説明

ゴム物品補強材の波形の評価方法

【課題】波形型付けされたゴム物品補強材について、波形状の評価方法を提供する。
【解決手段】型付け前の供給長さL1と、補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材の長さL2とし、三角波形状を有するゴム補物品補強材の場合、下記式(1)〜(3)、L=L1/N・・・(1)λ=L2/N・・・(2)a=((L/2)−(λ/2)1/2・・・(3)、波形状を有するゴム補物品補強材の場合、下記式(1)、(2)、(4)および(5)、L=L1/N・・・(1)λ=L2/N・・・(2)b=(3L/2+λ/2)/8・・・(4)a=2×(b−(λ/4)1/2・・・(5)で表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム物品補強材の波形の評価方法に関し、詳しくは、波形型付けされたゴム物品補強材の波形を、常時監視、評価することができるゴム物品補強材の波形の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤや工業用ベルト等のゴム製品においては、補強材として金属フィラメントや、これを素線として複数本撚り合わせたスチールコードが広く用いられている。これらをタイヤのように種々の外力が加わるものの補強材として使用する場合、タイヤの性能に影響を与えない程度に、補強材に所定の伸びを与えることも行われている。補強材に伸びを与える手法としては、例えば、補強材に波形型付けを施すことを挙げることができる。
【0003】
波形型付けを施したスチールコードを用いたゴムシートを製造するには、例えば、まず、ボビン等に巻回されたスチールコードが、ガイドプレートに向けて引き出される。このガイドプレートは横一列に等間隔に開口部が設けられており、開口部を通過したスチールコードは同一平面上に配列され、一対の歯車に導かれる。歯車に導入されたスチールコードは、それぞれ互い違いに組み合わされた歯車に挟まれ、波型の型付けが施される。その後、フラットロールを通過することにより、縦に形成された波形型付けが横に倒され、平面状の型付けとなり、押出機により、波形型付けされたスチールコードの上下にゴムがコーティングされる。
【0004】
このような、波形型付けを有するスチールコードを補強材とするゴム物品の製造方法に関する改良技術としては、例えば、特許文献1には、均質で大きな伸び率を有し、耐カット性に優れたタイヤ部材を製造するため、ガイドプレートの後方に巻き付けロールを配置することにより、スチールコードに正弦波に近い波形を型付けする技術が開示されている。また、特許文献2には、一対の歯車の歯の断面形状を所定の形状とすることにより、耐食性や耐疲労性に優れたゴム複合用スチールコードの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−75227号公報
【特許文献2】特開平7−189148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、スチールコードが埋設された製品は、生産開始時にサンプルを採取し、オフラインの判定装置を使用して、作業者による目視での確認が行われている。しかしながら、この方式では生産開始時のスチールコードの波形のみしか評価できないため、生産中に波形異常が発生した場合に異常を検出することができず、不良品が製品として使用される可能性があるという問題を有していた。生産中の不良品発生を監視するためには、生産ライン上でスチールコードの波形評価を連続して行う必要があり、インラインで波形を判定する手法が必要になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、波形型付けされたゴム物品補強材の波形を、常時監視、評価することができるゴム物品補強材の波形の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、型付けされたコード状のゴム物品補強材の波形の波長および振幅を製造ラインの運転状況から算出することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のゴム物品補強材の波形の評価方法は、三角波形状を有するゴム補物品補強材の波形の評価方法において、
型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、波形型付け手段でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材を埋設したゴム物品の長さL2と、を用いて下記式(1)〜(3)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
a=((L/2)−(λ/2)1/2・・・(3)
で表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形の形状を評価することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のゴム物品補強材の波形の他の評価方法は、波形形状を有するゴム物品補強材の波形の評価方法において、
型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、波形型付け手段でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材を埋設したゴム物品の長さL2と、を用いて下記式(1)、(2)、(4)および(5)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
b=(3L/2+λ/2)/8・・・(4)
a=2×(b−(λ/4)1/2・・・(5)
で表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形の形状を評価することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、型付けされたコード状のゴム物品補強材の波形を、常時監視、評価することができ、生産ラインでのゴム物品補強材の型付けの評価を自動化することができるため、作業工数の低減につながり、また、人的要因による評価ミスの低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】歯車を用いてゴム物品補強材に型付けを施す場合の説明図である。
【図2】トラバース装置を用いてゴム物品補強材に型付けを施す場合の説明図である。
【図3】ゴム物品補強材が三角波形状の場合における波長λおよび振幅aを算出するための説明図である。
【図4】ゴム物品補強材が波形形状の場合における波長λおよび振幅aを算出するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、歯車を用いてゴム物品補強材に型付けを施す場合の説明図である。複数のボビン(図示せず)等から巻き出されたゴム物品補強材1は、ガイドプレート2等により同一平面上に配列され、一対の歯車3の型付け装置に導かれて三角波形状の型付けが施され、その後、フラットロールを経て、押出機によりゴムがコーティングされることにより製造される。かかる型付け手法は、スチールコードおよびスチールワイヤの型付けに好適である。
【0014】
図2は、トラバース装置を用いてゴム物品補強材に型付けを施す場合の説明図である。この場合、複数のボビン(図示せず)等から巻き出されたゴム物品補強材11は、ガイドプレート12等によりトラバース装置15に導かれ、トラバース装置15が横行することによりゴム物品補強コード11に周期的な振幅が加えられ、ゴム物品補強材11に型付けが施される。その後、型付けが施されたゴム物品補強用コード11はロール機16によってゴムコーティングされ製品であるゴム物品17となる。かかる型付け手法は、有機繊維コードの型付けに好適である。
【0015】
本発明のゴム物品補強材の波形の評価方法の第1の実施の形態は、ゴム物品補強材が三角波形型付けされている場合の評価方法であり、ゴム物品補強材の供給方向へ供給した長さ、すなわち、型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、型付け装置でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後の巻取り側に供した長さ、すなわち、型付け後のゴム物品補強材の製品長さL2と、を用いて下記式(1)〜(3)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
a=((L/2)−(λ/2)1/2・・・(3)
で表わされる三角波形状を有するゴム物品補強材の波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の三角波形状を評価するものである。
【0016】
第1の実施の形態においては、型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1、型付け後のゴム物品補強材の製品長L2の測定方法には特に制限はなく、公知の手法を用いることができる。例えば、補強材の巻出ドラムやゴムシート等製品の巻取りドラムをサーボモーターで制御して、単位時間当たりのL1、L2を測定する方法や、型付け装置の前後にヤードメータを配置して、単位時間当たりのL1、L2を測定することができる。
【0017】
ゴム物品補強材に施された波形の数Nの計測方法についても特に制限はない。例えば、ゴム物品補強材1に対する波形型付けを、図1に示すような1対の歯車3で行う場合、センサー4を配置して、単位時間当たりの歯車の歯の通過回数を計測してもよいし、歯車2の回転速度と歯数から波形の数Nを算出してもよい。
【0018】
本発明においては、上記手法により得られたL1、L2およびNを用いて、型付け後のゴム物品補強材の波長λおよび振幅aの算出し、基準となる波長および振幅と比較することにより評価する。図3は、目的とするゴム物品補強材が三角波形状の場合における波長λおよび振幅aを算出するための説明図である。図示するように、1波長当たりのゴム物品補強材の長さLは、下記式、
L=L1/N・・・(1)
となる。また、型付け後のゴム物品補強材の波長λは、下記式、
λ=L2/N・・・(2)
で表わすことができる。したがって、型付け後のゴム物品補強材の振幅aは、下記式、
a=((L/2)−(λ/2)1/2・・・(3)
で求めることができる。このようにして算出した波長λと振幅aと、目的とするゴム物品補強材の波長および振幅と、が一致するか否かを判断することにより、型付け後のゴム物品補強材の波形形状の評価が可能となる。
【0019】
次に、本発明のゴム物品補強材の評価方法の第2の実施の形態について説明する。
本発明の第2の実施の形態は、ゴム物品補強材が波形型付けされている場合の評価方法であり、型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、波形型付け手段でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材の長さL2と、を用いて下記式(1)、(2)、(4)および(5)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
b=(3L/2+λ/2)/8・・・(4)
a=2×(b−(λ/4)1/2・・・(5)
を用いて表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形の形状を評価するものである。波形型付けを行うには、トラバース装置を好適に用いることができ、L1、L2およびNの測定は第1実施の形態と同様の手法で測定することができる。なお、図2中の14はトラバース装置15の横行回数を計数するセンサーである。
【0020】
図4は、ゴム物品補強材が波形形状の場合における波長λおよび振幅aを算出するための説明図である。1波長当たりのゴム物品補強材の長さLは、下記式、
L=L1/N・・・(1)
で表わすことができ、型付け後のゴム物品補強材の波長λは、
λ=L2/N・・・(2)
で表わすことができる。ここで、図示するように、波形型付けされたゴム物品補強材11の1/2波長を円弧とみなしてホイヘンスの近似値を適用すると下記式(6)、
L/2=(8b−λ/2)/3・・・(6)
が近似的に成り立つ。ここでbは、上記円弧とみなした1/2波長の弧の中点と、1/2波長の端部と、を結んだ距離である(図4参照)。次いで、上記式(6)を変形することによりbを算出することができる。
b=((3L/2+λ/2))/8・・・(4)
式(4)により求められたbを用いて下記式、
a=2×(b−(λ/4)1/2・・・(5)
により振幅aを算出することができる。このようにして得られた波長λと振幅aが、目的とするゴム物品補強材の波長および振幅と一致するか否かを判断することにより、型付け後のゴム物品補強材の波形形状の評価が可能となる。
【0021】
本発明のゴム物品補強材の波形形状の評価方法によれば、作業を自動化し作業工数を減らすことができ、また、人的要因による評価ミスの低減が期待できる。
【符号の説明】
【0022】
1,11 ゴム物品補強材
2,12 ガイドプレート
3 歯車
4,14 センサー
15 トラバース装置
16 ロール機
17 ゴム物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角波形状を有するゴム物品補強材の波形の評価方法において、
型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、波形型付け手段でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材を埋設したゴム物品の長さL2と、を用いて下記式(1)〜(3)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
a=((L/2)−(λ/2)1/2・・・(3)
で表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形の形状を評価することを特徴とするゴム物品補強材の波形の評価方法。
【請求項2】
波形形状を有するゴム物品補強材の波形の評価方法において、
型付け前のゴム物品補強材の供給長さL1と、波形型付け手段でゴム物品補強材に施された波形の数Nと、型付け後のゴム物品補強材を埋設したゴム物品の長さL2と、を用いて下記式(1)、(2)、(4)および(5)、
L=L1/N・・・(1)
λ=L2/N・・・(2)
b=(3L/2+λ/2)/8・・・(4)
a=2×(b−(λ/4)1/2・・・(5)
で表わされる波長λおよび振幅aにより、ゴム物品補強材の波形の形状を評価することを特徴とするゴム物品補強材の波形の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224948(P2012−224948A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91316(P2011−91316)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】