説明

ゴムマスターバッチ及びその製造方法

本発明は、特殊な設備を必要とせず、均一性に優れたゴムマスターバッチを製造することが可能なゴムマスターバッチの製造方法に関し、より詳しくは、ゴム溶液と、充填剤を予め液体に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含むゴムマスターバッチの製造方法において、スタティックミキサー又はローターとステーター部とからなる高せん断ミキサーを用いて前記ゴム溶液と前記スラリー溶液とを混合することを特徴とするゴムマスターバッチの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムマスターバッチ及びその製造方法、該ゴムマスターバッチを用いたゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いたタイヤ及びベルトに関し、特に均一性に優れたゴムマスターバッチの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工性に優れたゴム組成物の製造方法としてゴム−充填剤ウェットマスターバッチ(ゴムマスターバッチ)を用いることが知られている。ここで、ゴムマスターバッチは、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と水とを予め一定の割合で混合し機械的な力で充填剤を水中に微分散させたスラリーと、ゴム溶液とを混合し、その後、酸、無機塩、アミン等の凝固剤を加えて凝固させた後、濾過回収、乾燥するものである(特公昭36−22729号公報及び特公昭51−43851号公報参照)。
【0003】
上記ゴムマスターバッチの中でも、ゴム溶液としてスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)ラテックスを用いたゴムマスターバッチは、既に工業化され、広く使用されている。しかしながら、ゴム溶液として天然ゴムラテックス等の凝固性の高いゴムラテックスを用いたゴムマスターバッチは、ゴム溶液と充填剤スラリーとを混合する過程で凝固剤を添加する前に凝固反応が始まってしまうため、(i)均一に撹拌するのが難しく、凝固物の均一性が悪い、或いは、(ii)凝固形態の制御が難しい等の理由から工業化に至っていない。
【0004】
これに対し、特表2000−507892号公報には、凝固剤を添加することなく、ゴムマスターバッチを製造する方法が開示されており、ゴム溶液として天然ゴムラテックスを用いた例が開示されている。しかしながら、この方法では、充填剤スラリーを高速でラテックス流に導入するための特殊な設備を必要とし、大規模な設備投資を必要とするという問題がある。
【0005】
また、欧州特許出願公開第1283219号明細書には、アミド結合を分解した天然ゴムラテックスを用いてゴムマスターバッチを製造する方法が開示されているが、得られるゴムマスターバッチの均一性については検討がなされていない。ここで、天然ゴムラテックスと充填剤スラリーとの混合方法としては、ホモミキサー中に充填剤スラリーを入れ、攪拌しながら、ラテックスを滴下する方法や、逆にラテックスを攪拌しながら、これに充填剤スラリーを滴下する方法が挙げられている。
【発明の開示】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、特殊な設備を必要とせず、均一性に優れたゴムマスターバッチを製造することが可能なゴムマスターバッチの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該方法で得られたゴムマスターバッチ、該ゴムマスターバッチを用いたゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いたタイヤ及びベルトを提供することにある。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、スタティックミキサー又は高せん断ミキサーを用いてゴム溶液と充填剤スラリーとを混合することで、均一性に優れたゴムマスターバッチが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明のゴムマスターバッチの製造方法は、ゴム溶液と、充填剤を予め液体に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含むゴムマスターバッチの製造方法において、スタティックミキサー又はローターとステーター部とからなる高せん断ミキサーを用いて前記ゴム溶液と前記スラリー溶液とを混合することを特徴とする。また、本発明のゴムマスターバッチは、該方法により製造されたものである。
【0009】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法においては、前記充填剤は、カーボンブラック、シリカ、及び下記式(I):
nM・xSiO・zHO ・・・(I)
(式中、Mは、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である)で表わされる無機充填剤の少なくとも一種であるのが好ましい。
【0010】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法の好適例においては、前記ゴム溶液が水系のゴムラテックスである。ここで、該ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであるのが更に好ましい。また、該天然ゴムラテックスは、該ラテックス中のアミド結合がプロテアーゼにより分解されているのが特に好ましい。
【0011】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法の他の好適例においては、前記水系のゴムラテックスと前記スラリー溶液とを混合した後、該混合物を凝固させて含水率を5〜40質量%にし、該凝固物を機械的なせん断力をかけながら乾燥する。ここで、該乾燥をスクリュー型連続混練機で行うのが更に好ましい。
【0012】
また、本発明のゴム組成物は、上記の方法で得られたゴムマスターバッチを配合してなることを特徴とする。該ゴム組成物は、タイヤ及びベルトに好適に用いることができる。
【0013】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法によれば、特殊な設備を必要とせず、均一性に優れたゴムマスターバッチを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴムマスターバッチの製造方法は、ゴム溶液と、充填剤を予め液体に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含み、該工程で、スタティックミキサー又はローターとステーター部とからなる高せん断ミキサーを用いて前記ゴム溶液と前記スラリー溶液とを混合することを特徴とし、特殊な設備を必要としない。また、本発明のゴムマスターバッチは、該方法で得られたものであって、均一性が非常に高い。
【0015】
上記混合工程でスタティックミキサーを用いた場合、該スタティックミキサーは、駆動部を有さないため、混合液にせん断力がかかり難く、また、凝固が一部で開始したとしても、生成した凝固物が詰まりにくい構造であるため、良好な生産性を維持しつつ、均一に混合することができるものと考えられる。そのため、得られたゴムマスターバッチは、均一性に優れる。
【0016】
一方、上記混合工程で高せん断ミキサーを用いた場合、ゴム溶液と充填剤スラリーとが一旦不均一に凝固しても、該凝固物が高いせん断力によって細かく引きちぎられるため、製造されるゴムマスターバッチは、全体としての均一性が向上するものと考えられる。
【0017】
本発明の製造法に用いるスタティックミキサーは、駆動部の無い静止型混合機であり、モーションレスミキサーとも呼ばれている。該スタティックミキサーにおいては、固定されたエレメントにより流体が順次撹拌混合され、エレメントを通過するごとに分散粒子径が小さくなる。該スタティックミキサーは、一般的な混合機であり、例えば、ノリタケカンパニーリミテッド社、米国TAH社、米国KOFLO社、特殊機化工業社等が提供する市販品を利用することができる。
【0018】
一方、本発明の製造法に用いる高せん断ミキサーは、回転するローターと固定されたステーター部とからなる。該高せん断ミキサーにおいては、高速で回転するローターと、固定されたステーター部が狭いクリアランスで配置されており、ローターの回転により高いせん断力が生み出される。ここで、高せん断とは、せん断速度が2000/s以上を指し、4000/s以上であるのが好ましい。該高せん断ミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、特殊機化工業社製ホモミキサー、独国PUC社製コロイドミル、独国キャビトロン社及び英国シルバーソン社製ハイシアーミキサー等を好適に用いることができる。
【0019】
上記ゴム溶液としては、ゴム成分の微粒子を水に分散させたゴムラテックス、ゴム成分を有機溶媒に溶解させた溶液が挙げられる。ここで、ゴム成分としては、天然ゴム(NR)の他;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ゴム溶液中のゴム成分の濃度は、5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
【0020】
上記ゴム溶液としては、水系のゴムラテックスが好ましく、該ゴムラテックスの中でも天然ゴムラテックスが特に好ましい。本発明の方法によれば、凝固し易い天然ゴム等の水系ラテックスを用いても、上述の理由により、得られるゴムマスターバッチの均一性が高い。また、天然ゴムラテックスを用いた場合、得られるゴムマスターバッチは、機械的特性、低発熱性、耐摩耗性に優れる。
【0021】
上記天然ゴムラテックスは、該ラテックス中のアミド結合がプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)により分解されていても良い。天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解することにより、アミド結合の水素結合による分子同士の絡み合いが抑制され、ゴムの粘度上昇が抑制され、加工性を向上させることができる。
【0022】
上記プロテアーゼは、天然ゴムラテックス粒子の表面層成分中に存在するアミド結合を加水分解する性質を有し、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ等が挙げられる。本発明の製造方法においては、効果の点から、アルカリ性プロテアーゼが特に好ましい。
【0023】
プロテアーゼによってアミド結合の分解を行う場合、分解処理は、混合する酵素に適した条件で行えばよく、例えば、天然ゴムラテックスにノボザイムズ製アルカラーゼ2.5LタイプDXを混合する場合には、通常20〜80℃の範囲で処理するのが好ましい。この際、pHは、通常6.0〜12.0の範囲に調整される。また、プロテアーゼの添加量は、天然ゴムラテックスに対して、通常0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%の範囲である。
【0024】
また、天然ゴムラテックスのアミド結合を分解する工程においては、さらに、ラテックスの安定性を向上させる目的で、界面活性剤を加えるのが好ましい。界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性界面活性剤を使用できるが、特にアニオン系、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの性状に応じて適宜調整することができ、天然ゴムラテックスに対して、通常0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%の範囲である。
【0025】
上記スラリー溶液は、充填剤を予め液体に分散させてなる。ここで、充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、及び下記式(I):
nM・xSiO・zHO ・・・(I)
(式中、Mは、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である)で表わされる無機充填剤が挙げられる。
【0026】
上記カーボンブラックとしては、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのものが挙げられ、上記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。また、式(I)の無機充填剤としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(CaSiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これら充填剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いてもよい。上記充填剤の中でも、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、クレー及び炭酸カルシウムが好ましい。
【0027】
上記スラリー溶液の製造には、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、ホモミキサーに所定量の充填剤と水を入れ、一定時間撹拌することで、スラリー溶液を調製することができる。また、上記スラリー溶液の製造には、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用いてもよく、例えば、コロイドミルに所定量の充填剤と水を入れ、高速で一定時間撹拌することで、上記スラリー溶液を調製することができる。ここで、該スラリー溶液中の充填剤の濃度は、0.5〜60質量%が好ましく、1〜30質量%が更に好ましい。また、上記充填剤は、上記ゴム成分100質量部に対して5〜100質量部配合されるのが好ましく、10〜70質量部配合されるのが更に好ましい。充填材の配合量が5質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、100質量部を超えると加工性が悪化する場合がある。
【0028】
本発明の製造方法では、上記ゴム溶液と充填剤スラリー溶液とを混合した後、該混合物を凝固させる。ここで、凝固法としては、混合物に凝固剤を加えて固形化する方法が挙げられる。但し、ゴム溶液とスラリー溶液との混合により固形化がなされる場合もあり、この場合には凝固剤の添加は、必ずしも必要ではない。ここで、凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。ゴム溶液として、水系のゴムラッテックスを用いた場合、得られる凝固物は、含水率が通常5〜40質量%であり、乾燥してゴム組成物等に用いられる。
【0029】
上記ゴムマスターバッチには、所望に応じて、界面活性剤、加硫剤、老化防止剤、着色剤、分散剤等の添加剤を加えることができる。これら添加剤は、ゴム溶液とスラリー溶液との混合前に、ゴム溶液及びスラリー溶液の少なくとも一方に添加するのが好ましい。
【0030】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法においては、最終工程として、通常、乾燥が行われる。乾燥には、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、充填剤の分散性及び均一性を更に向上させるためには、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行うのが好ましい。機械的なせん断力をかけながら乾燥することにより、加工性、補強性、低燃費性に優れたゴムを得ることができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行うことができるが、工業的生産性の観点から、スクリュー型連続混練機を用いるのが好ましく、同方向回転、あるいは異方向回転の2軸混練押出機を用いるのが更に好ましい。該スクリュー型連続混練機しては、市販品を利用することができ、例えば、神戸製鋼製2軸混練押出機等を用いることができる。
【0031】
本発明のゴム組成物は、上記の方法で得られたゴムマスターバッチを配合してなる。上記ゴムマスターバッチが均一性に優れるため、本発明のゴム組成物は均一性に優れる。該ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、加硫剤,加硫促進剤,老化防止剤,スコーチ防止剤,亜鉛華,ステアリン酸等の通常ゴム工業界で用いられる各種薬品を添加することができる。また、本発明のゴム組成物は、タイヤやベルト等のゴム物品に好適に使用することができる。
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(比較例1)
天然ゴムのフィールドラテックス(アンモニア水でpH=10.5に調整,ゴム成分27.4質量%)を脱イオン水で希釈し、ゴム成分を20質量%に調整してゴム溶液Aを調製した。また、イオン交換水にカーボンブラックN110を添加し、ホモディスパー[特殊機化工業製]を用いてスラリー状に分散させ、充填剤スラリーB(カーボンブラック5質量%)を調製した。インペラー型撹拌機を備えたタンクに、500mL/分の流量でゴム溶液Aを、1000mL/分の流量で充填剤スラリーBを撹拌しながら同時に5分間投入した。投入終了後、撹拌しながらギ酸を添加しpHを約5に調整して凝固を完了させた。30メッシュのふるいを用いて凝固物を回収し、水洗、乾燥してゴムマスターバッチを得た。
【実施例1】
【0034】
上記ゴム溶液Aと充填剤スラリーBとを、比較例1と同じ流量でスタティックミキサー[ノリタケカンパニーリミテッド製N33,外径:1インチ,エレメント数:12]に同時に投入・混合し、その混合液をさらにタンクに投入し、撹拌しながらギ酸を添加しpHを約5に調整して凝固を完了させた。30メッシュのふるいを用いて凝固物を回収し、水洗、乾燥してゴムマスターバッチを得た。
【実施例2】
【0035】
上記ゴム溶液Aと充填剤スラリーBとを、比較例1と同じ流量でコロイドミル[ローター径:50mm,ローターとステーターの間隔:0.7mm]に同時に投入し、回転数3000rpmで1回パスさせた後、タンクに投入し、撹拌しながらギ酸を添加しpHを約5に調整して凝固を完了させた。30メッシュのふるいを用いて凝固物を回収し、水洗、乾燥してゴムマスターバッチを得た。
【0036】
<均一性の評価>
上記のようにして得られたゴムマスターバッチ約600g中、無作為に10箇所から約1gづつサンプリングし、それぞれ1mm角大に切断し精秤した後、るつぼに入れ750℃の電熱炉中で5分間加熱しゴム成分を燃焼させた。放冷後、残渣分を精秤し、下記式(II):
充填部数=残渣質量/(燃焼前質量−残渣質量)×100 ・・・(II)
より充填剤の充填部数を算出した。10個のサンプルの平均充填部数と標準偏差σを求めた。結果を表1に示す。σが小さい程、バラツキが少なく均一性に優れることを示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例のゴムマスターバッチは、充填剤の充填部数のバラツキが少なく、また、平均充填部数も理論値の50に近く、均一に凝固していることが分かる。一方、比較例のゴムマスターバッチは、平均充填部数と理論値との乖離が大きく、バラツキも大きく均一性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム溶液と、充填剤を予め液体に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含むゴムマスターバッチの製造方法において、スタティックミキサー又はローターとステーター部とからなる高せん断ミキサーを用いて前記ゴム溶液と前記スラリー溶液とを混合することを特徴とするゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記充填剤が、カーボンブラック、シリカ、及び下記式(I):
nM・xSiO・zHO ・・・(I)
(式中、Mは、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である)で表わされる無機充填剤の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム溶液が水系のゴムラテックスであることを特徴とする請求項1に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項3に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記天然ゴムラテックスは、該ラテックス中のアミド結合がプロテアーゼにより分解されていることを特徴とする請求項4に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記水系のゴムラテックスと前記スラリー溶液とを混合した後、該混合物を凝固させて含水率を5〜40質量%にし、該凝固物を機械的なせん断力をかけながら乾燥することを特徴とする請求項3に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項7】
前記乾燥をスクリュー型連続混練機で行うことを特徴とする請求項6に記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法により製造されたゴムマスターバッチ。
【請求項9】
請求項8に記載のゴムマスターバッチを配合してなるゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項11】
請求項9に記載のゴム組成物を用いたベルト。

【国際公開番号】WO2005/012396
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512460(P2005−512460)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009431
【国際出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】