説明

ゴム組成物並びに動力伝動用ベルト

【課題】 強度が高く、耐摩耗効果に優れたゴム組成物並びに動力伝動ベルトを提供する。
【解決手段】 Vリブドベルト1は、接着ゴム層2内にベルト長手方向に沿って心線3が埋設され、接着ゴム層2の下部に、ベルト長手方向に複数のリブを設けた圧縮ゴム層4を、接着ゴム層2の上部には、伸張層として基布5が積層した構造を有する。この圧縮ゴム層4にはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維がゴム100質量部に対して1〜40質量部配合されており、該短繊維はフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液により接着処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物並びに動力伝動用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化に伴って、厳しい使用環境にも耐えうるゴム製品が望まれている。
ゴム製品は、原料ゴムの選定及び配合剤等の組み合わせによりその特性が定まるが、近年では補強性、耐摩耗等を改善する目的で短繊維を配合することが一般になされている。
【0003】
自動車用部品に用いられるゴム製品のなかに動力伝動用ベルトがあり、例えば自動車のエアーコンプレッサーやオルタネータ等の補機駆動の動力伝動に広く利用されている。この種のベルトでは、リブ部に綿、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド繊維などの短繊維群をベルト幅への配向性を保って埋設することにより、ベルトの摩擦伝動部の耐側圧性を高め、更に埋設した短繊維の一部をベルト側面より意図的に突出させることによって、リブ部の摩擦性能および粘着による発音の抑止効果を狙った動力伝動用ベルトも提案されている。
【0004】
また、上記ベルトの効果をさらに向上させるために、摩擦伝動部の両側壁面に突出させる短繊維としてアラミド繊維を用いることで、アラミド繊維特有の耐摩耗性によるベルト自体の耐久性の向上を意図した伝動ベルトが開示されている。(例えば特許文献1参照)
しかし、ベルトの圧縮ゴム層内に埋設させたアラミド繊維をリブ部表面から突出させ、あるいは突出して折れ曲げた場合には、アラミド繊維の剛性が高過ぎて、ベルト走行時に耳ざわりなこすれ音が発生することが問題となっていた。
また、伝動ベルトのなかで変速ベルトは最も使用条件が厳しく、自動車業界の動向としては排気量が更に大きいエンジンに適用される傾向にある。更に、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、より使用条件が厳しくなっているのが現状であり、耐摩耗性、耐圧縮性に加えて、耐屈曲性の要求がすすんでいる。これら近年求められる要求では、耐摩耗性に優れるといわれるアラミド繊維でも不十分である場合があり、こういった問題を背景に、従来の短繊維の代替となる新規の短繊維の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平1−164839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に鑑みて本発明者が鋭意研究を重ねた結果、短繊維としてポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維(PBO短繊維)を配合したゴム組成物及び動力伝動用ベルトは、従来のゴム組成物及び動力伝動用ベルトよりも高い物性値を有し、なかでも耐摩耗、耐屈曲効果が飛躍的に向上することを知見したるものである。
【0006】
尚、ゴム組成物へ配合される短繊維は、ゴム組成物中への分散性、接着性を改良すべく短繊維に接着処理を施す必要がある。
【0007】
繊維の接着処理方法としては、例えば特公昭60−24131号公報には、カルボキシル基含有アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスからなるRFL液で処理する方法、特公平5−41525公報、特公平5−41526公報、特公平5−41527公報には、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及びシランカップリング剤から選ばれた活性化合物、RFL液及びハロゲン含有重合体を主成分とする接着剤組成物で処理する方法、特公平6−41528公報にはエポキシ化合物あるいはイソシアネート化合物で第1処理した後、RFL液で第2処理し、そしてゴム配合物と塩化ゴムを溶剤に溶かしたゴム糊で第3処理する方法が開示されている。
【0008】
しかし、前記技術をPBO短繊維に適用した場合、ゴム組成物との接着力が充分満足できるものではなく、また分散性に欠き、ゴム中で短繊維が塊りとなって分散不良になることから、クラックが発生しやすいといった問題があった。この問題はPBO繊維の分子構造に起因し、他の繊維に比べゴムとの接着が困難であると共に、従来の手法ではRFL液による後処理を必須とすることからコストや手間がかかるという問題もあった。
【0009】
従って本発明の目的は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維を配合したゴム組成物及び動力伝動用ベルトを提供することにある。ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維を含有するゴム組成物及び動力伝達用ベルトは、従来の短繊維を含有するゴム製品よりも高い物性を示し、なかでも耐摩耗性に優れるということを知見したるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1記載の発明は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維を分散して配合したゴム組成物にあって、短繊維の配合量はゴム100質量部に対して1〜40質量部であることを特徴とする。配合量を特定の範囲に規定することで作業性及び分散性が良いとともに、耐摩耗効果を充分に発揮できるゴム組成物を提供できる。
【0011】
本願請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴム組成物にあって、アラミド短繊維が併用して配合されてなることを特徴とする。ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を用いた製品は高コストであることが問題とされていたが、アラミド繊維と併用することで、高い諸物性を保ちつつ比較的低コストに抑える事が可能である。
【0012】
本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のゴム組成物にあって、少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、これを所望の長さにカットしたものであることを特徴とする。短繊維を該処理液で処理することで、RFL液で処理しなくともゴムとの接着性が強固であると共に短繊維の分散性に優れる。
【0013】
本願請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載のゴム組成物にあって、少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、更にRFL液で処理し、これを所望の長さにカットしたものであることを特徴とする。前述の処理液に加え更にRFL液で処理することにより、ゴムとの接着性が向上する。
【0014】
本願請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載のゴム組成物にあって、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とニトリルゴム変性エポキシ樹脂の質量比が2/10〜10/10であることを特徴とする。樹脂の配合比を特定の範囲に設定することで、短繊維の分散性に優れると共に強固な接着力が得られる。
【0015】
本願請求項6記載の発明は、ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層とからなる動力伝動用ベルトにおいて、少なくとも上記圧縮ゴム層が、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維を含有するゴム組成物で構成したことを特徴とする。
【0016】
本願請求項7記載の発明は、請求項6記載の動力伝動用ベルトにあって、動力伝動用ベルトとは、ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部を有する圧縮ゴム層とからなるVリブドベルトであることを特徴とする。
【0017】
本願請求項8記載の発明は、請求項6記載の動力伝動用ベルトにあって、動力伝動用ベルトとは、ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層とからなるVベルトであることを特徴とする。
【0018】
本願請求項9記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の動力伝動用ベルトにあって、圧縮ゴム層にアラミド繊維が併用して配合されてなることを特徴とする。
【0019】
本願請求項10記載の発明は、請求項6乃至9のいずれかに記載の動力伝動用ベルトにあって、少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、これを所望の長さにカットしたものであることを特徴とする。
【0020】
本願請求項11記載の発明は、請求項6乃至9のいずれかに記載の動力伝動用ベルトにあって、少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、更にRFL液で処理し、これを所望の長さにカットしたものであることを特徴とする。
【0021】
本願請求項12記載の発明は、請求項10又は11に記載の動力伝動用ベルトにあって、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とニトリルゴム変性エポキシ樹脂の質量比が2/10〜10/10であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本願請求項記載の発明では、PBO短繊維を配合したゴム組成物及び動力伝動用ベルトは、強度が高く、耐摩耗効果に優れるとともに耐屈曲性が高いことが分かった。またPBO短繊維以外の短繊維、なかでもアラミド短繊維、を併用しても高い効果を奏することが知見できた。また短繊維をニトリルゴム変性エポキシ樹脂及びアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする処理液で処理することで、ゴムへの分散性に優れると共に、ゴムとの強固な接着力を短繊維に付与できることが判明した。更に、RFL液で後処理すると前述の効果の向上が見られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO繊維)は、ジアミノレゾルシノールとテレフタル酸をポリリン酸溶媒中で縮重合したポリマーを紡糸することで得られる。従来の凡用繊維よりもはるかに高い物性値を有し、例えば機械的物性においてはアラミド繊維以上の強度及び弾性率を示す。また、アラミド繊維に比べて耐切創性が高いというのも大きな特徴である。
【0024】
上記理由からPBO短繊維をゴム組成物に配合すると、高い補強効果及び耐摩耗効果を付与できる。またアラミド繊維に比べ耐切創性が高いことから、動力伝動用ベルトの圧縮ゴム層にPBO短繊維を含有するゴムを用いた際、短繊維がゴム表面を覆う効果がアラミド短繊維よりも高く、ひいては走行時に発生する騒音減少効果に優れると共にその持続性が期待できる。しかしその分子骨格上、官能基をほとんど含有していないことから従来の短繊維と比べてゴムとの接着が困難であり、特殊な接着処理が必要となる。
【0025】
よってゴムに分散して配合するPBO短繊維は、下記方法によって接着処理されることが好ましい。
まず未処理繊維をフィラメントの状態で、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、架橋剤、そして溶剤からなる室温設定した処理液に0.5〜30秒間浸漬した後、150〜250°Cに調節したオーブンに1〜5分間通して乾燥される。この処理を行うことで該処理液が短繊維内部まで浸透してフィラメントの接着性が改善される。
尚、作業性の良好さ及び接着効果並びに短繊維の分散性を考慮すると、処理液の固形分濃度は1〜20質量%に調節されることが好ましい。溶剤としてはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトンが用いられる。
【0026】
ニトリルゴム変性エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂をニトリルゴムで変性したエポキシプレポリマーであり、ベースのエポキシとしては、グリセリン、プロピレングリコール類とエピクロルヒドリン等のハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物、又はヒドロキノン、ビスフェノールA等の多価フェノールとハロゲン含有エポキシ類との反応生成物が使用される。特に、末端に2個のエポキシ基を持つビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用したものが好適である。
【0027】
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は、フェノールあるいはクレゾール、クロロフェノールなどの1価フェノール、又はレゾルシン、カテコールなどの多価フェノールの1種又は2種以上のフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの1種又は2種以上のアルデヒドとを酸あるいはアルカリ触媒の存在下で縮合したものである。
【0028】
上記アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とニトリルゴム変性エポキシ樹脂の質量比は2/10〜10/10が好ましい。2/10未満の場合にはゴムとの接着性が低下し、一方10/10を超えると、ゴムとの接着性が低下すると共に処理剤の可撓性が低下するため短繊維の柔軟性が低下する。
【0029】
架橋剤としては、3級アミン、イミダゾール、酸無水物などが使用される。特に、3級アミンが好適である。通常、エポキシ樹脂に対し3〜30質量%の範囲で使用される。
【0030】
尚、場合に応じて以下の後処理を施すことが好ましい。
上記処理液を含浸させた繊維をレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスを混合したRFL液で処理する。この場合、レゾルシンとホルマリンのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高める上で好適である。
また、RFL液はレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分質量比が1/1〜1/5で、かつRFL液の固形分付着量が3〜10質量%であることがRFL液による接着力の効果を高める上で好ましい。1/1を超えると、短繊維の凝集力が大きくなって分散性が悪くなり、逆に1/5未満になると、ゴムと短繊維との接着力が低下し、引張強さも低下する。更に、RFL液の固形分付着量が10質量%を超えると、処理液が固まって短繊維のフィラメント同士が分割しにくくなり、逆に3質量%未満の場合にはRFL液による分散性及び引張強さの向上効果が期待できない。また、ゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、エピクロルヒドリン、天然ゴム、SBR、クロロプレンゴム、オレフィン−ビニルエステル共重合体、EPDM等のラテックスが挙げられる。
尚、接着処理を施す際の処理液の温度は5〜40°Cに調節し、また浸漬時間は0.5〜30秒であり、200〜250°Cに調節したオーブンに1〜3分間通して熱処理される。
【0031】
さらに、上記処理に加えオーバーコート処理することも可能である。ゴム配合物をトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトンから選ばれた、ゴム配合物の良溶媒となる溶剤に溶かしたゴム糊に浸漬しオーバーコート処理する。浸漬時間は0.5〜30秒であり、80〜200°Cに調節したオーブンに1〜3分間通して熱処理される。
【0032】
上記の如く接着処理を施した繊維を所望の長さにカットし、短繊維を得ることができる。本発明で使用するポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維(PBO短繊維)は、繊維長1〜20mm、繊維径が1〜3デニールのものが適当である。
【0033】
尚、本発明では、未処理フィラメント糸をニトリルゴム変性エポキシ樹脂の代わりにエポキシ樹脂からなる前処理液で処理した短繊維をゴム組成物に配合することもできる。但しこの場合は、RFL液による後処理を必須とするとともに、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる処理液に比べその接着力が劣ることを留意する必要がある。
また本発明に係る接着処理はPBO繊維に対して有効であるのは上に述べた通りであるが、綿、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド繊維といったPBO以外の繊維に対してももちろん有効である。
【0034】
本発明では、このように接着処理した短繊維を分散して配合したゴム組成物を動力伝動用ベルトのゴム部材の一部に用いることができる。
図1に本発明に係る動力伝動ベルトの一例としてVリブドベルト1を示す。
Vリブドベルト1は、接着ゴム層2内にベルト長手方向に沿って心線3が埋設され、接着ゴム層2の下部に、ベルト長手方向に複数のリブを設けた圧縮ゴム層4を有している。また接着ゴム層2の上部には、伸張層として基布5が積層した構造を有する。
【0035】
基布5は、織物、編物、不織布から選択される帆布である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。
【0036】
上記基布5は、公知技術に従ってレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬後、未加硫ゴムを基布5に擦り込むフリクションを行ったり、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
【0037】
上記圧縮ゴム層4の主材ゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴムのようなエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)に不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)等を主成分とし、これにカーボンブラックのような補強剤、充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫助剤、硫黄あるいは有機過酸化物のような加硫剤等が添加混合される。
【0038】
一方、接着ゴム層2は圧縮ゴム層4と同種のゴムが使用可能である。配合物としては短繊維は混入しないほうが好ましいが、必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合に用いるものが使用される。
【0039】
尚、本発明に係る動力伝動用ベルトであるVリブドベルト1の圧縮ゴム層4には、上述の如く接着処理を施したPBO短繊維を添加することが好ましい。前記短繊維を添加することで圧縮ゴム層4の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面となる圧縮ゴム層4の表面に該短繊維を突出させ、圧縮ゴム層4の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減する。また該短繊維の機械的物性が高いことからベルト補強効果に優れると共に耐摩耗効果がある。
また、上記ゴム層中の短繊維の方向はベルトの長手方向に対して直角方向を向いているのを90°としたときほとんどの短繊維が70°〜110°の範囲内に配向されていることが望ましい。尚、PBO繊維は列理直角方向伸びが大きく、アラミド短繊維を配合した場合に比べて耐屈曲性に優れる。
【0040】
ゴム組成物におけるPBO短繊維の好適な配合条件としては、PBO繊維の繊維長さは1〜20mmで、その配合量はゴム100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましい。尚、Vリブドベルトの圧縮ゴム層においてPBO短繊維が前述の効果を十分に発揮するためには、PBO繊維の繊維長さは1〜10mmで、その配合量はゴム100質量部に対して1〜30質量部であることが望ましい。更に好ましくは繊維長は1〜5mm、配合量は5〜20質量部である。
尚、PBO短繊維の添加量が1質量部未満の場合には、圧縮ゴム層4のゴムが粘着しやすくなって摩耗する欠点があり、また一方30質量部を超えると短繊維がゴム中に均一に分散しなくなりクラックが発生しやすくなる。また、PBO短繊維を単独に添加することは必須ではなく、他の素材からなる短繊維を添加することも可能である。この場合、耐摩耗性、補強性を考慮するとアラミド繊維を選択することが好ましい。
【0041】
PBO短繊維含有ゴム組成物を作製する方法としては、まず第1ステップのマスターバッチ練りとして、バンバリミキサーのような密閉式混練機に、ゴム100質量部に1〜40質量部の短繊維と1〜10質量部の軟化剤を投入して混練した後、混練したマスターバッチをいったん放出し、これを20〜50°Cまで冷却する。これはゴムのスコーチを防止するためである。次いで、得られたマスターバッチに所定量の補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等をバンバリミキサー、オープンロールを用いて仕上げ練りする。また、ゴム種によっては混練したマスターバッチをいったん放出し、冷却する必要はなく、連続して仕上げ練りを行うことも可能である。
尚、混練り方法としては、上記方法に限るものでなく、また混練り手段も例えばバンバリーミキサー、ロール、ニーダー、そして押出機等限定するものでなく、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。また加硫方法も限定されるものでなく、モールド加熱、熱空気加熱、回転ドラム式加硫機、射出成形機等の加硫装置を用いた公知の手段で加硫される。
【0042】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くでき、ベルト寿命を延長させるために好ましい。このコードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニールが4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また8,000を越えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が悪くなる。
【0043】
エチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下で適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0044】
また、心線3にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0045】
接着処理されたコードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを1.0〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。1.0mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる。
【0046】
次にVリブドベルト1の製造方法の一例を以下に示す。
まず、円筒状の成形ドラムの周面に基布と接着ゴムを巻き付けた後、この上にロープからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴムを順次巻き付けて積層体を得た後、これを加硫して加硫スリーブを得る。
次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架し、所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動して加硫スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削する。
このようにして得られた加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該加硫スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0047】
尚、上記Vリブドベルト1は本発明の実施の一形態であって、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る動力伝動ベルトの他の一例としてVベルト6を図2に示す。
Vベルト6は、接着ゴム層9内にベルト長手方向に沿って心線11が埋め込まれ、接着ゴム層9の上部下部に隣接して伸張ゴム層7と圧縮ゴム層10を有し、伸張ゴム層7はその表面に基布8が積層した構造を有する。尚、必要に応じて、圧縮ゴム層10にベルト長手方向に所定間隔でコグ部を設けてもよい。また、この圧縮ゴム層10には本発明に係るPBO短繊維が5〜40質量部、更に好ましくは10〜30質量部配合されている。尚、各々のゴム層には上述のVリブドベルト1と同様のゴムを使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
1.短繊維の接着処理方法の比較
(実施例1)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すA処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0049】
(実施例2)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すA処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0050】
(比較例1)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0051】
(比較例2)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0052】
(比較例3)
1,100dtex/667filamentの構成を有する未処理のPBO繊維をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
得られた短繊維を夫々表3に示す配合でバンバリーミキサーにて混練りし、ロールにて圧延して厚み1mmのゴムシートが得られた。尚、短繊維の配合量はゴム100重部に対して15質量部である。また短繊維は圧延ロールによりゴムの押出し方向に配向されている。このゴムシートを型に入れて153°Cで20分加硫し、得られたゴム組成物の物性を測定した。DIN摩耗試験はJIS K 6264により試験し、サンプルは摩耗面に対し垂直に短繊維が配向するよう作製した。測定結果を表4に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表4より、NBR変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液Aで接着処理をした短繊維を含有する実施例のゴム組成物は引張強力や切断伸度が高く、ゴムと短繊維が強固に接着していることが推察された。また処理液Aのみで接着処理した実施例2に比べ、更にRFL液で処理した実施例1のほうがゴムとの接着に優れているということも知見できた。更に、比較例よりも実施例のほうが平行/直角の引張強力比が高い、つまり平行方向の引張強力が直角方向の引張強力に比べ高いことから、実施例では短繊維の配向性が良く、ひいてはゴムへの分散性が良いということが判明した。
【0059】
2.短繊維含有ゴム組成物及び動力伝動用ベルト(Vリブドベルト)の比較
(実施例3)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すA処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0060】
(実施例4〜10)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すA処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0061】
(比較例4)
1,670dtex/1,000filamentの構成を有するアラミド繊維を表2に示す示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのアラミド短繊維を得た。
【0062】
得られた短繊維を夫々表4に示す配合でバンバリーミキサーにて混練りし、ロールにて圧延して厚み1mmのゴムシートを得た。尚、ゴム100質量部に対する短繊維の配合量は表5に示す。このゴムシートを型に入れて153°Cで20分加硫し、得られたゴム組成物の物性を測定した。
【0063】
また上記で得られたゴムシートを圧縮ゴム層に用いたVリブドベルトを作製した。
Vリブドベルトの製造工程として、まず、円筒状モールドに経糸と緯糸とが綿糸からなる平織物にクロロプレンゴムをフリクションしたゴム付帆布を1プライ巻き付けた後、クロロプレンゴム組成物からなる接着ゴムシートを巻き、更にその上にポリエステル繊維からなるコードをスピニングし、そして先に得られたゴムシートからなる圧縮ゴム層を巻き付け成形を終えた。これを公知の方法で160°C、30分で加硫して円筒状の加硫ゴムスリーブを得た。
【0064】
上記加硫ゴムスリーブを研磨機の駆動ロールと従動ロールに装着して、張力を付与した後に回転させた。150メッシュのダイヤモンドを表面に装着した研磨ホイールを1,600rpmで回転させ、これを加硫スリーブに当接させてリブ部を研磨した。研磨機から取り出したスリーブを切断機に設置した後、回転しながら切断した。
【0065】
作製したVリブドベルトは、心線が接着ゴム層内に埋設され、その上側にゴム付綿帆布を1プライ積層し、他方接着ゴム層の下側にはゴム圧縮部があって3個のリブがベルト長手方向に設けられている。このVリブドベルトはRMA規格による長さ1,100mmのK型3リブドベルトであり、リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.9mm、リブ角度40°であった。また圧縮ゴム層に配合されている短繊維はベルト幅方向に配向している。
【0066】
得られたVリブドベルトを図3のレイアウトにて6%のスリップを強制的に与えて24時間走行試験し、走行前と走行後のベルト質量を測定して摩耗減量を算出した。結果を表5に記載する。また、走行前のベルトと摩耗減量測定後のベルトを用いて、図4に示すレイアウトでプーリにベルトをかけ、プーリ回転時のベルト張力を測定した。その後、下式により各々の摩擦係数を算出し、摩擦係数の差を求めた。尚、Tは測定されたベルト張力である。

摩擦係数 = (2×ln(T/17.2))/π

更に、図5のレイアウトにて走行試験し、リブゴム部に心線まで達するクラックが発生するまでの時間を測定した。これら結果を表5に併記する。
【0067】
【表5】

【0068】
3.短繊維含有ゴム組成物及び動力伝動用ベルト(Vベルト)の比較
(実施例11〜15)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0069】
(実施例16)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長1mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0070】
(実施例17)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長5mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0071】
(実施例18)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
更に、2,040dtex/312filamentの構成を有するナイロン繊維を表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径6.7dtexのナイロン短繊維を得た。
【0072】
(比較例5)
2,040tex/312filamentの構成を有するナイロン繊維を表2に示す示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径6.7dtexのナイロン短繊維を得た。
【0073】
(比較例6〜8)
1,670dtex/1,000filamentの構成を有するアラミド繊維を表2に示す示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのアラミド短繊維を得た。
【0074】
(比較例9)
1,670dtex/1,000filamentの構成を有するアラミド繊維を表2に示す示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのアラミド短繊維を得た。
更に、2,040dtex/312filamentの構成を有するナイロン繊維を表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径6.7dtexのナイロン短繊維を得た。
【0075】
得られた短繊維を夫々表3に示す配合でバンバリーミキサーにて混練りし、ロールにて圧延して厚み1mmのゴムシートを得た。尚、ゴム100質量部に対する短繊維の配合量は表6に示す。このゴムシートを型に入れて153°Cで20分加硫し、得られたゴム組成物の物性を測定した。
【0076】
また上記で得られたゴムシートを圧縮ゴム層に用いたVベルトを作製した。
Vベルトの製造工程として、まず、円筒状モールドに経糸と緯糸とが綿糸からなる平織物にクロロプレンゴムをフリクションしたゴム付帆布を1プライ巻き付けた後、クロロプレンゴム組成物からなる接着ゴムシートを巻き、更にその上にポリエステル繊維からなるコードをスピニングし、そして先に得られたゴムシートからなる圧縮ゴム層を巻き付け成形を終えた。これを公知の方法で160°C、30分で加硫して円筒状の加硫ゴムスリーブを得た。
【0077】
上記加硫ゴムスリーブを切断機に設置した後、回転しながら切断した。
作製したVベルトは、心線が接着ゴム層内に埋設され、その上側にゴム付綿帆布を1プライ積層し、他方接着ゴム層の下側にはゴム圧縮部が設けられている。このVベルトの寸法を測定した結果を表6に記す。また圧縮ゴム層に配合されている短繊維はベルト幅方向に配向している。
【0078】
得られたVベルトを図6のレイアウトにて6%のスリップを強制的に与えて24時間走行試験し、走行前と走行後のベルト質量を測定して摩耗減量を算出した。結果を表6に記載する。また、上記ベルトを用いて、図7に示すレイアウトにて走行試験し、V芯ゴム部に心線まで達するクラックが発生するまでの時間(A)を測定した。更に、図8に示すレイアウトにて走行試験し、V芯ゴム部に心線まで達するクラックが発生するまでの時間(B)を測定した。これら結果を表6に併記する。
【0079】
【表6】

【0080】
この結果、PBO短繊維を配合した実施例は、ナイロン短繊維、アラミド短繊維を配合した比較例に比べて、ゴム組成物の物性及び動力伝動用ベルトの性能に優れていることが分かる。またPBO短繊維は単独で配合するのみならず、他の短繊維と配合しても高い効果を奏することも判明した。なかでも耐摩耗性についてはナイロンに比べ格段に優れた効果があり、アラミドよりも高い効果が見られる。しかし、アラミド短繊維を配合したベルトでは、耐摩耗性の向上につれ、伸張度やクラックに対する耐久度に問題が見られた。
【0081】
4.短繊維含有ゴム組成物の比較
(実施例19)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
【0082】
(実施例20)
1,100dtex/667filamentの構成を有するPBO繊維を表1に示すB処理液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。次に表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのPBO短繊維を得た。
更に、1,670dtex/1,000filamentの構成を有するアラミド繊維を表2に示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのアラミド短繊維を得た。
【0083】
(比較例10)
1,670dtex/1,000filamentの構成を有するアラミド繊維を表2に示す示すRFL液に浸漬した後、200°Cで1分間熱処理した。この処理原糸をカットし、繊維長3mm、繊維径1.7dtexのアラミド短繊維を得た。
【0084】
得られた短繊維を夫々表7に示す配合でバンバリーミキサーにて混練りし、ロールにて圧延して厚み1mmのゴムシートを得た。尚、ゴム100質量部に対する短繊維の配合量は表8に示す。このゴムシートを型に入れて153°Cで20分加硫し、得られたゴム組成物の物性を測定した。
【0085】
【表7】

【0086】
【表8】

【0087】
この結果、PBO短繊維とアラミド短繊維を併用した実施例は、アラミド繊維のみを配合した比較例に比べて、高い耐摩耗及び補強効果を奏することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る動力伝動用ベルトであるVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係る動力伝動用ベルトであるVベルトの断面斜視図である。
【図3】ベルト摩耗減量測定に係る走行試験のレイアウトを示す図である。
【図4】ベルト摩擦係数測定に係るベルト張力測定試験のレイアウトを示す図である。
【図5】ベルトクラック発生時間測定に係る走行試験のレイアウトを示す図である。
【図6】ベルト摩耗減量測定に係る走行試験のレイアウトを示す図である。
【図7】ベルトクラック発生時間測定に係る走行試験のレイアウトを示す図である。
【図8】ベルトクラック発生時間測定に係る走行試験のレイアウトを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 Vリブドベルト
2 接着ゴム層
3 心線
4 圧縮ゴム層
5 基布
6 Vベルト
7 伸張ゴム層
8 基布
9 接着ゴム層
10 圧縮ゴム層
11 心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維をゴム100質量部に対して1〜40質量部の割合で分散して配合したことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
アラミド短繊維が併用して配合されてなる請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、これを所望の長さにカットしたものである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、更にRFL液で処理し、これを所望の長さにカットしたものである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項5】
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とニトリルゴム変性エポキシ樹脂の質量比が2/10〜10/10である請求項3又は4記載のゴム組成物。
【請求項6】
ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層とからなる動力伝動用ベルトにおいて、少なくとも上記圧縮ゴム層が、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含有するゴム組成物で構成したことを特徴とする動力伝動用ベルト。
【請求項7】
動力伝動用ベルトとは、ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部を有する圧縮ゴム層とからなるVリブドベルトである請求項6記載の動力伝動用ベルト。
【請求項8】
動力伝動用ベルトとは、ベルト長さ方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層とからなるVベルトである請求項6記載の動力伝動用ベルト。
【請求項9】
圧縮ゴム層にアラミド繊維が併用して配合されてなる請求項6乃至8のいずれかに記載の動力伝動用ベルト。
【請求項10】
少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、これを所望の長さにカットしたものである請求項6乃至9のいずれかに記載の動力伝動用ベルト。
【請求項11】
少なくともポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維は、該繊維をフィラメントの状態でニトリルゴム変性エポキシ樹脂とアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を含む処理液で処理した後、更にRFL液で処理し、これを所望の長さにカットしたものである請求項6乃至9のいずれかに記載の動力伝動用ベルト。
【請求項12】
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とニトリルゴム変性エポキシ樹脂の質量比が2/10〜10/10である請求項10又は11に記載の動力伝動用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−219675(P2006−219675A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62075(P2006−62075)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【分割の表示】特願2002−6584(P2002−6584)の分割
【原出願日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】