説明

ゴム焼付け部品組立体

【課題】ゴム焼付け部品をハウジングに組み付ける際に、ゴム焼付け部品が所定の位置に確実に組み付けられ、閉鎖空間内に閉じ込められた潤滑剤や空気による背圧でゴム状弾性材製のガスケットに過大な応力が加わり、ガスケットが破損することが無いゴム焼付け部品組立体を提供することを目的とする。
【解決手段】流体通路に面して設けた段部と、前記段部に隣接する小径円筒内周面とを備えたハウジングと、その外周面が前記小径円筒内周面と嵌合する嵌合部を備えた金属環と、前記金属環に一体的に形成され、前記段部との間で密封機能を果たしているゴム状弾性材製のガスケットとを備えたゴム焼付け部品とより成るゴム焼付け部品組立体において、
前記ゴム焼付け部品を前記ハウジングの段部に嵌着する際に形成される閉鎖空間から流体を排出するための排出手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム焼付け部品組立体に関する。
また、本発明は、例えばバルブや継ぎ手の部品として使用されるゴム焼付け部品組立体に関するものである。
【0002】
更にまた、本発明は、バルブの弁座として好適に用いられるゴム焼付け部品組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、図9及び図10に示すようなゴム焼付け部品組立体が知られている。
すなわち、図9に示すゴム焼付け部品組立体は、流体通路130に面して設けた段部110と、この段部110に隣接する小径円筒内周面120とを備えたハウジング100と、その外周面が小径円筒内周面120と嵌合する嵌合部210を備えた金属環200と、この金属環200に一体的に形成され、段部110との間で密封機能を果たしているゴム状弾性材製のガスケット300とを備えたゴム焼付け部品400とより構成されている。
そして、図に示す様に、図上上方からゴム焼付け部品400を、ハウジング100の段部110に圧入すると、段部110とゴム焼付け部品400とにより閉鎖空間Xが形成される。
【0004】
この結果、閉鎖空間Xに閉じ込められた流体は逃げ場がないため、閉鎖空間X内の圧力が増大し、ゴム焼付け部品400が所定の位置に組み付けられない問題や、閉鎖空間X内に閉じ込められた潤滑剤や空気による背圧でゴム状弾性材製のガスケット300に過大な応力が加わり、ガスケット300が破損する問題を惹起した。
特に、ゴム焼付け部品400を嵌合する際に、潤滑剤を使用し、この潤滑剤が閉鎖空間Xに存在する場合は、潤滑剤が非圧縮性流体であるため、この問題が顕著であった。
【0005】
図10に示すゴム焼付け部品組立体は、図9に示したゴム焼付け部品400の金属環200として、板材よりプレス成形により製作したものを使用したものであるが、図9に示したゴム焼付け部品400と同様の問題を招来した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−150728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ゴム焼付け部品をハウジングに組み付ける際に、ゴム焼付け部品が所定の位置に確実に組み付けられ、閉鎖空間内に閉じ込められた潤滑剤や空気による背圧でゴム状弾性材製のガスケットに過大な応力が加わり、ガスケットが破損することが無いゴム焼付け部品組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム焼付け部品組立体は、流体通路に面して設けた段部と、前記段部に隣接する小径円筒内周面とを備えたハウジングと、その外周面が前記小径円筒内周面と嵌合する嵌合部を備えた金属環と、前記金属環に一体的に形成され、前記段部との間で密封機能を果たしているゴム状弾性材製のガスケットとを備えたゴム焼付け部品とより成るゴム焼付け部品組立体において、
前記ゴム焼付け部品を前記ハウジングの段部に嵌着する際に形成される閉鎖空間から流体を排出するための排出手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品をハウジングに組み付ける際に、ゴム焼付け部品が所定の位置に確実に組み付けられ、閉鎖空間内に閉じ込められた潤滑剤や空気による背圧でゴム状弾性材製のガスケットに過大な応力が加わり、ガスケットが破損することが無い。
請求項2記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品の金属環として、板材よりプレス成形により製作したものを使用した態様のものに特に有効である。
【0010】
請求項3記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品の金属環として、厚肉の部材より製作したものを使用した態様のものに特に有効である。
請求項4記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品の金属環として、板材よりプレス成形により製作したものを使用した態様のもの、及び厚肉の部材より製作したものを使用した態様のもののいずれにも有効である。
【0011】
請求項5記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、予めハウジング側に加工を施しておけば、ゴム焼付け部品の金属環に加工を施す必要が無い為、ゴム焼付け部品の金属環に加工を施すことが難しい態様のものに有効である。
請求項6記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品の金属環に特別な加工を施す必要が無い。
【0012】
請求項7記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、ゴム焼付け部品の位置決めを、簡単に行うことが出来る。
請求項8記載の発明のゴム焼付け部品組立体によれば、バルブ弁座に用いて特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1の態様のゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【図2】図1のゴム焼付け部品組立体を完全に組立てた状態の断面図である。
【図3】本発明に係る第2の態様のゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【図4】図3のゴム焼付け部品組立体を完全に組立てた状態の断面図である。
【図5】本発明に係る第3の態様のゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【図6】本発明に係る第4の態様のゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【図7】図6のゴム焼付け部品組立体を完全に組立てた状態の断面図である。
【図8】本発明に係る態様のゴム焼付け部品組立体を弁のバルブ弁座として用いた例を示した断面図である。
【図9】従来技術に係るゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【図10】従来技術に係る他のゴム焼付け部品組立体の組立途中の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図に基づき説明する。
図1及び図2において、本発明に係る第1の態様のゴム焼付け部品組立体は、流体通路13に面して設けた段部11と、この段部11に隣接する小径円筒内周面12とを備えたハウジング1と、その外周面が小径円筒内周面12と嵌合する嵌合部21を備えた金属環2と、この金属環2に一体的に形成され、段部11との間で密封機能を果たしているゴム状弾性材製のガスケット3とを備えたゴム焼付け部品4とより構成されている。
【0015】
そして、図1に示す様に、ゴム焼付け部品4をハウジング1の段部11に嵌着する際に形成される閉鎖空間Xから流体を排出するための排出手段5として、閉鎖空間Xと流体通路12とを連通する、金属環2の嵌合部21に設けた軸方向に延びるスリット51が形成されている。
このスリット51は、嵌合部21の軸方向全体に設けられている。
【0016】
このため、ゴム焼付け部品4が、図1の状態から図2の状態まで押し込まれる過程で、閉鎖空間Xに存在する流体は、排出手段5であるスリット51を介して流体通路13側に排出される。
また、ゴム焼付け部品4の位置決めは、図2に示す様に、金属環2が段部11の端面111に当接することにより、ガスケット3に損傷を与えることなく、確実に、且つ容易に行うことが出来る。
【0017】
ついで、図3及び図4に基づき、本発明に係る第2の態様のゴム焼付け部品組立体を説明する。
第1の態様と相違する点は、金属環2が、板材よりプレス成形により製作したものではなく、厚肉の金属部材から成形したものである点で異なっている。
このため、ゴム状弾性材製のガスケット3は、金属環2の大径円筒部22の外周面にのみ接着する態様となっている。
また、金属環2の小径円筒部23は、ハウジング1の小径円筒内周面12と嵌合する嵌合部21を提供している。
【0018】
更に、この金属環2の小径円筒部23の外周面には軸方向全体に亘って伸びる溝52が形成され、排出手段5を提供している。
この為、ゴム焼付け部品4が、図3の状態から図4の状態まで押し込まれる過程で、閉鎖空間Xに存在する流体は、排出手段5である溝52を介して流体通路13側に排出される。
尚、この排出手段5である溝52は、ハウジング1の小径円筒内周面12の嵌合部21と接する内周面に設けた軸方向に延びる溝であっても良い。
【0019】
ついで、図5に基づき、本発明に係る第3の態様のゴム焼付け部品組立体を説明する。
第1の態様と相違する点は、金属環2に設けた排出手段5が、閉鎖空間Xと流体通路13とを連通する、金属環2の嵌合部21または嵌合部21近傍に設けた貫通孔52である点である。
他は、第1の態様と同じである。
【0020】
ついで、図6及び図7に基づき、本発明に係る第4の態様のゴム焼付け部品組立体を説明する。
これまでの第1〜3の態様と相違する点は、ガスケット3がハウジング1の段部11の内周面112に接することなく、図7に示す様に、ゴム焼付け部品4が、図6の状態から図7の状態まで押し込まれ段階で、ガスケット3が、段部11の端面111に当接する態様としている。
【0021】
このため、ゴム焼付け部品4が、図6の状態から図7の状態まで押し込まれる過程で、閉鎖空間Xに存在する流体は、排出手段5であるハウジング1の内周面112とガスケット3との間隙を介して排出される。
また、金属環2には、折り曲げ段部を設けた位置決め手段22が存在する為、ゴム焼付け部品4の位置決めは、図7に示す様に、位置決め手段22が段部11の端面111に当接することにより、ガスケット3に損傷を与えることなく、確実に、且つ容易に行うことが出来る。
【0022】
更に、上述したゴム焼付け部品4は、例えば図8に示す様に、弁6のバルブ弁座として用いることが出来る。
すなわち、ハウジング1に嵌合固定されたバルブ弁座として機能するゴム焼付け部品4の軸方向端面41に、弁体61が離接することにより、流体の通過を許容したり、遮断したりするものである。
尚、この応用例に使用されているゴム焼付け部品4は、第1の態様のゴム焼付け部品を使用している。
【0023】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0024】
1 ハウジング
2 金属環
3 ガスケット
4 ゴム焼付け部品
5 排出手段
6 弁
11 段部
12 小径円筒内周面
13 流体通路
21 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路(13)に面して設けた段部(11)と、前記段部(11)に隣接する小径円筒内周面(12)とを備えたハウジング(1)と、その外周面が前記小径円筒内周面(12)と嵌合する嵌合部(21)を備えた金属環(2)と、前記金属環(2)に一体的に形成され、前記段部(11)との間で密封機能を果たしているゴム状弾性材製のガスケット(3)とを備えたゴム焼付け部品(4)とより成るゴム焼付け部品組立体において、
前記ゴム焼付け部品(4)を前記ハウジング(1)の段部(11)に嵌着する際に形成される閉鎖空間(X)から流体を排出するための排出手段(5)を設けたことを特徴とするゴム焼付け部品組立体。
【請求項2】
前記排出手段(5)が、閉鎖空間(X)と前記流体通路(13)とを連通する、前記金属環(2)の嵌合部(21)に設けた軸方向に延びるスリット(51)であるがとを特徴とする請求項1記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項3】
前記排出手段(5)が、閉鎖空間(X)と前記流体通路(13)とを連通する、前記金属環(2)の嵌合部(21)外周面に設けた軸方向に延びる溝(52)であるがとを特徴とする請求項1記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項4】
前記排出手段(5)が、閉鎖空間(X)と前記流体通路(13)とを連通する前記金属環(2)の嵌合部(21)または嵌合部(21)近傍に設けた貫通孔(52)であるがとを特徴とする請求項1記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項5】
前記排出手段(5)が、閉鎖空間(X)と前記流体通路(13)とを連通する前記ハウジング(1)の小径円筒内周面(12)の前記嵌合部(21)と接する内周面に設けた軸方向に延びる溝であることを特徴とする請求項1記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項6】
前記排出手段(5)が、前記ガスケット(3)を前記段部(11)の端面(111)に当接する態様としたことを特徴とする請求項1記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項7】
前記金属環(2)に前記段部(11)の端面(111)と当接する位置決め手段(22)を設けたことを特徴とする請求項6記載のゴム焼付け部品組立体。
【請求項8】
前記ゴム焼付け部品(4)が、バルブ弁座を構成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のゴム焼付け部品組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−21707(P2011−21707A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168459(P2009−168459)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】