aの、相互に近接して位置するそれぞれの切断面が、未加硫のゴム材料に固有の接着力に起因して、意図せずして接着されることがある。
【0007】
この場合、コンベア100上で、ストリップ部材101aの切断面の、ゴムストリップ101bの切断面からの引き剥がし作業を行うことが必要になるが、その引き剥がし作業によって、送給方向の後方側に位置するゴムストリップ101bが引き摺られる等して、ゴムストリップ101bの、コンベア100上での位置ずれが生じる結果、コンベア100で、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップ101bを、所期した長さで切断し得なくなって、形成されるストリップ部材の長さに、ばらつきが生じるおそれがあった。
【0008】
また、コンベア100上でのゴムストリップ101bの位置ずれにより、上記の切断装置による切断後に、コンベア100で搬送されて、その搬送姿勢のままで、ベルト・トレッド成型ドラムの周囲に巻き付けられるストリップ部材が、ベルト・トレッド成型ドラムの軸線方向の所定位置に配設されないことがある。
そして、これらの結果として、製造するタイヤの品質の低下が余儀なくされるという問題があった。
【0009】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップを、所定の長さに切断するに当り、ゴムストリップを切断した後の、切断面の相互の、意図しない接着を有効に抑制して、接着した切断面の相互を引き剥がすことに起因する、その後に切断によって形成されるストリップ部材の長さのばらつきの発生等を防止することができる、ゴムストリップ切断装置および切断方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のゴムストリップ切断装置は、一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップの表面側に配設されて、ゴムストリップの切断に供される、ゴムストリップの幅方向に向けて変位可能な可動カッタと、ゴムストリップの表面側で、該可動カッタを隔ててゴムストリップの送給方向の前方側および後方側のそれぞれに設けた一対の表面押え部材と、ゴムストリップの裏面側に配置されて、ゴムストリップを、可動カッタおよび表面押え部材に向けて、可動カッタの直下で上昇変位させて、それぞれの表面押え部材との間にゴムストリップを挟み込み固定するストリップ上昇手段とを具えるものであって、
可動カッタを隔てて位置する一対の表面押え部材のいずれか一方を、他方の表面押え部材より、送給姿勢のゴムストリップに対し、ゴムストリップ表面に近接させて配置して、一方の表面押え部材とストリップ上昇手段との間での、ゴムストリップの挟込み固定位置を、他方の表面押え部材での挟込み固定位置よりも低くしてなるものである。
【0011】
ここで好ましくは、ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材を、一対の表面押え部材のうちの、ゴムストリップの送給方向の前方側に位置する表面押え部材とする。
【0012】
またここで、上記のストリップ上昇手段は、一方の表面押え部材に対向する裏面押圧板と、該裏面押圧板を下方側から支持する支持部分および、他方の表面押え部材に対向する裏面押圧部分を有する昇降部材と、裏面押圧板と支持部分との間に介装した弾性体とを含んで構成することが好ましい。
この場合において、裏面押圧板は、前記昇降部材の裏面押圧部分に対し、可動カッタを隔ててゴムストリップの送給方向の前方側に配置することが好ましい。
【0013】
そしてまた、可動カッタは、ゴムストリップの幅方向の中間域に突き刺さった姿勢から相互に離隔して、ゴムストリップを、前記中間域から、該ゴムストリップの各側縁に向けて切断する一対の刃部を有するものとすることが好ましい。
【0014】
なお好ましくは、ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材の、ゴムストリップ表面への当接面を、他方の表面押え部材の同様の当接面よりも2.0mm〜6.0mm低く位置させる。
【0015】
ところで、一対の表面押え部材のうち、ゴムストリップ表面から離隔させて配置した前記他方の表面押え部材の、ゴムストリップの送給方向の前方側もしくは後方側に隣接する位置には、ストリップ上昇手段の作動に基く上昇変位姿勢のゴムストリップを、たとえば、負圧吸着ないしは磁気吸着等によって吸着固定する吸着保持手段を設けることが好ましい。
【0016】
ここにおいて、上記のいずれかの切断装置が、スチールコードを内部に埋設したゴムストリップの切断に供されるものである場合は、前記吸着保持手段を、前記ゴムストリップを磁気吸着させるマグネット部材と、内部にマグネット部材を収納するとともに、マグネット部材を、ゴムストリップに対して進退変位させる吸着解除スリーブとで構成することが好ましい。
【0017】
また、この発明の、ゴムストリップの切断方法は、一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップを所定の長さに切断するに当り、
ゴムストリップの送給を一時的に停止した状態で、ゴムストリップを裏面側から持ち上げて、該ゴムストリップを、それの表面側に設けた可動カッタに向けて上昇変位させ、
可動カッタを隔てて前記送給方向の前方側および後方側に位置するそれぞれのゴムストリップ部分を、ゴムストリップの表面側および裏面側のそれぞれから、相互に異なる高さで挟み込み固定するとともに、可動カッタを、ゴムストリップの幅方向に向けて変位させてゴムストリップを切断し、しかる後、前記それぞれのゴムストリップ部分の挟み込み固定状態を解除して、ゴムストリップの送給を再開させるにある。
【発明の効果】
【0018】
この発明のゴムストリップ切断装置によれば、可動カッタを隔てて位置する一対の表面押え部材のいずれか一方を、他方の表面押え部材より、送給姿勢のゴムストリップに対し、ゴムストリップ表面に近接させて配置して、一方の表面押え部材とストリップ上昇手段との間での、ゴムストリップの挟込み固定位置を、他方の表面押え部材での挟込み固定位置よりも低くすることにより、ゴムストリップの幅方向に変位する可動カッタによって、ゴムストリップを切断した後に、ストリップ送給方向の前方側のストリップ部材の切断面と、該送給方向の後方側のゴムストリップの切断面とが、上記の挟込み固定位置の高さが相互に異なることに基き、互いに離隔して位置することになるので、ゴムストリップ切断後の、切断面の相互の接着を有効に防止することができる。
それ故に、この切断装置では、接着した切断面の引き剥がし作業が不要となって、該引き剥がし作業に起因する、コンベア上での、ゴムストリップの位置ずれを確実に防止することができるので、ゴムストリップの切断を、常に所期したとおりの長さで行うことができ、また、コンベア等によって搬送される、形成したストリップ部材の、ベルト・トレッド成型ドラムへの巻き付け位置を常に適正なものとすることができる。
【0019】
ここで、ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材を、一対の表面押え部材のうちの、ゴムストリップの送給方向の前方側に位置する表面押え部材としたときは、ゴムストリップの切断後、ゴムストリップの挟み込み固定状態を解除した際に、たとえば、ストリップ送給方向の後方側のゴムストリップよりも先に、コンベア上に配置される、ストリップ送給方向の前方側のストリップ部材が、前記後方側のゴムストリップに接触しなくなるので、それらの切断面の相互の、意図しない接着をより有効に防止することができる。
【0020】
ここにおいて、ストリップ上昇手段は、一方の表面押え部材に対向する裏面押圧板と、該裏面押圧板を下方側から支持する支持部分および、他方の表面押え部材に対向する裏面押圧部分を有する昇降部材と、裏面押圧板と支持部分との間に介装した弾性体とを含んで構成したときは、裏面押圧板と支持部分との間に、コイルスプリング等の弾性体を介装したことにより、ストリップ上昇手段による上昇変位姿勢のゴムストリップを、可動カッタが突き刺さる当初から、一方の表面押え部材と裏面押圧板と間に挟み込んで、ゴムストリップの位置ずれを有効に防止し、また、ゴムストリップをさらに上昇変位させることで、前記弾性体が押し縮められた状態で、一対の表面押え部材のそれぞれと、裏面押圧板および裏面押圧部分のそれぞれとの間に、ゴムストリップを強固に挟み込み固定することができるので、可動カッタによるゴムストリップの切断時の、ゴムストリップの位置ずれを有効に防止することができる。
またこの場合は、裏面押圧板と支持部分との間に介装した弾性体の弾性変形に基き、挟み込むゴムストリップ厚みのばらつきのいかんによらず、強固かつ確実な挟み込み固定状態を実現することができる。
【0021】
そしてとくに、裏面押圧板を、前記昇降部材の裏面押圧部分に対し、可動カッタを隔ててゴムストリップの送給方向の前方側に配置したときは、ゴムストリップ切断後の、切断面の相互の接着を有効に防止しつつ、ゴムストリップを、可動カッタによって、十分適正に切断することができる。
これはすなわち、切断面の接着を有効に防止するためには、上述したように、一対の表面押え部材のうち、ストリップ送給方向の前方側に位置するものを、ゴムストリップ表面に近接させて配置することが好ましいが、この場合において、裏面押圧板を、昇降部材の裏面押圧部分よりもストリップ送給方向の後方側に配置するとともに、それぞれの表面押え部材との間でゴムストリップを確実に挟み込み固定するべく、裏面押圧板を裏面押圧部分に比して高く位置させると、ストリップ上昇手段の上昇変位に際して、可動カッタが、ゴムストリップの表面に直交する方向から傾斜した姿勢で、ゴムストリップに突き刺さることになるので、ゴムストリップを所期した位置で切断し得なくなって、ストリップ部材の長さにばらつきが生じるおそれがあり、また、可動カッタが破損するおそれもある。
【0022】
ところで、ゴムストリップの一方の側縁側から、他方の側縁側に向けて変位して、ゴムストリップを切断する単一の刃部を有する可動カッタでは、ゴムストリップを確実に切断するために、表面押え部材によって、ゴムストリップの一方の側縁側部分だけを挟み込む構造とするが、この場合は、ストリップ幅や、内部に埋設したコードの傾斜角度の異なるゴムストリップの切断に供する度に、可動カッタによる切断角度および、表面押え部材の配設位置を調整する必要がある。
これに対し、可動カッタを、ゴムストリップの幅方向の中間域に突き刺さった姿勢から相互に離隔して、ゴムストリップを、前記中間域から、該ゴムストリップの各側縁に向けて切断する一対の刃部を有するものとしたときは、様々なストリップ幅および、コード傾斜角度のゴムストリップに応じて、たとえば、ゴムストリップの中間域に配置した表面押え部材の配設位置を変更することなしに、可動カッタの切断角度だけを変更することで、ゴムストリップを、高い精度の下で切断することができる。
【0023】
なお、ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材の、ゴムストリップ表面への当接面を、他方の表面押え部材の同様の当接面よりも2.0mm〜6.0mm低く位置させたときは、ゴムストリップを切断した後の、それぞれの切断面の相互の接触をより効果的に防止するとともに、一対の表面押え部材のそれぞれと、ストリップ上昇手段との間への挟み込み固定に起因する、ゴムストリップの性状の悪化を防止することができる。
これはすなわち、一対の表面押え部材の、それぞれの当接面の高さの差を、2.0mm未満としたときは、切断後の、ゴムストリップの切断面と、ストリップ部材の切断面との相互が、ある程度近接して位置することになるので、切断面の接触を十分有効に防止できないおそれがあり、この一方で、それぞれの当接面の高さの差を、6.0mmを超えるものとしたときは、一方の表面押え部材と他方の表面押え部材とで、ゴムストリップの挟み込み固定位置が、高さ方向に大きく離隔することになるので、それらの表面押え部材のそれぞれと、ストリップ上昇手段との間に挟み込み固定されたゴムストリップが大きく変形する懸念がある。
【0024】
ところで、一対の表面押え部材のうち、ゴムストリップ表面から離隔させて配置した前記他方の表面押え部材の、ゴムストリップの送給方向の前方側もしくは後方側に隣接する位置に、ストリップ上昇手段の作動によって上昇変位されたゴムストリップを吸着固定する吸着保持手段を設けたときは、可動カッタによってゴムストリップを切断して、ゴムストリップの挟み込み固定状態を解除した後に、吸着保持手段による吸着固定に基き、ゴムストリップまたはストリップ部材のいずれか一方の、上昇変位姿勢を維持することができるので、ゴムストリップの切断面と、ストリップ部材の切断面との接近を十分に防止することができ、これがため、切断面の接着のおそれをより確実に取り除くことができる。
【0025】
ここで、前記吸着保持手段を、スチールコードを埋設したゴムストリップを磁気吸着させるマグネット部材と、内部に、マグネット部材を収納するとともに、マグネット部材を、ゴムストリップに対して進退変位させる吸着解除スリーブとで構成したときは、負圧吸引の場合に比して、簡易な構造の下で、吸着保持手段による、ゴムストリップの上記の吸着固定および、その吸着固定状態の解除を行うことができる。
【0026】
この発明の、ゴムストリップの切断方法によれば、可動カッタを隔てて前記送給方向の前方側および後方側に位置するそれぞれのゴムストリップ部分を、ゴムストリップの表面側および裏面側のそれぞれから、相互に異なる高さで挟み込み固定するとともに、可動カッタを、ゴムストリップの幅方向に向けて変位させてゴムストリップを切断することにより、上述したところと同様に、ゴムストリップの切断後の、切断面の相互の接着を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の切断装置の一の実施形態を、ゴムストリップをコンベア上に配置した状態で示す正面図である。
【図2】図1の装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図1の装置を用いる、ゴムストリップの切断工程を示す模式図である。
【図4】図3に続く工程を示す模式図である。
【図5】従来の切断装置による、ゴムストリップの切断工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に例示する切断装置は、一方向、図では右側に向かって、たとえばコンベア20上で、所定の長さにわたって間欠的に送給される、未加硫のゴムストリップ30の表面側(図では上面側)に配設されて、ゴムストリップ30を切断するための、ゴムストリップ30の幅方向に向けて変位可能な可動カッタ1と、ゴムストリップ30の表面側で、該可動カッタ1を隔ててストリップ送給方向の前方側および後方側のそれぞれに設けた一対の表面押え部材2,3と、ゴムストリップ30の裏面側(図では下面側)に配設されて、ゴムストリップ30を、可動カッタ1および表面押え部材2,3に向けて、可動カッタ1の直下で上昇変位させるストリップ上昇手段4とを具えてなる。
【0029】
ここで、ストリップ上昇手段4は、自身の上昇変位に基いて、ゴムストリップ30を上昇変位させて、可動カッタ1を隔ててストリップ送給方向の前方側および後方側に位置するそれぞれのゴムストリップ部分を、一対の表面押え部材2,3のそれぞれとの間で挟み込み固定するべく機能するものである。
なお、ストリップ上昇手段4のこのような作動によってもたらされるゴムストリップ30の挟み込み固定状態の下では、可動カッタ1が、ゴムストリップ30の所定の位置に突き刺さることになる。
【0030】
そしてここでは、ストリップ上昇手段4を、たとえば、図の右側の表面押え部材2に対向して位置する裏面押圧板5と、その裏面押圧板5を下方側から支持する支持部分6aおよび、図では左側の表面押え部材3に対向して位置する裏面押圧部分6bを有する昇降部材6と、裏面押圧板5と支持部分6aとの間に介装した弾性体、たとえばコイルスプリング7と、昇降部材6を昇降変位させる、図示しない駆動源とを含んで構成する。
なお図示は省略するが、ストリップ上昇手段は、可動カッタを隔ててストリップ送給方向の後方側に、裏面押圧板を配置するとともに、該送給方向の前方側に、裏面押圧部分を配置したものとすることもできる。
【0031】
ここにおいて、この発明では、可動カッタ1による、ゴムストリップ30の切断後の、切断面の相互の、意図しない接着を防止するべく、図1に示すように、たとえば、ストリップ送給方向の前方側に位置する表面押え部材2を、後方側に位置する表面押え部材3より、図示の送給姿勢のゴムストリップ30に対し、ゴムストリップ表面に近接させて配置することで、前方側の表面押え部材2と、ストリップ上昇手段4との間での、ゴムストリップ30の挟み込み固定位置を、後方側の表面押え部材3での挟み込み固定位置よりも低くする。
【0032】
このことによれば、図示の切断装置を用いて、ゴムストリップ30を切断するに際し、高さの異なるそれぞれの表面押え部材2,3と、ストリップ上昇手段4との間での挟み込み固定状態の下、ゴムストリップ30を、可動カッタ1によって切断した後に、該切断面の相互が、高さ方向に離隔して位置することになるので、未加硫ゴムの固有の接着力による、それらの切断面の接着を有効に防止することができる。
なお、ストリップ送給方向の後方側に位置する表面押え部材を、該送給方向の前方側に位置する表面押え部材に比して、ゴムストリップ表面に近接させて配置することも可能である。
【0033】
ここで、可動カッタ1によるゴムストリップ切断後の切断面の相互を十分に離隔させるため、送給姿勢のゴムストリップ30に近接配置した表面押え部材2の、ゴムストリップ30への当接面2aと、該ゴムストリップ30から離隔させて配置した表面押え部材3の当接面3aとの高低差Hは、2.0mm〜6.0mmの範囲とすることが好ましい。
【0034】
図1に示すところでは、ストリップ送給方向の後方側に位置する表面押え部材3の、さらに後方側で、該表面押え部材3に隣接する位置に、ストリップ上昇手段4によって上昇変位させたゴムストリップ30を吸着固定する吸着保持手段8を設けており、ここでは、この吸着保持手段8を、たとえば、スチールコードを埋設配置したゴムストリップ30を磁気吸着させるマグネット部材9と、内部に、そのマグネット部材9を収納するとともに、マグネット部材9を、ゴムストリップ30に対して進退変位させる吸着解除スリーブ10とで構成する。
【0035】
このような吸着保持手段8により、可動カッタ1で切断したゴムストリップ30の挟み込み固定状態を解除するべく、ストリップ上昇手段4を下降させた後に、図の後方側に位置する切断後のゴムストリップを、挟み込み固定位置の高さで保持することができるので、切断後の、ゴムストリップ切断面の相互の接近を十分に防止して、それらの切断面の接着をより効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、マグネット部材9および吸着解除スリーブ10からなる磁気吸着タイプの図示の吸着保持手段8とともに、または、該吸着保持手段8に代えて、図示は省略するが、ゴムストリップ30の表面を負圧吸引して、ゴムストリップ30を吸着固定する負圧吸引タイプの吸着保持手段を設けることができる。
【0037】
ところで、ゴムストリップ30の切断に供される可動カッタ1は、図2に斜視図で示すような、一対の刃部1a,1bを有することが好ましい。
図示の刃部1a,1bのそれぞれは、相互に重なり合った姿勢で、ストリップ上昇手段4によって持ち上げられたゴムストリップ30の幅方向の中間域に突き刺さり、その状態で、前記中間域から相互に離隔して、図に矢印で示すように、ゴムストリップ30の側縁側のそれぞれに向けて変位することで、ゴムストリップ30を切断するべく機能する。
【0038】
以上に述べた装置を用いて、ゴムストリップ30を切断するに当っては、たとえばコンベア上で、一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップ30の送給を、図3(a)に示すように所定の位置で停止させる。
次いで、ストリップ上昇手段4を作動させて、ゴムストリップ30を上昇変位させ、図3(b)に示すように、ゴムストリップ30を、ストリップ送給方向の前方側の表面押え部材2と、ストリップ上昇手段4との間で挟み込み、そしてさらに、ゴムストリップ30を上昇変位させて、ゴムストリップ30を、図3(c)に示すように、ストリップ送給方向の後方側の表面押え部材3との間でも挟み込んで、一対の表面押え部材2,3のそれぞれと、ストリップ上昇手段4との間に、ゴムストリップ30を挟み込み固定する。
なおここで、一対の表面押え部材2,3の相互間に位置する可動カッタ1は、上昇変位姿勢のゴムストリップ30に、たとえば、それの幅方向の中間域で突き刺さることになる。
【0039】
このとき、図示の装置では、ストリップ送給方向の前方側の表面押え部材2を、後方側の表面押え部材3より、送給姿勢のゴムストリップ30に対し、ゴムストリップ表面に近接させて配置したことにより、ストリップ上昇手段4の、裏面押圧板5と支持部分6aとの間のコイルスプリング7が押し縮められた姿勢で、ゴムストリップ30が、図3(c)に誇張して示すように、可動カッタ1を隔ててストリップ送給方向の前方側および後方側のそれぞれで、相互に異なる高さで挟み込み固定される。
またここでは、表面押え部材3に隣接させて配置した吸着保持手段8の、吸着解除スリーブ10の内側でゴムストリップ30に向けて進出変位させたマグネット部材9によって、スチールコードを埋設したゴムストリップ30の、送給方向後方側の部分を吸着固定する。
【0040】
そしてこの状態で、可動カッタ1を作動させ、たとえば、ゴムストリップ30の幅方向の中間域に突き刺さった一対の刃部1a,1bを、ゴムストリップ30の側縁側に向けて変位させること等によって、図3(d)に示すように、ゴムストリップを切断すると、ストリップ送給方向の前方側のストリップ部材30aと、後方側のゴムストリップ30bとが、相互に異なる高さで挟み込み固定されていることの故に、それらの切断面が、高さ方向で互いに離隔して位置することになるので、切断面の相互の接着を十分確実に防止することができる。
【0041】
しかる後は、ストリップ上昇手段4を、図4(a)に示すように下降させて、ゴムストリップ30の挟み込み固定状態を解除するが、ここでは、マグネット部材9に磁気吸着された、ストリップ送給方向の後方側のゴムストリップ30bが、挟み込み固定位置で保持される一方で、該送給方向の前方側のストリップ部材30aは、コンベア20上に配置されることになる。
ここにおいて、図4(b)に示すところでは、送給方向の後方側のゴムストリップ30bを吸着保持手段8によって吸着固定したまま、コンベア20上のストリップ部材30aを、図に矢印で示すように搬送することとしたので、ゴムストリップ30bの切断面と、ストリップ部材30aの切断面とが接近することがなくなり、それにより、切断面の接着のおそれを確実に取り除くことができる。
【0042】
その後、ゴムストリップ30bを磁気吸着したマグネット部材9を、吸着解除スリーブ10によって、図4(c)に示すように、ゴムストリップ30bに対し後退変位させて、マグネット部材9の全体を吸着解除スリーブ10の内側に入れ込むことにより、マグネット部材9の、ゴムストリップ30bに対する吸着を解除して、ゴムストリップ30bを、コンベア20上に配置し、ゴムストリップ30bの送給を再開させる。
【符号の説明】
【0043】
1 可動カッタ
1a,1b 刃部
2,3 表面押え部材
2a,3a 当接面
4 ストリップ上昇手段
5 裏面押圧板
6 昇降部材
6a 裏面押圧部分
6b 支持部分
7 コイルスプリング
8 吸着保持部材
9 マグネット部材
10 吸着解除スリーブ
20 コンベア
30 ゴムストリップ
H 高低差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップの表面側に配設されて、ゴムストリップの切断に供される、ゴムストリップの幅方向に向けて変位可能な可動カッタと、ゴムストリップの表面側で、該可動カッタを隔ててゴムストリップの送給方向の前方側および後方側のそれぞれに設けた一対の表面押え部材と、ゴムストリップの裏面側に配置されて、ゴムストリップを、可動カッタおよび表面押え部材に向けて、可動カッタの直下で上昇変位させて、それぞれの表面押え部材との間にゴムストリップを挟み込み固定するストリップ上昇手段とを具えるゴムストリップ切断装置であって、
可動カッタを隔てて位置する一対の表面押え部材のいずれか一方を、他方の表面押え部材より、送給姿勢のゴムストリップに対し、ゴムストリップ表面に近接させて配置して、一方の表面押え部材とストリップ上昇手段との間での、ゴムストリップの挟込み固定位置を、他方の表面押え部材での挟込み固定位置よりも低くしてなるゴムストリップ切断装置。
【請求項2】
ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材を、一対の表面押え部材のうちの、ゴムストリップの送給方向の前方側に位置する表面押え部材としてなる請求項1に記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項3】
前記ストリップ上昇手段を、一方の表面押え部材に対向する裏面押圧板と、該裏面押圧板を下方側から支持する支持部分および、他方の表面押え部材に対向する裏面押圧部分を有する昇降部材と、裏面押圧板と支持部分との間に介装した弾性体とを含んで構成してなる請求項1もしくは2に記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項4】
裏面押圧板を、前記昇降部材の裏面押圧部分に対し、可動カッタを隔ててゴムストリップの送給方向の前方側に配置してなる請求項3に記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項5】
前記可動カッタが、ゴムストリップの幅方向の中間域に突き刺さった姿勢から相互に離隔して、ゴムストリップを、前記中間域から、該ゴムストリップの各側縁に向けて切断する一対の刃部を有するものとしてなる請求項1〜4のいずれかに記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項6】
ゴムストリップ表面に近接させて配置した前記一方の表面押え部材の、ゴムストリップ表面への当接面を、他方の表面押え部材の同様の当接面よりも2.0mm〜6.0mm低く位置させてなる請求項1〜5のいずれかに記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項7】
一対の表面押え部材のうち、ゴムストリップ表面から離隔させて配置した前記他方の表面押え部材の、ゴムストリップの送給方向の前方側もしくは後方側に隣接する位置に、ストリップ上昇手段の作動に基く上昇変位姿勢のゴムストリップを吸着固定する吸着保持手段を設けてなる請求項1〜6のいずれかに記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項8】
スチールコードを内部に埋設したゴムストリップの切断に供されるものであって、
前記吸着保持手段を、前記ゴムストリップを磁気吸着させるマグネット部材と、内部にマグネット部材を収納するとともに、マグネット部材を、ゴムストリップに対して進退変位させる吸着解除スリーブとで構成してなる請求項7に記載のゴムストリップ切断装置。
【請求項9】
一方向に向けて、所定の長さにわたって間欠的に送給されるゴムストリップを所定の長さに切断するに当り、
ゴムストリップの送給を一時的に停止した状態で、ゴムストリップを裏面側から持ち上げて、該ゴムストリップを、それの表面側に設けた可動カッタに向けて上昇変位させ、
可動カッタを隔てて前記送給方向の前方側および後方側に位置するそれぞれのゴムストリップ部分を、ゴムストリップの表面側および裏面側のそれぞれから、相互に異なる高さで挟み込み固定するとともに、可動カッタを、ゴムストリップの幅方向に向けて変位させてゴムストリップを切断し、しかる後、前記それぞれのゴムストリップ部分の挟み込み固定状態を解除して、ゴムストリップの送給を再開させる、ゴムストリップの切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−43392(P2013−43392A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183507(P2011−183507)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】